説明

建造物品質モニタシステム、建造物品質モニタ方法、及びそれらに用いられる半導体集積回路装置

低コストで施工可能であると同時に永続的に建造物の品質をモニタできるシステム、モニタ方法、および、それ向けの半導体集積回路装置を提供するため、センサ(RS1、TS1、PS1)、マイクロプロセッサ(CCPU1)、メモリ(CMEM1)、無線インタフェース(CRF1)、電源制御回路(PC1)、および、電力発生装置(BCHIP1)を備えたモニタチップ(SC1)をコンクリートペースト作成時に混ぜ込む。モニタチップは、内蔵する電力発生装置を電源として、間欠的に、内蔵する温度センサ、電気抵抗センサ、圧力センサにて、コンクリートの養生時の温度管理は適切であったか、あるいは、コンクリートペーストの水分量、塩化物イオンの含有量は適切であったか、あるいは、コンクリート内部の応力状態に問題がないか、といった情報をモニタし、異常が観測された場合には、内蔵メモリCMEM1に記憶する。収集された品質データは、外部の検査機RC1からのリクエストに応じて、無線にて送信される。検査機RC1は、送信されてきた品質データに基づいて、建造物の品質判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、低コストで施工可能な建造物品質モニタ方法、モニタシステム、および、それらを実現するために必要なモニタシステム用半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
近年、トンネル等コンクリートで構成された建造物においてコンクリート剥落事故が問題となっており、コンクリート建造物の品質向上が強く求められてきている。このためには、低コストで建造物の品質診断を迅速に実現できる技術が必要不可欠である。このため、建造物の品質を非破壊で外部の検査機により半自動的に検査する方法が数多く提案されている。
一方、建造物作成時にあらかじめ各種センサを組み込んでおいて、センサにて常時、応力等の物理量を計測/監視して、建造物の品質をモニタする方法、あるいは、モニタするシステム装置も提案されている。これらのモニタシステムでは、原理的には、品質判定がほぼ自動的に行えるため、品質判定の手間の省力化が可能である。
これらのうち、例えば、非特許文献1(Proc.Second International Workshopon Structural Health Monitoring,1999,pp.56〜67)には、自身に加わる変形力を感知できる光ファイバセンサを建造物内に設置して、建造物をささえる鉄骨等に加わる応力等を常時モニタして、建造物の耐震性能の保証に活用しようとするアイデアが開示されている。
一方、特許文献1(特開2002−38723号公報)には、歪ゲージを鉄筋に敷設して、歪ゲージの電気抵抗を測定して、建造物の品質をリアルタイムにモニタするアイデアが開示されている。本文献の開示するところによれば、歪ゲージにより建造物内の応力を測定することが可能であり、モニタした結果をメンテナンス等に活用することが可能である。また、具体的な構成は記述されていないが、pHセンサを具備することにより、建造物の劣化度合いの判定に利用する旨のアイデアも開示されている。
さらに、非特許文献2(日経エレクトロニクス2002年6月17日号、pp.37)には、センサと無線をひとつの装置に一体化し、無線にて検知されたデータを外部の測定器その他に送信してモニタ可能なシステムが示されている。具体的には、低消費電力な小型無線モジュールと、加速度センサ等の振動を検知可能なセンサを一体化したモニタ装置にて、オフィスビル等の建造物の地震波に対する応答、すなわち、耐震性能を測定した例が紹介されている。
さらに、非特許文献3(IEEE Computer July 2000,pp.42〜48)には、床、壁、人体等は微小ながらも常に振動しており、通常、〜mW/cmのエネルギー密度を有している旨が開示されている。
また、非特許文献4(IEEE TRANSACTIONS ON VERY LARGE SCALE INTEGRATUION SYSTEMS、VOL.9、NO.1、FEBRUARY 2001、pp.64〜pp.75)には、非特許文献3で開示されている微小振動エネルギーを電気エネルギーに変換する電力発生装置の構成が開示されている。
特許文献2(特開平11−121766号公報)には、半導体プロセスで作成可能な圧力センサ(歪ゲージ抵抗式)の構成が開示されている。
さらに、特許文献3(特開2001−99734号公報)には、同様に半導体プロセスで作成可能な圧力センサ(静電容量式)の構成が開示されている。
さらに、非特許文献5(日経エレクトロニクス2002年3月11日号、pp.55〜pp.66)には、超広帯域な無線通信方式であるUWB(Ultra Wide Band)技術について開示されている。本文献に開示されるように、UWBでは、超低消費電力で無線通信が可能である。また、高精度な位置検出や測距を実現可能である旨が開示されている。
さらに、非特許文献6(オーム社刊、「絵ときコンクリート」、pp.95〜111)には、コンクリートの強度を決定する数々の要因が記載されている。特に、本文献には、コンクリート打ち込み後に水和反応が進行してコンクリートが強度発現するまでの管理期間(以下、「養生」と言う)がコンクリート強度に大きな影響を与えることが開示されている。具体的には、水和反応で生じる発熱が強度発現に悪影響を及ぼす旨の情報が開示されている。
また、非特許文献7(電力中央研究所1999年度年報、pp.92〜93)には、コンクリート中の鉄筋の腐食の進行度は、コンクリートで電気抵抗の値から推定できることが記されている。
さらに、非特許文献8(http://www.tuat.ac.jp/〜masa/study−j.html)には、コンクリートの電磁波の透過特性についての詳細が記述されている。
【特許文献1】 特開2002−38723号公報
【特許文献2】 特開平11−121766号公報
【特許文献3】 特開2001−99734号公報
【非特許文献1】 Proc.Second International Workshopon Structural Health Monitoring,1999,pp.56〜67
【非特許文献2】 日経エレクトロニクス2002年6月17日号、pp.37
【非特許文献3】 IEEE Computer July 2000、pp.42〜48
【非特許文献4】 IEEE TRANSACTIONS ON VERY LARGE SCALE INTEGRATUION SYSTEMS、VOL.9、NO.1、FEBRUARY 2001、pp.64〜pp.75
【非特許文献5】 日経エレクトロニクス2002年3月11日号、pp.55〜pp.66
【非特許文献6】 オーム社刊、「絵ときコンクリート」、pp.95〜111
【非特許文献7】 電力中央研究所1999年度年報、pp.92〜93
【非特許文献8】 http://www.tuat.ac.jp/〜masa/study−j.html
【発明の開示】
非特許文献6に開示されるように、現代建造物の根幹をなすコンクリートの品質は、主に、▲1▼コンクリートペースト作成時のセメント/水混合比(水分が必要以上に多くないか)、▲2▼コンクリートペーストの骨材の品質(塩分を多く含んだ砂利を使用していないか)、▲3▼コンクリートペースト中の不純物(ゴミ等が混じってないか)、▲4▼施工品質(きちんと管理されて養生されているか)等で決定される。上述のトンネルコンクリート剥落事故では、塩分の多い海砂を大量に含み、しかも、コンクリート打ち込み時の効率を向上させるために、取り扱いが容易になるように水を大量に混合したコンクリートペーストを使用したことが一番の原因だと考えられている。つまり、不適切なコンクリートペーストが使用されたため、海砂に含まれる塩化物イオンが基礎の鉄骨を腐食させ、さらに、コンクリートペースト中の水分が抜けた部分が空隙となり、その結果、非常にもろい構造になってしまい、設計寿命よりも大幅に短い時間でコンクリートの崩落が始まったものと考えられている。
以上のように、コンクリート建造物は、コンクリート作成/打ち込み/養生時においてほぼその品質が決定されると言っても過言ではない。このため、コンクリート作成/打ち込み/養生時における品質管理/品質検査は非常に重要である。また、残念ながら不適切なコンクリートが使用されるケースが後を絶たない現状においては、コンクリートそのものの品質チェックも非常に重要である。
これに対して、特許文献1および非特許文献1〜2に開示されている建造物品質モニタシステムおよびモニタ方法では、基本的に建設済みの建造物に対してのモニタシステムあるいはモニタ方法であり、上記課題に対する有効な解決手段とはなり得ない。特に、不適切なコンクリートが打ち込まれたかどうかを、その場で直ちに検知することは不可能である。同様に、これらのモニタシステムあるいはモニタ方法では、応力や振動等が測定可能であるが、上記課題の▲1▼〜▲4▼については直接的に測定できない。このため、結局のところ、もし、不適切なコンクリートが建造時に使用されたとしても、それにより、例えば、建造時から10年以上経過してしまってから、内部の鉄筋その他が極度に劣化して剥落や崩壊が始まってから、あるいは、始まる直前になってようやく不適切なコンクリート材料が使用されたことが検知できるに過ぎないという問題がある。
なお、特許文献1にはpHセンサを用いて建造物の品質を判定しようというアイデアも併記されている。本文献には具体的な構成の記述はないが、pHセンサを使用すれば、基本的には上記課題の▲2▼を測定可能である。しかし、本文献のモニタシステムの場合、建造物が完成してから建造物に組み込んだセンサを測定器に接続してはじめて、測定ができるようになる。つまり、本文献に開示のモニタシステム及びモニタ方法も、コンクリート作成/打ち込み/養生時における品質管理/品質検査には用い得ないという問題がある。
さらに、これらのモニタシステムおよびモニタ方法では、非常に高価な光ファイバセンサ等のセンサが必要であるため、コストが高いという問題がある。また、建造物に敷設したセンサをケーブル(光ファイバあるいはメタルケーブル)で接続して設置する必要があるため、同様に施工コストが高くなるという問題がある。さらに、根本的な問題として、接続ケーブルが何らかの不注意などの原因で切断されてしまった場合には、モニタシステムが全く使用できなくなるという問題がある。
本発明の目的は、建造物の品質、寿命、劣化具合に最も大きな影響を与える、コンクリートペースト作成時からのコンクリート品質、言い換えると、不適切なコンクリートが使用されていないかをモニタして、建造物の品質その他を総合的にモニタする方法およびモニタシステムを提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、上記モニタシステムを実現するために、電力発生装置、センサ、CPU、メモリ、無線インタフェースを内蔵し、コンクリートペースト作成時からのコンクリートの品質を永続的にモニタすることが可能な半導体集積回路装置を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、コンクリート作成、打ち込み、養生時における品質管理、品質検査が可能な建造物品質モニタシステム、建造物品質モニタ方法、及びそれらに用いられる半導体集積回路装置を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、光ファイバセンサ等の高価なセンサを用いることなく、コンクリート作成、打ち込み、養生時における品質管理、品質検査を安価に実現できる建造物品質モニタシステム、建造物品質モニタ方法、及びそれらに用いられる半導体集積回路装置を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、建造物にセンサを敷設し、それを光ファイバあるいはメタルケーブルなどのケーブルで接続する必要がなく、ケーブル切断による機能不全の心配のない建造物品質モニタシステム、建造物品質モニタ方法、及びそれらに用いられる半導体集積回路装置を提供することである。
本願によって開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。すなわち、半導体計測の対象となる物理量を検知するセンサ、典型的には、電気抵抗センサ(RS1)、温度センサ(TS1)、圧力センサ(PS1)および加速度センサ(AS1)と、前記センサにより検知した信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路(AD1)と、前記ディジタル信号を処理するマイクロプロセッサ(CCPU1)と、前記センサにより得た情報を格納するメモリ(CMEM1)と、前記マイクロプロセッサにより処理した信号を外部へ無線にて送信する無線インタフェース回路(CANT1)とアンテナ(CANT1)、アンテナに接続された整流器(REF1)、および、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、および、前記送信回路に電力を供給するかどうかを決定する電源制御回路(PC1)、電源制御回路のオンオフを決定する電荷監視回路(CW1)とタイマ回路(TM1)を搭載した第1の半導体集積回路(CHIP1)と、第1の半導体集積回路を搭載する第1の基板(BO1)に搭載されたコンデンサ(C1)、および、第1の電力発生用半導体集積回路(BCHIP1)を具備する半導体集積回路装置(SC1)を、建造物(BUL1)を構成するコンクリート(CON1)でできた壁/床等に、コンクリートペーストの段階から混ぜ込んで埋め込む。このようにして埋め込んだ半導体集積回路装置SC1により、内蔵する電力発生装置BCHIP1が発電する微小な発電電力をコンデンサC1に蓄えて、あらかじめ設定された電荷量が蓄えられた時点で、内蔵するセンサ(RS1、TS1、PS1、AS1)、メモリCMEM1、プロセッサCCPU1、A/D変換回路AD1を間欠的に起動して、コンクリート中の電気抵抗、温度、圧力等の物理量を検知する。さらに、プロセッサCCPU1により、検知された信号の値が望ましい範囲内に収まっているかどうかを判断して、望ましくない場合には、メモリCMEM1に記憶する。以上の検知動作をあらかじめ設定された適切な時間間隔で継続して、コンクリートの品質を監視する。このようにして測定された検知信号を、コンクリートの養生終了後に、無線通信にて検査機(RC1)にて読み出す。なお、この読み出し動作に先立って、検査機RC1内の無線インタフェース回路RF1から検査機RC1のアンテナANT1を経由して、高周波にて、電力を前記半導体集積回路装置SC1に供給する。半導体集積回路装置SC1では、内蔵する整流器REF1にて、供給された高周波電力を直流電力に変換した後に、コンデンサC1に蓄えて、SC1内に搭載する無線インタフェース回路CRF1を起動するための電源とする。このようにして、メモリCMEM1内に記憶されているデータを、検査機に送信し、検査機にて品質判定プログラムQPR1により、建造物の品質を判定することを特徴とする建造物品質モニタシステムである。
本発明の建造物品質モニタ方法は、半導体集積回路装置SC1を建造物に組み込むステップと、半導体集積回路装置SC1に内蔵するセンサ(RS1、TS1、PS1、AS1)を動作させて検知動作を行うステップと、無線インタフェース回路CRF1にてアンテナCANT1経由で検査機RC1に送信するステップと、検査機に送信された信号に基づき検査機によって建造物の品質判定を行うステップとを含むことを特徴とする。この建造物品質モニタ方法は、半導体集積回路装置SC1に設けられたメモリCMEM1に検知信号を記憶するステップと、半導体集積回路装置SC1に設けられたメモリCMEM1に保存された信号を取り出すステップとを更に含んでいてもよい。
また、本発明の半導体集積回路装置(SC1)は、電気抵抗センサ(RS1)、温度センサ(TS1)、圧力センサ(PS1)および加速度センサ(AS1)と、前記センサにより検知した信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路(AD1)と、前記ディジタル信号を処理するマイクロプロセッサ(CCPU1)と、前記センサにより得た情報を格納するメモリ(CMEM1)と、前記マイクロプロセッサにより処理した信号を外部へ無線にて送信する無線インタフェース回路(CANT1)とアンテナ(CANT1)、アンテナに接続された整流器(REF1)、および、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、および、前記送信回路に電力を供給するかどうかを決定する電源制御回路(PC1)、電源制御回路のオンオフを決定する電荷監視回路(CW1)とタイマ回路(TM1)を搭載した第1の半導体集積回路(CHIP1)と、第1の半導体集積回路を搭載する第1の基板(BO1)に搭載されたコンデンサ(C1)、および第1の電力発生用半導体集積回路(BCHIP1)とを具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の建造物品質モニタシステムの望ましい一実施形態を示す図である。
図2は本発明の建造物品質モニタシステムにて使用するモニタチップの断面図である。
図3は本発明のモニタチップの詳細な構成を示した図である。
図4は本発明のモニタチップを組み込んだ建造物の作成方法および建造物品質モニタ方法を示した図である。
図5は本発明のモニタチップが搭載する電力発生用半導体集積回路の動作原理と、発電電力の回収回路の構成およびその動作を示した図である。
図6は本発明のモニタチップの一部をなす、電源制御回路、タイマ回路、電荷監視回路の構成図である。
図7は本発明の建造物品質モニタチップの動作の概要と送信されるデータの概略を示した図である。
図8は本発明のモニタチップの一部をなす、電気抵抗センサ、温度センサ、加速度センサ、圧力センサの構成を示した図である。
図9は本発明のモニタチップの一部をなす、選択機能付きA/D変換回路の構成図である。
図10は本発明のモニタチップの一部をなす、無線インタフェース回路、整流回路の構成図である。
図11はコンクリートの電磁波透過特性を示した図である。
図12は、図1に示した本発明の建造物品質モニタシステム、モニタ方法において使用する品質検査機の動作の概要を示した図である。
図13は、図12の品質検査機にて内部処理に使用されるデータの構造の概略を示した図である。
図14は、図12に示した品質検査機の高周波送受信回路とそれによって実現されるモニタチップ位置の検出方法の原理を示した図である。
図15は本発明のモニタシステムによるコンクリート内部の応力分布の算出方法とその原理を説明した図である。
図16は実施例2で説明する、中継機による検知データの中継の概念と、中継機を利用した建造物品質モニタシステムの構成を示す図である。
図17は本発明の第2の建造物品質モニタ方法を示した図である。
図18は、図17に示した本発明の第2の建造物品質モニタ方法に対応するモニタシステムの構成を示した図である。
図19は実施例3で説明する、本発明のモニタチップの第2の構成例を示した図である。
図20は実施例4で説明する、本発明の建造物品質モニタシステム、モニタ方法、および、モニタチップのその他の応用例を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施例につき、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図において、同一符号は同一または類似部分を示すものである。
【実施例1】
本発明の建造物品質モニタシステムの一実施例を図1に示す。図1に示すように、本発明の建造物品質モニタシステムは、本発明に特有な検査機(RC1)と、建造物(BUL1)の壁や床を構成するコンクリート(CON1)に、後述するように、コンクリートペースト作成時に埋め込まれた、本発明に特有な半導体集積回路装置すなわちモニタチップ(SC1〜SC10)から構成される。また、必要に応じて、建造物BUL1内あるいはBUL1外部に設置された管理サーバー(SV10)を併用することも可能である。なお、図1には10個のモニタチップを使用する例を図示しているが、あくまでも説明のための例示であり、実使用時においてはこの限りではない。
本発明に特有な検査機(RC1)は、アンテナ(ANT1)、無線通信インタフェース(RF1)、プロセッサ(CPU1)、メモリ(MEM1)、二次記憶装置(HDD1)、表示装置(DISP1)、ユーザーインタフェース装置(UI1)、および、ネットワークインタフェース(NI1)から構成される。このうち、二次記憶装置HDD1は、典型的には、ハードディスク等で構成される。また、表示装置DISP1はCRT等で、ユーザーインタフェース装置UI1は、キーボード/マウス等で構成される。
検査機RC1は、無線インタフェース/アンテナ経由で、コンクリートに埋め込まれたモニタチップと通信を行い、後述するように本発明のモニタチップ内のメモリに格納された、コンクリート品質に関する各種測定データを読み出す。検査機RC1では、受信した測定データを元に、二次記憶装置HDD1あるいはメモリMEM1上に格納されている品質判定プログラム(QPR1)に従って、コンクリート品質の判定を行う。本検査機では、ネットワークインタフェース(NI1)経由で、インターネット等に代表される広域ネットワーク網(WAN1)を介して、管理サーバー(SV10)と通信することが可能である。後述するように、品質判定の際に、ネットワーク経由で、管理サーバーSV10内のデータベースDB10に格納されている各種情報(例えば、検知されたデータとコンクリート品質との相関関係等)を参照して、より高精度な判定を行うことも可能である。
本発明に特有な管理サーバー(SV10)は、ネットワークインタフェース(NI10)、プロセッサ(CPU10)、メモリ(MEM10)、二次記憶装置等で構成されたデータベース(DB10)から構成される。この管理サーバーSV10は、データベースDB10に、品質判定の際に必要となる各種情報(検知結果と品質との相関関係等)を保存しており、本発明の検査機RC1からのリクエストに応じて、ネットワーク経由で検査機に送信する。また、検査機から送られてきた検査結果をデータベースに保存/管理して、遠隔地にある建造物の品質状況を管理することも可能である。また、検査機RC1ではなく、本管理サーバー上のプロセッサCPU10により、品質判定プログラムを走らせて、結果を検査機に送り返す、といったことも実現可能である。
図2に示すのは、本発明に特有なモニタチップ(SC1)の断面図である。さらに、図3の(a)に示すのは、本モニタチップSC1の一方の主面(SIDE1)である。同様に、図3の(b)に示すのは、図3の(a)とは逆の主面(SIDE2)である。これらの図に示されるように、本発明に特有なモニタチップ(SC1)は、第1の半導体集積回路(CHIP1)、第1の電力発生用半導体集積回路(BCHIP1)、コンデンサ(C1、C2)、インダクタ(L1)、および、これらを搭載するための基板(BO1)から構成される。このうち、基板(BO1)には、これらの間を結線するための配線パターン、後述する無線インターフェース回路(CRF1)で使用するアンテナ(CANT1)パターン、および、後述する電気抵抗センサ回路(RS1)で使用する電気抵抗測定端子(RT1〜RT4、RT1A〜RT4A)のパターン等が、銅あるいは金等の金属で描かれている。これらについては、通常、MCP(Multi Chip Package)技術にて使用されているものと同様のもので構成されている。また、コンデンサ(C1、C2)および、インダクタ(L1)についても、通常のMCPチップで使用されているものと同様のチップ形態のものが使用可能である。なお、コンデンサについては、図2に示すように、基板BO1を多層基板で形成して、そのうちのいくつかの層をペアで使用する、積層コンデンサ(C1A、C2A)を利用することも可能である。
さらに、図2に示されるように、第1の半導体集積回路(CHIP1)、および、第1の電力発生用半導体集積回路(BCHIP1)は、本発明に特有な配置で基板(BO1)に搭載されている。すなわち、CHIP1、BCHIP1は、基板上の同一面ではなく、それぞれ、第1の基版面(SIDE1)、および、第2の基版面(SIDE2)に搭載されている。
また、図2に示すように、これらの半導体集積回路、コンデンサ、インダクタ、および、基板は、エポキシ樹脂等のモールド材(MO1)で覆われており耐水性および耐久性を有する。これらのモールドは、通常のMCPと同様のものが使用可能であるが、本発明のモニタチップでは、後述するようにコンクリートペーストに混ぜ込んで、最終的にはコンクリート壁あるいは床等に一体化して埋め込むため、通常の半導体集積回路作成時よりも厚くモールドする必要がある。さらに、モールド内部の、CHIP1の上面に、第1の半導体集積回路に搭載する圧力センサ(PS1)がコンクリート内部の加わっている圧力を検知できるようにするために、外部からの圧力を多少緩和しつつも内部に伝達可能な材質のモールド材BF1により、本発明に特有な圧力窓(PWIN1)を設置する点に特徴がある。
これらの半導体集積回路(CHIP1、BCHIP1)から構成された本発明のモニタチップ(SC1)では、後述するように、電力発生装置、電気抵抗などの各種センサ、メモリ、CPU、無線インタフェース回路を1チップに集積している。このため、コンクリートペースト作成時からのコンクリート品質を永続的にモニタすることが可能であり、これまで実現不可能であった、「コンクリート建造物の品質を決定する、コンクリートペースト作成時からのコンクリートの品質のモニタ」が可能となる。
図4に示すのは、このようなコンクリートペースト作成時からの品質モニタリングを可能とする、本発明に特有な建造物建設方法および品質モニタ方法を示した図である。この図4に示されるように、本発明に特有な方法として、骨材AG1、セメントCE1、水WA1で構成される通常のコンクリート原料の他に、本発明に特有なモニタチップSCを、コンクリート作成時P100から混ぜ込む。後ほど詳細に説明するが、本発明のモニタチップでは、内蔵する電力発生装置、センサ(電気抵抗、温度他)、CPU、メモリにより、外から電源を加えることなしに、例えば、電気抵抗センサにより、コンクリート中の水分量や、塩化物イオン量を測定して、あらかじめ設定されている許容値内であるかを永続的にモニタすることが可能である。さらに、内蔵する無線インタフェース回路を使用して、検査機RC1に無線通信で、モニタされた水分量、塩化物イオン等の値を送信可能である。
図4に示す本発明の建造物品質モニタ方法では、以上で説明したこれらの本発明のモニタチップに特有な機能を建造物品質モニタに活用する。すなわち、コンクリートペースト作成とリンクさせて、モニタチップでは、検知動作を開始し、測定された水分量その他の異常値をメモリに記憶する(P210)。さらに、モニタチップ内蔵の温度センサ(TS1)により、コンクリート養生時の温度変化が、あらかじめ設定した許容範囲内に収まっているかをモニタし、もし、許容範囲に収まっていない、異常な温度条件の場合には、同様にして異常値をモニタチップのメモリ(CMEM1)に記憶する。次に、養生終了後、検査機RC1にてコンクリートの品質検査(P120)を行う。この検査の際には、検査機からのリクエストに応じて、モニタチップのメモリ内のデータが読み出されて(P220)、コンクリート作成時の水分量や塩化物イオン濃度が適切であったか、あるいは、養生時の温度管理は適切であったか等の判定が行われる。この際に、もし不適切な品質のコンクリートが使われていたり、養生管理が不十分であったりした場合には、即座に検知可能であり、該当不具合箇所の補強工ことあるいは最悪の場合には部分的/全面的建て直し(P125)を、早期に行うことが可能である。つまり、トンネルコンクリート剥落事故で問題となったような、不適切なコンクリートの使用を、数10年もの長い期間を放置したまま使用しなくとも、建築終了時の検査時に即座に検知可能である。このように、本発明に特有なモニタシステム、モニタ方法、および、モニタチップを使用することにより、従来には実現不可能であった、建造物作成時からの品質モニタが可能となり、その結果、高品質の建造物が実現される。
以上は、建造物作成時の品質モニタであったが、図4に示すように、本発明では、従来技術と同様に、建造物が完成してからの、いわゆる経年変化あるいは劣化をモニタすることも可能である。例えば、何年かの割合で、検査機RC1を建造物内に導入して、建設時と同様の検査を行う(P140)。建造物のコンクリート内部に埋め込まれたモニタチップは、この期間中も、後ほど詳しく説明するように内蔵する電力発生装置にて建造物の微小振動をエネルギー源として発電して、検知動作を続けており、例えば、コンクリートにひびが生じて内部雨水が浸透してきたか等を検知可能である。さらに、個々のモニタチップにより、内蔵する圧力センサで測定されたコンクリート内部の圧力を検査機にて集計することにより、建造物内の内部応力分布が検出可能であり、応力疲労していないか等の診断が可能となる。
本発明のモニタチップは、大量生産可能な半導体プロセスにて作成可能である。また、従来技術の項で説明したような高価な光ファイバセンサは不要である。さらに、本発明では、コンクリート作成時にて他の原料と同じように扱って混ぜ込んで施工することが可能である。このため、極めて安価な追加コストにて施工することが可能である。このように、従来技術では実現不可能であった品質モニタシステムが実現できるのみならず、従来のモニタシステム/方法でも実現可能なモニタ項目についても、非常に安価な代替手段を提供可能である。
以上が本発明のモニタシステム/モニタ方法/モニタチップの概要であるが、以下、本発明の根幹をなすモニタチップの詳細について説明する。図3に示されるように、第1の半導体集積回路(CHIP1)は、マイクロプロセッサ(CCPU1)、メモリ(CMEM1)、無線インタフェース回路(CRF1)、アンテナ(CANT1)、および、アンテナ経由で外部から照射された高周波電力を直流電力に変換する整流回路(REF1)、温度センサ(TS1)、加速度センサ(AS1)、圧力センサ(PS1)、電気抵抗センサ(RS1)等で構成されるセンサ回路、センサからのアナログ信号をディジタル量に変換するA/D変換回路(AD1)、上記CCPU1、CMEM1、CRF1、TS1、AS1、PS1、RS1、AD1への電源供給を制御する電源制御回路(PC1)、PC1のオン/オフを制御するタイマ回路(TM1)、および、基板BO1上に設置されたコンデンサC1に蓄積された電荷量および外部から高周波電力が照射されているかを監視する電荷監視回路(CW1)から構成される。
マイクロプロセッサCCPU1は、メモリCMEM1上に格納されたプログラム(PR1)に従って、チップ上の各回路の動作モードを設定して制御して、各センサを駆動してコンクリートの品質をモニタする。また、後述するように、検知されたデータを圧縮する、あるいは、ID情報を付加する等の加工を行った後に、上記無線インタフェース回路CRF1経由で、無線にて外部に送信する。
メモリCMEM1は、プログラムPR1の以外にも、例えば、センサからの異常なデータが取得された際のデータや、マイクロプロセッサCCPU1における動作モードのパラメータ等の情報を保持する。メモリCMEM1は、典型的には、低消費電力でデータ保持可能なSRAMや、電源供給オフ時でもメモリ内容が保持されるNOR型あるいはAND型等のフラッシュメモリ等で構成される。しかし、低消費電力でメモリ内容が保持できれば、他のタイプのメモリも使用可能であることは言うまでもない。
第1の電力発生用半導体集積回路(BCHIP1)は、微弱な外部振動を電気エネルギーに変換する小型の電力発生装置である。床、壁等の微小振動エネルギーを利用すれば、10μW程度の発電が可能となる。以下、電力発生用半導体集積回路の動作を具体的に説明する。
電力発生用半導体集積回路BCHIP1は、外部の振動により静電容量が変化する可変容量コンデンサ(CM1)、および、電力回収回路(PC2)から構成される。電力回収回路PC2は、可変容量コンデンサCM1により外部振動の力学エネルギーから変換された電気エネルギーを回収して、基板BO1上のコンデンサC1を充電するように機能する。可変容量コンデンサCM1は、通常、MEMS(Micro Electro Mechanical System)プロセスによりシリコンチップ上に微細構造で構成される。具体的には、図3(b)に示すように、2つの固定電極(ST1、ST2)、および、可動電極(VT1)から構成される。このうち、可動電極(VT1)はアンカー(PN1〜4)以外のどこにも固定されておらず、BCHIP1上に浮いている。このため、BCHIP1がある加速度を持って振動等の運動をすると、これにより発生する慣性力により、2つの固定電極(ST1、ST2)間を振動する。この振動により、これらの電極間の距離が変わり、可変容量コンデンサCM1の静電容量が変化する。
図5の(a)に示すのは、この可変容量コンデンサCM1の電荷Qを一定にした時に、外部振動によりCM1の静電容量がCmin→Cmaxと変化した場合の電圧Vと静電エネルギーの変化を示した図である。このように、外部振動により静電容量が変化する結果、蓄えられる静電エネルギーが増加する。そして、この静電エネルギーの増加分を回収することにより、小型の電力発生装置としての機能を発揮する。
BCHIP1に形成する電力回収回路の一実施例を図5の(b)に示す。電力発生装置は、従来のものと同様の構成を用いることができる。可変容量コンデンサCM1の他に、コンデンサC2、インダクタL1、および、整流器D3、PMOSトランジスタTP1、NMOSトランジスタTN1、これらのトランジスタのオン/オフのタイミングを制御するドライブ回路(PDR1)から構成された電力回収回路(PC2)から構成される。ドライブ回路PDR1は、外部振動による可変容量CM1の静電容量の変化に応じて、図5の(c)に示すタイミング(T1〜T5)で、TN1および、TP1のオン/オフを制御する。電力回収回路は本発明の特徴部分ではないため、ここでは説明を省略する。発生した電力については、最終的には、整流器D3を経て、VDD1ラインに供給され、第1の半導体集積回路CHIP1の電源制御回路PC1に接続されたコンデンサC1に充電される。
可変容量コンデンサCM1は、基本的には、半導体プロセスとコンパチブルなMEMSプロセスで作成可能である。このため、1つの半導体集積回路に混載することも可能である。しかし、図5の(a)に示されるように、取り出される電気エネルギーは、コンデンサCM1の静電容量(最大容量Cmaxと最小容量Cminの差)、および、初期電荷Qの2つの値に依存する。すなわち、コンデンサCM1の静電容量が大きいほど、また、初期電荷Qが大きいほど、大きな電気エネルギーを取り出すことができる。このため、静電容量は大きいものの方が好適であり、通常、数100pF程度のものが必要とされる。静電容量を大きくするには、図3の(b)に示すCM1の面積を大きくするほかに、櫛状に形成された電極間の溝の深さを深くする必要がある。このため、1cm×1cm×0.5mm(深さ)程度のサイズのものが必要とされる。
なお、この溝はエッチングにより形成されるが、通常の半導体集積回路では、0.5mmエッチングは必要とされない。しかし、発電効率の点から考えると、溝は深ければ深いほど好ましい。一方、半導体集積回路を作成する際のコストを考えると、コンデンサCM1の面積は小さければ小さいほうが好ましい。また、エッチングで削る溝も、それほど深くないほうがより好ましい。
この相反する問題を解決するため、本発明のモニタチップでは、図3に示すように、可変容量コンデンサCM1および電力回収回路と、それ以外の回路を別々の半導体集積回路で構成する。このような2チップのセパレート構成により、それぞれのチップに特化した専用プロセスにて作成することが可能となり、溝の深さも任意に形成できる。さらに、本発明に特有な構成として、これらのチップを、MCP構成で基板の裏表両面(SIDE1、SIDE2)に搭載する。このような構成により、可変容量コンデンサCM1の面積を、センサチップと同程度のサイズにまで大きくすることができるため、大容量のものが実現可能となる。さらに、図3に示すように、基板BO1の他のエリアに電力回収回路として必須となる、コンデンサC2、インダクタL1、また、無線インタフェースに必要となるアンテナCANT1等を、基板上に搭載するか、または、配線パターンとして形成できる。つまり、本発明に特有な図3の構成により、ほぼ通常のICチップサイズの大きさ(〜1cm角以下)に、電力発生装置、センサ、CPU、RFを集積したセンサシステムが実現可能となる。この結果、超小型な自律動作可能なモニタチップを実現することができる。
以上のように、本発明のモニタチップにおいては、自律的に電源を得ることが可能である。しかし、従来の技術では、1cm角程度のサイズでは、発電電力は10μW程度に限られている。一方、CMOSプロセスで作成された半導体集積回路では、マイクロプロセッサ、メモリ(特にSRAM)は、クロック周波数を100KHz程度に下げることにより、消費電力を10μW程度にまで押さえることが可能である。本実施例の場合、マイクロプロセッサが受け持つ一番重い処理は、データを圧縮してメモリに格納する程度の作業であり、100KHz程度のクロック周波数でも十分処理可能である。例えば、クロック周波数を100KHzに設定したとしても、1秒間に10万サイクル命令を実行可能であり、1ミリ秒間に限ってみても、100命令程度を実行可能である。このため、上記発電チップにより電源を供給してプロセッサ、メモリその他を動作させることが可能である。
しかし、10μW程度の発電電力では、CHIP1上の各種センサを同時に駆動することは難しい。さらに、無線で外部と通信を行うには、例えば、UWBなど超低消費電力無線インタフェースでも、100μW程度の電力が必要とされている。
この問題を解決するために、本発明では、コンデンサC1、タイマTM1、スイッチトランジスタTP2、電荷監視回路CW1、整流回路REF1および、電源制御回路PC1から構成された低消費電力動作方式を採用する。この低消費電力動作方式をより具体的に示したのが、図6の(a)に示す図である。すなわち、通常は、電力発生用半導体集積回路BCHIP1から発電される電力は、CHIP1の各回路には供給せず、その代わりにコンデンサC1に発電電力を蓄える。タイマTM1により設定された時間間隔が経過したと判断された場合、あるいは、電荷監視回路CW1が十分な電力が蓄えられたと判断した場合のみに、電源制御回路PC1内のスイッチトランジスタTP2を導通させ、オンチップのセンサ等の他の回路に電力を供給して間欠的に検知動作を行い、必要に応じて検知結果をメモリCMEM1に格納する。
既に説明したように、本発明のモニタチップでは、検査機に無線にて検知されたデータを送信する必要があり、最低でも数100μWの電力が必要である。このため、本発明では、図3の(a)に図示されるように、アンテナCANT1にて検査機RC1から照射された高周波電力を受信して、整流器REF1にて直流電力に変換してコンデンサC1に蓄えて、検知されたデータの無線送信の電源とする。このように、
▲1▼ 検知動作は内蔵する発電装置からの電力にて賄う
▲2▼ 検知データの無線送信は、検査機から供給される高周波電力で賄う、
というハイブリット方式を採用することにより、外部からの電源供給なしに、永続的に建造物の品質をモニタして、検査機からのリクエストに応じてデータを送信することが可能となる。
図6の(b)に示すのは、上記電源制御において使用する、本発明に特有な電源制御回路PC1、電荷監視回路CW1、および、タイマTM1の具体的な構成例である。この図に示すように、電源制御回路PC1は、制御論理回路PG1〜PG3、スイッチトランジスタTP2から構成される。電荷監視回路CW1あるいはタイマTM1からの信号EP1、および、EP3がハイレベルの場合、あるいは、電荷監視回路からの検査機にて高周波電力が供給されていると判断された場合に、制御論理PG3の出力がローレベルとなり、スイッチトランジスタTP2が導通状態となり、VDD2ラインに電源が供給される。その結果、VDD2から電源を供給されている、メモリCMEM1、無線インタフェース回路CRF1、A/D変換回路AD1、センサその他の回路が起動する。なお、この図6の(b)には、昇降圧レギュレータ(RG1)を記載しているが、本発明に独自のものではないので、ここでは説明は省略する。
電荷監視回路CW1は、抵抗R1、R2、R3、R4、基準電圧発生回路VREF1、VREF2、電圧比較回路COMP1、COMP2、および、バスCBU1経由にてCCPU1に制御されるバスインタフェースCWI1から構成される。このうち、COMP1、R1、R2、VREF1にてコンデンサC1の電荷、つまり、第1の電源ラインVDD1の電圧が監視される。つまり、以下の式(1)で与えられるしきい値電圧Vt1と比較し、VDD1>Vt1の場合に、出力EP1をハイレベルにプルアップする。
Vt1 = VR0・(1+R1/R2) (1)
同様に、残りのCOMP2、R3、R4、VREF2において、整流回路(REF1)からの信号のVRFを監視することにより、外部の検査機より高周波電力が照射されて検知データの送信がリクエストされているのかを判定する。すなわち、式(2)で与えられるしきい値電圧Vt2と比較し、VRF>Vt2の場合に、出力EP2をハイレベルにプルアップする。
Vt2 = VR1・(1+R3/R4) (2)
なお、基準電圧VR0、VR1の電圧値は、バスインタフェースCWIF1経由で、CCPU1から変更することも可能である。また、CWI1に内レジスタにはVRFが設定値以上なったかどうかを格納して、CCPU1がバス経由でレジスタ内容を読み出すことにより、検査機RC1からリクエストがあったかどうかを確認することが可能である。
なお、VREF1、VREF2、COMP1、COMP2については、常時給電されるため、例えば、抵抗R1〜R4には、高抵抗(数10MΩ以上)等で設計することが望ましい。これらについては、CMOSプロセスで形成されるのが一般的である。
タイマTM1は、発振回路OSC1、プリセットカウンタCOUNT1、COUNT1のプリセット値を保持するレジスタREG1、電荷監視回路CW1が規定電圧になるまでのカウント値を保持するレジスタREG2、および、CCPU1とのバスインタフェースTIF1で構成される。プリセットカウンタCOUNT1は、レジスタREG1に設定されたプリセット値までカウントアップし、出力EP3にハイレベルの信号を出力する。このレジスタREG1、REG2の内容は、バスインタフェースTIF1経由で、CCPU1から書き込みあるいは読み出しが可能である。なお、これらのレジスタの値は、後述する図7に示すルーチンP330において設定される。これらの各回路は本発明特有なものではないので、ここでは詳細については説明を省略する。なお、このタイマ回路も常時通電されるため、低電力化が必要である。低電力化には、発振回路OSC1の発振周波数を低く設定するのが好適である。典型的には、32KHz程度に設定することにより、タイマTM1の消費電流を、1μA以下に抑えることができる。
以上のPC1、CW1、TM1により、半導体集積回路CHIP1の他の大部分の回路は、通常は動作しておらず、短い時間のみ通電して間欠的に検知動作を行い、また、外部の検査機より高周波電力が送信された場合のみ、検査機にデータを送信するという、本発明に特有な動作方式が実現される。このような間欠動作により、前述した電力の問題も解決可能である。例えば、コンデンサC1には、典型的には1μF程度のものが使用可能であり、1Vまで充電したとすると、1μCの電荷が蓄えることが可能である。言い換えると、このコンデンサを電源にして、1mAを1秒間取り出せる。つまり、1mW程度の消費電力の回路を動作させることが可能である。一方、発電チップの発電電力を10μW(〜電圧1V)とすると、1μCの電荷を充電するには、以下の計算式(3)に基づく時間がかかる。
1μC/(0.01/1mA)=1000ミリ秒 (3)
余裕を見て充電に2秒かかってとしても、10秒間に5回程度、チップを駆動して、1mWの消費電力でセンサ回路を駆動することが可能である。本実施例のように、建造物品質モニタに使用する場合は、モニタリングの時間間隔は、最短でも1時間に1回程度も取れれば充分である。コンクリートの養生に必要とされる時間は1ヶ月程度であることが知られている。このため、本発明のように数秒間隔で間欠的にモニタ動作を行ったとしても、実用上何の支障も来たさない。さらに、既にICカード等において実用化されているように、外部から高周波を照射して、数mW程度の電力を持続的に供給できることが実証されている。このように、本発明のセンサチップでは、本発明に特有な電源制御回路により、MEMSプロセスで作成された超小型電力発生装置から、あるいは、アンテナ経由で外部の検査機より高周波で給電する、というハイブリットな電力供給方式が可能であり、電池なしで自律的に建造物の品質モニタを行って検査機へと無線にて送信することが実現できる。
図7の(a)に示すのは、上記電力制御方式に従って実現される本発明のモニタチップの動作フロチャートである。この図に示されるように、CCPU1は常時スリープ状態P310にある。タイマTM1あるいは電荷監視回路CW1からの割り込みによりP320以降の動作状態に遷移する。動作状態においては、メモリCMEM1に格納されたプログラムあるいは動作パラメータに従って以降の動作を決定する。例えば、動作パラメータがデータの検知ならば、データ検知ルーチンP340を呼び出し、センサ駆動/サブルーチンP341、データ取り出し/加工(圧縮等)サブルーチンP342、データ判定サブルーチンP343を順次実行し、センサからデータを取得し、あらかじめ設定した範囲内のデータであるかないか等の判定を行い、異常値の場合には、メモリにデータを書き込む。一方、電荷監視回路CW1で外部の検査機から高周波電力が照射されていることが検出されて、検知データの送信がリクエストされているものと判断された場合には、データ送信ルーチンP350を呼び出し、データ読み出しサブルーチンP351によりメモリに格納されたデータを読み出し、必要に応じて、識別子生成サブルーチンP352、パケット生成サブルーチンP353、圧縮/変調サブルーチンP354、パケット送信サブルーチンP355を順次実行し、データを送信する。
送信されるデータは、図7の(b)のa行に示すように、識別子(PSI1)+データ(PDA1)から構成されたパケット(SPAT1)形式で送信される。このように、送信データに識別子を付加することにより、例えば、本発明のモニタチップが、複数同時に使用された場合においても、検査機RC1側で、どのモニタチップから来たデータなのかの判別が可能になる。識別子PSI1には、典型的には、半導体集積回路CHIP1の出荷時において、メモリCMEM1の不揮発メモリ部分に書き込まれた固有のID等チップ固有の情報を使用可能である。さらに、図7の(b)のb行に示すように、識別子PSI1の他にも、例えば、この情報がモニタチップのどのセンサからの情報なのかの識別情報(センサ種別、PSI2)を付加することも可能である。また、動作モード設定ルーチンP320においては、電荷監視回路CW1の充電状態を記録したレジスタCR1の読み出し、あるいは、タイマTM1の時間間隔設定レジスタTR1の書き込みを行う。このようにすることにより、電力発生用半導体集積装置BCHIP1の発電状況に合わせた動作設定が可能である。
図8に示すのは、本発明のモニタチップの第1の半導体集積回路上に作成される各種センサの構成である。以下、各センサの構成を説明する。
図8の(a)は、電気抵抗センサRS1の構成例である。定電流源CS1、増幅器A1により、外部に設けられた電極RT1、RT2、RT3、RT4間の電圧降下を測定する。定電流源CS1に設定されている電流値で測定された電圧降下を除算することにより、この2つの電極間の電気抵抗/インピーダンスを測定することが可能である。なお、この図に示しているのは、電気抵抗センサの構成の一例であり他の構成のセンサも使用可能であることは言うまでもない(以下のセンサでも同様)。
本電気抵抗センサにより、コンクリート中の電気抵抗が測定可能であり、これに基づきコンクリートの腐食度が測定可能である。さらに、コンクリート中の水分や塩分(塩化物イオン)は電気伝導性があるため、例えば、図4に示すフロチャートのP210以降において、コンクリートペースト作成時から本モニタチップを混ぜ込んで電気抵抗を測定することにより、コンクリートペーストの水分量が多すぎないか、あるいは、塩化物イオン等の不適切な材料が使用されていないか等が測定可能である。さらに上述した図7に示す本モニタチップの動作プログラムを適切に設定して、混ぜ込まれた時点からの異常値をメモリに記憶しておけば、後日、検査機にて読み取ることにより、作成時に不適切なコンクリートが使用されたかどうか検知可能である。
図8の(b)に示すのは、本発明のモニタチップで使用される温度センサの構成例である。この図に示されるように、本温度センサは、ダイオードD4、D5、それぞれ違う電流値に設定された定電流回路CS2、CS3、増幅器A2から構成される。この方式の温度センサは本発明に特有のものではないのでここでは詳細な説明は省略する。本センサチップは非常に小型(典型的には、5mm角以下)であり、チップ自身の熱容量は、例えばコンクリート壁や床と比べると無視できる値である。さらに、本センサチップは非常に低消費電力であるため、チップ自身の発熱は無視できる。このため、図1に示す形態でコンクリート中に埋め込めば、本温度センサにより、コンクリート温度を正確に測定することが可能である。
本温度センサにより、例えば、コンクリート打ち込み後の養生中の温度変化をモニタしてメモリ内に記憶することが可能となる。上述した電気抵抗センサと同様に、後日、検査機にて養生中の温度変化を読み取ることが可能である。つまり、これまでは実現不可能であったが、本モニタチップを使用することにより、コンクリートの強度発現には重要な役割を果たす養生期間中に不適切な管理がなされていなかったかどうか等が検出可能となる。
図8の(c)に示すのは、加速度センサAS1の構成例である。本加速度センサは、MEMSプロセスで作成された可変容量コンデンサCAS1〜CAS4、および、差動増幅器A3から構成される。この可変容量コンデンサは、前述した電力発生用半導体集積回路BCHIP1上に構成される発電用コンデンサCM1と、基本的には同じ構造である。図3の(b)に示すCM1と同様に、加速度により生じた慣性力により、可動電極と固定電極間の距離が変わることによりCAS1〜CAS4の静電容量が変化する。例えば、図8の(c)で、紙面の上から下へ向かう方向で加速度が生じたとすると、可動電極VT2および、VT3は、紙面上方へ移動する。このため、CAS1および、CAS3の静電容量は増加し、CAS2および、CAS4の静電容量は減少する。したがって、B1の電位は上昇するが、逆に、B2の電位は下降することになる。この結果、差動増幅器A2の出力電位は上昇し、加速度が加わったことが検出できる。このように、電力発生用半導体集積回路BCHIP1で使用する可変容量コンデンサCM1とは違い、本加速度センサでは容量の変化の相対値が重要であるので、大きな容量は必要とされない。このため、プロセッサその他の回路と同一の半導体集積回路上に集積可能である。なお、検出される電位差は、加えられた加速度に対して必ずしも線形とは限らない。このため、例えば、後述するA/D変換回路経由でマイクロプロセッサCCPU1に読み込んだ後に、CCPU1でソフトウェア的に補正する必要がある。このような場合には、メモリCMEM1に補正テーブルを格納しておくことが好適である。
本加速度センサを使用することにより、例えば、加速度のDC成分をCCPU1にて分離することにより、重力方向が検出可能である。さらに、90度で直交する方向(XY方向)に2個使用して、さらに、チップの上下方向にも形成することにより、三次元の加速度がわかる。つまり、本モニタチップがどのような角度でコンクリート(壁、床)内部に設置されているかがを把握することが可能となる。これは、後述するようにコンクリート内部に加わる応力分布の算定の際に必要な情報である。
図8の(d)および(e)に示すのは、圧力センサPS1の構成例である。このうち、図8の(d)に示すのは、静電容量式の圧力センサの構成例であり、基準電圧発生回路VR3、アナログスイッチASW1、ASW2、増幅器A4、積分コンデンサCF1、感圧コンデンサCS1、および、基準コンデンサCR1から構成される。感圧コンデンサCS1は、図8の(d)の右側に示されるように半導体集積回路基板SB1上に、MEMS等の微細加工技術により、内部に中空ギャップ(GAP1)を形成された、圧力により撓むダイヤフラムDA1、および、中空ギャップGAP1の両側に形成された対向電極EL1、EL2により形成される。本圧力センサは、従来のものと基本的には同じ構造であるため、ここでは、動作の詳細な説明は省略する。なお、このような回路構成により、原理的には、圧力に線形に比例した電圧が増幅器A4の出力にて得られるようにすることが可能である。
一方、図8の(e)に示すのは、半導体歪ゲージ式の圧力センサの構成例である。半導体集積回路の基板SB2そのものに、エッチングにより圧力で撓むダイヤフラム(DA2)を形成して、DA2上にポリシリコン等で形成される歪ゲージ抵抗(GR1〜GR4)を形成する。ダイヤフラムDA2が圧力により撓むことで発生する、歪ゲージ抵抗の抵抗値の変化を、GR1〜GR4で形成されるブリッジ回路および増幅器A5により検出し、圧力を測定する。本形式の圧力センサも、本発明に特有なものではないので、ここでは動作の説明は省略する。
前述したように、以上の圧力センサは、圧力窓PWIN1(図2参照)経由でモニタチップ外部に加わる圧力を測定可能である。以上の圧力センサと加速度センサ、後述する無線電波を利用した位置検出を併用し、さらに、コンクリート内部に多数埋め込まれたモニタチップからの検知された情報を集計することにより、コンクリート内部の応力分布を測定することが可能となる。
以上の各センサの出力はアナログ値であるため、プロセッサに取り込んで、異常値かどうかを判断してメモリに格納して、さらに、無線にて外部機器に送信するためには、ディジタル値に変換する必要がある。アナログ値からディジタル値への変換は、それぞれのセンサの出力に、A/D変換器を接続すれば実現されるが、チップ面積や消費電力の点で、複数のA/D変換回路を設置するのは好ましくない。このため、以下の図9に示すA/D変換回路にて、一括してディジタル値への変換を行うほうがより好ましい。
図9に示すように、本発明のモニタチップ搭載のA/D変換回路(AD1)は、バスインタフェース回路ADIF1、A/D変換回路本体であるADC1、および、アナログスイッチASW10〜ASW12で構成される入力切り替えスイッチASWG1、プログラマブルゲインコントロール増幅器PGA1、これらの回路の動作パラメータを設定するA/D変換制御回路ADCONT1から構成される。入力切り替えスイッチASWG1、および、プログラマブルゲインコントロール増幅器PGA1は、バスCBU1経由でCCPU1から送信される制御コマンドに応じて、制御回路ADCONT1にて動作パラメータを設定する。
例えば、電気抵抗を測定する場合には、測定に先立ち、CCPU1により、入力切り替えスイッチASWG1がI4を選択(ASW11:D0、ASW12:D0)し、プログラマブルゲインコントロール増幅器PGA1の設定ゲインが電気抵抗センサに相応しいゲインになるように、バスCBU1経由で、ADCONT1内の制御レジスタを設定する。このように設定することにより、電気抵抗センサPS1の出力SRをPGA1経由でA/D変換器に取り込んでディジタル値に変換し、バスインタフェースADIF1経由でCCPU1に取り込む。同様に、他のセンサの出力を読み込みたい場合には、ADCONT1内の制御レジスタに、目的のセンサに合わせたゲイン設定および、入力切り替えスイッチ設定を書き込んで、ADC1を駆動する。このような構成により、半導体集積回路CHIP1の回路サイズを抑えることが可能になるだけではなく、消費電力の増加を抑えることも可能になる。なお、アナログスイッチASW10〜12には、アナログ信号をロスなく通過させるができれば、一般的なものが使用可能である。また、本モニタチップでは、前述したようにモニタすべき情報は、コンクリート内部の温度や電気抵抗など、比較的ゆっくりとしか変化しないものに限られているため、A/D変換回路ADC1には、低速なタイプのもので十分である。
図10の(a)、(b)は、本発明のモニタチップの無線インタフェース回路CRF1、アンテナCANT1、および、整流回路REF1の構成例と接続関係を示した図である。このうち、図10の(a)は、超広帯域無線通信方式であるUWB(Ultra Wide Band)を用いて構成した例である。アンテナ切り替えスイッチRW1、バスインタフェースRFIF1、送信に使用する変調回路MOD1、パルス発生回路PGEN1、および、これらの回路の動作パラメータをCCPU1によりバスインタフェースRFIF1により設定された制御レジスタの内容に応じて制御する制御回路RFCONT1から構成される。具体的には、アンテナ切り替えスイッチRW1は、通常は、アンテナCANT1→REF1に接続されており、高周波送信は行えない状態に設定されている。この状態にて、外部の検査機RC1から読み出しリクエストがあり、高周波電力が照射された場合のみ、整流回路REF1内の整流器D1にて直流に変換されコンデンサC1に充電される。こうして、短時間にて充電が完了すると、電荷監視回路CW1から電源制御回路PC1に起動信号が出力され、半導体集積回路CHIP1の各回路が立ち上がる。同時に整流器D2に接続されたVRFラインも、充電されて、電荷監視回路CW1より、外部検査機器より読み出しリクエストがあったことが検知される。以上の手順にて、図7のデータ送信ルーチンP350が起動される。なお、整流器REF1には、VRFライン用の平滑コンデンサC3を内蔵している。このコンデンサは、RFの有無だけを検知できれば良いため、小容量のものが使用可能であり、第1の半導体集積回路CHIP1内に集積することが可能である。
なお、特に図示しないが、検査機RCから照射される高周波電力を、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)等で変調して、高周波電力に信号を載せて、モニタチップSC1搭載の整流器にてREF1にて復調して信号を取り出して受信する、といったことを行わせることも可能である。この仕組みを応用すれば、検査機RC1からモニタチップSC1へと、制御信号を送信することが可能である。典型的には、モニタチップの検知動作の時間間隔を制御する、あるいは、その他の動作パラメータをコントロールすることが可能である。
データ送信ルーチンP350においては、CCPU1がバスCBU1経由で制御回路RFCONT1内のレジスタを設定して、アンテナ切り替えスイッチRW1を変調器MOD1の出力につなぎ変えて、さらに、バスCBU1経由でデータを変調器MOD1に順次送り込むことにより、データを送信する。なお、このアンテナ切り替えスイッチRW1は、PINダイオード等の半導体素子や、半導体チップ表面にMEMSプロセスによって作成された微細接点等により構成可能であり、PINダイオードあるいはMEMS微細接点のバイアス電圧を制御してRF信号の接続先を切り替えることができる。これらについては、本発明に特有なものではないので、ここでは詳細な説明は省略することとする。
UWBでは、搬送波を一切使用せずに、高周波パルス信号そのものを変調してデータを送受信する。例えば、送信したいデータが“1”の時はパルスを送出し、“0”の時は、パルスを100ps遅らせて送出する等により、パルス列を送信データにて変調する。このため、図10の(a)に示すように、搬送波を発生するのに必要な発振器や増幅器が不要であり、高周波パルスを発生するパルスジェネレータPGEN1と、そのパルスを送出するかどうかをコントロールする変調器MOD1のみで構成可能である。すなわち、送信アンプ等が不要となり、高周波送信回路の回路規模を小さく抑えることが可能である。この結果、半導体集積回路CHIP1の製造コストを抑えられると同時に低消費電力化も実現できる。
さらに、UWBでは、比較的短い通信距離しか要求されない場合、RF送信電力を抑えることが可能である。本発明のモニタチップの用途では、例えば、コンクリート壁の内部に埋めたモニタチップから検査機までの距離(典型的には1m程度)で十分である。このため、RF送信電力を、例えば、10μW程度に設定することも可能である。このように、UWBでは超低消費電力な無線通信が実現可能であり、本発明の建造物品質モニタシステムに望ましい無線通信方式である。
さらに、本発明に特有なものとして、UWBパルスの周波数帯域を2GHz程度に押さえる点が挙げられる。図11に示すのは、コンクリートの電磁波透過特性の一例である。コンクリート中の電磁波透過特性は、▲1▼コンクリートの厚さ、▲2▼コンクリート内の鉄筋の有無などに支配されるが、基本的には、3GHzを超える高い周波数では、電磁波をほとんど透過しないという性質を有する。このため、データを取りこぼしせずに確実に無線通信を行うためには、無線通信で使う周波数帯域をコンクリートの物理的特性に適合させるのは実用上必要不可欠である。このように、使用周波数帯域をコンクリートの電波透過特性に適合させた本発明に特有なUWB送信回路を利用することにより、はじめて、コンクリート内部に埋め込んだモニタチップからデータの読み出しが可能となる。
以上のようにUWBは本発明のモニタチップに最適な無線通信方式である。しかし、現状では、日本を含む多くの国において正式には認可されていないのが現状である。このため、将来的には認可される予定であるが、現状では、暫定的に他の無線通信方式を使用する必要がある。この目的で構成したのが、図10の(b)に示す、本発明のモニタチップ用の第2の無線インタフェース回路である。図に示すように、本無線インタフェース回路は、アンテナ切り替えスイッチRW1、バスインタフェースRFIF1、送信に使用する変調回路MOD1、発振回路VCO1、送信アンプPSA1、および、これらの回路の動作パラメータをCCPU1によりインタフェースRFIF1により設定された制御レジスタの内容に応じて制御する制御回路RFCONT1から構成される。これらの各回路は特に本発明に特有なものではないので、ここでは詳細は説明しないが、前述した図10の(a)の回路と同様に、データ送信のリクエストがあった場合に、CCPU1がRFCONT1内の制御レジスタを送信モードに設定し、バスインタフェース経由で変調器MOD1に送信データを送る。MOD1は送られてきたデータを元に発振回路VCO1で生成された搬送波を変調する。変調方式には、PSK(Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等の様々な方式が適用可能であるが、本発明に特有なものではないので、ここでは詳細な説明は省略する。以上のようにして、検知データは搬送波に載せられて、アンテナ切り替えスイッチRW1経由で検査機へと送信される。
図10(b)に示すように、本方式の送信回路では、送信アンプや発振回路が必要となる。このため、図10(a)のUWB方式の送信回路よりも回路規模が大きくなってしまう。さらに、送信電力も、例えば、100μW程度必要となる。このため、UWB方式の送信回路よりも消費電力が大きくなってしまう。しかし、既に述べたように、本発明のモニタチップでは、データの送信の電力は、外部の検査機RC1からの高周波電力で賄う。このため、検査機からの高周波電力を大きくすれば、モニタチップに大きな電力を供給できるため、実用上問題ない。さらに、本モニタチップに内蔵するコンデンサC1の容量を大きくして、データ送信間隔を長くする、つまり、充電時間を長く取れば、より多くの電力が蓄えられるため、送信回路の消費電力が増えたとしても正常に動作させることが可能となる。つまり、UWBではなく、狭帯域の無線通信方式を使用する、本方式の第2の無線インタフェース回路でも実用上問題なくコンクリート中からのデータ送信が行える。
以上が本発明のモニタチップの構成と動作の説明であるが、以下、モニタチップからデータを受信して品質判定を行う検査機RC1の動作について説明を行う。図12に示すのは、本発明の検査機RC1に搭載する品質判定プログラム(QPR1)の動作のフロチャートである。品質検査に先立ち、本検査機に特有な位置検出ルーチン(P400)および、位置情報読み取りルーチン(P410〜414)にて、コンクリート中に埋め込まれたモニタチップがどこの埋まっているのか調べる。このように位置検出をした上で、モニタチップからデータを読みだす事により、建造物のどのあたりがどういう状態のコンクリートで施工されたのかが明らかになる。図13に示すのが、この位置検出の動作原理、および、検査機RC1の無線インタフェース回路RF1の構成の詳細である。以下、図12および図13を参照して説明する。まず、図13に示すように、互いに距離をおいて設置した検査機RC1のアンテナANT1〜ANT3から、無線インタフェース回路RF1内の送信アンプ兼発振回路RP1にて発生された搬送波のみの高周波信号(PL1〜PL3)を、モニタチップSC1に向けて照射する(P411ルーチン)。モニタチップSC1は、前述したように、照射された高周波電力により起動され、自身のチップID番号(識別子)をデータとする信号を無線電波にて送信する。このモニタチップからの送信電波を、無線接続(WL1〜WL3)経由で受信(P412ルーチン)する。受信信号(RPL1〜PRL3)は、検査機RC1の無線インタフェース回路RF1内のアンテナ切り替え回路RRSWを経由して受信アンプ(RR1〜RR3)にて所定の信号レベルまで増幅される。最終的には、相関器(COR1〜COR3)にて、送信データが復調される(P413ルーチン)。相関器は、パルス発生器(PGEN1)から供給されるパルス列と、受信されたパルス列の相関をとる。具体的には、例えば、パルス列が100ps遅れた位置にあるかを検出して、データを再生する働きをする回路である。この相関器には、一般には、複数のA/D変換器から構成される。データ復調と同時に、図13のRWF1に示す、受信波それぞれの到達時間(dT1〜dT3)も検出する。これらの到達時間差(dT1〜dT3)と、アンテナ(ANT1〜ANT3)の設置場所の情報から、いわゆる3点測量の原理にてモニタチップの位置を算出(P414ルーチン)する。なお、この位置算出は、例えば、図13に示すように、無線インタフェース回路RF1内の搭載した位置算出用の演算回路(RCAL1)にて実行可能であるが、検査機RC1内のプロセッサ(CPU1)に、算出した到達時間差(dT1〜dT3)データを渡して、CPU1でソフトウェア的に実行することも可能である。なお、以上の受信アンプ、相関器、位置算出用の演算回路、パルスジェネレータ他については、本発明に特有なものではないので、ここでは詳細な説明は省略する。データを送信しているモニタチップが複数あれば、復調されるモニタチップの識別子分だけ、位置情報の解析を繰り返し実行する。このようにして、本検査機RC1が検査対象とするモニタチップの識別子と位置情報を記述したファイル(PD400)を作成する。本位置情報ファイルPD400のデータ構造の一例を図14の(a)に示す。なお、以上の検査機の説明では、UWBで無線通信を行うことを仮定したが、相関器を通常の復調器に置き換えれば、QPSKやQAM等の無線方式でも、同様の構成で検査機を構成することが可能である。
なお、以上の例では、3本のアンテナ(ANT1〜ANT3)により、位置を検出する例を示した。しかし、UWBでは搬送波なしでパルスにより信号を送信するため、1本のアンテナだけでも、モニタチップとの距離は測定可能である。すなわち、検査機RC1のアンテナに指向性を持たせて、さらに、アンテナ自体の方向を変えられるようにしておき、アンテナの方向を変えながらスイープすることによっても、モニタチップの位置を検出することが可能である。このような構成にすることで、検査機を小型化することが可能となる。
以上のようにして、位置情報読み取りルーチンP410にて、データを送信しているモニタチップの識別子とその位置情報が取得される。次に、データ読み取りルーチンにて、データ受信ルーチンP460が起動され、モニタチップからのデータ読み込みが開始される。データ受信ルーチンP460では、位置情報読み取りルーチンP410と同様に、まずRF照射ルーチンP461にて、モニタチップにデータ送信のための電力供給を行う。次に、受信ルーチンP462および復調ルーチンP463にて、照射された高周波電力にて起動したモニタチップからのデータを受信し、前述した手順にてデータを復調する。復調されたデータより、モニタチップ識別子とデータ本体を分離して(P464ルーチン)、結果を検知データファイルSD400に書き込む。図14の(b)に、この検知データファイルSD400のデータ構造例を示す。以上の処理を、前述した位置検出ルーチンにて作成された位置情報ファイルPD400に記載されているチップ識別子を持つ、本検査機にて通信可能なすべてのモニタチップに対して処理を行い、検知データファイルSD400を完成させる。
次に、品質判定ルーチンP470にて、完成した検知データファイルSD400を元にコンクリートの品質を行う。この品質判断ルーチンは、検知データファイルSD400に収集された、各モニタチップがモニタした、例えば、電気抵抗値から、コンクリートペースト作成時の水分量あるいは塩化物イオン量が適切であったかの判断を行う。なお、P490ルーチンにて、本検査機RC1内蔵のネットワークインタフェースNI1経由で、広域ネットワーク網WAN1上に設置された管理サーバーSV10上のデータベースDB10にアクセスして、例えば、電気抵抗値とコンクリート品質との相関関係についてより詳細な情報を照会して、品質判定精度を高めることも可能である。以上のようにして、判定された結果を結果表示ルーチンP480にて表示して検査を終了する。
なお、この品質判定ルーチンP470では、上記の他にも、例えば、コンクリート中の応力分布を解析して、表示することも可能である。図15に示すのは、この目的で使用可能な、本発明の応力分布解析ルーチンの構成例である。図15のPFIG1に示されるように、本発明のモニタシステムでは、応力定義式EQ10にそのまま従って、コンクリート内部の局所的な圧力から応力をもとめる。例えば、PFIG1の例だと、モニタチップSC1〜SC4が受けている圧力dP1〜dP4を検知データファイルSD400から集計する(P491ルーチン)。この際に、位置情報ファイルPD400に記憶されている、各々のモニタチップの方位を、上記圧力情報dP1〜dP4に加味することにより、応力分布を算出する(P492ルーチン)。最後に、結果を表示する、あるいは、管理サーバーに送信して処理を終了する。なお、既に述べたように、各モニタチップの方位は、内蔵する加速度センサAS1が検知した加速度信号のDC成分から割り出した重力方向、および、位置検出ルーチンにて求めた検査機RC1のアンテナANT1〜ANT3に対する方向から割り出す。
以上が、本発明の建造物品質モニタ方法の概要であるが、本発明では複数のモニタチップからの情報を元にして、総合的に品質判定を行うことにより、検査精度を向上させている点に特徴がある。すなわち、コンクリート内部に多数のモニタチップを作成時に混ぜ込むことにより、品質を判定したい部分に複数のモニタチップが存在するようにあらかじめ設定しておく。検査時には、これら複数のモニタチップがモニタしてきたデータを余すところなく取得し、基本的には、多数決の原理にて、品質判断を行う。例えば、測定ポイントに3つのモニタチップが存在し、そのうちの2つのモニタチップが、「水分量は異常であった」と報告し、残りの1つが「水分量は正常であった」と報告した場合には、多数決により、「水分量は異常であった」と判定する。逆に、「水分量が正常であった」と報告するモニタチップの方が多い場合は、「水分量は正常であった」と判定する。このように、多数決の原理を品質判定に持ち込むことにより、一部のモニタチップが誤動作した場合、あるいは、ノイズ等でモニタチップからのデータ受信に誤りがあった場合等に、間違った品質判定を下す危険を回避可能である。前述したように本発明のモニタチップは大量生産すればするほど製造コストを下げられる半導体プロセスにて製作される。このため、きわめて安価に、大量にモニタチップをコンクリート中に設置可能であり、上記の本発明のモニタシステム/モニタ方法が有する、優れた特徴を最大限生かすことが可能である。これに対して、従来技術にて紹介したモニタシステム/モニタ方法では、センサは非常に高価であり、基本的に1つの測定ポイントには1つセンサしか配置されていない。このため、間違った判定を下してしまう危険性はかなり高いものと考えられる。さらに、センサが故障した場合には、システム全体が動作不能になってしまう恐れもあるものと考えられる。
なお、前述したように本発明のモニタチップでは送信電力が限られるため、検査機RC1で一度に検査できるのは、数m程度の距離内に限られる。このため、建造物全体の品質をチェックするには、例えば検査機RC1に自走装置を具備させて建造物内を移動させて、上記P400〜P450ルーチンを建造物全体に対して行う必要がある。検査機を複数台用意すれば、同時に処理できるため、実用上問題になることはないと思われるが、恒久的に建造物をモニタしたい場合などには問題になるものと予想される。この問題を解決するために考案したのが、図16に示す、中継機付のモニタシステムである。
図16の(a)に示されるように、本モニタシステムでは、検査機RC1の代りに、中継機RPT20〜RPT22を、建造物BUL1内のコンクリートCON1の壁/床等に近接させて分散して配置する。これらの中継機PT20〜RPT22は、典型的には、図16の(b)に示すように、アンテナANT20、無線インタフェース回路RF1、プロセッサCPU1、メモリMEM1、ネットワークインタフェースNI1から構成される。これらの回路の内部構成は、基本的には、検査機RC1に内蔵のものと同じである。これらの中継機RPT20〜RPT22は、ローカルネットワークインタLN20〜LN23およびLAN20にてゲートウェイGW20と相互に接続されている。また、ゲートウェイGW20経由で広域ネットワークWAN1に接続可能で、WAN1上の管理サーバーSV10に接続可能である。
中継機RPT20〜RPT22は、管理サーバーSV10、あるいは、ゲートウェイGW20からのリクエストに従い、それぞれ自分の近隣のモニタチップ(SC1〜SC9)と無線通信(WL1〜WL3、WL4〜WL6、WL7〜WL8)を行って、モニタ結果をGW20経由で管理サーバーに報告する。なお、既に説明したように、このデータ送信のリクエストはそれほど頻繁に行う必要はなく、例えば、短くても1時間に1回程度の頻度で十分である。以上のように、図16に示す中継機付のモニタシステムにて、建造物を恒久的にモニタすることが実現できる。
以上を補足すると、本発明は、建造物に組み込まれた、半導体計測の対象となる物理量を検知するセンサを搭載した半導体集積回路装置と、前記半導体集積回路装置にて検知した信号を受け取とり、受け取った検知信号に基づいて該建造物の品質を判定する検査機から構成されることを特徴とする建造物品質モニタシステムであって、前記半導体集積回路装置は搭載するメモリ内に固有のID番号を記憶し、検知した信号とともに、前記固有のID番号を付加して検査機へ送信することを特徴とし、さらに、前記半導体集積回路装置から検査機への検知信号の送信は無線にて送信することを特徴とする建造物品質モニタシステムであって、特に、前記半導体集積回路装置から検査機への無線送信の方式を、超広帯域無線通信方式である、UWB(Ultra Wide Band)により、パルス列を用いて送信することを特徴とする建造物品質モニタシステムである。
また、前記建造物品質モニタシステムにおいて、特に、前記半導体集積回路装置から検査機へ検知信号を送信する目的で使用する無線の周波数帯域として、2GHz以下の周波数帯域を使用することを特徴とする建造物品質モニタシステムである。
さらに、本発明は、半導体計測の対象となる物理量を検知するセンサを搭載した半導体集積回路装置を建造物に組み込む第1のステップを具備し、前記半導体集積回路装置において、前記センサを動作させて建造物内のコンクリートの物理量を検知する第2のステップを具備し、前記半導体集積回路装置に搭載したメモリに検知信号を記憶する第3のステップを具備し、前記半導体集積回路装置に搭載した前記メモリに記憶された検知信号を読み出す第4のステップを具備し、読み出した検知信号を前記半導体集積回路装置の外部に設けられた検査機に送信する第5のステップを具備し、検査機にて送信されてきた検知信号に基づいて建造物の品質判定を行う第6のステップを具備することを特徴とする建造物品質モニタ方法であって、特に、前記第4のステップにて、前記半導体集積回路装置から検査機への検知信号の送信を無線にて行うことを特徴とする建造物品質モニタ方法である。
また、前記建造物品質モニタ方法において、特に、前記第5のステップにて、前記半導体集積回路装置から検査機へのデータ送信を使用周波数帯域が2GHz以下の無線信号にて行うことを特徴とする建造物品質モニタ方法である。
また、前記建造物品質モニタ方法において、特に、前記第6のステップにおいて、前記建造物内に組み込まれた半導体集積回路装置の位置検出を行う、第7のステップを具備することを特徴とする建造物品質モニタ方法であって、特に、複数本のアンテナを具備する検査機により、前記建造物内に組み込まれた半導体集積回路装置からの無線電波信号を受信して、それらの無線電波信号の到達時間差に基づいて、前記半導体集積回路装置の位置検出を行う特徴とする建造物品質モニタ方法である。
さらに、本発明は、前記建造物品質モニタシステム、および、前記建造物品質モニタ方法において、前記半導体集積回路装置として、半導体計測の対象となる物理量を検知するセンサと、前記センサにより検知した信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路と、前記ディジタル信号を処理するマイクロプロセッサと、前記センサにより得た情報を格納するメモリと、前記マイクロプロセッサにより処理した信号を外部へ送信する送信回路と、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、および、前記送信回路に、電力を供給するための電力発生装置を具備する半導体集積回路装置を使用することを特徴とする、建造物品質モニタシステム、および、建造物品質モニタ方法である。
さらに、本発明は、半導体計測の対象となる物理量を検知するセンサと、前記センサにより検知した信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路と、前記ディジタル信号を処理するマイクロプロセッサと、前記センサにより得た情報を格納するメモリと、前記マイクロプロセッサにより処理した信号を外部へ送信する送信回路と、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、および、前記送信回路に、電力を供給するための電力発生装置を具備する半導体集積回路装置であって、前記半導体集積回路装置は、力学振動による可変容量コンデンサの静電エネルギーの増加分を回収して電気エネルギーに変換する電力回収回路と、電源制御回路、および、コンデンサを有し、前記電源制御回路は、前記センサ、前記A/D変換器、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、および、前記送信回路に対し、前記電力発生装置により発生した電力の供給または非供給を制御するように構成され、前記電力発生装置は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)プロセスにて形成された可変容量コンデンサを具備し、前記コンデンサは、前記電力発生装置により生じた電力を蓄えるように構成され、前記送信回路は、超広帯域無線通信方式であるUWB(Ultra Wide Band)により、パルス列を用いて送信を行うように構成され、前記メモリには固有のID番号が格納され、前記センサとして少なくとも圧力センサを有し、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、前記送受信回路、および、前記電源制御回路は、一つの半導体基板の上に形成されていることを特徴とする半導体集積回路装置を使用することを特徴とする前記建造物品質モニタシステム、および、前記建造物品質モニタ方法である。
また、本発明は、前記建造物品質モニタシステム、および、前記建造物品質モニタ方法おいて、特に前記半導体集積回路を複数個建造物内に埋め込み、そこから無線にて送信される複数の検知信号を元に、建造物の品質診断を行うことを特徴とする、前記建造物品質モニタシステム、および、前記建造物品質モニタ方法である。
以上のように、本発明のモニタチップを使用することにより、これまでは不可能であった、コンクリート作成時からのコンクリートの品質モニタシステムが実現できる。具体的には、本発明のモニタチップを使用すれば、内蔵する温度センサ、電気抵抗センサ、圧力センサにより、コンクリートの養生時の温度管理は適切であったか、あるいは、コンクリートペーストの水分量、塩化物イオンの含有量は適切であったか、あるいは、コンクリート内部の応力状態に問題がないか、といった情報をモニタすることが可能である。さらに、本発明のモニタチップを使用すれば、コンクリートペースト作成時に他のコンクリート材料と混ぜて、通常通りの建造物作成方法にてほぼ無視できる追加コストにて、品質モニタシステム内蔵の建造物が実現できる。また、半導体集積回路作成プロセスにて製作可能であるため、非常に安価な価格で建造物品質モニタシステムを提供することが可能となる。さらに、本発明のモニタチップでは、内蔵する電力発生装置および超低消費電力動作方式により永続的にコンクリート品質のモニタが可能である。
【実施例2】
実施例1では、図4に示す手順により、コンクリート作成時に本発明のモニタチップを混ぜ込むという方式でモニタシステムを構成する方法を説明した。これに対して、本実施例では、既存の建造物向けに本発明の建造物品質モニタシステム/モニタ方法/モニタチップを適用した例を説明する(図17)。このような場合には、まず、モニタチップ設置ルーチンP135にて、本モニタチップを建造物に設置する。設置方法には様々なものが考えられるが、典型的には、図18に示すように、コンクリートCON1の壁あるいは床等に設置穴(HL1〜HL7)を開けて、モニタチップ(SC1〜SC7)を設置する。さらに、設置穴HL1〜HL7をエポキシ等の樹脂(RES1〜RES7)にて封止する。本モニタチップが誤って外部からの水分その他を検知してしまわないようにするためには、このように樹脂封止するのが望ましい。実施例1の場合と同様にして、モニタチップが発電を行い、センシング動作を開始(P210)する。適当な時間が経過した後に、図1の検査機RC1にて高周波を照射して、モニタチップを起動して、メモリに記憶されているデータを読み込み、品質判定その他を行う(P220、P140)。品質判定の結果、必要に応じてメンテナンス/補強工事を行う。
なお、このように建造物完成後に設置すると、前述したように、コンクリートの品質に最も影響を与えるコンクリートペースト作成時の品質がモニタできない。しかし、現実には、数多くのコンクリート建造物が既にあり、そのすべてを壊して、図4に示す方法でいちから建て直すのは現実的ではない。さらに、図18に示す方法で設置したとしても、例えば、コンクリートの劣化が進んで、クラックが発生して、そこから水が進入したりした場合や、あるいは、コンクリートの腐食が進んで電気抵抗が変化した場合には、本実施例のモニタシステム/モニタ方法でも十分検出可能である。このように、建造物が完成してから設置したとしても、本発明のモニタシステム/モニタ方法/モニタチップは、十分に活用可能である。
【実施例3】
実施例1では、図3に示すように、内蔵する発電装置にて永続的に動作可能なモニタチップによりモニタシステムを構成する例を説明した。一方、既に何度も述べたように、コンクリートの品質に最も大きな影響を与えるのは、コンクリートペースト作成時の品質である。つまり、目的によっては、図4のP100〜P120、P210〜P220の間だけモニタできれば問題ない場合も存在する。
図19の(a)〜(c)に示すのは、この目的に好適な、本発明の第2のモニタチップの構成例である。この図に示されるように、本モニタチップでは、図3の例とは違って、発電用半導体集積回路の代りにボタン電池BA1を搭載する。より詳細には、第1の半導体集積回路CHIP1は、基板BO1の上面(SIDE1)に設置し、ボタン電池BA1を基板BO1の逆の面(SIDE2)に設置し、図2と同様の構造でエポキシ樹脂にてモールドする。
ボタン電池BA1には一般販売されているだけでも様々なもの入手可能であるが、直径1cm以下のものでも、100mAH(ミリアンペ・アワー)程度の電池容量がある。すなわち、センシング動作に1回あたり100μW/1秒間、データ送信動作に1回あたり1mW/10秒間かかったとしても、
センシング: 〜1E−4mA・秒=5.5E−8mAH
データ送信: 〜1E−2mA・秒=5.5E−6mAH
であり、1回あたりの電力消費量は電池容量に比べて無視できる値である。
実際に電池を使用する際には、この他にも電池自体の寿命を考慮する必要がある。このため、たとえ1回あたりの電力消費が少ないとしても、結局は、電池寿命にて使える期間は制限されてしまう。しかし、一般的に、電池は数年の寿命を持つ。このため、本モニタチップを製造してから、実際に建造物に埋め込んで使用するまでの期間を考慮しても、図4のP100〜P120、P210〜P220の間だけモニタチップを動作させて、コンクリートペースト作成時の品質をモニタすることは十分に実現可能である。このように、図19に示す、本発明の第2のモニタチップを使用しても、優れた品質チェック機能を有する建造物品質モニタシステムを構成することが可能である。
さらに、特に図示しないが、本実施例の図19と同様の構成で、ボタン電池を、充電可能な二次電池や数ファラッドの静電容量を実現可能な電気二重層コンデンサに置き換えて、適切な時間間隔で外部より高周波にて電力を供給して、アンテナCANT1、整流器REF1経由にて、二次電池あるいは電気二重層コンデンサに充電して、この充電電力によりセンサの駆動その他を行う、という構成も可能である。なお、二次電池はボタン電池と同程度の寿命しか持たないが、電気二重層コンデンサはそれよりもはるかに寿命が長い。このため、適切な時間間隔にて繰り返し充電して使用すれば、数年程度以上、建造物品質モニタに使用することが可能である。この目的で使用する場合には、図16に示した中継機付のモニタシステムが好適である。
【実施例4】
本実施例では、本発明のモニタシステム/モニタ方法/モニタチップを、以上の実施例以外の建造物に応用した例について、図20に従って説明する。
図20の(a)は、橋脚(BR100)の品質モニタに本発明を応用した例である。この図に示されるように、橋脚BR100は、図4に示した手順にて作成される。すなわち、橋脚を構成するコンクリート中に、本発明のモニタチップ(SC100〜SC132)が埋め込まれた状態で作成されており、実施例1で説明したように、コンクリートペースト作成時からのコンクリートの品質をモニタしており、異常値等をメモリに記憶している。コンクリートの養生が終った時点で、モニタチップ内のデータが、検査機RC100〜RC101、ネットワークN100〜N102、WAN100経由にて、管理サーバーSV100に読み出されて、橋脚BR100の品質判定が行われる。なお、RC100、RC101は検査機としたが、図16で説明した中継機+ゲートウェイの構成にして、永続的にモニタするようにすることも可能である。このように本発明のモニタシステムを橋脚に使用することにより、不適切なコンクリートが使用されたかどうかが一目瞭然にわかる。このため、不適切なコンクリートが使用されるのを防止することが可能となり、高品質なコンクリート製の橋脚が得られるようになる。なお、この図では説明のためにSC100〜SC133のモニタチップしか図示していないが、あくまでも説明のためであり、実使用時がこの形態に限定される訳ではない(以下の図でも同様)。
次に、図20の(b)に示すのは、トンネル(TR200)の品質モニタに本発明を応用した例である。これまでと同様に、トンネルTR200は、図4に示した手順にて作成され、トンネルを構成するコンクリート中に、本発明のモニタチップ(SC200〜SC207)が埋め込まれている。これらのモニタチップは、コンクリートペースト作成時から、コンクリートの品質をモニタしており、異常値等をメモリに記憶している。コンクリートの養生が終った時点で、モニタチップ内のデータが、検査機RC200〜RC201、ネットワークN200〜N202、WAN200経由にて、管理サーバーSV200に読み出されて、トンネルTR200の品質判定が行われる。なお、RC200およびRC201は検査機としたが、図20の(b)と同様に中継機+ゲートウェイの構成にして、永続的にモニタするようにすることも可能である。
次に、図20の(c)に示すのは、崖(CF300)に本発明のモニタチップを設置して、災害検知に使用した例である。これまでと同様に、崖CF300のコンクリート施工部分に、図4に示した手順にて、本発明のモニタチップ(SC300〜SC303)が埋め込まれる。なお、コンクリート施工されていない崖の場合には、図18で示したものと同様の方式、すなわち、崖に穴を開けてモニタチップを埋め込むことにより設置される。このように設置されたモニタチップSC300〜SC303においては、電気抵抗センサにより崖中の土砂あるいはコンクリート施工部分の水分量がモニタされる。また、モニタチップ内蔵の加速度センサにより崖の振動をモニタ可能である。モニタ結果は、検査機RC300(あるいは、中継機+ゲートウェイ)により、定期的に読み出されて、ネットワークN300〜N301、WAN300経由にて、管理サーバーSV300に送信される。このような監視システムにより、例えば、崖を構成する土砂が地すべりが起きるぐらい大量の水分を含んでいる、あるいは、大規模な地すべりが起きる直前の小規模な崩落に伴う振動を検出して、地すべりが起きる前に自動的に警報を出すシステムが構築可能になる。なお、このような警報システムでは、いかにして誤動作を少なくするかが求められる。実施例1で説明したように、本発明のモニタ方法では、モニタチップを測定ポイントに複数個ばらまいて、それらのチップで収集された情報を多数決することで、極力、間違った判定を下さいないようにすることが可能である。このため、本発明のモニタシステムにより、誤警報の少ない、優れた崖崩れ警報システムの構築が可能となる。
さらに、この警報システムを河川の堤防(BNK400)の監視システムに応用したのが、図20の(d)に示す例である。これまでと同様に堤防BNK400のコンクリート施工部分に、図4に示した手順にて、本発明のモニタチップ(SC400〜SC404)が埋め込まれる。なお、コンクリート施工されていない部分については、上記の例と同様に、穴を開けてモニタチップを埋め込むことにより設置される。このように設置されたモニタチップSC400〜SC404においては、電気抵抗センサにより堤防中の土砂あるいはコンクリート施工部分の水分量がモニタされる。また、モニタチップ内蔵の加速度センサにより崖の振動をモニタされる。モニタ結果は、検査機RC400(あるいは、中継機+ゲートウェイ)により、定期的に読み出されて、ネットワークN400〜N401、WAN400経由にて、管理サーバーSV400に送信されて監視される。このような監視システムにより、例えば、河川RV400が増水して堤防内に水が浸水している状態、あるいは、大規模な決壊が起きる直前の小規模な堤防の崩落に伴う振動を検出して、自動的に警報を出すシステムが構築可能になる。なお、上記図20の(c)と同様に、モニタチップを測定ポイントに複数個ばらまいて、それらのチップで収集された情報を多数決することで、極力、間違った判定を下さいないようにすることが可能である。このように、本発明により、誤警報の少ない優れた堤防決壊警報システムの構築が可能となる。
さらに、図20の(e)に示すのは、ガス管/水道管/電力線等の地下埋設型インフラ構造物PL500に本発明のセンサチップを使用した一実施例である。この図に示されるように、本発明のモニタチップ(SC500〜SC506)は、地下埋設型インフラ構造物PL500に接着剤等で付着させてから埋設する、あるいは、土中GR500に埋設時する際にモニタチップも同時に埋設することにより、地下埋設型インフラ構造物インフラの近くの土中に設置される。本モニタチップは地面の微小振動、あるいは、地下インフラ構造物が発する微小振動(例えば、水道管中を流れる水の流動)により、内蔵する電力発生用半導体集積回路にて発電を行い、センサを駆動する。具体的には、地下インフラ構造物PL500が水道管ならば、内蔵する電気抵抗センサにより、水道管周りの土中の電気抵抗を測定することにより、水道管が水漏れを起こしていないかをモニタする。また、ガス管の場合には、内蔵する加速度センサにより、もし、ガスが漏洩した場合には、ガス流出に伴う圧力の変化を検知することにより、ガス漏れが検知可能である。さらに、電力線の場合には、もれ電流の有無を電気抵抗センサにより検知する。これまでの実施例と同様に、モニタチップSC500〜SC506のメモリ内に格納されたモニタ結果は、検査機RC500(あるいは、中継機+ゲートウェイ)により、定期的に読み出されて、ネットワークN500〜N501、WAN500経由にて、管理サーバーSV500に送信され、漏水/ガス漏れ/漏電箇所の有無が判定される。なお、以上の実施例と同様に、モニタチップを測定ポイントに複数個ばらまいて、それらのチップでモニタされた情報を多数決することで、極力、間違った判定を下さいないようにすることが可能である。このように、本発明のモニタシステムにより、誤警報の少ない優れた漏水/ガス漏れ/漏電警報システムの構築が可能となる。さらに、地下に埋設物が埋まっていないかどうかの判定に使用することも可能である。
以上の実施例によれば、内蔵する温度センサ、電気抵抗センサ、圧力センサにより、コンクリートの養生時の温度管理は適切であったか、あるいは、コンクリートペーストの水分量、塩化物イオンの含有量は適切であったか、あるいは、コンクリート内部の応力状態に問題がないか、といった情報をモニタすることが可能となる。
以上、本願発明者よりなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本願発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、本発明の建造物品質モニタシステム/モニタ方法/モニタチップは、建造物の品質モニタに限らず、崖崩れや堤防決壊等の災害検知システムや、あるいは、漏水/ガス漏れ/漏電等の警報システムにも応用可能である。このように、本発明は幅広い分野に応用することが可能であり、これまでに説明した実施例以外にも、同様のモニタシステム、監視システム、警報システム等に使用可能である。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、これまでは不可能であった、コンクリート作成時からの建造物のコンクリートの品質モニタシステムを実現できる。さらに、コンクリートペースト作成時にモニタチップを他のコンクリート材料と混ぜることができるため、通常通りの建造物作成方法を用いて低コストで品質モニタ内蔵の建造物を実現できる。また、本発明のモニタチップは半導体集積回路作成プロセスで製作可能であるため、非常に安価に建造物品質モニタシステムを提供することが可能となる。さらに、本発明のモニタチップは電力発生装置を内蔵し、超低消費電力動作方式を採用しているため、永続的に建造物のコンクリート品質のモニタが可能となる。
【図1】

【図2】



【図4】

【図5】



【図7】

【図8】

【図9】

【図11】

【図10】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】



【図20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に組み込まれ、該建造物の性質に係る物理量を検知するセンサを搭載した半導体集積回路装置と、
前記半導体集積回路装置にて検知された物理量に基づき生成された検知信号を受け取り、受け取った検知信号に基づいて前記建造物の品質を判定する検査機とを具備して成ることを特徴とする建造物品質モニタシステム。
【請求項2】
請求項1記載の建造物品質モニタシステムにおいて、
前記半導体集積回路装置はメモリを具備し、前記メモリは前記半導体集積回路装置に固有のID番号を記憶し、前記半導体集積回路装置は前記検知信号と共に前記ID番号を検査機へ送信することを特徴とする建造物品質モニタシステム。
【請求項3】
請求項1記載の建造物品質モニタシステムにおいて、
前記半導体集積回路装置はメモリを具備し、前記メモリは検知された前記物理量に対応する検知信号を記憶し、前記半導体集積回路装置は前記検査機からの要求に応じて前記メモリから前記検知信号を読み出して前記検査機へ送信することを特徴とする建造物品質モニタシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の建造物品質モニタシステムにおいて、
前記検知信号は前記半導体集積回路装置から前記検査機へ無線で送信されることを特徴とする建造物品質モニタシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の建造物品質モニタシステムにおいて、
前記建造物はコンクリートを主たる要素として構成され、前記半導体集積回路装置は前記コンクリートが固化する前のペースト状態の時から前記建造物に組み込まれており、前記ペースト状態のコンクリートの物理量を検知して前記検知信号を前記検査機に送信することを特徴とする建造物品質モニタシステム。
【請求項6】
建造物の性質に係る物理量を検知して該物理量に対応する検知信号を生成するセンサを搭載した半導体集積回路装置を前記建造物に組み込むステップと、
前記センサを動作させて前記建造物の性質に係る前記物理量を検知して該物理量に対応する前記検知信号を生成するステップと、
前記検知信号を前記半導体集積回路装置の外部に設けられた検査機に送信するステップと、
前記検査機で受信した前記検知信号に基づいて前記建造物の品質判定を行うステップとを含んで成ることを特徴とする建造物品質モニタ方法。
【請求項7】
請求項6記載の建造物品質モニタ方法において、
前記半導体集積回路装置は更にメモリを搭載しており、
前記センサにて生成された前記検知信号を前記メモリに記憶するステップと、
前記メモリに記憶された前記検知信号を読み出すステップとを更に含んで成ることを特徴とする建造物品質モニタ方法。
【請求項8】
請求項7記載の建造物品質モニタ方法において、
前記検知信号を読み出すステップは前記検査機からの要求に応じて前記メモリに記憶された前記検知信号を読み出すステップであることを特徴とする建造物品質モニタ方法。
【請求項9】
請求項7または8のいずれかに記載の建造物品質モニタ方法において、
前記検知信号を前記半導体集積回路装置の外部に設けられた検査機に送信するステップは、前記検知信号と共に前記メモリに記憶された前記半導体集積回路装置に固有のID番号を送信するステップであり、
前記品質判定を行うステップは、前記半導体集積回路装置から前記検知信号と共に送信された前記ID番号に基づいて、前記検知信号を送信した半導体集積回路装置を特定して前記建造物の品質判定を行うステップであることを特徴とする建造物品質モニタ方法。
【請求項10】
請求項9記載の建造物品質モニタ方法において、
前記検知信号を送信した半導体集積回路装置を特定して前記建造物の品質判定を行うステップは、前記半導体集積回路装置の前記建造物内における位置を検出して前記建造物の品質判定を行うするステップであることを特徴とする建造物品質モニタ方法。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれかに記載の建造物品質モニタ方法において、
前記検知信号を前記半導体集積回路装置の外部に設けられた検査機に送信するステップは、前記検知信号を前記半導体集積回路装置から前記検査機へ無線で送信するステップであることを特徴とする建造物品質モニタ方法。
【請求項12】
請求項6乃至11のいずれかに記載の建造物品質モニタ方法において、
前記建造物はコンクリートを主たる要素として構成され、
前記半導体集積回路装置を前記建造物に組み込むステップは、前記コンクリートが固化する前のペースト状態の時に前記半導体集積回路装置を前記建造物に組み込むステップであり、
前記検知信号を生成するステップは、前記コンクリートが固化する前のペースト状態の時に前記センサを動作させて前記建造物の性質に係る前記物理量を検知して該物理量に対応する前記検知信号を生成するステップであり、
前記検知信号を前記半導体集積回路装置の外部に設けられた検査機に送信するステップは、前記コンクリートが固化した後に前記検知信号を前記検査機に送信するステップであることを特徴とする建造物品質モニタ方法。
【請求項13】
請求項6乃至12のいずれかに記載の建造物品質モニタ方法において、
前記センサは、電気抵抗センサ、温度センサ、圧力センサ、または加速度センサのうちの少なくとも1つを含んで成ることを特徴とする建造物品質モニタ方法。
【請求項14】
半導体により計測可能な物理量であって建造物の性質に係る物理量を検知するセンサと、
前記センサにより検知された信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路と、
前記ディジタル信号を処理するマイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサにより処理された信号を外部へ送信する送信回路と、
前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、および前記送信回路のうちの少なくとも1つに電力を供給するよう構成された電力発生装置と、
前記センサ、前記A/D変換器、前記マイクロプロセッサ、および前記送信回路のうちの少なくとも1つに対し、前記電力発生装置により発生した電力を供給するか非供給とするかを制御するよう構成された電源制御回路と、
前記電力発生装置により発生した電力を蓄えるよう構成されたコンデンサとを具備して成ることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項15】
請求項14記載の半導体集積回路装置において、
前記センサにより得た情報を格納するメモリを更に具備して成ることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項16】
請求項15記載の半導体集積回路装置において、
前記メモリは、該メモリを搭載する半導体集積回路装置に固有のID番号を格納することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれかに記載の半導体集積回路装置において、
前記センサは、圧力センサを含んで成ることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項18】
請求項14乃至16のいずれかに記載の半導体集積回路装置において、
前記送信回路は、超広帯域無線通信方式であるUWBにより、パルス列を用いて送信を行うよう構成されていることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項19】
請求項14乃至18のいずれかに記載の半導体集積回路装置において、
前記電力発生装置は、MEMSプロセスにて形成された可変容量コンデンサと、前記建造物の力学振動による前記可変容量コンデンサの静電エネルギーの増加分を回収して電気エネルギーに変換する電力回収回路とを具備して成ることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項20】
請求項14乃至19のいずれかに記載の半導体集積回路装置において、
前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記送信回路、および前記電源制御回路が1つの半導体基板の上に形成されて成ることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項21】
請求項14乃至20のいずれかに記載の半導体集積回路装置において、
前記電力発生装置は、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記送信回路、および前記電源制御回路が形成された第1の半導体チップとは別の第2の半導体チップ上に形成されて成り、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとは共通の基板の互いに反対の面に搭載されて成ることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項22】
請求項14乃至21のいずれかに記載の半導体集積回路装置が埋め込まれて成る建造物であって、
請求項1乃至5のいずれかに記載の建造物品質モニタシステムによって品質判定可能であることを特徴とする建造物。
【請求項23】
請求項14乃至21のいずれかに記載の半導体集積回路装置が埋め込まれて成る建造物であって、
請求項6乃至13のいずれかに記載の建造物品質モニタ方法によって品質判定可能であることを特徴とする建造物。
【請求項24】
建造物の性質に係る物理量を検知するセンサを具備した半導体集積回路装置が埋め込まれ、
前記半導体集積回路装置にて検知された物理量に対応する検知信号に基づいて検査機により品質判定が可能であることを特徴とする建造物。
【請求項25】
請求項24記載の建造物において、
前記半導体集積回路装置は、更に、
前記センサにより検知された信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路と、
前記ディジタル信号を処理するマイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサにより処理された信号を外部へ送信する送信回路と、
前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、および前記送信回路のうちの少なくとも1つに電力を供給するよう構成された電力発生装置と、
前記センサ、前記A/D変換器、前記マイクロプロセッサ、および前記送信回路のうちの少なくとも1つに対し、前記電力発生装置により発生した電力を供給するか非供給とするかを制御するよう構成された電源制御回路と、
前記電力発生装置により発生した電力を蓄えるよう構成されたコンデンサと
を具備することを特徴とする建造物。

【国際公開番号】WO2004/046704
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553174(P2004−553174)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014544
【国際出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】