説明

往復動圧縮機の容量調整方法

【課題】ヘッドエンドアンローダ無しで段階的な容量調整が実現でき、かつロード切替時の切替タイミングに差異を生ずることなくロード切替可能な往復動圧縮機の容量調整方法を提供する。
【解決手段】複数段の往復動圧縮機1A,2A及び1B,2Bを備え、前記複数段の往復動圧縮機1A,2A及び1B,2Bは各段毎にシリンダを2筒、即ち5a,6a及び5b,6bを備え、前記各シリンダ5a,6a及び5b,6bはそのシリンダ毎に収容されたピストン3にて隔てられてなる2室の圧縮室HE,CEを備え、前記各圧縮室HE,CEはその圧縮室毎にロード・アンロードを切替え可能な吸込弁アンローダ7を備える往復動圧縮機の容量調整方法において、予め設定された時間に従って前記圧縮室HE,CEのロード状態・アンロード状態を切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動圧縮機の容量調整方法に関し、より詳しくは、0%から100%に至るまでの段階的な容量の調整を、ヘッドエンドアンローダ(クリアランスポケット)の無い状態で実現可能な往復動圧縮機の容量調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LNG(液化天然ガス)の蒸発に伴うBOG(ボイルオフガス)の圧縮に用いられる圧縮機には、BOGの発生量の変動に対応可能な往復動圧縮機が一般的に用いられており、この様な往復動圧縮機の概要及び容量調整方法について図5,6を参照しながら説明する。図5は往復動圧縮機の一種である対向釣合型2段圧縮機を説明するための模式図、図6は図5のY部詳細を示す部分詳細断面図である。この対向釣合型2段圧縮機は、駆動モータMによる回転運動を往復運動に変換するクランク機構20と、このクランク機構20に連結されガスを圧縮する1段目の往復圧縮機21A,21Bと2段目の往復圧縮機22A,22Bとによって構成される。
【0003】
そして、前記クランク機構20により前記2対の往復圧縮機21A,22A及び21B,22Bのピストン23を夫々対向して駆動し、前記第1段圧縮機21A,21Bのピストン23で圧縮したガスを、更に第2段圧縮機22A,22Bのピストン23で圧縮して高圧を得る様に構成されている。この様な複数段の往復動圧縮機は、図5の様な2段圧縮機の場合は圧力1MPa〜1.5MPa程度の、3段圧縮機の場合は2〜4MPa程度の高圧の圧縮気体が得られる。
【0004】
この様な従来例に係る2段往復動圧縮機の各シリンダ24a,24b及び25a,25bは、夫々ガス圧縮室(以下、圧縮室とも称す)を2室、即ち、ヘッドエンド側のガス圧縮室HE及びクランクエンド側のガス圧縮室CEを有しており、各圧縮室HE,CEのロード・アンロードは、これらの各圧縮室HE,CEに設けられた吸込弁アンローダ27の開閉により切替される。
【0005】
この吸込弁アンローダ27は、図6に示す如く、空気圧を利用したアクチュエータ31によりスパイダー32を駆動し、このスパイダー32に取り付けられたフィンガー32aの先端が前進して、弁板27aを押し込み拘束し、吸込側空間100とガス圧縮室とを連通して、圧縮室HEまたは/及びCE(HE,CEの何れか一方、あるいは両方)をアンロードさせる。その一方、前記フィンガー32aが後退して、弁板27aが前後の差圧(吸込側空間100とガス圧縮室との差圧)で開閉作動することによって、前記圧縮室HEまたは/及びCE(HE,CEの何れか一方、あるいは両方)をロードさせる様に構成されている。
【0006】
更に、前記各圧縮室HEのヘッドには、図5に示す如くクリアランスポケット28が設けられ、ヘッドエンドアンローダ29のピストン30に接続されたプラグ29aにより前記クリアランスポケット28を開閉させることよって、前記圧縮室HEの圧縮容積を増減して圧縮室HEの容量調整を行っている。
【0007】
次に、この様な従来例に係る2段往復動圧縮機の運転方法につき、以下図7及び表1を参照しながら前図5,6も併用して説明する。図7は従来例に係る2段往復動圧縮機の運転方法を説明するための模式図であり、図(a)は0%負荷時、図(b)は25%負荷時、図(c)は50%負荷時、図(d)は75%負荷時、図(e)は100%負荷時の状態を夫々示す。表1は前記各負荷運転における圧縮室HE,CEの吸込弁アンローダ及びヘッドエンドアンローダの状態を示す。
【0008】
即ち、75%負荷時では、21A,22Aシリンダを100%負荷、21B,22Bシリンダを50%負荷(その逆も可)とし、クリアランスポケット28を用いなくても実現できる。一方、25%負荷時では、ヘッドエンドアンローダ29のプラグ29aを開いてクリアランスポケット38にも負荷させている。従って、従来例に係る2段往復動圧縮機の25%負荷運転時においては、ヘッドエンドアンローダが必須であったが、構造上シリンダ先端に取り付けるため、振動等の観点からも無い方が望ましい。
【0009】
【表1】

【0010】
また、この様なヘッドエンドアンローダ29のプラグ29a開閉時の移動量L1は約50mmであるのに対し、吸込弁アンローダ27の弁板27aの押え込み量L2はせいぜい数mmであるため、ロード切替時に前記吸込弁アンローダ27とヘッドエンドアンローダ29とを同時に作動させる場合には、切替タイミングに差異を生じて来る。
【0011】
例えば、0%ロード(アンロード)から50%ロードに切替える場合、シリンダ22A,22Bの吸込弁アンローダ27によるCEロードからHEロードへの切替と、ヘッドエンドアンローダ29のプラグ29a開によるクリアランスポケット28のロードへの切替の様な2種類のアンローダを切替える場合に、上記切替に必要な時間の差異によりシリンダ21A,21Bとシリンダ22A,22Bとでロードの切替え方にずれを生じる。
【0012】
一方、他の従来例に係る往復動圧縮機の容量調整方法として、往復動圧縮機を駆動する電動機に、2組以上の独立した巻線を有する極数切換誘導電動機を用い、高速回転する高速用巻線による高速出力トルクを低速回転する低速用巻線による低速出力トルクよりも少なくとも部分的に大きく、かつ極数切換時のトルク差が負荷トルクより大きくなるように設定し、高速出力トルクと低速出力トルクの差が負荷トルクよりも大きくなるまで、低速用巻線に通電して加速し、次いで、低速用巻線に通電したまま高速用巻線に通電し、短時間後に低速用巻線の通電をオフして極数切換を行うものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3801702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記極数切換による容量調整方法は、電動機に重複通電による過電流を通電する必要があるため、この重複通電時間に制約があり、誤作動や操作ミス等によりこの制約時間以上に重複通電した場合は、電動機に焼付等の損傷を与えるという問題点がある。
【0014】
従って、本発明の目的は、ヘッドエンドアンローダ無しで0%から100%に至るまでの段階的な容量の調整、例えば25%ロード等が実現でき、かつロード切替時の切替タイミングに差異を生ずることなくロード切替可能な往復動圧縮機の容量調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る往復動圧縮機の容量調整方法が採用した手段は、
複数段の往復動圧縮機を備え、
前記複数段の往復動圧縮機は各段毎にシリンダを2筒ずつ備え、
前記各シリンダはそのシリンダ毎に収容されたピストンにて隔てられてなる2室の圧縮室を備え、
前記各圧縮室はその圧縮室毎にロード・アンロードを切替え可能な吸込弁アンローダを備える往復動圧縮機の容量調整方法において、
予め設定された時間に従って前記圧縮室のロード状態・アンロード状態を切替えることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項2に係る往復動圧縮機の容量調整方法が採用した手段は、請求項1に記載の往復動圧縮機の容量調整方法において、前記時間が一定時間間隔であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項3に係る往復動圧縮機の容量調整方法が採用した手段は、請求項1または2に記載の往復動圧縮機の容量調整方法において、前記各圧縮室に備えられた吸込弁アンローダが、空気圧を利用したアクチュエータにより作動され、これらのアクチュエータへの給気を開閉制御する電磁弁の一部をシリーズに接続すると共に、前記時間信号によってこれらの電磁弁を開閉することを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項4に係る往復動圧縮機の容量調整方法が採用した手段は、請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の往復動圧縮機の容量調整方法において、
前記複数段の往復動圧縮機が、少なくとも、低段のシリンダに収容されたピストンと、高段のシリンダの収容されたピストンとをクランク機構にて連結して構成されたものであって、
前記低段のシリンダと前記高段のシリンダにおけるロード状態にある夫々の圧縮機が、一方がヘッドエンド側の圧縮室、他方がクランクエンド側の圧縮室となるよう、各圧縮室のロード状態・アンロード状態を切替えることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項5に係る往復動圧縮機の容量調整方法が採用した手段は、請求項4に記載の往復動圧縮機の容量調整方法において、前記低段のシリンダのロード状態である圧縮室をヘッドエンド側の圧縮室とし、前記高段のシリンダのロード状態である圧縮室をクランクエンド側の圧縮室としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に係る往復動圧縮機の容量調整方法によれば、0%から100%に至るまでの段階的な容量(負荷)、例えば、100%,75%,50%,25%,0%の各ロードの調整を、ヘッドエンドアンローダ及びクリアランスポケット無しで実現できる。
【0021】
また、本発明の請求項2に係る往復動圧縮機の容量調整方法によれば、前記各圧縮室のロード切替間隔を適切な時間とすることにより、0%ロード(無負荷)時のシリンダ過熱によるリング材の損傷防止が可能となる。
【0022】
更に、本発明の請求項3に係る往復動圧縮機の容量調整方法によれば、0%ロードを検出するための圧力検出器の数を2個に減らすことが出来る。また更に、本発明の請求項4に係る往復動圧縮機の容量調整方法によれば、クランク機構の回転に伴うトルクの変動を軽減することが可能となり、本発明の請求項5に係る往復動圧縮機の容量調整方法によれば、ピストンに設けられるロッドパッキン等の軸封手段にかかる負荷を軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
先ず、本発明の実施の形態1に係る往復動圧縮機の構成について図1を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る2段往復動圧縮機の構成を説明するための系統図である。本発明の実施の形態1に係る2段往復動圧縮機は、駆動モータMによる回転運動を往復運動に変換するクランク機構4と、このクランク機構4に連結されガスを圧縮する1段目の往復動圧縮機1A,1Bと2段目の往復動圧縮機2A,2Bとによって構成される。1段目の往復動圧縮機1A,1Bは各々シリンダ5a,5bを、2段目の往復動圧縮機2A,2Bは各々シリンダ6a,6bを備えているので、各段の往復動圧縮機は各段毎にシリンダを2筒ずつ備えているといえる。
【0024】
そして、前記クランク機構4により対向する2対の往復圧縮機1A,2A及び1B,2Bのピストン3を夫々対向して駆動し、前記第1段圧縮機1A,1Bのピストン3で圧縮したガスを、更に第2段圧縮機2A,2Bのピストン3で圧縮して高圧の圧縮空気を得る様に構成されている。この様な2段往復動圧縮機の各シリンダ5a,5b及び6a,6bは、夫々ガス圧縮室を2室、即ち、ヘッドエンド側のガス圧縮室HE及びコンロッドエンド側のガス圧縮室CEを有している。
【0025】
従って、各シリンダ5a,5b,6a,6bは、そのシリンダ毎に収容されたピストン3に隔てられてなる2室の圧縮室を夫々備えている。また、この複数段(2段)の往復動圧縮機は、低段(1段目)のシリンダ5a,5bに収容されたピストン3と、高段(2段目)のシリンダ6a,6bに収容されたピストン3とを、クランク機構4にて連結して構成されたものといえる。各圧縮室HE,CEのロード・アンロードは、これらの各圧縮室HE,CEに夫々設けられた吸込弁アンローダ7の開閉により切替される。
【0026】
この吸込弁アンローダ7は、図6に示した従来例の吸込弁アンローダと同様に、空気圧を利用したアクチュエータ31によりスパイダー32を駆動し、このスパイダー32に取り付けられたフィンガー32aが前進して、弁板27aを押し込み拘束し、吸込側と連通することによって圧縮室HEをアンロードさせ、前記フィンガー32aが後退することによって弁板27aが前後の差圧で開閉作動することによって、圧縮室HEをロードさせる様に構成されている。
【0027】
そして、本発明の実施の形態1に係る往復動圧縮機は、制御器8内に予め設定された時間信号によって、即ち予め設定された時間に従って、前記吸込弁アンローダ7のロード・アンロード、即ち、各圧縮室HE,CEのロード状態・アンロード状態を切替え可能に構成されている。即ち、圧空源から前記吸込弁アンローダ7を駆動する各アクチュエータへは、電磁弁9a,9b,9c,9dが介装された圧空配管10によって接続され、これらの電磁弁9a,9b,9c,9dのうち9a,9b,9cがシリーズ(直列)に、残りの電磁弁9dが単独に、前記圧空配管10に接続されている。
【0028】
そして、前記電磁弁9aの開閉によって前記吸込弁アンローダ73a,74aの、前記電磁弁9bの開閉によって前記吸込弁アンローダ71b,72bの、前記電磁弁9cの開閉によって前記吸込弁アンローダ71a,72aの、前記電磁弁9dの開閉によって前記吸込弁アンローダ73b,73bのロード・アンロードを夫々切替え可能としているのである。
【0029】
これらの電磁弁9a,9b,9c,9dは、前記制御器8内に予め設定された時間信号の指令によって、即ち予め設定された時間に従って開閉され、各電磁弁9a,9b,9c,9dの後流に夫々接続された前記アクチュエータを作動して、前記吸込弁アンローダ71a〜74a,71b〜74bのうちの何れか該当する吸込弁アンローダのロード・アンロードの切替を行うのである。
【0030】
即ち、前記吸込弁アンローダ7は、前記電磁弁9a〜9dのうちの何れかが開いて圧空が供給されると、該当のアクチュエータによって弁板が押し込まれて圧縮室HEまたは/及びCEが吸込側の系と連通したアンロード状態に、逆に前記何れかの電磁弁が閉じて圧空が遮断されると、該当のアクチュエータによる弁板の拘束が外れ、前後の差圧で開閉作動する状態、即ち前記圧縮室HEまたは/及びCEがロード状態となる。
【0031】
尚、前記電磁弁のうち9a,9b,9cをシリーズ(直列)に接続配管することによって、0%ロードを判断するための圧力検出器11を2個に削減することが出来る。電磁弁9dのみ単独に接続配管する理由は、後述する様に25%負荷時には電磁弁9c,9dを交互に切替えるのが好ましいためである。
【0032】
次に、この様な本発明の実施の形態1に係る2段往復動圧縮機の運転方法につき、以下図2,3及び表2を参照しながら説明する。図2は本発明の実施の形態1に係る往復動圧縮機の負荷運転方法を説明するための模式図であり、図(a)は0%負荷時、図(b)は25%負荷時、図(c)は50%負荷時、図(d)は75%負荷時、図(e)は100%負荷時の状態を夫々示す。図3は、図2(b)における25%負荷時の他の運転方法を説明するための模式図である。表2は、本発明の実施の形態に係る2段往復動圧縮機の運転方法における各シリンダの負荷状態を示す。
【0033】
本発明の実施の形態1に係る2段往復動圧縮機の運転方法においては、0%負荷運転から負荷が25%増加する各段毎に、圧縮室を1室ずつ増加させて運転することが可能となる。即ち、25%負荷運転時では、対向する往復動圧縮機1A,2Aは無負荷運転する一方、他の対向する往復動圧縮機1B,2Bにおいては、往復動圧縮機1Bのシリンダの圧縮室HE及び往復動圧縮機2Bのシリンダの圧縮室CEのみを負荷運転することによって、各段とも圧縮室4室の内1室を負荷運転することになり、(1/4)×100=25%のロード運転を実現できるのである。
【0034】
【表2】

【0035】
但し、上記の如く、対向する往復動圧縮機1A,2Aのみ長時間の無負荷運転を継続すると、前記往復動圧縮機1A,2Aのシリンダの過熱によるリング材の損傷を招くことになる。この様な25%負荷運転は、図3に示す如く、往復動圧縮機1B,2Bの代わりに往復動圧縮機1Aのシリンダの圧縮室HE及び往復動圧縮機2Aのシリンダの圧縮室CEのみの負荷運転や、各段のシリンダの圧縮室4室のうちの1室を負荷運転する他の方法によっても達成可能である。そのため、前記往復動圧縮機1A,2Aと1B,2Bのシリンダの圧縮室のロード・アンロードを、前記制御器8内に予め設定された一定時間、即ち、5〜10分程度の間隔で切替えるのが好ましい。
【0036】
更に、50%負荷運転時では、低段側(1段目)往復動圧縮機1A,1Bのシリンダの圧縮室HEと、高段側(2段目)往復動圧縮機2A,2Bのシリンダの圧縮室CEとを負荷運転することによって実現出来る一方、75%負荷運転では、往復動圧縮機1A,2Aを100%負荷、往復動圧縮機1Bのシリンダの圧縮室HE及び往復動圧縮機2Bのシリンダの圧縮室CEのみを負荷運転することによって実現可能である。
【0037】
尚、前記50%負荷運転は、低段側(1段目)往復動圧縮機1A,1Bのシリンダの圧縮室CEと、高段側(2段目)往復動圧縮機2A,2Bのシリンダの圧縮室HEとを負荷運転すること等、各シリンダの圧縮室2室のうち、任意の1室を負荷運転することによっても実現可能であり、前記75%負荷運転も、往復動圧縮機1Aのシリンダの圧縮室HE及び往復動圧縮機2Aのシリンダの圧縮室CEのみを負荷運転し、対向する往復動圧縮機のシリンダ1B,2Bを100%負荷運転すること等、各段のシリンダの圧縮室4室のうちの任意の3室を負荷運転することによって実現可能である。
【0038】
ところで、従来技術として図7に示したものにおいて、0%負荷から50%負荷への切替を行おうとした場合、高段側(2段目)往復動圧縮機2A,2Bのシリンダの圧縮室CEはすぐロード状態とすることが出来るが、低段側(1段目)往復動圧縮機1A,1Bのシリンダの圧縮室HEはヘッドアンローダを押し込み、ロード状態となるまでに所定の時間を要するため、高段のシリンダと低段のシリンダとの間にロード状態への切替の「ずれ」が生じる。
【0039】
このロード状態への切替の「ずれ」は、いわば中間圧のバランスが崩れた状態が所定時間継続することを意味する。しかしながら、本発明においては、ヘッドアンローダがそもそも備えられていないため、上述した様なロード状態への切替の「ずれ」、ひいては中間圧のバランスが崩れた状態が生じないという利点がある。
【0040】
尚、対向するシリンダの対においては、同じタイミングでピストンが押し出され、クランク機構に及ぼされる力は、対向するシリンダのピストンの反力の合算値となる。このため、上述した通り、低段側の往復動圧縮機のシリンダと高段側の往復動圧縮機のシリンダにおけるロード状態にある夫々の圧縮室が、一方がヘッドエンド側の圧縮室HE、他方がクランクエンド側の圧縮室CEとなる様、各圧縮室のロード状態・アンロード状態を切替えることによって、対向するシリンダのピストンの反力の位相が(180度ずつ)ずれることになり、そのピストンの反力の合算値は過大とならない。
【0041】
結果として、クランク機構の回転に伴うトルクの変動、ひいては駆動モータにかかる負荷を軽減することが可能となる。尚、更に、低段側の往復動圧縮機のシリンダのロード状態である圧縮室をヘッドエンド側の圧縮室HEとし、高段側の往復動圧縮機のシリンダのロード状態である圧縮室をクランクエンド側の圧縮室CEとすることによって、ピストンロッドが圧縮室CEを貫通する部位に設けられるロッドパッキン等の軸封手段にかかる負荷を軽減できることが、本発明の発明者等によって経験則的に見出されている。
【0042】
次に、本発明の実施の形態2に係る往復動圧縮機の容量調整方法を、添付図4を参照しながら説明する。図4は本発明の実施の形態2に係り、図1のX部詳細を示す部分詳細断面図である。但し、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、吸込弁アンローダの構成に相違があり、これ以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0043】
即ち、上記実施の形態1の吸込弁アンローダが、電磁弁が開いて圧空が供給されると、該当のアクチュエータが前進して弁板が押し込まれ圧縮室が吸込側の系と連通したアンロード状態に、逆に前記電磁弁が閉じて圧空が遮断されると、該当のアクチュエータが後退して弁板が前後の差圧で開閉作動する状態、即ちロード状態となる。
【0044】
それに対し、本実施の形態2の吸込弁アンローダ7(74a)は、電磁弁9aが開いて圧空が該当のアクチュエータ13に供給されると、ピストン13aがアクチュエータ13側に押し戻されて、スパイダー12のフィンガー12a先端が弁板14から離れ、弁板14の前後の差圧で開閉作動する状態、即ちロード状態に、逆に前記電磁弁が閉じて圧空が該当のアクチュエータ13から遮断されると、アクチュエータ13内に収納されたバネ13bによって、ピストン13aが圧縮室HE側に押し込まれて前記弁板14が閉じて、圧縮室HEが吸込側の系と連通したアンロード状態となる。
【0045】
以上、本発明に係る往復動圧縮機の容量調整方法によれば、複数段の往復動圧縮機を備え、前記複数段の往復動圧縮機は各段毎にシリンダを2筒ずつ備え、前記各シリンダはそのシリンダ毎に収容されたピストンにて隔てられてなる2室の圧縮室を備え、前記各圧縮室はその圧縮室毎にロード状態・アンロード状態を切替え可能な吸込弁アンローダを備える往復動圧縮機の容量調整方法において、予め設定された時間に従って前記圧縮室のロード状態・アンロード状態を切替えるので、0%から100%までの容量(負荷)、具体的には100%,75%,50%,25%,0%の各ロードの調整を、ヘッドエンドアンローダ及びクリアランスポケット無しで実現できる。
【0046】
また、本発明に係る往復動圧縮機の容量調整方法によれば、前記時間が一定時間間隔であるとし、その一定時間間隔、即ち、前記各圧縮室のロード切替間隔を適切な時間とすることにより、0%ロード時のシリンダ過熱によるリング材の損傷防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1に係る2段往復動圧縮機の構成を説明するための系統図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る2段往復動圧縮機の負荷運転方法を説明するための模式図であり、図(a)は0%負荷時、図(b)は25%負荷時、図(c)は50%負荷時、図(d)は75%負荷時、図(e)は100%負荷時の状態を夫々示す。
【図3】図2(b)における25%負荷運転の他の運転方法を説明するための模式図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係り、図1のX部詳細を示す部分詳細断面図である。
【図5】従来例に係る往復動圧縮機の一種である対向釣合型2段圧縮機を説明するための模式図である。
【図6】図5のY部詳細を示す部分詳細断面図である。
【図7】従来例に係る2段往復動圧縮機の運転方法を説明するための模式図であり、図(a)は0%負荷時、図(b)は25%負荷時、図(c)は50%負荷時、図(d)は75%負荷時、図(e)は100%負荷時の状態を夫々示す。
【符号の説明】
【0048】
HE:ヘッドエンド側のガス圧縮室,
CE:コンロッドエンド側のガス圧縮室,
M:駆動モータ,
1A,1B:1段目の往復動圧縮機(第1段圧縮機),
2A,2B:2段目の往復動圧縮機(第2段圧縮機),
3:ピストン, 4:クランク機構,
5a,5b,6a,6b:シリンダ,
7,71a〜74a,71b〜74b:吸込弁アンローダ,
8:制御器,
9a〜9d:電磁弁,
10:圧空配管, 11:圧力検出器,
12:スパイダー, 12a:フィンガー,
13:アクチュエータ, 13a:ピストン, 13b:バネ,
14:弁板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段の往復動圧縮機を備え、
前記複数段の往復動圧縮機は各段毎にシリンダを2筒ずつ備え、
前記各シリンダはそのシリンダ毎に収容されたピストンにて隔てられてなる2室の圧縮室を備え、
前記各圧縮室はその圧縮室毎にロード・アンロードを切替え可能な吸込弁アンローダを備える往復動圧縮機の容量調整方法において、
予め設定された時間に従って前記圧縮室のロード状態・アンロード状態を切替えることを特徴とする往復動圧縮機の容量調整方法。
【請求項2】
前記時間が一定時間間隔であることを特徴とする請求項1に記載の往復動圧縮機の容量調整方法。
【請求項3】
前記各圧縮室に備えられた吸込弁アンローダが、空気圧を利用したアクチュエータにより作動され、これらのアクチュエータへの給気を開閉制御する電磁弁の一部をシリーズに接続すると共に、前記時間信号によってこれらの電磁弁を開閉することを特徴とする請求項1または2に記載の往復動圧縮機の容量調整方法。
【請求項4】
前記複数段の往復動圧縮機が、少なくとも、低段のシリンダに収容されたピストンと、高段のシリンダの収容されたピストンとをクランク機構にて連結して構成されたものであって、
前記低段のシリンダと前記高段のシリンダにおけるロード状態にある夫々の圧縮機が、一方がヘッドエンド側の圧縮室、他方がクランクエンド側の圧縮室となるよう、各圧縮室のロード状態・アンロード状態を切替えることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の往復動圧縮機の容量調整方法。
【請求項5】
前記低段のシリンダのロード状態である圧縮室をヘッドエンド側の圧縮室とし、前記高段のシリンダのロード状態である圧縮室をクランクエンド側の圧縮室としたことを特徴とする請求項4に記載の往復動圧縮機の容量調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−30454(P2009−30454A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192470(P2007−192470)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】