説明

弾性表面波装置及びその製造方法

【課題】 抵抗損失を低減させることができる弾性表面波装置を提供する。また、製造工程におけるIDT電極の損傷を抑制することができる弾性表面波装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る弾性表面波装置1は、圧電基板7と、圧電基板7上に形成されたIDT電極9と、圧電基板7上に形成され、IDT電極9を外部端子に接続するための電極パッド11と、圧電基板7上に形成され、IDT電極9と電極パッド11とを接続する接続配線13と、を備える。IDT電極9は、第1の厚さを有し、電極パッド11は
、第1の厚さより大きい第2の厚さを有している。接続配線13の厚さは、第1の厚さより大きく且つ第2の厚さより小さいことを特徴とする。また、本発明に係る弾性表面波装置1の製造方法は、IDT電極9及び接続配線13上にレジストR3を塗布し、IDT電極9と接続配線13との接続部分を少なくとも覆うようにレジストR3をパターニングする工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電基板上にIDT電極を形成した弾性表面波装置が種々提案されている。例えば、特許文献1に記載された弾性表面波装置は、IDT電極と、このIDT電極を外部端子に接続するための電極パッドとを備えており、このIDT電極と電極パッドとが接続配線によって電気的に接続されている。このIDT電極及び接続配線は、一定の厚さの薄膜で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−271354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このIDT電極及び接続配線を形成する薄膜は非常に薄いため、電気抵抗が大きく、抵抗損失が大きい。また、このIDT電極はこのように非常に薄い薄膜で形成されているため、製造工程において損傷を受け易く、断線し易いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、抵抗損失を低減させることができる弾性表面波装置を提供することを第1の目的とする。また、製造工程におけるIDT電極の損傷を抑制することができる弾性表面波装置の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性表面波装置は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成されたIDT電極と、前記圧電基板上に形成され、前記IDT電極を外部端子に接続するための電極パッドと、前記圧電基板上に形成され、前記IDT電極と前記電極パッドとを接続する接続配線と、を備える。前記IDT電極は、第1の厚さを有し、前記電極パッドは、前記第1の厚さより大きい第2の厚さを有している。前記接続配線の厚さは、前記第1の厚さより大きく且つ前記第2の厚さより小さいことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る弾性表面波装置の製造方法は、圧電基板と、該圧電基板上に形成されたIDT電極、該IDT電極を外部端子に接続するための電極パッド、及び前記IDT電極と前記電極パッドとを接続する接続配線と、を備える弾性表面波装置の製造方法である。この製造方法は、前記圧電基板上に、第1の厚さを有する前記IDT電極を形成する工程と、前記圧電基板上に、前記第1の厚さより大きい厚さを有する前記接続配線を形成する工程と、前記IDT電極及び前記接続配線上にレジストを塗布し、該IDT電極と該接続配線との接続部分を少なくとも覆うように前記レジストをパターニングする工程と、パターニングされた前記レジストを利用して、前記圧電基板上に前記電極パッドを形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記レジストをパターニングする工程においては、塗布された前記レジストを現像液によってパターニングしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る弾性表面波装置によれば、IDT電極と電極パッドとを接続する接続配線における抵抗損失を低減させることができる。また、本発明に係る弾性表面波装置の製造方法によれば、製造工程におけるIDT電極の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る弾性表面波装置の平面図である。
【図2】図1の弾性表面波装置のII−II線断面図である。
【図3】図1の弾性表面波装置のIII−III線断面図である。
【図4】図1の弾性表面波装置の製造工程を示す図である。
【図5】図1の弾性表面波装置の製造工程を示す図である。
【図6】図1の弾性表面波装置の製造工程の比較例を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る弾性表面波装置の断面図である。
【図8】実施例及び比較例の弾性表面波素子の挿入損失の周波数特性を示すグラフである。
【図9】接続配線のエッジ部分を拡大して示す平面図であり、(a)は実施例のもの、(b)は比較例のものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る弾性表面波装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る弾性表面波装置1は、弾性表面波素子3と、この弾性表面波素子3を接合するベース基板5とを備えている。なお、図1では、説明の便宜のため、ベース基板5及び後述する半田バンプ25の図示を省略している。
【0013】
弾性表面波素子3は、例えば弾性表面波フィルタや弾性表面波共振子等であり、圧電基板7と、圧電基板7上に形成されたIDT電極9、電極パッド11及び枠体17とを備えている。圧電基板7は、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶、四ホウ酸リチウム単結晶等の圧電材料で形成されている。
【0014】
IDT電極9は、図1の矢印Y方向に2個並べて配置されている。各IDT電極9は、櫛歯状に形成された2つの電極(以下、櫛歯状電極という)19,19によって構成されている。各櫛歯状電極19,19は、互いに対向し、電極指19a,19aが互いに噛み合うように配置されている。
【0015】
電極パッド11は、接続配線13によってIDT電極9に接続されており、図2に示すように、ベース基板5に設けられた後述する接続端子21に接続されるようになっている。
【0016】
図2に示すように、枠体17は、各々2つのIDT電極9,電極パッド11及び接続配線13を一括して取り囲むように、圧電基板7の周縁部に沿って設けられている。
【0017】
ベース基板5は、セラミックやガラスセラミックなどの絶縁性材料で形成されており、図2及び図3に示すように、半田バンプ25によってその周縁部が枠体17の上面に接合されている。こうすることで、圧電基板7上に形成されたIDT電極9は、枠体17とベース基板5とによって封止されている。
【0018】
図2に示すように、ベース基板5における電極パッド11に対応する位置には、ベース基板5を貫通する貫通孔5aが形成されている。この貫通孔5aには接続端子21が設けられており、各接続端子21は半田バンプ25によって、対応する各電極パッド11に接
合されている。この各接続端子21は、図示しない外部駆動回路に接続された外部端子に接続可能となっている。これにより、IDT電極9に接続配線13を介して接続された電極パッド11が、接続端子21を介して図示しない外部駆動回路の外部端子に電気的に接続可能となっている。
【0019】
次に、上記のように構成されたIDT電極9、電極パッド11、接続配線13及び枠体17の断面構成について、詳細に説明する。
【0020】
図2及び図3に示すように、IDT電極9は、第1導電膜31及び第2導電膜32で構成されている。そして、枠体17は、第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34をこの順に積層して形成されている。こうすることで、枠体17の高さが、IDT電極9の高さより高くなり、IDT電極9とベース基板5との間に空隙が確保される。
【0021】
電極パッド11は、図2に示すように、枠体17と同様、第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34をこの順に積層して形成されている。こうすることで、電極パッド11の高さが、枠体17の高さと同じになり、弾性表面波素子3をベース基板5に接合したときに、電極パッド11を、ベース基板5に設けられた接続端子21に接合することができる。
【0022】
接続配線13は、第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33をこの順に積層して形成されている。こうすることで、接続配線13の厚さは、IDT電極9の厚さより大きくなっている。
【0023】
なお、上記の第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34は、後述するように、互いに成膜のタイミングを異ならせて形成されている。また、本実施形態では、上記のように、IDT電極9を第1導電膜31及び第2導電膜32で形成し、電極パッド11を第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34で形成することによって、IDT電極9が本発明における第1の厚さを有しており、電極パッド11が本発明における第2の厚さを有している。そして、接続配線13を第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33で形成することによって、接続配線13の厚さが、第1の厚さより大きく且つ第2の厚さより小さくなっている。
【0024】
第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34は、例えば、AlやAl合金(例えば、Al−Cu系、Al−Ti系)、CuやCu合金(例えば、Cu−Mg系、Cu−Ti系、Cu−Rd系)、AgやAg合金(例えば、Ag−Mg系、Ag−Ti系、Ag−Rd系)、TiやTi合金(例えば、Ti−Al系、Ti−Cu系)等の金属膜で形成することができる。
【0025】
また、図示しないが、IDT電極9の露出した表面上には、Si,SiO,SiN,Al等の絶縁性の高い材料で形成された保護膜を設けてもよい。これによって、導電性の異物がIDT電極9の電極指19a間に付着することによる短絡を防止することができる。
【0026】
次に、以上のように構成された弾性表面波装置1の製造方法について、図4及び図5を参照しつつ説明する。なお、ここでは、第1導電膜31、第3導電膜33及び第4導電膜34を、Al、Al合金、Cu,Cu合金、Ag及びAg合金のうちのいずれかで形成し、第2導電膜32を、Tiで形成した場合について説明する。
【0027】
まず、圧電基板7を準備し、図4(a)に示すように、この圧電基板7上に、蒸着法、
スパッタリング法、CVD法等の結晶成長法を用いて、第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33を順次形成し、これらの導電膜で形成された積層体Lを形成する。
【0028】
次に、図4(b)に示すように、第3導電膜33上にレジストR1を塗布し、フォトリソグラフィー法により所望のパターンを露光した後、現像液によりこのパターンを現像する。このとき、レジストR1としては、例えば、ノボラック樹脂を含有する感光性のレジスト材料を用いることができる。また、現像液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含むアルカリ現像液を用いることができる。
【0029】
次いで、図4(c)に示すように、ウェットエッチング法により第3導電膜33を選択的にエッチングする。このとき、エッチング剤としては、第3導電膜33より第2導電膜32のエッチングレートが小さくなるものを使用することができ、例えば、レジストR1の現像液と同じ、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含むアルカリ現像液を使用することで、第3導電膜33のみを除去することができる。第3導電膜33のエッチング終了後、図4(d)に示すように、レジストR1を剥離する。
【0030】
続いて、図4(e)に示すように、積層体L上にレジストR2を塗布し、フォトリソグラフィー法により所望のパターンを露光した後、現像液によりこのパターンを現像する。このとき、レジストR2及び現像液としては、例えば、レジストR1に対して例示したものと同じものを用いることができる。
【0031】
そして、図4(f)に示すように、ドライエッチング法により積層体Lをエッチングして、圧電基板7の一部を露出させる。このとき、エッチング剤としては、例えば、BCl,Cl,Nの混合ガスを使用することができる。積層体Lのエッチング終了後、図4(g)に示すように、レジストR2を剥離する。こうして、IDT電極9及び接続配線13が形成される。
【0032】
次に、図5(h)に示すように、積層体L及び圧電基板7上にレジストR3を塗布し、フォトリソグラフィー法により所望のパターンを露光した後、現像液によりこのパターンを現像する。このとき、レジストR3としては、例えば、ノボラック樹脂とナフトキノンジアジドとを含有する感光性のレジスト材料を用いることができる。また、現像液としては、例えば、レジストR1に対して例示したものと同じものを用いることができる。また、このとき、レジストR3は、IDT電極9及び接続配線13を覆うようにパターニングされる。そのため、IDT電極9が現像液によって浸食され、損傷を受けるのを抑制することができる。
【0033】
つまり、例えば、図6に示すように、接続配線13がレジストR3によって覆われていない場合を考える。この場合、接続配線13を構成する第3導電膜33とレジストR3との境界面Eが露出する。そのため、レジストR3を現像液により現像する際にこの境界面Eに現像液が侵入して、IDT電極9を構成する第1導電膜31が浸食され易い。これは、第2導電膜32はTiからなるため現像液に対する耐性が大きいが、第2導電膜32の表面を介して現像液が第1導電膜31まで到達し得るためである。したがって、IDT電極9が現像液による損傷を受け易くなっている。IDT電極9の膜厚は非常に薄いため、この損傷によって断線等の問題が生じ易い。なお、接続配線13は、第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33によって形成されており、IDT電極9に比べて厚く形成されているため、現像液によって浸食されても断線には至り難い。
【0034】
これに対し、図5(h)に示す本実施形態のように、IDT電極9に加えて接続配線13を覆う場合、接続配線13におけるIDT電極9との接続部分がレジストR3によって覆われているため、接続配線13を構成する第3導電膜33(の側面)とレジストR3と
の境界面Eは露出しない。そのため、現像液が、IDT電極9を構成する第1導電膜31に到達し難く、IDT電極9の損傷を抑制することができる。
【0035】
次いで、図5(i)に示すように、スパッタリング法等により第4導電膜34を形成する。そして、図5(j)に示すように、レジストR3を剥離して、レジストR3上に形成された第4導電膜34を除去する。こうすることで、パターニングされたレジストR3を利用して、第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34からなる積層体でそれぞれ構成された電極パッド11及び枠体17が形成される。
【0036】
以上のようにして、本実施形態に係る弾性表面波素子3が製造される。なお、図示していないが、以上の工程はウエハレベルで実施され、ウエハ上に複数個の弾性表面波素子3を形成した後に、ウエハを切断し、複数個の弾性表面波素子3を分離してチップ形状とする。
【0037】
そして、図2に示すように、チップ形状の弾性表面波素子3をベース基板5に対向させて配置し、半田バンプ25によって、ベース基板5の周縁部と枠体17とを接合するとともに、ベース基板5に設けられた接続端子21と電極パッド11とを接合する。こうして、本実施形態に係る弾性表面波装置1が製造される。
【0038】
本実施形態に係る弾性表面波装置1によれば、接続配線13の厚さが、IDT電極9の厚さより大きく且つ電極パッド11の厚さより小さくなっている。そのため、例えば、接続配線13の厚さを、IDT電極9の厚さと同じにした場合に比べて、接続配線13の電気抵抗を小さくすることができ、電極パッド11とIDT電極9との間の抵抗損失を低減することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る弾性表面波装置1の製造方法によれば、図5(h)に示すように、レジストR3によってIDT電極9及び接続配線13を覆うことにより、IDT電極9と接続配線13との接続部分がレジストR3によって覆われるため、レジストR3の現像液がIDT電極9に到達し難く、現像液がIDT電極9を浸食することによる損傷を抑制することができる。したがって、膜厚の薄いIDT電極9の断線等を抑制することができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、図5(h)に示すように、レジストR3によって接続配線13の全体を覆っているが、接続配線13におけるIDT電極9との接続部分をレジストR3によって少なくとも覆っている限り、これに限定されるものではない。
【0041】
また、上記実施形態では、IDT電極9、接続配線13及び電極パッド11の厚さがこの順に大きくなるように構成されているが、このような関係で構成されている限り、IDT電極9、接続配線13及び電極パッド11は、これらを構成する導電膜層の他に、1層以上の導電膜を含んでいてもよい。また、IDT電極9、接続配線13及び電極パッド11の層構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、IDT電極9は第1導電膜31及び第2導電膜32の2層で構成され、接続配線13は第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33の3層で構成され、電極パッド11及び枠体17は第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34の4層で構成されているが、IDT電極9、接続配線13、電極パッド11及び枠体17をそれぞれ、1層の導電膜やその他の複数層の導電膜で構成してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、いわゆるチップサイズパッケージの弾性表面波装置を例示し
て本発明を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、いわゆるウエハレベルパッケージの弾性表面波装置にも適用可能である。一般的に、ウエハレベルパッケージの弾性表面波装置の場合、例えば、図7に示すように、枠体17が樹脂で形成され、この枠体17上に樹脂からなる蓋体6が設けられることによってIDT電極9の封止構造が形成される。なお、図7では、図2に示した弾性表面波装置1と同種の構成要素に同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図7の弾性表面波装置10では、枠体17及び蓋体6が樹脂で形成されているため、例えば、図7の横方向に向かう外力が蓋体6にかかったときに、枠体17及び蓋体6が変形し易い。枠体17及び蓋体6が変形すると、ひいてはIDT電極9にも外力がかかる。このとき、上記のように現像液がIDT電極9を浸食して損傷を受けていると、この損傷部分に応力が集中してIDT電極9が破壊される等の問題が生じることがある。これに対し、本発明に係る弾性表面波装置の製造方法は、このようなIDT電極の損傷を抑制することができるため、ウエハレベルパッケージの弾性表面波装置により有効である。
【実施例】
【0043】
上述の弾性表面波素子3を実際に作製し、電気特性の測定を行った。具体的には、図4、図5に示したプロセスに沿って以下のようにして弾性表面波素子3を作製した。
【0044】
まず、38.7°YカットX伝搬タンタル酸リチウム単結晶からなるウエハ状の圧電基板7の主面上に第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33をこの順に積層してなる積層体Lを形成した。第1導電膜31及び第3導電膜にはAlを使用し、第2導電膜32にはTiを使用した。
【0045】
次に、レジスト塗布装置によりフォトレジストR1を約0.5μmの厚みに塗布した。そして、縮小投影露光装置(ステッパー)により、IDT電極9となる部分に対応したフォトレジストパターンを形成した。さらに、現像装置にて不要部分のフォトレジストR1を現像液で溶解させた。なお、フォトレジストR1にはノボラック樹脂を使用し、現像液にはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含むアルカリ現像液を使用した。
【0046】
次に、ウェットエッチング法により、第3導電膜33を選択的にエッチングした。エッチング液には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含むアルカリ現像液を使用した。その後、レジストR1を剥離した。
【0047】
続いて、積層体L上にレジストR2を塗布し、フォトリソグラフィー法により所望のパターンを露光した後、現像液によりこのパターンを現像した。なお、レジストR2にはレジストR1と同じノボラック樹脂を使用した。現像液もレジストR1の現像に用いたものと同じものを使用した。
【0048】
そして、ドライエッチング法により積層体Lをエッチングして、圧電基板7の一部を露出させた。エッチング剤には、BCl,Cl,Nの混合ガスを使用した。積層体Lのエッチング終了後、レジストR2を剥離し、IDT電極9及び接続配線13を形成した。
【0049】
次に、積層体L及び圧電基板7上にレジストR3を塗布し、フォトリソグラフィー法により所望のパターンを露光した後、現像液によりこのパターンを現像した。レジストR3には、ノボラック樹脂とナフトキノンジアジドとを含有する感光性のレジスト材料を用いた。また、現像液としては、レジストR1に対して使用したものと同じものを用いた。このとき、レジストR3は、IDT電極9及び接続配線13を覆うようにパターニングした。
【0050】
次いで、スパッタリング法等により第4導電膜34を形成した後、レジストR3を剥離することにより電極パッド11及び枠体17を形成した。第4導電膜34は、Cr/Ni/Auの3層構造とした。
【0051】
その後、ウエハ状の圧電基板3を切断し、個々の弾性表面波素子3を得た。切断後の圧電基板3の寸法は、長さが1.1mm、幅が0.9mm、厚みが0.45mmである。
【0052】
また第1導電膜31の厚みは200nm、第2導電膜32の厚みは5nm、第3導電膜33の厚みは1.2μm、第4導電膜の厚みは、Cr層が10nm、Ni層が1.2μm、Au層が50nmである。
【0053】
すなわち、実施例の弾性表面波素子3は、第1の厚さ(IDT電極3の厚さ)が0.205μm、第2の厚さ(電極パッド11の厚さ)が2.665μmであり、接続配線13の厚さが第1の厚さより大きく且つ第2の厚さより小さい1.405μmである。
【0054】
一方、実施例と同じ材料を用いて同様の作製方法により比較例としての弾性表面波素子も作製した。ただし比較例の弾性表面波素子は、接続配線13の厚みがIDT電極3の厚さと同じになるようにした。すなわち比較例の弾性表面波素子は、第1の厚さ(IDT電極3の厚さ)及び接続配線13の厚さが0.205μmであり、第2の厚さ(電極パッド11の厚さ)が2.665μmである。
【0055】
このような実施例と比較例の弾性表面波素子について電気特性の測定を行った。測定結果を図8に示す。図8は、実施例と比較例の弾性表面波素子についての通過帯域近傍の周波数特性を示すグラフであり、実線が実施例の弾性表面波素子、破線が比較例の弾性表面波素子をそれぞれ示している。
【0056】
この結果から実施例の弾性表面波素子は、比較例の弾性表面波素子に比べて挿入損失が0.15dB改善していることがわかった。
【0057】
また実施例と比較例の弾性表面波素子の接続配線13を光学顕微鏡を用いて200倍に拡大した状態で撮影し、それらを比較したところ、両接続配線に違いがみられた。図9は、撮影した接続配線13のエッジ部分を模写した拡大平面図であり、(a)は実施例のもの、(b)は比較例のものである。実施例の弾性表面波素子の接続配線13のエッジ部分は、ほぼ直線状になっていたのに対し、比較例の弾性表面波素子の接続配線13のエッジ部分には微小な凹部がみられた。この凹部は、プロセス中に印加される熱等の影響によって第1電極膜31からその構成材料であるAlの分子が移動する現象(マイグレーション)によって形成されたものと考えられる。接続配線13にこのような凹部が形成されると、端部表皮効果により伝達距離が長くなり、配線の抵抗値が大きくなる。
【0058】
一方、実施例の弾性表面波素子の接続配線13において、このような現象がみられなかったのは、接続配線13の膜厚をIDT電極の膜厚より大きくしたことによって、マイグレーションが起こりにくくなったためと推測される。実施例の結果からして、マイグレーションの発生を抑制するためには、接続配線13の厚さを少なくともIDT電極の厚さよりも7倍以上大きくしておけばよいことがわかる。
【0059】
以上のことから実施例の弾性表面波素子は、単に接続配線の厚みが大きくなったことによって配線抵抗が低下しただけでなく、マイグレーションの発生が抑制されたことにより接続配線13のエッジ部の形状が維持され、これによっても配線抵抗が低下したものと考えられる。その結果、実施例の弾性表面波素子は比較例の弾性表面波素子に比べて挿入損失が改善したといえる。
【符号の説明】
【0060】
1 弾性表面波装置
3 弾性表面波素子
5 ベース基板
7 圧電基板
9 IDT電極
11 電極パッド
13 接続配線
17 枠体
25 半田バンプ
31 第1導電膜
32 第2導電膜
33 第3導電膜
34 第4導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成されたIDT電極と、
前記圧電基板上に形成され、前記IDT電極を外部端子に接続するための電極パッドと、
前記圧電基板上に形成され、前記IDT電極と前記電極パッドとを接続する接続配線と、
を備え、
前記IDT電極は、第1の厚さを有し、
前記電極パッドは、前記第1の厚さより大きい第2の厚さを有しており、
前記接続配線の厚さは、前記第1の厚さより大きく且つ前記第2の厚さより小さいことを特徴とする、弾性表面波装置。
【請求項2】
前記接続配線の厚さは、前記第1の厚さの7倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
圧電基板と、該圧電基板上に形成されたIDT電極、該IDT電極を外部端子に接続するための電極パッド、及び前記IDT電極と前記電極パッドとを接続する接続配線と、を備える弾性表面波装置の製造方法であって、
前記圧電基板上に、第1の厚さを有する前記IDT電極を形成する工程と、
前記圧電基板上に、前記第1の厚さより大きい厚さを有する前記接続配線を形成する工程と、
前記IDT電極及び前記接続配線上にレジストを塗布し、該IDT電極と該接続配線との接続部分を少なくとも覆うように前記レジストをパターニングする工程と、
パターニングされた前記レジストを利用して、前記圧電基板上に前記電極パッドを形成する工程と、
を備えることを特徴とする、弾性表面波装置の製造方法。
【請求項4】
前記レジストをパターニングする工程において、塗布された前記レジストを現像液によってパターニングすることを特徴とする、請求項3に記載の弾性表面波装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−252321(P2010−252321A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72215(P2010−72215)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】