説明

弾性表面波装置

【課題】弾性表面波装置の耐電力性の向上を図ること。
【解決手段】弾性表面波装置は、圧電性単結晶基板10と、上記圧電性単結晶基板上に形成された導電性材料からなる下地電極層21と、この下地電極層上にエピタキシャル成長により形成されたアルミニウムを含有する主電極層22と、により構成された交差指状の電極20と、を備える。そして、上記電極20は、上記主電極層22上に形成された、当該主電極層及び上記下地電極層とは異なりアルミニウムよりも比重の大きい導電性材料からなる上部層23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置にかかり、特に、圧電基板上にエピタキシャル成長により形成されたアルミニウムを含有する層を含む電極を有する弾性表面波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数フィルタや共振器として利用できる電子デバイスとして、弾性表面波装置(SAW(Surface Acoustic Wave)装置)がある。この弾性表面波装置は、主に、タンタル酸リチウム(LiTaO3)やニオブ酸リチウム(LiNbO3)などの圧電性を有する単結晶基板の表面に、弾性表面波を励振するアルミニウムなどの金属膜からなる交差指状電極を形成することで構成されている。
【0003】
そして、弾性表面波装置は小型化が可能であるため、近年における携帯電話機などの移動体通信機器のさらなる小型化に伴い、当該移動体通信機器にて受信電波や送信電波から特定の周波数帯域の電気信号を取り出すデュプレクサとして、弾性表面波装置が利用されている。
【0004】
一方で、上述したように、携帯電話機に装備されるデュプレクサとして弾性表面波装置が利用される場合には、常に高周波を入出力して処理するため、高い耐電力性能が要求されている。かかる要求に応じて、特許文献1には、弾性表面波装置の耐電力性を高めるための技術が開示されている。具体的に、特許文献1では、カット角が特定範囲の角度である圧電性単結晶基板を用い、この上に窒化チタン層を積層して、さらにその上に電極層となるアルミニウム層をエピタキシャル成長により形成することが開示されている。これにより、結晶粒界が存在しない電極を形成でき、耐電力性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−101372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示の弾性表面波装置では、弾性表面波装置に用いる圧電性単結晶基板のカット角が制限される、という不都合が生じる。つまり、圧電性単結晶基板の表面を形成する結晶構造が、窒化チタン層の結晶構造と一致することが必要であり、特定のカット角の圧電性単結晶基板を使用しなければならないという制限が生じるが、一方で特定範囲のカット角の圧電性単結晶基板を用いない場合には、弾性表面波装置の耐電力性が低下し、品質が劣化する、という問題があった。
【0007】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、弾性表面波装置における製造の制限を抑制しつつ、耐電力性の向上を図る、ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の一形態である弾性表面波装置は、
圧電性単結晶基板と、
上記圧電性単結晶基板上に形成された導電性材料からなる下地電極層と、この下地電極層上にエピタキシャル成長により形成されたアルミニウムを含有する主電極層と、により構成された交差指状の電極と、を備える。
そして、上記電極は、上記主電極層上に形成された、当該主電極層及び上記下地電極層とは異なりアルミニウムよりも比重の大きい導電性材料からなる上部層を有する、
という構成をとる。
【0009】
また、本発明の他の形態である弾性表面波装置の製造方法は、
圧電性単結晶基板上に導電性部材からなる下地電極層を形成し、この下地電極層上にエピタキシャル成長によりアルミニウムを含有する主電極層を形成し、この主電極層上に当該主電極層及び上記下地電極層とは異なりアルミニウムよりも比重の大きい導電性材料からなる上部層を形成して、上記圧電性単結晶基板上に、上記下地電極層と上記主電極層と上記上部層とによる交差指状の電極を形成する、という構成をとる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上のように構成されることにより、製造の制限を抑制しつつ、高い耐電力性を有する高品質な弾性表面波装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】携帯電話機の内部構成の概略を示すブロック図である。
【図2A】弾性表面波装置の構成の概略を示す上面図である。
【図2B】弾性表面波装置の構成の概略を示す図であり、図2AのA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施形態1における弾性表面波装置の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1における弾性表面波装置の製造手順を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1における弾性表面波装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態1における弾性表面波装置の特性評価を行うための回路を示す図である。
【図7A】本発明の実施例1における弾性表面波装置の構成を示す図である。
【図7B】本発明の実施例1における弾性表面波装置の特性評価結果を示す図である。
【図8A】実施例1における弾性表面波装置と比較する対象となる弾性表面波装置の構成を示す図である。
【図8B】実施例1における弾性表面波装置と比較する対象となる図8Aに開示した弾性表面波装置の特性評価結果を示す図である。
【図9A】本発明の実施例2における弾性表面波装置の構成を示す図である。
【図9B】本発明の実施例2における弾性表面波装置の特性評価結果を示す図である。
【図10A】本発明の実施例2における弾性表面波装置の他の構成を示す図である。
【図10B】本発明の実施例2における他の構成の弾性表面波装置の特性評価結果を示す図である。
【図11A】実施例2における弾性表面波装置と比較する対象となる弾性表面波装置の構成を示す図である。
【図11B】実施例2における弾性表面波装置と比較する対象となる図11Aに開示した弾性表面波装置の特性評価結果を示す図である。
【図12A】実施例1,2における弾性表面波装置と比較する対象となる弾性表面波装置の構成を示す図である。
【図12B】実施例1,2における弾性表面波装置と比較する対象となる図12Aに開示した弾性表面波装置の特性評価結果を示す図である。
【図13A】本発明の実施例3における弾性表面波装置の構成を示す図である。
【図13B】本発明の実施例3における弾性表面波装置の特性評価結果を示す図である。
【図14A】本発明における弾性表面波装置の特性を示す極点図である。
【図14B】本発明における弾性表面波装置の特性を示す半値幅である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図14Bを参照して説明する。図1は、携帯電話機の構成の概略を示すブロック図であり、図2A及び図2Bは、弾性表面波装置の構成を示す図である。図3は、実施形態1における弾性表面波装置の構成の一例を示す図であり、図4乃至図5は、弾性表面波装置の製造方法を示す図である。図6は、弾性表面波装置の特性評価を行うための回路を示す図であり、図7A乃至図14Bは、本発明における弾性表面波装置とその比較例との構成及び特性評価結果を示す図である。
【0013】
以下、まず、図1乃至図5を参照して、本発明における弾性表面波装置の構成及び製造方法の概略を説明する。その後、実施例1,2,3にて、図6乃至図14Bを参照して、本発明における弾性表面波装置の具体的な構成及び特性を、比較対象となる他の構成の弾性表面装置と比較して説明する。
【0014】
本発明における弾性表面波装置は、例えば、図1に示すような携帯電話機に装備され、送信側フィルタ部と受信側フィルタ部とを含み、アンテナから送信される送信周波数帯と、同じくアンテナから受信される受信周波数帯と、をそれぞれ分波する弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)デュプレクサ1(デュプレクサ)として使用されるものである。なお、携帯電話機の構成は既知であるため、図1に示す構成の詳細な説明は省略する。
【0015】
上記弾性表面波デュプレクサ1の一部の構成を図2Aの上面図に示す。この図に示すように、弾性表面波デュプレクサ1は、圧電性単結晶基板10上に薄膜にて形成された、複数の電極指を有する交差指状の電極20(IDT:Inter Digital Transducer)を備えて構成されている。また、その両側部には、レフレクター30をそれぞれ備えている。なお、図2Bには、図2AのA−A線断面図を示す。そして、図2A,図2Bに示す符号λは、交差指状の電極20の電極周期つまり圧電性単結晶基板10上を伝搬する弾性表面波(SAW)の波長を表している。なお、弾性表面波ディプレクサ1は、図示しないが、送信側フィルタ部と受信側フィルタ部とを含んで構成されている。
【0016】
ここで、本発明における弾性表面波装置は、弾性表面波デュプレクサ1に含まれる送信側フィルタ部と受信側フィルタ部とのいずれか一方にのみ備えられていて構成されていてもよい。また、本発明における弾性表面波装置は、弾性表面波デュプレクサ1として利用されることに限定されない。例えば、図1に示すBPF(バンドパスフィルタ)のように周波数フィルタとして利用されてもよく、共振器として利用されてもよい。
【0017】
以下、本発明における弾性表面波デュプレクサ1の構成について詳述する。但し、以下では、本発明において特徴となる構成については詳述するが、既知の構成については詳細な説明は省略する。
【0018】
まず、図3乃至図5を参照して、本発明における弾性表面波デュプレクサ1、特に、電極20の構成と、当該弾性表面波デュプレクサ1の製造方法を説明する。図3は、電極20の積層構成を示す図である。図4は、弾性表面波デュプレクサ1の製造手順を示す図であり、図5は、製造方法を示すフローチャートである。
【0019】
本発明における弾性表面波デュプレクサ1は、図3に示すように、圧電性単結晶基板10と、その上に薄膜にて形成された交差指状の電極20と、を備えている。そして、圧電性単結晶基板10は、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)やニオブ酸リチウム(LiNbO3)などの圧電性を有する単結晶基板である。なお、以下実施例にて説明する圧電性単結晶基板10は、カット角が24〜54°、つまり、X軸を中心にY軸を24〜54°回転させた新たなY軸に垂直な、X軸を含む面を表面とするよう切断したものであったり、カット角が−10〜+20°、つまり、X軸を中心にY軸を−10〜+20°回転させた新たなY軸に垂直な、X軸を含む面を表面とするよう切断したものである。但し、本発明の弾性表面波デュプレクサ1に用いる圧電性単結晶基板10は、いかなるカット角のものであってもよい。
【0020】
そして、本発明における弾性表面波デュプレクサ1は、上述した圧電性単結晶基板10上に形成された窒化チタン(TiN)層などの導電性材料からなる下地電極層21と、この下地電極層21上にエピタキシャル成長により形成されたアルミニウムを含有する主電極層22と、を備えている。なお、上記下地電極層21(下部電極層)は、圧電単結晶基板10の材料と主電極層22との格子定数の違いを緩和する緩衝層(バッファ層)として機能するものである。さらに、本発明では、エピタキシャル成長により形成された主電極層22の上面に、タングステン(W)やタンタル(Ta)といった導電性部材からなる上部層23が形成されている。そして、下地電極層21、エピタキシャル成長による主電極層22、上部層23によって、電極20が構成されている。また、弾性表面波デュプレクサ1は、上述した電極20の周囲を覆う二酸化ケイ素(SiO3)の層40を備えている。但し、本発明における弾性表面波デュプレクサ1は、二酸化ケイ素層40を備えていなくてもよい。
【0021】
次に、図3に示す構成の弾性表面波デュプレクサ1を製造する方法の一例を、図4乃至図5を参照して説明する。まず、図4(1)に示す圧電性単結晶基板10上に、図4(2)に示すように、スパッタ装置を用いて窒化チタン(TiN)層といった下地電極層(図3の符号21)を堆積する(ステップS1)。続いて、下地電極層上に、スパッタ装置を用いてアルミニウム(Al)をエピタキシャル成長させ、アルミニウム(Al)層(図3の符号22)を形成する(ステップS2)。さらに、アルミニウム(Al)層の上に、タングステン(W)層といった上部層(図3の符号23)を堆積する(ステップS3)。これにより、図4(2)に示すように、圧電性単結晶基板10上に、3層からなる電極20となる層が形成される。
【0022】
続いて、フォトプロセス(フォトリソグラフィプロセス)により、電極20となる層上に交差指状の電極パターンのレジストを形成し(ステップS4)、電極20となる層がかかる電極パターンの形状となるよう、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を行う(ステップS5)。その後、残ったレジストを除去することで、図2Aに示すような交差指状の電極20を形成することができる(図4(3))。
【0023】
続いて、図4(4)に示すように、圧電性単結晶基板10上及び電極20の周囲を覆うよう、二酸化ケイ素(SiO2)をスパッタ装置にて堆積する(ステップS6)。そして、図4(5)に示すように、二酸化ケイ素(SiO2)層(図3の符号40)の表面を、RIEあるいはイオンミリングにより平坦化する(ステップS7)。
【0024】
以上のようにして、圧電性単結晶基板10上に、下地電極層21、エピタキシャル成長によるアルミニウム層22、上部層23といった3層からなる薄膜の電極20を形成することができる。
【0025】
なお、エピタキシャル成長されたアルミニウム層22上に形成する上部層23は、タングステン(W)、タンタル(Ta)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)といった、高密度金属である第6周期元素に含まれるもののうち、いずれかの材料にて形成されるとよい。但し、上部層23の材料は、上述したものに限定されず、上述したアルミニウム(Al)よりも比重が大きい材料であったり、比較的電気抵抗が小さい材料であれば望ましいが、上記アルミニウム層22からなる主電極層及び窒化チタン層21からなる下地電極層とは異なる導電性材料であればよい。
【0026】
また、エピタキシャル成長によるアルミニウム層22は、アルミニウム(Al)のみで形成されていることに限定されず、アルミニウム(Al)を主成分とする層であってもよい。つまり、アルミニウム(Al)を主成分として、例えばCu、Ti、Ta、Mg、Ni等の金属を含んで形成されてもよい。
【0027】
また、上述した上部層23の厚みは、エピタキシャル成長されたアルミニウム層22の厚みよりも薄いことが望ましい。そして、特に、上部層の厚みは、伝搬する弾性表面波の波長λ(図2A,図2B参照)に対して0.25%〜0.90%の範囲であると望ましい。これにより、例えば上部層23がタングステン層のようにアルミニウム層22よりも電気抵抗が高い材料であっても、当該上部層23を薄く形成することで、電極20全体における電気抵抗を低減させることができる。
【0028】
(実施例)
次に、各実施例にて、本発明における弾性表面波デュプレクサ1の種々の構成例を説明すると共に、その特性評価を行う。この際に、比較対象となる比較対象弾性表面波デュプレクサの構成及び特性評価も併せて説明し、本発明における弾性表面波デュプレクサ1と比較する。
【0029】
なお、弾性表面波デュプレクサ1の特性評価を行う回路の構成を図6に示す。かかる回路を用いて、弾性表面波デュプレクサ1の特性評価を以下のように行う。
【0030】
まず、製造した本発明の弾性表面波デュプレクサ1の基板と、比較対象となる比較対象弾性表面波デュプレクサの基板とに、それぞれ外部接続用のパッド電極を形成する。そして、これらパッド電極に金ボールを接触させて超音波接合にて金バンプを形成し、各弾性表面波デュプレクサ基板を作成する。さらに、各弾性表面波デュプレクサ基板からダイシングにより切断した弾性表面波チップを、セラミック基板に超音波フリップチップボンドにて実装し、本発明の弾性表面波デュプレクサと比較対象弾性表面波デュプレクサとを完成させる。
【0031】
続いて、上述した各弾性表面波デュプレクサ100の耐電力特性を評価すべく、シンセサイザー105(信号発生器)により、弾性表面波デュプレクサ100の送信側フィルタ通過帯域の周波数に調整した信号を発生させ、パワーアンプ104で電力1Wに増幅し、弾性表面波デュプレクサ100の送信側入力端子に入力する。なお、弾性表面波デュプレクサ100は、オーブン101(恒温槽)で85℃の環境にある。
【0032】
このような状態で、ネットワークアナライザー103や電力計102を用いて、数千時間、耐電力特性を計測する。具体的には、弾性表面波デュプレクサ100の中心周波数を計測する。
【0033】
(実施例1)
まず、本発明の実施例1における弾性表面波デュプレクサの製造方法及び構成を、図7Aを参照して説明する。実施例1における弾性表面波デュプレクサは、圧電性単結晶基板10として、カット角39°のタンタル酸リチウム(39°LiTaO3)を用いている。そして、この圧電性単結晶基板10上に、スパッタ装置にてチタン(Ti)をターゲットとして、N2+Arガスを添加して窒化チタン(TiN)層21を堆積する。その後、圧電性単結晶基板10を大気開放せずに連続して、窒化チタン層21上に、アルミニウム(Al)をスパッタ装置にてエピタキシャル成長させ、アルミニウム層22を形成する。なお、エピタキシャル成長によるアルミニウム層22を、図7Aでは「Ep Al」と示しており、また、以下では、エピタキシャル成長させたアルミニウム層22をエピタキシャルアルミニウム層22と呼ぶこととする。そして、さらに大気開放せずに連続して、上述したエピタキシャルアルミニウム層22上に、タングステン(W)層23をスパッタ装置にて堆積させる。
【0034】
その後、フォトプロセスにより、圧電性単結晶基板10上の全面に形成された電極となる層上に、交差指状の電極パターンを形成し、Cl2+BCl3ガスによるRIEにて、窒化チタン(TiN)層21、エピタキシャルアルミニウム(Al)層22、および、タングステン(W)層23をエッチングして、交差指状の電極20を形成する。
【0035】
なお、上述した実施例1における弾性表面波デュプレクサの各層の厚みは、窒化チタン(TiN)層21が5nm、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22が265nm、タングステン(W)層23が5nm、となるよう形成した。
【0036】
これに対して、上記実施例1の弾性表面波デュプレクサの比較対象となる比較対象弾性表面波デュプレクサは、図8Aに示す構成をとる。具体的に、実施例1に対する比較対象弾性表面波デュプレクサは、まず、上述した実施例1と同様に、圧電性単結晶基板として、カット角39°のタンタル酸リチウム110(39°LiTaO3)を用いる。そして、この圧電性単結晶基板110上に、スパッタ装置にてチタン(Ti)をターゲットとして、N2+Arガスを添加して窒化チタン(TiN)層121を堆積する。その後、圧電性単結晶基板110を大気開放せずに連続して、窒化チタン層121上に、アルミニウム(Al)をスパッタ装置にてエピタキシャル成長させ、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層122を形成する。
【0037】
その後、フォトプロセスにより、圧電性単結晶基板10上に形成された電極となる層上に、交差指状の電極パターンを形成し、Cl2+BCl3ガスによるRIEにて、窒化チタン(TiN)層121、エピタキシャルアルミニウム(Al)層122をエッチングして、交差指状の電極120を形成する。このように、比較対象弾性表面波デュプレクサは、実施例1とは異なり、エピタキシャルアルミニウム(Al)層122上のタングステン(W)層が形成されていない。
【0038】
なお、上述した比較対象弾性表面波デュプレクサの各層の厚みは、窒化チタン(TiN)層21が5nm、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22が300nm、となるよう形成した。
【0039】
続いて、以上のようにして構成された図7Aに示す実施例1の弾性表面波デュプレクサの中心周波数の測定結果を図7Bに示し、比較対象弾性表面波デュプレクサの中心周波数の測定結果を図8Bに示す。これらを比較すると、まず、図8Bに示すように、比較対象弾性表面波デュプレクサについては、3000時間の試験後に中心周波数が0.5MHz以上変動しており、特性劣化が観られる。一方、実施例1の弾性表面波デュプレクサでは、6000時間の試験後においても中心周波数の変動は0.5MHz未満であり、特性劣化が観られない。
【0040】
従って、実施例1の弾性表面波デュプレクサは、エピタキシャルアルミニウム層22上にタングステン層23を形成したことによって、エピタキシャルアルミニウム層22のAl原子の移動が妨げられ、上述した試験結果に示すように、高い耐電力性を有することがわかる。また、アルミニウム(Al)の方がタングステン(W)よりも電気抵抗が低いため、当該タングステン層23の厚みを小さくすることで、弾性表面波デュプレクサの挿入損失を小さくでき、挿入損失の劣化が抑えられる。
【0041】
さらに、本発明では、アルミニウム(Al)材料とタングステン(W)材料を用いて弾性表面波装置を製造するため、これまでと同様の製造方法を用いることができ、電極の作製が複雑とはならない。例えば、ドライエッチング法、リフトオフ法のいずれも用いることができ、製法の自由度が高くなる。
【0042】
なお、窒化チタン(TiN)層21の厚みは、上述した構成においては、好ましくは0.3〜10nmであり、特に0.8〜7nmの範囲が好ましい。
【0043】
また、エピタキシャルアルミニウム(Al)層22の厚みは、弾性表面波装置にて適用される周波数帯域などに応じて適宜決定すればよい。例えば、上述した実施例1と比較対象とでは、弾性表面波デュプレクサの周波数特性がほぼ同じになるように、エピタキシャルアルミニウム(Al)層と、タングステン(W)層とのそれぞれの厚みが設定される。
【0044】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2における弾性表面波デュプレクサの製造方法及び構成を、図9A及び図10Aを参照して説明する。実施例2における弾性表面波デュプレクサは、上述した実施例1におけるものとほぼ同様の構成をとっているが、いくつかの点で異なり、以下のように製造する。
【0045】
まず、圧電性単結晶基板として、カット角0°のニオブ酸リチウム(0°LiNbO3)を用いている。そして、この圧電性単結晶基板10上に、スパッタ装置にてチタン(Ti)をターゲットとして、N2+Arガスを添加して窒化チタン(TiN)層21を堆積する。その後、圧電性単結晶基板10を大気開放せずに連続して、窒化チタン層21上に、アルミニウム(Al)をスパッタ装置にてエピタキシャル成長させ、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22を形成する。そして、さらに大気開放せずに連続して、上述したエピタキシャル成長させたエピタキシャルアルミニウム層22上に、タングステン(W)層23をスパッタ装置にて堆積させる。
【0046】
その後、上述同様に、フォトプロセスにより、圧電性単結晶基板10上に形成された電極となる層上に、交差指状の電極パターンを形成し、Cl2+BCl3ガスによるRIEにて、窒化チタン(TiN)層21、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22、および、タングステン(W)層23をエッチングして、交差指状の電極20を形成する。
【0047】
そして、さらに露出した圧電性単結晶基板10の表面及び電極20の周囲を覆うよう、二酸化ケイ素(SiO2)層40をスパッタ法にて形成する。その後、二酸化ケイ素層40の表面をRIEあるいはイオンミリングにより平坦化する。また、外部接続のために、二酸化ケイ素の一部をフォトプロセス、RIEプロセスによりエッチングする。なお、二酸化ケイ素(SiO2)層40は平坦化されていても良いし、平坦化されていなくてもよい。
【0048】
そして、上述した実施例2における弾性表面波デュプレクサの各層の厚みは、窒化チタン(TiN)層21が5nm、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22が90nm、タングステン(W)層23が15nmであり、二酸化ケイ素(SiO2)層40が450nm、となるよう形成した。
【0049】
なお、上述した二酸化ケイ素(SiO2)層40の厚みは、電極20の厚みよりも大きく、当該電極20の上面が埋まる厚さであればよい。そして、弾性表面波デュプレクサ1の場合には、適用される周波数帯域や要求特性(伝送特性、反射特性、温度特性など)に応じて適宜決定されるが、例えば、350nm~550nmの厚みに形成され、弾性表面波の波長λ(電極周期)(図2A,図2B参照)を基準とした規格化膜厚で17%〜33%であると望ましい。
【0050】
以上のように、本発明の実施例2における弾性表面波デュプレクサは、上述した実施例1のものに対して、圧電性単結晶基板10のカット角が0°であることと、二酸化ケイ素(SiO2)層を有している点で異なる。
【0051】
また、本発明の実施例2の変形例における弾性表面波デュプレクサの構成を図10Aに示す。この図に示すように、実施例2の変形例における弾性表面波デュプレクサは、上述した図9Aにおけるものに対して、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22上に形成する上部層23の材料が、タングステン(W)ではなく、タンタル(Ta)である点で異なる。その他の構成は同じであり、製造方法も同様である。
【0052】
なお、上述した実施例2の変形例における弾性表面波デュプレクサの各層の厚みは、窒化チタン(TiN)層21が5nm、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22が105nm、タンタル(Ta)層23が15nmであり、二酸化ケイ素(SiO2)層40が450nm、となるよう形成した。
【0053】
このように、本発明の実施例2における弾性表面波デュプレクサは、上述した実施例1のものに対して、圧電性単結晶基板10のカット角が0°である点、上部層23がタンタル(Ta)である点、二酸化ケイ素(SiO2)層を有している点、で異なる。
【0054】
これに対して、上記実施例2の弾性表面波デュプレクサの比較対象となる比較対象弾性表面波デュプレクサは、図11A及び図12Aに示す構成をとる。具体的に、実施例2に対する第1の比較対象弾性表面波デュプレクサは、まず、上述した実施例2と同様に、圧電性単結晶基板として、カット角0°のニオブ酸リチウム(0°LiNbO3)110を用いる。そして、この圧電性単結晶基板110上に、スパッタ装置にてチタン(Ti)をターゲットとして、N2+Arガスを添加して窒化チタン(TiN)層121を堆積する。その後、圧電性単結晶基板110を大気開放せずに連続して、窒化チタン層121上に、アルミニウム(Al)をスパッタ装置にてエピタキシャル成長させ、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層122を形成する。
【0055】
その後、フォトプロセスにより、圧電性単結晶基板10上に形成された電極となる層上に、交差指状の電極パターンを形成し、Cl2+BCl3ガスによるRIEにて、窒化チタン(TiN)層121、エピタキシャルアルミニウム(Al)層122をエッチングして、交差指状の電極120を形成する。
【0056】
そして、さらに露出した圧電性単結晶基板110の表面及び電極120の周囲を覆うよう、二酸化ケイ素(SiO2)層140をスパッタ法にて形成する。なお、二酸化ケイ素(SiO2)層140の上面は、図11Aの例では平坦化されていないが、平坦化されてもよい。
【0057】
このように、第1の比較対象弾性表面波デュプレクサは、実施例2及び実施例2の変形例に対して、タングステン(W)層やタンタル(Ta)層が形成されていない点で異なる。
【0058】
なお、上述した第1の比較対象弾性表面波デュプレクサの各層の厚みは、窒化チタン(TiN)層121が5nm、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層122が197nm、二酸化ケイ素(SiO2)層140が450nm、となるよう形成した。
【0059】
また、上記実施例2の弾性表面波デュプレクサの比較対象となる第2の比較対象弾性表面波デュプレクサは、図12Aに示す構成をとる。具体的に、実施例2に対する第1の比較対象弾性表面波デュプレクサは、まず、上述した実施例2と同様に、圧電性単結晶基板として、カット角0°のニオブ酸リチウム(0°LiNbO3)110を用いる。そして、この圧電性単結晶基板110上に、スパッタ装置にてAl-Cu合金層122を堆積させる。次に大気開放せずに連続してタングステン(W)層123をスパッタ装置にて堆積させる。なお、スパッタ法にて形成したAl-Cu合金層122は、エピタキシャル成長によるアルミニウム層ではないため、図12Aでは「Non-Ep Al」と示している。
【0060】
その後、フォトプロセスにより、圧電性単結晶基板10上の一面に形成された電極となる層上に交差指状の電極パターンを形成し、Cl2+BCl3ガスによるRIEにて、Al-Cu合金(Non-Ep Al)層122、タングステン(W)層123をエッチングして、交差指状の電極120を形成する。
【0061】
そして、さらに露出した圧電性単結晶基板110の表面及び電極120の周囲を覆うよう、二酸化ケイ素(SiO2)層140をスパッタ法にて形成する。なお、二酸化ケイ素(SiO2)層140の上面は、図12Aの例では平坦化されているが、平坦化されていなくてもよい。
【0062】
なお、上述した第2の比較対象弾性表面波デュプレクサの各層の厚みは、Al-Cu合金層122が98nm、タングステン(W)層123が15nm、二酸化ケイ素(SiO2)層140が450nm、となるよう形成した。
【0063】
このように、第2の比較対象弾性表面波デュプレクサは、タングステン(W)層は形成されているものの、主電極となる層が、エピタキシャルアルミニウム層ではなく、スパッタ法により堆積したAl-Cu合金層122である点で異なる。
【0064】
以上のようにして構成された図9Aに示す実施例2の弾性表面波デュプレクサの中心周波数の測定結果を図9Bに示し、図10Aに示す実施例2の変形例における弾性表面波デュプレクサの中心周波数の測定結果を図10Bに示す。また、図11Aに示す第1の比較対象弾性表面波デュプレクサの中心周波数の測定結果を図11Bに示し、図12Aに示す第2の比較対象弾性表面波デュプレクサの中心周波数の測定結果を図12Bに示す。
【0065】
その結果、図9Bに示す実施例2の弾性表面波デュプレクサは、6000時間の試験においても、中心周波数は0.5MHz以内の変動しかなく、特性劣化が観られない。一方、図11Bに示す第1の比較対象弾性表面波デュプレクサについては、3000時間の試験後に、中心周波数が0.5MHz以上変動しており、特性劣化が観られる。
【0066】
そして、圧電性単結晶基板10のカット角が0°の場合であっても、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22上にタングステン(W)層23を形成することで、弾性表面波デュプレクサの耐電力性の向上を図ることができる。つまり、例えば、−10〜+20回転Yカット基板では、従来の+39°回転Yカット付近のカット角(例えば+24〜+42回転Yカット基板)の場合と比較して単結晶基板と下地電極層とのミスマッチ率が多く、多くの欠陥を含むエピタキシャルアルミニウム層が得られる場合があるが、このような構成であっても耐電力性が良好となることがわかる。
【0067】
従って、圧電性単結晶基板10のカット角や伝搬方向は、実施例1で説明した39°やX方向に限定されず、他のカット角や伝搬方向のタンタル酸リチウム(LiTaO3)基板でもよく、あるいは、結晶構造が類似したニオブ酸リチウム(LiNbO3)であってもよい。そして、弾性表面波フィルタ、弾性表面波デュプレクサでは、圧電性単結晶基板10は、24〜54°回転Y LiTaO3、41±10°回転Y LiNbO3、64±10°回転Y LiNbO3、128±10°回転Y LiNbO3、-10〜+20°回転Y LiNbO3であると好ましい。
【0068】
以上説明したように、圧電性単結晶基板のカット角の値によらず、弾性表面波装置の耐電力性の向上を図ることができるため、弾性表面波装置の構成の制限が抑制される。従って、高品質かつ低コストにて製造することができる。
【0069】
なお、電極20が二酸化ケイ素(SiO2)層40で覆われている場合には、当該二酸化ケイ素(SiO2)層の内部応力が電極20に加わり、当該電極中のアルミニウム(Al)原子の移動が促進されるため、耐電力性がますます劣化することが考えられる。ところが、上述した特性評価を参照すると、電極20を形成するエピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22の上部にタングステン(W)層23を形成することで、耐電力性が向上する、ということがわかる。
【0070】
また、図10Bに示す実施例2の変形例における弾性表面波デュプレクサについては、4000時間の試験後、中心周波数は0.5MHz以上の変動があったが、図11Aに示す上記第1の比較対象弾性表面波デュプレクサよりも、特性劣化は抑えられている。従って、電極20を形成するエピタキシャルアルミニウム(Ep Al)の上部に形成される層の材料は、タングステン(W)に限定されず、タンタル(Ta)であってもよい。このことから、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22上に上部層23として積層する材料は、タングステン(W)、タンタル(Ta)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)といった、高密度金属である第6周期元素であれば有効であり、その比重が、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層を構成するアルミニウムや二酸化ケイ素(SiO2)よりも大きいことが望ましい。
【0071】
また、第2の比較対象弾性表面波デュプレクサについては、50時間で、0.5MHz以上の周波数変動となった。なお、図示していないが、Al-Cu合金層上にタングステン(W)層が無い場合も、ほぼ同様の結果となった。
【0072】
以上のことから、電極20の上部のタングステン(W)などの上部層23は、圧電性単結晶基板10上にエピタキシャル成長させたアルミニウムを含有する主電極層22上に形成する場合に、耐電力性が向上し、有効であることがわかる。
【0073】
ここで、図14Aの左図に、0°回転Y-X伝播LiNbO3、右図に39°回転Y-X伝播LiTaO3上に、それぞれ成膜したエピタキシャルアルミニウムの(111)面方位の極点図を示す。これらの図に示すように、どちらの圧電性単結晶基板の場合も明確なスポットが表されており、アルミニウムがエピタキシャル成長していることが分かる。但し、それぞれの極点図の丸印部分の信号の半値幅を図14Bに示すと、39°LiTaO3上のアルミニウム層の半値幅は0.73°であり、0°LiNbO3上のアルミニウム層の半値幅は1.82°であった。このとき、半値幅が小さい39°LiTaO3上の方が鋭いスポットとなっていることから一方向にエピタキシャル成長していることがわかるため、良好な結晶性を示している。なお、結晶性の点では、カット角が39°前後のものの方が優れているが、39°LiTaO3上のアルミニウム層と比較して良好ではない結晶性を示す0°LiNbO3を弾性表面波デュプレクサ1に適用した場合においても、上述したように、耐電力性の向上が図ることができる。従って、弾性表面波デュプレクサにカット角が0°前後の圧電性単結晶基板10を用いることで、製造時における部材管理の手間や製造コストの低減を図ることができる。
【0074】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3における弾性表面波デュプレクサの製造方法及び構成を、図13Aを参照して説明する。実施例3における弾性表面波デュプレクサは、上述した実施例2におけるものとほぼ同様の構成をとっているが、窒化チタン(TiN)層とエピタキシャルアルミニウム層との間に、チタン(Ti)層を有している点で異なる。以下、製造方法について説明する。
【0075】
まず、圧電性単結晶基板として、カット角0°のニオブ酸リチウム(0°LiNbO3)を用いている。そして、この圧電性単結晶基板10上に、スパッタ装置にてチタン(Ti)をターゲットとして、N2+Arガスを添加して窒化チタン(TiN)層21を堆積し、その上に、チタン(Ti)をターゲットとしてArガスにてチタン(Ti)層21’を成膜する。
【0076】
次に、チタン層21’上に、アルミニウム(Al)をスパッタ装置にてエピタキシャル成長させ、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22を形成する。そして、さらに大気開放せずに連続して、上述したエピタキシャル成長させたエピタキシャルアルミニウム層22上に、タングステン(W)層23をスパッタ装置にて堆積させる。
【0077】
ここで、本実施例の特徴であるチタン(Ti)層21’を成膜する理由について説明する。仮にチタン(Ti)層21’を形成しない場合には、上述した実施例1,2のように窒化チタン層21上にアルミニウム(Al)層22をエピタキシャル成長させるが、このとき、窒化チタン(TiN)層21を堆積するスパッタ装置とは異なるスパッタ装置を用いることがある。すると、窒化チタン(TiN)層21の表面が一旦大気に曝される場合があり、当該表面が変化し、その上にアルミニウム(Al)層22がエピタキシャル成長しないことがある。一方で、上述したように窒化チタン(TiN)層21上にチタン(Ti)層21’を形成することで、その上にアルミニウム(Al)層22をエピタキシャル成長させることができる。
【0078】
なお、上記窒化チタン(TiN)層21の厚みは、好ましくは0.3〜10nm、特に0.8〜7nmの範囲であることが好ましい。また、チタン(Ti)層21’は、その純度が高ければ高い程望ましく、特に、純度99.9%以上であればさらに好ましい。
【0079】
その後、上述同様に、フォトプロセスにより、圧電性単結晶基板10上の一面に形成された電極となる層上に、交差指状の電極パターンを形成し、Cl2+BCl3ガスによるRIEにて、窒化チタン(TiN)層21、チタン(Ti)層21’、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22、および、タングステン(W)層23をエッチングして、交差指状の電極20を形成する。
【0080】
そして、さらに露出した圧電性単結晶基板10の表面及び電極20の周囲を覆うよう、二酸化ケイ素(SiO2)層40をスパッタ法にて形成する。その後、二酸化ケイ素層40の表面をRIEあるいはイオンミリングにより平坦化する。また、外部接続のために、二酸化ケイ素の一部をフォトプロセス、RIEプロセスによりエッチングする。なお、二酸化ケイ素(SiO2)層40は平坦化されていても良いし、平坦化されていなくてもよい。
【0081】
なお、上述した実施例3における弾性表面波デュプレクサの各層の厚みは、窒化チタン(TiN)層21が5nm、チタン(Ti)層21’が5nm、エピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22が82nm、タングステン(W)層23が15nmであり、二酸化ケイ素(SiO2)層40が450nm、となるよう形成した。
【0082】
以上のように、本発明の実施例3における弾性表面波デュプレクサは、上述した実施例2のものに対して、窒化チタン(TiN)層21とエピタキシャルアルミニウム層22との間にチタン(Ti)層21’を有している点で異なる。つまり、圧電性単結晶基板10とエピタキシャルアルミニウム(Ep Al)層22との間の下地電極層が、窒化チタン(TiN)層21とチタン(Ti)層21’との2層で形成されている点で異なる。但し、下地電極層は、必ずしも2層で形成されることに限定されない。
【0083】
以上のようにして構成された図13Aに示す実施例3の弾性表面波デュプレクサの中心周波数の測定結果を図13Bに示す。この図に示すように、実施例3の弾性表面波デュプレクサは、6000時間の試験においても、中心周波数は0.5MHz以内の変動しかなく、特性劣化が観られない。従って、上述した構成の弾性表面波デュプレクサであっても、耐電力性の向上を図ることができる。
【0084】
なお、上記構成、つまり、圧電性単結晶基板10とエピタキシャルアルミニウム層22との間の下地電極層を窒化チタン(TiN)層21とチタン(Ti)層21’とにより形成した構成を、実施例1,2の構成に適用してもよい。
【0085】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態では、上述した実施形態1で説明した弾性表面波デュプレクサを構成する弾性表面波装置の構成及び製造方法の概略を説明する。
【0086】
本実施形態における弾性表面波装置は、
圧電性単結晶基板と、
上記圧電性単結晶基板上に形成された導電性材料からなる下地電極層と、この下地電極層上にエピタキシャル成長により形成されたアルミニウムを含有する主電極層と、により構成された交差指状の電極と、を備える。
そして、上記電極は、上記主電極層上に形成された、当該主電極層及び上記下地電極層とは異なる他の導電性材料からなる上部層を有する、
という構成をとる。
【0087】
また、上記弾性表面波装置では、
上記上部層は、アルミニウムよりも比重の大きい導電性材料にて形成されている、
という構成とる。
【0088】
そして、さらに、上記弾性表面波装置では、
上記上部層は、第6周期元素のうちのいずれかの材料にて形成されている、という構成とる。特に、上部層は、タングステン(W)やタンタル(Ta)にて形成されている、と望ましい。
【0089】
上記発明によると、電極を構成するエピタキシャル成長により形成された主電極層上にさらに他の導電性材料からなる上部層を形成することで、上述した各実施例で説明した耐電力性試験結果に示すように、弾性表面波装置の耐電力性のさらなる向上を図ることができる。このとき、圧電性単結晶基板のカット角の値によらず、弾性表面波装置の耐電力性の向上を図ることができるため、弾性表面波装置の構成の制限が抑制される。従って、高品質かつ低コストにて製造することができる。
【0090】
そして、特に、上記上層部を、タングステンやタンタルなど、電気抵抗が低く比重の大きい材料で形成することで、上述した各実施例で説明した耐電力性試験結果に示すように、弾性表面波装置の耐電力性の向上が顕著となる。
【0091】
また、上記弾性表面波装置では、
上記上部層の厚みは、上記主電極層の厚みよりも薄い、という構成をとる。
例えば、上記上部層の厚みは、伝搬する弾性表面波の波長に対して0.25%〜0.90%の範囲である、と望ましい。
【0092】
上記発明によると、上記上部層を形成する材料の電気抵抗が主電極層よりも高い場合であっても、上層部の厚みを主電極層よりも薄く形成することで、電極全体の電気抵抗を低減させることができ、弾性表面波装置の性能の低下を抑制できる。
【0093】
また、上記弾性表面波装置では、
上記下地電極層は、上記圧電性単結晶基板上に形成された窒化チタン層と、この窒化チタン層上に形成されたチタン層と、を備えて構成されており、
上記主電極層は、上記チタン層上にエピタキシャル成長により形成されている、
という構成をとる。
【0094】
上記発明によると、下地電極層上にエピタキシャル成長により主電極層を形成する際に、当該主電極層を形成するための装置交換などによって下地電極層の表面が大気に触れることがあるが、かかる場合であっても、窒化チタン層上にチタン層を形成することで、当該チタン層上に良好な主電極層をエピタキシャル成長させることができる。その結果、高品質な弾性表面波装置を製造することができる。
【0095】
また、上記弾性表面波装置では、
上記電極の周囲を、二酸化ケイ素で覆って形成した、という構成をとる。
【0096】
上記発明の構成であっても、上述した実施例で説明した耐電力性試験結果に示すように、弾性表面波装置の耐電力性の向上を図ることができる。
【0097】
また、上述した弾性表面波装置は、以下の製造方法にて製造することができる。
つまり、本実施形態における弾性表面波装置の製造方法は、
圧電性単結晶基板上に導電性部材からなる下地電極層を形成し、この下地電極層上にエピタキシャル成長によりアルミニウムを含有する主電極層を形成し、この主電極層上に当該主電極層及び上記下地電極層とは異なる他の導電性材料からなる上部層を形成して、上記圧電性単結晶基板上に、上記下地電極層と上記主電極層と上記上部層とによる交差指状の電極を形成する、
という構成をとる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明における弾性表面波装置は、携帯電話機に装備される弾性表面波デュプレクサや弾性表面波フィルタなどに利用でき、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0099】
1 弾性表面波デュプレクサ
10 圧電性単結晶基板
20 電極
21 窒化チタン層(下地電極層)
21’ チタン層(下地電極層)
22 エピタキシャルアルミニウム層(主電極層)
23 タングステン層(上部層)
30 レフレクター
40 二酸化ケイ素層
100 弾性表面波デュプレクサ
101 オーブン
102 電力計
103 ネットワークアナライザー
104 パワーアンプ
105 シンセサイザー
110 圧電性単結晶基板
120 電極
121 窒化チタン層
140 二酸化ケイ素層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性単結晶基板と、
前記圧電性単結晶基板上に形成された導電性材料からなる下地電極層と、この下地電極層上にエピタキシャル成長により形成されたアルミニウムを含有する主電極層と、により構成された交差指状の電極と、を備え、
前記電極は、前記主電極層上に形成された、当該主電極層及び前記下地電極層とは異なりアルミニウムよりも比重の大きい導電性材料からなる上部層を有する、
弾性表面波装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波装置であって、
前記上部層は、タングステン、又は、タンタルにて形成されている、
弾性表面波装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の弾性表面波装置であって、
前記上部層の厚みは、前記主電極層の厚みよりも薄い、
弾性表面波装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性表面波装置であって、
前記上部層の厚みは、伝搬する弾性表面波の波長に対して0.25%〜0.90%の範囲である、
弾性表面波装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性表面波装置であって、
前記下地電極層は、前記圧電性単結晶基板上に形成された窒化チタン層と、この窒化チタン層上に形成されたチタン層と、を有して構成されており、
前記主電極層は、前記チタン層上にエピタキシャル成長により形成されている、
弾性表面波装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の弾性表面波装置であって、
前記電極の周囲を、二酸化ケイ素で覆って形成した、
弾性表面波装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の弾性表面波装置を備えて構成されたデュプレクサ。
【請求項8】
圧電性単結晶基板上に導電性部材からなる下地電極層を形成し、この下地電極層上にエピタキシャル成長によりアルミニウムを含有する主電極層を形成し、この主電極層上に当該主電極層及び前記下地電極層とは異なりアルミニウムよりも比重の大きい導電性材料からなる上部層を形成して、前記圧電性単結晶基板上に、前記下地電極層と前記主電極層と前記上部層とによる交差指状の電極を形成する、
弾性表面波装置の製造方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14B】
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【図14A】
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【公開番号】特開2011−211460(P2011−211460A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76633(P2010−76633)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】