説明

引戸装置

【課題】 防音及び光漏れ防止機能と、指挟み防止機能とを兼ね備える引戸装置を提供する。
【解決手段】 左右方向を向く壁体1の一部に設けられた出入口2の上方に設置された左右方向のスライド手段7と、スライド手段7から吊下げられ、壁体1の一部と前後の方向で重合しつつ出入口を開閉しうる引戸本体10とを備えた引戸装置において、出入口2を閉鎖する方向への引戸本体10の移動が、出入口2を完全に閉鎖する手前で停止しうるように、スライド手段7にストッパ18を設け、かつこの引戸本体10の移動の制限によって出入口2の一方の縁側に生じる隙間を塞ぎうる上下方向を向く塞ぎ材17を、引戸本体10の対応する側縁部6の全長にわたって設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊下げ型の引戸本体を備える引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
間仕切りパネルを連設して空間を包囲するか、または仕切ることにより、適宜ミーティング用等の部屋を設けるような場合、出入口上方のレールから吊下げつつスライドさせるタイプの引戸が用いられている。このような引戸は、下縁に戸車を設け、床面に敷設したレール上をスライドさせるものと比べて、レールに躓くおそれがなく、また部屋の内外にわたって床面を摺動させつつ物品を移動させるのが容易になる等の利点を有する。
【0003】
上記のような吊下げ型の引戸にあっては、引戸を左右に開閉する際、引戸が前後の方向にぶれないよう、出入口を開放する引戸の位置において、引戸を前後の方向から戸袋状に挟みこむように、間仕切りパネルを2重にするとともに、出入口を区画する枠体の戸当り面に上下を向く凹溝を形成し、引戸の側端部がこの凹溝に嵌合するようにして、音や光が漏れるのを防止するという構造が提案されている(例えば特許文献1または2参照)。
【特許文献1】特開2001−146878号公報
【特許文献2】特開2004−52406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
間仕切りパネル等の壁体の数を減らして、組立作業の容易化、およびコストの削減を図るには、上記のような壁体を一部で2重にする構造ではなく、引戸が、1枚の壁体と前後の方向で重合しつつ、スライドする構造とするのが望ましい。
【0005】
しかし、このような構造の場合は、引戸を開閉する際、引戸が前後の方向にぶれることがあるため、前述のような戸当り面を形成するのではなく、引戸は、出入口の閉鎖位置において、出入口を区画する枠体と前後の方向で重合するような構成となる。したがって、音や光が漏れるのを防止するには、上記のような構成の引戸とは異なる手段が必要となる。また、引戸全般に言えることとして、引戸と出入口の枠体との間に、気づかずに指や手を挟んで怪我をするおそれを解消するのが好ましい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、防音及び光漏れ防止機能と、指等の挟み込み防止機能とを兼ね備えた引戸装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 左右方向を向く壁体の一部に設けられた出入口の上方に設けた左右方向を向くスライド手段と、このスライド手段により吊下げられ、壁体の一部と前後の方向で重合しつつ出入口を開閉しうる引戸本体とを備えた引戸装置において、前記出入口を閉鎖する方向への引戸本体の移動が、出入口を完全に閉鎖する手前で停止しうるように、前記スライド手段にストッパを設け、かつこの引戸本体の移動の制限によって出入口の一方の縁側に生じる隙間を塞ぎうる上下方向を向く塞ぎ材を、引戸本体の対応する側縁部の全長にわたって設ける。
【0008】
(2) 上記(1)項において、塞ぎ材を、外側に向かって凸となるように湾曲した中空部材により形成する。
【0009】
(3) 上記(1)または(2)項において、塞ぎ材における引戸本体への取付部の前後寸法を、引戸本体の出入口を閉じる側の側端部の前後寸法よりも小とする。
【0010】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、塞ぎ材の側端部を、壁体の出入口の側端部前面と対向するように延出し、かつその先端部後面を、所要幅の垂直面とする。
【0011】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、引戸本体の出入口を閉じる側の側縁部の端面に、奥部を開口部よりも幅広とした係合溝を設け、この係合溝に、塞ぎ材の基端部の基片を着脱可能に嵌合したものとする。
【0012】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、スライド手段は、出入口の上方における壁体の前面に設けられた断面略C字状のガイドレールと、引戸本体の上端に設けられ、前記ガイドレールに長手方向に摺動可能に装架されたキャリアとからなるものとする。
【0013】
(7) 上記(6)項において、ガイドレールに、キャリアを停止させうるストッパを設ける。
【0014】
(8) 上記(1)〜(7)項のいずれかにおいて、引戸本体の出入口を閉じる側の側縁部の前後面に、ほぼ全長にわたって上下方向に延びる把手用の突条を設ける。
【発明の効果】
【0015】
(1) 請求項1記載の発明によれば、引戸本体を吊下げるスライド手段にストッパを設け、出入口を閉鎖する方向への引戸本体の移動を、出入口を完全に閉鎖する手前で停止させるとともに、これに伴って生じる隙間を、引戸本体の出入口を閉じる側の側縁部の全長にわたって設けた上下方向を向く軟質材料製の塞ぎ材によって完全に閉塞している。
したがって、たとえ塞ぎ材と出入口の縁との間に指や手を挟まれても、塞ぎ材が軟質で、自らへこむように弾性変形するため、怪我をするおそれはない。
また、隙間を閉塞することにより、音や光が漏れにくくなる。
【0016】
(2) 請求項2記載の発明によれば、塞ぎ材は、中空であるため、指や手を挟んだときのへこみが生じやすく、一層の怪我防止機能を果たすことができるとともに、音や光の漏れを防止するための弾性変形も生じやすくなる。
また、材料の使用量を節約し、コストの節減を図ることができる。
さらに、外側に向かって凸となるように湾曲しているため、引戸本体を閉じた状態において、出入口縁部との境界が滑らかとなり、良好な外観を保つことができる。
【0017】
(3) 請求項3記載の発明によれば、塞ぎ材における引戸本体への取付部と、引戸本体の出入口を閉じる側の側端面との前後部に段部が形成されるので、この段部を引戸を開く際の手掛け部として該引戸を容易に開くことができる。
【0018】
(4) 請求項4記載の発明によれば、塞ぎ材の先端部後面に形成した所要幅の垂直面を、引戸を閉じた際に壁体の出入口の側縁部前面に対向して近接させうるので、音や光がより漏れにくくなる。
【0019】
(5) 請求項5記載の発明によれば、塞ぎ材が、引戸本体との間で着脱自在となるため、大型の引戸本体と切り離して運搬や取付けをすることができ、塞ぎ材が損傷するおそれが少なくなる。
【0020】
(6) 請求項6記載の発明によれば、スライド手段を、断面略C字状のガイドレールとこれに装架されるキャリアという簡易な構成とすることができ、しかもガイドレールの断面が略C字状となっているため、キャリアがスライド手段から抜けて、引戸本体が落下するのを防止することができる。
【0021】
(7) 請求項7記載の発明によれば、ガイドレール内にストッパを設けるという簡易な構成によって、引戸本体の移動を制限しうるとともに、ストッパが、スライド手段から抜け落ちるのを防止することができる。
【0022】
(8) 請求項8記載の発明によれば、突条を把手の代わりに用いることができるため、所定の高さに把手を設ける場合に比べて、身長の高低に拘わらず、引戸を容易に開閉しうるようになり、また、シンプルな外観を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1〜図4は、本発明の一実施形態を示す。図1に示すように、複数の間仕切りパネル(1)は、1つの室を形成するように、出入口(2)を確保しつつ連設されている(室全体は図示略)。
壁体としての間仕切りパネル(1)は、矩形の閉ループをなす枠体(3)と、この枠体に嵌め込まれたガラス又はアクリル等のパネル(4)とからなっている。また、下部枠材(3a)の下面には、各1対の高さ調節可能なアジャスタ(5)が設けられている。
【0025】
出入口(2)の上方には、出入口(2)を区画する右方の枠材(6)(右隣の間仕切りパネル(1)の左方枠材と兼用されている)の上端面から、出入口(2)の左隣の間仕切りパネル(1)の上端面にかけて、左右方向に延びるガイドレール(7)が設けられている。
また、出入口(2)の下部には、右方の枠材(6)と左方の枠材(8) (左隣の間仕切りパネル(1)の右方枠材と兼用されている)とに両端が連結された極薄状の細長い連結板(9)が敷設されている。
【0026】
出入口(2)から、左隣の間仕切りパネル(1)にかけての前方には、詳細は後述するが、左右方向にスライドして出入口(2)を開閉しうる吊下げ型の引戸本体(10)が設けられている。この引戸本体(10)も、間仕切りパネル(1)と同様に、矩形の閉ループをなす枠体(11)と、この枠体に嵌めつけられたガラス又はアクリル等のパネル(12)とからなっている。
引戸本体(10)は、この上端面に設けられた1対のキャリア(13)を介して、ガイドレール(7)から吊下げられている。
【0027】
図2〜図4に詳細を示すように、ガイドレール(7)は、側面視ほぼ断面逆C字状をなし、前方の引戸本体(10)側に向かって長手方向に延びる開口部(7a)を有し、この開口部(7a)の上下幅は、奥部(7b)の上下幅よりも小さくなっている。
【0028】
左右の各キャリア(13)の後面には、前後方向を向く軸(14a)回りに回転する2つのローラ(14)(14)が並設されており、これらのローラ(14)(14)は、ガイドレール(7)の奥部(7b)に収容されている。したがって、引戸本体(10)は、ローラ(14)とキャリア(13)とを介して、ガイドレール(7)から外れないように吊下げられており、ローラ(14)がガイドレール(7)の奥部(7b)内を転動することにより、左右方向にスライドすることができる。
【0029】
図3に示すように、引戸本体(10)の右側端面、すなわち、出入口(2)を閉じる側の右方の枠材(11a)の右側端面には、上下方向に延びる係合溝(15)が形成されており、係合溝(15)の右方の開口部(15a)の幅は、奥部(15b)の幅よりも小さくなっている。
【0030】
係合溝(15)には、これに合わせて、上下方向に延びる塞ぎ材(16)における断面ほぼコ字状の基片(17)が着脱可能に係合されている。基片(17)の係合溝(15)に挿入されている部分の先端部(17a)は、前後方向に拡開する爪状となっており、この爪状の先端部(17a)が、幅狭の開口部(15a)の内側面に係止されることにより、基片(17)の抜け止めがなされている。なお、係合溝(15)の下端部には、基片(17)の抜け落ちを防止するためのストッパが設けられている(図示略)。
【0031】
基片(17)と一体成形されている塞ぎ材(16)は、弾性を有する軟質合成樹脂、例えばエラストマー等により中空状に形成されている。
塞ぎ材(16)のほぼ右半部は、後方に向かって湾曲し、その垂直をなす後端面(16a)が、引戸本体(10)を閉じたとき、出入り口(2)の右方の枠材(6)の前面に近接又は当接するようになっている。
なお、引戸本体(10)を閉じたとき、塞ぎ材(16)が若干弾性変形して、右方の枠材(6)の前面に圧接するようにしてもよい。
【0032】
図2に示すように、ガイドレール(7)の奥部(7b)の右端近傍には、ストッパ(18)が固着されている。このストッパ(18)の位置は、引戸本体(10)の出入口(2)を閉じる方向への移動を、塞ぎ材(16)の横幅分、制限するように定められている(図3参照)。したがって、引戸本体(10)を完全に閉めた場合でも、その右方の枠材(11a)が、出入口(2)の右方の枠材(6)との間に、指や手を挟み込むことはない。
引戸本体(10)を閉じるときに、万一、この右方の枠材(11a)と、出入口(2)の右方の枠材(6)との間に指がある場合でも、指に当接するのは、中空かつ弾性を有する塞ぎ材(16)であり、塞ぎ材(16)は、指の分、内方に弾性変形するため、怪我を負うことはない。
【0033】
また、引戸本体(10)を閉じたときに、これに若干の傾きが生じた場合でも、塞ぎ材(16)は、弾性変形することによって、出入口(2)の右方の枠材(6)に密接するため、出入口(2)を完全に閉鎖することができる。
【0034】
図2と図3に示すように、引戸本体(10)の右方の枠材(6)の前後両面には、ほぼ全長にわたって、上下方向に延びる突条(19)が設けられている。この突条(19)は、手で把持して、引戸本体(10)を左右にスライドさせるための把手の役割を果たす。
【0035】
また、塞ぎ材(16)における引戸本体(10)への取付部の前後寸法は、引戸本体(10)の側端部、すなわち突条(19)の前後寸法よりも小さく、突条(19)の外側面と、塞ぎ材(10)の取付部との前後部に段部が形成されているため、この段部を、引戸本体(10)を開く際の手掛け部とすることができる。
突条(19)は、所定の高さに取り付けられるものではないため、身長の高低に拘わりなく、把持しやすい。また、引戸本体(10)と間仕切りパネル(1)とを合わせて、全体としてシンプルな外観を呈することができる。
【0036】
図2と図3に示すように、出入口(2)の左隣の間仕切りパネル(1)の下方の枠材(3a)の右端前面には、2つのローラ(20)(20)が設けられ、またこのローラ(20)に対応して、引戸本体(10)の下方の枠材(11b)の後面には、側面視C字状断面のガイドレール(21)が設けられている。ガイドレール(21)は、ローラ(20)(20)を内部に収容することにより、引戸本体(10)と共に円滑に左右に移動することができ、かつ引戸本体(10)も、前後にぶれることなくスライドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態を備える間仕切りパネル装置の一部の斜視図である。
【図2】同じく、要部の分解斜視図である。
【図3】図2の組立て状態におけるIII−III線に沿う横断平面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0038】
(1)間仕切りパネル(壁体)
(2)出入口
(3)枠体
(3a)下部枠材
(4)パネル
(5)アジャスタ
(6)出入口の右方の枠材
(7)ガイドレール
(7a)開口部
(7b)奥部
(8)出入口の左方枠材
(9)連結板
(10)引戸本体
(11)枠体
(11a)右方の枠材
(11b)下方の枠材
(12)パネル
(13)キャリア
(14)ローラ
(14a)軸
(15)係合溝
(15a)開口部
(15b)奥部
(16)塞ぎ材
(16a)後端面
(17)基片
(18)ストッパ
(19)突条
(20)ローラ
(21)ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向を向く壁体の一部に設けられた出入口の上方に設けた左右方向を向くスライド手段と、このスライド手段により吊下げられ、壁体の一部と前後の方向で重合しつつ出入口を開閉しうる引戸本体とを備えた引戸装置であって、前記出入口を閉鎖する方向への引戸本体の移動が、出入口を完全に閉鎖する手前で停止しうるように、前記スライド手段にストッパを設け、かつこの引戸本体の移動の制限によって出入口の一方の縁側に生じる隙間を塞ぎうる上下方向を向く軟質材料製の塞ぎ材を、引戸本体の対応する側縁部の全長にわたって設けたことを特徴とする引戸装置。
【請求項2】
塞ぎ材を、外側に向かって凸となるように湾曲した中空部材により形成したことを特徴とする請求項1記載の引戸装置。
【請求項3】
塞ぎ材における引戸本体への取付部の前後寸法を、引戸本体の出入口を閉じる側の側端部の前後寸法よりも小としたことを特徴とする請求項1または2記載の引戸装置。
【請求項4】
塞ぎ材の側端部を、壁体の出入口の側端部前面と対向するように延出し、かつその先端部後面を、所要幅の垂直面としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の引戸装置。
【請求項5】
引戸本体の出入口を閉じる側の側縁部の端面に、奥部を開口部よりも幅広とした係合溝を設け、この係合溝に、塞ぎ材の基端部の基片を着脱可能に嵌合したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の引戸装置。
【請求項6】
スライド手段は、出入口の上方における壁体の前面に設けられた断面略C字状のガイドレールと、引戸本体の上端に設けられ、前記ガイドレールに長手方向に摺動可能に装架されたキャリアとからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の引戸装置。
【請求項7】
ガイドレールに、キャリアを停止させうるストッパを設けたことを特徴とする請求項6記載の引戸装置。
【請求項8】
引戸本体の出入口を閉じる側の側縁部の前後面に、ほぼ全長にわたって上下方向に延びる把手用の突条を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の引戸装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−138181(P2006−138181A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331024(P2004−331024)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】