説明

建設現場における情報監視システム

【課題】情報伝送系統の堅牢化を図るものとするとともに、無線局ノードの電池寿命の長期化を図る。
【解決手段】多数の無線子局ノード群3,3…と、無線子局ノード群3,3…の少なくとも1つと相互に無線通信可能とされる無線親局ノード2とによって無線通信ネットワーク8を構築する。前記無線子局ノード3は、自律的に隣接する無線子局ノードを検出し、無線通信可能なネットワーク8を構築する自己組織化機能と、受信側伝送経路を除く2以上の発信側伝送経路から任意に情報伝送経路を選択する情報経路選択機能とを備え、かつ無線通信ネットワーク8を介して最終的に無線親局ノード2に情報を伝送する情報伝送機能と、少なくとも2つのマイクロ波ドップラーセンサ8A、8Bを備えることにより、移動体10の検出とともに、検出順序により移動体の移動方向を検知する移動体の位置・方向検知機能とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場において、機器障害があっても安定的に無線通信ネットワークにより情報が管理場所まで確実に伝送できるようにするとともに、移動無線局を携帯する職員、作業員や移動無線局を備えた車輌等の移動体の位置を把握・監視するための情報監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばトンネル施工現場では、管理室内の職員と坑内の職員との間の連絡、および職員及び作業員同士の連絡のための音声/緊急信号通信設備や、坑内及び地山中に設置された各種センサ類からのセンサー信号や、シールド機、トンネルボーリングマシン、自由断面掘削機などの掘削機、モルタル又はコンクリート吹付機、ドリルジャンボ等の施工機械などから送られる各種計測・運転情報などの施工データなどを管理室に伝送するとともに、自動運転の場合は双方向通信により各種施工機械に対して機械制御信号を伝送するデータ信号類の通信設備などが装備されている。
【0003】
また、建設現場においては、作業エリア内を移動する職員、作業員や車輌などの位置を常時監視し、把握することが作業上及び安全対策上、非常に重要となっている。
【0004】
以上のような状況の下、近年は無線通信システムにより、音声通信信号、計測信号、運転状況信号、機械遠隔制御信号などの情報を伝送するとともに、各種移動体の位置情報を伝送する試みが成されている。
【0005】
例えば下記特許文献1では、図9に示されるように、情報管理エリア内の各所に、それぞれ情報中継局51,51…を配置し、これら情報中継局群51,51…によって双方向に情報伝送可能な通信ネットワークを構成するとともに、少なくとも情報中継局51、51…の内の1つと双方向に情報伝送可能とされるとともに、情報の主たる監視を行う主局50を配置し、前記情報中継局51,51…の内の少なくとも1つと通信可能とされるとともに、情報記憶部を備え、かつ前記情報中継局51,51…および主局50と共に通信ネットワークを構成する情報中継支局52,52…を配置し、かつ前記情報中継支局52,52…の内の少なくとも1つと通信可能とされるとともに、少なくとも自局の位置情報が与えられた情報親局53,53…を配置し、移動無線局54,54…は前記情報親局53,53…との無線通信機能を備え、適宜の時間間隔で自己のID情報を前記情報親局53に送信するとともに、該情報親局53は移動無線局のID情報と共に、自局の位置情報を前記情報中継支局52,52…に送信し、該情報中継支局52,52…では前記移動無線局54,54…のID情報および情報親局53,53…の位置情報を情報記憶部に蓄積し、かつ前記情報親局53,53…および移動無線局54,54…の内の任意の局は、情報入力部及び/又は出力部を備え、前記情報入力部から入力された各種メディア情報が前記情報中継支局52,52…に送信されるとともに、該情報中継支局52,52…の情報記憶部に蓄積され、前記情報中継支局52,52…は、主局50からの呼出信号に応じて、情報記憶部内に蓄積された前記移動無線局54,54…のID情報、情報親局53,53…の位置情報および各種メディア情報を前記通信ネットワークを介して主局50に送信するようにした総合情報管理システムが提案されている。
【0006】
また、下記特許文献2では、図10に示されるように、探索エリア内の各所に、それぞれ固定中継局61,61…を配置し、これら固定中継局群61,61…によって双方向に情報伝送可能な通信ネットワークを構成するとともに、少なくとも固定中継局61,61…の内の1つと双方向に情報伝送可能な移動体63,63…の監視を行う固定主局60を配置し、前記各固定中継局61,61…の電波交信ゾーン内に、前記固定中継局61,61…と無線通信可能とされるとともに、少なくとも自局の位置情報が与えられた固定中継支局62,62…を配置し、かつ移動無線局63,73…は前記固定中継支局61,61…と双方向に無線通信可能とされ、前記移動無線局63,63…は、固定主局60から固定中継局群61,61…および固定中継支局62,62…を介して送られた呼出信号に応じて、固定中継支局62,62…に自己のID情報を送信し、前記固定中継支局62,62…は移動無線局63,63…のID情報と共に自局の位置情報を前記通信ネットワークを介して固定主局60に送信するようにした移動体の監視システムが提案されている。
【特許文献1】特開2003−318919号公報
【特許文献2】特開2003−199138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1、2に係る情報伝送系統は予めルートが設定されているものであるため、ある中継無線局が故障を起こすと、それ以降の中継無線局には一切情報伝送が行えなくなり、通信系統の脆弱性が問題となっていた。例えば、上記特許文献1では、ある無線情報中継局が故障すると、それよりも下の階位に位置する無線情報中継支局群及び無線情報親局群間での情報伝送が完全に遮断されてしまうことになるとともに、故障した無線情報中継局よりも下流側に位置する無線情報中継局群との間の情報伝送が完全に遮断されてしまうことになる。
【0008】
また、移動体に備えられる移動無線局に関し、特許文献1の場合は、適宜の時間間隔で自己のID情報を通信可能な無線情報親局に送信しなければならず、消費電力負担が大きく、電池寿命が短いなどの問題もあった。また、特許文献2の場合も、移動無線局は固定主局から固定中継局群及び固定中継支局を介して送られた呼出信号に応じて、固定中継支局に自己のID情報を送信するようにしているため、同様に電力の負担が大きいなどの問題があった。さらには、移動無線局の位置は把握できたとしても、移動体を検知した時点では、移動体の移動方向までは把握できないなどの問題があった。
【0009】
さらに、各種情報の通信が基本的に情報発信地点から情報到達地点との2箇所間での通信を前提としているため、通信系統のシステム外にいる場合には、当該通信システムの情報を取得することは出来ず、自由に情報交換ができる環境にはなかった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、情報伝送系統の堅牢化を図り、特定の無線中継局に故障が生じても、情報伝送系統を常時維持し得るものとすることにある。
【0011】
また、移動無線局及び移動無線局と直に交信を行う無線局の消費電力負担を軽減し、電池寿命の長期化を図るとともに、移動体検知時に移動体の移動方向までも把握可能とすることにある。
【0012】
更には、情報の一元化及び共有化を図ることにより、施工の効率化を進めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、建設現場の監視エリアを対象として点在配置され、無線によって電波通信可能距離内である条件の下で相互に通信が可能とされる多数の無線子局ノード群と、無線子局ノード群の少なくとも1つと相互に無線通信可能とされる無線親局ノードとによって無線通信ネットワークが構築されるとともに、前記無線子局ノード群の交信ゾーン内に配置され、無線子局ノードと相互に無線通信可能とされる固定情報端末と、前記無線子局ノード群の交信ゾーン内において移動体に備えられ、無線子局ノードと相互に無線通信可能とされる移動情報端末とから構成された建設現場における情報監視システムであって、
前記無線子局ノードは、自律的に隣接する無線子局ノードを検出し、無線通信可能なネットワークを構築する自己組織化機能と、隣接する少なくとも3以上の無線子局ノードと相互通信可能に配置され、受信側伝送経路を除く2以上の発信側伝送経路から任意に情報伝送経路を選択する情報経路選択機能とを備え、かつ固定情報端末からの情報収集を行い、無線通信ネットワークを介して最終的に無線親局ノードに情報を伝送する情報伝送機能と、少なくとも2つのマイクロ波ドップラーセンサを備えることにより、前記移動体の検出とともに、検出順序により移動体の移動方向を検知する移動体の位置・方向検知機能とを備え、
前記無線親局ノードは、収集した情報の記憶機能と、接続されたモニタ装置及び/又は位置表示盤への情報表示機能を備え、
前記固定情報端末は、入力インターフェースによって各種情報の入力機能を備え、
前記移動情報端末は、無線子局ノードからのトリガー信号に呼応して、自己IDを送信するID情報送信機能を備えていることを特徴とする建設現場における情報監視システムが提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明においては、無線子局ノードは、自律的に隣接する無線子局ノードを検出し、無線通信可能なネットワークを構築する自己組織化機能と、隣接する少なくとも3以上の無線子局ノードと相互通信可能に配置され、受信側伝送経路を除く2以上の発信側伝送経路から任意に情報伝送経路を選択する情報経路選択機能とを備える。従って、無線子局ノードを点在配置した上で、電源を投入すると、各無線子局ノードは隣接する無線子局ノードを検出し、マルチポップネットワークを自律的に構築するようになるとともに、新たな無線子局ノードの追加や削除に対して柔軟に対応することが可能となる(自己組織化機能)。また、ある特定の無線子局ノードに障害が発生したり、電波環境の変化で無線が途切れたりした場合は、迂回路的に伝送経路の変更を行うためネットワークの堅牢性を保つことが可能となる(情報経路選択機能)。
【0015】
また、少なくとも2つのマイクロ波ドップラーセンサを備えることにより、無線子局ノード及び移動情報端末の電池寿命の長期化を図るとともに、前記移動体の検出とともに、検出順序により移動体の移動方向を検知することが可能となる。すなわち、マイクロ波ドップラーセンサによって移動体を検知したならば、その際に無線子局ノードが移動情報端末に対してトリガー信号を発信するようにし、移動情報端末は、無線子局ノードからのトリガー信号の受信があった時だけ、自己IDを送信するようにすれば、電池消費を大幅に抑えることができ、電池寿命の長期化が図れるようになる。また、2つのマイクロ波ドップラーセンサを夫々、監視方向の向きを変えた状態でセッティングすれば、移動体の検出順序により移動方向を検知することが可能となる。
【0016】
前記無線子局ノード群を経由して無線親局に送られた情報は、無線親局ノードと接続されたモニタ装置及び/又は位置表示盤に表示することにより、各種計測情報や運転情報などの情報や移動体の位置などを監視することが可能となる。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記無線子局ノードは、中央処理装置と情報記憶装置とを有し、入出力インターフェースを介して、外部に情報を入出力可能とされる請求項1記載の建設現場における情報監視システムが提供される。
【0018】
上記請求項1記載の発明では、各無線子局ノードに対して、中央処理装置と中継した情報の記憶機能とを搭載し、入出力インターフェースを介して、外部に情報を入出力可能としたものである。従って、各無線子局ノードが情報を一元的に共有しあうことが可能となるため、どの無線子局ノードからでも所望の情報の取出しが可能となり、情報の一元化と共有により、施工の効率化を進めることが可能となる。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記無線親局ノードは、外部のネットワークインフラと接続するゲートウェイ機能を備えている請求項1,2いずれかに記載の建設現場における情報監視システムが提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明は、無線親局ノードが、外部のネットワークインフラと接続するゲートウェイ機能を備えるようにしたものである。従って、外部のネットワークインフラ、例えば広域無線通信ネットワーク、WiMAXブロードバンド、モバイルWiMAXなどの無線インフラストラクチャーを介して、遠隔地に設置したパソコンにより、建設現場の情報をリアルタイムに取得することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、情報伝送系統の堅牢化を図り、特定の無線中継局に故障が生じても、情報伝送系統を常時維持し得ることができる。また、移動無線局及び移動無線局と直に交信を行う無線局の消費電力負担を軽減し、電池寿命の長期化を図るとともに、移動体検知時に移動体の移動方向までも把握可能となる。更には、情報の一元化及び共有化を図ることにより、施工の効率化を進めることが可能となるなどの利点がもたらされるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明に係る情報監視システム1の概略図であり、図2はそのシステム系統図である。
【0023】
本情報監視システム1は、主としてトンネル施工現場、ダム建設現場、地下発電所などの建設現場を対象とし、これらの現場内において、管理室内の職員と坑内の職員との間の連絡、および職員及び作業員同士の連絡のための音声/緊急信号通信設備や、坑内及び地山中に設置された各種センサ類からのセンサー信号や、シールド機、トンネルボーリングマシン、自由断面掘削機などの掘削機、モルタル又はコンクリート吹付機、ドリルジャンボ等の施工機械などから送られる各種計測・運転情報などの施工データなどを管理室に伝送するとともに、自動運転の場合は双方向通信により各種施工機械に対して機械制御信号を伝送するデータ信号類の伝送システムと、職員、作業員や現場内を移動する車輌などの移動体の位置監視とを一元的に管理するためのシステムである。
【0024】
前記システムは、具体的には図1に示されるように、建設現場の監視エリアを対象として点在配置され、無線によって電波通信可能距離内である条件の下、相互に通信が可能とされる多数の無線子局ノード群3,3…と、無線子局ノード群3,3…の少なくとも1つと相互に無線通信可能とされる無線親局ノード2とによって無線通信ネットワーク8が構築されるとともに、前記無線子局ノード群3,3…の交信ゾーン内に配置され、無線子局ノード3と相互に無線通信可能とされる固定情報端末5,5…と、前記無線子局ノード群3,3…の交信ゾーン内において移動体に備えられ、無線子局ノード3と相互に無線通信可能とされる移動情報端末4,4…とから構成された情報監視システムである。
【0025】
以下、さらに具体的に詳述すると、
前記無線子局ノード3は、自律的に隣接する無線子局ノード3を検出し、無線通信可能なネットワークを構築する自己組織化機能と、隣接する少なくとも3以上の無線子局ノードと相互通信可能に配置され、受信側伝送経路を除く2以上の発信側伝送経路から任意に情報伝送経路を選択する情報経路選択機能とを備えている。また、固定情報端末5,5…からの情報収集を行い、無線通信ネットワーク8により最終的に無線親局ノード2に情報を伝送する情報伝送機能と、少なくとも2つのマイクロ波ドップラーセンサ8A、8Bを備えることにより、前記移動体の検出とともに、検出順序により移動体の移動方向を検知する移動体の位置・方向検知機能とを備えている。また、中央処理装置(CPU)と中継した情報の記憶装置とを備え、入出力インターフェースを介して、外部に情報を入出力可能とされる。
【0026】
装置構成は、図3に示されるように、固定情報端末5及び移動情報端末4から情報を受け取るための受信モデム3a、変調コンバータ3b、CPU+記憶装置部3c、制御I/F回路3dを介して無線子局3(又は無線親局ノード2)を双方向通信を行うための無線モデム3eと、DC電源3fと、マイクロ波ドップラーセンサ8とを備える。CPU+記憶装置部3cに対する入出力インターフェース9,9を持ち、外部に情報が入出力可能とされる。また、移動情報端末4に対して、自己IDを発信するタイミングを知らせるために、トリガー信号の発信を行うトリガー信号発信器13を備える。
【0027】
前記無線子局ノード3の無線周波数は2.4GHz帯の16chを使用し、規格はIEEE802.15.4とするのが望ましい。この場合の伝送距離は500m以下である。
【0028】
前記自己組織化機能とは、無線子局ノード3,3…を点在配置した上で、電源を投入すると、各無線子局ノード3,3…が自律的に隣接する無線子局ノード3,3…を検出し、自動的にマルチポップネットワークを構築するパーソナルエリアネットワーク構築機能と、新たな無線子局ノード3の追加や削除に対しても、自動的にネットワークへの参加とネットワークからの除外とを自動的に行うネットワークのメンバー変更機能である。
【0029】
前記パーソナルエリアネットワーク構築は、例えば下記の手順により行われる。
[無線親局ノード2によるネットワーク加入呼び掛けプロセス](図3参照)
(1-1)無線親局ノード2は、無線パーソナルエリアネットワーク構築機能により、電源投入後、利用可能な周波数チャンネルの中から予め肢体した複数チャンネルの電波強度を設置した環境下において自動測定する。
(1-2)空き周波数チャンネルと判断できるチャンネルを自動選択して、無線パーソナルエリアネットワークを開始する。
(1-3)無線親局ノード2は周波数チャンネルを決定後、無線パーソナルエリアネットワークを構築し、ネットワークの制御を開始する。
[無線子局ノード3のネットワークへの申請加入プロセス](図4参照)
(2-1)無線パーソナルエリアネットワーク周辺にある無線通信可能な無線子局ノード3は電源投入後、ネットワーク検索機能により、加入の可能な無線パーソナルエリアネットワークを自動的にチャンネルスキャンにより無線子局ノード3周辺の潜在的な無線親局ノード2を検索し、ビーコン要求を行う。
(2-2)無線子局ノード3が無線親局ノード2から送信されたビーコンを受信した場合、無線子局ノード3は無線親局ノード2の無線パーソナルエリアネットワークID、周波数チャンネル、加入受入れ機器能力などの情報を登録する。
(2-3)無線子局ノード3は、目的のチャンネル情報を得て、無線パーソナルエリアネットワークに加入することを接続要求コマンドで無線親局ノード2へ接続を要求する。
(2-4)無線親局ノード2は、無線子局ノード3の加入申請を許可すると、ネットワークアドレスを加入する無線子局ノード3へ発行する。新規加入した無線子局ノード3をネットワークメンバーとして取り扱い登録する。
(2-5)さらに無線親局ノード2は、無線子局ノード3への加入許可メッセージの送信に成功すると、新メンバーの加入を記憶する。
(2-6)無線子局ノード3は加入許可を受けてから、無線親局ノード2との状態を親子関係に変更して、ネットワークへの自動加入プロセスが完了する。
(2-7)無線親局ノード2も無線子局ノード3も既設の自立中継機能を開始し、無線パーソナルエリアネットワークを構成する。
【0030】
また、前記ネットワークのメンバー変更は、例えば下記手順により行われる(図5参照)。
[無線子局ノードの追加によるネットワークへの加入プロセス]
(3-1)無線子局ノード3を無線パーソナルエリアネットワークの無線親局ノード2又は無線パーソナルエリアネットワークに属する無線子局ノード3の少なくとも1台と無線通信が可能とされる場所に新規追加する。追加設置後、電源を投入して新規追加した無線子局ノード3kを立ち上げる。
(3-2)新規追加した無線子局ノード3kは、周辺にある加入可能な無線ネットワークを自律的に検索する。また、無線ネットワーク内の周辺にある既設無線子局ノード3も新規無線子局ノード3kを自律的に検索する。
(3-3)新規追加無線子局ノード3kは、相互検索により無線子局ノード3を発見すると直接または申請加入プロセスに従い、自律中継機能により、周辺にある無線子局ノード3と無線接続しあうことにより無線ネットワークを構成する。
(3-4)無線ネットワーク内のすべての無線子局ノード3は、自律中継機器として機能し、無線子局ノード群3、3…間を飛び交う情報を、各々の無線子局ノード3,3…が共有する。
【0031】
一方、前記情報経路選択機能とは、ある特定の無線子局ノード3に障害が発生したり、電波環境の変化で無線が途切れたりした場合は、迂回路的に伝送経路の変更を行う機能であり、ネットワークの堅牢性を保つことが可能となる。
【0032】
例えば、図6(A)に示されるように、無線子局ノード群A〜Gの中で、無線子局ノードAから太字矢印で示した伝送ルートで無線子局ノードGに情報が伝送されている状態時に、中間の無線子局ノードDに障害が発生した場合は、図6(B)に示されるように、無線子局ノードCは、無線子局ノードEに対して情報を伝送経路を変更し、情報が無線子局ノードGに伝送されるように維持する。
【0033】
このような情報経路選択機能を有するには、各無線子局ノード3,3…は、隣接する少なくとも3以上の無線子局ノードと相互通信可能に配置され、受信側伝送経路を除く2以上の発信側伝送経路が確保されている必要がある。例えば図7(A)に示される無線リンク図は、各無線子局ノード3をジグザグ状に配置することにより、三角網目状の無線リンクが形成されるようにした例であり、各無線子局ノード3、3…は、上り方向及び下り方向のそれぞれについて、発信側伝送経路として矢印で示された2つの伝送経路を保有する。また、図7(B)は無線子局ノード3,3…を格子配列として四角網目状の無線リンクが形成されるようにした例である。この例では、上り方向及び下り方向のそれぞれについて、発信側伝送経路として矢印で示された2つの伝送経路を保有するが、1つの伝送経路が上り方向と下り方向とで共有されていることになる。
【0034】
前記マイクロ波ドップラーセンサ8は、送信器と受信器とを備え、送信器から移動している対象物体に向けマイクロ波を発射し、反射してきたマイクロ波を受信器により受信し、信号制御部にて伝送波との周波数を比較し、対象物体の移動に比例して受信波の周波数がシフトする現象(ドップラー効果)を検出し、電圧などの信号を出力する検知器である。前記マイクロ波ドップラーセンサ8単体では、対象物体が接近しているか、或いは遠ざかっているかは検知可能であるが、移動方向までは検知することができない。そこで、図8に示されるように、2つのマイクロ波ドップラーセンサ8A、8Bをそれぞれ監視方向の向きを変えた状態でセッティングすれば(検知エリアA、検知エリアB)、移動体10を検出順序により移動方向を検知することが可能となる。方向認識パターンは、(1)検知エリアA、Bの順で図面右方向側への移動、(2)検知エリアB,Aの順で図面左方向側への移動、(3)検知エリアA,Aの順で図面左側から来た車両が中間帯で折返し、(4)検知エリアB、Bの順で図面右側から来た車両10が中間帯で折返し、(5)検知エリアAのみ又は検知エリアBのみで、車両10が中間帯に滞在の5パターンとなる。
【0035】
一方、前記無線親局ノード2は、収集した情報の記憶機能と、接続されたモニタ装置及び/又は位置表示盤への情報表示機能と、必要に応じて外部のネットワークインフラ12と接続するゲートウェイ機能とを備えている。装置構成は、図2に示されるように、無線子局ノード3から情報を受け取るための受信モデム2a、変調コンバータ2b、CPU+記憶装置部2c、制御I/F回路2dを介して、例えば広域無線通信ネットワーク、WiMAXブロードバンド、モバイルWiMAXなどの無線インフラ12に対し接続するための無線モデム2eと、DC電源2fとから構成され、前記CPU+記憶装置部2cに対する入出力インターフェース9,9を持ち、外部に情報が入出力可能とされる。
【0036】
前記無線親局ノード2に対しては、前記入出力インターフェース9,9に対して、パソコン又はモニタなどのモニタ装置7及び/又は位置表示盤6などが接続される。
【0037】
また、前記無線親局ノード2が無線インフラ12に対する接続機能(ゲートウェイ機能)を持つことにより、図1に示されるように、遠隔地に設置したネットワーク接続機器11を介して、パソコン7や位置表示盤6などに建設現場で取得した情報をリアルタイムで表示することが可能となる。
【0038】
他方、前記固定情報端末5は、入力インターフェースによって各種情報の入力機能を備える。装置構成は、図2に示されるように、センサ用I/F5a、制御I/F回路5b、発信モデム5cと、DC電源5dとから構成され、緊急時の通報釦を備える。前記センサ用I/F5aに対して、坑内及び地山中に設置された各種センサ類からのセンサーケーブルや、シールド機、トンネルボーリングマシン、自由断面掘削機などの掘削機、モルタル又はコンクリート吹付機、ドリルジャンボ等の施工機械などから送られる各種計測・運転情報などの信号ケーブルなどが接続される。
【0039】
前記移動情報端末4は、無線子局ノード3,3…からのトリガー信号に応じて、自己IDを送信するID情報送信機能を備えている。装置構成は図2に示されるように、制御I/F回路4b、発信モデム4cと、DC電源4dとから構成され、緊急時の通報釦を備える。また、無線子局ノード3からのトリガー信号の受信のために微弱無線端末14を備える。そして、前記無線子局ノード3がマイクロ波ドップラーセンサ8によって移動体10を検知したならば、その際に無線子局ノード3がトリガー信号を発信し、移動情報端末4は無線子局ノード3からのトリガー信号を受信した時だけ、前記発信モデム4cによって無線子局ノード3に自己IDを送信する。
【0040】
この移動情報端末4のID情報は、移動体10を検知した無線子局ノード3のID情報とともに、無線通信ネットワーク8を介して、無線親局ノード2に伝送され、予め登録されている無線子局ノード3の位置情報から移動体10の位置が割り出され、位置表示盤6に表示される。
【0041】
移動体10の位置検出精度を向上させるには、無線子局ノード3、3…の間に所望の位置精度に応じて、無線子局ノード3に対する情報送信機能と、マイクロ波ドップラーセンサ8と、移動情報端末4に対するトリガー信号発信機能、移動情報端末4からのID情報受信機能とを有する補間無線ノードを配置するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、建設現場における情報監視システムとして好適に使用可能であるが、他には工業FAシステムにおける工業ロボットの無線遠隔操作、生産ライン自動コンベアの無線制御、移動車輌の走行制御や、環境モニタリングにおける都市環境センサ無線ネットワーク、農作物の地域管理センター無線ネットワークなどに対しても適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る情報監視システム1の概念図である。
【図2】そのシステム系統図である。
【図3】パーソナルエリアネットワークの構築手順(その1)の説明図である。
【図4】パーソナルエリアネットワークの構築手順(その2)の説明図である。
【図5】追加無線子局ノードのネットワークへの加入手順の説明図である。
【図6】(A)(B)は情報経路選択機能の説明図である。
【図7】(A)(B)は無線子局ノード3の配置要領図である。
【図8】マイクロ波ドップラーセンサによる移動体の移動方向検知要領図である。
【図9】従来の総合情報管理システムを示すシステム概略図である。
【図10】従来の移動体の監視システムを示すシステム概略図である。
【符号の説明】
【0044】
1…情報監視システム、2…無線親局ノード、3…無線子局ノード、4…移動情報端末、5…固定情報端末、6…位置表示盤、7…パソコン又はモニタ、8…無線通信ネットワーク、9…入出力インターフェース、10…移動体、11…ネットワーク接続機器、12…無線インフラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場の監視エリアを対象として点在配置され、無線によって電波通信可能距離内である条件の下で相互に通信が可能とされる多数の無線子局ノード群と、無線子局ノード群の少なくとも1つと相互に無線通信可能とされる無線親局ノードとによって無線通信ネットワークが構築されるとともに、前記無線子局ノード群の交信ゾーン内に配置され、無線子局ノードと相互に無線通信可能とされる固定情報端末と、前記無線子局ノード群の交信ゾーン内において移動体に備えられ、無線子局ノードと相互に無線通信可能とされる移動情報端末とから構成された建設現場における情報監視システムであって、
前記無線子局ノードは、自律的に隣接する無線子局ノードを検出し、無線通信可能なネットワークを構築する自己組織化機能と、隣接する少なくとも3以上の無線子局ノードと相互通信可能に配置され、受信側伝送経路を除く2以上の発信側伝送経路から任意に情報伝送経路を選択する情報経路選択機能とを備え、かつ固定情報端末からの情報収集を行い、無線通信ネットワークを介して最終的に無線親局ノードに情報を伝送する情報伝送機能と、少なくとも2つのマイクロ波ドップラーセンサを備えることにより、前記移動体の検出とともに、検出順序により移動体の移動方向を検知する移動体の位置・方向検知機能とを備え、
前記無線親局ノードは、収集した情報の記憶機能と、接続されたモニタ装置及び/又は位置表示盤への情報表示機能を備え、
前記固定情報端末は、入力インターフェースによって各種情報の入力機能を備え、
前記移動情報端末は、無線子局ノードからのトリガー信号に呼応して、自己IDを送信するID情報送信機能を備えていることを特徴とする建設現場における情報監視システム。
【請求項2】
前記無線子局ノードは、中央処理装置と情報記憶装置とを有し、入出力インターフェースを介して、外部に情報を入出力可能とされる請求項1記載の建設現場における情報監視システム。
【請求項3】
前記無線親局ノードは、外部のネットワークインフラと接続するゲートウェイ機能を備えている請求項1,2いずれかに記載の建設現場における情報監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−253503(P2009−253503A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96978(P2008−96978)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(591284601)株式会社演算工房 (22)
【Fターム(参考)】