建設機械のキャビン
【課題】 複数の機種でキャビンフレームの一部を共用する方式をとりながら、各機種を通じて機械転倒時のオペレータ保護という要求に確実に応える。
【解決手段】 機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った後部フレーム体Aと、この後部フレーム体Aの前方に配置される前部フレーム体Bとを備え、後部フレーム体Aを複数の機種間で共用される共通部分、前部フレーム体Bを複数の機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分として、これらを結合することにより、骨組となるキャビンフレームを構成した。
【解決手段】 機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った後部フレーム体Aと、この後部フレーム体Aの前方に配置される前部フレーム体Bとを備え、後部フレーム体Aを複数の機種間で共用される共通部分、前部フレーム体Bを複数の機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分として、これらを結合することにより、骨組となるキャビンフレームを構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械のキャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の好適例である油圧ショベルを例にとって従来の技術を説明する。
【0003】
油圧ショベルは、図12,13に示すようにクローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に垂直軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体2と、この上部旋回体2に装着された作業アタッチメント3とによって構成され、上部旋回体2にキャビン4が設けられる。
【0004】
ここで、一般的には、上部旋回体2の右側(キャビン4内に着座したオペレータから見た右側。以下にいう左右及び前後の方向性について同じ)に作業アタッチメント3、左側にキャビン4がそれぞれ設けられ、キャビン4の左側面にドア5によって開閉される出入口6が設けられる。
【0005】
このキャビン4として、骨組となるキャビンフレームに各種の付属材(ドア5や外装パネル、窓ガラス等)が取付けられて構成され、主にキャビンフレームで必要なキャビン強度を確保するフレーム式のものが公知である。
【0006】
このフレーム式キャビンにおけるキャビンフレームの公知例を図14に示す。
【0007】
このキャビンフレーム7は、前部左右両側に立設されたフロントピラー8,9と、後部左右両側に立設されたリアピラー10,11と、左側のフロント、リア両ピラー8,10間のほぼ中央部に立設されたセンターピラー12と、左側のフロント、リア両ピラー8,10の上端間に架け渡された左ルーフメンバー13と、右側のフロント、リア両ピラー9,11の上端間に架け渡された右ルーフメンバー14と、左右のフロントピラー8,9の上端間に架け渡された上フロントクロスメンバー15と、同下端間に架け渡された下フロントクロスメンバー16と、左右のリアピラー10,11の上端間に架け渡された上リアクロスメンバー17と、同下端間に架け渡された下リアクロスメンバー18とによって構成されている。
【0008】
これら各構成要素の接合部分は溶接によって一体化される。
【0009】
また、左フロント、センター両ピラー8,12と左ルーフメンバー13とによって図12中の出入口6が形成される。
【0010】
上記のように、公知のキャビンフレーム7においては、左右のフロントピラー8,9と上下のフロントクロスメンバー15,16で前面側の門形構造体、左右のリアピラー10,11と上下のリアクロスメンバー17,18で後面側の門形構造体をそれぞれ構成し、この前後の門形構造体を左右のルーフメンバー13,14でつないだ構成となっている。
【0011】
このフレーム構成では、キャビンに作用する荷重が前後の門形構造体に伝えられてフレーム全体に分散され、すべての構成要素で均等に受けることになる。
【0012】
従って、全構成要素に均一な強度・剛性が求められる。
【0013】
一方、油圧ショベルには、上部旋回体2の形式として、たとえば旋回時に後側面が車幅外にはみ出る標準型と、後側面が車幅外に出ない後方小旋回型と、後側面だけでなくアタッチメント3も最起立状態で車幅外に出ない超小旋回型の三通りがある。
【0014】
この三つの機種は、上部旋回体2のサイズ(前後方向寸法)が異なるため、これに搭載されるキャビン4も各タイプで前後方向寸法が異なる。
【0015】
この場合、タイプごとに前後方向寸法が異なるキャビンフレーム7を設計し組立てるのでは、製作コストが高くなる。
【0016】
そこで、キャビンフレーム7の構成要素の一部を機種間で共用し、残りの要素を機種ごとに取り替える技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−96615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、特許文献1に記載された公知技術によると、旋回時にキャビンの一部が車幅外にはみ出ないという観点のみで、キャビンフレームの構成要素の一部を入れ替える構成をとっているため、機種によってキャビンフレーム7の強度・剛性に差が生じる。
【0018】
つまり、機械の転倒時(横転時)にオペレータを保護する観点から、オペレータの居住空間を確保するのに十分な強度・剛性を保つという目的が欠落しており、機種によってはオペレータの居住部分である後部のフレーム強度・剛性が低くなって、転倒時のオペレータ保護が十分図れなくなるおそれがあった。
【0019】
そこで本発明は、複数の機種でキャビンフレームの一部を共用する方式をとりながら、各機種を通じて機械転倒時のオペレータ保護という要求に確実に応えることができる建設機械のキャビンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の発明は、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った後部フレーム体と、この後部フレーム体の前方に配置される前部フレーム体とを備え、上記後部フレーム体を複数の機種間で共用される共通部分、上記前部フレーム体を複数の機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分として、これらが結合されることにより、骨組となるキャビンフレームが構成されたものである。
【0021】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、後部フレーム体の構成要素として、少なくとも、キャビンの左右片側において前後方向中間部に配置されるセンターピラーと、このセンターピラーよりも後方で左右両側に配置される左右のリアピラーと、この各ピラーの上端同士を連結する連結部材とを備え、この各構成要素により、外郭形状が平面視三角形の門形構造体である後部フレーム体が構成されたものである。
【0022】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、後部フレーム体の連結部材として、センターピラー及び左右両リアピラーの各上端間に枠材がそれぞれ一体状態で架け渡されたものである。
【0023】
請求項4の発明は、請求項2の構成において、後部フレーム体の連結部材として、センターピラー及び左右両リアピラーの各上端間に跨って三角形の板材が一体状態で設けられたものである。
【0024】
請求項5の発明は、請求項2乃至4のいずれかの構成において、後部フレーム体のセンターピラーが、左右両側のうちキャビン出入口側に配置されたものである。
【0025】
請求項6の発明は、請求項2乃至5のいずれかの構成において、後部フレーム体の平面形状が非直角三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたものである。
【0026】
請求項7の発明は、請求項6の構成において、後部フレーム体の平面形状が二等辺三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたものである。
【0027】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかの構成において、後部フレーム体の前面側、及び前部フレーム体の後面側にそれぞれ水平な継手部が設けられ、この継手部同士が重なり合い、かつ、その重なり代が調整可能な状態で結合されてキャビンフレームが構成されたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、オペレータの居住部分であるキャビンフレームの後部(後部フレーム体)について機械の転倒時に居住空間を確保するのに十分な強度を持った部分として各機種間で共用し、前部(前部フレーム体)を機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分とするため、共用される全機種を通じてオペレータ保護の要求に確実に応えることができる。
【0029】
この場合、請求項2の発明によると、共用部分である後部フレーム体を平面視三角形(左右非対称)の門形構造体として構成しているため、後部フレーム体が高強度・高剛性となって高い荷重支持性能を発揮し、とくに耐ねじれ荷重の点ですぐれたものとなる。
【0030】
つまり、最小限の構成要素で、居住空間を確保するのに必要な強度を得ることができる。このため、後部フレーム体を軽くし、キャビンの軽量化の要請にも応えることができる。
【0031】
また、機械転倒時にキャビンフレームに加えられる側方荷重を門形構造の後部フレーム体で集中的に受けることが可能となるため、前部フレーム体は相対的に低強度とすることができる。これにより前部フレーム体の構成要素の量を少なくし、かつ、その断面サイズを小さくすることが可能となる。
【0032】
これにより、転倒時のオペレータ保護という基本目的を達成しながら、前方視界を広げ、かつ、一層の軽量化を実現することができる。
【0033】
請求項3の発明によると、後部フレーム体の連結部材として枠材を用いているため、後部フレーム体全体を軽くでき、キャビンの軽量化の点でとくに有利となる。
【0034】
これに対し、請求項4の発明によると、後部フレーム体の連結部材として三角形の板材を用いているため、後部フレーム体がやや重くなるが、後部フレーム体の一体強度を高めることができるとともに、組立が容易となる。
【0035】
請求項5の発明によると、出入口側にセンターピラーを配置したことにより、転倒時の側方荷重を後部フレーム体に確実に伝え、変形抑制作用を有効に発揮させることができる。
【0036】
請求項6,7の発明によると、後部フレーム体の平面形状を非直角三角形としたから、直角三角形の場合と比較して耐ねじれ強度・剛性を高め、変形抑制効果が高いものとなる。
【0037】
とくに、平面形状を二等辺三角形とした請求項7の発明によると、耐ねじれ強度・剛性が三角形のうちでも最大となって後部フレーム体が最も変形し難くなる。このため、オペレータ保護の目的をより確実に達成することができる。
【0038】
一方、請求項8の発明によると、継手部同士の重なり代を調整することによってキャビンフレームの前後方向寸法を変更することができる。つまり、後部フレーム体だけでなく前部フレーム体をも共用することが可能となる。このため、製作コストをさらに安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施形態を図1〜図11によって説明する。
【0040】
以下の実施形態では、フレーム式のキャビンにおいて、キャビンフレームを二つの機種(たとえば標準型と後方小旋回型)に適用する場合を例にとっている。
【0041】
各実施形態におけるキャビンフレーム21は、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度・剛性を持った後部フレーム体Aと、この後部フレーム体Aの前方に配置される前部フレーム体Bとを備え、後部フレーム体Aを両機種に共用される共通部分、前部フレーム体Bを機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分として、これらを結合することによって構成される。
【0042】
なお、以下の実施形態において、たとえば図2〜4に示すように、前部フレームBについて標準型の場合と後方小旋回型の場合とに分けて表示する場合には、標準型について符号B1、後方小旋回型について符合B2を付している。
【0043】
第1実施形態(図1〜図5参照)
第1実施形態のキャビンフレーム21においては、上端部が後向きに湾曲した左右のフロントピラー22,23と、このフロントピラー22,23の上端から後向きに水平に延びる左右のルーフメンバー24,25と、両フロントピラー22,23の下端部間に架け渡された下側フロントクロスメンバー26と、両フロントピラー22,23の下端部後面に水平に取付けられた左右の前下枠27,28とによって変更部分である前部フレーム体B (B1,B2)が構成されている。
【0044】
一方、共通部分である後部フレーム体Aは、左右のリアピラー29,30と、左リアピラー29と前部フレーム体Bの左フロントピラー22との間に位置するセンターピラー31と、このセンターピラー31と左リアピラー29の下端部間に架け渡された左側の後下枠32と、右リアピラー30の後面に水平に取付けられた右側の後下枠33と、この後下枠33の後端と左リアピラー29の下端部間に架け渡された下側リアクロスメンバー34とを具備している。
【0045】
なお、この後部フレーム体Aのセンターピラー31と、前部フレーム体Bの左フロントピラー22と左ルーフメンバー24とによって、図12中に示す出入口6が形成される。
【0046】
また、センターピラー31は、左側の前後方向真ん中に配置してもよいし、真ん中よりも前後いずれかにずれた位置に配置してもよい。
【0047】
センターピラー31と左右のリアピラー29,30は、平面視で三角形の各頂点に位置する状態で配置され、これら各ピラー29〜31の上端間に三角形配置で連結部材としての枠材35,36,37が一体に架け渡されている。
【0048】
こうして、後部フレーム体Aが、外郭形状が平面視で三角形となる左右非対称の門形構造体として構成されている。
【0049】
ここで、右リアピラー30は、センターピラー31と左リアピラー29との間の前後方向中央(真ん中)の位置で右側に配置され、後部フレーム体Aの平面形状が二等辺三角形となっている(図3参照)。
【0050】
なお、後部及び前部両フレーム体A,Bの各構成要素として、図示の四角パイプ以外に丸パイプやC形枠材等を用いてもよい。あるいは、部位に応じてこれらを使い分けてもよい。
【0051】
変更部分である前部フレーム体Bは、図2に示すように第1及び第2両前部フレーム体B1,B2のうちから選択される。
【0052】
この両前部フレーム体B1,B2は、適用対象となる二種類(標準型と後方小旋回型)のキャビンに応じて、水平部分である左右のルーフメンバー24,25及び前下枠27,28の前後方向寸法が異なり(図2中のX,Yは例として右ルーフメンバー25の前後方向寸法を示す)、この各水平部分を結合部として後部フレーム体Aに溶接等により結合・一体化される。
【0053】
これにより、図3,4に示すように、標準型の場合は第1前部フレーム体B1が選択されて相対的に大きな前後方向寸法L1を持ったキャビンフレーム21、後方小旋回型の場合は第2前部フレーム体B2が選択されて小さな前後方向寸法L2を持ったキャビンフレーム21がそれぞれ構成され、これに図12のドア5や外装パネル、窓ガラス等の付属材が取付けられてキャビンが構成される。
【0054】
このように、オペレータの居住部分となる後部フレーム体Aについて機械の転倒時に居住空間を確保するのに十分な強度・剛性を持った部分として各機種間で共用し、前部フレーム体Bを機種(キャビンの前後方向寸法)に応じて入れ替えるため、共用される両機種でオペレータ保護の要求に確実に応えることができる。
【0055】
ここで、共用部分である後部フレーム体Aを、門形構造体として構成しているため、転倒時に左側面部に加えられる側方荷重(図3中に二重線矢印で示す)を後部フレーム体Aで集中的に受け、同フレーム体A全体が変形する。
【0056】
この場合、側方荷重が直接作用する出入口側にセンターピラー31を配置しているため、荷重を後部フレーム体Aに確実に伝え、変形抑制作用を有効に発揮させることができる。
【0057】
しかも、センターピラー31を含む平面視三角形であるため、荷重の伝達性が良くて各要素の強度を最大限に生かし、全体として高い荷重支持性能(とくに耐ねじれ強度)を得ることができる。
【0058】
加えて、平面形状が二等辺三角形であるため、耐ねじれ強度が三角形のうちでも最大となって最も変形し難くなる。
【0059】
この第1実施形態の後部フレーム体Aの荷重支持性能に関して、図3中に二重線矢印で示す側方荷重を受けた場合の変形量を解析により求めた結果を図5に示す。
【0060】
同図は、後部フレーム体Aの変形状態を後から見た場合を示し、同フレーム体Aの各構成要素(センターピラー31及び左右のリアピラー29,30)が均等に変形する一方で、同フレーム体Aの構成要素でない前部フレーム体Bの左右のフロントピラー22,23が殆ど変形しないこと、すなわち、荷重を後部フレーム体Aで集中的に受けること、及び同フレーム体Aの各構成要素に荷重が伝達されて同フレーム体A全体が一体として変形することがわかる。図中、Oはキャビン内のオペレータを示す。
【0061】
また、このキャビンフレーム構成によると、
i) 後部フレーム体Aについて、最小限の構成要素で、居住空間を確保するのに必要な強度・剛性を得ることができる。
【0062】
ii) 前部フレーム体Bも高強度を要求されないことからその構成要素の量が少なく、かつ、断面サイズが小さくてすむ。
【0063】
この二点により、両フレーム体A,Bをいずれも軽くし、キャビン全体の軽量化の要請にも応えることができる。
【0064】
さらに、前部フレーム体B(B1,B2)の構成要素が最小限に少なくてすみ、その断面サイズも後部フレーム体Aのそれよりも小さくてよいため、作業時に必要な前方視界及び側方視界を最大限に広げることができる。図3において、キャビン内のオペレータOからの視界となる領域に斜線を付して示している。
【0065】
他の実施形態
以下の実施形態については、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0066】
図6に示す第2実施形態においては、第1実施形態と基本的に同じフレーム構成をとりながら、後部フレーム体Aを構成する連結部材として、各ピラー29〜31の各上端間に跨って三角形の板材38を一体状態で設けたフレーム構成をとっている。
【0067】
この構成によると、後部フレーム体Aが第1実施形態の場合よりはやや重くなるが、同フレーム体Aの一体強度を高めることが可能となる。また、第1実施形態のように複数の枠材35〜37を用いる場合と比較して、連結部材が一つでよいため、組立が容易となる。
【0068】
図7,8に示す第3及び第4両実施形態においては、後部フレーム体Aを構成する右リアピラー30の前後方向位置が第1実施形態の場合と異なる。すなわち、右リアピラー30を、第3実施形態の場合はセンターピラー31と同じ前後方向位置(キャビン前後方向のほぼ中央部)に、第4実施形態においては左リアピラー29と同じ前後方向位置にそれぞれ配置している。
【0069】
この構成によっても、第1実施形態に近い荷重支持性能を得ることができる。
【0070】
図9,10には、第1実施形態に対して前部フレーム体Bの骨組構造を変えた二例としての第5及び第6実施形態を示す。
【0071】
第5実施形態では第1実施形態の右フロントピラー23を、また第6実施形態では同左フロントピラー22をそれぞれ省略する一方、下側フロントクロスメンバー26と平行に上側フロントクロスメンバー39を追加した例を示す。
【0072】
このように、前部フレーム体Bは高強度・高剛性を要求されないため、構成要素の配置パターンを、視界の拡充や軽量化等の観点で広い選択肢から選択することが可能となる。
【0073】
次に、図11に示す第7実施形態について説明する。
【0074】
第1実施形態では、標準型に適用される第1前部フレーム体B1と、後方小旋回型に適用される第2前部フレーム体B2を別々に製作し、機種に応じて使い分ける構成をとったのに対し、第7実施形態においては、前部フレーム体Bについても両機種に共用される共通部分とし、後部フレーム体Aに対する結合時に機種に応じて前後方向寸法を調整する構成をとっている。
【0075】
すなわち、前部フレーム体Bの水平部分である左右のルーフメンバー24,25及び左右の前下枠27,28の後端にそれぞれ後向きに水平に延びる前側継手部40…を設ける一方、後部フレーム体Aの前面部(センターピラー31及び右リアピラー30の上下両端部前面)に前向きに水平に突出する後側継手部41…を設けている。
【0076】
この前側及び後側両継手部40…,41…は、両フレーム体A,Bの構成要素と同じ四角パイプ状に形成し、これらを雄雌嵌合状態で固定することにより、両フレーム体A,Bを結合する。
【0077】
このとき、両継手部40…,41…の嵌め合い代(重なり代)を調整することにより、キャビンフレーム21全体の前後方向寸法を機種に応じた大きさに設定することができる。
【0078】
この構成によると、後部フレーム体Aだけでなく前部フレーム体Bをも共用することができるため、製作コストをさらに安くすることができる。
【0079】
なお、継手部40…,41…は、四角パイプ状に限らず、丸パイプ状としてもよい。あるいは、一方を四角パイプ状または丸パイプ状とし、他方をこれに嵌まり込む四角または丸の棒状や板状に形成してもよい。また、両者を板状として重なり状態で結合する構成をとってもよい。
【0080】
ところで、上記実施形態では、センターピラー31を左側に配置したが、出入口が右側に形成される場合にはセンターピラー31も右側に配置するのが望ましい。
【0081】
また、上記実施形態では、後部フレーム体Aを平面視三角形の門形構造体として構成したが、たとえばピラーを追加することによって平面視四角形その他の門形構造体として構成してもよい。あるいは、同フレーム体Aの上面部のみを平面視四角形その他に形成してもよい。
【0082】
さらに、上記実施形態では標準型と後方小旋回型の二機種に適用する場合について説明したが、これらに超小旋回型を加えた三種、またはそれ以上の機種に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図2】同分解斜視図である。
【図3】同平面図である。
【図4】同側面図である。
【図5】第1実施形態のフレーム構成において側方荷重による変形状態を後から見た図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図10】本発明の第6実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図11】本発明の第7実施形態にかかるキャビンフレームを示す分解斜視図である。
【図12】本発明が適用される油圧ショベルの概略側面図である。
【図13】同平面図である。
【図14】従来のキャビンフレームを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
21 キャビンフレーム
A 後部フレーム体
29,30 後部フレーム体を構成する左右のリアピラー
31 同センターピラー
32 同左側の下枠
33 同後下枠
34 同下側クロスメンバー
35,36,37 連結部材としての枠材
B 前部フレーム体
22,23 前部フレーム体を構成する左右のフロントピラー
24,25 同左右のルーフメンバー
26 同下側フロントクロスメンバー
27,28 同左右の前下枠
38 後部フレーム体の連結部材としての三角形の板材
40 前部フレーム体の継手部
41 後部フレーム体の継手部
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械のキャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の好適例である油圧ショベルを例にとって従来の技術を説明する。
【0003】
油圧ショベルは、図12,13に示すようにクローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に垂直軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体2と、この上部旋回体2に装着された作業アタッチメント3とによって構成され、上部旋回体2にキャビン4が設けられる。
【0004】
ここで、一般的には、上部旋回体2の右側(キャビン4内に着座したオペレータから見た右側。以下にいう左右及び前後の方向性について同じ)に作業アタッチメント3、左側にキャビン4がそれぞれ設けられ、キャビン4の左側面にドア5によって開閉される出入口6が設けられる。
【0005】
このキャビン4として、骨組となるキャビンフレームに各種の付属材(ドア5や外装パネル、窓ガラス等)が取付けられて構成され、主にキャビンフレームで必要なキャビン強度を確保するフレーム式のものが公知である。
【0006】
このフレーム式キャビンにおけるキャビンフレームの公知例を図14に示す。
【0007】
このキャビンフレーム7は、前部左右両側に立設されたフロントピラー8,9と、後部左右両側に立設されたリアピラー10,11と、左側のフロント、リア両ピラー8,10間のほぼ中央部に立設されたセンターピラー12と、左側のフロント、リア両ピラー8,10の上端間に架け渡された左ルーフメンバー13と、右側のフロント、リア両ピラー9,11の上端間に架け渡された右ルーフメンバー14と、左右のフロントピラー8,9の上端間に架け渡された上フロントクロスメンバー15と、同下端間に架け渡された下フロントクロスメンバー16と、左右のリアピラー10,11の上端間に架け渡された上リアクロスメンバー17と、同下端間に架け渡された下リアクロスメンバー18とによって構成されている。
【0008】
これら各構成要素の接合部分は溶接によって一体化される。
【0009】
また、左フロント、センター両ピラー8,12と左ルーフメンバー13とによって図12中の出入口6が形成される。
【0010】
上記のように、公知のキャビンフレーム7においては、左右のフロントピラー8,9と上下のフロントクロスメンバー15,16で前面側の門形構造体、左右のリアピラー10,11と上下のリアクロスメンバー17,18で後面側の門形構造体をそれぞれ構成し、この前後の門形構造体を左右のルーフメンバー13,14でつないだ構成となっている。
【0011】
このフレーム構成では、キャビンに作用する荷重が前後の門形構造体に伝えられてフレーム全体に分散され、すべての構成要素で均等に受けることになる。
【0012】
従って、全構成要素に均一な強度・剛性が求められる。
【0013】
一方、油圧ショベルには、上部旋回体2の形式として、たとえば旋回時に後側面が車幅外にはみ出る標準型と、後側面が車幅外に出ない後方小旋回型と、後側面だけでなくアタッチメント3も最起立状態で車幅外に出ない超小旋回型の三通りがある。
【0014】
この三つの機種は、上部旋回体2のサイズ(前後方向寸法)が異なるため、これに搭載されるキャビン4も各タイプで前後方向寸法が異なる。
【0015】
この場合、タイプごとに前後方向寸法が異なるキャビンフレーム7を設計し組立てるのでは、製作コストが高くなる。
【0016】
そこで、キャビンフレーム7の構成要素の一部を機種間で共用し、残りの要素を機種ごとに取り替える技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−96615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、特許文献1に記載された公知技術によると、旋回時にキャビンの一部が車幅外にはみ出ないという観点のみで、キャビンフレームの構成要素の一部を入れ替える構成をとっているため、機種によってキャビンフレーム7の強度・剛性に差が生じる。
【0018】
つまり、機械の転倒時(横転時)にオペレータを保護する観点から、オペレータの居住空間を確保するのに十分な強度・剛性を保つという目的が欠落しており、機種によってはオペレータの居住部分である後部のフレーム強度・剛性が低くなって、転倒時のオペレータ保護が十分図れなくなるおそれがあった。
【0019】
そこで本発明は、複数の機種でキャビンフレームの一部を共用する方式をとりながら、各機種を通じて機械転倒時のオペレータ保護という要求に確実に応えることができる建設機械のキャビンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の発明は、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った後部フレーム体と、この後部フレーム体の前方に配置される前部フレーム体とを備え、上記後部フレーム体を複数の機種間で共用される共通部分、上記前部フレーム体を複数の機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分として、これらが結合されることにより、骨組となるキャビンフレームが構成されたものである。
【0021】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、後部フレーム体の構成要素として、少なくとも、キャビンの左右片側において前後方向中間部に配置されるセンターピラーと、このセンターピラーよりも後方で左右両側に配置される左右のリアピラーと、この各ピラーの上端同士を連結する連結部材とを備え、この各構成要素により、外郭形状が平面視三角形の門形構造体である後部フレーム体が構成されたものである。
【0022】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、後部フレーム体の連結部材として、センターピラー及び左右両リアピラーの各上端間に枠材がそれぞれ一体状態で架け渡されたものである。
【0023】
請求項4の発明は、請求項2の構成において、後部フレーム体の連結部材として、センターピラー及び左右両リアピラーの各上端間に跨って三角形の板材が一体状態で設けられたものである。
【0024】
請求項5の発明は、請求項2乃至4のいずれかの構成において、後部フレーム体のセンターピラーが、左右両側のうちキャビン出入口側に配置されたものである。
【0025】
請求項6の発明は、請求項2乃至5のいずれかの構成において、後部フレーム体の平面形状が非直角三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたものである。
【0026】
請求項7の発明は、請求項6の構成において、後部フレーム体の平面形状が二等辺三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたものである。
【0027】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかの構成において、後部フレーム体の前面側、及び前部フレーム体の後面側にそれぞれ水平な継手部が設けられ、この継手部同士が重なり合い、かつ、その重なり代が調整可能な状態で結合されてキャビンフレームが構成されたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、オペレータの居住部分であるキャビンフレームの後部(後部フレーム体)について機械の転倒時に居住空間を確保するのに十分な強度を持った部分として各機種間で共用し、前部(前部フレーム体)を機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分とするため、共用される全機種を通じてオペレータ保護の要求に確実に応えることができる。
【0029】
この場合、請求項2の発明によると、共用部分である後部フレーム体を平面視三角形(左右非対称)の門形構造体として構成しているため、後部フレーム体が高強度・高剛性となって高い荷重支持性能を発揮し、とくに耐ねじれ荷重の点ですぐれたものとなる。
【0030】
つまり、最小限の構成要素で、居住空間を確保するのに必要な強度を得ることができる。このため、後部フレーム体を軽くし、キャビンの軽量化の要請にも応えることができる。
【0031】
また、機械転倒時にキャビンフレームに加えられる側方荷重を門形構造の後部フレーム体で集中的に受けることが可能となるため、前部フレーム体は相対的に低強度とすることができる。これにより前部フレーム体の構成要素の量を少なくし、かつ、その断面サイズを小さくすることが可能となる。
【0032】
これにより、転倒時のオペレータ保護という基本目的を達成しながら、前方視界を広げ、かつ、一層の軽量化を実現することができる。
【0033】
請求項3の発明によると、後部フレーム体の連結部材として枠材を用いているため、後部フレーム体全体を軽くでき、キャビンの軽量化の点でとくに有利となる。
【0034】
これに対し、請求項4の発明によると、後部フレーム体の連結部材として三角形の板材を用いているため、後部フレーム体がやや重くなるが、後部フレーム体の一体強度を高めることができるとともに、組立が容易となる。
【0035】
請求項5の発明によると、出入口側にセンターピラーを配置したことにより、転倒時の側方荷重を後部フレーム体に確実に伝え、変形抑制作用を有効に発揮させることができる。
【0036】
請求項6,7の発明によると、後部フレーム体の平面形状を非直角三角形としたから、直角三角形の場合と比較して耐ねじれ強度・剛性を高め、変形抑制効果が高いものとなる。
【0037】
とくに、平面形状を二等辺三角形とした請求項7の発明によると、耐ねじれ強度・剛性が三角形のうちでも最大となって後部フレーム体が最も変形し難くなる。このため、オペレータ保護の目的をより確実に達成することができる。
【0038】
一方、請求項8の発明によると、継手部同士の重なり代を調整することによってキャビンフレームの前後方向寸法を変更することができる。つまり、後部フレーム体だけでなく前部フレーム体をも共用することが可能となる。このため、製作コストをさらに安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施形態を図1〜図11によって説明する。
【0040】
以下の実施形態では、フレーム式のキャビンにおいて、キャビンフレームを二つの機種(たとえば標準型と後方小旋回型)に適用する場合を例にとっている。
【0041】
各実施形態におけるキャビンフレーム21は、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度・剛性を持った後部フレーム体Aと、この後部フレーム体Aの前方に配置される前部フレーム体Bとを備え、後部フレーム体Aを両機種に共用される共通部分、前部フレーム体Bを機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分として、これらを結合することによって構成される。
【0042】
なお、以下の実施形態において、たとえば図2〜4に示すように、前部フレームBについて標準型の場合と後方小旋回型の場合とに分けて表示する場合には、標準型について符号B1、後方小旋回型について符合B2を付している。
【0043】
第1実施形態(図1〜図5参照)
第1実施形態のキャビンフレーム21においては、上端部が後向きに湾曲した左右のフロントピラー22,23と、このフロントピラー22,23の上端から後向きに水平に延びる左右のルーフメンバー24,25と、両フロントピラー22,23の下端部間に架け渡された下側フロントクロスメンバー26と、両フロントピラー22,23の下端部後面に水平に取付けられた左右の前下枠27,28とによって変更部分である前部フレーム体B (B1,B2)が構成されている。
【0044】
一方、共通部分である後部フレーム体Aは、左右のリアピラー29,30と、左リアピラー29と前部フレーム体Bの左フロントピラー22との間に位置するセンターピラー31と、このセンターピラー31と左リアピラー29の下端部間に架け渡された左側の後下枠32と、右リアピラー30の後面に水平に取付けられた右側の後下枠33と、この後下枠33の後端と左リアピラー29の下端部間に架け渡された下側リアクロスメンバー34とを具備している。
【0045】
なお、この後部フレーム体Aのセンターピラー31と、前部フレーム体Bの左フロントピラー22と左ルーフメンバー24とによって、図12中に示す出入口6が形成される。
【0046】
また、センターピラー31は、左側の前後方向真ん中に配置してもよいし、真ん中よりも前後いずれかにずれた位置に配置してもよい。
【0047】
センターピラー31と左右のリアピラー29,30は、平面視で三角形の各頂点に位置する状態で配置され、これら各ピラー29〜31の上端間に三角形配置で連結部材としての枠材35,36,37が一体に架け渡されている。
【0048】
こうして、後部フレーム体Aが、外郭形状が平面視で三角形となる左右非対称の門形構造体として構成されている。
【0049】
ここで、右リアピラー30は、センターピラー31と左リアピラー29との間の前後方向中央(真ん中)の位置で右側に配置され、後部フレーム体Aの平面形状が二等辺三角形となっている(図3参照)。
【0050】
なお、後部及び前部両フレーム体A,Bの各構成要素として、図示の四角パイプ以外に丸パイプやC形枠材等を用いてもよい。あるいは、部位に応じてこれらを使い分けてもよい。
【0051】
変更部分である前部フレーム体Bは、図2に示すように第1及び第2両前部フレーム体B1,B2のうちから選択される。
【0052】
この両前部フレーム体B1,B2は、適用対象となる二種類(標準型と後方小旋回型)のキャビンに応じて、水平部分である左右のルーフメンバー24,25及び前下枠27,28の前後方向寸法が異なり(図2中のX,Yは例として右ルーフメンバー25の前後方向寸法を示す)、この各水平部分を結合部として後部フレーム体Aに溶接等により結合・一体化される。
【0053】
これにより、図3,4に示すように、標準型の場合は第1前部フレーム体B1が選択されて相対的に大きな前後方向寸法L1を持ったキャビンフレーム21、後方小旋回型の場合は第2前部フレーム体B2が選択されて小さな前後方向寸法L2を持ったキャビンフレーム21がそれぞれ構成され、これに図12のドア5や外装パネル、窓ガラス等の付属材が取付けられてキャビンが構成される。
【0054】
このように、オペレータの居住部分となる後部フレーム体Aについて機械の転倒時に居住空間を確保するのに十分な強度・剛性を持った部分として各機種間で共用し、前部フレーム体Bを機種(キャビンの前後方向寸法)に応じて入れ替えるため、共用される両機種でオペレータ保護の要求に確実に応えることができる。
【0055】
ここで、共用部分である後部フレーム体Aを、門形構造体として構成しているため、転倒時に左側面部に加えられる側方荷重(図3中に二重線矢印で示す)を後部フレーム体Aで集中的に受け、同フレーム体A全体が変形する。
【0056】
この場合、側方荷重が直接作用する出入口側にセンターピラー31を配置しているため、荷重を後部フレーム体Aに確実に伝え、変形抑制作用を有効に発揮させることができる。
【0057】
しかも、センターピラー31を含む平面視三角形であるため、荷重の伝達性が良くて各要素の強度を最大限に生かし、全体として高い荷重支持性能(とくに耐ねじれ強度)を得ることができる。
【0058】
加えて、平面形状が二等辺三角形であるため、耐ねじれ強度が三角形のうちでも最大となって最も変形し難くなる。
【0059】
この第1実施形態の後部フレーム体Aの荷重支持性能に関して、図3中に二重線矢印で示す側方荷重を受けた場合の変形量を解析により求めた結果を図5に示す。
【0060】
同図は、後部フレーム体Aの変形状態を後から見た場合を示し、同フレーム体Aの各構成要素(センターピラー31及び左右のリアピラー29,30)が均等に変形する一方で、同フレーム体Aの構成要素でない前部フレーム体Bの左右のフロントピラー22,23が殆ど変形しないこと、すなわち、荷重を後部フレーム体Aで集中的に受けること、及び同フレーム体Aの各構成要素に荷重が伝達されて同フレーム体A全体が一体として変形することがわかる。図中、Oはキャビン内のオペレータを示す。
【0061】
また、このキャビンフレーム構成によると、
i) 後部フレーム体Aについて、最小限の構成要素で、居住空間を確保するのに必要な強度・剛性を得ることができる。
【0062】
ii) 前部フレーム体Bも高強度を要求されないことからその構成要素の量が少なく、かつ、断面サイズが小さくてすむ。
【0063】
この二点により、両フレーム体A,Bをいずれも軽くし、キャビン全体の軽量化の要請にも応えることができる。
【0064】
さらに、前部フレーム体B(B1,B2)の構成要素が最小限に少なくてすみ、その断面サイズも後部フレーム体Aのそれよりも小さくてよいため、作業時に必要な前方視界及び側方視界を最大限に広げることができる。図3において、キャビン内のオペレータOからの視界となる領域に斜線を付して示している。
【0065】
他の実施形態
以下の実施形態については、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0066】
図6に示す第2実施形態においては、第1実施形態と基本的に同じフレーム構成をとりながら、後部フレーム体Aを構成する連結部材として、各ピラー29〜31の各上端間に跨って三角形の板材38を一体状態で設けたフレーム構成をとっている。
【0067】
この構成によると、後部フレーム体Aが第1実施形態の場合よりはやや重くなるが、同フレーム体Aの一体強度を高めることが可能となる。また、第1実施形態のように複数の枠材35〜37を用いる場合と比較して、連結部材が一つでよいため、組立が容易となる。
【0068】
図7,8に示す第3及び第4両実施形態においては、後部フレーム体Aを構成する右リアピラー30の前後方向位置が第1実施形態の場合と異なる。すなわち、右リアピラー30を、第3実施形態の場合はセンターピラー31と同じ前後方向位置(キャビン前後方向のほぼ中央部)に、第4実施形態においては左リアピラー29と同じ前後方向位置にそれぞれ配置している。
【0069】
この構成によっても、第1実施形態に近い荷重支持性能を得ることができる。
【0070】
図9,10には、第1実施形態に対して前部フレーム体Bの骨組構造を変えた二例としての第5及び第6実施形態を示す。
【0071】
第5実施形態では第1実施形態の右フロントピラー23を、また第6実施形態では同左フロントピラー22をそれぞれ省略する一方、下側フロントクロスメンバー26と平行に上側フロントクロスメンバー39を追加した例を示す。
【0072】
このように、前部フレーム体Bは高強度・高剛性を要求されないため、構成要素の配置パターンを、視界の拡充や軽量化等の観点で広い選択肢から選択することが可能となる。
【0073】
次に、図11に示す第7実施形態について説明する。
【0074】
第1実施形態では、標準型に適用される第1前部フレーム体B1と、後方小旋回型に適用される第2前部フレーム体B2を別々に製作し、機種に応じて使い分ける構成をとったのに対し、第7実施形態においては、前部フレーム体Bについても両機種に共用される共通部分とし、後部フレーム体Aに対する結合時に機種に応じて前後方向寸法を調整する構成をとっている。
【0075】
すなわち、前部フレーム体Bの水平部分である左右のルーフメンバー24,25及び左右の前下枠27,28の後端にそれぞれ後向きに水平に延びる前側継手部40…を設ける一方、後部フレーム体Aの前面部(センターピラー31及び右リアピラー30の上下両端部前面)に前向きに水平に突出する後側継手部41…を設けている。
【0076】
この前側及び後側両継手部40…,41…は、両フレーム体A,Bの構成要素と同じ四角パイプ状に形成し、これらを雄雌嵌合状態で固定することにより、両フレーム体A,Bを結合する。
【0077】
このとき、両継手部40…,41…の嵌め合い代(重なり代)を調整することにより、キャビンフレーム21全体の前後方向寸法を機種に応じた大きさに設定することができる。
【0078】
この構成によると、後部フレーム体Aだけでなく前部フレーム体Bをも共用することができるため、製作コストをさらに安くすることができる。
【0079】
なお、継手部40…,41…は、四角パイプ状に限らず、丸パイプ状としてもよい。あるいは、一方を四角パイプ状または丸パイプ状とし、他方をこれに嵌まり込む四角または丸の棒状や板状に形成してもよい。また、両者を板状として重なり状態で結合する構成をとってもよい。
【0080】
ところで、上記実施形態では、センターピラー31を左側に配置したが、出入口が右側に形成される場合にはセンターピラー31も右側に配置するのが望ましい。
【0081】
また、上記実施形態では、後部フレーム体Aを平面視三角形の門形構造体として構成したが、たとえばピラーを追加することによって平面視四角形その他の門形構造体として構成してもよい。あるいは、同フレーム体Aの上面部のみを平面視四角形その他に形成してもよい。
【0082】
さらに、上記実施形態では標準型と後方小旋回型の二機種に適用する場合について説明したが、これらに超小旋回型を加えた三種、またはそれ以上の機種に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図2】同分解斜視図である。
【図3】同平面図である。
【図4】同側面図である。
【図5】第1実施形態のフレーム構成において側方荷重による変形状態を後から見た図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図10】本発明の第6実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図11】本発明の第7実施形態にかかるキャビンフレームを示す分解斜視図である。
【図12】本発明が適用される油圧ショベルの概略側面図である。
【図13】同平面図である。
【図14】従来のキャビンフレームを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
21 キャビンフレーム
A 後部フレーム体
29,30 後部フレーム体を構成する左右のリアピラー
31 同センターピラー
32 同左側の下枠
33 同後下枠
34 同下側クロスメンバー
35,36,37 連結部材としての枠材
B 前部フレーム体
22,23 前部フレーム体を構成する左右のフロントピラー
24,25 同左右のルーフメンバー
26 同下側フロントクロスメンバー
27,28 同左右の前下枠
38 後部フレーム体の連結部材としての三角形の板材
40 前部フレーム体の継手部
41 後部フレーム体の継手部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った後部フレーム体と、この後部フレーム体の前方に配置される前部フレーム体とを備え、上記後部フレーム体を複数の機種間で共用される共通部分、上記前部フレーム体を複数の機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分として、これらが結合されることにより、骨組となるキャビンフレームが構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の構成要素として、少なくとも、キャビンの左右片側において前後方向中間部に配置されるセンターピラーと、このセンターピラーよりも後方で左右両側に配置される左右のリアピラーと、この各ピラーの上端同士を連結する連結部材とを備え、この各構成要素により、外郭形状が平面視三角形の門形構造体である後部フレーム体が構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の連結部材として、センターピラー及び左右両リアピラーの各上端間に枠材がそれぞれ一体状態で架け渡されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項4】
請求項2記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の連結部材として、センターピラー及び左右両リアピラーの各上端間に跨って三角形の板材が一体状態で設けられたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項5】
後部フレーム体のセンターピラーが、左右両側のうちキャビン出入口側に配置されたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の建設機械のキャビン。
【請求項6】
後部フレーム体の平面形状が非直角三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の建設機械のキャビン。
【請求項7】
後部フレーム体の平面形状が二等辺三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたことを特徴とする請求項6記載の建設機械のキャビン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の前面側、及び前部フレーム体の後面側にそれぞれ水平な継手部が設けられ、この継手部同士が重なり合い、かつ、その重なり代が調整可能な状態で結合されてキャビンフレームが構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項1】
機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った後部フレーム体と、この後部フレーム体の前方に配置される前部フレーム体とを備え、上記後部フレーム体を複数の機種間で共用される共通部分、上記前部フレーム体を複数の機種に応じて前後方向寸法が変更される変更部分として、これらが結合されることにより、骨組となるキャビンフレームが構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の構成要素として、少なくとも、キャビンの左右片側において前後方向中間部に配置されるセンターピラーと、このセンターピラーよりも後方で左右両側に配置される左右のリアピラーと、この各ピラーの上端同士を連結する連結部材とを備え、この各構成要素により、外郭形状が平面視三角形の門形構造体である後部フレーム体が構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の連結部材として、センターピラー及び左右両リアピラーの各上端間に枠材がそれぞれ一体状態で架け渡されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項4】
請求項2記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の連結部材として、センターピラー及び左右両リアピラーの各上端間に跨って三角形の板材が一体状態で設けられたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項5】
後部フレーム体のセンターピラーが、左右両側のうちキャビン出入口側に配置されたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の建設機械のキャビン。
【請求項6】
後部フレーム体の平面形状が非直角三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の建設機械のキャビン。
【請求項7】
後部フレーム体の平面形状が二等辺三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたことを特徴とする請求項6記載の建設機械のキャビン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の前面側、及び前部フレーム体の後面側にそれぞれ水平な継手部が設けられ、この継手部同士が重なり合い、かつ、その重なり代が調整可能な状態で結合されてキャビンフレームが構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−35898(P2006−35898A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214595(P2004−214595)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】
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