弾性表面波共振子及びこれを用いた弾性表面波フィルタ
高い周波数における共振子のQ値を向上し、このような共振子を用いたフィルタの挿入損失、及びフィルタの急峻度を向上する。 圧電基板の上に、インターディジタルトランスデューサとその両側に反射電極とを設けた弾性表面波共振子を複数個並列接続し、並列接続された弾性表面波共振器の共振周波数を、並列接続されたもの同士すべて同じにするものであり、このようにすることにより、共振のQ値が向上でき、またこの弾性表面波共振子を用いて弾性表面波フィルタを構成することにより、挿入損失、急峻度の改善を図る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に携帯電話等に用いられる、弾性表面波共振子及びこれを用いた弾性表面波フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来このような弾性表面波フィルタは、図13に示したような構成を有していた。
【0003】
図13に示す弾性表面波フィルタは、圧電基板1の上に、弾性表面波共振子である直列共振子2と並列共振子3とを形成し、接続することにより、フィルタ特性を得ていた。また、これらの共振子は、多対のインターディジタルトランスデューサもしくは、インターディジタルトランスデューサの両側に反射電極を設けたものを使用していた。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【0005】
しかしながら、上記構成では、高い周波数になってくると共振子のQ値を十分に確保することができず、フィルタを構成する場合にも、挿入損失、急峻度の改善に限界があった。
【特許文献1】特開2001−119260号公報
【発明の開示】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、弾性表面波共振子のQ値を向上させ、低挿入損失で急峻度の高い弾性表面波フィルタを提供することを目的とするものである。
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、インターディジタルトランスデューサ(以下「IDT」と呼称する)と、その両側に反射電極とを設けた弾性表面波共振器を複数個並列接続し、並列接続された弾性表面波共振器の共振周波数を、並列接続されたもの同士すべて同じにするものである。
【0008】
本発明は、弾性表面波共振子のQ値を向上させ、弾性表面波フィルタの挿入損失を低減し、フィルタ特性の急峻度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、弾性表面波共振子の電極の構成を示す図である。(実施の形態1)
【図2】図2は、弾性表面波共振子の拡大図である。
【図3】図3は、図1に示す弾性表面波共振子と従来の弾性表面波共振子との周波数特性を比較した図である。
【図4】図4は、図1に示す弾性表面波共振子が備える3個の弾性表面波共振子において、電極指のピッチに差異を設けた場合における弾性表面波共振子の共振のQ値をシミュレーションにより求めたグラフである。
【図5】図5は、共振周波数が同じであって、構成が互いに異なる弾性表面波共振子を複数並列に接続して構成した場合における共振のQ値をシミュレーションにより求めたグラフである。
【図6】図6は、別の形態における弾性表面波共振子の電極の構成を示す図である。
【図7】図7は、別の形態における弾性表面波共振子の電極の構成を示す図である。
【図8】図8は、図7に示す弾性表面波共振子によるリップル低減の効果を説明するためのグラフである。
【図9】図9は、図7に示す弾性表面波共振子のIDTにおける両端部からそれぞれ15本目までの電極指のピッチを2.31μmとし、残りの電極指15のピッチを2.33μmとした場合の周波数特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。
【図10】図10は、弾性表面波フィルタの電極の構成を示す図である。(実施の形態2)
【図11】図11は、図10に示す弾性表面波フィルタと従来の弾性表面波フィルタとの周波数特性を比較した図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態3に係る弾性表面波フィルタの電極の構成を示す図である。(実施の形態3)
【図13】図13は、従来の弾性表面波フィルタの電極の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明に係る実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る弾性表面波共振子10の構成の一例を示す図である。図1に示す弾性表面波共振子10は、いわゆる1ポート共振子であり、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面に、弾性表面波共振子14(弾性表面波共振器)が同一弾性表面波伝播路上に3個一列に並べて形成されている。
【0011】
弾性表面波共振子14は、IDT12と、その両端部にそれぞれ近接して設けられた2個の反射器13(反射電極)とを備えている。この同一の構成の弾性表面波共振子14、すなわち共振周波数が実質的に同じ弾性表面波共振子14が3個、並列に接続されて、信号入力端子T1と信号出力端子T2との間、すなわち信号経路に直列に接続されている。この場合、弾性表面波共振子10における複数のIDT12の間に設けられる反射器13の数は、二つにされている。
【0012】
図2は、図1に示す弾性表面波共振子14の拡大図である。弾性表面波共振子14において、例えば、IDT12及び反射器13の電極の膜厚は約0.4μm、IDT12の交差幅Wは約40μm、IDT12の備える電極指15の本数は200本、反射器13の電極の本数は50本、IDT12における電極指15のピッチP1は約2.33μm、反射器13における電極のピッチP2は約2.38μmとされている。なお、図2において、弾性表面波共振子14の図示を簡略化して示しており、図中、IDT12の備える電極指15の本数は10本、反射器13における電極の本数は4本として示している。
【0013】
弾性表面波共振子14の共振周波数は、主に電極の膜厚と電極指15のピッチP1とで決定される。そして、図1に示す三個の弾性表面波共振子14は、電極の膜厚及び電極指15のピッチP1等、同じ構成にされているので、並列接続された弾性表面波共振子14同士で共振周波数がすべて同じにされている。
【0014】
図3は、このようにして構成した弾性表面波共振子10の周波数特性と図13に示す従来の弾性表面波フィルタにおける直列共振子2の周波数特性とをシミュレーションにより求めて示したものである。図1に示す弾性表面波共振子10の周波数特性を図3の実線で示すグラフG1に示す。一方、図3に破線で示すグラフG2は、IDTを一つ備え、その両側に反射器を一つずつ備えた図13に示す従来の弾性表面波共振子の周波数特性である。この従来の弾性表面波共振子は、図1に示す弾性表面波共振子14における3個のIDT12が備える電極指15の合計と同じ600本の電極指を備えたIDTを一つ備えている。その他の条件は、弾性表面波共振子10と同じにしたものである。
【0015】
図3に示すグラフG1とグラフG2とを比較すると、グラフG1の方が、共振点から反共振点にかけて持ちあがっていることがわかる。これを共振のQ値で比較すると、グラフG1に示される本発明の場合、弾性表面波共振子10の共振周波数は約840MHz(各弾性表面波共振子14の共振周波数も約840MHz)、共振のQ値は約870となる。一方グラフG2に示される従来の弾性表面波共振子の場合におけるQ値は、約830となり、本発明による弾性表面波共振子10では、共振のQ値が改善されていることがわかる。
【0016】
なお、共振周波数が同じ弾性表面波共振子14を三個並列に接続して弾性表面波共振子10を構成する例を示したが、共振周波数が同じである場合とは、例えば製造ばらつき等の誤差要因により並列接続された複数の弾性表面波共振子14間に共振周波数の差異が生じている場合を含む。例えば並列接続された複数の弾性表面波共振子14における共振周波数うち最大のものと最小のものとの差異が、0.03%以下である場合は、実質的に共振周波数が同一である。
【0017】
図4は、図1に示す弾性表面波共振子10が備える3個の弾性表面波共振子14において、電極指15のピッチP1に差異を設けた場合における弾性表面波共振子10の共振のQ値をシミュレーションにより求めたグラフである。図4に示すグラフにおいて、横軸に示すピッチ差は、3個の弾性表面波共振子14におけるピッチが最大のものと最小のものとの差を、百分率で表したものである。例えば、図1に示す弾性表面波共振子10において、一方の端部の弾性表面波共振子14における電極指15のピッチP1が中央の弾性表面波共振子14における電極指15のピッチP1よりも0.05%狭く、他端の弾性表面波共振子14における電極指15のピッチP1が中央の弾性表面波共振子14における電極指15のピッチP1よりも0.05%広い場合にピッチ差0.1%として示している。
【0018】
図4において、シミュレーションに用いた各弾性表面波共振子14は、IDT12及び反射器13の電極の膜厚を0.4μm、IDT12の交差幅Wを40μm、IDT12の備える電極指15の本数を200本、反射器13の電極の本数を50本、反射器13における電極のピッチP2を2.38μmとした。また、3個の弾性表面波共振子14のうち、中央の弾性表面波共振子14が備えるIDT12における電極指15のピッチP1を2.33μmとした。
【0019】
図4に示すように、弾性表面波共振子10における共振のQ値は、ピッチ差が0%において870、ピッチ差が0.02%において855、ピッチ差が0.04%において807、ピッチ差が0.1%において532、ピッチ差が0.2%において248となった。これにより、複数の弾性表面波共振子14におけるピッチ差が0.03%以下(共振周波数の差異が0.03%以下に相当)の場合、弾性表面波共振子10は、図13に示す従来の弾性表面波共振子(直列共振子2)よりも、共振のQ値を向上させることができることを確認した。
【0020】
なお、同じ構成の弾性表面波共振子14を三個並列に接続して弾性表面波共振子10を構成する例を示したが、同じ構成の弾性表面波共振子14を複数並列に接続する例に限られず、弾性表面波共振子10は、共振周波数が同じであって、異なる構成の弾性表面波共振子14を複数並列に接続する構成であってもよい。
【0021】
図5は、弾性表面波共振子10を、共振周波数が同じであって、構成が互いに異なる弾性表面波共振子14を複数並列に接続して構成した場合における共振のQ値をシミュレーションにより求めたグラフである。図5は、弾性表面波共振子10における三個の弾性表面波共振子14がそれぞれ備えるIDT12について、電極指15の本数を互いに異なる本数とし、かつ各弾性表面波共振子14の共振周波数を同一にした場合における弾性表面波共振子10の共振のQ値を示している。この場合、電極指15の本数を変えることによる共振周波数のずれを補正するべくピッチP1を変えている。
【0022】
まず、図1に示す弾性表面波共振子10は、電極指15の本数が200本の弾性表面波共振子14を三つ並列に接続したものであり、すなわち各弾性表面波共振子14の電極指15の本数が200本、200本、200本の組み合わせになっている。そして、図5において電極の本数が200本としてそのQ値870を縦軸に示している。
【0023】
また、IDT12の電極指15の本数が300本であってピッチP1が2.330μmにされた弾性表面波共振子14一つと、電極指15の本数が150本であってピッチP1が2.329μmにされた弾性表面波共振子14二つとを並列に接続して構成された弾性表面波共振子10を、図5において電極の本数が300本としてそのQ値857を縦軸に示している。
【0024】
また、IDT12の電極指15の本数が400本であってピッチP1が2.330μmにされた弾性表面波共振子14一つと、電極指15の本数が150本であってピッチP1が2.329μmにされた弾性表面波共振子14一つと、電極指15の本数が50本であってピッチP1が2.321μmにされた弾性表面波共振子14一つとを並列に接続して構成された弾性表面波共振子10を、図5において電極の本数が400本としてそのQ値838を縦軸に示している。
【0025】
また、IDT12の電極指15の本数が500本であってピッチP1が2.330μmにされた弾性表面波共振子14一つと、電極指15の本数が50本であってピッチP1が2.321μmにされた弾性表面波共振子14二つとを並列に接続して構成された弾性表面波共振子10を、図5において電極の本数が500本としてそのQ値833.5を縦軸に示している。
【0026】
また、例えば図13に示す直列共振子2と同様に、IDTを一つ備え、その電極指の本数を600本備えた従来例による弾性表面波共振子を、図5において電極の本数が600本としてそのQ値830を縦軸に示している
図5に示すように、同じ弾性表面波共振子14を複数並列に接続した場合(電極の本数200本の場合)が最もQ値を向上させる効果が高いが、共振周波数が同じであって電極指15の本数が互いに異なる弾性表面波共振子14を複数並列に接続して弾性表面波共振子10を構成した場合(電極の本数300本、400本、500本の場合)であっても、図13に示す従来例による弾性表面波共振子(直列共振子2)の場合(電極の本数600本の場合)よりも共振のQ値を向上させることができる。
【0027】
また、弾性表面波共振子14のような1ポート共振子では、電極指15の本数に応じた信号の周波数においてリップルが生じ易くなることが知られている。そうすると、図1に示す弾性表面波共振子10のように、電極指15の本数が等しい弾性表面波共振子14を複数並列に接続すると、各弾性表面波共振子14でリップルの生じる周波数が等しくなるためにリップルが重畳され、リップルのピーク値が増大するおそれがある。
【0028】
そこで、IDT12が備える電極指15の本数が互いに異なり共振周波数が等しい弾性表面波共振子14を複数並列に接続して弾性表面波共振子10を構成することにより、各弾性表面波共振子14で生じるリップルの周波数を変えることができ、リップルが重畳することを低減することができるので、共振のQ値を向上させつつリップルのピーク値を低減することができる。
【0029】
なお、弾性表面波共振子10は、弾性表面波共振子14を三個並列に接続して構成される例を示したが、並列に接続される弾性表面波共振子14は三個に限られず、例えば2個、あるいは4個以上であってもよい。
【0030】
従来より、IDTと反射器とを同じ電極ピッチで形成した場合、IDTの放射コンダクタンスのピークの周波数は、反射器の反射特性の中心の周波数より低くなることが知られている。このため、通常反射器のピッチを、IDTのピッチよりやや大きくすることにより、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数と、反射器の反射特性の中心の周波数をほぼ一致させ、共振のQ値を向上させている。しかしながら、電極指の反射率が高い圧電材料を用い、IDTの電極指の本数が多くなると、IDTそのものが反射器の働きをし、実質的にIDTと同じピッチの反射器を配置した場合と同様となり、共振のQ値を劣化させることとなる。
【0031】
そこで本発明では、IDTを分割することにより、それぞれのIDTの本数を減らし、共振のQ値を向上させながら、これらを並列に接続することにより、所望の特性を得るものである。
【0032】
図6は、本発明の実施の形態1に係る別の形態の弾性表面波共振子10aにおける構成の一例を示す図である。図6に示す弾性表面波共振子10aは、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面における同一弾性表面波伝播路上に複数、例えば3個のIDT12が一列に並べて設けられ、各IDT12の間に一つずつ反射器13aが設けられ、さらに一列に並んだIDT12における両端部にそれぞれ近接して二個の反射器13が設けられ、複数のIDT12同士が並列に接続されると共に信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に接続されて構成されている。この場合、弾性表面波共振子10aにおけるIDT12の間に設けられる反射器13aは、それぞれ両側のIDT12によって共用されている。
【0033】
そして、IDT12と反射器13,13aとにおける電極の膜厚は約0.4μm、IDT12の交差幅Wは約40μm、IDT12の電極指15の本数は200本、三個のIDT12間にそれぞれ設けられた各反射器13aにおける電極の本数は20本、両端部の反射器13における電極の本数は50本、IDT12の電極指ピッチP1は約2.33μm、反射器13,13aにおける電極ピッチP2は約2.38μmとされている。
【0034】
このようにして得られた弾性表面波共振子10aの共振のQ値を測定すると、約870となり、図1に示す弾性表面波共振子10のように、別々の弾性表面波共振子14を構成して並列に接続したものと同等のQ値が得られる。また、弾性表面波共振子10において各IDT12の間に配置される二つの反射器13を弾性表面波共振子10aにおいては一つの反射器13aに置き換えることができるので、弾性表面波共振子10aの形状を小さくすることができる。
【0035】
なお、IDT12間の反射器13aにおける電極の本数は、多いほど好ましいが、多くなると形状が大きくなるため、両端部の反射器13における電極の本数より多くする必要はない。
【0036】
図7は、本発明の実施の形態1に係る別の形態の弾性表面波共振子10bにおける構成の一例を示す図である。図7に示す弾性表面波共振子10bは、いわゆる1ポート共振子であり、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面に、弾性表面波共振子14aが4個形成されている。
【0037】
弾性表面波共振子14aは、IDT12aと、その両端部に近接して設けられた反射器13とを備えている。この同じ弾性表面波共振子14a、すなわち共振周波数が同じ弾性表面波共振子14aが4個並列に接続されると共に信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に接続されている。また、弾性表面波共振子14aは、2個ずつ一組にして1列に並べて配設され、組同士は1列に並べず、横に配設されている。
【0038】
また、各弾性表面波共振子14aにおける電極の膜厚を約0.4μm、IDT12aの交差幅Wを約40μm、IDT12aにおける電極指15の本数を150本、反射器13における電極の本数を50本、反射器13の電極のピッチP2を2.38μmとしている。そして、IDT12aの電極指15のピッチP1(間隔)は、両端部で2.28μmとされている。さらに、IDT12aにおける両端部から15本目以降の電極指15間のピッチP1は2.33μmにされており、すなわちIDT12aの中央付近では、電極指15間のピッチP1は2.33μmにされている。また、IDT12aの両端部から15本目までの電極指15のピッチP1は、2.28μmから2.33μmに向かって漸次増加するようにされている。
【0039】
通常、図7に示す弾性表面波共振子10bのような1ポート共振子でIDT12aの電極指15の本数を少なくしていくと、共振点付近にリップルが出やすくなる。そこで、図7に示す弾性表面波共振子10bは、IDT12aの両端部に近い一部の電極指15のピッチP1と、中央付近の電極指15のピッチP1とを異ならせることによりリップルを低減したものであり、このようにすることにより、リップルを低減しながら、共振のQ値を向上させることができる。
【0040】
図8は、弾性表面波共振子10bによるリップル低減の効果を説明するためのグラフである。図8(a)は、図7に示す弾性表面波共振子10bの周波数特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフであり、図8(b)は、図7に示す弾性表面波共振子10bのIDT12aにおける電極指15のピッチP1をすべて同一の2.33μmとした場合の周波数特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。図8において、横軸は信号入力端子T1に入力される信号の周波数を示し、縦軸は信号入力端子T1により受信された信号が信号出力端子T2から出力される際の伝達量をデシベル表示したものである。
【0041】
図8(b)に示すように、IDT12aにおける電極指15のピッチP1をすべて同一の2.33μmとした場合には、参照符号Bで示すように825MHz付近でリップルが生じている。一方、図8(a)に示すように、図7に示す弾性表面波共振子10bを用いた場合には、参照符号Aで示すように825MHz付近においてもリップルが生じていない。以上のように、図7に示す弾性表面波共振子10bによるリップルの低減効果が確認された。
【0042】
なお、図7に示す弾性表面波共振子10bにおいて、IDT12aのピッチP1を中央部と異ならせる電極指15は両端部から15本目までが望ましいが、両端部から15本目までに限定されず、IDT12aが備える複数の電極指15のうち一部の電極指15間のピッチP1を、IDT12aの両端部において中央部におけるピッチP1と異ならせる構成とすればよい。
【0043】
また、IDT12aの中央部付近における電極指15のピッチP1と、IDT12aの両端部における電極指15のピッチP1との差は、0.05μmにされた例を示したが、中央部付近と両端部とにおけるピッチP1の差は、例えば中央部付近におけるピッチP1の0.5%〜3%程度としてもよい。
【0044】
また、IDT12aの両端部から15本目までの電極指15のピッチP1を中央部に向かって漸次増加する例を示したが、漸次増加する例に限られず、IDT12aの両端部において中央部付近におけるピッチP1と異なるピッチにされていればよく、IDT12aの両端部における電極指15の複数のピッチP1は、略同一にされていてもよい。
【0045】
図9は、図7に示す弾性表面波共振子10bのIDT12aにおける両端部からそれぞれ15本目までの電極指15のピッチP1を2.31μmとし、残りの電極指15のピッチP1を2.33μmとした場合の特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。図9に示すように、IDT12aの両端部における電極指15のピッチP1を同一にして漸次増加しない場合でも、参照符号Cで示すように825MHz付近においてリップルが生じておらず、リップルの低減効果が確認された。
【0046】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2について説明する。本発明の実施の形態1では弾性表面波共振子の構成を示したが、本発明の実施の形態2は、この弾性表面波共振子を用いた梯子型弾性表面波フィルタの構成を示す点で異なる。
【0047】
図10は、本発明の実施の形態2に係る弾性表面波フィルタ21の構成の一例を示す図である。図10に示す弾性表面波フィルタ21は、例えば梯子型弾性表面波フィルタの一例であって、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、グラウンドに接続するための接地端子T3と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面に、直列共振子16と並列共振子17とが形成されている。
【0048】
なお、信号入力端子T1、信号出力端子T2、及び接地端子T3は、圧電基板11の表面に形成された配線パターンや、弾性表面波フィルタ21を外部回路と接続するためのコネクタ等であってもよい。
【0049】
直列共振子16は、信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に設けられ、すなわち信号入力端子T1から信号出力端子T2へ至る信号経路に直列に接続された弾性表面波共振子で、例えば図6に示す弾性表面波共振子10aが用いられている。なお、直列共振子16としては、例えば図1に示す弾性表面波共振子10や図7に示す弾性表面波共振子10bを用いてもよい。また、並列共振子17は、信号出力端子T2と接地端子T3との間に設けられ、すなわち信号経路とグラウンドとの間に接続された弾性表面波共振子である。
【0050】
直列共振子16は、図6に示す弾性表面波共振子10aと同様に、圧電基板11表面の同一弾性表面波伝播路上に複数、例えば3個のIDT12が一列に並べて設けられ、各IDT12の間にそれぞれ反射器13aが設けられ、さらに一列に並んだIDT12における両端部にそれぞれ近接して反射器13が設けられ、複数のIDT12同士が信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に並列に接続されて構成されている。
【0051】
そして、直列共振子16と並列共振子17とにおける電極の膜厚は約0.4μmにされている。また、直列共振子16は、IDT12の交差幅Wは約40μm、IDT12における電極指15の本数は200本、IDT12間に設けられた反射器13aにおける電極の本数は20本、直列共振子16の両端部に設けられた反射器13における電極の本数はそれぞれ50本、IDT12の電極指ピッチP1は約2.33μm、反射器13,13aにおける電極ピッチP2は約2.38μmとされている。
【0052】
また、並列共振子17は、圧電基板11上に、IDT18が一個、信号出力端子T2と接地端子T3との間に接続されて設けられ、そのIDT18の両端部にそれぞれ近接して反射器19が設けられて構成されている。そして、IDT18の電極指における交差幅Wは約40μm、IDT18における電極指の本数は200本、IDT18の電極指ピッチP1は約2.44μm、反射器19における電極ピッチP2は約2.42μmとされている。
【0053】
図11は、このようにして構成された弾性表面波フィルタ21の周波数特性と図13に示す従来の弾性表面波フィルタの周波数特性とを比較したグラフである。図11において、図10に示す弾性表面波フィルタ21の周波数特性を実線でグラフG3に示し、図13に示す従来の弾性表面波フィルタにおける周波数特性を破線でグラフG4に示す。
【0054】
これにより、図11に示すように、グラフG3に示す弾性表面波フィルタ21の周波数特性は、グラフG4に示す従来の弾性表面波フィルタにおける周波数特性よりも通過帯域の高域側(865MHz付近)で、帯域が広がると共に急峻度が向上していることが確認された。
【0055】
なお、図10に示す弾性表面波フィルタ21では、直列共振子16のみ複数のIDT12を並列に接続しているが、並列共振子17も同様に複数のIDT18を並列に接続した構成とし、例えば弾性表面波共振子10,10a,10bを用いても構わない。
【0056】
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3について説明する。本実施の形態3と実施の形態2とで相違する点は、実施の形態2では、一端子対弾性表面波共振子を用いた梯子型弾性表面波フィルタであるのに対し、本実施の形態3は多端子対弾性表面波共振子を用いた弾性表面波フィルタに対して適用することである。
【0057】
図12は、本発明の実施の形態3に係る弾性表面波フィルタ22の構成の一例を示す図である。図12に示す弾性表面波フィルタ22は、例えば梯子型弾性表面波フィルタの一例であって、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、グラウンドに接続するための接地端子T3と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面に、多端子対弾性表面波共振子23が形成されている。
【0058】
多端子対弾性表面波共振子23は、圧電基板11上の同一弾性表面波伝播路上に、IDT12a,12bと反射器13,13a,13bとが一列に並べて設けられている。そして、多端子対弾性表面波共振子23において、IDT12aは、複数、例えば三個設けられ、各IDT12aの間にそれぞれ反射器13aが設けられ、さらに一列に並んだIDT12aにおける一端部に近接して反射器13が設けられ、他端部に近接して反射器13bが設けられ、複数のIDT12a同士が並列に接続されて、信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に信号経路と直列に接続されている。
【0059】
また、IDT12bは、IDT12bの一端部が反射器13bに近接するように設けられ、IDT12bの他端部と近接して反射器13が設けられている。そして、IDT12bは、信号出力端子T2と接地端子T3との間、すなわち信号経路とグラウンドとの間に接続されている。
【0060】
このように構成された多端子対弾性表面波共振子23は、圧電基板11上における同一弾性表面波伝播路上に、IDT12,12a,12bと反射器13,13a,13bとが一列に並べられて構成された単一の弾性表面波共振子であると共に、信号入力端子T1、信号出力端子T2、及び接地端子T3を備える多端子対弾性表面波フィルタ22を構成している。
【0061】
この場合、3個のIDT12aと、IDT12aに近接する反射器13と、2個の反射器13aと、反射器13bとが直列共振子を構成し、反射器13bと、IDT12bと、IDT12bに近接する反射器13とが並列共振子を構成している。そして、直列共振子における一端部の反射器13bと、並列共振子における一端部の反射器13bとが共用されている。
【0062】
ここで、多端子対弾性表面波フィルタ22の電極膜厚は約0.4μmである。また、IDT12aおよびIDT12bの交差幅Wは約40μm、IDT12aにおける電極指の本数は200本、IDT12bにおける電極指の本数は200本、反射器13aにおける電極の本数は20本、反射器13bにおける電極の本数は20本、反射器13における電極の本数は50本、IDT12aにおける電極指のピッチP1は約2.33μm、IDT12bにおける電極指のピッチP1は約2.44μm、反射器13aのピッチP2は約2.38μm、反射器13bのピッチP2は約2.41μm、IDT12aに近接する反射器13のピッチP2は約2.38μm、IDT12bに近接する反射器13のピッチP2は約2.42μmとする。
【0063】
このようにすることにより、図10に示す弾性表面波フィルタ21よりも反射器を一つ減らすことができるので、多端子対弾性表面波フィルタ22を弾性表面波フィルタ21よりも小型化することができる。また、図10に示す弾性表面波フィルタ21と同様に、図13に示す従来の弾性表面波フィルタよりも信号の通過帯域が広がると共に急峻度を向上することができる。
【0064】
なお、IDT12a同士は、電極指の本数及び電極指のピッチが同じである等、同一構成であることが好ましいが、IDT12bについては、電極指の本数等は設計により適宜選択することができる。
【0065】
また、信号経路とグランドとの間に接続されるIDT12bについても、複数のIDTを並列に接続し、各IDT間に反射器を挟んで構成しても構わない。
【0066】
また、IDT12a同士の間の反射器13aは本発明の効果を得るためには必ず必要となるが、IDT12aとIDT12bとの間の反射器13bは、設計によりなくても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかる弾性表面波共振子及び弾性表面波フィルタは、共振子のQ値を向上させ、低挿入損失、急峻度の高い弾性表面波フィルタを得ることができるという効果を有し、携帯電話等の通信分野、あるいはテレビ等の映像分野等のフィルタに有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に携帯電話等に用いられる、弾性表面波共振子及びこれを用いた弾性表面波フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来このような弾性表面波フィルタは、図13に示したような構成を有していた。
【0003】
図13に示す弾性表面波フィルタは、圧電基板1の上に、弾性表面波共振子である直列共振子2と並列共振子3とを形成し、接続することにより、フィルタ特性を得ていた。また、これらの共振子は、多対のインターディジタルトランスデューサもしくは、インターディジタルトランスデューサの両側に反射電極を設けたものを使用していた。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【0005】
しかしながら、上記構成では、高い周波数になってくると共振子のQ値を十分に確保することができず、フィルタを構成する場合にも、挿入損失、急峻度の改善に限界があった。
【特許文献1】特開2001−119260号公報
【発明の開示】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、弾性表面波共振子のQ値を向上させ、低挿入損失で急峻度の高い弾性表面波フィルタを提供することを目的とするものである。
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、インターディジタルトランスデューサ(以下「IDT」と呼称する)と、その両側に反射電極とを設けた弾性表面波共振器を複数個並列接続し、並列接続された弾性表面波共振器の共振周波数を、並列接続されたもの同士すべて同じにするものである。
【0008】
本発明は、弾性表面波共振子のQ値を向上させ、弾性表面波フィルタの挿入損失を低減し、フィルタ特性の急峻度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、弾性表面波共振子の電極の構成を示す図である。(実施の形態1)
【図2】図2は、弾性表面波共振子の拡大図である。
【図3】図3は、図1に示す弾性表面波共振子と従来の弾性表面波共振子との周波数特性を比較した図である。
【図4】図4は、図1に示す弾性表面波共振子が備える3個の弾性表面波共振子において、電極指のピッチに差異を設けた場合における弾性表面波共振子の共振のQ値をシミュレーションにより求めたグラフである。
【図5】図5は、共振周波数が同じであって、構成が互いに異なる弾性表面波共振子を複数並列に接続して構成した場合における共振のQ値をシミュレーションにより求めたグラフである。
【図6】図6は、別の形態における弾性表面波共振子の電極の構成を示す図である。
【図7】図7は、別の形態における弾性表面波共振子の電極の構成を示す図である。
【図8】図8は、図7に示す弾性表面波共振子によるリップル低減の効果を説明するためのグラフである。
【図9】図9は、図7に示す弾性表面波共振子のIDTにおける両端部からそれぞれ15本目までの電極指のピッチを2.31μmとし、残りの電極指15のピッチを2.33μmとした場合の周波数特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。
【図10】図10は、弾性表面波フィルタの電極の構成を示す図である。(実施の形態2)
【図11】図11は、図10に示す弾性表面波フィルタと従来の弾性表面波フィルタとの周波数特性を比較した図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態3に係る弾性表面波フィルタの電極の構成を示す図である。(実施の形態3)
【図13】図13は、従来の弾性表面波フィルタの電極の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明に係る実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る弾性表面波共振子10の構成の一例を示す図である。図1に示す弾性表面波共振子10は、いわゆる1ポート共振子であり、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面に、弾性表面波共振子14(弾性表面波共振器)が同一弾性表面波伝播路上に3個一列に並べて形成されている。
【0011】
弾性表面波共振子14は、IDT12と、その両端部にそれぞれ近接して設けられた2個の反射器13(反射電極)とを備えている。この同一の構成の弾性表面波共振子14、すなわち共振周波数が実質的に同じ弾性表面波共振子14が3個、並列に接続されて、信号入力端子T1と信号出力端子T2との間、すなわち信号経路に直列に接続されている。この場合、弾性表面波共振子10における複数のIDT12の間に設けられる反射器13の数は、二つにされている。
【0012】
図2は、図1に示す弾性表面波共振子14の拡大図である。弾性表面波共振子14において、例えば、IDT12及び反射器13の電極の膜厚は約0.4μm、IDT12の交差幅Wは約40μm、IDT12の備える電極指15の本数は200本、反射器13の電極の本数は50本、IDT12における電極指15のピッチP1は約2.33μm、反射器13における電極のピッチP2は約2.38μmとされている。なお、図2において、弾性表面波共振子14の図示を簡略化して示しており、図中、IDT12の備える電極指15の本数は10本、反射器13における電極の本数は4本として示している。
【0013】
弾性表面波共振子14の共振周波数は、主に電極の膜厚と電極指15のピッチP1とで決定される。そして、図1に示す三個の弾性表面波共振子14は、電極の膜厚及び電極指15のピッチP1等、同じ構成にされているので、並列接続された弾性表面波共振子14同士で共振周波数がすべて同じにされている。
【0014】
図3は、このようにして構成した弾性表面波共振子10の周波数特性と図13に示す従来の弾性表面波フィルタにおける直列共振子2の周波数特性とをシミュレーションにより求めて示したものである。図1に示す弾性表面波共振子10の周波数特性を図3の実線で示すグラフG1に示す。一方、図3に破線で示すグラフG2は、IDTを一つ備え、その両側に反射器を一つずつ備えた図13に示す従来の弾性表面波共振子の周波数特性である。この従来の弾性表面波共振子は、図1に示す弾性表面波共振子14における3個のIDT12が備える電極指15の合計と同じ600本の電極指を備えたIDTを一つ備えている。その他の条件は、弾性表面波共振子10と同じにしたものである。
【0015】
図3に示すグラフG1とグラフG2とを比較すると、グラフG1の方が、共振点から反共振点にかけて持ちあがっていることがわかる。これを共振のQ値で比較すると、グラフG1に示される本発明の場合、弾性表面波共振子10の共振周波数は約840MHz(各弾性表面波共振子14の共振周波数も約840MHz)、共振のQ値は約870となる。一方グラフG2に示される従来の弾性表面波共振子の場合におけるQ値は、約830となり、本発明による弾性表面波共振子10では、共振のQ値が改善されていることがわかる。
【0016】
なお、共振周波数が同じ弾性表面波共振子14を三個並列に接続して弾性表面波共振子10を構成する例を示したが、共振周波数が同じである場合とは、例えば製造ばらつき等の誤差要因により並列接続された複数の弾性表面波共振子14間に共振周波数の差異が生じている場合を含む。例えば並列接続された複数の弾性表面波共振子14における共振周波数うち最大のものと最小のものとの差異が、0.03%以下である場合は、実質的に共振周波数が同一である。
【0017】
図4は、図1に示す弾性表面波共振子10が備える3個の弾性表面波共振子14において、電極指15のピッチP1に差異を設けた場合における弾性表面波共振子10の共振のQ値をシミュレーションにより求めたグラフである。図4に示すグラフにおいて、横軸に示すピッチ差は、3個の弾性表面波共振子14におけるピッチが最大のものと最小のものとの差を、百分率で表したものである。例えば、図1に示す弾性表面波共振子10において、一方の端部の弾性表面波共振子14における電極指15のピッチP1が中央の弾性表面波共振子14における電極指15のピッチP1よりも0.05%狭く、他端の弾性表面波共振子14における電極指15のピッチP1が中央の弾性表面波共振子14における電極指15のピッチP1よりも0.05%広い場合にピッチ差0.1%として示している。
【0018】
図4において、シミュレーションに用いた各弾性表面波共振子14は、IDT12及び反射器13の電極の膜厚を0.4μm、IDT12の交差幅Wを40μm、IDT12の備える電極指15の本数を200本、反射器13の電極の本数を50本、反射器13における電極のピッチP2を2.38μmとした。また、3個の弾性表面波共振子14のうち、中央の弾性表面波共振子14が備えるIDT12における電極指15のピッチP1を2.33μmとした。
【0019】
図4に示すように、弾性表面波共振子10における共振のQ値は、ピッチ差が0%において870、ピッチ差が0.02%において855、ピッチ差が0.04%において807、ピッチ差が0.1%において532、ピッチ差が0.2%において248となった。これにより、複数の弾性表面波共振子14におけるピッチ差が0.03%以下(共振周波数の差異が0.03%以下に相当)の場合、弾性表面波共振子10は、図13に示す従来の弾性表面波共振子(直列共振子2)よりも、共振のQ値を向上させることができることを確認した。
【0020】
なお、同じ構成の弾性表面波共振子14を三個並列に接続して弾性表面波共振子10を構成する例を示したが、同じ構成の弾性表面波共振子14を複数並列に接続する例に限られず、弾性表面波共振子10は、共振周波数が同じであって、異なる構成の弾性表面波共振子14を複数並列に接続する構成であってもよい。
【0021】
図5は、弾性表面波共振子10を、共振周波数が同じであって、構成が互いに異なる弾性表面波共振子14を複数並列に接続して構成した場合における共振のQ値をシミュレーションにより求めたグラフである。図5は、弾性表面波共振子10における三個の弾性表面波共振子14がそれぞれ備えるIDT12について、電極指15の本数を互いに異なる本数とし、かつ各弾性表面波共振子14の共振周波数を同一にした場合における弾性表面波共振子10の共振のQ値を示している。この場合、電極指15の本数を変えることによる共振周波数のずれを補正するべくピッチP1を変えている。
【0022】
まず、図1に示す弾性表面波共振子10は、電極指15の本数が200本の弾性表面波共振子14を三つ並列に接続したものであり、すなわち各弾性表面波共振子14の電極指15の本数が200本、200本、200本の組み合わせになっている。そして、図5において電極の本数が200本としてそのQ値870を縦軸に示している。
【0023】
また、IDT12の電極指15の本数が300本であってピッチP1が2.330μmにされた弾性表面波共振子14一つと、電極指15の本数が150本であってピッチP1が2.329μmにされた弾性表面波共振子14二つとを並列に接続して構成された弾性表面波共振子10を、図5において電極の本数が300本としてそのQ値857を縦軸に示している。
【0024】
また、IDT12の電極指15の本数が400本であってピッチP1が2.330μmにされた弾性表面波共振子14一つと、電極指15の本数が150本であってピッチP1が2.329μmにされた弾性表面波共振子14一つと、電極指15の本数が50本であってピッチP1が2.321μmにされた弾性表面波共振子14一つとを並列に接続して構成された弾性表面波共振子10を、図5において電極の本数が400本としてそのQ値838を縦軸に示している。
【0025】
また、IDT12の電極指15の本数が500本であってピッチP1が2.330μmにされた弾性表面波共振子14一つと、電極指15の本数が50本であってピッチP1が2.321μmにされた弾性表面波共振子14二つとを並列に接続して構成された弾性表面波共振子10を、図5において電極の本数が500本としてそのQ値833.5を縦軸に示している。
【0026】
また、例えば図13に示す直列共振子2と同様に、IDTを一つ備え、その電極指の本数を600本備えた従来例による弾性表面波共振子を、図5において電極の本数が600本としてそのQ値830を縦軸に示している
図5に示すように、同じ弾性表面波共振子14を複数並列に接続した場合(電極の本数200本の場合)が最もQ値を向上させる効果が高いが、共振周波数が同じであって電極指15の本数が互いに異なる弾性表面波共振子14を複数並列に接続して弾性表面波共振子10を構成した場合(電極の本数300本、400本、500本の場合)であっても、図13に示す従来例による弾性表面波共振子(直列共振子2)の場合(電極の本数600本の場合)よりも共振のQ値を向上させることができる。
【0027】
また、弾性表面波共振子14のような1ポート共振子では、電極指15の本数に応じた信号の周波数においてリップルが生じ易くなることが知られている。そうすると、図1に示す弾性表面波共振子10のように、電極指15の本数が等しい弾性表面波共振子14を複数並列に接続すると、各弾性表面波共振子14でリップルの生じる周波数が等しくなるためにリップルが重畳され、リップルのピーク値が増大するおそれがある。
【0028】
そこで、IDT12が備える電極指15の本数が互いに異なり共振周波数が等しい弾性表面波共振子14を複数並列に接続して弾性表面波共振子10を構成することにより、各弾性表面波共振子14で生じるリップルの周波数を変えることができ、リップルが重畳することを低減することができるので、共振のQ値を向上させつつリップルのピーク値を低減することができる。
【0029】
なお、弾性表面波共振子10は、弾性表面波共振子14を三個並列に接続して構成される例を示したが、並列に接続される弾性表面波共振子14は三個に限られず、例えば2個、あるいは4個以上であってもよい。
【0030】
従来より、IDTと反射器とを同じ電極ピッチで形成した場合、IDTの放射コンダクタンスのピークの周波数は、反射器の反射特性の中心の周波数より低くなることが知られている。このため、通常反射器のピッチを、IDTのピッチよりやや大きくすることにより、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数と、反射器の反射特性の中心の周波数をほぼ一致させ、共振のQ値を向上させている。しかしながら、電極指の反射率が高い圧電材料を用い、IDTの電極指の本数が多くなると、IDTそのものが反射器の働きをし、実質的にIDTと同じピッチの反射器を配置した場合と同様となり、共振のQ値を劣化させることとなる。
【0031】
そこで本発明では、IDTを分割することにより、それぞれのIDTの本数を減らし、共振のQ値を向上させながら、これらを並列に接続することにより、所望の特性を得るものである。
【0032】
図6は、本発明の実施の形態1に係る別の形態の弾性表面波共振子10aにおける構成の一例を示す図である。図6に示す弾性表面波共振子10aは、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面における同一弾性表面波伝播路上に複数、例えば3個のIDT12が一列に並べて設けられ、各IDT12の間に一つずつ反射器13aが設けられ、さらに一列に並んだIDT12における両端部にそれぞれ近接して二個の反射器13が設けられ、複数のIDT12同士が並列に接続されると共に信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に接続されて構成されている。この場合、弾性表面波共振子10aにおけるIDT12の間に設けられる反射器13aは、それぞれ両側のIDT12によって共用されている。
【0033】
そして、IDT12と反射器13,13aとにおける電極の膜厚は約0.4μm、IDT12の交差幅Wは約40μm、IDT12の電極指15の本数は200本、三個のIDT12間にそれぞれ設けられた各反射器13aにおける電極の本数は20本、両端部の反射器13における電極の本数は50本、IDT12の電極指ピッチP1は約2.33μm、反射器13,13aにおける電極ピッチP2は約2.38μmとされている。
【0034】
このようにして得られた弾性表面波共振子10aの共振のQ値を測定すると、約870となり、図1に示す弾性表面波共振子10のように、別々の弾性表面波共振子14を構成して並列に接続したものと同等のQ値が得られる。また、弾性表面波共振子10において各IDT12の間に配置される二つの反射器13を弾性表面波共振子10aにおいては一つの反射器13aに置き換えることができるので、弾性表面波共振子10aの形状を小さくすることができる。
【0035】
なお、IDT12間の反射器13aにおける電極の本数は、多いほど好ましいが、多くなると形状が大きくなるため、両端部の反射器13における電極の本数より多くする必要はない。
【0036】
図7は、本発明の実施の形態1に係る別の形態の弾性表面波共振子10bにおける構成の一例を示す図である。図7に示す弾性表面波共振子10bは、いわゆる1ポート共振子であり、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面に、弾性表面波共振子14aが4個形成されている。
【0037】
弾性表面波共振子14aは、IDT12aと、その両端部に近接して設けられた反射器13とを備えている。この同じ弾性表面波共振子14a、すなわち共振周波数が同じ弾性表面波共振子14aが4個並列に接続されると共に信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に接続されている。また、弾性表面波共振子14aは、2個ずつ一組にして1列に並べて配設され、組同士は1列に並べず、横に配設されている。
【0038】
また、各弾性表面波共振子14aにおける電極の膜厚を約0.4μm、IDT12aの交差幅Wを約40μm、IDT12aにおける電極指15の本数を150本、反射器13における電極の本数を50本、反射器13の電極のピッチP2を2.38μmとしている。そして、IDT12aの電極指15のピッチP1(間隔)は、両端部で2.28μmとされている。さらに、IDT12aにおける両端部から15本目以降の電極指15間のピッチP1は2.33μmにされており、すなわちIDT12aの中央付近では、電極指15間のピッチP1は2.33μmにされている。また、IDT12aの両端部から15本目までの電極指15のピッチP1は、2.28μmから2.33μmに向かって漸次増加するようにされている。
【0039】
通常、図7に示す弾性表面波共振子10bのような1ポート共振子でIDT12aの電極指15の本数を少なくしていくと、共振点付近にリップルが出やすくなる。そこで、図7に示す弾性表面波共振子10bは、IDT12aの両端部に近い一部の電極指15のピッチP1と、中央付近の電極指15のピッチP1とを異ならせることによりリップルを低減したものであり、このようにすることにより、リップルを低減しながら、共振のQ値を向上させることができる。
【0040】
図8は、弾性表面波共振子10bによるリップル低減の効果を説明するためのグラフである。図8(a)は、図7に示す弾性表面波共振子10bの周波数特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフであり、図8(b)は、図7に示す弾性表面波共振子10bのIDT12aにおける電極指15のピッチP1をすべて同一の2.33μmとした場合の周波数特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。図8において、横軸は信号入力端子T1に入力される信号の周波数を示し、縦軸は信号入力端子T1により受信された信号が信号出力端子T2から出力される際の伝達量をデシベル表示したものである。
【0041】
図8(b)に示すように、IDT12aにおける電極指15のピッチP1をすべて同一の2.33μmとした場合には、参照符号Bで示すように825MHz付近でリップルが生じている。一方、図8(a)に示すように、図7に示す弾性表面波共振子10bを用いた場合には、参照符号Aで示すように825MHz付近においてもリップルが生じていない。以上のように、図7に示す弾性表面波共振子10bによるリップルの低減効果が確認された。
【0042】
なお、図7に示す弾性表面波共振子10bにおいて、IDT12aのピッチP1を中央部と異ならせる電極指15は両端部から15本目までが望ましいが、両端部から15本目までに限定されず、IDT12aが備える複数の電極指15のうち一部の電極指15間のピッチP1を、IDT12aの両端部において中央部におけるピッチP1と異ならせる構成とすればよい。
【0043】
また、IDT12aの中央部付近における電極指15のピッチP1と、IDT12aの両端部における電極指15のピッチP1との差は、0.05μmにされた例を示したが、中央部付近と両端部とにおけるピッチP1の差は、例えば中央部付近におけるピッチP1の0.5%〜3%程度としてもよい。
【0044】
また、IDT12aの両端部から15本目までの電極指15のピッチP1を中央部に向かって漸次増加する例を示したが、漸次増加する例に限られず、IDT12aの両端部において中央部付近におけるピッチP1と異なるピッチにされていればよく、IDT12aの両端部における電極指15の複数のピッチP1は、略同一にされていてもよい。
【0045】
図9は、図7に示す弾性表面波共振子10bのIDT12aにおける両端部からそれぞれ15本目までの電極指15のピッチP1を2.31μmとし、残りの電極指15のピッチP1を2.33μmとした場合の特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。図9に示すように、IDT12aの両端部における電極指15のピッチP1を同一にして漸次増加しない場合でも、参照符号Cで示すように825MHz付近においてリップルが生じておらず、リップルの低減効果が確認された。
【0046】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2について説明する。本発明の実施の形態1では弾性表面波共振子の構成を示したが、本発明の実施の形態2は、この弾性表面波共振子を用いた梯子型弾性表面波フィルタの構成を示す点で異なる。
【0047】
図10は、本発明の実施の形態2に係る弾性表面波フィルタ21の構成の一例を示す図である。図10に示す弾性表面波フィルタ21は、例えば梯子型弾性表面波フィルタの一例であって、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、グラウンドに接続するための接地端子T3と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面に、直列共振子16と並列共振子17とが形成されている。
【0048】
なお、信号入力端子T1、信号出力端子T2、及び接地端子T3は、圧電基板11の表面に形成された配線パターンや、弾性表面波フィルタ21を外部回路と接続するためのコネクタ等であってもよい。
【0049】
直列共振子16は、信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に設けられ、すなわち信号入力端子T1から信号出力端子T2へ至る信号経路に直列に接続された弾性表面波共振子で、例えば図6に示す弾性表面波共振子10aが用いられている。なお、直列共振子16としては、例えば図1に示す弾性表面波共振子10や図7に示す弾性表面波共振子10bを用いてもよい。また、並列共振子17は、信号出力端子T2と接地端子T3との間に設けられ、すなわち信号経路とグラウンドとの間に接続された弾性表面波共振子である。
【0050】
直列共振子16は、図6に示す弾性表面波共振子10aと同様に、圧電基板11表面の同一弾性表面波伝播路上に複数、例えば3個のIDT12が一列に並べて設けられ、各IDT12の間にそれぞれ反射器13aが設けられ、さらに一列に並んだIDT12における両端部にそれぞれ近接して反射器13が設けられ、複数のIDT12同士が信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に並列に接続されて構成されている。
【0051】
そして、直列共振子16と並列共振子17とにおける電極の膜厚は約0.4μmにされている。また、直列共振子16は、IDT12の交差幅Wは約40μm、IDT12における電極指15の本数は200本、IDT12間に設けられた反射器13aにおける電極の本数は20本、直列共振子16の両端部に設けられた反射器13における電極の本数はそれぞれ50本、IDT12の電極指ピッチP1は約2.33μm、反射器13,13aにおける電極ピッチP2は約2.38μmとされている。
【0052】
また、並列共振子17は、圧電基板11上に、IDT18が一個、信号出力端子T2と接地端子T3との間に接続されて設けられ、そのIDT18の両端部にそれぞれ近接して反射器19が設けられて構成されている。そして、IDT18の電極指における交差幅Wは約40μm、IDT18における電極指の本数は200本、IDT18の電極指ピッチP1は約2.44μm、反射器19における電極ピッチP2は約2.42μmとされている。
【0053】
図11は、このようにして構成された弾性表面波フィルタ21の周波数特性と図13に示す従来の弾性表面波フィルタの周波数特性とを比較したグラフである。図11において、図10に示す弾性表面波フィルタ21の周波数特性を実線でグラフG3に示し、図13に示す従来の弾性表面波フィルタにおける周波数特性を破線でグラフG4に示す。
【0054】
これにより、図11に示すように、グラフG3に示す弾性表面波フィルタ21の周波数特性は、グラフG4に示す従来の弾性表面波フィルタにおける周波数特性よりも通過帯域の高域側(865MHz付近)で、帯域が広がると共に急峻度が向上していることが確認された。
【0055】
なお、図10に示す弾性表面波フィルタ21では、直列共振子16のみ複数のIDT12を並列に接続しているが、並列共振子17も同様に複数のIDT18を並列に接続した構成とし、例えば弾性表面波共振子10,10a,10bを用いても構わない。
【0056】
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3について説明する。本実施の形態3と実施の形態2とで相違する点は、実施の形態2では、一端子対弾性表面波共振子を用いた梯子型弾性表面波フィルタであるのに対し、本実施の形態3は多端子対弾性表面波共振子を用いた弾性表面波フィルタに対して適用することである。
【0057】
図12は、本発明の実施の形態3に係る弾性表面波フィルタ22の構成の一例を示す図である。図12に示す弾性表面波フィルタ22は、例えば梯子型弾性表面波フィルタの一例であって、外部からの入力信号を受信する信号入力端子T1と、外部へ信号を出力する信号出力端子T2と、グラウンドに接続するための接地端子T3と、39°YカットX伝播タンタル酸リチウムからなる圧電基板11とを備えている。そして、圧電基板11の表面に、多端子対弾性表面波共振子23が形成されている。
【0058】
多端子対弾性表面波共振子23は、圧電基板11上の同一弾性表面波伝播路上に、IDT12a,12bと反射器13,13a,13bとが一列に並べて設けられている。そして、多端子対弾性表面波共振子23において、IDT12aは、複数、例えば三個設けられ、各IDT12aの間にそれぞれ反射器13aが設けられ、さらに一列に並んだIDT12aにおける一端部に近接して反射器13が設けられ、他端部に近接して反射器13bが設けられ、複数のIDT12a同士が並列に接続されて、信号入力端子T1と信号出力端子T2との間に信号経路と直列に接続されている。
【0059】
また、IDT12bは、IDT12bの一端部が反射器13bに近接するように設けられ、IDT12bの他端部と近接して反射器13が設けられている。そして、IDT12bは、信号出力端子T2と接地端子T3との間、すなわち信号経路とグラウンドとの間に接続されている。
【0060】
このように構成された多端子対弾性表面波共振子23は、圧電基板11上における同一弾性表面波伝播路上に、IDT12,12a,12bと反射器13,13a,13bとが一列に並べられて構成された単一の弾性表面波共振子であると共に、信号入力端子T1、信号出力端子T2、及び接地端子T3を備える多端子対弾性表面波フィルタ22を構成している。
【0061】
この場合、3個のIDT12aと、IDT12aに近接する反射器13と、2個の反射器13aと、反射器13bとが直列共振子を構成し、反射器13bと、IDT12bと、IDT12bに近接する反射器13とが並列共振子を構成している。そして、直列共振子における一端部の反射器13bと、並列共振子における一端部の反射器13bとが共用されている。
【0062】
ここで、多端子対弾性表面波フィルタ22の電極膜厚は約0.4μmである。また、IDT12aおよびIDT12bの交差幅Wは約40μm、IDT12aにおける電極指の本数は200本、IDT12bにおける電極指の本数は200本、反射器13aにおける電極の本数は20本、反射器13bにおける電極の本数は20本、反射器13における電極の本数は50本、IDT12aにおける電極指のピッチP1は約2.33μm、IDT12bにおける電極指のピッチP1は約2.44μm、反射器13aのピッチP2は約2.38μm、反射器13bのピッチP2は約2.41μm、IDT12aに近接する反射器13のピッチP2は約2.38μm、IDT12bに近接する反射器13のピッチP2は約2.42μmとする。
【0063】
このようにすることにより、図10に示す弾性表面波フィルタ21よりも反射器を一つ減らすことができるので、多端子対弾性表面波フィルタ22を弾性表面波フィルタ21よりも小型化することができる。また、図10に示す弾性表面波フィルタ21と同様に、図13に示す従来の弾性表面波フィルタよりも信号の通過帯域が広がると共に急峻度を向上することができる。
【0064】
なお、IDT12a同士は、電極指の本数及び電極指のピッチが同じである等、同一構成であることが好ましいが、IDT12bについては、電極指の本数等は設計により適宜選択することができる。
【0065】
また、信号経路とグランドとの間に接続されるIDT12bについても、複数のIDTを並列に接続し、各IDT間に反射器を挟んで構成しても構わない。
【0066】
また、IDT12a同士の間の反射器13aは本発明の効果を得るためには必ず必要となるが、IDT12aとIDT12bとの間の反射器13bは、設計によりなくても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかる弾性表面波共振子及び弾性表面波フィルタは、共振子のQ値を向上させ、低挿入損失、急峻度の高い弾性表面波フィルタを得ることができるという効果を有し、携帯電話等の通信分野、あるいはテレビ等の映像分野等のフィルタに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の一方面に設けられると共にそれぞれ複数の電極指を備えた複数のインターディジタルトランスデューサと、
複数の反射電極とを備え、
前記複数のインターディジタルトランスデューサは並列に接続され、
前記複数の反射電極は、それぞれ前記複数のインターディジタルトランスデューサの両側に設けられ、
前記各インターディジタルトランスデューサと当該各インターディジタルトランスデューサの両側に設けられた前記反射電極とで構成される複数の弾性表面波共振器における共振周波数は、実質的に同一であること
を特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項2】
前記複数のインターディジタルトランスデューサにおける少なくとも一部は、前記両側に設けられた反射電極のうち少なくとも一方を、他の前記インターディジタルトランスデューサとの間で共用すること
を特徴とする請求項1記載の弾性表面波共振子。
【請求項3】
前記複数のインターディジタルトランスデューサは同一弾性表面波伝播路上に一列に並べられていることを特徴とする請求項1又は2記載の弾性表面波共振子。
【請求項4】
前記各インターディジタルトランスデューサの略中央部における電極指の間隔と、前記各インターディジタルトランスデューサの両端部における電極指の複数の間隔とは、異なる間隔にされていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項5】
前記各インターディジタルトランスデューサの両端部における電極指の複数の間隔は、略同一にされていること
を特徴とする請求項4記載の弾性表面波共振子。
【請求項6】
前記各インターディジタルトランスデューサの両端部における電極指の複数の間隔は、それぞれ最端部から内側に向かって前記略中央部における電極指の間隔に近づくように漸次変化すること
を特徴とする請求項4記載の弾性表面波共振子。
【請求項7】
前記各インターディジタルトランスデューサの両端部における電極指の複数の間隔は、それぞれ最端部から15本目までの電極指の間隔であること
を特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項8】
前記複数のインターディジタルトランスデューサは、略同一の構成であること
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項9】
前記複数のインターディジタルトランスデューサが備える前記電極指の数は、互いに異なる数にされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項10】
外部からの入力信号を受信するための信号入力端子と、
外部へ信号を出力するための信号出力端子と、
グラウンドに接続するための接地端子と、
圧電基板と、
前記圧電基板の一方面において前記信号入力端子と前記信号出力端子との間に設けられた直列共振子と、
前記圧電基板の一方面において前記信号出力端子と前記接地端子との間に設けられた並列共振子と
を備え、
前記直列共振子は、請求項1〜9のいずれかに記載の弾性表面波共振子であることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項11】
前記並列共振子は、請求項1〜9のいずれかに記載の弾性表面波共振子であることを特徴とする請求項10記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項12】
前記直列共振子と前記並列共振子とは、同一の弾性表面波伝播経路上に設けられ、
前記直列共振子における一端部の反射電極と、前記並列共振子における一端部の反射電極とが共用されていること
を特徴とする請求項10又は11記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の一方面に設けられると共にそれぞれ複数の電極指を備えた複数のインターディジタルトランスデューサと、
複数の反射電極とを備え、
前記複数のインターディジタルトランスデューサは並列に接続され、
前記複数の反射電極は、それぞれ前記複数のインターディジタルトランスデューサの両側に設けられ、
前記各インターディジタルトランスデューサと当該各インターディジタルトランスデューサの両側に設けられた前記反射電極とで構成される複数の弾性表面波共振器における共振周波数は、実質的に同一であること
を特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項2】
前記複数のインターディジタルトランスデューサにおける少なくとも一部は、前記両側に設けられた反射電極のうち少なくとも一方を、他の前記インターディジタルトランスデューサとの間で共用すること
を特徴とする請求項1記載の弾性表面波共振子。
【請求項3】
前記複数のインターディジタルトランスデューサは同一弾性表面波伝播路上に一列に並べられていることを特徴とする請求項1又は2記載の弾性表面波共振子。
【請求項4】
前記各インターディジタルトランスデューサの略中央部における電極指の間隔と、前記各インターディジタルトランスデューサの両端部における電極指の複数の間隔とは、異なる間隔にされていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項5】
前記各インターディジタルトランスデューサの両端部における電極指の複数の間隔は、略同一にされていること
を特徴とする請求項4記載の弾性表面波共振子。
【請求項6】
前記各インターディジタルトランスデューサの両端部における電極指の複数の間隔は、それぞれ最端部から内側に向かって前記略中央部における電極指の間隔に近づくように漸次変化すること
を特徴とする請求項4記載の弾性表面波共振子。
【請求項7】
前記各インターディジタルトランスデューサの両端部における電極指の複数の間隔は、それぞれ最端部から15本目までの電極指の間隔であること
を特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項8】
前記複数のインターディジタルトランスデューサは、略同一の構成であること
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項9】
前記複数のインターディジタルトランスデューサが備える前記電極指の数は、互いに異なる数にされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項10】
外部からの入力信号を受信するための信号入力端子と、
外部へ信号を出力するための信号出力端子と、
グラウンドに接続するための接地端子と、
圧電基板と、
前記圧電基板の一方面において前記信号入力端子と前記信号出力端子との間に設けられた直列共振子と、
前記圧電基板の一方面において前記信号出力端子と前記接地端子との間に設けられた並列共振子と
を備え、
前記直列共振子は、請求項1〜9のいずれかに記載の弾性表面波共振子であることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項11】
前記並列共振子は、請求項1〜9のいずれかに記載の弾性表面波共振子であることを特徴とする請求項10記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項12】
前記直列共振子と前記並列共振子とは、同一の弾性表面波伝播経路上に設けられ、
前記直列共振子における一端部の反射電極と、前記並列共振子における一端部の反射電極とが共用されていること
を特徴とする請求項10又は11記載の弾性表面波フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【国際公開番号】WO2005/107069
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−512750(P2006−512750)
【国際出願番号】PCT/JP2005/007592
【国際出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2005/007592
【国際出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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