説明

弾性表面波装置の製造方法、及び弾性表面波装置

【課題】励振電極に保護膜が被覆された際に、SAW装置の周波数温度特性が良好となるSAW装置を提供する。
【解決手段】上記課題を達成するためのSAW装置は、カット角がオイラー角表示で(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の範囲内にある事を基本とする面内回転STカット水晶基板(圧電基板)を用いたSAW装置である。そして、設定された共振周波数において所望する周波数温度特性を得るために必要とされる前記圧電基板のカット角に、圧電基板の主面に構成する励振電極本体に対する保護膜付与の影響による周波数温度特性の変化量に基づいて予め求めた面内回転角ψの補正量Δψを加えたカット角によって構成した圧電基板12と、圧電基板12の主面に形成された励振電極本体18と、補正量Δψによる周波数温度特性の変化量に対応した膜厚に設定されて励振電極本体18に付与される保護膜20とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置の製造方法、及び弾性表面波装置に係り、特に弾性表面波装置の周波数温度特性を向上させることに好適な弾性表面波装置の製造方法、及び弾性表面波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧電デバイスの中でも、水晶基板によって構成される素子片を用いたものは、周波数温度特性(温度変化に対する周波数変動特性)が良好であることが知られている。そして、水晶振動片を用いた圧電デバイスの中でも、振動片として、ATカット水晶基板を用いたATカット水晶振動子は、特に周波数温度特性が良好であることも知られている。
【0003】
また、圧電デバイスの分野では、励起する振動の高周波数化が望まれており、これに対応して、高周波を励起可能な構成とした振動片としては、STカット水晶基板を採用した弾性表面波(SAW:surface acoustic wave)素子片を用いた弾性表面波装置(SAW装置)が知られている。しかし、SAW素子片を用いたSAW装置は、ATカット水晶振動片を用いたAT振動子に比べて周波数温度特性が悪い。このため、SAW装置の周波数温度特性を改善するための技術が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、STカット水晶基板に特定の面内回転角ψを与えることにより、SAW装置の周波数温度特性を改善することが提案されている。
【特許文献1】特許第3622202号公報
【特許文献2】特開2005−57666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるように、STカット水晶基板によって構成されるSAW素子片の面内回転角ψを適正に変化させることによれば、確かにSAW素子片の周波数温度特性を改善することができると考えられる。
【0006】
しかし、本願出願人が鋭意研究する中で、上述するように水晶基板の面内回転角を調整し、周波数温度特性を改善したSAW素子片であっても、共振周波数の調整、及び電極間における短絡防止等を目的として励振電極を構成するIDT(interdigital transducer)に保護膜を付与することにより、前記周波数温度特性に変化が生ずることが判明した。
【0007】
上記のように、励振電極に対して保護膜を付与することは特許文献2にも開示されているが、特許文献2を含む従来技術における保護膜の付与は、あくまでSAW素子片の共振周波数を調整することを目的としたものであり、温度特性に対する影響というものは考慮されていなかった。また一般に、STカット水晶基板を採用したSAW素子片の励振電極に対して保護膜を付与した際には、SAW装置における周波数温度特性への影響が殆ど無い。このため従来は、面内回転STカット水晶基板を用いたSAW素子片については、保護膜付与による影響は無いものと考えられていた。
【0008】
このため、本願出願人の研究により、STカット水晶基板の面内回転角ψを設定された共振周波数下において周波数温度特性が使用温度範囲内で最適な値となるように設計をした場合であっても、製造の最終段階として励振電極に保護膜を付与することにより、前述した周波数温度特性が劣化するという現象が生じることが初めて明らかとなったのである。
【0009】
そこで本発明では、励振電極に保護膜が付与された際に、SAW装置の周波数温度特性が良好となるSAW装置の製造方法、及びSAW装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る弾性表面波装置の製造方法は、カット角がオイラー角表示で(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の範囲内にある事を基本とする面内回転STカット水晶基板を用い、励振電極に保護膜を有する弾性表面波装置を製造するための方法であって、励振電極に保護膜を付与することによって生ずる弾性表面波装置の周波数温度特性の変化量を求めると共に、前記変化量を補うための面内回転角ψの補正量Δψを求め、設定された共振周波数において所望する周波数温度特性を得るために算出される面内回転STカット水晶基板のカット角から前記補正量Δψだけカット角をずらしてカット角を設定して水晶基板を形成し、当該水晶基板を用いて弾性表面波装置を製造することを特徴とする。
【0011】
上記のようなカット角を基本とする面内回転STカット水晶基板を用いる弾性表面波装置の製造方法において、上記のような方法によりカット角を定めて弾性表面波装置を製造することによれば、励振電極に保護膜を付与することで補正量Δψに相当する変化量だけ周波数温度特性を示す曲線(温度特性曲線)が所望する周波数温度特性に近づくようにずれることとなる。このため、上記のようにしてカット角を定めた面内回転STカット水晶基板を用いて製造される弾性表面波装置は、励振電極に保護膜を付与した後の周波数温度特性が良好になる。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明に係る弾性表面波装置の製造方法は、カット角がオイラー角表示で(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の範囲内にある事を基本とする面内回転STカット水晶基板を用い、励振電極に保護膜を有する弾性表面波装置を製造するための方法であって、励振電極に保護膜を付与することによって生ずる弾性表面波装置の周波数温度特性の変化量を求めると共に、前記変化量を補うための面内回転角ψの補正量Δψを求め、設定された共振周波数において所望する周波数温度特性を得るために算出される面内回転STカット水晶基板のカット角から前記補正量Δψだけカット角をずらしてカット角を設定して水晶基板を形成し、当該水晶基板を用いて弾性表面波装置を製造することを特徴とするものであっても良い。
【0013】
上記のようなカット角を基本とする面内回転STカット水晶基板を用いる弾性表面波装置であっても、上述した方法に示したカット角を基本とする弾性表面波装置と、その特性は同じである。したがって、上記のようにしてカット角を定めた面内回転STカット水晶基板を用いて製造される弾性表面波装置は、励振電極に保護膜を付与した後の周波数温度特性が良好になる。
【0014】
また、上記のような弾性表面波装置の製造方法において、前記励振電極に付与される保護膜を陽極酸化膜とし、前記補正量Δψは、前記設定された共振周波数fと前記陽極酸化膜を構成する際に前記励振電極に負荷される電圧xとの値に基づき、

と定めるようにすることが望ましい。
【0015】
このような係数により補正量を定めることで、補正量を実験による経験則のみによって定めるという不安定要素を排除することができる。よって、経験等に関わり無く安定して良好な周波数温度特性を得られるようになる。
【0016】
また、上記目的を達成するための本発明に係る弾性表面波装置は、カット角がオイラー角表示で(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の範囲内にある事を基本とする面内回転STカット水晶基板を用いた弾性表面波装置であって、設定された共振周波数において所望する周波数温度特性を得るために必要とされる前記面内回転STカット水晶基板のカット角に、水晶基板の主面に構成する励振電極に対する保護膜付与の影響による周波数温度特性の変化量に基づいて予め求めた面内回転角ψの補正量Δψを加えたカット角によって構成した水晶基板と、前記水晶基板の主面に形成された励振電極と、前記補正量Δψによる周波数温度特性の変化量に対応した膜厚に設定されて前記励振電極に付与される保護膜とを有することを特徴とする。
【0017】
このような構成の弾性表面波装置によれば、励振電極に保護膜を付与することにより、使用温度範囲内での周波数温度特性を所望する範囲に定めることが可能なる。
【0018】
また、上記目的を達成するための本発明に係る弾性表面波装置は、カット角がオイラー角表示で(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の範囲内にある事を基本とする面内回転STカット水晶基板を用いた弾性表面波装置であって、設定された共振周波数において所望する周波数温度特性を得るために必要とされる前記面内回転STカット水晶基板のカット角に、水晶基板の主面に構成する励振電極に対する保護膜付与の影響による周波数温度特性の変化量に基づいて予め求めた面内回転角ψの補正量Δψを加えたカット角によって構成した水晶基板と、前記水晶基板の主面に形成された励振電極と、前記補正量Δψによる周波数温度特性の変化量に対応した膜厚に設定されて前記励振電極に付与される保護膜とを有することを特徴とするものであっても良い。
【0019】
上記のようなカット角を基本とする面内回転STカット水晶基板を用いた弾性表面波装置であっても、上記構成の弾性表面波装置と同様、励振電極に保護膜を付与することで、使用温度範囲内での周波数温度特性を所望する範囲にシフトさせるという効果を得ることができる。
【0020】
また、上記のような構成の弾性表面波装置では、前記励振電極に付与される保護膜は陽極酸化膜であり、前記補正量Δψは、前記設定された共振周波数fと前記陽極酸化膜を構成する際に前記励振電極に負荷される電圧xとの値に基づき、

と定めることが望ましい。
【0021】
このような係数により補正量を定めることで、補正量を実験による経験則のみによって定めるという不安定要素を排除することができる。よって、製造される弾性表面波装置は、経験等に関わり無く安定して良好な周波数温度特性を得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の弾性表面波装置の製造方法、及び弾性表面波装置に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明はその主要部を変えない限度において種々の形態を有するものとする。
【0023】
本実施形態では、水晶基板のカット角を説明する上で周知とされている、(φ,θ,ψ)というオイラー角表示を基準として水晶基板のカット角の説明を行うこととする。また、本実施形態におけるSAW装置は、ストップバンドの上限モードを利用するものとする。弾性表面波のストップバンドにおける上限モードは、下限モードに比べて、周波数温度特性における2次温度係数の絶対値が小さく、IDT電極の厚みを増加させたときの2次温度係数の絶対値の変化も小さいという特徴を持つ。また、弾性表面波のストップバンドにおける上限モードでは、下限モードに比べ、励振電極を構成するIDTの厚みを増加させた際の発振周波数の変化量が小さいという特徴も持つ。
【0024】
図1に、本実施形態で製造するSAW装置に用いられるSAW素子片の構成を示す。なお、図1において図1(A)はSAW素子片の構成を示す平面図であり、図1(B)は同図(A)におけるA−A断面を示す図である。
【0025】
本実施形態に係るSAW素子片10は、圧電基板12と、この圧電基板12の一主面に形成された励振電極とより成ることを基本とする。前記圧電基板12は、構成材料を水晶とし、そのカット角及び弾性表面波の伝搬方向を、オイラー角表示で(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の範囲内で示すものを基本とし、面内回転角ψについては、後述する励振電極の構成によって定まる共振周波数fや、前記励振電極本体18に付与する保護膜20の設定等により詳細を定めるものとする。
【0026】
前記励振電極本体18は、種々の導電性材料によって構成することができるが、本実施形態では、アルミ(Al)又はAlを主な原料とする合金を構成材料とした場合について説明することとする。
【0027】
励振電極は、一対の櫛型電極から構成されるIDT14と、前記IDT14を挟み込むようにして配置された一対の反射器16とを基本とする。前記IDT14は、弾性表面波の伝搬方向に対して直交するように設けられた複数の電極指14aを、前記弾性表面波の伝搬方向に沿って配置されたバスバー14bによって接続して構成される2つの櫛型電極を組み合わせて構成される。2つの櫛型電極の配置関係は、2つのバスバー14bから伸びる電極指14aが、互い違いに噛合うように配置するというものである。前記反射器16は、前記櫛型電極の電極指14aと平行に配置された複数の導体ストリップ16aの両端部をバスバー16bに接続することにより構成される格子状を成す電極である。
【0028】
前記励振電極本体18に付与する保護膜20は、陽極酸化膜やSiO膜等、種々選択することが可能であるが、本実施形態では、保護膜として、Alを陽極酸化することにより得られる陽極酸化膜を例に挙げて説明する。陽極酸化は、電界液(例えばリン酸アンモニウム系)に、励振電極本体18を形成した圧電基板12を浸漬させて、電圧をかけることにより構成される。ここで、励振電極本体18に被覆(付与)される陽極酸化膜の膜厚は、浸漬時に励振電極本体18に負荷させる電圧、及び電圧を負荷する時間等によって定めることができる。なお、電圧が一定である場合には、一定時間を越えた後における陽極酸化膜の膜厚は一定となる。
【0029】
ここで、本願出願人は、面内回転STカット水晶基板を採用したSAW素子片の励振電極に陽極酸化膜(保護膜)を付与すると、製造されるSAW装置の周波数温度特性に変化が生じることを見出した。上述したように、このような保護膜の付与による周波数温度特性の変化という現象は、通常のSTカット水晶基板(例えばカット角をオイラー角表示で(0°,113°≦θ≦135°,0°)とした水晶基板)を用いたSAW装置では殆ど確認できないものであり、従来は生じ得ないと考えられていた。
【0030】
保護膜付与による周波数温度特性の変化の特徴は、保護膜を付与することにより温度特性を示す温度特性曲線が、測定温度の基準点を中心として反時計回りに回転するような変化を示すというものである。ここで、面内回転STカット水晶基板を用いたSAW装置の周波数温度特性は、基板の面内回転角ψを変化させることにより調整することができることが知られている。このため、本願出願人は、保護膜付与後の周波数温度特性を想定して水晶基板の面内回転角ψを定めることにより、励振電極に保護膜を付与することで温度特性曲線の傾向を使用温度範囲で最適なものとすることができるSAW装置を得ることができると考えた。
【0031】
そして、本願出願人は、保護膜付与による温度特性曲線の変化量が、励振電極と保護膜の膜厚の相対的な関係によって定まるということを見出した。
【0032】
陽極酸化膜の膜厚は、陽極酸化時に負荷する電圧と、IDT14の膜厚やピッチによって定められる周波数に依存する。また、電圧と膜厚との関係は比例関係にあり、膜厚と周波数との関係は、陽極酸化時に負荷する電圧が一定であれば、電極膜厚に対する陽極酸化膜の膜厚の比率が相対的に変化するという関係にある。
【0033】
図2には、IDT14の電極膜厚を一定、すなわち設定する共振周波数を一定とし、陽極酸化膜を付与するための電圧を変化させた場合において、陽極酸化膜付与後における使用温度範囲内でのSAW装置の周波数温度特性の変化量を特定の範囲内に納めるために必要とされる面内回転角ψの補正量Δψの変化を示す。また、図3には、陽極酸化膜を付与するための電圧を一定とした場合において、設定する共振周波数を変化、具体的にはIDT14の電極膜厚を変化させた場合における面内回転角ψの補正量Δψの変化を示す。なお、図2、図3に示す面内回転角ψの補正量Δψの変化の傾向は、SAW素子片10の製造と、製造時に取得したデータのフィードバック、及びフィードバックデータに基づくSAW素子片10の再製造という実験のサイクルによって得られた経験的なものである。
【0034】
図2、図3からは、両者とも、補正量Δψとの関係においては比例関係にあるということを読み取ることができる。また、共振周波数と励振電極に付与される保護膜20の膜厚とは相互に影響しあう関係であることが知られている。これらの関係より、面内回転角ψの補正量Δψと共振周波数f〔MHz〕、陽極酸化電圧x〔V〕との関係は、
【数1】

という関係を有することを導き出すことができる。
【0035】
次に、SAW装置に使用するSAW素子片を製造する上での具体例について説明する。例えば、所望する共振周波数を314.85MHzとした場合、励振電極の膜厚比:H/λ、ライン占有率:η、IDT部分の波長:λのそれぞれの関係、及び温度特性曲線が最適な傾向を示すカット角は、表1に示すようなものとなる。
【表1】

【0036】
ここで、上記のような条件によって得られるSAW素子片に60Vの電圧で陽極酸化膜を被覆することとした場合、温度特性曲線は最適な傾向から外れ、図4に破線で示すような傾向を示すこととなる。
【0037】
そこで、上記のような温度特性曲線の傾向の変化を想定し、数式1に示した関係に基づき、予め求めた補正量Δψを設計値に加えるとすると、補正量Δψは計算により、
【数2】

約0.6であると求めることができる。
【0038】
よって、上記条件のSAW素子片を製造する上で、保護膜付与後に温度特性曲線の傾向を最適なものとするための水晶基板のカット角は、オイラー角表示で(0°,123°,42.6°)ということになる。このようなカット角の水晶基板を用いてSAW素子片を製造した場合、保護膜を付与する前の段階では、SAW装置の温度特性曲線は図4に一点鎖線で示すような傾向を示すこととなる。そして、上記構成で製造したSAW素子片に対し、60Vの電圧をかけて保護膜となる陽極酸化膜を被覆することにより、温度特性曲線の傾向は改善され、図4に実線で示す傾向のものとなる。
【0039】
上記実施形態、及び実施例の説明は、オイラー角表示で(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の範囲で得られるカット角の面内回転STカット水晶基板に基づいたものであった。しかし、本発明を適用することができるSAW装置はこの構成に限られるものではなく、オイラー角表示で(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の範囲で得られるカット角の面内回転STカット水晶基板を用いたものであっても良い。このような場合であっても、保護膜の付与により周波数温度特性が変化し、当該周波数温度特性の変化は同様の傾向を示すことを本願出願人が見出したからである。
【0040】
また、上記実施形態では、保護膜として、陽極酸化膜のみを挙げているが、SiO膜等、他の絶縁保護膜であっても、周波数温度特性の変化が生じる。よって、前記SiO膜等他の保護膜を施す場合であっても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】SAW素子片の構成を示す図である。
【図2】保護膜形成時の酸化電圧と面内回転角ψの補正量Δψの関係を示す図である。
【図3】SAW装置に所望する周波数と保護膜形成後に必要とされる面内回転角ψの補正量Δψの関係を示す図である。
【図4】SAW装置の温度特性曲線の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10………SAW素子片(弾性表面波素子片)、12………圧電基板、14………IDT、16………反射器、18………励振電極本体、20………保護膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カット角がオイラー角表示で(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の範囲内にある事を基本とする面内回転STカット水晶基板を用い、励振電極に保護膜を有する弾性表面波装置を製造するための方法であって、
励振電極に保護膜を付与することによって生ずる弾性表面波装置の周波数温度特性の変化量を求めると共に、前記変化量を補うための面内回転角ψの補正量Δψを求め、
設定された共振周波数において所望する周波数温度特性を得るために算出される面内回転STカット水晶基板のカット角から前記補正量Δψだけカット角をずらしてカット角を設定して水晶基板を形成し、
当該水晶基板を用いて弾性表面波装置を製造することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項2】
カット角がオイラー角表示で(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の範囲内にある事を基本とする面内回転STカット水晶基板を用い、励振電極に保護膜を有する弾性表面波装置を製造するための方法であって、
励振電極に保護膜を付与することによって生ずる弾性表面波装置の周波数温度特性の変化量を求めると共に、前記変化量を補うための面内回転角ψの補正量Δψを求め、
設定された共振周波数において所望する周波数温度特性を得るために算出される面内回転STカット水晶基板のカット角から前記補正量Δψだけカット角をずらしてカット角を設定して水晶基板を形成し、
当該水晶基板を用いて弾性表面波装置を製造することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項3】
前記励振電極に付与される保護膜を陽極酸化膜とし、
前記補正量Δψは、前記設定された共振周波数fと前記陽極酸化膜を構成する際に前記励振電極に負荷される電圧xとの値に基づき、

と定めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
カット角がオイラー角表示で(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の範囲内にある事を基本とする面内回転STカット水晶基板を用いた弾性表面波装置であって、
設定された共振周波数において所望する周波数温度特性を得るために必要とされる前記面内回転STカット水晶基板のカット角に、水晶基板の主面に構成する励振電極に対する保護膜付与の影響による周波数温度特性の変化量に基づいて予め求めた面内回転角ψの補正量Δψを加えたカット角によって構成した水晶基板と、
前記水晶基板の主面に形成された励振電極と、
前記補正量Δψによる周波数温度特性の変化量に対応した膜厚に設定されて前記励振電極に付与される保護膜とを有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項5】
カット角がオイラー角表示で(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の範囲内にある事を基本とする面内回転STカット水晶基板を用いた弾性表面波装置であって、
設定された共振周波数において所望する周波数温度特性を得るために必要とされる前記面内回転STカット水晶基板のカット角に、水晶基板の主面に構成する励振電極に対する保護膜付与の影響による周波数温度特性の変化量に基づいて予め求めた面内回転角ψの補正量Δψを加えたカット角によって構成した水晶基板と、
前記水晶基板の主面に形成された励振電極と、
前記補正量Δψによる周波数温度特性の変化量に対応した膜厚に設定されて前記励振電極に付与される保護膜とを有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項6】
前記励振電極に付与される保護膜は陽極酸化膜であり、
前記補正量Δψは、前記設定された共振周波数fと前記陽極酸化膜を構成する際に前記励振電極に負荷される電圧xとの値に基づき、

と定めることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の弾性表面波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−281701(P2007−281701A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103404(P2006−103404)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】