説明

弾性境界波デバイス

【課題】本発明は、弾性境界波デバイスを小型化することを目的とする。
【解決手段】本発明は、圧電基板4と、圧電基板4上に設けられた第1の絶縁層7と、第1の絶縁層7上に設けられた第2の絶縁層8と、圧電基板4と第1の絶縁層7の境界面に設けられた複数の櫛形電極5、6を備えた弾性境界波デバイスにおいて、第1の絶縁層7と第2の絶縁層8との間に複数の櫛形電極5、6の内で所定の櫛形電極6と対峙する部分に対向電極11を設けたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等に用いられる弾性境界波デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の弾性境界波デバイスは、図6に示すごとく、圧電基板1と絶縁層2の積層構造体の境界面に櫛形電極3を配置した構造が知られている。
【0003】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】国際公開第2004/095699号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような弾性境界波デバイスにおいて広帯域で且つ急峻なフィルタ特性を得ようとした場合、その回路定数に応じて圧電基板1の電気機械結合係数を異ならせることが有用となるが、これを実現しようとすると電気機械結合係数が異なる複数の圧電基板1を組合せて構成しなければならず、結果として弾性境界波デバイスが大型化してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題を解決し、弾性境界波デバイスを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために本発明は、圧電基板と、この圧電基板上に設けられた第1の絶縁層と、この第1の絶縁層上に設けられた第2の絶縁層と、前記圧電基板と前記第1の絶縁層の境界面に設けられた複数の櫛形電極を備えた弾性境界波デバイスにおいて、第1の絶縁層と第2の絶縁層との間に複数の櫛形電極の内で所定の櫛形電極と対峙する部分に対向電極を設けた。
【発明の効果】
【0007】
この構成により、弾性境界波デバイスを小型化することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態における弾性境界波デバイスについて図面を用いて説明する。
【0009】
図1は弾性境界波デバイスの断面を模式的に示したものであり、その基本構成は圧電基板4の主面に弾性境界波を励振させる櫛形電極5、6を設け、この櫛形電極5、6を含む圧電基板4の主面上に第1の絶縁層7と第2の絶縁層8を設けた構成であり、櫛形電極5、6による電気回路構成は図2に示すように、弾性境界波の伝播方向に並設された一対の反射器9の間に並設された3つの櫛形電極5からなる縦モード結合フィルタに、弾性境界波の伝播方向に並設された一対の反射器10の間に配置された1つの櫛形電極6からなる1ポート型の共振子を2段、従属接続した構成としている。
【0010】
また、圧電基板4としてはニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどの単結晶圧電体を所定のカット角で切り出した圧電基板4を用い、櫛形電極5、6は金やアルミニウムなどの導体材料により形成され、第1の絶縁層7は圧電基板4より音速が遅い絶縁材料である酸化ケイ素で形成し、第2の絶縁層8は第1の絶縁層7より音速が速い絶縁材料である窒化ケイ素で形成している。
【0011】
なお、第1の絶縁層7の厚みは弾性境界波を圧電基板4と第1の絶縁層7の境界面に集中させるため弾性境界波の波長の半分未満に設定している。
【0012】
そして、この弾性境界波デバイスにおいては、共振子を形成する櫛形電極6が形成された部分に対峙する第1の絶縁層7と第2の絶縁層8との間に金やアルミニウムなどの導体材料からなる対向電極11を部分的に設けた構成としており、この構成により弾性境界波デバイスのフィルタ特性を広帯域で急峻なものとするとともに、製品の小型化がなされたものとなっている。
【0013】
すなわち、共振子を等価回路で表すと図3に示すようにインダクタ12とコンデンサ13と抵抗14を直列接続した直列体にコンデンサ15を並列接続した構成となり、共振子と対峙する部分に対向電極11を設けたことにより共振子の等価回路にさらにコンデンサ16が並列接続されるので、共振子の電気機械結合が実効的に小さくなり、共振子における共振周波数と反共振周波数が近づくので共振子としては急進な減衰特性を得ることが出来るのである。
【0014】
つまり、この弾性境界波デバイスのように縦モード結合フィルタと共振子を組み合わせた回路構成であれば、図4に示すように櫛形電極5及び反射器9で構成された縦モード結合フィルタで所定の通過帯を選択的に通過させるフィルタ特性17を形成し、櫛形電極6及び反射器10で構成された2つの共振子でそれぞれ所定の周波数帯域を減衰させるノッチ特性18、19を形成し、これらを組み合わせることにより広い通過帯域と急峻な減衰特性20を得る構成としている。
【0015】
そして、縦モード結合フィルタにおいて通過帯域を広く取るためには、櫛形電極5に対する圧電基板4の電気機械結合係数を大きくすることが望ましく、共振子において減衰特性を急峻なものとするためには、櫛形電極6に対する圧電基板4の電気機械結合特性は小さくすることが望ましいものである。
【0016】
そして、これらの要求を満たす解として、図6に示すような従来の構成においては電気機械結合係数の異なる圧電基板1を組み合わせて実現していたのであるが、この一実施形態の弾性境界波デバイスにおいては、上述したように一つの圧電基板4上において特定の櫛形電極6に対して対向電極11を設け並列コンデンサ16を付加することにより、対向電極11と対峙する櫛形電極6領域の電気機械結合係数を部分的に変えることができるので圧電基板4を組み合わせる必要がなくなり、結果として弾性境界波デバイスを小型化することが出来るのである。
【0017】
また、共振子上に対向電極11を設け圧電基板4の電気機械結合係数を調節する場合、つまり共振子に付加する並列コンデンサ16の容量を調節する場合、対向電極11が単一の島状電極であれば、対向電極11と共振子の対向面積が一定であるため、圧電基板4と対向電極11との間に位置する第1の絶縁層7の厚みを変えなければならず、製品形状へ影響を及ぼしてしまうのであるが、図5に示すように伝播方向に延出する複数の線状電極11aを並設させて対向電極11を形成しその電極幅と電極間隔との比を調節することで、共振子に付加される並列コンデンサ16の容量が調節できるので、第1の絶縁層7の厚みを変えずに弾性境界波デバイスを小型化することが出来るのである。
【0018】
なお、対向電極11を複数の線状電極11aで形成する場合、線状電極11aの延出方向が弾性境界波の伝播方向と交差すれば櫛形電極6における弾性表面波の伝播損失を与えてしまうため、線状電極11aの延出方向は弾性境界波の伝播方向と実質的に一致させておくことが望ましい。
【0019】
また、対向電極11を複数の線状電極11aから形成することで、線状電極11aが共振子と対向して電気機械結合係数が小さくなる部分と、線状電極11aが共振子と対向せず電気機械結合係数が大きいままの部分が、線状電極11aの並設方向に周期的に配置され、弾性境界波デバイスの周波数特性の劣化原因となるため、この電気機械結合係数の異なる線状電極ピッチ21を弾性境界波の電極指ピッチ22(弾性境界波の波長の1/2)の周期より小さくすることで、異なる電気機械結合係数の分布に伴う周波数特性の劣化を抑制することが出来るのである。
【0020】
なお、この一実施形態においては圧電基板4に設けた2つの共振子に対して、対向電極を設けて圧電基板4とは異なる電気機械結合係数を部分的に設定すると説明したが、さらにこの2つの共振子についても電極幅と電極間隔との比を異ならせることで、1つの圧電基板でより多くの電気機械結合係数を設定することが出来るので、弾性境界波デバイスの周波数特性をより向上させることが出来るのである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、弾性境界波デバイスを小型化することが出来るという効果を有し、特に小型の電子機器に対応する弾性境界波デバイスにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の弾性境界波デバイスを模式的に示した断面図
【図2】同弾性境界波デバイスの電極パターン図
【図3】同弾性境界波デバイスを形成する共振子の等価回路図
【図4】同弾性境界波デバイスの周波数特性を示す模式図
【図5】同弾性境界波デバイスに設けた対向電極の別形態を示す電極パターン図
【図6】従来の弾性境界波デバイスを模式的に示した断面図
【符号の説明】
【0023】
4 圧電基板
5、6 櫛形電極
7 第1の絶縁層
8 第2の絶縁層
11 対向電極
11a 線状電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、この圧電基板上に設けられた第1の絶縁層と、この第1の絶縁層上に設けられた第2の絶縁層と、前記圧電基板と前記第1の絶縁層の境界面に設けられた複数の櫛形電極を備え、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との間に前記複数の櫛形電極の内で所定の櫛形電極と対峙する部分に対向電極を設けたことを特徴とする弾性境界波デバイス。
【請求項2】
弾性境界波の伝播方向に延出した複数の線状電極を並設により対向電極を形成したことを特徴とする請求項1に記載の弾性境界波デバイス。
【請求項3】
線状電極のピッチを弾性境界波の波長の半分より小さくしたことを特徴とする請求項2に記載の弾性境界波デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−218761(P2009−218761A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58941(P2008−58941)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】