説明

弾性ローラとその製造方法、電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】弾性層が厚くても寸法精度の高い安価な弾性ローラとその製造方法、また、優れた画像を形成できる安価な電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供する。
【解決手段】内側に開口した環状スリットを有する塗工ヘッドを用い塗工ヘッドを軸芯体に対し相対的に移動させつつ軸芯体外周面上に環状スリットから弾性層材料を吐出して塗工し、塗工された弾性層材料を硬化させる弾性ローラの製造方法において、塗工ヘッドの環状スリット開口より移動方向前方の位置に脱着可能なリング状部材を装着し、塗工ヘッドで粘度10〜5000Pa・sの弾性層材料を軸芯体外周面上に塗工し、リング状部材を塗工ヘッドの環状スリット開口より移動方向後方から取り外し、塗工された弾性層材料を硬化し弾性層とする。この方法で製造された弾性ローラ、及びこれを備える電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、複写機等の画像形成装置および電子写真プロセスカートリッジなどに用いられる弾性ローラ及びその製造方法に関する。また、現像ローラを具備した電子写真プロセスカートリッジ、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真記録装置について、以下に説明する。この装置の本体内部には画像形成部が設置され、画像がクリーニング、帯電、潜像、現像、転写、定着のプロセスを経て形成される。画像形成部は像担持体である感光ドラムを備えており、クリーニング部、帯電部、潜像形成部、現像部および転写部を備えている。この画像形成部で形成された感光ドラム上の画像は転写部材により、記録材に転写され、搬送された後、定着部にて加熱、加圧され定着された記録画像として排出される。
【0003】
電子写真方式を用いたプリンターにおいて、感光ドラムは帯電ローラにより均一に帯電され、レーザー等により静電潜像を形成する。次に、現像容器内の現像剤が現像剤塗布ローラおよび現像剤規制部材により適正電荷で均一に現像ローラ上に塗工され、感光ドラムと現像ローラとの接触部で現像剤の転写(現像)が行われる。その後、感光ドラム上の現像剤は、転写ローラにより記録紙に転写され、熱と圧力(加圧ローラと定着ローラ)により定着され、感光ドラム上に残留した現像剤はクリーニングブレードによって除かれ、一連のプロセスが完了する。
【0004】
電子写真装置において、例えば現像ローラの場合、常時感光ドラム及び現像剤規制部材に圧接された状態にあり、現像を行なう際には現像ローラと感光ドラム、現像ローラと現像剤規制部材の間に現像剤が介在して圧接している。感光ドラムに転写されない現像剤は、現像剤塗布ローラによって剥ぎ取られ再度現像容器内に戻り、容器内で攪拌され再び現像剤塗布ローラによって現像ローラ上に搬送される。これらの工程を繰り返すうちに現像剤は大きなストレスを受けるという結果になる。そこで、現像剤へのストレスを軽減するという目的から現像ローラは低硬度の弾性体からなる材料で形成されている。また、現像ローラや帯電ローラの場合、常に他部材と接触した状態で回転しているので、接触状態を安定に保つ必要があるために、ローラとして高い寸法精度が必要とされる。接触状態を安定に保つことができないと現像剤の供給量がばらついたり、感光ドラムに対する圧力分布がばらつくなどして画像に悪い影響を及ぼすことになる。
【0005】
また近年、電子写真のカラー化及び高画質化のニーズが高まり、電子写真用ローラの外形寸法や振れ(厚み精度)の高精度化、表面粗さの均一性が厳しく要求されている。例えば、接触式現像方式において、現像ローラは上述したように、感光ドラム表面に対し接触しているため、外形寸法や振れ(厚み精度)が正確でないと、感光ドラムとローラ間のニップ幅やニップ力に変動が生じ濃度ムラ等の画像欠陥が発生する場合がある。また、ローラ表面粗さが不均一であると、現像剤の搬送量にムラが生じ、これもまた濃度ムラ等の画像欠陥が発生する原因となる場合がある。
【0006】
このような接触現像方式に用いられる現像ローラとしては、軸芯体外周面上に弾性層を設けた構成のローラとなっている。さらに必要に応じて、弾性層の外周側に表面性を付与するために各種の樹脂溶液を塗工し、表面層を設けた構成のローラもある。
【0007】
寸法精度の良い弾性ロールを成形するためには金型を用いた成形方法が用いられている。例えば、軸芯体受け部に単または複数の溜め溝を設けた金型成形技術が開示されている(特許文献1)。これによると、溜め溝部に弾性層材料を逃がすことによって、弾性ローラの寸法精度を落とすことなく良好な成形ができるとしている。このように、高精度の弾性ローラを成形するには金型を用いた成形方法が一般的となっている。しかし、金型成形技術においては、高精度な金型を多数必要とすることにより、生産設備の高額化は避けられない。
【0008】
また、金型を使用せずに軸芯体外周面上に弾性層材料を成形する方法としては、従来、例えばスプレー塗工法、浸漬塗工法、ロール塗工法、ブレード塗工法、環状塗工槽で塗工する方法、リング形状の塗工ヘッドを用いた塗工法等の種々の方法が検討されている。
【0009】
弾性ローラの様々な用途に応じて軸芯体外周面上に所望の機能を有する弾性層を形成させている。特に近年では、そのような所望の機能を発現させるために、均一な薄層から数ミリ程度の厚みまでの弾性層が要求され、かつ、塗工する弾性層材料そのものが多様化している。それに伴って弾性層材料も低粘度から高粘度まで広範囲のものが用いられ、そのため、従来の塗工方法においてはそのような弾性層材料の塗工範囲をカバーできなくなってきている。
【0010】
例えば、前記スプレー塗工法は粘度が低い弾性層材料しか使用できず、弾性層材料の粘度が高いと、弾性層材料の霧化が困難になってしまう。また、前記ブレード塗工法およびロール塗工法は、例えば、塗工される軸芯体の軸線方向にブレードもしくはロールを配置し、その軸芯体を回転させながらブレードまたはロールによって弾性層材料を塗工する。軸芯体を1〜数回転だけ回転させた後、ブレードまたはロールを後退させて塗工を終了する。この塗工終了時のブレードもしくはロールの後退の際、弾性層材料の粘性によって軸芯体外周上の弾性層材料の一部に他の部分より厚い部分が発生する場合がある。特に、弾性層材料の粘度が高い場合には、この厚い部分がその後、弾性層のレベリングの際に回復できないほどになってしまい、均一な弾性層が得られない場合がある。
【0011】
また、前記浸漬塗工法では、スプレー塗工法、ブレード塗工法およびロール塗工法等における弾性層の不均一性の問題は改良される。しかし、弾性層の層厚の制御が弾性層材料の物性、例えば弾性層材料の粘度、表面張力および密度、その他温度等により支配されるため、弾性層材料の物性の調整が難しい。また、弾性層材料が高粘度の場合には薄層の塗工が困難である。このため、スプレー塗工法、ブレード塗工法、ロール塗工法、および浸漬塗工法においては高粘度の弾性層材料を溶媒により希釈し、その弾性層材料を、塗工に必要な粘度にまで下げた状態で塗工し、塗工後の工程で、弾性層材料の希釈に使用した溶媒を例えば蒸発等により除去することにより弾性層を形成するしかなかった。
【0012】
これに対して、高粘度の弾性層材料を直接塗工する方法として環状塗工槽で塗工する方法が開示されている(特許文献2)。弾性層材料を保持する共に、軸芯体の外径よりも小さい穴を持つ環状シール材を底部に有する環状塗工槽を具備し、環状シール材の穴に軸芯体を通し、環状塗工槽から前記軸芯体を相対的に上昇させ、軸芯体の表面に弾性層材料を塗工する方法である。この方法においては、ある程度の粘度範囲で塗工が可能である。浸漬塗工方法と比較して浸漬時間がかからないため、生産速度が早くなること、また少量の弾性層材料で塗工が可能となること、また軸芯体を連続的に環状塗工槽に供給することによって、連続した塗工が可能となること、といった利点を有する。しかしながら、このような環状塗工槽での塗工方法にあっては、被塗工物である軸芯体が、環状塗工槽の一部である環状シール材と接触しているため、塗工工程中に軸芯体に傷が生じてしまうことがある。
【0013】
また、高粘度の弾性層材料を直接塗工する方法としてリング形状の塗工ヘッドを用いた塗工方法が開示されている(特許文献3)。これによれば、弾性層材料の粘度や弾性層の層厚による塗工工程の制限を除去し、より容易な装置で軸芯体外周上に弾性層材料を直接塗工して、良好かつ均一な弾性層を形成することができる。この方法では、軸芯体の中心線が水平方向と平行となった状態で弾性層材料を前記軸芯体の表面に塗工する。すなわち、軸芯体の表面に弾性層材料を塗工した後の軸芯体の外径と略等しい内径を有するリング形状の塗工ヘッドを用意する段階と、軸芯体を塗工ヘッドの内側に同軸上に配置させる段階と、塗工ヘッドの内周面と軸芯体の間の隙間に弾性層材料を供給する段階と、軸芯体に対して前記塗工ヘッドを軸芯体の軸方向に軸線と同軸に相対移動させる段階と、を有する方法である。これにより、塗工ヘッドの内周面と軸芯体との隙間部分に弾性層材料を供給し、軸芯体を水平状態で塗工ヘッドを軸芯体の軸線方向にその軸線と同軸に相対移動させることで軸芯体外周面に弾性層材料が塗工される。塗工ヘッドが軸芯体に塗工層が形成された部分の外径とほぼ等しい内径を持つリング形状であるため、塗工ヘッドが軸芯体に対して非接触状態であり、塗工時の塗工跡が残らない。また、軸芯体は水平状態であるため、重力の要因による弾性層材料の液垂れを減らすことができる。特に、塗工開始時と終了直後に弾性層材料の液垂れをなくし、塗工必要部分への影響をなくすことができる。このため塗工終了時のヘッド内面への弾性層材料の付着を減少させることができ、塗工ヘッドのクリーニングを減少できる。しかしながら、塗工ヘッド内に少なからず弾性層材料が残存することがあるため別途、塗工ヘッドのクリーニング装置を設けたりすると、生産設備上コスト高となる。
【特許文献1】特開2000−006163号公報
【特許文献2】特開2004−275824号公報
【特許文献3】特開2003−190870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、弾性層が厚い場合であっても、寸法精度の高い、ローコストな弾性ローラおよびその製造方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、優れた画像を形成できるローコストな電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明により、内側に開口した環状スリットを有する塗工ヘッドを用いて、該塗工ヘッドを軸芯体に対し相対的に移動させながら該軸芯体外周面上に該環状スリットから弾性層材料を吐出して塗工し、塗工された弾性層材料を硬化させる弾性ローラの製造方法において、
該塗工ヘッドの該環状スリットの開口より該移動方向前方の位置に、脱着可能なリング状部材を装着する装着工程;
該塗工ヘッドで粘度10Pa・s以上5000Pa・s以下の弾性層材料を該軸芯体外周面上に塗工する塗工工程;
該リング状部材を、該塗工ヘッドの該環状スリットより該移動方向後方から、取り外す取り外し工程;
該塗工された弾性層材料を硬化し弾性層とする硬化工程と
をこの順に有する弾性ローラの製造方法が提供される。
【0017】
前記リング状部材の全外周面が、該塗工ヘッド内周面に接触可能であることが好ましい。
【0018】
前記取り外し工程において、前記リング状部材が、該環状スリットの開口を通過することが好ましい。
【0019】
前記リング状部材の外周面が二段以上の不連続面で構成されていることが好ましい。
【0020】
前記リング状部材の内直径r(mm)が、軸芯体外直径をS(mm)、塗工ヘッド内直径をL(mm)としたとき、S+0.02≦r≦(L+S)÷2の範囲にあることが好ましい。
【0021】
前記塗工ヘッドを軸芯体に対して相対的に移動させる方向が重力方向下向きであることが好ましい。
【0022】
前記弾性層がシリコーンゴムまたはウレタンゴムからなることが好ましい。
【0023】
本発明により、上記弾性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする弾性ローラが提供される。
【0024】
上記弾性ローラが現像ローラであることができる。
【0025】
本発明により、現像ローラが装着されてなり、該現像ローラの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像ローラを画像形成体に接触させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、
該現像ローラが、上記弾性ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジが提供される。
【0026】
本発明により、現像ローラが装着されてなり、該現像ローラの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像ローラを画像形成体に接触させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、
該現像ローラが、上記弾性ローラであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、弾性層が厚い場合であっても、寸法精度の高い、ローコストな弾性ローラおよびその製造方法が提供される。
【0028】
また本発明により、優れた画像を形成できるローコストな電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の形態を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0030】
図1は、本発明の製造方法を実施するに好適な装置の例を示す模式図である。この塗工装置では、図1に示すように架台1の上に略垂直にコラム2が取り付けられ、さらに架台1とコラム2の上部に精密ボールネジ3が略垂直に取り付けられている。14はリニアガイドであり精密ボールネジ3と平行に2本がコラム2上に取り付けられている。LMガイド4はリニアガイド14と精密ボールネジ3とを連結し、サーボモータ5よりプーリ6を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。コラム2には軸芯体102の外周上に環状スリットに成っている弾性層材料吐出口から未硬化の弾性層材料を吐出塗工する塗工ヘッド8が取り付けられている。さらにLMガイド4には上ブラケット71および下ブラケット72が取り付けられ、下ブラケット72には軸芯体102を保持し固定する軸芯体下保持軸9が略垂直に取り付けられている。また、逆側のローラの軸芯体102を保持する軸芯体上保持軸10が上ブラケット71に取り付けられ、軸芯体上保持軸10は軸芯体下保持軸9に対向して略同芯になるように配置して軸芯体を保持している。さらに塗工ヘッド8の中心軸は軸芯体下保持軸9と軸芯体上保持軸10の移動方向と平行となるようにそれぞれに支持されている。また、軸芯体下保持軸9および軸芯体上保持軸10の移動時において、塗工ヘッド8の内側に開口した環状スリットに成っている弾性層材料吐出口の中心軸と軸芯体下保持軸9および軸芯体上保持軸10の中心軸が略同芯になるように調節してある。このような構成により塗工ヘッド8の環状スリットに成っている弾性層材料吐出口の中心軸を軸芯体の中心軸に略同芯に合わせることができ、塗工ヘッドの内周面と前記軸芯体102の外周面との間に均一な隙間が形成される。
【0031】
弾性層材料の供給口11は、弾性層材料搬送用の配管12を介して材料供給弁13に接続されている。材料供給弁13は、その手前に混合ミキサー、材料供給ポンプ、材料定量吐出装置、材料タンク等を備え、定量(単位時間当たりの量が一定)の弾性層材料を吐出可能としている。弾性層材料は材料タンクから、材料定量吐出装置により一定量計量され、混合ミキサーで混合される。その後、材料供給ポンプにより混合された弾性層材料は、材料供給弁13から配管12を経由して、供給口11に送られる。
【0032】
弾性層材料の層厚を一定にさせるために、弾性層材料吐出口からの吐出量と材料供給ポンプからの供給量を一定にして、軸芯体保持軸を軸芯体の中心軸方向(特には、鉛直方向)に移動させる。これにより、軸芯体外周面上に弾性層材料からなる円筒形状(ロール形状)の未硬化物の層が形成される。この場合、塗工ヘッド8は固定で、軸芯体102が軸方向に移動している。これに対し、軸芯体102が固定で、塗工ヘッドを軸芯体の中心軸方向に移動させることもできる。つまり、塗工ヘッドを軸芯体に対し、相対的に移動させることで、軸芯体外周面上に弾性層材料からなる円筒形状(ロール形状)の未硬化物の層が形成されることになる。
【0033】
図2は、本発明に好適に用いることのできる塗工ヘッドの例の概略断面図である。塗工ヘッド8は、図2に示すように第一環状部材201および第二環状部材202が、供給口11を有する環状部材保持部材205により保持され構成される。第一環状部材201および第二環状部材202を有する塗工ヘッド8は、内側に開口した環状スリット203の開口である弾性層材料吐出口204を有する。環状スリット203は、第一環状部材201および第二環状部材202により、制御される。すなわち、第一環状部材201および第二環状部材202は、環状スリットの面(図2中A面およびB面)を構成するものである。第一環状部材201は環状スリットA面を、第二環状部材202は環状スリットB面を、有する。環状スリットの幅(スリット幅)は、通常0.1mm〜5.0mm、より好ましくは、0.5mm〜2.0mmに設定される。
【0034】
第一環状部材の内側の最小径部を形成する円筒面と、第二環状部材の内側の最小径部を形成する円筒面とは直径(この直径が塗工ヘッドの内直径L)および中心軸が同じで、両円筒面の間に弾性層材料吐出口が存在する。
【0035】
後に図3を用いて詳述するが、塗工に際し、塗工ヘッドは軸芯体に対して相対的に移動させる。図2においては、この移動方向(以下場合により、この移動方向を進行方向という)は紙面下方としてある。第一環状部材201は、スリット開口すなわち弾性層材料吐出口204より進行方向前方に配されており、第二環状部材202は、弾性層材料吐出口より進行方向後方に配されている。
【0036】
第一環状部材201は、絞り段差部207を有しており、環状部材保持部材205との間で液分配室206が構成される。したがって、環状スリット203は弾性層材料が通過する液分配室206に繋がっていて、さらに液分配室206の下側に弾性層材料を供給する供給口11に繋がっていている。液分配室206には、弾性層材料が通過する絞り段差部207が施されていることになる。供給口11より供給する弾性層材料の流路を一旦絞って供給口11側の液分配室206の内圧を上げることで、弾性層材料吐出口204側の環状スリット203に弾性層材料が均一に流入する。これにより、弾性層材料吐出口204から弾性層材料が均一に吐出する。
【0037】
図2で示した塗工ヘッド8は、第一環状部材201、第二環状部材202および環状部材保持部材205の三つの部材により構成されている。しかし、塗工ヘッド8は、一体成形型であっても良いし、二つあるいは四つ以上部材から構成されても良い。なお、塗工ヘッド8の内直径Lおよび環状スリット203の幅は、軸芯体の周囲に塗工する弾性層材料の膜厚や粘度、固形分、塗工速度などにより適宜選ばれる。
【0038】
図3(a)に示すように軸芯体の外周面上に弾性層材料吐出口から弾性層材料の吐出塗工を開始する前に、塗工ヘッドの弾性層材料吐出口204より進行方向(図3において矢印Aで示す方向)前方の部分に、脱着可能なリング状部材301が装着される。これにより、塗工開始時に弾性層材料吐出口から吐出した弾性層材料が、軸芯体に対する塗工ヘッドの相対的な進行方向(矢印A方向)へ漏洩することが防止され、軸芯体外周面に高い寸法精度で弾性層材料を塗工できる。
【0039】
次に、塗工ヘッドの弾性層材料吐出口204より進行方向前方に、脱着可能なリング状部材301が装着された状態で、塗工ヘッドで粘度10〜5000Pa・sの未硬化の弾性層材料を軸芯体外周面上に塗工する。粘度は25℃における値である(以下同じ)。弾性層材料の粘度を10Pa・s以上とすることにより、軸芯体外周面とリング状部材内周面との隙間から弾性層材料が漏洩することを防止することができる。これにより、後工程の加熱硬化後、弾性ローラの弾性層層厚に対する外直径差が大きくなり、弾性ローラが使用に耐えられないといった状況を防止できる。弾性ローラとして好ましく使用できる寸法精度は、装置のグレードや耐久性にもよるが、弾性ローラの弾性層層厚に対する外直径差の割合が、3%以内の寸法差に抑えられた場合である。3%以内とすることにより、他部材に与える応力に偏りが生じ、ストレスが大きな部分の磨耗や劣化を早める原因となることを防止でき、電荷や現像剤の供給バランスがくずれることによる画像弊害、特には濃度ムラなどが生じる原因となることを防止できる。また、弾性層材料の粘度を5000Pa・s以下とすることにより、材料供給における配管内のせん断速度において、弾性層材料粘度が高いために装置に高負荷がかかり安定した材料供給に困難が生じることを防止することができる。
【0040】
次に、図3(b)に示すように、軸芯体外周面上への弾性層材料の塗工終了後に、リング状部材301が、塗工ヘッドの弾性層材料吐出口204より進行方向(矢印A方向)後方から、取り外される。すなわち、リング状部材は、環状スリットの開口すなわち弾性層材料吐出口を通過する。これにより、塗工終了後の弾性層材料吐出口からの弾性層材料離れを良くし、環状スリットの弾性層材料吐出口に残留した弾性層材料の除去が行われる。また同時に、塗工ヘッド内周面の弾性層材料付着をなくすことができる。このように塗工ヘッドのクリーニングを簡易に行うことができ、生産設備のコストアップを優れて防止することができる。リング状部材301を塗工ヘッドの弾性層材料吐出口204より進行方向(矢印A方向)後方からの取り外しは、例えば、リング状部材301と軸芯体下保持部材9との干渉により行われる。すなわち、リング状部材の位置と、軸芯体下保持部材9の先端の位置を合わせることで、達成できる。あるいは、リング状部材301を塗工ヘッドの弾性層材料吐出口204より進行方向(矢印A方向)後方から取り外す機構を持つ、冶具を別途設けても良い。リング状部材301の取り外し手段は、どのようなものであっても良い。重要なのは、リング状部材301が、環状スリットの開口すなわち弾性層材料吐出口204を通過して、取り外されることである。
【0041】
リング状部材301は、その全外周面が、塗工ヘッド内周面に接触可能であることが好ましい。ここで言う全外周面とは、リング状部材301の外直径で構成される外周面である。後述する図4(a)、(b)および(c)のリング状部材においては、C面部分が全外周面である。これにより、塗工開始時には、リング状部材は、塗工ヘッドの弾性層材料吐出口より進行方向前方の部分に、強固に保持されることができる。塗工過程で弾性層材料吐出口から吐出された、弾性層材料の吐出圧力により、リング状部材が動くことが容易に防止できるので、軸芯体の外周面に高寸法精度で弾性層材料を塗工できる。さらに、塗工終了後には、リング状部材の全外周面が、塗工ヘッドの内周面に接触しているため、均一に弾性層材料吐出口からの弾性層材料離れを可能とし、環状スリットの弾性層材料吐出口に残留した弾性層材料の除去を均一に行うことが容易である。また、塗工ヘッドの内周面から均一に弾性層材料付着をなくすことができる。このために取り外し工程においてリング状部材の全外周面が弾性層材料吐出口の前面を通過することが好ましい。
【0042】
リング状部材の外直径は、上述したように、リング状部材の全外周面が塗工ヘッド内周面に接触していることが好ましいため、塗工ヘッド内直径L(mm)と同径とすることが好ましい。より具体的には、リング状部材の外直径は、プラス公差でL+0.08以下(リング状部材の外直径はLmm以上、(L+0.08)mm以下)が好ましい。
【0043】
リング状部材の内直径rは、軸芯体外直径をS(mm)、塗工ヘッド内直径をL(mm)とした時、S+0.02≦r≦(L+S)÷2の範囲であることが好ましい。
【0044】
リング状部材の内直径rがS+0.02以上、(L+S)÷2以下であると、軸芯体外周面とリング状部材内周面とを非接触の状態とすることができる。これにより、塗工時に軸芯体あるいは塗工ヘッドが移動しても、軸芯体外周面とリング状部材内周面の干渉を防止でき、軸芯体の外周面に高寸法精度で弾性層材料を塗工できる。なお、弾性層材料の粘度が10〜5000Pa・sであるので、軸芯体外周面とリング状部材内周面が非接触の状態であっても、弾性層材料が漏洩することを防止することができる。
【0045】
なお、リング状部材の好ましい最大内直径((L+S)÷2)は、軸芯体外周面とリング状部材内周面とのクリアランスから導かれる。弾性層材料粘度10〜5000Pa・sの場合、軸芯体外周面とリング状部材内周面との最大クリアランスは、弾性層層厚((L−S)÷2)の0.5倍が好ましい。したがって、リング状部材の最大内直径は、軸芯体外周面とリング状部材内周面との最大クリアランス((L−S)÷2×0.5)の二倍に軸芯体外直径(S)を足した((L+S)÷2)になる。ここで、軸芯体外直径Sは、適宜決めることができるが、通常4mm〜30mmの範囲である。また、塗工ヘッド内直径Lも適宜決めることができるが、通常5mm〜40mmの範囲である。
【0046】
リング状部材の内直径rをS+0.02(mm)以上とすることにより、リング状部材および軸芯体の寸法誤差により、塗工途中で軸芯体外周面とリング状部材内周面が接触し、干渉することを優れて防止できる。その結果、塗工中、リング状部材が動いたり、塗工ヘッドの弾性体材料吐出口より進行方向前方から外れたりして、軸芯体の外周面の弾性層材料の寸法精度が悪くなることを優れて防止できる。また、リング状部材の内直径rを(L+S)÷2以下とすることにより、弾性層材料の粘度が10〜5000Pa・sであっても軸芯体外周面とリング状部材内周との隙間から弾性層材料が漏洩することを優れて防止でき、軸芯体外周面の弾性層材料の寸法精度が悪くなることを優れて防止できる。
【0047】
上述したように、リング状部材の外直径はリング状部材外周面が塗工ヘッド内周面と接触するように、一方で、リング状部材内直径rはリング状部材内周面が軸芯体と非接触になるように設計されることが好ましい。なお、リング状部材の厚み寸法は、弾性体材料吐出口の幅(スリット幅)よりも大きいことが好ましい。
【0048】
リング状部材の形状は、リング状部材の外周が塗工ヘッド内周面に接触することが好ましく、また、軸芯体の形状が円柱形や中心部を空洞化した円筒形が好ましいので、例えば図4(a)に示す中空円筒形状である。つまり2つの円環状底面の外直径および内直径が同径で、2つの円環状底面が同心で、側面が1つの曲面である立体である。また、中空円筒形状のリング状部材の変形体の一例として、2つの円環状底面の外直径が異なり、内直径が同径で、2つの円環状底面が同心で、側面が2つの曲面である立体である凸状中空円筒形状がある(図4(d))。さらには、リング状部材の陵部分に面取り加工を行っても良い。図4(e)、(f)および(g)にC面取りリング状部材を、図4(h)、(i)および(j)にR面取りリング状部材の例をそれぞれ示す。また、リング状部材の内周面から外周面に(凸状)、あるいは外周面から内周面(凹状)にテーパー加工を施してもよい。図4(k)および(l)にテーパー加工リング状部材の例をそれぞれ示す。これら面取り加工およびテーパー加工は、リング状部材の両底面、あるいは片底面に行うことができる。また、一つのリング状部材に各加工が個別に行われても良い。
【0049】
さらには、塗工終了時の弾性層材料吐出口からの弾性層材料離れ、および環状スリットの弾性層材料吐出口に残留した弾性層材料の除去をより完全に行うには、リング状部材の外周面が、二段以上の不連続面であることが好ましい。外周面が二段以上の不連続面をもつリング状部材とは、一つの中空円筒体の外周面が、周方向に一つ以上凹状に加工されている形状である。このような構成にすることで、リング状部材の外周面は、二段以上の不連続面となる。図4にその例を示す。外周面が二段の不連続面であるリング状部材を図4(b)に、外周面が三段の不連続面であるリング状部材を図4(c)に示す。リング状部材の外周面を二段以上の不連続面とすることで、塗工終了時にリング状部材の外周面が、弾性層材料吐出口を通過する回数が二回以上となるので、リング状部材による弾性層材料吐出口からの弾性層材料離れ、および環状スリットの弾性層材料吐出口に残留した弾性層材料の除去効果が大きくなる。リング状部材の不連続面の段数や幅は、使用する弾性層材料の粘度、固形分などにより適宜設定すればよい。また、これらリング状部材の各陵部分に適宜、面取り加工を行っても良い。
【0050】
リング状部材の形状および寸法は、使用する弾性層材料の物性にもよるが、弾性層材料吐出口からの弾性層材料離れ、環状スリットの弾性層材料吐出口に残留した弾性層材料の除去、塗工ヘッドの内周面の弾性層材料付着をなくすよう、適宜設定することができる。また、上記効果を得るために、リング状部材は単独で用いても良く、複数個同時に用いてもよい。
【0051】
リング状部材の材質は、弾性層材料により侵されないことが好ましく、例えば金属や合成樹脂等で構成される。また、次工程の熱処理に対して耐熱性を有していることが好ましい。弾性層材料を軸芯体外周面上に塗工し、リング状部材を環状スリットから取り外した段階では、弾性層材料は未硬化の状態である。このため、弾性層材料とリング状部材が密着しており、この状態のまま次工程の熱処理を行うに好適だからである。さらに、塗工ヘッドを傷つけない合成樹脂が好適である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0052】
次に、軸芯体の外周面に形成された未硬化の弾性層材料は、硬化され弾性層となり、弾性ローラが製造される。この際、円筒形状(ロール形状)の未硬化の弾性層材料は、粘着性を有しているため、熱処理する方法としては非接触の熱処理方法で行うことが好ましい。
【0053】
その熱処理方法としては、赤外線加熱方法、熱風加熱方法、ニクロム熱加熱方法等が挙げられる。特に、装置が簡易で、未硬化物の層を軸方向に均一に熱処理できる赤外線加熱が好ましい。この時、赤外線加熱装置を固定し、円筒形状(ロール形状)の未硬化物層を設けた軸芯体を周方向に回転させることにより、周方向に均一に熱処理を行うことができる。弾性層材料表面の熱処理温度としては、使用する材質にもよるが、硬化反応が開始する100〜250℃が好ましい。例えば、赤外線加熱を行う場合には材料の特性(熱伝導率、比熱等)に応じて赤外線加熱装置と未硬化の弾性層材料の層との距離、出力等を調整すれば良い。また、熱風加熱を行う場合には熱風の温度や向きを調節すれば良い。
【0054】
ここで、弾性層の硬化後の物性安定化、弾性層中の反応残渣および未反応低分子分を除去する等を目的として、硬化させて形成した弾性層に更に熱処理等を行う二次硬化を行わせても良い。
【0055】
軸芯体は、支持部材として機能するものであり、電極として機能する場合もある。軸芯体は、弾性ローラの軸心体として公知の材料で構成することができる。例えばアルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、クロムやニッケル等で鍍金処理を施した鉄、合成樹脂等の材質で構成される。形状は、円柱形や中心部を空洞化した円筒形が好ましい。軸芯体の外直径は適宜決めることができるが、通常4〜30mmの範囲とされる。
【0056】
本発明において弾性層材料として、室温で流動性を持つポリマーで、加熱により硬化が進行するゴムを用いることができる。具体的には、液状ジエンゴム(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等)、液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴム等が挙げられる。このようなゴムは、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。中でも、弾性層には、適度に低硬度であり良好な変形回復力を持たせることが望まれるため、弾性層材料としては液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴムを用いることが好ましい。特に加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しないなどの生産性に優れる理由から、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いることが、より好ましい。
【0057】
液状シリコーンゴムは、例えばオルガノポリシロキサン(A液)およびオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B液)を含み、さらに触媒や他の添加物を適宜含む組成物である。オルガノポリシロキサンはシリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その分子量は特に限定されないが重量平均分子量1万以上100万以下が好ましく、重量平均分子量5万以上70万以下がより好ましい。
【0058】
上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定されないが、活性水素との反応が高い等の理由から、ビニル基、アリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基がより好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするもので、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2個以上であり、硬化反応を好適に行わせるために、3個以上のポリマーが好ましい。
【0059】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの平均分子量は特に制限がなく、好ましい重量平均分子量は1000から10000程度である。硬化反応を好適に行わせるためには、比較的低分子量である重量平均分子量1000以上5000以下のポリマーが好ましい。
【0060】
液状シリコーンゴムは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの架橋触媒として、例えば、塩化白金酸六水和物を含むことができる。また、架橋触媒として、ヒドロシリル化反応において触媒作用を示す遷移金属化合物も使用できる。
【0061】
弾性層を形成する弾性層材料には、所望の性能が得られる範囲内になるように、非導電性充填材、可塑剤などの各種添加剤が適宜配合されていてもよい。非導電性充填剤としては、例えば、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、アルミノケイ酸、炭酸カルシウムなどが挙げられる。可塑剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンオイル、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール、フタル酸誘導体、アジピン酸誘導体などが挙げられる。
【0062】
現像ローラ等の導電性ローラを得るために、上記ゴム中に導電剤を適宣添加し所望の抵抗に調整することができる。導電剤として、カーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤から適宜選んで用いることができる。
【0063】
液状ウレタンゴムは、イソシアネート(硬化剤)及び高分子ポリオール(主剤)より得られる。イソシアネートの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等を挙げることができる。これらのイソシアネートは、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
高分子ポリオールの例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができる。これらの重量平均分子量は通常500以上5000以下である。より具体的には、ポリエステルポリオールとして、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキシレンアジペート、エチレンアジペート及びブチレンアジペートの共重合体等を使用することができる。また、ポリエーテルポリオールとして、ポリカプロラクトン、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等を使用することができる。これらのポリオールは、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。また必要に応じて、液状ウレタンプレポリマーには、導電剤、鎖延長剤、架橋剤および触媒等を混合することもできる。
【0065】
以上のようにして形成された弾性層の外周側に耐磨耗性やトナー帯電性、離形性の観点から、さらに表面層を設けることもできる。表面層を形成する材料としては、各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。これらの材料には必要に応じて各種添加剤が添加される。
【0066】
これらの表面層を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、ボールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、分散させることができる。得られた表層形成用の分散体は、スプレー塗工法、ディッピング法等により弾性層の表面に塗工することができる。表面層の厚みとしては、5〜50μmが好ましい。低分子量成分がしみ出してきて感光ドラムを汚染することを防止する観点から5μm以上が好ましく、ローラが硬くなり、融着が発生することを防止する観点から50μm以下が好ましい。より好ましくは10〜30μmである。
【0067】
本発明によれば、ローコストで軸芯体外周面に高粘度材料からなる円筒形状(ロール形状)の硬化物の層である弾性層が寸法精度が良く設けられた弾性ローラを得ることができる。
【0068】
本発明の弾性ローラは現像ローラとして使用することができる。現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラムに対向して、当接または圧接した状態で現像剤を担持する。そして、現像ローラは、感光ドラムに現像剤としてのトナーを付与することにより潜像を現像剤像として可視化する機能を持つ。さらに本発明の電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置は、この現像ローラを具備する。図5は、本発明の電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置を説明するための模式図である。
【0069】
本発明の電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置の一例について、図5を用いて説明する。電子写真プロセスカートリッジ35は、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラムに対向して当接または圧接した状態で現像剤を担持する現像ローラを備えるものである。また、この現像ローラが感光ドラムに現像剤としてのトナーを付与することにより潜像を現像剤像として可視化する電子写真プロセスカートリッジである。電子写真プロセスカートリッジは潜像担持体としての感光ドラム21、帯電ローラ22、現像ローラ25、現像ブレード27、現像容器34、クリーニングブレード30、廃トナー容器31を備えており、現像ローラ25として本発明の現像ローラを用いたものである。
【0070】
この電子写真プロセスカートリッジは、感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電ローラ22によって一様に帯電され、感光ドラム21に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、本発明の画像形成装置に対し着脱可能な本発明の電子写真プロセスカートリッジに保持される現像装置24によって現像剤たるトナー28を付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0071】
現像装置24は、現像剤であるトナー28を収容した現像容器34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム21と対向設置された現像ローラ25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。現像剤であるトナー28は、現像容器34内を攪拌ローラ(不図示)により循環されるようになっている。現像剤供給ローラ26は、芯金が導電体で、その外周を絶縁体あるいは中抵抗の物質が被覆した構成をしている。供給ローラ26および現像ローラ25には、それぞれ、バイアス電圧が印加されており、トナー28は、電気力で供給ローラ26に担持、搬送され、ついで、現像剤供給ローラ26と現像ローラ25との摺動摩擦により帯電される。トナー28は、電位ポテンシャルを持たせることにより、供給ローラ26から現像ローラ25へ搬送される。現像ローラ25により保持されたトナー28は、現像ローラ25と現像ブレード27との摺動摩擦により、帯電状態がより顕著になる。そして、現像ローラ25上の帯電トナーは像担持体である感光ドラム21上の電位が保持された部分に移り、感光体の電位がアースされた部分にはトナーが移らない。その結果、画像が形成されることになる。なお、現像ローラ25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置24においては、現像剤供給ローラ26が、現像容器34内で、現像ブレード27と現像ローラ25との当接部に対し現像ローラ25回転方向(図中矢印B方向)上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。
【0072】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム21上のトナー像は、転写ローラ29によって記録媒体である紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、加圧ローラ32および転写ローラ36により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。一方、転写されずに感光ドラム21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21は上述の作用を繰り返し行う。
【0073】
定着ローラ36あるいは加圧ローラ32は、互いに圧接し、回転自在に支持された構成になっている。両ローラの対向ニップ部で紙33の搬送を行うと同時に熱と圧力によってトナーを紙33に定着させる。定着ローラ36の内部には、図示しないヒータが内蔵されており、定着ローラ36の表面は所定の高温度に維持されている。定着ローラ36の弾性層としては層厚2〜3mm程度のものを用いるのがよい。弾性層は厚いほど変形しやすく大きなニップ幅を取ることができるが、弾性層の層厚が厚くなりすぎると熱源が軸芯体内部にある構成では、表面と軸芯体界面との温度差が大きくなり、ゴムの劣化が起こりやすくなるからである。加圧ローラ32は、図示しない駆動機構と連動されている定着ローラ36との間にニップを形成しつつ回転することにより、従動回転される。加圧ローラ32は定着ローラ36の回転軸方向にバネなどを用いた図示していない機構によって加圧されている。加圧ローラ32は、弾性層によってカラー画像における単色から4色重ねにわたるトナーの厚み変動(数〜数十μm)に追従できる。また、定着ローラ36に加圧ローラ32との間にニップ幅を確保できるようになっている。
【実施例】
【0074】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。まず実施例において行った各種評価および測定方法について説明する。
【0075】
(画像評価)
像担持体である感光ドラムを一様に帯電させ、感光ドラムへの選択的な露光によって潜像を形成し、潜像を現像剤であるトナーで顕在化し、トナー像を記録媒体に転写し、転写後の感光ドラム上の残トナーをクリーニングする各手段を一体的にカートリッジ化した電子写真プロセスカートリッジ(公称寿命6000枚、A4サイズ、5%印字率、hp社製、商品名:プリントカートリッジ黒・プリントカートリッジシアン・プリントカートリッジマゼンタ・プリントカートリッジイエロー)に、各例において作成したローラを各色それぞれについて現像ローラとして組み込んだ。
【0076】
次にこの電子写真プロセスカートリッジを電子写真方式の画像形成装置(商品名:Color LaserJet 3700、hp社製)に組み込んだ。そして、この画像形成装置を用いて、画像(ベタ画像、ハーフトーン画像)を出力し、濃度ムラ(ローラピッチ)を次のように評価した。
A:目視にて全画像において良好な場合。
B:ベタ、ハーフトーンにて濃度ムラが若干、確認されるが実用上問題ない場合。
C:全画像において濃度ムラが確認された場合。
【0077】
(粘度測定)
粘度測定にはHaake社製RheoStress600(商品名)を用いた。
【0078】
弾性層材料(未硬化の状態)を約1gを採取し試料台の上にのせ、コーンプレートを徐々に近づけて、試料台から約50μmの位置で測定ギャップを設定した(コーンプレートは直径35mm、傾斜角度1°を用いた)。そのとき、まわりに押し出された弾性層材料を奇麗に除去し測定に影響の出ないようにした。試料温度が25℃になるようにプレート台の温度は設定され、試料をセットしてから10分間放置後、測定を開始した。試料にかけるせん断速度を0.1s-1からスタートし10s-1までの範囲を、0.2s-1づつ変化させ、せん断速度1s-1のせん断応力をせん断速1s-1で割った値を粘度とした。
【0079】
(弾性ローラの弾性層層厚に対する外直径差の割合の測定と評価)
弾性ローラの弾性層層厚に対する外直径差の割合は、軸芯体の中心軸を回転軸として弾性ローラを回転させ、回転軸と垂直に配置した非接触レーザー測長器(キーエンス製、商品名:LS−5000)で外直径差および弾性層層厚を測定し求めた。外直径差は、最大外直径と最小外直径の差、弾性層層厚は、基準から弾性ローラ外周面までの距離から、予め測定した基準から芯金外周面までの距離を引いた値である。ここでいう最大外直径および最小外直径はそれぞれ、弾性ローラを1°ずつ回転させて測定した180点の外直径のうちの最大値および最小値である。さらに弾性層層厚は、弾性ローラを1°ずつ回転させて測定した360点の平均値である。弾性層の軸方向に1cmピッチで弾性層層厚に対する外直径差の割合をそれぞれ求め、その値の中で最大の値を弾性層層厚に対する外直径差の割合の値とする。次のように評価した。
A:弾性層層厚に対する外直径差の割合が3%以下であるもの。
B:弾性層層厚に対する外直径差の割合が3%よりも大きいが、塗工表面にスジや凹凸が観察されないもの。
C:弾性層層厚に対する外直径差の割合が3%よりも大きく、塗工表面にスジや凹凸があるもの。
【0080】
〔実施例1〕
図2に示した形態の塗工ヘッドを有する、図1に示した形態の塗工装置を用いた。塗工ヘッドの内直径Lは12.60mmであり、環状スリットの幅(弾性層材料吐出口の幅に等しい)は1.0mmとした。塗工ヘッドの弾性層材料吐出口より進行方向前方の部分、すなわち第一環状部材201に、図4(a)に示す中空円筒形状のリング状部材301を装着した。このリング状部材301の内直径rは6.20mmであり、外直径は12.60mmであり、厚みは2mmである。このリング状部材301の材質は、ポリテトラフルオロエチレンである。
【0081】
付加反応架橋型液状シリコーンゴム(商品名:DY35−1265、東レダウコーニング社製)のA液およびB液の各液100質量部に、それぞれカーボンブラック(MA11、三菱化学社製)8質量部を加え、プラネタリーミキサーで、30分間混合脱泡した。その後、カーボンブラックを配合したA液およびB液を、それぞれ塗工装置付随の原料タンクにセットし、圧送ポンプを使用して、スタテックミキサーに送り出し、A液およびB液を質量基準で1:1で混合した。このシリコーンゴム混合液を弾性層材料とした。その粘度は545Pa・sであった。
【0082】
軸芯体としては外直径(S)6mmの丸棒状鉄製軸芯体を用いた。
【0083】
塗工装置の軸芯体保持軸(軸芯体上保持軸10および軸芯体下保持軸9)で軸芯体をクランプし、軸芯体保持部材を下から上に垂直に上昇(10mm/sec)させ軸芯体を移動させた。これと同時に、シリコーンゴム混合液を塗工ヘッドの弾性層材料吐出口から840mm3/secで吐出し、軸芯体の外周面に未硬化の弾性層材料を円筒形状(ロール形状)に形成した。この後、リング状部材と軸芯体下保持部材を干渉させ、リング状部材を塗工ヘッドの環状スリットより進行方向後方(第二環状部材)から、取り外した。
【0084】
次に、この未硬化物の層に赤外線加熱を施した。赤外線加熱ランプ(ハイベック製、商品名:HYL25)を熱処理温度(被加熱体の表面温度。以下熱処理温度とは、被加熱体の表面温度を指す)130℃(出力780W)とし、ランプと未硬化物の層表面との距離が60mmとなるように配置した。そして、未硬化物の層を設けた軸芯体を周方向に60rpmで回転させながら5分間加熱し未硬化の弾性層材料を硬化し弾性層とした。
【0085】
その後、シリコーンゴム弾性層の硬化後の物性を安定させ、シリコーンゴム弾性層中の反応残渣および未反応低分子分を除去する等を目的として、電気炉で200℃、4時間の二次硬化を行った。
【0086】
このようにして、軸芯体の外周上に弾性層を有する弾性ローラを製造した。この弾性ローラの外直径差、弾性層層厚および弾性層層厚に対する外直径差の割合の評価を表2示す。
【0087】
その後、この弾性ローラに表面層を設けた。表面層の材料処方を示す。ポリウレタンポリオールプレポリマー100質量部(商品名:タケラックTE5060、三井武田ケミカル社製)、イソシアネート77質量部(商品名:コロネート2521、日本ポリウレタン株式会社製)、カーボンブラック24質量部(商品名:MA100、三菱化学社製)にMEK(メチルエチルケトン)を加えサンドミルで1時間分散した。分散後さらにMEKを加え固形分20質量%〜30質量%の範囲で(膜厚が20μmとなるように)調整したものを表面層の原料液とした。この原料液中に、上記の弾性ローラを浸漬して、表面層を塗工した後、引上げて自然乾燥させた。次いで、140℃にて60分間加熱処理することで、表面層の原料の硬化を行い、表面層を設けた弾性ローラを得た。
【0088】
表面層を設けた弾性ローラを現像ローラ1として、電子写真プロセスカートリッジに組み込んだ。画像出力した結果を表2に示す。
【0089】
なお、弾性層材料の粘度等を表1に示してある。
【0090】
〔実施例2〕
付加反応架橋型液状シリコーンゴムのA液およびB液として次のものを用いた。
【0091】
シリコーンベースポリマー(重量平均分子量Mw=100000、東レダウコーニング社製)100質量部、カーボンブラック(商品名:MA77、三菱化学社製)3質量部、をプラネタリーミキサーで、30分間混合脱泡し、シリコーンゴムベース材料を得た。このベース材料100質量部に対して、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金含有量3質量%)0.02質量部を加え、混合したものをA液とした。また、上記シリコーンベース材料100質量部に対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(粘度10mPa・s、SiH含有量1質量%、東レダウコーニング社製)1.5質量部を加え、混合したものをB液とした。
【0092】
弾性層形成材料であるシリコーンゴム混合液粘度は、12Pa・sであった。
【0093】
ポリテトラフルオロエチレン製で、内直径6.20mm、外直径12.60mm、厚み2mmの外周面から内周面に向かって凹状テーパー加工(テーパー角度15°)したリング状部材(図4(l))を用いた。
【0094】
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0095】
〔実施例3〕
付加反応架橋型液状シリコーンゴム(商品名:DY35−1265、東レダウコーニング社製)のA液およびB液の各液100質量部に、それぞれカーボンブラック(商品名:MA11、三菱化学社製)16質量部を加えた。
【0096】
弾性層形成用材料であるシリコーンゴム混合液粘度は、4985Pa・sであった。
【0097】
ポリテトラフルオロエチレン製で、内直径6.20mm、外直径12.60mm、厚み2mmの内周面から外周面に向かって凸状テーパー加工(テーパー角度15°)した円筒形状のリング状部材(図4(k))を用いた。
【0098】
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0099】
〔実施例4〕
リング状部材として、ポリアセタール製で、内直径6.02mm、外直径12.60mm、厚み2mmの円筒形状(図4(a))のものを使用した。
【0100】
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0101】
〔実施例5〕
リング状部材として、ポリアセタール製で、内直径9.30mm、外直径12.60mm、厚み2mmの円筒形状(図4(a))のものを使用した。
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0102】
〔実施例6〕
リング状部材として、ポリアセタール製で、内直径6.01mm、外直径12.60mm、厚み2mmの円筒形状(図4(a))のものを使用した。
【0103】
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
〔実施例7〕
リング状部材として、ポリアセタール製で、内直径9.40mm、外直径12.60mm、厚み2mmの円筒形状(図4(a))のものを使用した。
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0105】
〔実施例8〕
リング状部材として、ポリカーボネイト製で、内直径6.20mm、外直径12.60mm、厚み4mmで、厚み2mm位置の周方向の外周面に、深さ1.5mm、幅2mmの凹状加工した、外周面が二段の不連続面である円筒形状(図4(b))のものを使用した。
【0106】
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0107】
〔実施例9〕
一液ウレタン(日本ポリウレタン工業製、商品名:ニッポラン4653)100質量部、カーボンブラック(商品名:MA11、三菱化学社製)15質量部を十分に混合し、ウレタンゴムベース材料を得た。これを塗工装置付随の原料タンクにセットした。これを圧送ポンプを使用して、スタテックミキサーに送り出し、撹拌し、として用いた。弾性層材料の粘度は255Pa・sであった。
【0108】
リング状部材として、ポリカーボネイト製で、内直径6.20mm、外直径12.60mm、厚み2mmの円筒形状(図4(a))のものを使用した。
【0109】
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0110】
〔実施例10〕
塗工ヘッド(の最小径部)の内直径Lを5.00mm、軸芯体の外直径Sを4.00mmとした。
【0111】
リング状部材として、ポリテトラフルオロエチレン製で、内直径4.20mm、外直径5.00mm、厚み2mmの円筒形状(図4(a))のものを使用し、塗工ヘッドの弾性層材料吐出口から127mm3/secで弾性層材料を吐出した。
【0112】
作成した弾性ローラを帯電ローラとして、電子写真プロセスカートリッジに組み込み画像評価を行った(現像ローラは電子写真プロセスカートリッジにもともと付属していたものを使用した)。
【0113】
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0114】
〔実施例11〕
塗工ヘッド(の最小径部)の内直径Lを40.00mm、軸芯体外直径Sを30.00mmとした。
【0115】
リング状部材として、ポリテトラフルオロエチレン製で、内直径30.20mm、外直径40.00mm、厚み2mmの円筒形状(図4(a))のものを使用し、塗工ヘッドの弾性層材料吐出口から1273mm3/secで弾性層材料を吐出した、
作成した弾性ローラを帯電ローラとして、電子写真プロセスカートリッジに組み込み画像評価を行った(現像ローラは電子写真プロセスカートリッジにもともと付属していたものを使用した)。
【0116】
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0117】
〔比較例1〕
リング状部材を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0118】
〔比較例2〕
付加反応架橋型液状シリコーンゴムのA液およびB液として次のものを用いた。
【0119】
シリコーンベースポリマー(重量平均分子量Mw=100000、東レダウコーニング社製)100質量部、カーボンブラック(商品名:MA77、三菱化学社製)1質量部、をプラネタリーミキサーで、30分間混合脱泡し、シリコーンゴムベース材料を得た。このベース材料100質量部に対して、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金含有量3質量%)0.02質量部を加え、混合したものをA液とした。また、上記シリコーンベース材料100質量部に対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(粘度10mPa・s、SiH含有量1質量%、東レダウコーニング社製)1.5質量部を加え、混合したものをB液とした。
【0120】
弾性層形成材料であるシリコーンゴム混合液粘度は、8Pa・sであった。
【0121】
上記以外は、実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
〔比較例3〕
付加反応架橋型液状シリコーンゴム(商品名:DY35−1265、東レダウコーニング社製)のA液およびB液の各液100質量部に、それぞれカーボンブラック(商品名:MA11、三菱化学社製)20質量部を加えた。
【0123】
弾性層形成用材料であるシリコーンゴム混合液粘度は、6520Pa・sであった。
【0124】
上記以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
これらの結果より、本発明の製造方法により弾性ローラを製造することで、寸法精度を向上させたローコストな弾性ローラが製造できることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明により得られる弾性ローラは、例えば電子写真プロセスに用いられる現像ローラとして利用することができる。本発明の電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置はプリンターや複写機などに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明に用いることのできる塗工装置の例を示す模式図である。
【図2】本発明に用いることのできる塗工ヘッドの例を示す模式図である。
【図3】塗工ヘッドによる塗工方法を説明するための模式図であり、(a)は塗工開始前、(b)は塗工終了時の塗工ヘッドの状態を示す。
【図4】(a)〜(l)はぞれぞれ本発明に用いることのできるリング状部材の例を示す模式的断面図である。
【図5】本発明の画像形成装置の例を説明するための模式的断面図である。
【符号の説明】
【0130】
1 架台
2 コラム
3 ボールネジ
4 LMガイド
5 サーボモータ
6 プーリ
71 上ブラケット
72 下ブラケット
8 塗工ヘッド
9 軸芯体下保持軸
10 軸芯体上保持軸
11 供給口
12 配管
13 材料供給弁
14 リニアガイド
21 感光ドラム(A:回転方向)
22 帯電ローラ
23 レーザー光
24 現像装置
25 現像ローラ(B:回転方向)
26 現像剤供給ローラ
27 現像ブレード
28 現像剤(トナー)
29 転写ローラ
30 クリーニングブレード
31 廃トナー容器
32 加圧ローラ
33 紙
34 現像容器
35 プロセスカートリッジ
36 定着ローラ
101 弾性層
102 軸芯体
201 第一環状部材
202 第二環状部材
203 環状スリット
204 弾性層材料吐出口
205 環状部材保持部材
206 液分配室
207 絞り段差部
301 円筒形状のリング状部材の断面図の一例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に開口した環状スリットを有する塗工ヘッドを用いて、該塗工ヘッドを軸芯体に対し相対的に移動させながら該軸芯体外周面上に該環状スリットから弾性層材料を吐出して塗工し、塗工された弾性層材料を硬化させる弾性ローラの製造方法において、
該塗工ヘッドの該環状スリットの開口より該移動方向前方の位置に、脱着可能なリング状部材を装着する装着工程;
該塗工ヘッドで粘度10Pa・s以上5000Pa・s以下の弾性層材料を該軸芯体外周面上に塗工する塗工工程;
該リング状部材を、該塗工ヘッドの該環状スリットより該移動方向後方から、取り外す取り外し工程;
該塗工された弾性層材料を硬化し弾性層とする硬化工程と
をこの順に有する弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記リング状部材の全外周面が、該塗工ヘッド内周面に接触可能である請求項1記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記取り外し工程において、前記リング状部材が、該環状スリットの開口を通過する請求項1または2記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記リング状部材の外周面が二段以上の不連続面で構成されている請求項1〜3の何れか一項記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記リング状部材の内直径r(mm)が、軸芯体外直径をS(mm)、塗工ヘッド内直径をL(mm)としたとき、S+0.02≦r≦(L+S)÷2の範囲にある請求項1〜4のいずれか一項記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項6】
前記塗工ヘッドを軸芯体に対して相対的に移動させる方向が重力方向下向きである請求項1〜5の何れか一項記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項7】
前記弾性層がシリコーンゴムまたはウレタンゴムを含む請求項1〜6の何れか一項記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項記載の弾性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする弾性ローラ。
【請求項9】
現像ローラである請求項8記載の弾性ローラ。
【請求項10】
現像ローラが装着されてなり、該現像ローラの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像ローラを画像形成体に接触させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、
該現像ローラが、請求項9記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項11】
現像ローラが装着されてなり、該現像ローラの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像ローラを画像形成体に接触させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、
該現像ローラが、請求項9記載の弾性ローラであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−130589(P2007−130589A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327391(P2005−327391)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】