説明

強化繊維織物とその製造方法

【課題】変形性に優れ複雑な形状に追従させることができ、かつ、その形状の保持性に優れる強化繊維織物とそれを用いたプリフォーム、繊維強化樹脂成形品、ならびにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 複数本の強化繊維束を含む織物基材の少なくとも一方の表面に樹脂材料を固着させた後に、該織物基材を構成する複数本の強化繊維束の相対位置に変動を与えることで、2本以上の強化繊維束にまたがって固着している樹脂材料を該2本以上の強化繊維束の一部から剥がし、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が0.01〜0.75Nの範囲内の強化繊維織物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形性に優れ立体形状への賦形が容易であると共に、優れた取り扱い性を有し、立体形状へ賦形した際の形状保持性にも優れる強化繊維織物とそれらを用いたプリフォーム、繊維強化樹脂成形品、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの連続強化繊維と、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、などのマトリクス樹脂の硬化物からなる繊維強化樹脂成形品は、強度、弾性率、耐衝撃性、対疲労性などに優れた力学特性を示すとともに、軽量であるという特性を有することから、航空、宇宙、スポーツ、自動車、船舶、家電製品、土木建築などの幅広い用途に用いられている。
【0003】
繊維強化樹脂成形品の製造においては、連続強化繊維からなる織物基材に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸されたシート状中間基材であるプリプレグを、成形型上に積層した後、オートクレーブにて加圧・加熱する方法を用いることが多い。しかし、プリプレグに含浸させている未硬化の熱硬化性樹脂は通常高粘度であり、織物基材を構成する強化繊維束は、その相対的な位置が含浸されている樹脂に拘束される。そのため、プリプレグは、コシが強く変形性が小さく、型への追従性が悪く立体形状に賦形しにくい。このことが、生産性向上を阻む要因の一つとなっている。
【0004】
上記問題に対し、マトリクス樹脂が予め含浸されていないドライな強化繊維基材を成形型の内部に配置した後に、低粘度の液状マトリクス樹脂を注入することにより強化繊維基材中にマトリクス樹脂を含浸、次いで硬化させることで繊維強化樹脂成形品を得るRTM(Resin Transfer Molding)法に代表される注入成形法が、生産性を向上できる方法として近年注目されている。
【0005】
樹脂注入成形法では、通常、成形型上に樹脂を含浸させていないドライな強化繊維基材を型の形状に沿わせて積層し、次いでバッグフィルムや成形型で覆い、樹脂を注入し硬化させる手順が取られる。この方法では、ドライな強化繊維基材を用いているために変形性が大きく立体形状への追従性は良い。しかしながら、一方で、形状保持性が悪く、積層作業に時間を要するため高価な成形型を長時間にわたり占有してしまうという問題がある。
【0006】
上記問題に対し、生産性をより一層向上させるために、強化繊維基材の積層工程と樹脂注入工程とを分離した方法も提案されている。すなわち、まず、ドライな強化繊維基材を成形型上で積層を行う場合と実質的に同じ形状(ニアネットシェイプ)に形状付与し、かつその形状を保持させた所謂プリフォームを形成する。その後、成形型にそのプリフォームを載置し、型上での積層、形状付与作業を必要とすることなく速やかにマトリクス樹脂を注入する。
【0007】
具体的には、例えば特許文献1、2に、強化繊維基材表面に熱可塑ライクな樹脂あるいは熱硬化性樹脂を付与し、所定の形状の賦形型へ積層した後に樹脂を溶融させて強化繊維基材の層間を融着させ、冷却固化させて所定の形状に保持されたプリフォームを形成する技術が提案されている。これらの提案によれば、強化繊維基材を所定の形状に変形させ、その層間を接着させることで形状保持性に優れたプリフォームを得ることができる。
【0008】
しかしながら、このような方法によれば、プリフォーム化前の強化繊維基材表面に樹脂成分が付着することによって強化繊維基材のコシが強くなり、変形性が低下し、型への形状追従性が悪化してしまうという弊害がある。つまり、立体形状へ変形させようとした場合、強化繊維基材がその形状に追従することができずにシワが生じてしまい、その結果、マトリクス樹脂を含浸硬化させて得られた成形品の表面に強化繊維基材のシワが見え商品としての意匠性に劣る。あるいは、マトリクス樹脂を注入する際に強化繊維基材に生じたシワ部分に起因する含浸不良が発生する、さらには、シワ部分で強化繊維基材が折れ曲がり成形品の力学特性が悪化するという問題がある。この現象は特に、凹凸が大きい3次元の立体形状を作製するため賦形型に強化繊維基材を押付けて形状付与する方法を用いる場合に顕著である。
【0009】
このようなことから、形状付与後の形状保持性に優れていながら、形状付与時には、複雑な形状にシワを生じることなく追従可能な優れた変形性を有する強化繊維基材を提供することが強く望まれていた。
【特許文献1】米国特許第5071711号明細書
【特許文献2】特開平4−261810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、変形性に優れ複雑な形状に追従させることができ、かつ、その形状の保持性に優れる強化繊維織物とそれを用いたプリフォーム、繊維強化樹脂成形品、ならびにそれらの製造方法を提供することで、繊維強化樹脂成形品の生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するために、次の(1)〜(13)の構成を有するものである。すなわち、
(1)複数本の強化繊維束を含む織物基材の少なくとも一方の表面に樹脂材料が固着された強化繊維織物であって、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にある強化繊維織物。
(2)非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内にある、前記(1)に記載の強化繊維織物。
(3)樹脂材料の固着量が、1〜50g/mである、前記(1)または(2)に記載の強化繊維織物。
(4)樹脂材料が熱可塑性樹脂を主成分とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の強化繊維織物。
(5)織物基材が二方向性織物である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の強化繊維織物。
(6)強化繊維束が炭素繊維束である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の強化繊維織物。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の強化繊維織物を少なくとも1層含んでいるプリフォーム。
(8)前記(7)に記載のプリフォームに、マトリクス樹脂が含浸している繊維強化樹脂成形品。
(9)複数本の強化繊維束を含む織物基材の少なくとも一方の表面に樹脂材料を固着させた後に、該織物基材を構成する複数本の強化繊維束の相対位置に変動を与えることで、2本以上の強化繊維束にまたがって固着している樹脂材料を該2本以上の強化繊維束の一部から剥がす強化繊維織物の製造方法。
(10)前記織物基材に5〜45°のせん断変形を与えることで、該織物基材を構成する複数本の強化繊維束の相対位置に変動を与える、前記(9)に記載の強化繊維織物の製造方法。
(11)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の強化繊維織物および強化繊維束を含む織物基材を賦形型に積層配置し、次いで該強化繊維織物および織物基材の積層体を加圧、加熱することで強化繊維織物に固着している樹脂材料を軟化して該積層体の層間を接着するプリフォームの製造方法。
(12)複数の前記(1)〜(6)のいずれかに記載の強化繊維織物を賦形型に積層配置し、次いで該強化繊維織物の積層体を加圧、加熱することで強化繊維織物に固着している樹脂材料を軟化して該積層体の層間を接着するプリフォームの製造方法。
(13)前記(11)または(12)に記載の製造方法によって製造されたプリフォームに、マトリクス樹脂を含浸させ硬化または固化させる繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【0012】
なお、本発明において、樹脂材料が固着しているとは、織物基材を構成する強化繊維束の表面が樹脂材料と接触している部分において、樹脂材料が強化繊維束を構成する複数本の単糸間に浸透し、強化繊維織物と樹脂材料とが結合されている状態をいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明の強化繊維織物は、従来困難であった複雑な形状であっても、生産性よく変形させ、形状保持させることができる。そのため、意匠性、力学特性に優れた繊維強化樹脂成形品を生産性よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明について、望ましい実施の形態と共に詳細を説明する。
【0015】
本発明の強化繊維織物は、複数本の強化繊維束を含む織物基材の少なくとも一方の表面に樹脂材料が固着されており、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にある。
【0016】
織物基材に樹脂材料を固着させることで、形状の保持性に優れたプリフォームを得ることができる。すなわち、強化繊維織物を積層し形状を付与してプリフォームを製造する際に、熱を加え樹脂材料を溶融し、その溶融した樹脂材料を対向する強化繊維織物の両方に浸透させた後に冷却固化することで強化繊維織物の層間を接着することができ、その結果、形状の保持性に優れたプリフォームを得ることができる。
上記樹脂材料は強化繊維織物の両表面に固着されていても良い。しかしながら、強化繊維織物の層間を接着させる際、対向する強化繊維織物の少なくとも一方に樹脂材料が存在すれば層間接着効果を得られる。従って、積層順を工夫することにより、各層間で接する強化繊維織物の一方の表面に樹脂材料が固着されていれば、層間の接着による形状保持効果を十分に得ることができる。
【0017】
また、樹脂材料は少なくとも強化繊維織物の表面に固着していれば十分であるが、たとえば樹脂材料を含有している強化繊維束で織物を構成する場合などのように、樹脂材料が強化繊維織物の表面だけでなく内部にも存在していても良い。
【0018】
樹脂材料としては、強化繊維束を含む織物基材の表面に固着させることができ、かつ積層した強化繊維織物を加圧、加熱することで層間を接着し、変形された強化繊維織物の形状を保持する効果を発現させることができれば、とくに限定されない。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または、これらの混合物から適宜選択して使用することができる。かかる樹脂材料としては、室温では結晶状態またはガラス状態であるが、熱により融解または軟化する性質を有するものであることが必要である。
【0019】
樹脂材料は、例えば、繊維状、粉末状などの形態の樹脂を織物基材の表面に散布した後に加熱軟化させることで強化繊維束を構成する単糸と樹脂とを結合させ、次いで冷却固化したり、あるいは、液状の樹脂を織物基材の表面にスプレーした後に固化したりする方法で織物基材の表面に固着させることができる。もちろんそれ以外の方法で固着しても良い。
【0020】
強化繊維織物を立体形状へ変形させる場合、強化繊維織物は伸度が小さい強化繊維束から構成されているため、強化繊維束の伸びによる変形は極めて小さい。そのため、強化繊維織物を構成する強化繊維束間の相対位置を変化させること、つまり織物の織角度を変化させることで立体形状へ変形させる必要がある。
【0021】
また、強化繊維織物を立体形状に変形させる場合、強化繊維織物の各々の部分が小さい変形荷重であっても柔軟に変形することができると、各々の部分の微小な変形の積算により強化繊維織物全体が大きくかつ滑らかに変形することが可能となり、結果として複雑な立体形状へとシワ無く追従することができる。なお、小さい変形荷重下での変形性が悪い強化繊維織物を立体形状へ変形させようとする場合、変形荷重がある一定の大きさに達するまで各々の部分は変形することができないが、荷重が一定値を超えると変形への耐性が低い部分で局所的な変形が発生する。そのため、全体としてみれば立体形状に追従することができず、大きなシワを生じ、意匠性、樹脂含浸性、力学特性の全てにおいて問題を生じることとなる。
【0022】
従って、強化繊維織物を立体形状へシワ無く追従させるためには、強化繊維織物の各々の部分が小さい変形荷重下であっても滑らかに変形することが重要である。
【0023】
一般に、樹脂材料が固着されていない織物基材においては、織物を構成する強化繊維束間の相対位置は主に強化繊維束間に生じる摩擦力によって拘束されるため、強化繊維束間の相対位置は比較的容易に変化させることができ、強化繊維織物の変形性は良好である。
【0024】
一方、図1および図2に示すような、表面に樹脂材料13が固着している強化繊維織物においては、一般に、複数の強化繊維束14、15にまたがって固着している樹脂材料11、12が存在し、それらの樹脂材料が強化繊維束同士を結合するため、強化繊維束間に強い拘束力が生じ強化繊維織物の変形性が悪化する。その結果、強化繊維織物を立体形状へ追従させる場合に必要な変形が生じにくくなり、立体形状への変形時にシワを生じるなどの不具合が生じやすい。
【0025】
しかしながら、本発明にかかる強化繊維織物は、複数本の強化繊維束を含む織物基材の少なくとも一方の表面に樹脂材料が固着された強化繊維織物であるものの、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にあるので、樹脂材料による層間接着効果を発揮しつつ、しわの発生を防いで立体形状へ追従させることもできる。
ここで、非繊維軸方向引張試験とは、強化繊維織物の面内方向に引張荷重を加えたときに強化繊維織物の変形が最も大きくなる方向において、変位と荷重を測定するものであり、具体的には次の方法による。
【0026】
まず、強化繊維織物が最も変形しやすい方向を長軸方向となるように矩形の試験片(測定部の寸法:長さ150mm×幅45mm)を準備する。この試験片を長軸方向に引張り、変形量(測定部長の変化量)とそのときの引張荷重を測定する。
【0027】
たとえば0°および90°の2方向に強化繊維束の繊維軸を持った2方向性強化繊維織物の場合、引張荷重を加えたときに最も変形しやすい方向は、+45°および−45°のいずれかの方向であることから、いずれかの方向を長軸方向とする試験片を切り出す(図3参照)。
この試験片に対して非繊維軸方向引張試験を行うと、強化繊維束の繊維軸方向とは異なる方向に引張荷重が加えられ、それに伴い強化繊維織物を構成する強化繊維束間の相対位置がずれて織角度が変化する。その結果、試験片としては、測定部長の距離が大きくなるように変形する(図4参照)。つまり、非繊維軸方向引張試験において織角度が変化して生じる変形は、強化繊維織物を立体形状へ追従させる場合に必要な変形と同じメカニズムによるものであり、非繊維軸方向引張試験において荷重と変形量の関係を測定することで、強化繊維織物の変形しやすさを知ることができる。例えば、一定量の変形を与えるために必要な荷重が小さい強化繊維織物は、変形性に優れており立体形状に追従しやすい強化繊維織物であると言える。
【0028】
なお、非繊維軸方向引張試験においては、図4に示すように試験片が不均一な変形を示すために、試験片寸法が変わると測定結果が異なることに注意が必要である。したがって、本発明においては、上記寸法の試験片で試験を行うものとする。
【0029】
また引張荷重を付与した時、図4に示す試験片取付け部41において試験片が幅方向に変形してしまった場合にも同様に測定結果が異なるため、試験片の取り付けには試験片の全幅にわたって均一に締付け圧力がかかる構造の取付け治具を用い、締付け部分において試験片が幅方向に変形しないように取り付けることが重要である。
【0030】
このような非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%であるとは、試験片を長軸方向に引張り変形させた場合に、その測定部長が初期長さから1.5mm大きくなり、151.5mmになった状態のことである。
非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内であれば、その強化繊維織物は変形初期の微小な変形域においても各々の部分が小さい変形荷重で滑らかに変形することができるため、立体形状になめらかに追従することができ、シワなどの不具合を生ずる可能性が低い。当該荷重の最大値の上限は、好ましくは0.6N、さらに好ましくは0.45Nである。一方、当該荷重の最大値の下限は、0.05が好ましく、0.1がさらに好ましい。引張歪みが1%に到達するまでに必要な荷重の最大値が、0.05〜0.6Nの範囲内の場合には変形性がさらに優れ、0.1〜0.45Nの範囲内であればきわめて優れた変形性を有し、立体形状へシワ無く変形させることがさらに容易となる。
【0031】
さらに、本発明において強化繊維織物は、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内であることが好ましい。非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%とは、試験片を長軸方向に引張り変形させた場合に、その測定部長が初期長さから7.5mm大きくなり157.5mmになった状態のことである。
【0032】
強化繊維織物を立体形状に変形させる場合、強化繊維織物は、立体形状へと変形する部分のほぼ全体にわたって微小な変形を伴うと共に、形状が大きく変わる部分でさらに大きく変形する必要がある。
非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内にあれば、強化繊維織物は小さい変形荷重下での微小な変形に加え、大きな変形が必要となる場合においても強化繊維束間の相対位置が変化しやすくシワなどの不具合を生ずる可能性が低い。当該荷重の最大値の上限は、好ましくは0.85N、さらに好ましくは0.7Nである。一方、当該荷重の最大値の下限は、0.15が好ましく、0.2がさらに好ましい。引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.15〜0.85Nであれば変形性はさらに優れ、0.20〜0.70Nであれば極めて優れた変形性を有し、大きな変形が必要な場合でも立体形状へシワ無く変形することがさらに容易となる。
【0033】
本発明の強化繊維織物は、少なくとも一方の表面に樹脂材料が固着している。表面に固着している樹脂材料が多いと、複数枚の樹脂材料付き強化繊維織物を積層した場合に、その層間を接着する作用を強く得ることができ、賦形された形状の保持性に優れたプリフォームを得ることができる。しかしながら、樹脂材料が極端に多すぎると、樹脂材料が強化繊維織物を構成する強化繊維束同士を強く結合しすぎて変形性が著しく悪化する。さらには、図5のように強化繊維織物の表面が広く樹脂材料51で覆われることとなり、繊維強化樹脂成形品を得るために強化繊維織物に液状のマトリクス樹脂を注入するときにマトリクス樹脂の強化繊維織物内部への流入が妨げられ、マトリクス樹脂がくまなく均一に含浸するのに要する時間が長くなったり、マトリクス樹脂が含浸しない部分ができたりする。かかる観点から、樹脂材料の固着量は、50g/m以下であることが好ましい。より好ましくは25g/m以下、さらに好ましくは10g/m以下である。一方、強化繊維織物の表面に固着している樹脂材料が少なすぎる場合には、強化繊維織物の層間を接着する際に十分な接着力を得ることができず立体形状を保持することができない。かかる観点から、樹脂材料の固着量は、1g/m以上であることが好ましい。より好ましくは1.5g/m以上、さらに好ましくは2g/m以上である。
【0034】
表面に固着している樹脂材料としては、先に述べたような方法で織物基材の表面に固着させることができ、織物基材の層間を接着する作用を得ることができるものであればとくに限定されない。熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を適宜選択して使用することができ、中でも、熱可塑性樹脂を主成分とするものであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミドなどがあるが、特に限定するものではない。樹脂材料が熱可塑性樹脂を主成分とするものであると、強化繊維織物表面に散布し固着させる場合、さらには強化繊維織物を積層、立体形状へと変形させた後に層間を接着させる場合の取り扱い性が向上し、生産性が向上する。なお、主成分とは樹脂材料を構成する成分の中で、その割合が最も多い成分のことをいう。
【0035】
本発明の強化繊維織物においては、樹脂材料が織物基材の表面に点在して固着していることが好ましい。点在とは織物基材の表面全域にわたって分散している状態をいう。樹脂材料が点在することで、樹脂材料の量が少ない場合でも層間接着の際に全面に亘って均一な接着力を得やすい。またこの場合、強化繊維織物表面に点在して固着している樹脂材料の90%以上が、強化繊維織物の表面に垂直な方向への投影面積が、0.002〜1mmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、0.002〜0.2mm、さらに好ましくは、0.002〜0.05mmである。投影面積が0.002mmより小さいと、織物基材表面の織構造に伴う凹凸に埋没する樹脂材料の数が増加し層間の接着が弱くなり、結果として賦形された形状を保持することが困難になる。逆に投影面積が1mmより大きくなると、樹脂材料の分散状態にバラツキが生じ易くなり、層間を接着した場合に一様な接着を得にくくなる。さらには、上述したようなマトリクス樹脂注入時の不都合が生じやすくなる場合もある。
本発明の強化繊維織物を構成する織物基材としては、複数本の強化繊維束から構成されるものを適宜選択することができる。例えば、互いに平行となるよう一方向に引き揃えられた複数本の強化繊維束と、それらに直交し径が小さい補助繊維(単糸または繊維束)が互いに交錯して織構造をなしている一方向性織物、あるいは、複数本の強化繊維束を二方向(たとえば直交する二方向)に織成してなる二方向性織物、さらには、それぞれ平行に引き揃えられた複数本の強化繊維束を互いの繊維方向が異なるよう多段に積層し、それらをステッチングなどで接合した多軸織物などを用いることができる。中でも、二方向性織物が好ましい。二方向性織物の織形態としては、平織り、綾織り、繻子織りなどが挙げられる。二方向性織物は、強化繊維束間の相対位置の変化による織物基材の変形がしやすく立体形状に変形しやすいこと、少ない枚数で力学的に擬似等方性を有する積層構成を得やすいことなどの利点があり、好ましい。
織物基材を構成する強化繊維束としては、炭素繊維束、黒鉛繊維束、ガラス繊維束、または、アラミド繊維束などを用いることができる。中でも、炭素繊維束であることが好ましい。炭素繊維束を構成する炭素繊維には、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、ピッチ系などの種類があるが、強度、弾性率等のバランスからポリアクリロニトリル系炭素繊維が、好ましく用いられる。炭素繊維束を用いることにより、最終製品である繊維強化樹脂成形品の力学特性を高いものとすることができる。かかる観点から、本発明に用いる炭素繊維束の引張弾性率は、110〜600GPaであることが好ましく、210〜600GPaであれば更に優れた力学特性を発現することができて好ましい。ここで引張弾性率は、JIS R7601(1986)に基づいて測定される値を指し、単位はGPaである。
【0036】
以上のような本発明の強化繊維織物は、複数本の強化繊維束を含む織物基材の少なくとも一方の表面に樹脂材料を付与し固着させた後に、その織物基材を構成する複数本の強化繊維束の相対位置に変動を与えることで製造することができる。
【0037】
樹脂材料は、前述の方法で織物基材の表面に固着させることができる。図6、図7に示すように複数の強化繊維束にまたがって固着している樹脂材料がある場合であっても、樹脂材料の固着により生じている強化繊維束間の位置変動を拘束する力よりも大きい外力を与えることによって、織物基材を構成する強化繊維束間の相対位置を強制的に変動させ、図8、図9に示すように樹脂材料が一部の強化繊維束のみに固着している状態とすることができる。
2つの強化繊維束にまたがって固着している樹脂材料は、通常、いずれか一方の強化繊維束に対してより強く固着している。そのために、該樹脂材料が固着している2つの強化繊維束間の相対位置が変動した場合には、樹脂材料はより強く固着している強化繊維束と共に移動し、その結果、他方の強化繊維束から引き剥がされる。
このように外力により強制的に強化繊維束間の相対位置を変動させることで、2つあるいはそれ以上の強化繊維束に固着していた樹脂材料は、一部の強化繊維束から剥がれ、より強く固着している強化繊維束のみへ固着した状態となる。
その結果、樹脂材料が表面に固着した強化繊維織物であっても樹脂材料に変形を拘束する作用がないために、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が0.01〜0.75Nの範囲内というような性質を有するものとなり、樹脂材料が固着されていない織物基材と同等の優れた変形性を発現することができる。
なお、強化繊維織物全体としては、部分的に複数本の強化繊維束にまたがって固着している樹脂材料が強化繊維束から剥がれずにそのまま残っていてもよい。
また、織物基材を構成する複数本の強化繊維束間の相対位置に変動を与えることで強化繊維束から樹脂材料の固着を剥がすためには、樹脂材料は実質的に固形状態となっている必要がある。すなわち、樹脂材料を熱融着により固着させた場合には十分に冷却した後に、溶液として吹き付けた場合には十分に乾燥させてから、強化繊維束の相対位置を変動させる。こうすることで、効率的に固着している樹脂材料を剥がすことができる。
【0038】
強化繊維束間の相対位置に一度変動を与えれば、その位置関係を元に戻しても再加熱等により樹脂材料を軟化させない限り剥がれた樹脂材料が再度固着することはないため、変動付与後に強化繊維織物を元の形状に戻せば、織目の乱れが無く変動付与前と同じ織形態を保った強化繊維織物を得ることができる。
【0039】
強化繊維束間の相対位置に変動を付与する方法は、樹脂材料による強化繊維束間の接着によって生じる拘束力に打ち勝って強化繊維束間の相対位置に変動を与える作用が得られればどのような方法でも良い。例えば、樹脂材料が表面に固着している織物基材の面内方向にせん断変形を与えることで、効率良く強化繊維束間の相対位置を変動させればよい。
【0040】
織物基材にせん断変形を与えるためには、たとえば、樹脂材料が固着した織物基材の巻出し機構と、織物基材を把持しながらその幅方向に揺動することで幅方向への変形を与える揺動機構と、織物基材の巻取り機構とを有する装置とを用いればよい。
巻出し機構は、樹脂材料が固着した織物基材のロールを設置する軸と、ロールから引出される織物基材に対して適宜張力を付与する機構からなる。張力を付与する機構は、搬送される織物基材に対して張力を付与することができればいかなる機構を用いることもできるが、例えばロールが設置される軸にパウダーブレーキなどのトルクを付与する装置を接続して張力を付与する機構、搬送される織物基材を、回転を制御した一対のロールでニップすることで張力を付与する機構、あるいは、回転を制御したロールと織物基材の摩擦力により張力を付与する機構などを用いることができる。
【0041】
織物基材をその幅方向に揺動させる機構としては、織物基材を幅方向に揺動させることができればいかなる構成を用いても構わない。たとえば、図16に示す、織物基材の幅方向端部を把持し、幅方向へと引張力を加える端部把持揺動機構161や、図17に示す、織物基材を上下から治具で挟み、その治具が織物基材の幅方向へ揺動するニップ揺動機構171などを例示できる。また、図18に示すような、織物基材の幅方向を回転軸方向とする揺動ロール181をその回転軸方向に揺動させることで織物基材を摩擦力によって把持しながら揺動させる機構も好ましく利用される。
【0042】
図18に示す機構を用いる場合、揺動ロール181は、織物基材が大きな巻付角を取って通過するように設置すると、強化繊維織物との間で大きな摩擦力が得られ、織物基材を効率的に揺動させることができるので好ましい。ここで巻付角とは、搬送ロール182から揺動ロール181を通過し、次の搬送ロール182へと移動するときに織物基材が揺動ロールの円周に対して巻付いている角度のことを言う。
【0043】
また、例えばロール表面をゴム素材にするなどしてロール表面の摩擦係数を大きくすることで、織物基材を幅方向へ揺動させる時にロール表面で織物基材が滑らないようにすることができる。こうすることで、さらに効率的に織物基材を揺動させることができると共に、ロール表面での滑りによって織物基材の表面が擦過され損傷することを防止できる。同様に、織物基材に損傷を与えないために、揺動ロールは織物基材の走行に伴って従動回転することが好ましい。
【0044】
織物基材をその幅方向に揺動させると、搬送経路の長さが変化する。したがって、図19に示すように、揺動ロール181は軸方向へ揺動する時に、経路長の変化を吸収するよう回転軸と直角方向にも移動できる機構を有することが好ましい。
【0045】
巻取り機構は、ロールを設置する軸が回転することで、織物基材をロールへ巻取る構成であればよい。巻取りは、一定速度での連続運転であっても良いし、例えば、揺動機構作動時には停止し、揺動機構停止時には巻き取りを行うというように、巻取りおよび停止を繰り返す間欠運転であっても良い。
【0046】
例えば上述のような方法で図1に示す二方向性の織物基材にせん断変形を付与すると、織物基材は図10に示すように変形する。強化繊維束の交点を頂点とする矩形形状部分は、せん断変形が付与されると、それぞれの辺の長さを保ったまま平行四辺形に変形する。このとき、織物を構成する強化繊維束間の織角度は変形し、強化繊維束間の相対位置が変動する。結果、複数の強化繊維束にまたがって固着した樹脂材料を部分的に強化繊維束から剥がすことができる。
【0047】
図10に示すせん断変形の角度θ(すなわち、ある強化繊維束を基準としてそれに交差する強化繊維束のせん断変形前後の角度差)は、5〜45°の範囲内であることが好ましい。せん断変形角が5°を下回る場合、強化繊維束間の相対位置の変動が不十分なため、複数の強化繊維束にまたがって固着した樹脂材料を剥がす効果を十分には得ることができない。一方、45°より大きいせん断変形角を与えた場合には、強化繊維織物を変形させた後に元の形状に戻そうとしても、織組織に乱れが残ったり、強化繊維束に損傷が生じるなどの不具合が出やすいため好ましくない。より効率的に樹脂材料を剥がす効果を得るためには、10°以上であることがより好ましく、20°以上であることがさらに好ましい。一方、強化繊維織物の損傷をより確実に防ぐためには、40°以下であることがより好ましく、30°以下であることがさらに好ましい。
【0048】
以上のようにして得られる本発明の強化繊維織物を用いれば、立体形状であってもシワが無いプリフォームを得ることができる。
【0049】
プリフォームは、本発明の強化繊維織物を、必要に応じて樹脂材料が固着していない織物基材などとともに積層、一体化することで形成される。本発明のプリフォームは、複数の織物基材が樹脂材料により一体化され、かつ、かかる樹脂材料つきの強化繊維織物を少なくとも1層含んでいる。
【0050】
プリフォームは、立体形状に変形した複数の織物基材が、その層間において樹脂材料を介して互いに接着することで、その立体形状を保持する。積層された織物基材同士が接する面において、少なくとも一方の織物基材の表面に樹脂材料が固着されていれば、その層間において接着作用を得ることができる。したがって、実際用いる本発明の強化繊維織物の形態を考慮して、プリフォームを構成する必要織物基材の総数のうち一部をその本発明の強化繊維織物に置換すればよい。すなわち、強化繊維織物を構成する織物基材の両面に樹脂材料が固着している場合には、本発明の強化繊維織物と、その他の織物基材とを交互に配置すればよい。また、プリフォームを構成する織物基材のうちの一部が固着していればよい場合には、その他の織物基材の枚数を増やせばよい。
【0051】
しかし、全ての層間において樹脂材料による接着作用を得ることができれば、層間が剥がれることなく、取り扱い性に優れ、効率的にシワが無い、形状安定性にも優れたプリフォームを得ることができる。したがって、所望するプリフォームが複雑形状である場合など、全ての層間において接着作用が必要とされる場合には、織物基材の両面に樹脂材料が固着している本発明の強化繊維織物と、その他の織物基材とを交互に配置するか、プリフォームを構成する必要織物基材の全数もしくは1枚以外を本発明の強化繊維織物とすることが好ましい。全体が剥がれず、取り扱い性に優れたプリフォームを得ることができる。なお、プリフォームを構成する必要織物基材の全数を、両面に樹脂材料が固着している本発明の強化繊維織物としてももちろんよい。
【0052】
本発明の強化繊維織物を用いたプリフォームは、次のように形成することができる。
【0053】
まず、本発明の強化繊維織物を、必要に応じて、強化繊維束を含むその他の織物基材とともに賦形型に積層配置する。次いで、その積層体を加圧し賦形型の形状に沿うように押付けながら加熱することで強化繊維織物に固着している樹脂材料を軟化して積層体の層間を接着し、形状を保持させる。このようにしてプリフォームが得られる。
積層体を加圧する方法としては、たとえば、所望する繊維強化樹脂成形品の形とほぼ同一形状に賦形できる一対の賦形型(すなわち、マトリクス樹脂を注入、硬化させる成形型とほぼ同一の型形状を有する型)を用い、一方の賦形型に積層体を積層配置した後に他方の賦形型を閉じて締付けることで積層体を加圧しながら賦形型に沿った形状に変形させる方法を例示できる(図11参照)。また、成形型とほぼ同一の型形状を有する片面の賦形型を用い、積層体をその賦形型の上に積層配置した後、その上から積層体をシートで覆い、シートと賦形型とで囲まれた空間の内部を真空にしたり、チャンバーボックス内に加圧した気体を導入することで、シートを介して積層体を加圧し、賦形型に押付けて賦形型に沿った形状に変形させる方法などを例示できる(図12参照)。なお、これらの方法に限定はされない。また、上記一対の賦形型は、それを構成する一方の賦形型が複数個に分割されているようなものでもよい。
【0054】
積層体を加熱する方法としては、加温された賦形型と積層体の熱伝導による方法、外部から赤外線ヒータなどで加熱する方法、あるいは加温された気体や液体を吹き付ける方法などを例示することができるが、特に限定はされない。賦形型は、内部に配管を設けてその配管に熱媒を流したり、内部にヒータを配設したりする方法で加温することができる。
【0055】
効率良くプリフォームを製造するためには、樹脂材料を軟化させるために必要な温度に加温された賦形型に積層体を密着させ、熱伝導により加熱する方法が好ましく用いられる。この場合、積層体を賦形型に沿った形状に変形させる前に樹脂材料が軟化してしまうと、樹脂材料の粘着性が増して積層体の層間がずれにくくなり立体形状への変形がうまくいかなくなる場合があるので、樹脂材料に熱が伝わる前に加圧し変形させることが好ましい。
【0056】
積層体を加熱する温度は、樹脂材料が軟化して積層体の層間を接着させる作用を発現することができる温度であれば良い。積層体が加圧されながら加熱されることで、積層体を構成する強化繊維織物や織物基材が互いに強く押付けられ、軟化した樹脂材料が対向する強化繊維織物あるいは織物基材を構成する強化繊維束の単糸の間に浸透する。次いで積層体が冷却されることにより、樹脂材料は対向する強化繊維織物や織物基材の双方に固着し、積層体の層間を接着する作用を発現する。積層体を冷却する方法としては、賦形型を冷却し賦形型と積層体との熱伝導により冷却したり、積層体に冷風を吹き付けたりする方法などを例示できるが、特に限定はされない。
【0057】
こうした方法で積層体を立体形状に変形させ層間を接着することにより、立体形状に変形されていながらシワが無いプリフォームを製造することができる。またこのプリフォームは積層体の層間が接着されているために、剛性が高く形状保持性に優れており、プリフォームの搬送、マトリクス樹脂を注入するための成形型への載置等の取り扱いが効率よく行えるという特徴を併せ持つ。
【0058】
またプリフォームは、対向する少なくとも2つの賦形型の間に積層体を配置し、その積層体の一部を加圧した後、残りの部分を加圧しながら加熱することででも製造できる。本方法では、賦形型の間に積層体を配置してその積層体の一部を加圧するとき、積層体の加圧されていない部分は拘束されていないため自由に移動することが可能であり、加圧される部分が賦形型の形状に沿うために必要な量の積層体は周囲から引き寄せられる。次いで、周囲の部分を加圧すると、積層体の全体が加圧され賦形型の形状に沿った変形をする。積層体は賦形型の形状に沿った状態で加熱を受け、樹脂材料が軟化し、層間が接着したプリフォームとなる。はじめに一部を加圧した後に全体を加圧することで、特に形状が大きく変化する凹凸付近であっても、賦形型形状に沿うために必要な量の積層体が滞りなく供給されることとなり、手作業による補助を必要とせずにシワの無いプリフォームを効率よく製造することができる。
【0059】
積層体の全体を加圧するのに先立って加圧する位置は、特に限定されるものではないが、例えば比較的滑らかな形状に積層体を変形させる場合には、その形状の中心付近であると周囲から積層体を引き寄せ易く好ましい。段差を有するような形状に積層体を変形させる場合には、段差の凹部であることが好ましい。凹部をまず加圧することで、凹部に沿った形状に積層体を変形させるために必要十分量の積層体が供給され、良好に賦形することができる。また、複数の段差を持った形状では、隣接する凹部分を順次加圧し、最後に残り全体を加圧するというように段階的に加圧していくと、シワの発生を防ぎながら効果的にプリフォームを製造することができる。
【0060】
積層体の一部を加圧した後に、残りの部分を加圧、加熱する方法としては、図13に示すように、賦形型131の上に積層配置された積層体133に対して部分型134によって加圧作用を加え、次いで対向する賦形型132により全体を挟み加圧、加熱する方法を例示できる。ここで部分型とは、積層体の一部を賦形型に沿った形状に変形させるための部材を意味する。部分型を用いて積層体を加圧することにより、積層体は賦形型と部分型に挟まれて、賦形型に沿った形状に変形する。
【0061】
部分型は、積層体を加圧する部分において、その部分に対応する賦形型に沿った形状をしている必要があり、また、積層体と接触しない部分においても、賦形型あるいはシートが積層体を挟み加圧する作用を妨げない形状をしていなければならない。部分型は、金属、樹脂、ゴム等の材質を所望の形状に切削あるいは成形加工したものを使用することができる。効率よく積層体を加熱するためには、部分型は加温されていると良いが、積層体は賦形型からも加熱されるため必須ではない。
【0062】
部分型は、図14に示すように、対向する賦形型141、142のうち少なくとも一方に設けられた突出可能な可動部分144で構成してもよい。この態様の場合、まず、可動部分144を突出させた状態で賦形型同士を近接させ、他方の賦形型141と突出した可動部分とで積層体143の一部を加圧する。次いで、賦形型同士をさらに接近させるとともに、突出した可動部分144をその賦形型の内部方向に引き込み、対向する賦形型141、142の全体で積層体全体を加圧、加熱する。
【0063】
さらに、プリフォームは、賦形型に積層配置した積層体の一部を賦形型に押付けた後、その積層体の上からシートを被せ、気体もしくは液体により、その積層体を加圧、加熱することでも製造できる。本方法では、例えば図15に示すように、賦形型151に積層配置した積層体152の一部を部分型155で賦形型に押しつけて、積層体の一部を賦形型に沿った形状に変形させる。部分型の形状は対応する賦形型部分に沿うように設定されている。このとき積層体の押しつけられていない部分は拘束されていないため自由に移動することが可能であり、賦形型に沿うために必要な量の積層体が周囲から引き寄せられる。次いで、積層体の上からシート153を被せその周辺部と賦形型との間をシール材154によりシールし、賦形型とシート153で囲まれた空間の内部を真空ポンプ157を用いて真空にしたり、シート153とチャンバーボックス159で囲まれた空間の内部の気体や液体を加圧装置158を用いて加圧したりすることで、積層体を加圧することができる。また、ヒータ156により賦形型を加熱したり、気体や液体を加熱したりすることで、積層体を加熱することができる。こうすることで、積層体の全体が賦形型に沿った形状に変形をし、さらに積層体内部の樹脂材料が軟化し、層間接着作用が発現することによって、プリフォームを製造することができる。
【0064】
シートの材質としては、シリコンゴムや天然ゴム、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
シートが伸びる特性を有しているものであれば、所望するプリフォーム形状が複雑であっても形状に沿いやすく好ましい。したがって、シートの伸度は5%以上であることが好ましい。なお、フィルムの伸度は大きくても問題ないが、繰り返し使用することや加熱すること等を鑑みて、実用に耐えうるフィルムの伸度の上限としては400%であることが好ましい。
【0066】
また、あらかじめ積層体が変形する形状と略同一形状にシートを賦形しておくことも、効率的に積層体を変形させることに有効である。
【0067】
本発明の繊維強化樹脂成形品は、上記方法で製造されたプリフォームに液状のマトリクス樹脂を注入、含浸させ、次いで硬化または固化させることにより製造される。
【0068】
立体形状にシワ無く変形されていながら形状保持性に優れた上記のプリフォームは、持ち運んでも形状が崩れにくく、取り扱いが容易なため、成形型に容易に配置することができる。また、形状保持性に優れているため外形状が明確であり、成形型へ載置する場合の位置合わせも容易である。
【0069】
樹脂を含浸させる方法としては、片面型の上にプリフォームを載置した後にフィルムで覆い、フィルムと成型型で囲まれた空間の内部を真空にした後に、液状の樹脂を真空圧でプリフォームに含浸させる方法、あるいは、プリフォームを対向する成形型の間に挟み、型内にマトリクス樹脂を加圧注入しプリフォームに含浸させる方法などを好ましく用いることができる。次いで、樹脂をその樹脂に適する温度および時間で硬化または固化させた後に、脱型することで繊維強化樹脂成形品を製造することができる。
マトリクス樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。中でもエポキシ樹脂は、取り扱い性、機械的特性に優れることから、特に好ましく用いることができる。
【0070】
本発明の繊維強化樹脂成形品は、曲面形状や立体形状への変形性に優れた強化繊維織物を用いているために、複雑な立体形状であっても生産性よく製造することができ、さらに連続する強化繊維を用いているために軽量でありながら優れた機械的特性を発現することができる。ここで立体形状とは、平面や曲面を組合せた形状(断面が枝分かれを有するような形状も含むものとする)をいうものとする。
【0071】
また、本発明の繊維強化樹脂成形品に用いる強化繊維織物は、変形した場合にも織目のズレやシワが生じにくい特徴を有するため、繊維強化樹脂成形品の表面に見える織物基材特有の織目模様に乱れが少なく意匠性に優れ、さらには強化繊維束の配向乱れが少ないため機械的特性に優れるという特徴を併せ持つ。こうした特長により、本発明の繊維強化樹脂成形品は、自動車、航空機、船舶、家電機器、建築等の用途における、外装部材や構造部材など、複雑な形状、意匠性、高い機械的特性が要求される用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例、比較例に基づいて本発明を説明する。
【0073】
実施例1:
二方向性織物基材の一方の表面に、ポリビニルフォルマール樹脂を主成分とする粒子状の樹脂材料を、エンボスロールとドクターブレードを用いて、単位面積あたりの質量が5g/mとなるように計量しながら落下させ、均一に分散させた。続いて、織物基材の表面温度が185℃になるようにセットした遠赤外線ヒータの下を0.3m/分で通過させることで樹脂材料を織物基材上に固着させ、樹脂材料が表面に固着した強化繊維織物をロールに巻き取った。
【0074】
なお、二方向性織物基材には、東レ株式会社製CO6343B(織組織:平織り,織物目付け:198g/m,厚さ:0.25mm、縦糸織密度:12.5本/25mm,横糸織密度:12.5本/25mm)を用い、この二方向性織物基材に用いられていた強化繊維束は、東レ株式会社製炭素繊維T300−3K(フィラメント数:3,000本、引張弾性率:230GPa,引張強度:3.5GPa,繊度:198tex,破断伸度:1.5%)であった。
【0075】
続いて、この強化繊維織物をロールから巻き出し、軸方向に揺動可能な揺動ロールに対して巻付角180°となるように通過させた後、別のロールに巻き取った。強化繊維織物は巻き出し側から巻取り側へ間欠的に移動し、間欠動作の停止中に揺動ロールを揺動させ、強化繊維織物に対してその面内方向へのせん断変形角度が最大で30°となる変形履歴を与えた。そして、せん断変形角度が実質的に0°の状態に戻った状態で強化繊維織物をロールへ巻き取った。この強化繊維織物の表面を観察したところ、樹脂材料は、織物基材の表面に点在して固着していた。また、せん断変形を与えたことによる樹脂材料の織物基材からの脱落は見られなかった。
【0076】
そして、巻き取られた強化繊維織物から、縦糸、横糸の方向をそれぞれ0°、90°としたときに、45°の方向が長軸方向となるよう、250mm×45mmの大きさの試験片を切り出した。次いで、この試験片の長軸方向両端それぞれ50mmを治具で固定し、両端の治具を介して測定装置に取り付けた。強化繊維織物は、治具で固定されている部分が幅方向に変形しないように固定し、両端の治具間で露出した部分が長軸方向に150mm、幅方向に45mmとなるように設定した。なお、測定装置には、株式会社島津製作所製オートグラフAGS−100を用いた。
その後、治具を介して試験片をその長軸方向に引っ張る非繊維軸方向引張試験を行い、試験片の引張歪み(引張試験装置の変位に対応)が5%(引張試験装置変位7.5mm)に到達するまで継続して荷重を測定し、試験片の歪みと荷重との関係を得た。なお、測定値にはバラツキが存在すると考えられるため、試験片は3枚準備し、各試験片について歪みが1%(引張試験装置変位1.5mm)、および5%(引張試験装置変位7.5mm)に到達するまでの最大荷重を読み取り、試験片3枚の平均を各引張歪みにおける荷重の最大値とした。
【0077】
この手順により測定を行った結果、引張歪みが1%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.24N、引張歪みが5%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.5.Nであった。
【0078】
続いて、強化繊維織物から、500mm×400mmの大きさの長方形を4枚切り出した。このとき、長方形の辺の方向をそれぞれ0°、90°方向としたときに、繊維軸方向が概ね0、90°方向となるものを2枚、概ね±45°となるものを2枚とした。切り出した強化繊維織物を、最上面の強化繊維織物のみ樹脂材料が固着した面を下側にし、それ以外は樹脂材料が固着した面を上側にして積層した。また、上下の2枚は繊維軸方向が0°/90°方向であるもの、内層の2枚は繊維軸方向が±45°方向であるものとした。得られた積層体を90℃に加温した賦形型上に配置した。なお、賦形型としては、平面寸法450mm×350mmで、深さ40mm、斜面角度45°の曲線を描く溝を有しているものを用いた。
【0079】
次いでその賦形型と90℃に加温した対向する賦形型とで積層体を挟み、積層体に0.4MPaの圧力を5分間加えた。なお、積層体を賦形型上に配置してから、2つの賦形型で積層体を挟むまでに要した時間は約10秒であった。
【0080】
対向する賦形型を取り外し、冷風を吹き付けて冷却した積層体を賦形型から取り出したところ、積層体は、賦形型の形状に沿った形に変形されその形状が固定されていた。また形状が付与された積層体の表面にはシワが生じていなかった。積層体の層間は剥がれることがなく、立体的に変形された形状も安定しており、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、表面にシワが生じておらず賦形型通りの形状が発現し、さらに、その形状から変形しないことに優れており、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして非常に好ましいものであった。
【0081】
このプリフォームを100℃に保ったRTM成形用両面型の下型に載置し、上型を閉じ、真空ポンプにて型内の空気を排出した。次いで、型内に液状のエポキシ樹脂を注入圧0.5MPaで注入し、プリフォームに含浸させ、20分放置した。このようにして繊維強化樹脂成形品を得た。なお、樹脂には、主剤:“エピコート(登録商標)”828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ樹脂)、硬化剤:東レ製ブレンドTR−C35H(イミダゾール誘導体)を混合して得た液状エポキシ樹脂を用いた。
【0082】
得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂が全体に十分に行き渡って硬化しており、樹脂が含浸せずに強化繊維束が表出した部分は存在しなかった。また、成形品の表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れはなくシワも存在しない滑らかな表面を有しており、繊維強化樹脂成形品として優れたものであった。
【0083】
実施例2:
実施例1と同じ強化繊維織物を、同じ積層構成で積層した(サイズ:500mm×400mm、積層枚数4枚)。
【0084】
この積層体を、実施例1と同じ形状を持ち室温に保たれている片面の賦形型上に配置した後、賦形型および積層体の上から厚さ2mmのシリコンゴムシートを被せ、賦形型とシートとをシーラントテープで密着させた。これによって、賦形型とシートとで囲まれた空間は、内部に積層体が閉じ込められた密閉空間となった。次いで、真空ポンプを用いて密閉空間内の空気を排出し、シートを介して大気圧によって積層体を賦形型に押付けた。この状態で、賦形型に設けられた配管に熱水を流して賦形型を90℃に昇温し、5分間保持した。シートを賦形型から取り外し、冷風を吹き付けて冷却した積層体を賦形型から取り外したところ、積層体は、賦形型の形状に沿った形に変形されその形状が固定されていた。また形状が付与された積層体の表面にはシワが生じていなかった。積層体の層間は剥がれることがなく、立体的に変形された形状も安定しており、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、表面にシワが生じておらず賦形型通りの形状が発現し、さらに、その形状から変形しないことに優れており、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして非常に好ましいものであった。
【0085】
次いで、このプリフォームに実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂が全体に十分に行き渡って硬化しており、樹脂が含浸せずに強化繊維束が表出した部分は存在しなかった。また、成形品の表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れはなくシワも存在しない滑らかな表面を有しており、繊維強化樹脂成形品として優れたものであった。
【0086】
実施例3:
織物基材の表面に固着する樹脂材料の量を、10g/mとした以外は、実施例1と同様に樹脂粒子を固着させた強化繊維織物を作製し、実施例1と同様の変形履歴を与えた。得られた強化繊維織物の表面を観察したところ、樹脂材料は、織物基材の表面に点在して固着していた。また、せん断変形を与えたことによる樹脂材料の織物基材からの脱落は見られなかった。
【0087】
この強化繊維織物に実施例1と同様の非繊維軸方向引張試験を行った。結果、引張歪みが1%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.24N、引張歪みが5%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.55Nであった。
この強化繊維織物を、実施例1と同様の方法で積層し、その積層体を実施例1と同じ賦形型を用い同じ方法で変形させた。結果、積層体は、賦形型の形状に沿った形に変形されその形状が固定されていた。また形状が付与された積層体の表面にはシワが生じていなかった。積層体の層間は剥がれることがなく、立体的に変形された形状も安定しており、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、表面にシワが生じておらず賦形型通りの形状が発現し、さらに、その形状から変形しないことに優れており、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして非常に好ましいものであった。
【0088】
次いで、このプリフォームに実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂が全体に十分に行き渡って硬化しており、樹脂が含浸せずに強化繊維束が表出した部分は存在しなかった。また、成形品の表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れはなくシワも存在しない滑らかな表面を有しており、繊維強化樹脂成形品として優れたものであった。
【0089】
実施例4:
二方向性織物基材に、東レ株式会社製BT70−20(織組織:平織り,織物目付け:213g/m,縦糸織密度:3.27本/25mm,横糸織密度:3.27本/25mm)を用いた以外は、実施例1と同様に強化繊維織物を作製した。なお、この二方向性織物基材に用いられていた強化繊維束は、東レ株式会社製炭素繊維T700S−12K(フィラメント数:12,000本、引張弾性率:230GPa,引張強度:4.9GPa,繊度:800tex,破断伸度:2.1%)であった。
【0090】
この強化繊維織物に実施例1と同様の変形履歴を与えた。得られた強化繊維織物の表面を観察したところ、樹脂材料は、織物基材の表面に点在して固着していた。また、せん断変形を与えたことによる樹脂材料の織物基材からの脱落は見られなかった。
この強化繊維織物に実施例1と同様の非繊維軸方向引張試験を行った。結果、引張歪みが1%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.17N、引張歪みが5%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.4Nであった。
【0091】
この強化繊維織物を、実施例1と同様の方法で積層し、その積層体を実施例1と同じ賦形型を用い同じ方法で変形させた。結果、積層体は、賦形型の形状に沿った形に変形されその形状が固定されていた。また形状が付与された積層体の表面にはシワが生じていなかった。積層体の層間は剥がれることがなく、立体的に変形された形状も安定しており、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、表面にシワが生じておらず賦形型通りの形状が発現し、さらに、その形状から変形しないことに優れており、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして非常に好ましいものであった。
【0092】
次いで、このプリフォームに実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂が全体に十分に行き渡って硬化しており、樹脂が含浸せずに強化繊維束が表出した部分は存在しなかった。また、成形品の表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れはなくシワも存在しない滑らかな表面を有しており、繊維強化樹脂成形品として優れたものであった。
【0093】
実施例5:
強化繊維織物を積層しその積層体を変形させるにあたって次のようにした以外は実施例1と同様の方法でプリフォームを形成した。
【0094】
賦形型として、平面寸法が450mm×350mmで、深さ30mm、斜面角度45°の曲線を描く第1の凹部を有し、さらにその第1の凹部の底部にそこから深さ30mm、斜面角度45°の第2の凹部を有する賦形型を用い、この上に積層体を配置した。このとき賦形型の温度は90℃とした。次いで、賦形型の第2の凹部と同じ形状を有し90℃に加温された部分型を用いて、積層体を第2の凹部へ押付け加圧した。その後に、同じく90℃に加温した第1の凹部と同じ形状を有する対向する賦形型を設置し、部分型により加圧されていない部分も含めて積層体全体に0.4MPaの圧力を5分間加えた。積層体を賦形型上に配置してから、対向する賦形型を設置し積層体全体を加圧するまでに要した時間は約15秒であった。その後、対向する賦形型および部分型を取り外し、冷風を吹き付けて冷却した積層体を賦形型から取り出したところ、積層体は、2つの凹部をもった賦形型の形状に沿った形に変形されその形状が固定されていた。また形状が付与された積層体の表面にはシワが生じていなかった。積層体の層間は剥がれることがなく、立体的に変形された形状も安定しており、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、表面にシワが生じておらず賦形型通りの形状が発現し、さらに、その形状から変形しないことに優れており、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして非常に好ましいものであった。
【0095】
次いで、このプリフォームに使用する成形型の形状が異なる以外は、実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。成形型としては、このプリフォームと同様に、第1の凹部と第2の凹部を有する形状のものを用いた。得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂が全体に十分に行き渡って硬化しており、樹脂が含浸せずに強化繊維束が表出した部分は存在しなかった。また、成形品の表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れはなくシワも存在しない滑らかな表面を有しており、繊維強化樹脂成形品として優れたものであった。
【0096】
実施例6
織物基材の表面に固着する樹脂材料の量を、3g/mとした以外は、実施例1と同様に樹脂粒子を固着させた強化繊維織物を作製し、実施例1と同様の変形履歴を与えた。得られた強化繊維織物の表面を観察したところ、樹脂材料は、織物基材の表面に点在して固着していた。また、せん断変形を与えたことによる樹脂材料の織物基材からの脱落は見られなかった。
【0097】
この強化繊維織物に実施例1と同様の非繊維軸方向引張試験を行った。結果、引張歪みが1%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.23N、引張歪みが5%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.5Nであった。
この強化繊維織物を、実施例1と同様の方法で積層し、その積層体を実施例1と同じ賦形型を用い同じ方法で変形させた。結果、積層体は、賦形型の形状に沿った形に変形されその形状が固定されていた。また形状が付与された積層体の表面にはシワが生じていなかった。積層体の層間は剥がれることがなく、立体的に変形された形状も安定しており、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、表面にシワが生じておらず賦形型通りの形状が発現し、さらに、その形状から変形しないことに優れており、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして非常に好ましいものであった。
【0098】
次いで、このプリフォームに実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂が全体に十分に行き渡って硬化しており、樹脂が含浸せずに強化繊維束が表出した部分は存在しなかった。また、成形品の表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れはなくシワも存在しない滑らかな表面を有しており、繊維強化樹脂成形品として優れたものであった。
【0099】
比較例1:
面内方向へのせん断変形を与えなかった以外は、実施例1と同様にして、強化繊維織物(樹脂材料固着量:5g/m)を作製した。
この強化繊維織物に実施例1と同様の非繊維軸方向引張試験を行った。結果、引張歪みが1%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は1.5N、引張歪みが5%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は2.2Nであった。
この強化繊維織物を、実施例1と同様の方法で積層し、その積層体を実施例1と同じ賦形型を用い同じ方法で変形させた。結果、変形した積層体の表面には、強化繊維織物の織目の乱れが多く見られ、特に3次元的な変形が大きくなる部分において多数のシワが生じており、賦形型通りの形状に変形していなかった。一方、積層体の層間は剥がれることがなく、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、形状が変形しないことには優れているが、表面にシワが多数生じており、賦形型に沿った形状を発現していないことから、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして使用に耐えるものではなかった。
【0100】
次いで、このプリフォームに実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂がほぼ全体に行き渡って硬化しているが、シワによって積層体が厚くなっていた部分では樹脂が十分に含浸せず強化繊維束が表出していた。また、その周辺部では部分的に樹脂層が分厚くなり、それに伴い表面が滑らかでなくなっていた。さらに、表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れが存在していた。すなわち、得られた繊維強化樹脂成形品は、使用に耐えるものではなかった。
【0101】
比較例2:
比較例1と同様の強化繊維織物(樹脂材料固着量:5g/m)を、同じ積層構成で積層した。
【0102】
この積層体を実施例2と同じ賦形型を用い、同じ方法で変形させた。結果、変形した積層体の表面には、強化繊維織物の織目の乱れが多く見られ、特に3次元的な変形が大きくなる部分において多数のシワが生じており、賦形型通りの形状に変形していなかった。一方、積層体の層間は剥がれることはなく、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、形状が変形しないことには優れているが、表面にシワが多数生じており、賦形型に沿った形状を発現してないことから、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして使用に耐えるものではなかった。
【0103】
次いで、このプリフォームに実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂がほぼ全体に行き渡って硬化しているが、シワによって積層体が厚くなっていた部分では樹脂が十分に含浸せず強化繊維束が表出していた。また、その周辺部では部分的に樹脂層が分厚くなり、それに伴い表面が滑らかでなくなっていた。さらに、表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れが存在していた。すなわち、得られた繊維強化樹脂成形品は、使用に耐えるものではなかった。
【0104】
比較例3:
面内方向へのせん断変形を与えていない以外は、実施例3と同様にして、強化繊維織物(樹脂材料固着量:10g/m)を作製した。
【0105】
この強化繊維織物に実施例1と同様の非繊維軸方向引張試験を行った。結果、引張歪みが1%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は2.6N、引張歪みが5%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は3.5Nであった。
【0106】
この強化繊維織物を、実施例1と同様の方法で積層し、その積層体を実施例1と同じ賦形型を用い同じ方法で変形させた。結果、変形した積層体の表面には、強化繊維織物の織目の乱れが多く見られ、特に3次元的な変形が大きくなる部分において多数のシワが生じており、賦形型通りの形状に変形していなかった。一方、積層体の層間は剥がれることがなく、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、形状が変形しないことには優れているが、表面にシワが多数生じており、賦形型に沿った形状を発現していないことから、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして使用に耐えるものではなかった。
【0107】
次いで、このプリフォームに実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂がほぼ全体に行き渡って硬化しているが、シワによって積層体が厚くなっていた部分では樹脂が十分に含浸せず強化繊維束が表出していた。また、その周辺部では部分的に樹脂層が分厚くなり、それに伴い表面が滑らかでなくなっていた。さらに、表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れが存在していた。すなわち、得られた繊維強化樹脂成形品は、使用に耐えるものではなかった。
【0108】
比較例4:
面内方向へのせん断変形を与えていない以外は、実施例4と同様にして、強化繊維織物(樹脂材料固着量:5g/m)を作製した。
【0109】
この強化繊維織物に実施例1と同様の非繊維軸方向引張試験を行った結果、引張歪みが1%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.90N、引張歪みが5%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は1.2Nであった。
【0110】
この強化繊維織物を、実施例1と同様の方法で積層し、その積層体を実施例1と同じ賦形型を用い同じ方法で変形させた。結果、変形した積層体の表面には、強化繊維織物の織目の乱れが多く見られ、特に3次元的な変形が大きくなる部分において多数のシワが生じており、賦形型通りの形状に変形していなかった。一方、積層体の層間は剥がれることがなく、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、形状が変形しないことには優れているが、表面にシワが多数生じており、賦形型に沿った形状を発現していないことから、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして使用に耐えるものではなかった。
【0111】
次いで、このプリフォームに実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた繊維強化樹脂成形品は、樹脂がほぼ全体に行き渡って硬化しているが、シワによって積層体が厚くなっていた部分では樹脂が十分に含浸せず強化繊維束が表出していた。また、その周辺部では部分的に樹脂層が分厚くなり、それに伴い表面が滑らかでなくなっていた。さらに、表面に見える強化繊維織物の織目には大きな乱れが存在していた。すなわち、得られた繊維強化樹脂成形品は、使用に耐えるものではなかった。
【0112】
比較例:5
実施例1と同じ二方向性織物基材に対して、樹脂材料を固着させず、また面内方向へのせん断変形も与えないまま、実施例1と同様の方法で非繊維軸方向引張試験を行った。結果、引張歪みが1%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.22N、引張歪みが5%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は0.45Nであった。
【0113】
この織物基材を実施例1と同様の方法で積層し、その積層体を実施例1と同じ賦形型を用い同じ方法で変形させた。なお、この織物基材には樹脂材料が固着されていないため、積層する際の面の向きは問わない。
【0114】
対向する賦形型を取り外したところ、積層体は賦形型の形状に沿った形にシワなく変形していた。冷風を吹き付けて冷却した積層体を賦形型から取り出したところ、積層体の層間が全く接着されておらず、積層体の形状は崩れ、賦形型に沿った形状を全く保つことができなかった。
【0115】
この方法では、織物基材は立体形状に変形しても、層間が接着しないためにその形状を保持することができず、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして使用に耐えるものではなかった。
【0116】
比較例:6
二方向性織物基材の表面に固着する樹脂材料の量を60g/mとした以外は、実施例1と同様に樹脂粒子を固着させた強化繊維織物を作製し、実施例1と同様の変形履歴を与えた。得られた強化繊維織物の表面を観察したところ、隣接する点状の樹脂材料同士が結合しているものが多くみられ、織物基材の表面は広く樹脂材料に覆われていた。また、せん断変形を与えたことによる樹脂材料の織物基材からの脱落は見られなかった。
【0117】
この強化繊維織物に実施例1と同様の非繊維軸方向引張試験を行った。結果、引張歪みが1%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は1.3N、引張歪みが5%に到達するまでに付与された荷重の最大値(3枚の平均値)は2.1Nであった。
【0118】
この強化繊維織物を、実施例1と同様の方法で積層し、その積層体を実施例1と同じ賦形型を用い同じ方法で変形させた。結果、変形した積層体の表面には、強化繊維織物の織目の乱れが多く見られ、特に3次元的な変形が大きくなる部分において多数のシワが生じており、賦形型通りの形状に変形していなかった。積層体の層間が剥がれることはなく、端部をつかんで持ち上げても変形することはなかった。すなわち、この方法で得られたプリフォームは、形状が変形しないことには優れているが、表面にシワが多数生じており、賦形型に沿った形状を発現していないことから、繊維強化樹脂成形品用プリフォームとして使用に耐えるものではなかった。
【0119】
次いで、このプリフォームに実施例1と同様の方法で樹脂を含浸、硬化させ、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた繊維強化樹脂成形品は、部分的には樹脂が含浸し硬化しているものの、樹脂が行き渡らずに強化繊維束が表出している部分が多く存在しており、繊維強化樹脂成形品として使用に耐えるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の強化繊維織物を用いることにより、立体形状を有する部材においても、効率的かつ良好に賦形することができ、結果として繊維強化樹脂成形品の生産性および品位の向上が可能となる。したがって、自動車、航空機、船舶、家電機器、OA機器、建築材料等の分野で幅広くしく適用することができる。もちろん、本発明の用途はこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】表面に樹脂材料が固着された強化繊維織物を示す平面模式図である。
【図2】表面に樹脂材料が固着された強化繊維織物を示す断面模式図である。
【図3】非繊維軸方向引張試験の試験片形状を示す平面模式図である。
【図4】非繊維軸方向引張試験により変形した強化繊維織物を示す平面模式図である。
【図5】表面に樹脂材料が多量に固着された強化繊維織物を示す平面模式図である。
【図6】表面に樹脂材料が固着された強化繊維織物を示す平面模式図である。
【図7】表面に樹脂材料が固着された強化繊維織物を示す断面模式図である。
【図8】一部の強化繊維束のみに樹脂材料が固着している強化繊維織物を示す平面模式図である。
【図9】一部の強化繊維束のみに樹脂材料が固着している強化繊維織物を示す断面模式図である。
【図10】せん断変形を付与された強化繊維織物を示す平面模式図である。
【図11】積層体を賦形型に沿った形状に変形させ加圧、加熱する方法の一態様を示す側面模式図である。
【図12】積層体を賦形型に沿った形状に変形させ加圧、加熱する方法の別の態様を示す側面模式図である。
【図13】積層体を賦形型に沿った形状に変形させ加圧、加熱する方法の別の態様を示す側面模式図である。
【図14】積層体を賦形型に沿った形状に変形させ加圧、加熱する方法の別の態様を示す側面模式図である。
【図15】積層体を賦形型に沿った形状に変形させ加圧、加熱する方法の別の態様を示す側面模式図である。
【図16】織物基材を幅方向に揺動させる機構の一態様を示す概略斜視図である。
【図17】織物基材を幅方向に揺動させる機構の別の態様を示す概略斜視図である。
【図18】織物基材を幅方向に揺動させる機構の別の態様を示す概略斜視図である。
【図19】織物基材を幅方向に揺動させる機構の別の態様を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0122】
11 織物基材の2つの強化繊維束にまたがって固着している樹脂材料
12 織物基材の3つの強化繊維束にまたがって固着している樹脂材料
13 織物基材の1つの強化繊維束のみに固着した樹脂材料
14 織物基材を構成する強化繊維束(縦糸)
15 織物基材を構成する強化繊維束(横糸)
31 織物基材の試験片
41 試験片取付け部
42 織物基材の試験片
51 織物基材の表面に固着した樹脂材料
81 一部の強化繊維束のみに固着している樹脂材料
111 賦形型(下型)
112 賦形型(上型)
113 積層体
121 賦形型
122 積層体
123 シート
124 シール材
125 チャンバーボックス
126 真空ポンプ
127 加圧装置
131 賦形型(下型)
132 賦形型(上型)
133 積層体
134 部分型
135 加熱手段
141 賦形型(下型)
142 賦形型(上型)
143 積層体
144 突出可能な可動部分
145 加熱手段
151 賦形型
152 積層体
153 シート
154 シール材
155 部分型
156 ヒータ
157 真空ポンプ
158 加圧装置
159 チャンバーボックス
161 端部把持揺動機構
162 織物基材の巻出し機構
163 織物基材の巻取り機構
164 織物基材
171 ニップ揺動機構
181 揺動ロール
182 搬送ロール
θ せん断変形角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の強化繊維束を含む織物基材の少なくとも一方の表面に樹脂材料が固着された強化繊維織物であって、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にある強化繊維織物。
【請求項2】
非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内にある、請求項1に記載の強化繊維織物。
【請求項3】
樹脂材料の固着量が、1〜50g/mである、請求項1または2に記載の強化繊維織物。
【請求項4】
樹脂材料が熱可塑性樹脂を主成分とする、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維織物。
【請求項5】
織物基材が二方向性織物である、請求項1〜4のいずれかに記載の強化繊維織物。
【請求項6】
強化繊維束が炭素繊維束である、請求項1〜5のいずれかに記載の強化繊維織物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の強化繊維織物を少なくとも1層含んでいるプリフォーム。
【請求項8】
請求項7に記載のプリフォームに、マトリクス樹脂が含浸している繊維強化樹脂成形品。
【請求項9】
複数本の強化繊維束を含む織物基材の少なくとも一方の表面に樹脂材料を固着させた後に、該織物基材を構成する複数本の強化繊維束の相対位置に変動を与えることで、2本以上の強化繊維束にまたがって固着している樹脂材料を該2本以上の強化繊維束の一部から剥がす強化繊維織物の製造方法。
【請求項10】
前記織物基材に5〜45°のせん断変形を与えることで、該織物基材を構成する複数本の強化繊維束の相対位置に変動を与える、請求項9に記載の強化繊維織物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の強化繊維織物および強化繊維束を含む織物基材を賦形型に積層配置し、次いで該強化繊維織物および織物基材の積層体を加圧、加熱することで強化繊維織物に固着している樹脂材料を軟化して該積層体の層間を接着するプリフォームの製造方法。
【請求項12】
複数の請求項1〜6のいずれかに記載の強化繊維織物を賦形型に積層配置し、次いで該強化繊維織物の積層体を加圧、加熱することで強化繊維織物に固着している樹脂材料を軟化して該積層体の層間を接着するプリフォームの製造方法。
【請求項13】
請求項11または12のいずれかに記載の製造方法によって製造されたプリフォームに、マトリクス樹脂を含浸させ硬化または固化させる繊維強化樹脂成形品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2007−56441(P2007−56441A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207788(P2006−207788)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】