説明

弱酸性ゲル状皮膚洗浄料

【課題】粘度の温度依存性がなく、さらには無水ケイ酸由来のきしみ感を感じることなく、経時安定性(排液の有無)が良好で、使用中の泡立ち、使用中の泡持ち、洗浄後のなめらかさに優れた弱酸性ゲル状洗浄剤料を提供すること。
【解決手段】
(a)N−アシル−L−酸性アミノ酸塩、(b)無水ケイ酸1〜20質量%、(c)アクリル酸・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体を配合する弱酸性ゲル状皮膚洗浄料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アシル−L−酸性アミノ酸塩、無水ケイ酸、アクリル酸・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合を配合した弱酸性ゲル状皮膚洗浄料に関し、さらに詳しくは、粘度の温度依存性が無く、経時安定性が良好で、かつ使用中の泡立ち・泡持ち、洗浄後の皮膚のなめらかさに優れた弱酸性ゲル状皮膚洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル状洗浄料は、必要使用量を簡便にとり出せ、泡立ちが優れていることから好んで使用されている。しかしながら、一般にゲル状洗浄料の中でも、脂肪酸石鹸を洗浄成分としたものは、温度による粘度変化が大きいという欠点や洗浄後につっぱり感や乾燥した感覚を有する傾向にあった。このためポリエチレングリコールや無水ケイ酸で洗浄成分をゲル化した皮膚洗浄料が開発されている(例えば特許文献1及び2参照)。しかし、洗浄成分をポリエチレングリコールや無水ケイ酸でゲル化したゲル状皮膚洗浄料は温度による粘度変化や洗浄後のつっぱり感は少ないものの、使用中の泡立ち、使用後のしっとり感が脂肪酸石鹸を洗浄剤成分としたものに比べて劣る傾向にあった。また経時安定性上の欠点(経時での離水)として挙げられる。これらの欠点を改良するために、無水ケイ酸と特定のN−アシルアミノ酸系洗浄成分、及びセルロース誘導体を組み合わせる技術などがある(例えば特許文献3参照)。また、経時安定性の確保のために、無水ケイ酸と特定の水溶性ポリアルキレングリコール及び両性界面活性剤やカチオン高分子を組み合わせて使用する技術も検討されている(例えば特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−123696号公報(第1頁−第8頁)
【特許文献2】特開2005−336068号公報(第1頁−第12頁)
【特許文献3】特開2003−48823号公報(第1頁−第5頁)
【特許文献4】特開2002−363061号公報(第1頁−第7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献3の技術により得られたゲル状洗浄料は、泡持ちは向上するものの、使用後に無水ケイ酸由来のきしみ感が残ってしまい良好な使用感を獲得することが困難であり、経時安定性も十分に確保できないなどの問題点があった。また特許文献4の技術により得られたゲル状洗浄料は、経時安定性は確保できるものの、使用中の泡立ちや使用後のしっとり感において十分満足できるものではなかった。
従って、温度による粘度変化が少なく、経時安定性が良好で、かつ使用中の泡立ち・泡持ち、洗浄後の肌のなめらかさに優れたゲル状皮膚洗浄料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような事情に鑑み、本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、N−アシル−L−酸性アミノ酸塩、無水ケイ酸、アクリル酸・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体を組み合せて配合することにより、上述した課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、成分(a)N−アシル−L−酸性アミノ酸塩、(b)無水ケイ酸1〜20質量%、(c)アクリル酸・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合0.05〜1質量%を配合することを特徴とする弱酸性ゲル状皮膚洗浄料を提供するものである。
【0006】
また成分(a)のN−アシル−L−酸性アミノ酸塩が、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸塩である弱酸性ゲル状皮膚洗浄料を提供するものである。
【0007】
さらに成分(d)として25℃で液状のエステル油0.1〜5質量%を配合することを特徴とする弱酸性ゲル状皮膚洗浄料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料は、粘度の温度依存性が無く、経時安定性が良好で、かつ使用中の泡立ち・泡持ち、洗浄後の肌のなめらかさに優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の構成について述べる。
本発明に用いられる成分(a)のN−アシル−L−酸性アミノ酸塩は、弱酸性洗浄成分であり、肌にマイルドで、優れた洗浄効果を付与する必須の成分である。ここでいう弱酸性とは、系のpHが5〜6.9が好ましく、とりわけ5.5〜6.5が好ましい。本発明に用いられる成分(a)のN−アシル−L−酸性アミノ酸塩は、N−ミリストイルアスパラギン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸カリウム、N−ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは必要に応じて一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。更にこれらの中でも良好な洗浄効果、経時安定性、泡立ちなどの使用感をより得るためにはN−アシル酸アスパラギン酸塩が好ましく、具体的には、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0010】
本発明に用いられる成分(a)は、中和された塩として配合するだけでなく、組成物中で塩基と反応して塩を形成しているものでも良い。このような塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機性塩基やトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アルギニンなどの有機性塩基が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0011】
本発明に用いられる成分(a)のN−アシル−L−酸性アミノ酸塩の配合量は、特に限定されないが、好ましくは、6〜20質量%(以下、単に「%」と記す)、更に好ましくは6〜12%である。この範囲であれば、経時安定性を損なうことなく、良好な洗浄効果を実現できる。
【0012】
本発明に用いられる成分(b)の無水ケイ酸は、成分(a)をゲル化し、洗浄料に適度な粘性を付与するものである。成分(b)の粒子径は特に限定されないが、良好なゲル化能を発揮するためには、平均一次粒子径が1〜50nmのものが好ましい。具体的には、例えば四塩化ケイ素を水素と酸素炎中で加水分解して得られる、煙霧状無水ケイ酸等が挙げられる。市販品としては、AEROSILOX50、AEROSIL50、AEROSIL 90G、AEROSIL130、AEROSIL200、AEROSIL200V、AEROSIL200CF、AEROSIL200FAD、AEROSIL300、AEROSIL300CF、AEROSIL380、AEROSIL380S(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0013】
本発明に用いられる成分(b)の無水ケイ酸の配合量は、1〜20%であり、更に好ましくは、5〜10%である。この範囲であれば、経時安定性を損なうことなく、温度依存性がなく使用しやすい粘度を付与することができる。配合量が1%未満であると十分な粘度を付与することができず、経時安定性も良好ではない。また配合量が20%を超えると硬さが著しく上昇し、好ましくない。
【0014】
本発明に用いられる成分(c)のアクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体は、弱酸性ゲル状皮膚洗浄料の泡立ち、泡持ちを優れたものにするだけでなく、洗い流し後に肌へ吸着し、なめらかさを付与する目的で配合される。成分(c)は、化粧料に使用可能なものであれば特に限定されるものではないが、水を溶媒とした市販品として、マーコートプラス3330、マーコート3331、(いずれもカルゴン社製)等が挙げられる。マーコートプラス3330は、アクリル酸:塩化ジメチルジアリルアンモニウム:アクリルアミド=25:50:25、マーコートプラス3330は、17:45:38のモル比で構成されたターポリマーであり、純分9〜10%の市販品として提供される。これらは一種又は二種以上を適宜選択、又は組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料における成分(c)の配合量は、純分として0.05〜1%であり、より好ましくは0.05〜0.5%である。この範囲であれば泡立ち、泡持ちを優れたものにするだけでなく、洗い流し後の肌になめらかさを付与する効果に優れたものが得られる。配合量が0.05%未満であると良好な泡立ち、泡持ちを付与することができず、また肌のなめらかさも得られない。また配合量が1%を超えると泡立ちが遅く、洗浄効果も低下する。
【0016】
本発明の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料には、更に成分(d)として、25℃で液状のエステル油を配合すると、洗浄後の肌をよりなめらかにすることができる。このような成分(d)は、脂肪酸と一価、二価、多価アルコールとのエステルであり25℃で液状を呈するものである。具体的には、例えばミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル等が挙げられ、これらは一種又は二種以上を適宜選択、又は組み合わせて使用することができる。このうち特に2−エチルヘキサン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルが洗浄後の肌をなめらかにし、無水ケイ酸由来のきしみ感を低減させる面からも好ましい。
【0017】
本発明の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料における成分(d)の配合量は0.1〜5%が好ましい。成分(d)の配合量がこの範囲であると、泡立ちを阻害することなく、より良好な洗浄力と使用後の肌がよりなめらかとなるため好ましい。
【0018】
本発明の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料には、上記の成分のほか、香料、染料・顔料等の色素、防腐剤、殺菌剤、消炎剤、キレート剤、粘度調整剤、起泡剤、泡安定化剤、湿潤剤、過脂肪剤、パール剤、各種薬剤等を配合することができる。なお、本発明の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料は、洗顔料、身体洗浄料等に適用することができる。
【実施例1】
【0019】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0020】
発明品1〜7および比較品1〜7:弱酸性ゲル状皮膚洗浄料
表1に示す組成および下記製法にて弱酸性ゲル状皮膚洗浄料を調製した。得られたゲル状皮膚洗浄料を、(1)経時安定性(排液)、使用感として、(2)使用中の泡立ち、(3)使用中の泡持ち、(4)使用後の肌のなめらかさ、について、下記の方法により評価し結果を併せて、表1、表2に示した。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
(製法)
A:成分1〜10、13〜14を均一に混合する。
B:成分11〜12をAに添加混合し、弱酸性ゲル状皮膚洗浄料を得た。
【0024】
(評価方法1)
女性評価パネル20名に、本発明品及び比較品の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料を3gとり、25℃の適量の水にて手のひらで泡立て洗顔を行ない各評価をおこなった。(2)使用中の泡立ち、(3)使用中の泡持ち、(4)使用後の肌のなめらかさ、について、下記(a)評価基準にて5段階評価し、更に各試料の評点の平均値を(b)4段階判定基準を用いて判定した。
【0025】
(a)5段階評価基準
(評点) (評価)
4 : 非常に良い
3 : 良い
2 : 普通
1 : やや悪い
0 : 悪い
(b)4段階判定基準
(評点) (判定)
3.0以上 :◎
2.5以上、3.0未満 :○
1.0以上、2.0未満 :△
1.0未満 :×
【0026】
(評価方法2)
本発明品及び比較品の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料を40℃に恒温放置し、1ヶ月放置後の試料の排液の有無を下記の(c)4段階評価基準にて判定した。
【0027】
(c)4段階評価基準
[評価] [判定]
排液は見られない ◎
排液がわずかに見られる ○
排液がかなり大きく使用できない ×
【0028】
表1、表2の結果から明らかなように、本発明品1〜7は、使用中の泡立ち、使用中の感触、洗浄後の肌のなめらかさ、経時安定性(排液)の全ての項目に優れた弱酸性ゲル状皮膚洗浄料であった。これに対して、成分(a)N−アシル−L−酸性アミノ酸塩が配合されていない比較品1では、使用中の泡立ち、泡持ち及び使用後のなめらかさの点で十分なものではなかった。また成分(c)アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体が配合されていない比較品2では、使用中の泡立ち、泡持ち及び使用後のなめらかさの点で十分なものではなかった。一方、成分(b)無水ケイ酸が所定の量に満たない比較品3では、ゲル状態を形成せず評価できなかった。成分(c)アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体の配合量が多い比較品4では、泡立ちの面で十分なものではなかった。また、成分(b)無水ケイ酸の配合量が多い比較品5では、使用中の泡立ちと使用後の肌のなめらかさが著しく欠如していた。成分(c)アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体の配合量が所定の量より少ない比較品6では、泡立ちや使用後の肌のなめらかさが劣り、成分(b)ではない平均粒子径の大きい無水ケイ酸を配合した比較品7ではゲル状を形成しなかった。
【実施例2】
【0029】
弱酸性ゲル皮膚洗浄料
(成分) (%)
(1)N−ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン 20.0
(2)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 5.0
(3)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 8.0
(4)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル *1 1.0
(5)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 10.0
(6)トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 3.0
(7)アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム・
アクリルアミド共重合体 *2 3.0
(8)カチオン化セルロース 0.5
(9)精製水 残量
(10)無水ケイ酸(平均一次粒子径10nm) 9.0
(11)オレンジ油 0.5
*1:ユニルーブ50MB−168(日本油脂社製)
*2:マーコートプラス3331(カルゴン社製)
【0030】
(製法)
A:成分1〜9を加熱溶解後、冷却する。
B:Aに成分10、11を添加して均一に混合し、弱酸性ゲル状皮膚洗浄料を得た。
実施例2の皮膚洗浄料は、経時安定性が良好で、かつ使用中の泡立ち・泡持ち、洗浄後のなめらかさに優れたゲル状皮膚洗浄料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)N−アシル−L−酸性アミノ酸塩
(b)無水ケイ酸1〜20質量%
(c)アクリル酸・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合0.05〜1質量%
を配合することを特徴とする弱酸性ゲル状皮膚洗浄料。
【請求項2】
前記成分(a)が、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸塩であることを特徴とする請求項1記載の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料。
【請求項3】
更に成分(d)として25℃で液状のエステル油0.1〜5質量%を配合することを特徴とする請求項1又は2記載の弱酸性ゲル状皮膚洗浄料。

【公開番号】特開2007−254431(P2007−254431A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84316(P2006−84316)
【出願日】平成18年3月25日(2006.3.25)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】