説明

弁装置および冷凍サイクル装置

【課題】弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性を耐久性よく得ること。
【解決手段】弁体17が弁ポート12の周りの円環状弁座面25に着座する円環状着座面26をゴム状弾性材製のパッキン24によって構成し、円環状弁座面25には弁ポート12を取り囲む配置の円環状溝27を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁装置および冷凍サイクル装置に関し、特に、全閉機能を有し、冷凍サイクル装置の膨張弁等として用いられる弁装置および冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置の膨張弁等として用いられる電動式コントロールバルブとして、雄ねじ部材と雌ねじ部材とのねじ係合による送りねじ機構を含み、送りねじ機構を電動モータによって回転駆動し、送りねじ機構によって回転運動を弁リフト方向の直線運動に変換し、当該直線運動によって弁体を弁リフト方向に移動させて流量制御を行う電動式コントロールバルブが知られている(例えば、特許文献1、2、3)。
【0003】
冷凍サイクル装置の膨張弁は、絞り作用によって冷媒の断熱膨張を行うことを意図しているから、膨張弁として用いられる電動式コントロールバルブ等には、冷媒の流量を完全に遮断する全閉状態を取るように設計されていないものがあり、また、全閉するように設計されたものであっても、弁の閉止性が不充分な場合がある。
【0004】
このため、一台の共通室外機に対して複数台の室内機が並列に接続されているようなマルチタイプの空気調和装置や冷凍・冷蔵ショーケース等において、一部の室内機の運転を休止させるような場合には、その室内機の冷媒の流れを完全に止めるべく、膨張弁とは別に、電磁開閉弁を膨張弁の高圧側に直列に接続する必要が生じる。
【0005】
このことに対して、弁体に、流量制御を行う流量調整部とは別に、弾性材製のパッキンを取り付け、弁ポートの周りに設けられている環状弁座面にパッキンが着座することにより、全閉状態となる閉鎖機能を有する膨張弁が提案されている(例えば、特許文献4)。
【0006】
弾性材製のパッキンを環状弁座面に面接触させてシーリングを行う面シール構造の場合、高い耐弁漏れ性を得るためには、パッキンを環状弁座面に押し付ける弁閉力を相当高くしたり、弾性変形し易い軟らかいゴム製のパッキンを使うなどしなくしてならない。このため、弁駆動負荷が増大したり、耐久性に問題が生じたりする。
【0007】
なお、各種の弁装置において、全閉時の気密シールを行うために、弁体あるいは弁座側に、Oリングやゴム状弾性材製のパッキンを設けることは、種々行われている(例えば、特許文献5、6、7、8、9)。
【特許文献1】特許第2615021号公報
【特許文献2】特開2001−271956号公報
【特許文献3】特開2003−148643号公報
【特許文献4】実開昭60−184469号公報
【特許文献5】実開昭56−50865号公報
【特許文献6】実開平5−40678号公報
【特許文献7】特開平8−135817号公報
【特許文献8】特開平11−108504号公報
【特許文献9】特開2003−269642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性を耐久性よく得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による弁装置は、弁ハウジング内に弁体が直線移動可能に設けられ、当該弁体が直線移動によって弁ハウジング側の弁ポートの周りに設けられている環状弁座面に着座することにより、前記弁ポートを閉じる全閉状態となる弁装置において、前記環状弁座面への着座時に該環状弁座面に当接する前記弁体の環状着座面と前記環状弁座面とのうち、何れか一方が弾性材製のシール部材によって構成され、他方に前記弁ポートを取り囲む配置の環状溝が形成されている。
【0010】
この発明による弁装置は、好ましくは、前記環状弁座面と前記環状着座面とは互いに面接触する平らな環状面を有し、前記シール部材が、前記弁体あるいは前記弁ハウジング側に固定装着されたパッキンにより構成されているか、あるいは前記弁体にインサート成形されたパッキンにより構成されているか、あるいは前記弁体の全体が弾性材により構成され、前記弁体自体がシール部材をなしている。
【0011】
この発明による弁装置は、好ましくは、前記シール部材が、前記弁ハウジングの前記弁ポートの周縁部分に埋設されたOリングにより構成されている。
【0012】
この発明による弁装置は、更に、前記弁体が、前記環状着座面に連続して形成され、前記弁体の直線移動位置に応じて前記弁ポートの実効開口面積を変化させる流量調整部を含み、定量的な流量制御を行う流量制御弁として構成することができる。
【0013】
また、この発明による弁装置は、ハウジング内に弁体が直線移動可能に設けられ、前記弁体は、その直線移動位置に応じて前記弁ポートの実効開口面積を変化させる流量調整部を含み、定量的な流量制御を行う弁装置において、前記弁体の前記流量調整部を除く部分の外周部に環状板部材が羽根状に固定装着され、前記弁体の直線移動によって前記環状板部材が前記弁ハウジング側の前記弁ポートの周りに設けられている環状弁座面に着座することにより全閉状態になる。
【0014】
また、この発明による弁装置は、弁ハウジング内に弁体が直線移動可能に設けられ、前記弁体は、その直線移動位置に応じて前記弁ポートの実効開口面積を変化させる流量調整部を含み、定量的な流量制御を行う弁装置において、前記弁体の前記流量調整部を除く部分の外周部に、ストレート筒部を含む弾性材製のカップ状部材が固定装着され、前記弁ハウジング側には底部に前記弁ポートが開口しているボア部が形成されており、前記弁体の直線移動によって前記カップ状部材の前記ストレート筒部の外周面が前記ボア部の内周面に摺接することにより全閉状態になる。
【0015】
この発明による弁装置は、雄ねじ部材と雌ねじ部材とのねじ係合による送りねじ機構と、送りねじ機構を回転駆動する電動モータとを含み、前記送りねじ機構を電動モータによって回転駆動し、前記送りねじ機構によって回転運動を弁リフト方向の直線運動に変換し、当該直線運動によって前記弁体を直線移動させる電動式コントロールバルブとして構成することができる。
【0016】
この発明による冷凍サイクル装置は、上述の発明による弁装置を膨張弁として冷媒回路中に有する。
【0017】
また、この発明による冷凍サイクル装置は、一台の共通室外機に対して複数台の室内機が並列に接続されているようなマルチタイプの冷凍サイクル装置等において、上述の発明による弁装置を膨張弁として冷媒回路中に有する。
【発明の効果】
【0018】
この発明による弁装置は、弁体の環状着座面が弁ハウジング側の環状弁座面に着座する全閉状態時には、環状着座面と環状弁座面とのうち何れか一方を構成する弾性材製のシール部材が、他方に形成された弁ポートを取り囲む配置の環状溝に局部的に喰い込むように弾性変形する。これにより、単純な面シール構造である場合に比して、弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性を耐久性よく得ることができる。
【0019】
また、弁体の流量調整部を除く部分の外周部に羽根状に設けられた環状板部材が弁ポートの周りに設けられている環状弁座面に着座することにより全閉状態になるものでは、圧力差による押付力が環状板部材に作用し、環状板部材が環状弁座面に押し付けられることにより、弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性を耐久性よく得ることができる。
【0020】
また、弁体の流量調整部を除く部分の外周部に設けられたカップ状部材に設けられたストレート筒部の外周面が、弁ハウジング側に形成されたボア部の内周面に摺接することにより全閉状態になるものでも、圧力差による押付力がカップ状部材のストレート筒部に作用し、ストレート筒部がボア部内周面に押し付けられることにより、弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性を耐久性よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明による弁装置の実施形態1を、図1〜図3を参照して説明する。
【0022】
図1に示されているように、実施形態1による弁装置は、カップ状の金属製あるいは合成樹脂製の弁ハウジング10を有する。弁ハウジング10は、弁室11と、弁室11の下底部に開口形成された丸穴形状の弁ポート12と、横継手13を接続され弁室11に直接連通する入口ポート14と、下継手15を接続され弁ポート12を経て弁室11に連通する出口ポート16とを有する。
【0023】
弁室11には金属製あるいは合成樹脂製の弁体17が配置されている。弁体17は下側が円錐形をした流量調整部(ニードル弁部)18を有する。弁体17は上基部17Aにて円筒状の弁支持筒体19と固定連結されている。
【0024】
弁ハウジング10の上部には取付板20によって固定支持部材(雌ねじ部材)21が固定されている。弁支持筒体19は、固定支持部材21に形成されているガイド孔22に軸線方向(上下方向)、つまり弁リフト方向に摺動可能に嵌合し、弁体17を弁ハウジング10に固定された固定支持部材21に対して弁リフト方向に直線移動可能に支持する役割を果たしている。
【0025】
この支持構造により、弁体17は、弁リフト方向への直線移動によって流量調整部18が弁ポート12に出入可能に進入することにより、弁リフト方向の直線移動位置に応じて弁ポート12の実効開口面積を増減し、定量的な流量制御を行う。
【0026】
弁体17には、その流量調整部18の根もと部の周りに、シール部材として、かしめ保護リング部材23を介してゴム状弾性材製の円環状のパッキン24が同心にかしめ装着されている。図2に示されているように、パッキン24の平らな下底面が、弁ポート12の周りに同心に形成されている平らな円環状弁座面25に着座する円環状着座面26をなしている。円環状着座面26が円環状弁座面25に着座することにより、弁ポート12を閉じる(閉塞する)全閉状態になる。
【0027】
パッキン24を構成するゴム状弾性材は、ゴム状弾性を示す材料であり、ゴムあるいはゴム類似物質を指す。パッキン24に適したゴム状弾性体としては、加硫ゴム、シリコンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレン共重合体系エラストマ(EPM)等が挙げられる。また、ゴムに限らずPTFE、PFA、ナイロン(登録商標)、PPS、PEEK等の樹脂材でもよい。
【0028】
弁ハウジング10の円環状弁座面25には、弁ポート12と同心に、円環状溝27が形成されている。円環状溝27は、図3に示されているように、本実施形態ではV形溝になっており、その最大開口幅は0.1〜1.0mm程度、最大深さは0.1〜1.0mm程度でよい。
【0029】
本実施形態では、円環状着座面26の全体と、円環状弁座面25の円環状溝27の部分を除く部分とが、互いに面接触する平らな環状面をなす。
【0030】
図1に示されているように、弁支持筒体19は、雄ねじ軸28(雄ねじ部材)の下フランジ部28Aを、弁支持筒体19の上部円環リップ部19Aと、弁支持筒体19内に配置されて圧縮コイルばね29によって付勢された押圧部材30とで、高滑性ワッシャ31を介してスラスト方向(弁リフト方向)に挟み込んだ形態で、雄ねじ軸28と相対回転可能に連結され、雄ねじ軸28と共に弁リフト方向に移動する。
【0031】
雄ねじ軸28は雄ねじ部32を有している。雄ねじ部32は固定支持部材21に形成された雌ねじ部33にねじ係合している。このねじ係合により、雄ねじ軸28は、回転に伴って軸線方向、つまり、弁リフト方向に移動する。
【0032】
この雄ねじ部32と雌ねじ部33とのねじ係合によって送りねじ機構が構成され、送りねじ機構は、雄ねじ軸28の回転運動を同部材の弁リフト方向に直線運動に変換する。
【0033】
弁ハウジング10の上部にはステッピングモータ40のキャン状のロータケース41が溶接等によって気密に固定されている。ロータケース41内には、外周面部42Aを多極着磁されたロータ42が回転可能に設けられている。ロータ42には雄ねじ軸28の上端部28Bが固定連結されている。
【0034】
ロータケース41の外側には、ステータコイルユニット43が差し込み装着されている。ステータコイルユニット43は、詳細を図示されていないが、ステッピングモータ用のものとして、内部に、磁極歯、巻線部、電気配線部を有する周知の気密モールド構造のものである。
【0035】
ロータケース41内には、ロータケース41の天井部より垂下固定されたガイド支持軸44、ガイド支持軸44の外周部に装着された螺旋ガイド線体45、ガイド支持軸44の上端部に形成された固定ストッパ部46、螺旋ガイド線体45に螺合した可動ストッパ部材47、可動ストッパ部材47と係合してこれを蹴り回すロータ42の突起部48があり、これらによって、弁開あるいは弁閉のストッパが構成されている。
【0036】
ステッピングモータ40は、ロータ42によって雄ねじ軸28を回転駆動し、回転に伴う雄ねじ軸28の軸線方向移動によって弁支持筒体19と共に弁体17を弁リフト方向に直線移動させる。これにより、弁体17の流量調整部18の弁ポート12に対する軸線方向位置(弁リフト方向の直線移動位置)が変わり、その軸線方向位置に応じて弁ポート12の実効開口面積が増減し、定量的な流量制御が行われる。
【0037】
弁体17の弁リフト方向の降下移動により、弁ポート12の実効開口面積が徐々に低減し、これに応じて弁ポート12を流れる流体の流量が徐々に低減する。弁体17が弁リフト方向に所定量降下移動すると、パッキン24による円環状着座面26が円環状弁座面25に着座する。円環状着座面26が円環状弁座面25に着座した後も、引き続き、雄ねじ軸28が弁リフト方向に降下移動すると、圧縮コイルばね29が撓み、それによるばね力によって、図2に示されているように、パッキン24の円環状着座面26が弁ポート12の周りの円環状弁座面25に押し付けられるようになる。これにより、弁ポート12が閉塞される全閉状態になる。
【0038】
このようにして、パッキン24の円環状着座面26が円環状弁座面25に押し付けられると、図3に示されているように、パッキン24が、符号24Aによって示されているように、円環状溝27に局部的に喰い込むように(はまり込むように)弾性変形する。
【0039】
これにより、円環状着座面26と円環状弁座面25の大部分が互いに面接触した状態で、更に、円環状溝27に対するパッキン24の局部的な喰込み部24Aによって、この周辺部で高いシール圧(密着度)が得られるようになる。
【0040】
このことにより、単純な面シール構造である場合に比して、弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性が耐久性よく得られるようになる。また、局部的な喰込み部24Aによって、円環状弁座面25と円環状着座面26との境界面がラビリンス状になり、ラビリンスシール効果も期待でき、全体として、弁漏れ量を低減することができる。
【0041】
また、円環状着座面26と円環状弁座面25との面接触と、パッキン24の円環状溝27への局部的な喰い込みとの組み合わせで、シールが行われるから、細かい異物等によってパッキン24の円環状着座面26が傷付いても、シール部の内側と外側とが連通するシール不良が生じ難くなり、シール部の耐異物性も向上する。
【0042】
ゴムパッキンの局部的な喰い込みは、パッキン接触面側に突条を設け、突条がゴムパッキンを局部的に弾性変形させてゴムパッキン内に入り込むようにすることでも得られるが、この場合には、突条によってゴムパッキンのシール面が相手面より浮き上がる可能性があり、面接触状態を得る信頼性が低下することになる。
【0043】
このことに対して、本実施形態のように、パッキン24が円環状溝27に局部的に喰い込むものでは、円環状着座面26と円環状弁座面25とが面接触したのちに、はじめて喰い込が生じるので、面接触状態を得る信頼性が低下することがない。
【0044】
なお、円環状弁座面25の円環状溝27は、図4に示されているように、径方向に所定の間隔をおいて複数個、同心形成されていもよい。この場合には、円環状溝27に対するパッキン24の局部的な喰込み部24Aの個数が径方向に増え、より一層高い耐弁漏れ性が得られ、同時にラビリンスシール効果も向上する。
【0045】
つぎに、この発明による弁装置の実施形態2を、図5、図6を参照して説明する。なお、図5、図6において、図1、図2に対応する部分は、図1、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0046】
実施形態2による弁装置では、図5に示されているように、弁ポート12が、シール部材として、かしめ保護リング部材36を介して弁ハウジング10にかしめ装着されたゴム状弾性体製のパッキン(弁座部材)35により画定され、その上面が、図6に示されているように、弁ポート12の周りに同心に形成されている平らな円環状弁座面37になっている。
【0047】
パッキン35を構成するゴム状弾性材も、ゴム状弾性を示す材料であり、ゴムあるいはゴム類似物質を指す。パッキン35に適したゴム状弾性体としては、加硫ゴム、シリコンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレン共重合体系エラストマ(EPM)等が挙げられる。また、ゴムに限らずPTFE、PFA、ナイロン(登録商標)、PPS、PEEK等の樹脂材でもよい。
【0048】
弁体17には、その流量調整部18の根もと部の周りに、円環状弁座面37と相対向する円環状着座面34が形成されている。円環状着座面34が円環状弁座面37に着座することにより、弁ポート12を閉じる(閉塞する)全閉状態になる。
【0049】
弁体17の円環状着座面34には、弁ポート12と同心位置に、円環状溝38が形成されている。円環状溝38も本実施形態ではV形溝になっており、その最大開口幅は0.1〜1.0mm程度、最大深さは0.1〜1.0mm程度でよい。
【0050】
本実施形態では、円環状弁座面37の全体と、円環状着座面34の円環状溝38の部分を除く部分とが、互いに面接触する平らな環状面をなす。
【0051】
本実施形態でも、ステッピングモータ40は、ロータ42によって雄ねじ軸28を回転駆動し、回転に伴う雄ねじ軸28の軸線方向移動によって弁支持筒体19と共に弁体17を弁リフト方向に直線移動させる。これにより、弁体17の流量調整部18の弁ポート12に対する軸線方向位置(弁リフト方向の直線移動位置)が変わり、その軸線方向位置に応じて弁ポート12の実効開口面積が増減し、定量的な流量制御が行われる。
【0052】
弁体17の弁リフト方向の降下移動により、弁ポート12の実効開口面積が徐々に低減し、これに応じて弁ポート12を流れる流体の流量が徐々に低減する。弁体17が弁リフト方向に所定量降下移動すると、弁体17の円環状着座面34がパッキン35の弁ポート12の周りの円環状弁座面37に着座する。円環状着座面34が円環状弁座面37に着座した後も、引き続き、雄ねじ軸28が弁リフト方向に降下移動すると、圧縮コイルばね29が撓み、それによるばね力によって円環状着座面34が円環状弁座面37に押し付けられるようになる。これにより、弁ポート12が閉塞される全閉状態になる。
【0053】
このようにして、円環状着座面34が円環状弁座面37に押し付けられると、実施形態1と同様に、パッキン35が円環状溝38に局部的に喰い込むように(はまり込むように)弾性変形する。
【0054】
これにより、円環状着座面34と円環状弁座面37の大部分が互いに面接触した状態で、更に、円環状溝38に対するパッキン35の局部的な喰込み部によって、この周辺部で高いシール圧(密着度)が得られるようになる。
【0055】
このことにより、本実施形態でも、単純な面シール構造である場合に比して、弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性が耐久性よく得られるようになる。また、円環状溝38に対するパッキン35の局部的な喰込み部によって、円環状弁座面37と円環状着座面34との境界面がラビリンス状になり、ラビリンスシール効果も期待でき、全体として、弁漏れ量を低減することができる。
【0056】
また、円環状着座面34と円環状弁座面37との面接触と、パッキン35の円環状溝38への局部的な喰い込みとの組み合わせで、シールが行われるから、細かい異物等によってパッキン35の円環状弁座面37が傷付いても、シール部の内側と外側とが連通するシール不良が生じ難くなり、シール部の耐異物性も向上する。
【0057】
本実施形態でも、パッキン35が円環状溝38に局部的に喰い込むものでは、円環状着座面34と円環状弁座面37とが面接触したのちに、はじめて喰い込みが生じるので、面接触状態を得る信頼性が低下することがない。
【0058】
つぎに、この発明による弁装置の実施形態3を、図7、図8を参照して説明する。なお、図7、図8において、図1、図2に対応する部分は、図1、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0059】
実施形態3による弁装置では、図7に示されているように、弁体17の流量調整部18の根もと部の周りに、シール部材として、ゴム弾性体製のパッキン51がインサート成形されている。パッキン51は、図8に示されているように、円環状の平らな下底面部を有し、この下底面部が、弁ポート12の周りに同心に形成されている平らな円環状弁座面25に着座する円環状着座面52をなしている。円環状着座面52が円環状弁座面25に着座することにより、弁ポート12を閉じる(閉塞する)全閉状態になる。
【0060】
パッキン51を構成するゴム状弾性材も、ゴム状弾性を示す材料であり、ゴムあるいはゴム類似物質を指す。パッキン51に適したゴム状弾性体としては、加硫ゴム、シリコンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレン共重合体系エラストマ(EPM)等が挙げられる。また、ゴムに限らずPTFE、PFA、ナイロン(登録商標)、PPS、PEEK等の樹脂材でもよい。
【0061】
弁ハウジング10の円環状弁座面25には、実施形態1と同様に、弁ポート12と同心に、円環状溝27が形成されている。
【0062】
本実施形態でも、ステッピングモータ40は、ロータ42によって雄ねじ軸28を回転駆動し、回転に伴う雄ねじ軸28の軸線方向移動によって弁支持筒体19と共に弁体17を弁リフト方向に直線移動させる。これにより、弁体17の流量調整部18の弁ポート12に対する軸線方向位置(弁リフト方向の直線移動位置)が変わり、その軸線方向位置に応じて弁ポート12の実効開口面積が増減し、定量的な流量制御が行われる。
【0063】
弁体17の弁リフト方向の降下移動により、弁ポート12の実効開口面積が徐々に低減し、これに応じて弁ポート12を流れる流体の流量が徐々に低減する。弁体17が弁リフト方向に所定量降下移動すると、パッキン51による円環状着座面52が円環状弁座面25に着座する。円環状着座面52が円環状弁座面25に着座した後も、引き続き、雄ねじ軸28が弁リフト方向に降下移動すると、圧縮コイルばね29が撓み、それによるばね力によってパッキン51の円環状着座面52が弁ポート12の周りの円環状弁座面25に押し付けられるようになる。これにより、弁ポート12が閉塞される全閉状態になる。
【0064】
このようにして、パッキン51の円環状着座面52が円環状弁座面25に押し付けられると、実施形態1と同様に、パッキン51が円環状溝27に局部的に喰い込むように(はまり込むように)弾性変形する。
【0065】
これにより、本実施形態でも、実施形態1と同等の効果が得られる。
【0066】
つぎに、この発明による弁装置の実施形態4を、図9、図10を参照して説明する。なお、図9、図10において、図1、図2に対応する部分は、図1、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0067】
実施形態4による弁装置では、図9に示されているように、シール部材として、弁体17の先端部にインサート成形されたゴム弾性体製のパッキン53によって流量調整部54が形成され、この流量調整部54の根もと部の周りに、図10に示されているように、円環状の平らな下底面部による円環状着座面55が形成されている。円環状着座面55が円環状弁座面25に着座することにより、弁ポート12を閉じる(閉塞する)全閉状態になる。
【0068】
パッキン53を構成するゴム状弾性材も、ゴム状弾性を示す材料であり、ゴムあるいはゴム類似物質を指す。パッキン53に適したゴム状弾性体としては、加硫ゴム、シリコンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレン共重合体系エラストマ(EPM)等が挙げられる。また、ゴムに限らずPTFE、PFA、ナイロン(登録商標)、PPS、PEEK等の樹脂材でもよい。
【0069】
弁ハウジング10の円環状弁座面25には、実施形態1と同様に、弁ポート12と同心に、円環状溝27が形成されている。
【0070】
本実施形態でも、ステッピングモータ40は、ロータ42によって雄ねじ軸28を回転駆動し、回転に伴う雄ねじ軸28の軸線方向移動によって弁支持筒体19と共に弁体17を弁リフト方向に直線移動させる。これにより、弁体17にインサート成形されたパッキン53の流量調整部54の弁ポート12に対する軸線方向位置(弁リフト方向の直線移動位置)が変わり、その軸線方向位置に応じて弁ポート12の実効開口面積が増減し、定量的な流量制御が行われる。
【0071】
弁体17の弁リフト方向の降下移動により、弁ポート12の実効開口面積が徐々に低減し、これに応じて弁ポート12を流れる流体の流量が徐々に低減する。弁体17が弁リフト方向に所定量降下移動すると、パッキン53による円環状着座面55が円環状弁座面25に着座する。円環状着座面55が円環状弁座面25に着座した後も、引き続き、雄ねじ軸28が弁リフト方向に降下移動すると、圧縮コイルばね29が撓み、それによるばね力によってパッキン53の円環状着座面55が弁ポート12の周りの円環状弁座面25に押し付けられるようになる。これにより、弁ポート12が閉塞される全閉状態になる。
【0072】
このようにして、パッキン53の円環状着座面55が円環状弁座面25に押し付けられると、実施形態1と同様に、パッキン53が円環状溝27に局部的に喰い込むように(はまり込むように)弾性変形する。
【0073】
これにより、本実施形態でも、実施形態1と同等の効果が得られる。
【0074】
つぎに、この発明による弁装置の実施形態5を、図11、図12を参照して説明する。なお、図11、図12において、図1、図2に対応する部分は、図1、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0075】
実施形態5による弁装置では、図11に示されているように、弁体56の全体がゴム状弾性材により構成され、弁体56自体がシール部材をなしている。弁体56は、図12に示されているように、弁支持筒体19より保持される係合部材56Aと、円錐形をし流量調整部(ニードル弁部)57と、流量調整部57の根もと部の周りに形成された円環状の平らな下底面部による円環状着座面58とを有する。円環状着座面58が円環状弁座面25に着座することにより、弁ポート12を閉じる(閉塞する)全閉状態になる。
【0076】
弁体56を構成するゴム状弾性材も、ゴム状弾性を示す材料であり、ゴムあるいはゴム類似物質を指す。弁体56に適したゴム状弾性体としては、加硫ゴム、シリコンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレン共重合体系エラストマ(EPM)等が挙げられる。また、ゴムに限らずPTFE、PFA、ナイロン(登録商標)、PPS、PEEK等の樹脂材でもよい。
【0077】
弁ハウジング10の円環状弁座面25には、実施形態1と同様に、弁ポート12と同心に、円環状溝27が形成されている。
【0078】
本実施形態でも、ステッピングモータ40は、ロータ42によって雄ねじ軸28を回転駆動し、回転に伴う雄ねじ軸28の軸線方向移動によって弁支持筒体19と共に弁体56を弁リフト方向に直線移動させる。これにより、弁体56の流量調整部57の弁ポート12に対する軸線方向位置(弁リフト方向の直線移動位置)が変わり、その軸線方向位置に応じて弁ポート12の実効開口面積が増減し、定量的な流量制御が行われる。
【0079】
弁体56の弁リフト方向の降下移動により、弁ポート12の実効開口面積が徐々に低減し、これに応じて弁ポート12を流れる流体の流量が徐々に低減する。弁体56が弁リフト方向に所定量降下移動すると、弁体56の円環状着座面58が円環状弁座面25に着座する。円環状着座面58が円環状弁座面25に着座した後も、引き続き、雄ねじ軸28が弁リフト方向に降下移動すると、圧縮コイルばね29が撓み、それによるばね力によって弁体56の円環状着座面58が弁ポート12の周りの円環状弁座面25に押し付けられるようになる。これにより、弁ポート12が閉塞される全閉状態になる。
【0080】
このようにして、ゴム弾性体製の弁体56の円環状着座面58が円環状弁座面25に押し付けられると、実施形態1と同様に、弁体56が円環状溝27に局部的に喰い込むように(はまり込むように)弾性変形する。
【0081】
これにより、本実施形態でも、実施形態1と同等の効果が得られる。
【0082】
つぎに、この発明による弁装置の実施形態6を、図13〜図15を参照して説明する。なお、図13〜図15において、図1、図2、図5、図6に対応する部分は、図1、図2、図5、図6に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0083】
実施形態6による弁装置では、図14に示されているように、弁ポート12の周りの円環状弁座面25に、弁ポート12と同心のOリング溝61が形成されている。Oリング溝61には、ゴム弾性体製のOリング62がはめ込み装着されている。
【0084】
Oリング62を構成するゴム状弾性材は、ゴム状弾性を示す材料であり、ゴムあるいはゴム類似物質を指す。パッキン24に適したゴム状弾性体としては、加硫ゴム、シリコンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレン共重合体系エラストマ(EPM)等が挙げられる。また、ゴムに限らずPTFE、PFA、ナイロン(登録商標)、PPS、PEEK等の樹脂材でもよい。
【0085】
図15(a)に示されているOリング62の線径Dは、Oリング溝61の溝深さdより所定量大きい。これにより、初期状態(自由状態)では、Oリング62の上側は、(線径D)−(溝深さd)=pの高さ分、円環状弁座面25より上方に出ている。
【0086】
図14に示されているように、弁体17の円環状着座面34には、実施形態2と同様に、弁ポート12と同心位置に、円環状溝38が形成されている。
【0087】
本実施形態でも、図13に示されているステッピングモータ40は、ロータ42によって雄ねじ軸28を回転駆動し、回転に伴う雄ねじ軸28の軸線方向移動によって弁支持筒体19と共に弁体17を弁リフト方向に直線移動させる。これにより、弁体17の流量調整部18の弁ポート12に対する軸線方向位置(弁リフト方向の直線移動位置)が変わり、その軸線方向位置に応じて弁ポート12の実効開口面積が増減し、定量的な流量制御が行われる。
【0088】
弁体17の弁リフト方向の降下移動により、弁ポート12の実効開口面積が徐々に低減し、これに応じて弁ポート12を流れる流体の流量が徐々に低減する。弁体17が弁リフト方向に所定量降下移動すると、弁体17の円環状着座面34が弁ポート12の周りのOリング62に着座する。円環状着座面34がOリング62に着座した後も、引き続き、雄ねじ軸28が弁リフト方向に降下移動すると、円環状着座面34がOリング62に押し付けられるようになる。これにより、弁ポート12が閉塞される全閉状態になる。
【0089】
このようにして、円環状着座面34が円環状弁座面25のOリング62に押し付けられると、図15(b)に示されているように、Oリング62が突出高さ分pだけ押し潰されるように弾性変形する。これに伴い、円環状着座面34が円環状弁座面25に着座し、押し潰されることによってOリング62の上側に扁平面62Aができ、この扁平面62A部分が円環状溝38に局部的に喰い込むように(はまり込むように)弾性変形する。
【0090】
これにより、扁平面62Aと円環状着座面34とが互いに面接触した状態で、更に、円環状溝38に対するOリング62の局部的な喰込み部62Bによって、この周辺部で高いシール圧(密着度)が得られるようになる。
【0091】
このことにより、本実施形態でも、単純なOリングによるシール構造である場合に比して、弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性が耐久性よく得られるようになる。また、円環状溝38に対するOリング62の局部的な喰込み部によって、円環状着座面34とOリング62の扁平面62Aとの境界面がラビリンス状になり、ラビリンスシール効果も期待でき、全体として、弁漏れ量を低減することができる。
【0092】
つぎに、この発明による弁装置の実施形態7を、図16、図17を参照して説明する。なお、図16、17において、図1、図2に対応する部分は、図1、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0093】
実施形態7では、図17に示されているように、弁ポート12の弁室11側に、弁ポート12と同心に拡大ボア71が連通形成され、拡大ボア71の弁室11に対する開口端側の周りに円環状弁座面72が形成されている。拡大ボア71の底部に弁ポート12が開口している。
【0094】
弁体17の上基部17A部分(流量調整部18を除く部分)の外周部には、円環状板部材73が羽根状に固定装着されている。円環状板部材73は、ばね性を有する板材により構成され、弁体17に形成された拡大ボア71の内径より小径のフランジ部17Bと弁支持筒体19の底部19Bとに挟まれて固定されている。円環状板部材73の外径が拡大ボア71の内径より大きい。なお、円環状板部材73は、テフロン(登録商標)シート等の柔らかい材質材料で形成されたものであってもよい。
【0095】
これにより、円環状板部材73は、フランジ部17Bより外側に円環羽根状に突出した円環突出部分73Aにて円環状弁座面72に対向し、円環状弁座面72に着座できる。円環状板部材73の円環突出部分73Aが円環状弁座面72に着座することにより、弁ポート12を閉じる(閉塞する)全閉状態になる。
【0096】
本実施形態でも、図16に示されているステッピングモータ40は、ロータ42によって雄ねじ軸28を回転駆動し、回転に伴う雄ねじ軸28の軸線方向移動によって弁支持筒体19と共に弁体17を弁リフト方向に直線移動させる。これにより、弁体17の流量調整部18の弁ポート12に対する軸線方向位置(弁リフト方向の直線移動位置)が変わり、その軸線方向位置に応じて弁ポート12の実効開口面積が増減し、定量的な流量制御が行われる。
【0097】
弁体17の弁リフト方向の降下移動により、弁ポート12の実効開口面積が徐々に低減し、これに応じて弁ポート12を流れる流体の流量が徐々に低減する。弁体17が弁リフト方向に所定量降下移動すると、円環状板部材73の円環突出部分73Aが円環状弁座面72に着座し、円環突出部分73Aが円環状弁座面72に押し付けられる。これにより、弁ポート12が閉塞される全閉状態になる。
【0098】
この状態になると、入口ポート14側の弁室11の圧力が拡大ボア71側の圧力より高いことにより、圧力差による荷重が円環状板部材73を円環状弁座面72に押し付ける方向に作用し、円環状板部材73の円環突出部分73Aが円環状弁座面72に密着し、ポート12を確実に閉塞する全閉状態になる。
【0099】
これにより、弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性を耐久性よく得ることができる。
【0100】
なお、図18に示されているように、円環状弁座面72に、弁ポート12と同心に円環状溝74を形成してもよい。この場合には、ラビリンスシール効果が得られ、耐弁漏れ性が、より一層向上する。
【0101】
つぎに、この発明による弁装置の実施形態8を、図19、図20を参照して説明する。なお、図19、20において、図1、図2に対応する部分は、図1、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0102】
実施形態8では、図20に示されているように、弁ポート12の弁室11側に、弁ポート12と同心に拡大ボア(ボア部材)75が連通形成され、拡大ボア75の内周面が円筒状弁座面76になっている。拡大ボア75の底部に弁ポート12が開口している。
【0103】
弁体17の上基部17A部分(流量調整部18を除く部分)側の外周部には、ストレート円筒部78を含む弾性材製のカップ状部材77が固定装着されている。カップ状部材77のストレート円筒部78の外周面が円筒状着座面79になっている。ストレート円筒部78の内側には、ストレート円筒部78を拡径方向に付勢するカップ状の板ばね80が設けられている。
【0104】
カップ状部材77のストレート円筒部78は、弁体17の直線移動(降下移動)によって弁ポート12の実効開口面積が最小になったのちに、拡大ボア75内に摺動可能に嵌合し、ストレート円筒部78の外周面がなす円筒状着座面79が拡大ボア75の内周面による円筒状弁座面76に摺接することにより、ポート12を閉じる(閉塞する)全閉状態になる。
【0105】
本実施形態でも、図19に示されているステッピングモータ40は、ロータ42によって雄ねじ軸28を回転駆動し、回転に伴う雄ねじ軸28の軸線方向移動によって弁支持筒体19と共に弁体17を弁リフト方向に直線移動させる。これにより、弁体17の流量調整部18の弁ポート12に対する軸線方向位置(弁リフト方向の直線移動位置)が変わり、その軸線方向位置に応じて弁ポート12の実効開口面積が増減し、定量的な流量制御が行われる。
【0106】
弁体17の弁リフト方向の降下移動により、弁ポート12の実効開口面積が徐々に低減し、これに応じて弁ポート12を流れる流体の流量が徐々に低減する。弁体17が弁リフト方向に所定量降下移動すると、カップ状部材77のストレート円筒部78が拡大ボア75に嵌合し、ストレート円筒部78の外周面がなす円筒状着座面79が拡大ボア75の内周面による円筒状弁座面76に摺接し、板ばね80のばね力によって円筒状着座面79が円筒状弁座面76に押し付けられる。これにより、弁ポート12が閉塞される全閉状態になる。
【0107】
この全閉状態は、円筒状弁座面76と円筒状着座面79との密着により、比較的大きい面積をもって確実に得られる。
【0108】
また、全閉状態では、入口ポート14側の弁室11の圧力が拡大ボア75側の圧力より高いことにより、圧力差による荷重がストレート円筒部78を拡大ボア75の円筒状弁座面76に押し付ける方向に作用し、ストレート円筒部78の円筒状着座面79が拡大ボア71の円筒状弁座面76に、より一層確実に密着する。
【0109】
これらのことにより、弁閉力を高くしたり、軟らかいゴム製のパッキンを使うことなく、高い耐弁漏れ性を耐久性よく得ることができる。
【0110】
なお、図21に示されているように、拡大ボア75の円筒状弁座面76に、周溝81を形成してもよい。この場合には、ラビリンスシール効果が得られ、耐弁漏れ性が、より一層向上する。
【0111】
次に、この発明による冷凍サイクル装置の一つの実施形態を、図22を参照して説明する。
【0112】
この実施形態による冷凍サイクル装置は、マルチタイプシステムのものであり、一つの共通室外機100と、共通室外機100に対して互いに並列に接続された複数台の室内機110とを有する。
【0113】
共通室外機100には、圧縮機101と、四方弁102と、室外熱交換器103と、室外機膨張弁104とが設けられている。
【0114】
室内機110には、室内熱交換器111と、各室内熱交換器111毎の室内機膨張弁112とが設けられている。
【0115】
この冷凍サイクル装置は、空気調和装置や冷凍・冷蔵庫等で使用される。空気調和装置での使用では、実線矢印が冷房時の冷媒流れであり、破線矢印が暖房時の冷媒流れである。
【0116】
室外機膨張弁104、室内機膨張弁112としては、上述したこの発明による弁装置が用いられる。
【0117】
マルチタイプシステムでは、冷房運転時のサーモオフ(運転休止)の室内機110については、その室内機110の室内機膨張弁112を全閉状態にすることにより、サーモオフ(運転休止)で、ファン停止の室内機110を冷媒が流れることが完全に禁止される。
【0118】
これにより、ファン停止の室内機110を冷媒が漏れ流れることにより、室内熱交換器111や配管が過冷却されることがなく、結露や結露水の凍結が回避される。さらに、弁閉動作は徐動であり、電磁開閉弁のような急激な弁閉、弁開動作とは異なるので、ウォータハンマの発生防止にも効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】この発明による弁装置の実施形態1を示す断面図である。
【図2】実施形態1による弁装置の要部の拡大断面図である。
【図3】実施形態1による弁装置のパッキン変形状態を示す拡大断面図である。
【図4】実施形態1による弁装置の要部の変形例を示す拡大断面図である。
【図5】この発明による弁装置の実施形態2を示す断面図である。
【図6】実施形態2による弁装置の要部の拡大断面図である。
【図7】この発明による弁装置の実施形態3を示す断面図である。
【図8】実施形態3による弁装置の要部の拡大断面図である。
【図9】この発明による弁装置の実施形態4を示す断面図である。
【図10】実施形態4による弁装置の要部の拡大断面図である。
【図11】この発明による弁装置の実施形態5を示す断面図である。
【図12】実施形態5による弁装置の要部の拡大断面図である。
【図13】この発明による弁装置の実施形態6を示す断面図である。
【図14】実施形態6による弁装置の要部の拡大断面図である。
【図15】(a)は実施形態6による弁装置の要部の全閉前の状態を示す拡大断面図、(b)は同じくそれの全閉時の状態を示す拡大断面図である。
【図16】この発明による弁装置の実施形態7を示す断面図である。
【図17】実施形態7による弁装置の要部の拡大断面図である。
【図18】実施形態7による弁装置の要部の変形例を示す拡大断面図である。
【図19】この発明による弁装置の実施形態8を示す断面図である。
【図20】実施形態8による弁装置の要部の拡大断面図である。
【図21】実施形態8による弁装置の要部の変形例を示す拡大断面図である。
【図22】この発明による冷凍サイクル装置の一つの実施形態を示す冷媒回路図である。
【符号の説明】
【0120】
10 弁ハウジング
11 弁室
12 弁ポート
13 横継手
14 入口ポート
15 下継手
16 出口ポート
17、56 弁体
18、54、57 流量調整部
19 弁支持筒体
20 取付板
21 固定支持部材(雌ねじ部材)
22 ガイド孔
23 かしめ保護リング部材
24、35、51、53 パッキン
25、37、72 円環状弁座面
26、34、52、55、58 円環状着座面
27 円環状溝
28 雄ねじ軸
29 圧縮コイルばね
30 押圧部材
31 高滑性ワッシャ
32 雄ねじ部
33 雌ねじ部
36 かしめ保護リング部材
38、74 円環状溝
40 ステッピングモータ
41 ロータケース
42 ロータ
43 ステータコイルユニット
44 ガイド支持軸
45 螺旋ガイド線体
46 固定ストッパ部
47 可動ストッパ部材
48 突起部
61 Oリング溝
62 Oリング
71、75 拡大ボア
73 円環状板部材
76 円筒状弁座面
77 カップ状部材
78 ストレート円筒部
79 円筒状着座面
80 板ばね
81 周溝
100 共通室外機
101 圧縮機
102 四方弁
103 室外熱交換器
104 室外機膨張弁
110 室内機
111 室内熱交換器
112 室内機膨張弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジング内に弁体が直線移動可能に設けられ、当該弁体が直線移動によって弁ハウジング側の弁ポートの周りに設けられている環状弁座面に着座することにより、前記弁ポートを閉じる全閉状態となる弁装置において、
前記環状弁座面への着座時に該環状弁座面に当接する前記弁体の環状着座面と前記環状弁座面とのうち、何れか一方が弾性材製のシール部材によって構成され、他方に前記弁ポートを取り囲む配置の環状溝が形成されている弁装置。
【請求項2】
前記環状弁座面と前記環状着座面とは互いに面接触する平らな環状面を有し、前記シール部材が前記弁体あるいは前記弁ハウジング側に固定装着されたパッキンにより構成されている請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記環状弁座面と前記環状着座面とは互いに面接触する平らな環状面を有し、前記シール部材が前記弁体にインサート成形されたパッキンにより構成されている請求項1記載の弁装置。
【請求項4】
前記環状弁座面と前記環状着座面とは互いに面接触する平らな環状面を有し、前記弁体の全体が弾性材により構成され、前記弁体自体がシール部材をなしている請求項1記載の弁装置。
【請求項5】
前記シール部材が、前記弁ハウジングの前記弁ポートの周縁部分に埋設されたOリングにより構成されている請求項1記載の弁装置。
【請求項6】
前記弁体は、前記環状着座面に連続して形成され、前記弁体の直線移動位置に応じて前記弁ポートの実効開口面積を変化させる流量調整部を含み、定量的な流量制御を行う請求項1〜5の何れか1項記載の弁装置。
【請求項7】
弁ハウジング内に弁体が直線移動可能に設けられ、前記弁体は、その直線移動位置に応じて前記弁ポートの実効開口面積を変化させる流量調整部を含み、定量的な流量制御を行う弁装置において、
前記弁体の前記流量調整部を除く部分の外周部に環状板部材が羽根状に固定装着され、前記弁体の直線移動によって前記環状板部材が前記弁ハウジング側の前記弁ポートの周りに設けられている環状弁座面に着座することにより全閉状態になる弁装置。
【請求項8】
弁ハウジング内に弁体が直線移動可能に設けられ、前記弁体は、その直線移動位置に応じて前記弁ポートの実効開口面積を変化させる流量調整部を含み、定量的な流量制御を行う弁装置において、
前記弁体の前記流量調整部を除く部分の外周部に、ストレート筒部を含む弾性材製のカップ状部材が固定装着され、前記弁ハウジング側には底部に前記弁ポートが開口しているボア部が形成されており、前記弁体の直線移動によって前記カップ状部材の前記ストレート筒部の外周面が前記ボア部の内周面に摺接することにより全閉状態になる弁装置。
【請求項9】
雄ねじ部材と雌ねじ部材とのねじ係合による送りねじ機構と、送りねじ機構を回転駆動する電動モータとを含み、前記送りねじ機構を電動モータによって回転駆動し、前記送りねじ機構によって回転運動を弁リフト方向の直線運動に変換し、当該直線運動によって前記弁体を直線移動させる電動式コントロールバルブであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項記載の弁装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項記載の弁装置を膨張弁として冷媒回路中に有する冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記冷凍サイクル装置は、一台の共通室外機に対して複数台の室内機が並列に接続されているマルチタイプの冷凍サイクル装置である請求項10記載の冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−170354(P2006−170354A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365478(P2004−365478)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】