説明

弾性波デバイスおよびその製造方法

【課題】弾性波素子上に気密性に優れた空洞部を有し、かつ外部電極の構造が単純で製造が容易な弾性波デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明は、圧電基板10に設けられた弾性表面波素子12と、圧電基板10上に設けられ、弾性表面波素子12に電気的に接続する複数の電極部14と、弾性表面波素子12上に空洞部16を有し空洞部16の側面および上面を覆うように圧電基板10上に設けられた金属キャップ18と、金属キャップ18を覆うように圧電基板10上に設けられた樹脂封止部22と、金属キャップ18の外側において樹脂封止部22を貫通して複数の電極部14それぞれの上面に設けられた、金属キャップ18と同じ金属で単一の金属からなる金属ポスト24と、を具備する弾性波デバイスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスおよびその製造方法に関し、特に弾性波素子の上方に空洞部を有する弾性波デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などで用いられる弾性波デバイスの小型化の要求が大きくなっている。弾性波デバイスに用いられる弾性波素子には、圧電基板上に櫛型電極(IDT:Interdigital Transducer)や反射器を形成した弾性表面波素子(SAW:Surface Acoustic Wave)、圧電基板を金属電極で挟んだ圧電薄膜共振器素子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)などがある。
【0003】
圧電基板の弾性波を利用する弾性波デバイスでは、弾性波素子の特性を維持するため、弾性波素子の機能部分(振動部分)上に空洞部を形成する必要があり、これが弾性波デバイスの小型化を妨げていた。弾性波素子の機能部分とは、弾性表面波素子では櫛型電極であり、圧電薄膜共振器素子では圧電薄膜を挟む上下金属電極の重なる領域である。
【0004】
弾性波デバイスの小型化を実現するため、基板の表面に直接樹脂により空洞部を形成するウエハレベルパッケージ素子の開発が進められている。また、空洞部の上方に位置する部分の樹脂の中に補強層を設けることで、圧力で変形しない中空構造を有し、熱応力などに起因したクラックなどが樹脂に発生することを抑制可能な弾性波デバイスが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−227748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された弾性波デバイスは、空洞部の少なくとも側面は樹脂により封止されているため気密性が劣る。このため、弾性波デバイスの信頼性や品質などが低下する恐れがある。また、外部との電気的な接続に用いられる外部電極の金属膜構成が複雑であるため、製造工程が複雑になり、製造工数が増えてしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、弾性波素子上に気密性に優れた空洞部を有し、かつ外部電極の構造が単純で製造が容易な弾性波デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板に設けられた弾性波素子と、前記基板上に設けられ、前記弾性波素子に電気的に接続する複数の電極部と、前記弾性波素子上に空洞部を有し前記空洞部の側面および上面を覆うように前記基板上に設けられた金属キャップと、前記金属キャップを覆うように前記基板上に設けられた樹脂封止部と、前記金属キャップの外側において前記樹脂封止部を貫通して前記複数の電極部それぞれの上面に設けられた、前記金属キャップと同じ金属で単一の金属からなる複数の金属ポストと、を具備することを特徴とする弾性波デバイスである。本発明によれば、弾性波素子上に気密性に優れた空洞部を有し、かつ外部電極として機能する金属ポストの構造が単純で製造が容易な弾性波デバイスを得ることができる。
【0009】
上記構成において、前記基板から前記金属ポスト上面までの高さは、前記基板から前記金属キャップ上面までの高さより高い構成とすることができる。この構成によれば、樹脂封止部を貫通して上面が露出する金属ポストが容易に得られる。
【0010】
上記構成において、前記金属キャップと前記複数の金属ポストのうちのグランドに接続される金属ポストとは、前記金属キャップおよび前記金属ポストと同じ金属からなる接続部により電気的に接続されている構成とすることができる。この構成によれば、金属キャップを接地させることができ、通過特性に生じるノイズを低減できる。
【0011】
上記構成において、前記弾性波素子と前記複数の電極部のうちの少なくとも1つの電極部とは前記基板上に設けられた信号配線パターンにより電気的に接続され、前記金属キャップと前記信号配線パターンとは、前記金属キャップと前記信号配線パターンとの間に設けられた絶縁体により電気的に分離されている構成とすることができる。この構成によれば、金属ポストから入力された電気信号をノイズの影響を低減した状態で弾性波素子に伝搬することができる。
【0012】
上記構成において、前記金属キャップおよび前記金属ポストは、前記樹脂封止部により前記基板上に固定されている構成とすることができる。この構成によれば、接着剤を用いなくて済むため、コストを低減できる。
【0013】
本発明は、基板に、複数の弾性波素子と前記複数の弾性波素子それぞれに電気的に接続する複数の電極部とを形成する工程と、前記複数の弾性波素子それぞれの上に金属キャップにより空洞部が形成されるよう、前記金属キャップが複数接続された金属キャップシートを前記基板上に搭載する工程と、前記複数の電極部それぞれの上面に、前記金属キャップと同じ金属で単一の金属からなる金属ポストが形成されるよう、前記金属ポストが複数接続された金属ポストシートを前記基板上に搭載する工程と、前記複数の金属キャップを覆い、かつ前記複数の金属ポストの上面を露出する樹脂封止部を前記基板上に形成する工程と、前記複数の弾性波素子をそれぞれ個片化するよう、前記基板を分離する工程と、を有することを特徴とする弾性波デバイスの製造方法である。本発明によれば、弾性波素子上に気密性に優れた空洞部を有し、かつ外部電極として機能する金属ポストの構造が単純で製造が容易な弾性波デバイスを得ることができる。
【0014】
上記構成において、前記金属キャップシートを搭載する工程と前記金属ポストシートを搭載する工程とは、前記金属キャップシートと前記金属ポストシートとが接続された金属シートを前記基板上に搭載することにより同時に実行される構成とすることができる。この構成によれば、金属キャップと金属ポストとを同一工程で同時に形成できるため、製造工数の削減により製造コストを低減できる。
【0015】
上記構成において、前記金属シートは、前記金属キャップとグランドに接続されるべき前記金属ポストとが、前記金属キャップおよび前記金属ポストと同じ金属からなる接続部により接続されることで、前記金属キャップシートと前記金属ポストシートとが接続されている構成とすることができる。この構成によれば、金属キャップを接地させることができ、通過特性に生じるノイズを低減できる。
【0016】
上記構成において、前記基板を分離する工程は、隣接する前記金属キャップ同士を接続する金属体および隣接する前記金属ポスト同士を接続する金属体を切断して、前記隣接する金属キャップ同士および前記隣接する金属ポスト同士を電気的に分離する工程を含む構成とすることができる。この構成によれば、個片化した弾性表面波素子間における電気的分離を、製造コストの増加を伴わずに、容易に行うことができる。
【0017】
上記構成において、前記樹脂封止部を形成する工程は、前記金属キャップシートおよび前記金属ポストシートを覆うように前記樹脂封止部を形成した後、前記樹脂封止部を研磨することにより、前記複数の金属キャップを覆い、かつ前記複数の金属ポストの上面を露出する前記樹脂封止部を形成する工程であり、露出した前記複数の金属ポストの上面にメッキ部を形成する工程をさらに有する構成とすることができる。この構成によれば、樹脂封止部を貫通する金属ポストを容易に形成できると共に、外部との接続不良を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弾性波素子上に気密性に優れた空洞部を有し、かつ外部電極として機能する金属ポストの構造が単純で製造が容易な弾性波デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は実施例1に係る弾性波デバイスの例を示す上面模式図であり、図1(b)は図1(a)のA−A間の断面模式図である。
【図2】図2(a)から図2(c)は実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法の例を説明する断面模式図(その1)である。
【図3】図3(a)および図3(b)は実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法の例を説明する断面模式図(その2)である。
【図4】図4(a)は金属シートの例を説明するための図であり、図4(b)は図4(a)の一部を拡大した図である。
【図5】図5は実施例2に係る弾性波デバイスの例を示す上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例として、弾性表面波素子を用いた弾性波デバイスの例を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1(a)は実施例1に係る弾性波デバイス100の上面模式図であり、図1(b)は図1(a)のA−A間の断面模式図である。なお、図1(a)においては、樹脂封止部22を一部透視して図示していると共に、圧電基板10上に形成された配線パターンなどについては図示を省略している。
【0022】
図1(a)および図1(b)のように、圧電基板10の上面に、弾性表面波素子12と、弾性表面波素子12に電気的に接続する複数の電極部14と、弾性表面波素子12の周りであって、後述する金属キャップ18が搭載される箇所に金属部17が設けられている。圧電基板10は、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、水晶などの圧電材料を用いることができる。弾性表面波素子12を構成する櫛型電極や反射器は、例えばアルミニウムを用いて形成することができる。電極部14および金属部17は、例えば金とチタンの積層体を用いることができる。
【0023】
弾性表面波素子12の上方に空洞部16が形成されるよう、圧電基板10上面に金属部17を介して金属キャップ18が設けられている。金属キャップ18は、後述するように樹脂封止部22が金属キャップ18を覆うように圧電基板10上に設けられることで、圧電基板10上に固定されている。つまり、金属キャップ18と金属部17との間には接合のための接着剤は設けられていない。金属キャップ18は、キャビティ形状をしていて、側面部20の端面が圧電基板10側に位置することで、弾性表面波素子12の上方に空洞部16が形成されている。つまり、弾性表面波素子12の上方に形成された空洞部16の側面および上面は金属キャップ18により覆われている。金属キャップ18には、例えばニッケル、ステンレス、コバールのいずれかを用いることができる。
【0024】
金属キャップ18を覆うように、圧電基板10上に樹脂封止部22が設けられている。つまり、樹脂封止部22は、金属キャップ18の側面および上面を覆っている。樹脂封止部22は、例えば熱硬化型のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0025】
金属キャップ18の外側において、電極部14の上面に金属ポスト24が設けられている。即ち、金属ポスト24は、金属キャップ18の側面部20に対して空洞部16と反対側に設けられている。金属ポスト24と電極部14との間には接着剤は設けられてなく、金属ポスト24は樹脂封止部22により電極部14上面に固定されている。圧電基板10から金属ポスト24上面までの高さは、圧電基板10から金属キャップ18上面までの高さよりも高く、金属ポスト24の上面は樹脂封止部22から露出し、金属ポスト24は樹脂封止部22を貫通している。金属ポスト24の上面には、例えば金で形成されたメッキ部26が設けられている。電極部14と金属ポスト24とは電気的に接続している。金属ポスト24は、外部との電気的接続に用いられ、金属キャップ18と同じ金属であり、かつ単一の金属で形成されている。
【0026】
複数の金属ポスト24のうちグランドに接続される金属ポスト24と金属キャップ18とは、金属ポスト24および金属キャップ18と同じ金属からなる接続部40により電気的に接続されている。これにより、金属キャップ18は接地されている。金属ポスト24の側面と樹脂封止部22の端面との間には、金属ポスト24と同じ金属からなる金属体28が延在している。金属体28は、後述の弾性波デバイス100の製造方法で説明する、隣接する金属ポスト24同士を接続していた金属体である。また、図1(a)中の符号29は、後述の弾性波デバイス100の製造方法で説明する、隣接する金属キャップ18同士を接続していた金属体29である。
【0027】
次に、図2(a)から図3(b)を用いて、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を説明する。なお、図2(a)から図3(b)は、図1(a)のA−A間の相当する箇所の断面模式図である。また、図2(a)から図3(b)で説明する弾性波デバイス100の製造方法は、多面取り構造を用いた製造方法であり、量産性の向上およびチップ単価の製造コストを下げることが可能となる。
【0028】
図2(a)のように、ウエハ状の圧電基板10の上面に、櫛型電極と反射器とからなる複数の弾性表面波素子12、弾性表面波素子12に電気的に接続する複数の電極部14、および金属部17を形成する。弾性表面波素子12、電極部14、および金属部17の形成は、例えば、それぞれで用いられる膜を堆積し、所望の形状にエッチングすることで形成できる。
【0029】
図2(b)のように、複数の弾性表面波素子12それぞれの上方に金属キャップ18により空洞部16が形成され、かつ複数の電極部14それぞれの上面に金属ポスト24が形成されるよう、キャビティ形状をした金属キャップ18が複数接続された金属キャップシート44と金属ポスト24が複数接続された金属ポストシート46とが接続された金属シート42を、圧電基板10上に搭載する。金属シート42を搭載する際には、金属シート42と電極部14および金属部17との間に接着剤を介在させずに搭載する。
【0030】
ここで、図4(a)および図4(b)を用いて、金属シート42についてより詳しく説明する。図4(a)はウエハ状の圧電基板10上に金属シート42が搭載された状態の図であり、図4(b)は金属シート42の一部分を拡大した図である。
【0031】
図4(a)および図4(b)のように、隣接する金属キャップ18が金属体29により接続されることで、金属キャップ18が複数接続された金属キャップシート44が形成されている。また、隣接する金属ポスト24が金属体28により接続されることで、金属ポスト24が複数接続された金属ポストシート46が形成されている。金属キャップシート44と金属ポストシート46とは、金属キャップ18とグランドに接続されるべき金属ポスト24とが接続部40で接続されることにより接続していて、これにより金属シート42が形成されている。金属キャップ18、金属ポスト24、金属体28、29、および接続部40はすべて同じ金属で形成されている。
【0032】
金属シート42は、例えば平坦な金属板を用意し、フォトプロセスおよびエッチングプロセスを実行して加工することで形成できる。このような方法で金属シート42を形成するため、加工のし易さの観点から、金属シート42は例えばニッケル、ステンレス、コバールのいずれかからなる場合が好ましい。つまり、金属キャップ18、金属ポスト24、金属体28、29、および接続部40は、ニッケル、ステンレス、コバールのいずれかからなる場合が好ましい。特に、ステンレスは加工後の形状が保たれ易いという利点があり、ニッケルは線膨張係数の点で好ましいという利点がある。
【0033】
図2(c)に戻り、金属シート42を覆うように、圧電基板10上に例えば熱硬化型のエポキシ樹脂を形成し、150℃から180℃でベークする。これにより、圧電基板10上に、金属キャップ18と金属ポスト24とを覆うエポキシ樹脂からなる樹脂封止部22が形成される。このように、圧電基板10上に、硬化したエポキシ樹脂からなる樹脂封止部22を形成することで、金属キャップ18および金属ポスト24を所定の位置に固定することができる。
【0034】
図3(a)のように、樹脂封止部22の上面に、例えばブラストなどで研磨を実行する。圧電基板10から金属ポスト24上面までの高さは、圧電基板10から金属キャップ18上面までの高さに比べて高いため、研磨を実行することで、金属キャップ18を覆い、かつ金属ポスト24の上面を露出する樹脂封止部22を形成できる。その後、露出した金属ポスト24の上面にメッキ処理を施して、メッキ部26を形成する。
【0035】
図3(b)のように、弾性表面波素子12をそれぞれ個片化するように、例えばダイシングブレード48により、圧電基板10を分離する。この際、隣接する金属キャップ18同士を接続する金属体29と隣接する金属ポスト24同士を接続する金属体28も同時に切断し、金属キャップ18同士および金属ポスト24同士を電気的に分離する。以上の工程により、図1(a)および図1(b)に示す弾性波デバイス100が完成する。
【0036】
このように、実施例1によれば、図1(a)および図1(b)に示すように、圧電基板10上に設けられた弾性表面波素子12の上方に空洞部16が形成され、空洞部16の側面および上面を金属キャップ18が覆っている。このため、空洞部16の気密性を向上させることができる。つまり、空洞部16に外部から水分などが浸入することを抑制でき、弾性波デバイス100の信頼性や品質などを向上できる。また、空洞部16は金属キャップ18で覆われているため、空洞部16は圧力などで潰れ難くなる。
【0037】
図1(a)および図1(b)に示すように、電極部14の上面には、樹脂封止部22を貫通した、金属キャップ18と同じ金属で単一の金属からなる金属ポスト24が設けられている。この金属ポスト24は、図2(b)で説明したように、金属シート42を圧電基板10上に搭載することで容易に形成できる。したがって、実施例1によれば、外部電極として用いる金属ポスト24の構造が単純で製造が容易な弾性波デバイス100が得られる。
【0038】
実施例1では、金属シート42を圧電基板10上に搭載することで、金属キャップシート44と金属ポストシート46とを圧電基板10上に同時に搭載している。これにより、複数の金属キャップ18と複数の金属ポスト24とを同一工程で同時に形成することができ、製造コストを削減できる。金属シート42は単一の金属板を加工することで形成されるため、金属シート42に含まれる複数の金属キャップ18および複数の金属ポスト24は全て同じ金属で形成されることになる。
【0039】
なお、金属キャップシート44と金属ポストシート46とをそれぞれ別々に圧電基板10上に搭載するようにしてもよい。つまり、圧電基板10上に形成された複数の弾性表面波素子12それぞれの上に空洞部16が形成されるように金属キャップシート44を搭載する工程と、圧電基板10上に形成された複数の電極部14それぞれの上面に、金属キャップ18と同じ金属で単一の金属からなる金属ポスト24が形成されるように金属ポストシート46を搭載する工程と、を別々に行ってもよい。この場合でも、金属ポスト24の構造が単純で製造が容易であると共に、複数の金属キャップ18を同時に搭載でき且つ複数の金属ポスト24を同時に搭載できるため、複数の金属キャップ18および複数の金属ポスト24をそれぞれ個別に搭載する場合に比べて、製造コストを削減できる。
【0040】
図4(a)および図4(b)のように、金属シート42は、金属キャップ18とグランドに接続されるべき金属ポスト24とが、金属キャップ18および金属ポスト24と同じ金属からなる接続部40で接続されることで、金属キャップシート44と金属ポストシート46とが接続される構成である場合が好ましい。このような金属シート42を用いて弾性波デバイス100を製造することで、図1(a)のように、金属キャップ18とグランドに接続される金属ポスト24とが、金属キャップ18および金属ポスト24と同じ金属からなる接続部40で電気的に接続され、金属キャップ18を接地させることができる。これにより、弾性波デバイス100の通過特性に生じるノイズを低減させることができる。
【0041】
圧電基板10から金属ポスト24上面までの高さは、圧電基板10から金属キャップ18上面までの高さより高い場合が好ましい。これにより、図2(c)および図3(a)で説明したように、金属キャップシート44と金属ポストシート46とが接続する金属シート42を覆うように樹脂封止部22を形成した後、樹脂封止部22を研磨することで、金属キャップ18を覆い、かつ金属ポスト24の上面を露出する樹脂封止部22を形成できる。つまり、樹脂封止部22を貫通する金属ポスト24を容易に形成することができる。また、露出した金属ポスト24の上面に、メッキ処理によりメッキ部26を形成することが好ましい。これにより、外部との接続不良を抑制できる。
【0042】
図3(b)で説明したように、複数の弾性表面波素子12それぞれを個片化するように圧電基板10を分離する際に、隣接する金属キャップ18同士を接続する金属体29および隣接する金属ポスト24同士を接続する金属体28を切断して、隣接する金属キャップ18同士および隣接する金属ポスト24同士を電気的に分離する場合が好ましい。これにより、個片化した弾性表面波素子12間における電気的分離を、製造コストの増加を伴わずに、容易に行うことができる。また、このような製造方法で製造された弾性波デバイス100は、図1(a)および図1(b)に示すように、金属ポスト24の側面と樹脂封止部22の端面との間を、金属ポスト24と同じ金属からなる金属体28が延在する。また、金属キャップ18と樹脂封止部22の端面との間を、金属キャップ18と同じ金属からなる金属体29が延在する。
【0043】
図1(b)で説明したように、金属キャップ18と金属部17との間および金属ポスト24と電極部14との間には接着剤が設けられてなく、金属キャップ18と金属ポスト24とは樹脂封止部22により圧電基板10上に固定されている。このような構成とすることで、接着剤を用いた場合に比べて材料の削減によるコスト低減が図れる。また、金属キャップ18と金属部17との間および金属ポスト24と電極部14との間に接着剤を塗布する工程が不要となるため、製造工数削減による製造コストの低減も図れる。なお、金属キャップ18および金属ポスト24が、例えば半田などのロウ材により圧電基板10上に固定されている場合でもよい。つまり、金属キャップ18と金属部17との間および金属ポスト24と電極部14との間にロウ材が設けられている場合でもよい。この場合は、空洞部16の気密性や金属ポスト24と電極部14との電気的接続性をより向上させることができる。
【0044】
樹脂封止部22にエポキシ樹脂を用いることで、耐熱性に優れ、熱的に安定した樹脂封止部を得ることができる。このように、樹脂封止部22には、エポキシ樹脂を用いる場合が好ましいが、その他の材料、例えばポリイミド樹脂やシリコン樹脂などを用いることもできる。
【0045】
実施例1において、図2(a)および図2(b)で説明したように、金属部17は、金属キャップ18が搭載される前に、圧電基板10上にあらかじめ形成されている場合を例に示したがこれに限られる訳ではない。例えば、金属キャップ18の側面部20の端面に金属部17を形成しておき、この金属キャップ18を圧電基板10上に搭載する場合でもよい。この場合でも、金属キャップ18と圧電基板10との間には金属部17が形成され、圧電基板10と金属キャップ18との間を金属部17によりシールすることができる。このように、金属部17はシールとして用いられることから、圧電基板10と金属キャップ18との間に形成される材料は金属部17に限らず、シールすることが可能な柔らかさを有する材料であれば、他の材料を用いてもよい。
【0046】
実施例1において、弾性波素子として、圧電基板10上に櫛型電極などが設けられた弾性表面波素子12の場合を例として説明したが、これに限らず、例えば圧電薄膜共振器素子の場合でもよい。圧電薄膜共振器素子の場合、基板は圧電基板以外のシリコン基板、ガラス基板、石英基板などを用いることもできる。
【実施例2】
【0047】
実施例2では、実施例1に係る弾性波デバイス100において、弾性表面波素子12と電極部14との電気的接続の例を説明する。図5は、実施例2に係る弾性波デバイス100の上面模式図である。なお、樹脂封止部22、金属ポスト24、メッキ部26、および金属体28、29については図示を省略している。また、金属キャップ18を透視して、弾性表面波素子12、金属部17、および絶縁体38を図示している。
【0048】
図5のように、実施例2に係る弾性波デバイス100は、例えば直列に接続された2つの弾性表面波素子12を有する。弾性表面波素子12は、一対の電極指からなる櫛型電極30と櫛型電極30の両側に設けられた反射器32により構成される。2つの弾性表面波素子12は、中央の櫛型電極30の両隣に位置する櫛型電極30の一方の電極指同士が接続することで直列に接続されている。中央に位置する櫛型電極30の一方の電極指は信号配線パターン34の一端に接続していて、信号配線パターン34の他端は電極部14に接続している。反射器32および櫛型電極30の他方の電極指にはグランド配線パターン36の一端が接続していて、グランド配線パターン36の他端は電極部14に接続している。これにより、反射器32と櫛型電極30の他方の電極指とは接地されている。このように、弾性表面波素子12と電極部14とは信号配線パターン34およびグランド配線パターン36により電気的に接続している。
【0049】
金属部17は、金属キャップ18の側面部20の底面を延在して設けられており、空洞部16の周りを囲んでいる。つまり、金属部17は弾性表面波素子12の周りを囲んでいる。金属部17と信号配線パターン34との間には、例えばポリイミドからなる絶縁体38が介在している。これにより、金属キャップ18と信号配線パターン34とは電気的に分離している。一方、金属部17とグランド配線パターン36との間には絶縁体は介在していない。よって、金属キャップ18とグランド配線パターン36とは電気的に接続している。
【0050】
実施例2のように、弾性表面波素子12と電極部14とは信号配線パターン34およびグランド配線パターン36により電気的に接続されると共に、金属キャップ18と信号配線パターン34との間に絶縁体38が設けられていることで、金属キャップ18と信号配線パターン34とは電気的に分離している場合が好ましい。これにより、金属ポスト24から入力された電気信号が金属キャップ18に伝搬することを抑制でき、入力された電気信号をノイズの影響を低減した状態で弾性表面波素子12に伝搬させることができる。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 圧電基板
12 弾性表面波素子
14 電極部
16 空洞部
17 金属部
18 金属キャップ
20 側面部
22 樹脂封止部
24 金属ポスト
26 メッキ部
28 金属体
29 金属体
30 櫛型電極
32 反射器
34 信号配線パターン
36 グランド配線パターン
38 絶縁体
40 接続部
42 金属シート
44 金属キャップシート
46 金属ポストシート
48 ダイシングブレード
100 弾性波デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた弾性波素子と、
前記基板上に設けられ、前記弾性波素子に電気的に接続する複数の電極部と、
前記弾性波素子上に空洞部を有し前記空洞部の側面および上面を覆うように前記基板上に設けられた金属キャップと、
前記金属キャップを覆うように前記基板上に設けられた樹脂封止部と、
前記金属キャップの外側において前記樹脂封止部を貫通して前記複数の電極部それぞれの上面に設けられた、前記金属キャップと同じ金属で単一の金属からなる複数の金属ポストと、を具備することを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記基板から前記金属ポスト上面までの高さは、前記基板から前記金属キャップ上面までの高さより高いことを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記金属キャップと前記複数の金属ポストのうちのグランドに接続される金属ポストとは、前記金属キャップおよび前記金属ポストと同じ金属からなる接続部により電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記弾性波素子と前記複数の電極部のうちの少なくとも1つの電極部とは前記基板上に設けられた信号配線パターンにより電気的に接続され、前記金属キャップと前記信号配線パターンとは、前記金属キャップと前記信号配線パターンとの間に設けられた絶縁体により電気的に分離されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記金属キャップおよび前記金属ポストは、前記樹脂封止部により前記基板上に固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
基板に、複数の弾性波素子と前記複数の弾性波素子それぞれに電気的に接続する複数の電極部とを形成する工程と、
前記複数の弾性波素子それぞれの上に金属キャップにより空洞部が形成されるよう、前記金属キャップが複数接続された金属キャップシートを前記基板上に搭載する工程と、
前記複数の電極部それぞれの上面に、前記金属キャップと同じ金属で単一の金属からなる金属ポストが形成されるよう、前記金属ポストが複数接続された金属ポストシートを前記基板上に搭載する工程と、
前記複数の金属キャップを覆い、かつ前記複数の金属ポストの上面を露出する樹脂封止部を前記基板上に形成する工程と、
前記複数の弾性波素子をそれぞれ個片化するよう、前記基板を分離する工程と、を有することを特徴とする弾性波デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記金属キャップシートを搭載する工程と前記金属ポストシートを搭載する工程とは、前記金属キャップシートと前記金属ポストシートとが接続された金属シートを前記基板上に搭載することにより同時に実行されることを特徴とする請求項6記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記金属シートは、前記金属キャップとグランドに接続されるべき前記金属ポストとが、前記金属キャップおよび前記金属ポストと同じ金属からなる接続部により接続されることで、前記金属キャップシートと前記金属ポストシートとが接続されていることを特徴とする請求項7記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記基板を分離する工程は、隣接する前記金属キャップ同士を接続する金属体および隣接する前記金属ポスト同士を接続する金属体を切断して、前記隣接する金属キャップ同士および前記隣接する金属ポスト同士を電気的に分離する工程を含むことを特徴とする請求項6から8のいずれか一項記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂封止部を形成する工程は、前記金属キャップシートおよび前記金属ポストシートを覆うように前記樹脂封止部を形成した後、前記樹脂封止部を研磨することにより、前記複数の金属キャップを覆い、かつ前記複数の金属ポストの上面を露出する前記樹脂封止部を形成する工程であり、
露出した前記複数の金属ポストの上面にメッキ部を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項6から9のいずれか一項記載の弾性波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−109481(P2011−109481A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263352(P2009−263352)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】