弾性表面波装置および通信装置
【課題】 挿入損失とVSWRの良好な弾性表面波装置およびそれを用いた通信装置を提供する。
【解決手段】 圧電基板100に形成された電極群201,202が縦続接続されており、電極群201,202に接続された接続用パッド電極701〜703と電極群201,202とを取り囲む環状接地電極801を配設し、電極群201,202のIDT電極302,303,502,503が環状接地電極801に接続された弾性表面波素子101が、環状接地電極801と対向する環状接地導体1001,接続用パッド電極701〜703と対向する接続用パッド導体1101〜1103ならびに環状接地導体1001に接続された貫通接地導体1201,1202が形成された実装用基板900に実装されており、貫通接地導体1201,1202は、IDT電極301,501の中心に伝搬方向Xに対して直交する方向に設けた仮想軸Yに対して非対称に形成された弾性表面波装置である。
【解決手段】 圧電基板100に形成された電極群201,202が縦続接続されており、電極群201,202に接続された接続用パッド電極701〜703と電極群201,202とを取り囲む環状接地電極801を配設し、電極群201,202のIDT電極302,303,502,503が環状接地電極801に接続された弾性表面波素子101が、環状接地電極801と対向する環状接地導体1001,接続用パッド電極701〜703と対向する接続用パッド導体1101〜1103ならびに環状接地導体1001に接続された貫通接地導体1201,1202が形成された実装用基板900に実装されており、貫通接地導体1201,1202は、IDT電極301,501の中心に伝搬方向Xに対して直交する方向に設けた仮想軸Yに対して非対称に形成された弾性表面波装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等の移動体通信機器に用いられる弾性表面波フィルタや弾性表面波共振器などの弾性表面波装置およびこれを備えた通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話や自動車電話等の移動体通信機器のRF段に用いられる周波数選択フィルタとして弾性表面波装置が広く用いられている。一般に、周波数選択フィルタに求められる特性としては、広通過帯域・低損失・高減衰特性などが挙げられる。さらに、近年では移動体通信機器の小型・軽量化および低コスト化のため、使用部品の削減が進められ、弾性表面波装置に新たな機能を付加することが要求されてきている。
【0003】
そのような機能の1つに弾性表面波装置を不平衡入力−平衡出力型または平衡入力−不平衡出力型に構成できるようにするといった、平衡−不平衡変換機能がある。ここで平衡入力または平衡出力とは、信号が2つの信号線路間の電位差を有して入力または出力するものをいい、これに対して、不平衡入力または不平衡出力とは、信号がグランド電位に対する1つの線路の電位を有して入力または出力するものをいう。なお、弾性表面波装置に平衡−不平衡変換機能を持たせるためには、平衡信号端子と不平衡信号端子との間の通過帯域内での伝送特性において、各信号線路の信号は振幅が等しく、位相が180度反転していることが必要であり、それぞれ振幅平衡度,位相平衡度(以下、これらをあわせて平衡度という)と呼んでいる。
【0004】
従来の弾性表面波装置は一般的に不平衡入力−不平衡出力型であるため、弾性表面波装置の後段に接続される回路や電子部品が平衡入力型となっている場合は、弾性表面波装置と後段との間に平衡−不平衡変換器(以下、バランともいう)を挿入した回路構成となっていた。同様に弾性表面波装置前段の回路や電子部品が平衡出力型となっている場合は、前段と弾性表面波装置との間にバランを挿入した回路構成となっていた。
【0005】
そこで、このようなバランをなくすことで使用部品を削減するために、弾性表面波装置に平衡−不平衡変換機能を持たせた、不平衡入力−平衡出力型弾性表面波装置または平衡入力−不平衡出力型弾性表面波装置の実用化が進められている。
【0006】
図16にこのような平衡−不平衡変換機能を持たせた従来の弾性表面波フィルタ2001の平面図を示す(特許文献1参照。)。図16に示すように、弾性表面波フィルタ2001において、圧電基板上に、弾性表面波の伝搬方向に沿って3個のIDT(Inter-Digital Transducer)電極2201〜2203を近接配置し、中央のIDT電極2201の一方の櫛歯状電極を不平衡信号端子2510に接続し、中央のIDT電極2201の両側にはIDT電極2202,2203を配設し、これら3個のIDT電極2201〜2203を挟むように反射器電極2301,2302を配置した電極パターン2101と、弾性表面波の伝搬方向に沿って3個のIDT電極2401〜2403を近接配置し、中央のIDT電極2401を2分割し、音響的には縦続接続,電気的には直列接続となるように平衡信号端子2520,2521にそれぞれ接続し、中央のIDT電極2401の両側に互いに極性を反転させたIDT電極2402,2403を配設し、これら3個のIDT電極2401〜2403を挟むように反射器電極2501,2502を配置した電極パターン2102とを縦続接続している。なお、IDT電極2201の不平衡信号端子2510が接続されていない側(他方)の櫛歯状電極およびIDT電極2202,2203,2402,2403において電極パターン2101,2102の外側に位置する櫛歯状電極は接地されている。このような構成により、弾性表面波フィルタ2001に平衡−不平衡変換機能を持たせることができる。また、電極パターン2101,2102を2段縦続接続させることにより、1段目と2段目との定在波の相互干渉により、通過帯域外減衰量を増大させ、減衰特性を向上させることができる。すなわち、同様の特性を持つ弾性表面波フィルタを2段縦続接続構成とすることで、1段目で減衰された信号が2段目でさらに減衰され、通過帯域外減衰量を2倍とすることができる。
【0007】
また、特許文献2では、図17に示すような、平衡−不平衡変換機能を持たせた従来の弾性表面波素子3101が提案されている。ここで、図16に示す弾性表面波フィルタ2001と同様の箇所には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0008】
図17に示すように、弾性表面波素子3101は、図16に示す弾性表面波フィルタ2001と基本構造は同様であり、平衡信号端子2520,2521が接続されるIDT電極2401に隣接する2つのIDT電極2402,2403のうち、中央に位置するIDT電極2401に隣接する最外側電極指が接地されているIDT電極(この例ではIDT電極2402)に近い側に位置する平衡信号端子(この例では平衡信号端子2520)に、圧電基板上またはこの弾性表面波素子3101を実装するパッケージの内部または外部にリアクタンス成分(この例では容量3200)を形成している。このような構成とすることにより平衡度(特に位相平衡度)を改善しようとしたものである。
【特許文献1】特開平11−097966号公報
【特許文献2】特開2004−096244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図18〜図20に、図16に示す弾性表面波フィルタ2001および図17に示す弾性表面波素子3101のフィルタ特性を検証した結果を示す。
【0010】
図18は挿入損失の周波数依存性を、図19はVSWR(電圧定在波比)の周波数依存性をそれぞれ示した線図であり、図20(a)は振幅平衡度の,図20(b)は位相平衡度の周波数依存性を示した線図である。図18〜図20において、実線は図17に示す弾性表面波素子3101において平衡信号端子2520,2521にリアクタンス成分を付加しない構成(すなわち、図16に示す弾性表面波フィルタ2001の構成)の特性を、破線は平衡信号端子2520,2521のどちらか一方にリアクタンス成分として容量3200を並列接続した構成の特性をそれぞれ示している。ここで、破線のうち、長破線は平衡信号端子2520に,短破線は平衡信号端子2521に容量3200を並列接続した構成の特性を示している。これらの図より、図16に示す弾性表面波フィルタ2001および図17に示す弾性表面波素子3101はともに、通過帯域内のうねり(リップル)が大きく、VSWRも大きいことが分かった。これは2つの平衡信号端子2520,2521間でインピーダンスの整合が取れていないためと推察される。また、図17に示す弾性表面波素子3101の平衡度は図16に示す弾性表面波フィルタ2001と比べて改善されていないことが確認された。
【0011】
このように、特許文献1に開示された弾性表面波フィルタ2001および特許文献2に開示された弾性表面波素子3101は、周波数選択フィルタとして求められる挿入損失およびVSWRの各特性が十分ではないという問題点があった。
【0012】
本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低挿入損失および低VSWRである優れたフィルタ通過特性を有するとともに、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置およびこれを備えた通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の弾性表面波装置は、1)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに前記環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記貫通接地導体は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の弾性表面波装置は、2)上記1)の構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の弾性表面波装置は、3)上記1)の構成において、前記貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の弾性表面波装置は、4)上記1)の構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸の両側で数が異なることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の弾性表面波装置は、5)上記1)〜4)のいずれかの構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、前記仮想軸に対して対称に形成されている群を有することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の弾性表面波装置は、6)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の弾性表面波装置は、7)上記6)の構成において、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の弾性表面波装置は、8)上記6)または7)の構成において、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、前記仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の弾性表面波装置は、9)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに前記環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記貫通接地導体は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されており、かつ前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の弾性表面波装置は、10)上記9)の構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に配置されていることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の弾性表面波装置は、11)上記9)の構成において、前記貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の弾性表面波装置は、12)上記9)の構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸の両側で数が異なることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の弾性表面波装置は、13)上記9)の構成において、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有することを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の弾性表面波装置は、14)上記9)〜13)のいずれかの構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、前記仮想軸に対して対称に形成されている群を有することを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の弾性表面波装置は、15)上記9)〜13)のいずれかの構成において、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、前記仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有することを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明の弾性表面波装置は、16)上記1)〜15)のいずれかの構成において、前記不平衡信号端子に、前記伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、このIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されていることを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明の弾性表面波装置は、17)上記1)〜15)のいずれかの構成において、前記平衡信号端子に、前記伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、このIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されていることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明の弾性表面波装置は、18)上記1)〜17)のいずれかの構成において、前記奇数個のIDT電極の間に、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた挿入反射器電極を配設しており、かつこの挿入反射器電極の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する前記電極指から中央部に位置する前記電極指に向かって漸次短くなっていることを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明の通信装置は、19)上記1)〜18)のいずれかに記載の弾性表面波装置をフィルタ手段として用いた、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の弾性表面波装置によれば、1)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、電極群および接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に環状接地電極と対向する環状接地導体および接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、圧電基板の下面と実装用基板の上面とを対面させて環状接地電極および接続用パッド電極がそれぞれ環状接地導体および接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、初段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、最終段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、初段および最終段の中央に配設されたIDT電極の中心は、伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、貫通接地導体は、この中心を通って伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、IDT電極を接地するまでの経路に環状接地電極,環状接地導体,仮想軸に対して非対称に形成された貫通接地導体を介していることよりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRのフィルタ通過特性の優れたものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは貫通接地導体の設計により調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、インダクタンス成分を形成する貫通接地導体は、中央に配設されたIDT電極の中心に伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、反射器電極およびIDT電極と貫通接地導体とで形成される寄生容量を仮想軸の両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極間のインピーダンスが整合するように微調整することができ、より平衡度の高いものとなる。さらに、複数段が縦続接続されているので、各段の定在波の干渉により通過帯域外の減衰量が増大し、帯域外減衰特性の良好な弾性表面波装置となる。
【0033】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、2)上記1)の構成において、貫通接地導体は、仮想軸に対して非対称に配置されているときには、貫通接地導体の配置を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0034】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、3)上記1)の構成において、貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なるときには、貫通接地導体の径を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0035】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、4)上記1)の構成において、貫通接地導体は、仮想軸の両側で数が異なるときには、貫通接地導体の数を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0036】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、5)上記1)〜4)のいずれかの構成において、貫通接地導体は、仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、仮想軸に対して対称に形成されている群を有するときには、仮想軸に対して対称に形成されている群により、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極と貫通接地導体とで形成される容量を仮想軸の両側で等しくすることができ、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0037】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、6)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、電極群および接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に環状接地電極と対向する環状接地導体および接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体が形成された実装用基板に、圧電基板の下面と実装用基板の上面とを対面させて環状接地電極および接続用パッド電極がそれぞれ環状接地導体および接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、初段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、最終段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、初段および最終段の中央に配設されたIDT電極の中心は、伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、この中心を通って伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、IDT電極を接地するまでの経路に少なくとも一方が仮想軸に対して非対称に形成されている環状接地電極および環状接地導体を介していることよりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方の設計により調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、インダクタンス成分を形成する環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、中央に配設されたIDT電極の中心に伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、反射器電極およびIDT電極と環状接地電極および環状接地導体とで形成される寄生容量を仮想軸の両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極間のインピーダンスが整合するように微調整することができ、より平衡度の高いものとなる。さらに、複数段が縦続接続されているので、各段の定在波の干渉により通過帯域外の減衰量が増大し、帯域外減衰特性の良好な弾性表面波装置となる。
【0038】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、7)上記6)の構成において、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有するときには、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方の幅を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0039】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、8)上記6)または7)の構成において、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有するときには、仮想軸に対して対称に形成されている部分により平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極と環状接地電極および環状接地導体とで形成される容量を仮想軸の両側で等しくすることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0040】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、9)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、電極群および接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に環状接地電極と対向する環状接地導体および接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、圧電基板の下面と実装用基板の上面とを対面させて環状接地電極および接続用パッド電極がそれぞれ環状接地導体および接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、初段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、最終段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、初段および最終段の中央に配設されたIDT電極の中心は、伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、貫通接地導体は、この中心を通って伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されており、かつ環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称に形成されていることから、IDT電極を接地するまでの経路に少なくとも一方が仮想軸に対して非対称に形成されている環状接地電極および環状接地導体,仮想軸に対して非対称に形成されている貫通接地導体を介していることよりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは貫通接地導体と環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方との両方の設計により広い範囲にわたって調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、インダクタンス成分を形成する貫通接地導体と、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方とは、中央に配設されたIDT電極の中心に伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、反射器電極およびIDT電極と貫通接地導体および環状接地電極および環状接地導体とで形成される寄生容量を仮想軸の両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極間のインピーダンスが整合するように微調整することができ、より平衡度の高いものとなる。さらに、複数段が縦続接続されているので、各段の定在波の干渉により通過帯域外の減衰量が増大し、帯域外減衰特性の良好な弾性表面波装置となる。
【0041】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、10)上記9)の構成において、貫通接地導体は、仮想軸に対して非対称に配置されているときには、貫通接地導体の配置を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0042】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、11)上記9)の構成において、貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なるときには、貫通接地導体の径を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0043】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、12)上記9)の構成において、貫通接地導体は、仮想軸の両側で数が異なるときには、貫通接地導体の数を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0044】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、13)上記9)の構成において、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有するときには、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方の幅を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0045】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、14)上記9)〜13)のいずれかの構成において、貫通接地導体は、仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、仮想軸に対して対称に形成されている群を有するときには、仮想軸に対して対称に形成されている群により、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極と貫通接地導体とで形成される容量を仮想軸の両側で等しくすることができ、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0046】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、15)上記9)〜13)のいずれかの構成において、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有するときには、仮想軸に対して対称に形成されている部分により、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極と環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方とで形成される容量を仮想軸の両側で等しくすることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0047】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、16)上記1)〜15)のいずれかの構成において、不平衡信号端子に、伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、このIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されているときには、弾性表面波共振子の共振周波数が所望の値となるように弾性表面波共振子を作製することで、弾性表面波共振子に起因する減衰極の位置を制御することができるので、所望の位置に減衰極を形成することができ、通過帯域外の減衰特性の優れたものとなる。
【0048】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、17)上記1)〜15)のいずれの構成において、平衡信号端子に、伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、このIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されているときには、弾性表面波共振子の共振周波数が所望の値となるように弾性表面波共振子を作製することで、弾性表面波共振子に起因する減衰極の位置を制御することができるので、所望の位置に減衰極を形成することができ、通過帯域外の減衰特性の優れたものとなる。
【0049】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、18)上記1)〜17)のいずれかの構成において、奇数個のIDT電極の間に、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた挿入反射器電極を配設しており、かつこの挿入反射器電極の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する電極指から中央部に位置する電極指に向かって漸次短くなっているときには、挿入反射器電極により振幅モードを増やすことができるとともに、挿入反射器電極の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する電極指から中央部に位置する電極指に向かって漸次短くなっていることにより弾性表面波がバルク波に変換されることを防ぐことができるので、弾性表面波の伝搬を妨げずに振幅モードを増やすことができ、その結果、通過帯域が広帯域なものとなる。
【0050】
また、本発明の通信装置によれば、19)上記1)〜18)のいずれかに記載の弾性表面波装置をフィルタ手段として用いた、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことから、バランを必要としないため小型化が可能で、かつ低挿入損失および低VSWRでフィルタ通過特性の優れた弾性表面波装置を用いることから感度の格段に良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明の弾性表面波装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する図面において同一の箇所には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各電極の大きさや電極間の距離,IDT電極を構成する電極指の本数や間隔等については、説明のために模式的に図示したものである。
【0052】
図1および図2(a)〜(f)に本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態を示す。
【0053】
図1は本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における弾性表面波素子の一例を示す平面図であり、図2は弾性表面波素子が実装される本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の一例を示す平面図であり、(a)〜(f)はそれぞれ実装用基板を構成する各層の平面図である。また、図3(a)〜(f),図4(a)〜(f)はそれぞれ本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の他の例を示す各層の平面図である。
【0054】
図1に示すように、本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における弾性表面波素子101は、圧電基板100の下面に、圧電基板100上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向Xに沿って、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極、この例では3個のIDT電極301〜303と、3個のIDT電極301〜303の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極401,402とからなる電極群201と、圧電基板100上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向Xに沿って、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極、この例では3個のIDT電極501〜503と、3個のIDT電極501〜503の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極601,602とからなる電極群202とが複数段、この例では2段に縦続接続されて配設されており、この電極群201,202に接続された接続用パッド電極701〜703と、電極群201,202および接続用パッド電極701〜703を取り囲む環状接地電極801とを配設して構成される。なお、この例では電極群201,202を2段縦続接続したものについて説明したが、2段以上の複数段であればその段数は自由に設定できる。ただし、段数を増やすと通過帯域外減衰量は増大するが、弾性表面波の伝搬路長が長くなるので伝搬損失が大きくなるため、両者の効果を考慮して段数を決めればよい。
【0055】
この弾性表面波素子101において、初段の電極群201の中央に配設されたIDT電極301は、接続用パッド電極701が不平衡信号端子として接続され、最終段の電極群202の中央に配設されたIDT電極501は、電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに接続用パッド電極702,703が平衡信号端子として接続され、初段の中央に配設されたIDT電極301の両側に位置するIDT電極302,303は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極801に接続されており、最終段の中央に配設されたIDT電極501の両側に位置するIDT電極502,503は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極801に接続されており、初段および最終段の中央に配設されたIDT電極301,501の中心は、伝搬方向Xに直交する方向に揃えて配設されている。ここで、弾性表面波素子101に平衡−不平衡変換機能を持たせるために、IDT電極302,303は互いに逆位相となるように(極性を反転させるように)電極指を設計する。また、初段のIDT電極302と最終段のIDT電極502とをつなぎ、初段のIDT電極303と最終段のIDT電極503とをつなぐように、それぞれの環状接地電極801に接続されていない側の櫛歯状電極を接続して、初段の電極群201と最終段の電極群202とを縦続接続している。なお、3段以上の電極群を縦続接続する場合には、初段と最終段との中央に配置されたIDT電極の中心を揃えるとともに、その他の段の中央に配置されたIDT電極の中心も揃えると、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを防ぐことができるので、さらに平衡度の優れたものとすることができる。
【0056】
なお、この例では、IDT電極302,303,502,503の複数段の外側の櫛歯状電極は、それぞれ反射器電極401,402,601,602を介して環状接地電極801に接続されている。また、接続用パッド電極701〜703は複数段の内側、すなわち電極群201と電極群202との間の領域に形成してもよいが、図1に示すように、複数段の外側に形成すれば、各接続用パッド電極701〜703間の信号の干渉を低減することができ、信号のアイソレーションが良好な弾性表面波装置とすることができる。
【0057】
また、本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板900は、図2(a)に示すように、上面に環状接地電極801と対向する環状接地導体1001および接続用パッド電極701〜703と対向する接続用パッド導体1101〜1103ならびに環状接地導体1001に接続された貫通接地導体1201,1202が形成されている。ここで、貫通接地導体1201,1202は、中央に配設されたIDT電極301,501の中心に伝搬方向Xに対して直交する方向に設けた仮想軸Yに対して非対称に形成されている。
【0058】
実装用基板900は複数層を積層した構造となっている。この例では、上面から順に図2(a)〜(f)に示す各層が積層されており、環状接地導体1001は貫通接地導体1201,1202を介して内部接地導体パターン1210a,1210bに接続し、内部接地導体パターン1210a,1210bを貫通接地導体1201,1202を介して下面接地導体パターン1220a,1220bに接続している。また、接続用パッド導体1101〜1103は貫通接地導体1203を介して内部信号導体パターン1221〜1223に接続し、内部信号導体パターン1221〜1223を貫通接地導体1203を介して下面に形成された信号導体パターン1231〜1233にそれぞれ接続されている。ここで、図2(a)は実装用基板900の上面を、図2(b)は上面側の第1層を、図2(c)は図2(b)に示す第1層と図2(d)に示す第2層との間に形成された内部接地導体パターン形成面を、図2(d)は第2層を、図2(e)は下面接地導体パターン形成面を、2(f)は下面を、それぞれ示す平面図となっている。なお、図2(f)において実線部は下面接地導体パターン1220a,1220bおよび信号導体パターン1231〜1233が露出している部位である。
【0059】
上記のような圧電基板100の下面と実装用基板900の上面とを対面させて環状接地電極801および接続用パッド電極701〜703がそれぞれ環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103に接合されて、本発明の弾性表面波装置を得ることができる。
【0060】
弾性表面波素子101は、タンタル酸リチウム等の圧電基板100の下面に、真空成膜装置等を使って導体膜を成膜し、それをフォトリソグラフィの手法を使ってIDT電極301〜303,501〜503,反射器電極401,402,601,602,接続用パッド電極701〜703および環状接地電極801に加工する、という通常の製造方法で製造することが可能である。なお、IDT電極301〜303,501〜503はアルミニウム等の質量の小さい導体で形成することが好ましい。
【0061】
実装用基板900は、絶縁性の材料からなり、複数の絶縁層を積層したものを用いる。これら絶縁層には例えば、セラミックスやガラスセラミックスが用いられ、セラミックス等の金属酸化物と有機バインダとを有機溶剤等で均質混練したスラリーをシート状に成型したグリーンシートを作製し、所望の導体パターン1001,1101〜1103,1210,1220,1221〜1223,1231〜1233および貫通導体1201〜1203のパターンを金属導体により形成した後、これらグリーンシートを積層し圧着することにより一体形成して焼成することによって作製される。
【0062】
弾性表面波素子101を実装用基板900に実装するためには、環状接地電極801および接続用パッド電極701〜703または環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103上に半田ペースト,Au−Snペースト等からなる接合層をスクリーン印刷等により形成し、両者を対面させて配置後、リフロー溶融させて接合すればよい。
【0063】
このように圧電基板100と実装用基板900と環状接地電極801と環状接地導体1001とによってIDT電極301〜303,501〜503および接続用パッド電極701〜703を気密封止してその気密性を良好に保つことができるので、長期にわたって安定に動作させることができる信頼性の高い弾性表面波装置とすることができる。
【0064】
このような本発明の弾性表面波装置によれば、IDT電極302,303,502,503を接地するまでの経路に環状接地電極801,環状接地導体1001,対称軸Yに対して非対称に形成している貫通接地導体1201,1202を介していることによりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは貫通接地導体1201,1202の設計により調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、インダクタンス成分を形成する貫通接地導体1201,1202は仮想軸Yに対して非対称に形成されていることから、反射器電極401,402,601,602およびIDT電極301〜303,501〜503と貫通接地導体1201,1202とで形成される寄生容量を仮想軸Yの両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703間のインピーダンスが整合するように微調整することができるので、より平衡度の高い弾性表面波装置となる。また、複数段、この例では電極群201と電極群202との2段を縦続接続しているので、各段の定在波の干渉により通過帯域外の減衰量が増大し、帯域外減衰特性の良好な弾性表面波装置となる。さらに、反射器電極401,402,601,602が環状接地電極801を介して接地されていることより、弾性表面波の反射効率が高いものとなり、通過帯域外の減衰特性が良好な弾性表面波装置となる。
【0065】
なお、貫通接地導体1201,1202は平衡信号端子が接合される接続用パッド導体1102,1103より不平衡信号端子に接続される接続用パッド導体1101に近い側に配置されることが好ましい。このような構成とすることにより、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを防ぐことができるので、さらに平衡度の優れたものとすることができる。
【0066】
ここで、図2(a)に示すように、貫通接地導体1201,1202は、仮想軸Yに対して非対称に形成されている、この例では仮想軸Yを挟んで一方側にある貫通接地導体1201と他方側にある貫通接地導体1202とが仮想軸Yに対して非対称に配置されているときには、貫通接地導体1201,1202の位置を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失,低VSWRの優れたものとすることができるので好ましい。また、図2(d)に示すように第2層において貫通接地導体1201,1202を仮想軸Yに対して対称に配置することで、平衡信号端子702,703に異なる寄生容量が発生することをより確実に防ぐことができるので、平衡度の優れたものとすることができる。
【0067】
また、図3(a)〜(f)に示すように、貫通接地導体1201,1202は、少なくとも1つの径が他の径と異なるように、この例では貫通接地導体1202の径が貫通接地導体1201の径に比べて大きくなるように構成すれば、貫通接地導体1201,1202の径を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失,低VSWRの優れたものとすることができるので好ましい。
【0068】
また、図4(a)〜(f)に示すように、貫通接地導体1201,1202は、仮想軸Yの両側で数が異なるように構成してもよい。すなわち、仮想軸Yの一方側に形成される貫通接地導体1201と他方側に形成される貫通接地導体1202との数を異なるようにしてもよい。このような構成とすることで、貫通接地導体1201,1202の数を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、挿入損失,VSWRの優れたものとすることができる。また、貫通接地導体1201,1202を多数設けることでIDT電極302,303,502,503を確実に接地することができるので、通過帯域外のフロアレベルの上昇を防ぎ、フィルタ特性の優れた弾性表面波装置とすることができる。なお、貫通接地導体1201,1202を複数個設けたときには、内部接地導体パターン1210a,1210bは、個々の貫通接地導体1201,1202に対応するようにそれぞれ設けてもよいし、複数個の貫通接地導体1201,1202が一つの内部接地導体パターンに接続されるように一つにつながっているものとしてもよいが、図4(c)に示すように、貫通接地導体1201,1202がそれぞれ接続される内部接地導体パターン1210a,1210bが分離しており、かつ、複数個の貫通接地導体1202が一つの内部接地導体パターン1210bに接続されている場合には、仮想軸Yの両側でそれぞれ独立してインダクタンス成分の大きさを制御できるとともに、内部接地導体パターン1210bの形状・面積を適宜設定することによってさらに精密にインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、平衡度,挿入損失,VSWRの優れたものとすることができる。
【0069】
さらに、貫通接地導体1201,1202は、仮想軸Yに対して非対称に形成されている群に加えて、仮想軸Yに対して対称に形成されている群を有するような構成としてもよい。このような構成とすることで、仮想軸Yに対して対称に形成されている群により、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703と貫通接地導体1201,1202とで形成される容量を仮想軸Yの両側で等しくすることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとすることができる。
【0070】
次に、本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態について、図5および図6を用いて説明する。
【0071】
図5は本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子の例を示す平面図であり、図6は本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板の例を示す平面図であり、(a)〜(f)はそれぞれ実装用基板を構成する各層を示す平面図である。また、図7は本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子の他の例を、図8,図9は本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板の他の例をそれぞれ示す平面図である。なお、図8,図9において実装用基板の上面以外の積層構造は図6(b)〜(f)と同様であるので図示を省略する。
【0072】
図5に示すように、本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子101は、環状接地電極801を仮想軸Yに対して非対称に形成した点以外は、図1に示す本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における弾性表面波素子101と基本構造は同様である。
【0073】
また、本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板900は、図6に示すように複数層を積層した構造となっており、環状接地導体1001を仮想軸Yに対して非対称に形成している点および貫通接地導体1201,1202は仮想軸Yに対して対称に配置されている点以外は図2(a)〜(f)と同様の積層構造とし、重複する説明を省略する。
【0074】
このような圧電基板100の下面と実装用基板900の上面とを対面させて環状接地電極801および接続用パッド電極701〜703がそれぞれ環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103に接合されて、第2の実施形態の弾性表面波装置を得ることができる。
【0075】
このような構成とすることで、IDT電極302,303,502,503を接地するまでの経路に少なくとも一方が対称軸Yに対して非対称に形成される環状接地電極801および環状接地導体1001,貫通接地導体1201,1202を介していることよりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRの優れたフィルタ通過特性を有するものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方の設計により調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。さらに、インダクタンス成分を形成する環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方は、中央に配設されたIDT電極301,501の中心に伝搬方向Xに対して直交する方向に設けた仮想軸Yに対して非対称に形成されていることから、反射器電極401,402,601,602およびIDT電極302,303,502,503と環状接地電極801および環状接地導体1001とで形成される寄生容量を仮想軸Yの両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703間のインピーダンスが整合するように微調整することができるので、より平衡度の高い良好な弾性表面波装置となる。
【0076】
図5および図6に示すように、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方は、仮想軸Yに対して非対称になるように幅が異なる部分を有するように形成されている。このような構成にすることにより、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方の幅を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方が、仮想軸Yに対して非対称に形成されている部分と、仮想軸Yに対して対称に形成されている部分とを有していることより、仮想軸Yに対して対称に形成されている部分により平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703およびこれらが接続される接続用パッド導体1102,1103と、環状接地電極801および環状接地導体1001とで形成される容量を仮想軸Yの両側で等しくすることができ、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0077】
また、図7,図8に示すように、環状接地電極801および環状接地導体1001の、仮想軸Yに対して非対称になるように幅が異なるように形成した部分、この例では環状接地電極801,環状接地導体1101の角部の内周面においてL字型に張り出した形状となるように形成した部分を、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703やこれらが接合される接続用パッド導体1102,1103より不平衡信号端子としての接続用パッド電極701やこれが接合される接続用パッド導体1101に近い側のみに設けることで、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することをさらに確実に防ぐことができるので、さらに平衡度の優れたものとなる。
【0078】
さらに、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方が、仮想軸Yに対して非対称に形成されている部分以外は、弾性表面波素子101の各電極パターンも実装用基板900の内部構造も各導体パターンも、仮想軸Yに対して対称に形成されている方が、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することをさらに確実に抑制することができるので、平衡度が劣化することがないので望ましい。
【0079】
ここで、本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態において、図5や図7に示す弾性表面波素子101を図9に示すような貫通接地導体1201,1202および環状接地導体1001ともに仮想軸Yに対して対称となるように形成された実装用基板900に実装してもよいし、図1に示すような環状接地電極801が仮想軸Yに対して対称となるように形成されている弾性表面波素子101を図6や図8に示す実装用基板900に実装してもよい。
【0080】
また、図5〜図8に示す例では、環状接地電極801および環状接地導体1001の一箇所のみが仮想軸Yに対して非対称に形成されたものについて示したが、非対称に形成された部位を複数箇所において設けてもよい。例えば、環状接地電極801および環状接地導体1001の内周面や外周面に、その一部をレーザで除去して細かい平面凹凸形状を多数個設け、この凹部または凸部の数を仮想軸Yの両側で異なるようにしてもよい。このような細かい平面凹凸形状により環状接地電極801および環状接地導体1001を仮想軸Yの両側で非対称に形成することで、精密にインダクタンス成分の大きさを調整することができる。また、平面凹凸形状は環状接地電極801および環状接地導体1001の内周面・外周面全面に形成してもよいし、一部のみに形成してもよい。例えば、図7や図8の環状接地電極801や環状接地導体1001が仮想軸Yに対して非対称に形成された部位、すなわち内周面でL字型に張り出した部位において細かい平面凹凸形状を設けてもよいし、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703および接続用パッド導体1102,1103の側で環状接地電極801および環状接地導体1001に凹部または凸部を仮想軸Yの両側で数を異ならせて形成してもよい。後者の場合には、2つの平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703やこれらが接合される接続用パッド導体1102,1103と環状接地電極801および環状接地導体1001とで形成される容量を仮想軸Yの両側で異ならせることにより、2つの平衡信号端子間でインピーダンスが整合するように微調整することができ、平衡度の良好な弾性表面波装置とすることができる。また、図6では環状接地電極801および環状接地導体1001を下面接地導体パターン1210a,1210bに接続するために貫通接地導体1201,1202を用いたが、実装用基板900の積層面(外周面)に形成するキャスターなどを用いてもよい。
【0081】
本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態においては貫通接地導体1201,1202のみが、第2の実施形態においては環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方のみが、仮想軸Yに対して非対称に形成されている例につい説明してきたが、これらを組み合わせて、貫通接地導体1201,1202は仮想軸Yに対して非対称に形成されており、かつ環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方は、仮想軸Yに対して非対称に形成されるような構成(以下、本発明の弾性表面波装置の第3の実施形態とする。)にすれば、IDT電極302,303,502,503が接地されるまでの経路に付加するインダクタンス成分の大きさをさらに広い範囲にわたって制御することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものすることができる。
【0082】
このような弾性表面波装置において、貫通接地導体1201,1202を仮想軸Yに対して非対称に形成するには、貫通接地導体1201,1202は、仮想軸Yに対して非対称に配置させてもよいし、少なくとも一つの径がほかのものの径と異なるように形成してもよいし、仮想軸Yの両側で数が異なるように形成してもよいし、仮想軸Yに対して非対称に形成されている群に加えて、仮想軸Yに対して対称に形成されている群を有するように形成してもよい。特に貫通接地導体1201,1202を多数設けて、これらを仮想軸Yに対して非対称となるように配置するときには、IDT電極302,303,502,503を確実に接地することができるので、通過帯域外のフロアレベルの上昇を確実に抑えることができ、フィルタ特性の優れた弾性表面波装置を得ることができるので好ましい。
【0083】
また、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方を仮想軸Yに対して非対称に形成するには、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方は、仮想軸Yに対して非対称になるように幅が異なる部分を有するように形成してもよいし、仮想軸Yに対して対称に形成されている部分と、仮想軸Yに対して対称に形成されている部分を有するように形成してもよい。
【0084】
また、貫通接地導体1201,1202ならびに環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方のうち仮想軸Yに対して非対称に形成されている部分は、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703よりも不平衡信号端子としての接続用パッド電極701に近い側に形成されている、すなわち、複数段の外側の接続用パッド電極701側に形成されているときには、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量を発生することを防ぐことができるので平衡度の優れたものとなり好ましい。
【0085】
このように、本発明の弾性表面波装置の第3の実施形態によれば、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方と貫通接地導体1201,1202とを仮想軸Yに対して非対称に形成することで、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703に影響することなく、IDT電極302,303,502,503が接地されるまでの経路にインダクタンス成分を付加することができ、かつ、このインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れた弾性表面波装置を提供することができる。
【0086】
次に上記のような本発明の弾性表面波装置の第1〜第3の実施形態の変形例について、図10〜図12を用いて説明する。図10〜図12は本発明の弾性表面波装置における弾性表面波素子101の変形例を示す平面図である。以下、図1に示す弾性表面波素子101の構造を基本として、上記の本発明の弾性表面波装置から変更した部分についてのみ説明し、同様の箇所に関する重複する説明を省略して説明する。
【0087】
本発明の弾性表面波装置において、図10に示すように、弾性表面波素子101の不平衡信号端子としての接続用パッド電極701に、この例ではIDT電極301と接続用パッド電極701との間に直列に、伝搬方向Xに沿って、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極1401と、このIDT電極1401の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極1501,1502とを有する弾性表面波共振子1301が接続されていてもよい。このような構成とすることにより、弾性表面波共振子1301の共振周波数が所望の値となるように弾性表面波共振子1301を作製することで、弾性表面波共振子1301に起因する減衰極の位置を制御することができるので、所望の位置に減衰極を形成することができ、通過帯域外の減衰特性の優れたものとすることができる。なお、弾性表面波共振子1301の共振周波数はIDT電極1401の容量とIDT電極1401が接地するまでの経路のインダクタンスとの大きさを調整することで制御することができる。
【0088】
さらに、本発明の弾性表面波装置において、図11に示すように、弾性表面波素子101の平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703に、この例ではIDT電極501と接続用パッド電極702,703との間にそれぞれ直列に、伝搬方向Xに沿って、この伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極1401と、このIDT電極1401の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極1501,1502とを有する弾性表面波共振子1302,1303が接続されていてもよい。このような構成とすることにより、弾性表面波共振子1302,1303の共振周波数が所望の値となるように弾性表面波共振子1302,1303を作製することで、弾性表面波共振子1302,1303に起因する減衰極の位置を制御することができるので、所望の位置に減衰極を形成することができ、通過帯域外の減衰特性の優れたものとすることができる。
【0089】
ここで、弾性表面波共振子1301〜1303は接続用パッド電極701〜703に直列に接続すれば共振周波数付近において高域側に比べて低域側で急峻に減衰するものとなるので、通過帯域の高域側に減衰極を形成することで通過帯域の高域側の減衰特性を良好にすることができ、並列に接続すれば共振周波数付近において低域側に比べて高域側で急峻に減衰するものとなるので、通過帯域の低域側に減衰極を形成することで通過帯域の低域側の減衰特性を良好にすることができるものとなる。このため、所望の減衰特性に合わせて適宜接続方法を選択すればよい。さらに、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703に同一材料からなる同一構造の弾性表面波共振子を接続することにより、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを抑制することができ、平衡度の優れた弾性表面波装置を得ることができる。
【0090】
さらに、本発明の弾性表面波装置において、図12に示すように、弾性表面波素子101の奇数個、この例では3個のIDT電極301〜303,501〜503の間に、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた挿入反射器電極1601〜1604を配設しており、かつこの挿入反射器電極1601〜1604の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する電極指から中央部に位置する前記電極指に向かって漸次短くなっている構成としてもよい。このような構成とすることにより、挿入反射器1601〜1604により振幅モードを増やすことができるとともに、挿入反射器電極1601〜1604の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する電極指から中央部に位置する電極指に向かって漸次短くなっていることにより弾性表面波がバルク波に変換されることを防ぐことができるので、弾性表面波の伝搬を妨げずに振幅モードを増やすことができるので、通過帯域が広帯域な弾性表面波装置を実現することができる。なお、図12においては、電極群201,202の両方に挿入反射器電極1601〜1604を配設したが、電極群201または電極群202のどちらか一方のみに挿入反射器電極を配設してもよい。
【0091】
このような図10〜図12に示す弾性表面波素子101は、図2,図3,図4,図6,図8に示すような実装用基板900に実装してもよいし、図5や図7に示すように環状接地電極801を仮想軸Yに対して非対称に形成してもよい。
【0092】
また、本発明の弾性表面波装置を通信装置に適用することができる。すなわち、本発明の弾性表面波装置をフィルタ手段として用いた、受信回路または送信回路の少なくとも一方を備えたものである。例えば、送信回路から出力された送信信号をミキサでキャリヤ周波数にのせて、不要信号をバンドパスフィルタで減衰させ、その後、パワーアンプで送信信号を増幅して、デュプレクサを通ってアンテナより送信することができる送信回路を備えた通信装置や、受信信号をアンテナで受信し、デュプレクサを通った受信信号をローノイズアンプで増幅し、その後、バンドパスフィルタで不要信号を減衰して、ミキサでキャリヤ周波数から信号を分離し、この信号を取り出す受信回路を備えた通信装置における各種フィルタに本発明の弾性表面波装置を適用可能であり、本発明の弾性表面波装置を採用すれば、感度の優れた通信装置を提供することができる。
【0093】
以上より、本発明の通信装置によれば、優れた弾性表面波装置を有する受信回路や送信回路を備え、それらの感度が格段に良好な優れた通信機等の通信装置を提供できる。
【0094】
なお、本発明の弾性表面波装置および通信装置は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更・改良することができる。例えば環状接地電極801内の領域に異なる通過帯域をもつ2種類以上のIDT電極を設けてもよいし、さらにこの2種類以上のIDT電極を個別に囲うように環状接地電極を設けてもよい。
【実施例】
【0095】
本発明の具体的な実施例について説明する。
【0096】
具体的には、900MHz帯に中心周波数を持つ弾性表面波フィルタとして機能するように、図1に示す弾性表面波素子101を作製し、この弾性表面波素子101を図2に示す実装用基板900に実装して本発明の弾性表面波装置を作製した。
【0097】
まず、38.7°YカットのX方向伝搬とするLiTaO3単結晶の圧電基板100上に、IDT電極301〜303,501〜503と、反射器電極401,402,601,602と、接続パッド電極701〜703と環状接地電極801とのAl(99質量%)−Cu(1質量%)からなる微細電極パターンを形成した。
【0098】
パターン作製は、スパッタリング装置,縮小投影露光機(ステッパー),およびRIE(Reactive Ion Etching)装置を用いてフォトリソグラフィを行なった。
【0099】
まず、圧電基板100をアセトン・IPA(イソプロピルアルコール)等によって超音波洗浄し、有機成分を落とした。次に、クリーンオーブンによって圧電基板100を充分に乾燥させた後、各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801の成膜を行なった。各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801の成膜にはスパッタリング装置を使用し、Al(99質量%)−Cu(1質量%)合金から成る材料を用いて約0.20μmの厚みに形成した。
【0100】
次に、フォトレジストを約0.5μmの厚みにスピンコートして形成し、縮小投影露光装置(ステッパー)により、所望形状にパターニングを行ない、現像装置にて不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させ、所望パターンを表出させた後、RIE装置により電極膜のエッチングを行ない、弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波素子101の各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801のパターンを得た。
【0101】
この後、各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801の所定領域上に保護膜を作製した。すなわち、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置により、各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801のパターンおよび圧電基板100上にSiO2を約0.02μmの厚みに形成した。その後、フォトリソグラフィによってフォトレジストのパターニングを行ない、RIE装置等で電極701〜703,801の形成位置においてフリップチップ用窓開け部のエッチングを行なった。その後、スパッタリング装置を使用し、Alからなる層を約1.0μmの厚みで成膜し、電極701〜703,801の形成位置を除く箇所のAlとフォトレジストとをリフトオフ法により同時に除去し、電極701〜703,801上にフリップチップ用バンプを形成するパッドを完成した。
【0102】
次に、上記パッドに半田からなるフリップチップ用バンプを、スクリーン印刷装置を使用し形成した。接続用パッド電極701〜703上におけるバンプの直径は約80μm,高さは約30μmであり、環状接地電極801上におけるバンプの高さは約30μmであった。
【0103】
次に、圧電基板100をダイシング線に沿ってダイシング加工を施し、個々の弾性表面波素子101に分割した。
【0104】
次に図2に示す実装用基板900を作製した。すなわち、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics:低温同時焼成セラミックス)を作製するために、金属酸化物と有機バインダとを有機溶剤等で均質混練したスラリーをシート状に成型したグリーンシートを作製し、所望の位置に環状接地導体1001,接続用パッド導体1101〜1103,貫通接地導体1201〜1203,内部接地導体パターン1210a,1210b,内部信号導体パターン1221〜1223,下面接地導体パターン1220a,1220b,信号導体パターン1231〜1233のパターンを形成した後、これらグリーンシートを積層し圧着することにより一体形成して焼成することにより作製。なお、実装用基板900のサイズは、2.5×2.0mm角とした。
【0105】
ここで、環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103は弾性表面波素子101の環状接地電極801および接続用パッド電極701〜703に対応するように形成した。また、環状接地導体1001,接続用パッド導体1101〜1103,内部接地導体パターン1210a,1210b,内部信号導体パターン1221〜1223,下面接地導体パターン1220a,1220b,信号導体パターン1231〜1233は、Agを用いて約1μmの厚みにスクリーン印刷法により形成した。貫通接地導体1201〜1203は、金型抜き打ち加工により貫通孔を形成し、Ag系導体ペーストを充填して形成した。
【0106】
このように形成した弾性表面波素子101をフリップチップ実装装置にて圧電基板100の下面(電極形成面)と実装用基板900の上面とを対面させて配置して、リフロー炉にて240℃で5分間リフロー溶融させて半田からなるバンプにより両者を接合することにより、環状接地電極801および各接続用パッド電極701〜703と環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103とをそれぞれ電気的に接続するとともに、環状接地電極801と環状接地導体1001とを接合することより、IDT電極301〜303,501〜503および接続用パッド電極701〜703を気密封止し、弾性表面波装置を完成した。
【0107】
参考例として、図1に示すような、環状接地電極801が対称軸Yに対して対称に形成された弾性表面波素子101を、図9に示すような、貫通接地導体1201,1202および環状接地導体1001が対称軸Yに対して対称に形成された実装用基板900に実装した弾性表面波装置を、上記実施例と同じ材料を用いて、同様の工程で作製した。
【0108】
次に、実施例,参考例における弾性表面波装置の特性測定を行なった。0dBmの信号を入力し、周波数920MHz〜980MHz、測定ポイントが240ポイントの条件にて測定した。サンプル数は30個であり、測定機器はアジレント・テクノロジー社製マルチポート・ネットワークアナライザE5071Aを用いた。
【0109】
実施例では、図2に示すように貫通接地導体1201,1202を仮想軸Yに対して非対称に配置し、IDT電極301〜303,501〜503が接地されるまでの経路に接続されるインダクタンス成分の大きさを0.3nHとした。このように作製した実施例の弾性表面波装置と参考例の弾性表面波装置とにおける入力信号の伝送特性の周波数依存性を示す線図を図13〜図15に示す。図13〜図15において、実線が実施例の弾性表面波装置の特性を示し、破線が参考例の弾性表面波装置の特性を示したものである。
【0110】
図13は伝送特性を表す挿入損失の周波数依存性を示す線図であり、横軸は周波数(MHz),縦軸は挿入損失(dB)である。図13からも明らかなように、実施例の弾性表面波装置は参考例の弾性表面波装置に比べて挿入損失が低く(小さく)なりフィルタ通過特性が向上していることが分かった。
【0111】
また、図14はVSWRの周波数依存性を示す線図であり、横軸は周波数(MHz),縦軸はVSWRである。図14からも明らかなように、実施例の弾性表面波装置は参考例の弾性表面波装置に比べてVSWRが低くなりフィルタ通過特性が向上していることが分かった。
【0112】
これは本発明の実施例のような構成とすることにより、IDT電極302,303,502,503が接地されるまでの経路にインダクタンス成分が接続され(すなわち、弾性表面波装置の下面接地導体パターン1220に接続される接地端子にインダクタンス成分が接続され)、このインダクタンス成分が整合回路と同じ働きをするためである。
【0113】
さらに、図15(a)は振幅平衡度の周波数依存性を,(b)は位相平衡度の周波数依存性をそれぞれ示す線図であり、横軸は周波数(MHz)を、縦軸は、図15(a)においては振幅平衡度(dB)を,図15(b)においては位相平衡度(deg)を示す。図15(a),(b)からも明らかなように、本発明の実施例の弾性表面波装置は参考例の弾性表面波装置と比べても通過帯域付近(930MHz〜970MHz)において平衡度が劣化することはなく、良好であることが確認された。これは、本発明の実施例に示す弾性表面波装置の平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703にそれぞれ異なる寄生容量が付加されることを抑制することができたためと推察される。
【0114】
このように、本発明の弾性表面波装置によれば、平衡度が良好であり、かつ挿入損失が低く、VSWRの低い、すなわちフィルタ通過特性の優れたものとすることができることが分かった。
【0115】
なお、実施例の弾性表面波装置のIDT電極302,303,502,503が接地されるまでの経路に接続されるインダクタンス成分の大きさを変えて伝送特性を測定した結果、インダクタンス成分の大きさは、0.5nH以上とすると平衡度が劣化する傾向にあり、0.1〜0.3nHの範囲であることが望ましいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の弾性表面装置の第1の実施形態における弾性表面波素子の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の一例を示す平面図であり、(a)〜(f)はそれぞれ実装用基板を構成する各層の平面図である。
【図3】(a)〜(f)はそれぞれ本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の他の例を示す各層の平面図である。
【図4】(a)〜(f)はそれぞれ本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の他の例を示す各層の平面図である。
【図5】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子一例を示す平面図である。
【図6】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板の一例を示す平面図であり、(a)〜(f)はそれぞれ実装用基板を構成する各層の平面図である。
【図7】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子の他の例を示す平面図である。
【図8】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板の他の例を示す平面図である。
【図9】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板のさらに他の例を示す平面図である。
【図10】本発明の弾性表面波装置における弾性表面波素子の変形例の一例を示す平面図である。
【図11】本発明の弾性表面波装置における弾性表面波素子の変形例の他の例を示す平面図である。
【図12】本発明の弾性表面波装置における弾性表面波素子の変形例のさらに他の例を示す平面図である。
【図13】本発明の弾性表面波装置の伝送特性を表す挿入損失の周波数依存性を示す線図である。
【図14】本発明の弾性表面波装置のVSWRの周波数依存性を示す線図である。
【図15】(a)は本発明の弾性表面波装置の振幅平衡度の周波数依存性を,(b)は本発明の弾性表面波装置の位相平衡度の周波数依存性をそれぞれ示す線図である。
【図16】不平衡−平衡変換機能を持った従来の弾性表面波フィルタを示す平面図である。
【図17】不平衡−平衡変換機能を持った従来の弾性表面波素子の他の例を示す平面図である。
【図18】図16および図17に示す弾性表面波フィルタおよび弾性表面波素子の挿入損失の周波数依存性を示す線図である。
【図19】図16および図17に示す弾性表面波フィルタおよび弾性表面波素子のVSWRの周波数依存性を示す線図である。
【図20】図16および図17に示す弾性表面波フィルタおよび弾性表面波素子の(a)は振幅平衡度の周波数依存性を、(b)は位相平衡度の周波数依存性をそれぞれ示す線図である。
【符号の説明】
【0117】
100:圧電基板
101:弾性表面波素子
201,202:電極群
301,302,303,501,502,503,1401:IDT電極
401,402,601,602,1501,1502,1601,1602,1603,1604:反射器
701:接続用パッド電極(不平衡信号端子)
702,703:接続用パッド電極(平衡信号端子)
801:環状接地電極
900:実装用基板
1001:環状接地導体
1101:接続用パッド導体(不平衡信号端子)
1102,1103:接続用パッド導体(平衡信号端子)
1201,1202,1203:貫通接地導体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等の移動体通信機器に用いられる弾性表面波フィルタや弾性表面波共振器などの弾性表面波装置およびこれを備えた通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話や自動車電話等の移動体通信機器のRF段に用いられる周波数選択フィルタとして弾性表面波装置が広く用いられている。一般に、周波数選択フィルタに求められる特性としては、広通過帯域・低損失・高減衰特性などが挙げられる。さらに、近年では移動体通信機器の小型・軽量化および低コスト化のため、使用部品の削減が進められ、弾性表面波装置に新たな機能を付加することが要求されてきている。
【0003】
そのような機能の1つに弾性表面波装置を不平衡入力−平衡出力型または平衡入力−不平衡出力型に構成できるようにするといった、平衡−不平衡変換機能がある。ここで平衡入力または平衡出力とは、信号が2つの信号線路間の電位差を有して入力または出力するものをいい、これに対して、不平衡入力または不平衡出力とは、信号がグランド電位に対する1つの線路の電位を有して入力または出力するものをいう。なお、弾性表面波装置に平衡−不平衡変換機能を持たせるためには、平衡信号端子と不平衡信号端子との間の通過帯域内での伝送特性において、各信号線路の信号は振幅が等しく、位相が180度反転していることが必要であり、それぞれ振幅平衡度,位相平衡度(以下、これらをあわせて平衡度という)と呼んでいる。
【0004】
従来の弾性表面波装置は一般的に不平衡入力−不平衡出力型であるため、弾性表面波装置の後段に接続される回路や電子部品が平衡入力型となっている場合は、弾性表面波装置と後段との間に平衡−不平衡変換器(以下、バランともいう)を挿入した回路構成となっていた。同様に弾性表面波装置前段の回路や電子部品が平衡出力型となっている場合は、前段と弾性表面波装置との間にバランを挿入した回路構成となっていた。
【0005】
そこで、このようなバランをなくすことで使用部品を削減するために、弾性表面波装置に平衡−不平衡変換機能を持たせた、不平衡入力−平衡出力型弾性表面波装置または平衡入力−不平衡出力型弾性表面波装置の実用化が進められている。
【0006】
図16にこのような平衡−不平衡変換機能を持たせた従来の弾性表面波フィルタ2001の平面図を示す(特許文献1参照。)。図16に示すように、弾性表面波フィルタ2001において、圧電基板上に、弾性表面波の伝搬方向に沿って3個のIDT(Inter-Digital Transducer)電極2201〜2203を近接配置し、中央のIDT電極2201の一方の櫛歯状電極を不平衡信号端子2510に接続し、中央のIDT電極2201の両側にはIDT電極2202,2203を配設し、これら3個のIDT電極2201〜2203を挟むように反射器電極2301,2302を配置した電極パターン2101と、弾性表面波の伝搬方向に沿って3個のIDT電極2401〜2403を近接配置し、中央のIDT電極2401を2分割し、音響的には縦続接続,電気的には直列接続となるように平衡信号端子2520,2521にそれぞれ接続し、中央のIDT電極2401の両側に互いに極性を反転させたIDT電極2402,2403を配設し、これら3個のIDT電極2401〜2403を挟むように反射器電極2501,2502を配置した電極パターン2102とを縦続接続している。なお、IDT電極2201の不平衡信号端子2510が接続されていない側(他方)の櫛歯状電極およびIDT電極2202,2203,2402,2403において電極パターン2101,2102の外側に位置する櫛歯状電極は接地されている。このような構成により、弾性表面波フィルタ2001に平衡−不平衡変換機能を持たせることができる。また、電極パターン2101,2102を2段縦続接続させることにより、1段目と2段目との定在波の相互干渉により、通過帯域外減衰量を増大させ、減衰特性を向上させることができる。すなわち、同様の特性を持つ弾性表面波フィルタを2段縦続接続構成とすることで、1段目で減衰された信号が2段目でさらに減衰され、通過帯域外減衰量を2倍とすることができる。
【0007】
また、特許文献2では、図17に示すような、平衡−不平衡変換機能を持たせた従来の弾性表面波素子3101が提案されている。ここで、図16に示す弾性表面波フィルタ2001と同様の箇所には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0008】
図17に示すように、弾性表面波素子3101は、図16に示す弾性表面波フィルタ2001と基本構造は同様であり、平衡信号端子2520,2521が接続されるIDT電極2401に隣接する2つのIDT電極2402,2403のうち、中央に位置するIDT電極2401に隣接する最外側電極指が接地されているIDT電極(この例ではIDT電極2402)に近い側に位置する平衡信号端子(この例では平衡信号端子2520)に、圧電基板上またはこの弾性表面波素子3101を実装するパッケージの内部または外部にリアクタンス成分(この例では容量3200)を形成している。このような構成とすることにより平衡度(特に位相平衡度)を改善しようとしたものである。
【特許文献1】特開平11−097966号公報
【特許文献2】特開2004−096244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図18〜図20に、図16に示す弾性表面波フィルタ2001および図17に示す弾性表面波素子3101のフィルタ特性を検証した結果を示す。
【0010】
図18は挿入損失の周波数依存性を、図19はVSWR(電圧定在波比)の周波数依存性をそれぞれ示した線図であり、図20(a)は振幅平衡度の,図20(b)は位相平衡度の周波数依存性を示した線図である。図18〜図20において、実線は図17に示す弾性表面波素子3101において平衡信号端子2520,2521にリアクタンス成分を付加しない構成(すなわち、図16に示す弾性表面波フィルタ2001の構成)の特性を、破線は平衡信号端子2520,2521のどちらか一方にリアクタンス成分として容量3200を並列接続した構成の特性をそれぞれ示している。ここで、破線のうち、長破線は平衡信号端子2520に,短破線は平衡信号端子2521に容量3200を並列接続した構成の特性を示している。これらの図より、図16に示す弾性表面波フィルタ2001および図17に示す弾性表面波素子3101はともに、通過帯域内のうねり(リップル)が大きく、VSWRも大きいことが分かった。これは2つの平衡信号端子2520,2521間でインピーダンスの整合が取れていないためと推察される。また、図17に示す弾性表面波素子3101の平衡度は図16に示す弾性表面波フィルタ2001と比べて改善されていないことが確認された。
【0011】
このように、特許文献1に開示された弾性表面波フィルタ2001および特許文献2に開示された弾性表面波素子3101は、周波数選択フィルタとして求められる挿入損失およびVSWRの各特性が十分ではないという問題点があった。
【0012】
本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低挿入損失および低VSWRである優れたフィルタ通過特性を有するとともに、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置およびこれを備えた通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の弾性表面波装置は、1)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに前記環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記貫通接地導体は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の弾性表面波装置は、2)上記1)の構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の弾性表面波装置は、3)上記1)の構成において、前記貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の弾性表面波装置は、4)上記1)の構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸の両側で数が異なることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の弾性表面波装置は、5)上記1)〜4)のいずれかの構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、前記仮想軸に対して対称に形成されている群を有することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の弾性表面波装置は、6)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の弾性表面波装置は、7)上記6)の構成において、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の弾性表面波装置は、8)上記6)または7)の構成において、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、前記仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の弾性表面波装置は、9)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに前記環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記貫通接地導体は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されており、かつ前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の弾性表面波装置は、10)上記9)の構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に配置されていることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の弾性表面波装置は、11)上記9)の構成において、前記貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の弾性表面波装置は、12)上記9)の構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸の両側で数が異なることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の弾性表面波装置は、13)上記9)の構成において、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有することを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の弾性表面波装置は、14)上記9)〜13)のいずれかの構成において、前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、前記仮想軸に対して対称に形成されている群を有することを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の弾性表面波装置は、15)上記9)〜13)のいずれかの構成において、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、前記仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有することを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明の弾性表面波装置は、16)上記1)〜15)のいずれかの構成において、前記不平衡信号端子に、前記伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、このIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されていることを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明の弾性表面波装置は、17)上記1)〜15)のいずれかの構成において、前記平衡信号端子に、前記伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、このIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されていることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明の弾性表面波装置は、18)上記1)〜17)のいずれかの構成において、前記奇数個のIDT電極の間に、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた挿入反射器電極を配設しており、かつこの挿入反射器電極の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する前記電極指から中央部に位置する前記電極指に向かって漸次短くなっていることを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明の通信装置は、19)上記1)〜18)のいずれかに記載の弾性表面波装置をフィルタ手段として用いた、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の弾性表面波装置によれば、1)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、電極群および接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に環状接地電極と対向する環状接地導体および接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、圧電基板の下面と実装用基板の上面とを対面させて環状接地電極および接続用パッド電極がそれぞれ環状接地導体および接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、初段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、最終段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、初段および最終段の中央に配設されたIDT電極の中心は、伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、貫通接地導体は、この中心を通って伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、IDT電極を接地するまでの経路に環状接地電極,環状接地導体,仮想軸に対して非対称に形成された貫通接地導体を介していることよりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRのフィルタ通過特性の優れたものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは貫通接地導体の設計により調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、インダクタンス成分を形成する貫通接地導体は、中央に配設されたIDT電極の中心に伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、反射器電極およびIDT電極と貫通接地導体とで形成される寄生容量を仮想軸の両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極間のインピーダンスが整合するように微調整することができ、より平衡度の高いものとなる。さらに、複数段が縦続接続されているので、各段の定在波の干渉により通過帯域外の減衰量が増大し、帯域外減衰特性の良好な弾性表面波装置となる。
【0033】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、2)上記1)の構成において、貫通接地導体は、仮想軸に対して非対称に配置されているときには、貫通接地導体の配置を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0034】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、3)上記1)の構成において、貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なるときには、貫通接地導体の径を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0035】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、4)上記1)の構成において、貫通接地導体は、仮想軸の両側で数が異なるときには、貫通接地導体の数を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0036】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、5)上記1)〜4)のいずれかの構成において、貫通接地導体は、仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、仮想軸に対して対称に形成されている群を有するときには、仮想軸に対して対称に形成されている群により、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極と貫通接地導体とで形成される容量を仮想軸の両側で等しくすることができ、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0037】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、6)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、電極群および接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に環状接地電極と対向する環状接地導体および接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体が形成された実装用基板に、圧電基板の下面と実装用基板の上面とを対面させて環状接地電極および接続用パッド電極がそれぞれ環状接地導体および接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、初段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、最終段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、初段および最終段の中央に配設されたIDT電極の中心は、伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、この中心を通って伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、IDT電極を接地するまでの経路に少なくとも一方が仮想軸に対して非対称に形成されている環状接地電極および環状接地導体を介していることよりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方の設計により調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、インダクタンス成分を形成する環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、中央に配設されたIDT電極の中心に伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、反射器電極およびIDT電極と環状接地電極および環状接地導体とで形成される寄生容量を仮想軸の両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極間のインピーダンスが整合するように微調整することができ、より平衡度の高いものとなる。さらに、複数段が縦続接続されているので、各段の定在波の干渉により通過帯域外の減衰量が増大し、帯域外減衰特性の良好な弾性表面波装置となる。
【0038】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、7)上記6)の構成において、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有するときには、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方の幅を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0039】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、8)上記6)または7)の構成において、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有するときには、仮想軸に対して対称に形成されている部分により平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極と環状接地電極および環状接地導体とで形成される容量を仮想軸の両側で等しくすることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0040】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、9)圧電基板の下面に、この圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、これらの奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、この電極群に接続された接続用パッド電極と、電極群および接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に環状接地電極と対向する環状接地導体および接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、圧電基板の下面と実装用基板の上面とを対面させて環状接地電極および接続用パッド電極がそれぞれ環状接地導体および接続用パッド導体に接合されて実装されており、初段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の電極群の中央に配設されたIDT電極は、電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、初段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、最終段の中央に配設されたIDT電極の両側に位置するIDT電極は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極に接続されており、初段および最終段の中央に配設されたIDT電極の中心は、伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、貫通接地導体は、この中心を通って伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されており、かつ環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称に形成されていることから、IDT電極を接地するまでの経路に少なくとも一方が仮想軸に対して非対称に形成されている環状接地電極および環状接地導体,仮想軸に対して非対称に形成されている貫通接地導体を介していることよりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは貫通接地導体と環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方との両方の設計により広い範囲にわたって調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、インダクタンス成分を形成する貫通接地導体と、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方とは、中央に配設されたIDT電極の中心に伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることから、反射器電極およびIDT電極と貫通接地導体および環状接地電極および環状接地導体とで形成される寄生容量を仮想軸の両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極間のインピーダンスが整合するように微調整することができ、より平衡度の高いものとなる。さらに、複数段が縦続接続されているので、各段の定在波の干渉により通過帯域外の減衰量が増大し、帯域外減衰特性の良好な弾性表面波装置となる。
【0041】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、10)上記9)の構成において、貫通接地導体は、仮想軸に対して非対称に配置されているときには、貫通接地導体の配置を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0042】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、11)上記9)の構成において、貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なるときには、貫通接地導体の径を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0043】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、12)上記9)の構成において、貫通接地導体は、仮想軸の両側で数が異なるときには、貫通接地導体の数を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0044】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、13)上記9)の構成において、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有するときには、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方の幅を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。
【0045】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、14)上記9)〜13)のいずれかの構成において、貫通接地導体は、仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、仮想軸に対して対称に形成されている群を有するときには、仮想軸に対して対称に形成されている群により、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極と貫通接地導体とで形成される容量を仮想軸の両側で等しくすることができ、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0046】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、15)上記9)〜13)のいずれかの構成において、環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方は、仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有するときには、仮想軸に対して対称に形成されている部分により、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極と環状接地電極および環状接地導体の少なくとも一方とで形成される容量を仮想軸の両側で等しくすることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0047】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、16)上記1)〜15)のいずれかの構成において、不平衡信号端子に、伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、このIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されているときには、弾性表面波共振子の共振周波数が所望の値となるように弾性表面波共振子を作製することで、弾性表面波共振子に起因する減衰極の位置を制御することができるので、所望の位置に減衰極を形成することができ、通過帯域外の減衰特性の優れたものとなる。
【0048】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、17)上記1)〜15)のいずれの構成において、平衡信号端子に、伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、このIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されているときには、弾性表面波共振子の共振周波数が所望の値となるように弾性表面波共振子を作製することで、弾性表面波共振子に起因する減衰極の位置を制御することができるので、所望の位置に減衰極を形成することができ、通過帯域外の減衰特性の優れたものとなる。
【0049】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、18)上記1)〜17)のいずれかの構成において、奇数個のIDT電極の間に、伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた挿入反射器電極を配設しており、かつこの挿入反射器電極の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する電極指から中央部に位置する電極指に向かって漸次短くなっているときには、挿入反射器電極により振幅モードを増やすことができるとともに、挿入反射器電極の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する電極指から中央部に位置する電極指に向かって漸次短くなっていることにより弾性表面波がバルク波に変換されることを防ぐことができるので、弾性表面波の伝搬を妨げずに振幅モードを増やすことができ、その結果、通過帯域が広帯域なものとなる。
【0050】
また、本発明の通信装置によれば、19)上記1)〜18)のいずれかに記載の弾性表面波装置をフィルタ手段として用いた、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことから、バランを必要としないため小型化が可能で、かつ低挿入損失および低VSWRでフィルタ通過特性の優れた弾性表面波装置を用いることから感度の格段に良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明の弾性表面波装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する図面において同一の箇所には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各電極の大きさや電極間の距離,IDT電極を構成する電極指の本数や間隔等については、説明のために模式的に図示したものである。
【0052】
図1および図2(a)〜(f)に本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態を示す。
【0053】
図1は本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における弾性表面波素子の一例を示す平面図であり、図2は弾性表面波素子が実装される本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の一例を示す平面図であり、(a)〜(f)はそれぞれ実装用基板を構成する各層の平面図である。また、図3(a)〜(f),図4(a)〜(f)はそれぞれ本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の他の例を示す各層の平面図である。
【0054】
図1に示すように、本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における弾性表面波素子101は、圧電基板100の下面に、圧電基板100上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向Xに沿って、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極、この例では3個のIDT電極301〜303と、3個のIDT電極301〜303の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極401,402とからなる電極群201と、圧電基板100上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向Xに沿って、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極、この例では3個のIDT電極501〜503と、3個のIDT電極501〜503の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極601,602とからなる電極群202とが複数段、この例では2段に縦続接続されて配設されており、この電極群201,202に接続された接続用パッド電極701〜703と、電極群201,202および接続用パッド電極701〜703を取り囲む環状接地電極801とを配設して構成される。なお、この例では電極群201,202を2段縦続接続したものについて説明したが、2段以上の複数段であればその段数は自由に設定できる。ただし、段数を増やすと通過帯域外減衰量は増大するが、弾性表面波の伝搬路長が長くなるので伝搬損失が大きくなるため、両者の効果を考慮して段数を決めればよい。
【0055】
この弾性表面波素子101において、初段の電極群201の中央に配設されたIDT電極301は、接続用パッド電極701が不平衡信号端子として接続され、最終段の電極群202の中央に配設されたIDT電極501は、電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに接続用パッド電極702,703が平衡信号端子として接続され、初段の中央に配設されたIDT電極301の両側に位置するIDT電極302,303は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極801に接続されており、最終段の中央に配設されたIDT電極501の両側に位置するIDT電極502,503は、複数段の外側の櫛歯状電極が環状接地電極801に接続されており、初段および最終段の中央に配設されたIDT電極301,501の中心は、伝搬方向Xに直交する方向に揃えて配設されている。ここで、弾性表面波素子101に平衡−不平衡変換機能を持たせるために、IDT電極302,303は互いに逆位相となるように(極性を反転させるように)電極指を設計する。また、初段のIDT電極302と最終段のIDT電極502とをつなぎ、初段のIDT電極303と最終段のIDT電極503とをつなぐように、それぞれの環状接地電極801に接続されていない側の櫛歯状電極を接続して、初段の電極群201と最終段の電極群202とを縦続接続している。なお、3段以上の電極群を縦続接続する場合には、初段と最終段との中央に配置されたIDT電極の中心を揃えるとともに、その他の段の中央に配置されたIDT電極の中心も揃えると、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを防ぐことができるので、さらに平衡度の優れたものとすることができる。
【0056】
なお、この例では、IDT電極302,303,502,503の複数段の外側の櫛歯状電極は、それぞれ反射器電極401,402,601,602を介して環状接地電極801に接続されている。また、接続用パッド電極701〜703は複数段の内側、すなわち電極群201と電極群202との間の領域に形成してもよいが、図1に示すように、複数段の外側に形成すれば、各接続用パッド電極701〜703間の信号の干渉を低減することができ、信号のアイソレーションが良好な弾性表面波装置とすることができる。
【0057】
また、本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板900は、図2(a)に示すように、上面に環状接地電極801と対向する環状接地導体1001および接続用パッド電極701〜703と対向する接続用パッド導体1101〜1103ならびに環状接地導体1001に接続された貫通接地導体1201,1202が形成されている。ここで、貫通接地導体1201,1202は、中央に配設されたIDT電極301,501の中心に伝搬方向Xに対して直交する方向に設けた仮想軸Yに対して非対称に形成されている。
【0058】
実装用基板900は複数層を積層した構造となっている。この例では、上面から順に図2(a)〜(f)に示す各層が積層されており、環状接地導体1001は貫通接地導体1201,1202を介して内部接地導体パターン1210a,1210bに接続し、内部接地導体パターン1210a,1210bを貫通接地導体1201,1202を介して下面接地導体パターン1220a,1220bに接続している。また、接続用パッド導体1101〜1103は貫通接地導体1203を介して内部信号導体パターン1221〜1223に接続し、内部信号導体パターン1221〜1223を貫通接地導体1203を介して下面に形成された信号導体パターン1231〜1233にそれぞれ接続されている。ここで、図2(a)は実装用基板900の上面を、図2(b)は上面側の第1層を、図2(c)は図2(b)に示す第1層と図2(d)に示す第2層との間に形成された内部接地導体パターン形成面を、図2(d)は第2層を、図2(e)は下面接地導体パターン形成面を、2(f)は下面を、それぞれ示す平面図となっている。なお、図2(f)において実線部は下面接地導体パターン1220a,1220bおよび信号導体パターン1231〜1233が露出している部位である。
【0059】
上記のような圧電基板100の下面と実装用基板900の上面とを対面させて環状接地電極801および接続用パッド電極701〜703がそれぞれ環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103に接合されて、本発明の弾性表面波装置を得ることができる。
【0060】
弾性表面波素子101は、タンタル酸リチウム等の圧電基板100の下面に、真空成膜装置等を使って導体膜を成膜し、それをフォトリソグラフィの手法を使ってIDT電極301〜303,501〜503,反射器電極401,402,601,602,接続用パッド電極701〜703および環状接地電極801に加工する、という通常の製造方法で製造することが可能である。なお、IDT電極301〜303,501〜503はアルミニウム等の質量の小さい導体で形成することが好ましい。
【0061】
実装用基板900は、絶縁性の材料からなり、複数の絶縁層を積層したものを用いる。これら絶縁層には例えば、セラミックスやガラスセラミックスが用いられ、セラミックス等の金属酸化物と有機バインダとを有機溶剤等で均質混練したスラリーをシート状に成型したグリーンシートを作製し、所望の導体パターン1001,1101〜1103,1210,1220,1221〜1223,1231〜1233および貫通導体1201〜1203のパターンを金属導体により形成した後、これらグリーンシートを積層し圧着することにより一体形成して焼成することによって作製される。
【0062】
弾性表面波素子101を実装用基板900に実装するためには、環状接地電極801および接続用パッド電極701〜703または環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103上に半田ペースト,Au−Snペースト等からなる接合層をスクリーン印刷等により形成し、両者を対面させて配置後、リフロー溶融させて接合すればよい。
【0063】
このように圧電基板100と実装用基板900と環状接地電極801と環状接地導体1001とによってIDT電極301〜303,501〜503および接続用パッド電極701〜703を気密封止してその気密性を良好に保つことができるので、長期にわたって安定に動作させることができる信頼性の高い弾性表面波装置とすることができる。
【0064】
このような本発明の弾性表面波装置によれば、IDT電極302,303,502,503を接地するまでの経路に環状接地電極801,環状接地導体1001,対称軸Yに対して非対称に形成している貫通接地導体1201,1202を介していることによりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは貫通接地導体1201,1202の設計により調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、インダクタンス成分を形成する貫通接地導体1201,1202は仮想軸Yに対して非対称に形成されていることから、反射器電極401,402,601,602およびIDT電極301〜303,501〜503と貫通接地導体1201,1202とで形成される寄生容量を仮想軸Yの両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703間のインピーダンスが整合するように微調整することができるので、より平衡度の高い弾性表面波装置となる。また、複数段、この例では電極群201と電極群202との2段を縦続接続しているので、各段の定在波の干渉により通過帯域外の減衰量が増大し、帯域外減衰特性の良好な弾性表面波装置となる。さらに、反射器電極401,402,601,602が環状接地電極801を介して接地されていることより、弾性表面波の反射効率が高いものとなり、通過帯域外の減衰特性が良好な弾性表面波装置となる。
【0065】
なお、貫通接地導体1201,1202は平衡信号端子が接合される接続用パッド導体1102,1103より不平衡信号端子に接続される接続用パッド導体1101に近い側に配置されることが好ましい。このような構成とすることにより、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを防ぐことができるので、さらに平衡度の優れたものとすることができる。
【0066】
ここで、図2(a)に示すように、貫通接地導体1201,1202は、仮想軸Yに対して非対称に形成されている、この例では仮想軸Yを挟んで一方側にある貫通接地導体1201と他方側にある貫通接地導体1202とが仮想軸Yに対して非対称に配置されているときには、貫通接地導体1201,1202の位置を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失,低VSWRの優れたものとすることができるので好ましい。また、図2(d)に示すように第2層において貫通接地導体1201,1202を仮想軸Yに対して対称に配置することで、平衡信号端子702,703に異なる寄生容量が発生することをより確実に防ぐことができるので、平衡度の優れたものとすることができる。
【0067】
また、図3(a)〜(f)に示すように、貫通接地導体1201,1202は、少なくとも1つの径が他の径と異なるように、この例では貫通接地導体1202の径が貫通接地導体1201の径に比べて大きくなるように構成すれば、貫通接地導体1201,1202の径を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失,低VSWRの優れたものとすることができるので好ましい。
【0068】
また、図4(a)〜(f)に示すように、貫通接地導体1201,1202は、仮想軸Yの両側で数が異なるように構成してもよい。すなわち、仮想軸Yの一方側に形成される貫通接地導体1201と他方側に形成される貫通接地導体1202との数を異なるようにしてもよい。このような構成とすることで、貫通接地導体1201,1202の数を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、挿入損失,VSWRの優れたものとすることができる。また、貫通接地導体1201,1202を多数設けることでIDT電極302,303,502,503を確実に接地することができるので、通過帯域外のフロアレベルの上昇を防ぎ、フィルタ特性の優れた弾性表面波装置とすることができる。なお、貫通接地導体1201,1202を複数個設けたときには、内部接地導体パターン1210a,1210bは、個々の貫通接地導体1201,1202に対応するようにそれぞれ設けてもよいし、複数個の貫通接地導体1201,1202が一つの内部接地導体パターンに接続されるように一つにつながっているものとしてもよいが、図4(c)に示すように、貫通接地導体1201,1202がそれぞれ接続される内部接地導体パターン1210a,1210bが分離しており、かつ、複数個の貫通接地導体1202が一つの内部接地導体パターン1210bに接続されている場合には、仮想軸Yの両側でそれぞれ独立してインダクタンス成分の大きさを制御できるとともに、内部接地導体パターン1210bの形状・面積を適宜設定することによってさらに精密にインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、平衡度,挿入損失,VSWRの優れたものとすることができる。
【0069】
さらに、貫通接地導体1201,1202は、仮想軸Yに対して非対称に形成されている群に加えて、仮想軸Yに対して対称に形成されている群を有するような構成としてもよい。このような構成とすることで、仮想軸Yに対して対称に形成されている群により、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703と貫通接地導体1201,1202とで形成される容量を仮想軸Yの両側で等しくすることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとすることができる。
【0070】
次に、本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態について、図5および図6を用いて説明する。
【0071】
図5は本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子の例を示す平面図であり、図6は本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板の例を示す平面図であり、(a)〜(f)はそれぞれ実装用基板を構成する各層を示す平面図である。また、図7は本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子の他の例を、図8,図9は本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板の他の例をそれぞれ示す平面図である。なお、図8,図9において実装用基板の上面以外の積層構造は図6(b)〜(f)と同様であるので図示を省略する。
【0072】
図5に示すように、本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子101は、環状接地電極801を仮想軸Yに対して非対称に形成した点以外は、図1に示す本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における弾性表面波素子101と基本構造は同様である。
【0073】
また、本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板900は、図6に示すように複数層を積層した構造となっており、環状接地導体1001を仮想軸Yに対して非対称に形成している点および貫通接地導体1201,1202は仮想軸Yに対して対称に配置されている点以外は図2(a)〜(f)と同様の積層構造とし、重複する説明を省略する。
【0074】
このような圧電基板100の下面と実装用基板900の上面とを対面させて環状接地電極801および接続用パッド電極701〜703がそれぞれ環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103に接合されて、第2の実施形態の弾性表面波装置を得ることができる。
【0075】
このような構成とすることで、IDT電極302,303,502,503を接地するまでの経路に少なくとも一方が対称軸Yに対して非対称に形成される環状接地電極801および環状接地導体1001,貫通接地導体1201,1202を介していることよりインダクタンス成分が接続されていることとなるので、これらのインダクタンス成分が整合回路の働きをし、その結果、低挿入損失および低VSWRの優れたフィルタ通過特性を有するものとなる。また、このようなインダクタンス成分の大きさは環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方の設計により調整することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。さらに、インダクタンス成分を形成する環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方は、中央に配設されたIDT電極301,501の中心に伝搬方向Xに対して直交する方向に設けた仮想軸Yに対して非対称に形成されていることから、反射器電極401,402,601,602およびIDT電極302,303,502,503と環状接地電極801および環状接地導体1001とで形成される寄生容量を仮想軸Yの両側で異ならせることができるので、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703間のインピーダンスが整合するように微調整することができるので、より平衡度の高い良好な弾性表面波装置となる。
【0076】
図5および図6に示すように、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方は、仮想軸Yに対して非対称になるように幅が異なる部分を有するように形成されている。このような構成にすることにより、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方の幅を適宜設定することでインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、所望の整合回路としての機能を得ることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものを生産性良く得ることができるものとなる。また、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方が、仮想軸Yに対して非対称に形成されている部分と、仮想軸Yに対して対称に形成されている部分とを有していることより、仮想軸Yに対して対称に形成されている部分により平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703およびこれらが接続される接続用パッド導体1102,1103と、環状接地電極801および環状接地導体1001とで形成される容量を仮想軸Yの両側で等しくすることができ、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを抑制することができるので、平衡度の優れたものとなる。
【0077】
また、図7,図8に示すように、環状接地電極801および環状接地導体1001の、仮想軸Yに対して非対称になるように幅が異なるように形成した部分、この例では環状接地電極801,環状接地導体1101の角部の内周面においてL字型に張り出した形状となるように形成した部分を、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703やこれらが接合される接続用パッド導体1102,1103より不平衡信号端子としての接続用パッド電極701やこれが接合される接続用パッド導体1101に近い側のみに設けることで、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することをさらに確実に防ぐことができるので、さらに平衡度の優れたものとなる。
【0078】
さらに、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方が、仮想軸Yに対して非対称に形成されている部分以外は、弾性表面波素子101の各電極パターンも実装用基板900の内部構造も各導体パターンも、仮想軸Yに対して対称に形成されている方が、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することをさらに確実に抑制することができるので、平衡度が劣化することがないので望ましい。
【0079】
ここで、本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態において、図5や図7に示す弾性表面波素子101を図9に示すような貫通接地導体1201,1202および環状接地導体1001ともに仮想軸Yに対して対称となるように形成された実装用基板900に実装してもよいし、図1に示すような環状接地電極801が仮想軸Yに対して対称となるように形成されている弾性表面波素子101を図6や図8に示す実装用基板900に実装してもよい。
【0080】
また、図5〜図8に示す例では、環状接地電極801および環状接地導体1001の一箇所のみが仮想軸Yに対して非対称に形成されたものについて示したが、非対称に形成された部位を複数箇所において設けてもよい。例えば、環状接地電極801および環状接地導体1001の内周面や外周面に、その一部をレーザで除去して細かい平面凹凸形状を多数個設け、この凹部または凸部の数を仮想軸Yの両側で異なるようにしてもよい。このような細かい平面凹凸形状により環状接地電極801および環状接地導体1001を仮想軸Yの両側で非対称に形成することで、精密にインダクタンス成分の大きさを調整することができる。また、平面凹凸形状は環状接地電極801および環状接地導体1001の内周面・外周面全面に形成してもよいし、一部のみに形成してもよい。例えば、図7や図8の環状接地電極801や環状接地導体1001が仮想軸Yに対して非対称に形成された部位、すなわち内周面でL字型に張り出した部位において細かい平面凹凸形状を設けてもよいし、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703および接続用パッド導体1102,1103の側で環状接地電極801および環状接地導体1001に凹部または凸部を仮想軸Yの両側で数を異ならせて形成してもよい。後者の場合には、2つの平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703やこれらが接合される接続用パッド導体1102,1103と環状接地電極801および環状接地導体1001とで形成される容量を仮想軸Yの両側で異ならせることにより、2つの平衡信号端子間でインピーダンスが整合するように微調整することができ、平衡度の良好な弾性表面波装置とすることができる。また、図6では環状接地電極801および環状接地導体1001を下面接地導体パターン1210a,1210bに接続するために貫通接地導体1201,1202を用いたが、実装用基板900の積層面(外周面)に形成するキャスターなどを用いてもよい。
【0081】
本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態においては貫通接地導体1201,1202のみが、第2の実施形態においては環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方のみが、仮想軸Yに対して非対称に形成されている例につい説明してきたが、これらを組み合わせて、貫通接地導体1201,1202は仮想軸Yに対して非対称に形成されており、かつ環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方は、仮想軸Yに対して非対称に形成されるような構成(以下、本発明の弾性表面波装置の第3の実施形態とする。)にすれば、IDT電極302,303,502,503が接地されるまでの経路に付加するインダクタンス成分の大きさをさらに広い範囲にわたって制御することができるので、所望の整合回路としての機能を持たせることができ、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れたものすることができる。
【0082】
このような弾性表面波装置において、貫通接地導体1201,1202を仮想軸Yに対して非対称に形成するには、貫通接地導体1201,1202は、仮想軸Yに対して非対称に配置させてもよいし、少なくとも一つの径がほかのものの径と異なるように形成してもよいし、仮想軸Yの両側で数が異なるように形成してもよいし、仮想軸Yに対して非対称に形成されている群に加えて、仮想軸Yに対して対称に形成されている群を有するように形成してもよい。特に貫通接地導体1201,1202を多数設けて、これらを仮想軸Yに対して非対称となるように配置するときには、IDT電極302,303,502,503を確実に接地することができるので、通過帯域外のフロアレベルの上昇を確実に抑えることができ、フィルタ特性の優れた弾性表面波装置を得ることができるので好ましい。
【0083】
また、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方を仮想軸Yに対して非対称に形成するには、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方は、仮想軸Yに対して非対称になるように幅が異なる部分を有するように形成してもよいし、仮想軸Yに対して対称に形成されている部分と、仮想軸Yに対して対称に形成されている部分を有するように形成してもよい。
【0084】
また、貫通接地導体1201,1202ならびに環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方のうち仮想軸Yに対して非対称に形成されている部分は、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703よりも不平衡信号端子としての接続用パッド電極701に近い側に形成されている、すなわち、複数段の外側の接続用パッド電極701側に形成されているときには、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量を発生することを防ぐことができるので平衡度の優れたものとなり好ましい。
【0085】
このように、本発明の弾性表面波装置の第3の実施形態によれば、環状接地電極801および環状接地導体1001の少なくとも一方と貫通接地導体1201,1202とを仮想軸Yに対して非対称に形成することで、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703に影響することなく、IDT電極302,303,502,503が接地されるまでの経路にインダクタンス成分を付加することができ、かつ、このインダクタンス成分の大きさを制御することができるので、低挿入損失および低VSWRとなりフィルタ通過特性の優れた弾性表面波装置を提供することができる。
【0086】
次に上記のような本発明の弾性表面波装置の第1〜第3の実施形態の変形例について、図10〜図12を用いて説明する。図10〜図12は本発明の弾性表面波装置における弾性表面波素子101の変形例を示す平面図である。以下、図1に示す弾性表面波素子101の構造を基本として、上記の本発明の弾性表面波装置から変更した部分についてのみ説明し、同様の箇所に関する重複する説明を省略して説明する。
【0087】
本発明の弾性表面波装置において、図10に示すように、弾性表面波素子101の不平衡信号端子としての接続用パッド電極701に、この例ではIDT電極301と接続用パッド電極701との間に直列に、伝搬方向Xに沿って、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極1401と、このIDT電極1401の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極1501,1502とを有する弾性表面波共振子1301が接続されていてもよい。このような構成とすることにより、弾性表面波共振子1301の共振周波数が所望の値となるように弾性表面波共振子1301を作製することで、弾性表面波共振子1301に起因する減衰極の位置を制御することができるので、所望の位置に減衰極を形成することができ、通過帯域外の減衰特性の優れたものとすることができる。なお、弾性表面波共振子1301の共振周波数はIDT電極1401の容量とIDT電極1401が接地するまでの経路のインダクタンスとの大きさを調整することで制御することができる。
【0088】
さらに、本発明の弾性表面波装置において、図11に示すように、弾性表面波素子101の平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703に、この例ではIDT電極501と接続用パッド電極702,703との間にそれぞれ直列に、伝搬方向Xに沿って、この伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極1401と、このIDT電極1401の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極1501,1502とを有する弾性表面波共振子1302,1303が接続されていてもよい。このような構成とすることにより、弾性表面波共振子1302,1303の共振周波数が所望の値となるように弾性表面波共振子1302,1303を作製することで、弾性表面波共振子1302,1303に起因する減衰極の位置を制御することができるので、所望の位置に減衰極を形成することができ、通過帯域外の減衰特性の優れたものとすることができる。
【0089】
ここで、弾性表面波共振子1301〜1303は接続用パッド電極701〜703に直列に接続すれば共振周波数付近において高域側に比べて低域側で急峻に減衰するものとなるので、通過帯域の高域側に減衰極を形成することで通過帯域の高域側の減衰特性を良好にすることができ、並列に接続すれば共振周波数付近において低域側に比べて高域側で急峻に減衰するものとなるので、通過帯域の低域側に減衰極を形成することで通過帯域の低域側の減衰特性を良好にすることができるものとなる。このため、所望の減衰特性に合わせて適宜接続方法を選択すればよい。さらに、平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703に同一材料からなる同一構造の弾性表面波共振子を接続することにより、平衡信号端子としての2つの接続用パッド電極702,703に異なる寄生容量が発生することを抑制することができ、平衡度の優れた弾性表面波装置を得ることができる。
【0090】
さらに、本発明の弾性表面波装置において、図12に示すように、弾性表面波素子101の奇数個、この例では3個のIDT電極301〜303,501〜503の間に、伝搬方向Xに対して直交する方向に長い電極指を複数備えた挿入反射器電極1601〜1604を配設しており、かつこの挿入反射器電極1601〜1604の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する電極指から中央部に位置する前記電極指に向かって漸次短くなっている構成としてもよい。このような構成とすることにより、挿入反射器1601〜1604により振幅モードを増やすことができるとともに、挿入反射器電極1601〜1604の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する電極指から中央部に位置する電極指に向かって漸次短くなっていることにより弾性表面波がバルク波に変換されることを防ぐことができるので、弾性表面波の伝搬を妨げずに振幅モードを増やすことができるので、通過帯域が広帯域な弾性表面波装置を実現することができる。なお、図12においては、電極群201,202の両方に挿入反射器電極1601〜1604を配設したが、電極群201または電極群202のどちらか一方のみに挿入反射器電極を配設してもよい。
【0091】
このような図10〜図12に示す弾性表面波素子101は、図2,図3,図4,図6,図8に示すような実装用基板900に実装してもよいし、図5や図7に示すように環状接地電極801を仮想軸Yに対して非対称に形成してもよい。
【0092】
また、本発明の弾性表面波装置を通信装置に適用することができる。すなわち、本発明の弾性表面波装置をフィルタ手段として用いた、受信回路または送信回路の少なくとも一方を備えたものである。例えば、送信回路から出力された送信信号をミキサでキャリヤ周波数にのせて、不要信号をバンドパスフィルタで減衰させ、その後、パワーアンプで送信信号を増幅して、デュプレクサを通ってアンテナより送信することができる送信回路を備えた通信装置や、受信信号をアンテナで受信し、デュプレクサを通った受信信号をローノイズアンプで増幅し、その後、バンドパスフィルタで不要信号を減衰して、ミキサでキャリヤ周波数から信号を分離し、この信号を取り出す受信回路を備えた通信装置における各種フィルタに本発明の弾性表面波装置を適用可能であり、本発明の弾性表面波装置を採用すれば、感度の優れた通信装置を提供することができる。
【0093】
以上より、本発明の通信装置によれば、優れた弾性表面波装置を有する受信回路や送信回路を備え、それらの感度が格段に良好な優れた通信機等の通信装置を提供できる。
【0094】
なお、本発明の弾性表面波装置および通信装置は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更・改良することができる。例えば環状接地電極801内の領域に異なる通過帯域をもつ2種類以上のIDT電極を設けてもよいし、さらにこの2種類以上のIDT電極を個別に囲うように環状接地電極を設けてもよい。
【実施例】
【0095】
本発明の具体的な実施例について説明する。
【0096】
具体的には、900MHz帯に中心周波数を持つ弾性表面波フィルタとして機能するように、図1に示す弾性表面波素子101を作製し、この弾性表面波素子101を図2に示す実装用基板900に実装して本発明の弾性表面波装置を作製した。
【0097】
まず、38.7°YカットのX方向伝搬とするLiTaO3単結晶の圧電基板100上に、IDT電極301〜303,501〜503と、反射器電極401,402,601,602と、接続パッド電極701〜703と環状接地電極801とのAl(99質量%)−Cu(1質量%)からなる微細電極パターンを形成した。
【0098】
パターン作製は、スパッタリング装置,縮小投影露光機(ステッパー),およびRIE(Reactive Ion Etching)装置を用いてフォトリソグラフィを行なった。
【0099】
まず、圧電基板100をアセトン・IPA(イソプロピルアルコール)等によって超音波洗浄し、有機成分を落とした。次に、クリーンオーブンによって圧電基板100を充分に乾燥させた後、各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801の成膜を行なった。各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801の成膜にはスパッタリング装置を使用し、Al(99質量%)−Cu(1質量%)合金から成る材料を用いて約0.20μmの厚みに形成した。
【0100】
次に、フォトレジストを約0.5μmの厚みにスピンコートして形成し、縮小投影露光装置(ステッパー)により、所望形状にパターニングを行ない、現像装置にて不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させ、所望パターンを表出させた後、RIE装置により電極膜のエッチングを行ない、弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波素子101の各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801のパターンを得た。
【0101】
この後、各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801の所定領域上に保護膜を作製した。すなわち、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置により、各電極301〜303,401,402,501〜503,601,602,701〜703,801のパターンおよび圧電基板100上にSiO2を約0.02μmの厚みに形成した。その後、フォトリソグラフィによってフォトレジストのパターニングを行ない、RIE装置等で電極701〜703,801の形成位置においてフリップチップ用窓開け部のエッチングを行なった。その後、スパッタリング装置を使用し、Alからなる層を約1.0μmの厚みで成膜し、電極701〜703,801の形成位置を除く箇所のAlとフォトレジストとをリフトオフ法により同時に除去し、電極701〜703,801上にフリップチップ用バンプを形成するパッドを完成した。
【0102】
次に、上記パッドに半田からなるフリップチップ用バンプを、スクリーン印刷装置を使用し形成した。接続用パッド電極701〜703上におけるバンプの直径は約80μm,高さは約30μmであり、環状接地電極801上におけるバンプの高さは約30μmであった。
【0103】
次に、圧電基板100をダイシング線に沿ってダイシング加工を施し、個々の弾性表面波素子101に分割した。
【0104】
次に図2に示す実装用基板900を作製した。すなわち、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics:低温同時焼成セラミックス)を作製するために、金属酸化物と有機バインダとを有機溶剤等で均質混練したスラリーをシート状に成型したグリーンシートを作製し、所望の位置に環状接地導体1001,接続用パッド導体1101〜1103,貫通接地導体1201〜1203,内部接地導体パターン1210a,1210b,内部信号導体パターン1221〜1223,下面接地導体パターン1220a,1220b,信号導体パターン1231〜1233のパターンを形成した後、これらグリーンシートを積層し圧着することにより一体形成して焼成することにより作製。なお、実装用基板900のサイズは、2.5×2.0mm角とした。
【0105】
ここで、環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103は弾性表面波素子101の環状接地電極801および接続用パッド電極701〜703に対応するように形成した。また、環状接地導体1001,接続用パッド導体1101〜1103,内部接地導体パターン1210a,1210b,内部信号導体パターン1221〜1223,下面接地導体パターン1220a,1220b,信号導体パターン1231〜1233は、Agを用いて約1μmの厚みにスクリーン印刷法により形成した。貫通接地導体1201〜1203は、金型抜き打ち加工により貫通孔を形成し、Ag系導体ペーストを充填して形成した。
【0106】
このように形成した弾性表面波素子101をフリップチップ実装装置にて圧電基板100の下面(電極形成面)と実装用基板900の上面とを対面させて配置して、リフロー炉にて240℃で5分間リフロー溶融させて半田からなるバンプにより両者を接合することにより、環状接地電極801および各接続用パッド電極701〜703と環状接地導体1001および接続用パッド導体1101〜1103とをそれぞれ電気的に接続するとともに、環状接地電極801と環状接地導体1001とを接合することより、IDT電極301〜303,501〜503および接続用パッド電極701〜703を気密封止し、弾性表面波装置を完成した。
【0107】
参考例として、図1に示すような、環状接地電極801が対称軸Yに対して対称に形成された弾性表面波素子101を、図9に示すような、貫通接地導体1201,1202および環状接地導体1001が対称軸Yに対して対称に形成された実装用基板900に実装した弾性表面波装置を、上記実施例と同じ材料を用いて、同様の工程で作製した。
【0108】
次に、実施例,参考例における弾性表面波装置の特性測定を行なった。0dBmの信号を入力し、周波数920MHz〜980MHz、測定ポイントが240ポイントの条件にて測定した。サンプル数は30個であり、測定機器はアジレント・テクノロジー社製マルチポート・ネットワークアナライザE5071Aを用いた。
【0109】
実施例では、図2に示すように貫通接地導体1201,1202を仮想軸Yに対して非対称に配置し、IDT電極301〜303,501〜503が接地されるまでの経路に接続されるインダクタンス成分の大きさを0.3nHとした。このように作製した実施例の弾性表面波装置と参考例の弾性表面波装置とにおける入力信号の伝送特性の周波数依存性を示す線図を図13〜図15に示す。図13〜図15において、実線が実施例の弾性表面波装置の特性を示し、破線が参考例の弾性表面波装置の特性を示したものである。
【0110】
図13は伝送特性を表す挿入損失の周波数依存性を示す線図であり、横軸は周波数(MHz),縦軸は挿入損失(dB)である。図13からも明らかなように、実施例の弾性表面波装置は参考例の弾性表面波装置に比べて挿入損失が低く(小さく)なりフィルタ通過特性が向上していることが分かった。
【0111】
また、図14はVSWRの周波数依存性を示す線図であり、横軸は周波数(MHz),縦軸はVSWRである。図14からも明らかなように、実施例の弾性表面波装置は参考例の弾性表面波装置に比べてVSWRが低くなりフィルタ通過特性が向上していることが分かった。
【0112】
これは本発明の実施例のような構成とすることにより、IDT電極302,303,502,503が接地されるまでの経路にインダクタンス成分が接続され(すなわち、弾性表面波装置の下面接地導体パターン1220に接続される接地端子にインダクタンス成分が接続され)、このインダクタンス成分が整合回路と同じ働きをするためである。
【0113】
さらに、図15(a)は振幅平衡度の周波数依存性を,(b)は位相平衡度の周波数依存性をそれぞれ示す線図であり、横軸は周波数(MHz)を、縦軸は、図15(a)においては振幅平衡度(dB)を,図15(b)においては位相平衡度(deg)を示す。図15(a),(b)からも明らかなように、本発明の実施例の弾性表面波装置は参考例の弾性表面波装置と比べても通過帯域付近(930MHz〜970MHz)において平衡度が劣化することはなく、良好であることが確認された。これは、本発明の実施例に示す弾性表面波装置の平衡信号端子としての接続用パッド電極702,703にそれぞれ異なる寄生容量が付加されることを抑制することができたためと推察される。
【0114】
このように、本発明の弾性表面波装置によれば、平衡度が良好であり、かつ挿入損失が低く、VSWRの低い、すなわちフィルタ通過特性の優れたものとすることができることが分かった。
【0115】
なお、実施例の弾性表面波装置のIDT電極302,303,502,503が接地されるまでの経路に接続されるインダクタンス成分の大きさを変えて伝送特性を測定した結果、インダクタンス成分の大きさは、0.5nH以上とすると平衡度が劣化する傾向にあり、0.1〜0.3nHの範囲であることが望ましいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の弾性表面装置の第1の実施形態における弾性表面波素子の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の一例を示す平面図であり、(a)〜(f)はそれぞれ実装用基板を構成する各層の平面図である。
【図3】(a)〜(f)はそれぞれ本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の他の例を示す各層の平面図である。
【図4】(a)〜(f)はそれぞれ本発明の弾性表面波装置の第1の実施形態における実装用基板の他の例を示す各層の平面図である。
【図5】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子一例を示す平面図である。
【図6】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板の一例を示す平面図であり、(a)〜(f)はそれぞれ実装用基板を構成する各層の平面図である。
【図7】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における弾性表面波素子の他の例を示す平面図である。
【図8】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板の他の例を示す平面図である。
【図9】本発明の弾性表面波装置の第2の実施形態における実装用基板のさらに他の例を示す平面図である。
【図10】本発明の弾性表面波装置における弾性表面波素子の変形例の一例を示す平面図である。
【図11】本発明の弾性表面波装置における弾性表面波素子の変形例の他の例を示す平面図である。
【図12】本発明の弾性表面波装置における弾性表面波素子の変形例のさらに他の例を示す平面図である。
【図13】本発明の弾性表面波装置の伝送特性を表す挿入損失の周波数依存性を示す線図である。
【図14】本発明の弾性表面波装置のVSWRの周波数依存性を示す線図である。
【図15】(a)は本発明の弾性表面波装置の振幅平衡度の周波数依存性を,(b)は本発明の弾性表面波装置の位相平衡度の周波数依存性をそれぞれ示す線図である。
【図16】不平衡−平衡変換機能を持った従来の弾性表面波フィルタを示す平面図である。
【図17】不平衡−平衡変換機能を持った従来の弾性表面波素子の他の例を示す平面図である。
【図18】図16および図17に示す弾性表面波フィルタおよび弾性表面波素子の挿入損失の周波数依存性を示す線図である。
【図19】図16および図17に示す弾性表面波フィルタおよび弾性表面波素子のVSWRの周波数依存性を示す線図である。
【図20】図16および図17に示す弾性表面波フィルタおよび弾性表面波素子の(a)は振幅平衡度の周波数依存性を、(b)は位相平衡度の周波数依存性をそれぞれ示す線図である。
【符号の説明】
【0117】
100:圧電基板
101:弾性表面波素子
201,202:電極群
301,302,303,501,502,503,1401:IDT電極
401,402,601,602,1501,1502,1601,1602,1603,1604:反射器
701:接続用パッド電極(不平衡信号端子)
702,703:接続用パッド電極(平衡信号端子)
801:環状接地電極
900:実装用基板
1001:環状接地導体
1101:接続用パッド導体(不平衡信号端子)
1102,1103:接続用パッド導体(平衡信号端子)
1201,1202,1203:貫通接地導体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の下面に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、該電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに前記環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、
初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、
前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記貫通接地導体は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
前記貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸の両側で数が異なることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、前記仮想軸に対して対称に形成されている群を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項6】
圧電基板の下面に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、該電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、
初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、
前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項7】
前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有することを特徴とする請求項6に記載の弾性表面波装置。
【請求項8】
前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、前記仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有することを特徴とする請求項6または請求項7記載の弾性表面波装置。
【請求項9】
圧電基板の下面に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、該電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに前記環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、
初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、
前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記貫通接地導体は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されており、かつ前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項10】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波装置。
【請求項11】
前記貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なることを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波装置。
【請求項12】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸の両側で数が異なることを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波装置。
【請求項13】
前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有することを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波装置。
【請求項14】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、前記仮想軸に対して対称に形成されている群を有することを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項15】
前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、前記仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有することを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項16】
前記不平衡信号端子に、前記伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、該IDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項17】
前記平衡信号端子に、前記伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、該IDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項18】
前記奇数個のIDT電極の間に、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた挿入反射器電極を配設しており、かつ該挿入反射器電極の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する前記電極指から中央部に位置する前記電極指に向かって漸次短くなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれかに記載の弾性表面波装置をフィルタ手段として用いた、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項1】
圧電基板の下面に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、該電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに前記環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、
初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、
前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記貫通接地導体は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
前記貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸の両側で数が異なることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、前記仮想軸に対して対称に形成されている群を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項6】
圧電基板の下面に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、該電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、
初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、
前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項7】
前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有することを特徴とする請求項6に記載の弾性表面波装置。
【請求項8】
前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、前記仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有することを特徴とする請求項6または請求項7記載の弾性表面波装置。
【請求項9】
圧電基板の下面に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とからなる電極群が複数段、縦続接続されて配設されているとともに、該電極群に接続された接続用パッド電極と、前記電極群および前記接続用パッド電極を取り囲む環状接地電極とを配設してなる弾性表面波素子が、上面に前記環状接地電極と対向する環状接地導体および前記接続用パッド電極と対向する接続用パッド導体ならびに前記環状接地導体に接続された貫通接地導体が形成された実装用基板に、前記圧電基板の前記下面と前記実装用基板の前記上面とを対面させて前記環状接地電極および前記接続用パッド電極がそれぞれ前記環状接地導体および前記接続用パッド導体に接合されて実装されており、
初段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記接続用パッド電極が不平衡信号端子として接続され、最終段の前記電極群の中央に配設された前記IDT電極は、前記電極指をそれぞれ有して相対する櫛歯状電極のうちの一方が2分割されてそれぞれに前記接続用パッド電極が平衡信号端子として接続され、前記初段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、前記最終段の中央に配設された前記IDT電極の両側に位置する前記IDT電極は、前記複数段の外側の前記櫛歯状電極が前記環状接地電極に接続されており、
前記初段および最終段の中央に配設された前記IDT電極の中心は、前記伝搬方向に対して直交する方向に揃えて配設されており、前記貫通接地導体は、この中心を通って前記伝搬方向に対して直交する方向に設けた仮想軸に対して非対称に形成されており、かつ前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項10】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波装置。
【請求項11】
前記貫通接地導体は、少なくとも1つの径が他のものの径と異なることを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波装置。
【請求項12】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸の両側で数が異なることを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波装置。
【請求項13】
前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称になるように幅が異なる部分を有することを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波装置。
【請求項14】
前記貫通接地導体は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている群に加えて、前記仮想軸に対して対称に形成されている群を有することを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項15】
前記環状接地電極および前記環状接地導体の少なくとも一方は、前記仮想軸に対して非対称に形成されている部分と、前記仮想軸に対して対称に形成されている部分とを有することを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項16】
前記不平衡信号端子に、前記伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、該IDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項17】
前記平衡信号端子に、前記伝搬方向に沿って、該伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた1個のIDT電極と、該IDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項18】
前記奇数個のIDT電極の間に、前記伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を複数備えた挿入反射器電極を配設しており、かつ該挿入反射器電極の隣り合う電極指の中心間距離が、両端部に位置する前記電極指から中央部に位置する前記電極指に向かって漸次短くなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれかに記載の弾性表面波装置。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれかに記載の弾性表面波装置をフィルタ手段として用いた、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことを特徴とする通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図5】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−180334(P2006−180334A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373172(P2004−373172)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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