復炭処理方法
取鍋又は取鍋炉内の溶融フェロアロイの復炭処理方法は、取鍋又は取鍋炉に炭素含有ポリマーを添加する工程を備える。ポリマーはフェロアロイの復炭剤として機能するのに適している。その際、ポリマーは、ポリマーが溶融フェロアロイに接触するとき、溶融フェロアロイにポリマーからの炭素の溶解を促進する構造を有することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フェロアロイ(例えば、スチール等)の復炭処理(recarburising)方法が開示される。本方法は特に、(通常、高炉と酸素転炉を備える)一貫工場製鋼(integrated mill steelmaking)及び(通常、電気アーク炉(EAF)を備える)ミニミル製鋼(mini-mill steelmaking)に続いて用いられる、出湯取鍋(tapping ladles)及び取鍋炉(ladle furnaces)中のフェロアロイの復炭処理に用いられる。本方法は主に、出湯取鍋及び取鍋炉での復炭処理に関連して説明されているが、当然のことながら上記の復炭処理の種類に限定されない。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品及びタイヤの廃棄に関連する問題は深刻化している。プラスチック製品及びタイヤのリサイクルは、資源回収の一部にすぎない。その大部分は未だに、埋め立てられ、又は焼却炉で焼却されて廃棄されている。埋め立てでは、物質はすぐに分解されず、そして、物質はまた、有害物質を土壌及び地下水にしみ出す可能性がある。一方、従来の焼却は大抵、ダイオキシン等の汚染物質の排出を生じ、また温室効果ガスの排出を増加する可能性がある。
【0003】
世界中で、製鉄業はエネルギー及び資源利用の効率を改善することによって環境に与える影響を最小にする必要性に、そして特に、CO2の排出を削減する必要性に直面している。
【0004】
電気アーク炉への廃プラスチックの添加が知られている。例えば、特許文献1や特許文献2に示されている。
【0005】
本出願人の特許文献3はまた、電気アーク炉への廃プラスチックの添加を開示し、さらに、復炭剤(recarburiser)として廃プラスチックの活用可能性を開示するが、誘導炉の関連に限定され、かつ、本方法がどのように実行されるのかを開示していない。
【0006】
本明細書における公知技術文献の引用は、当該文献がオーストラリア又はその他の国の当業者の通常の知識の一部を形成することを認めるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5554207号
【特許文献2】日本国特開2004−052002号公報
【特許文献3】国際公開2006/024069号公報
【発明の概要】
【0008】
第1の態様においては、取鍋又は取鍋炉中の溶融フェロアロイの復炭処理方法が提供される。本方法は、炭素含有ポリマーを取鍋又は取鍋炉に添加する工程を備える。炭素含有ポリマーは、フェロアロイの復炭剤として機能するのに適している。
【0009】
従来、炭素含有ポリマーがフェロアロイの製造において復炭剤として最も機能することができる方法は、研究されていなかった(すなわち、炭素含有ポリマーは、製造された最終フェロアロイ中に含まれる炭素量を増加するために使用される、例えば石炭、コークス、グラファイト等の従来の復炭剤の代わりに使用される)。炭素含有ポリマーは、例えば、無煙炭(anthracite coal)やグラファイト等の高価な復炭剤を代替するか、又はその使用を抑制することができるように、選択そして適合させることができる。
【0010】
これに関して、特許文献3は復炭剤として廃プラスチックの潜在的な使用を開示する一方、これをどのように実施するかは教示しておらず、また廃プラスチックが出湯取鍋及び取鍋炉中でフェロアロイを復炭するのに使用される方法も教示していない。
【0011】
「フェロアロイ」なる用語が本明細書で用いられる場合、広範な鉄−炭素合金(スチールを含む)並びにその他の鉄−炭素及び/又は鉄系合金を包含するものと意図され、フェロクロム、フェロクロムシリコン、フェロマンガン、フェロシリコマンガン、フェロシリコン、マグネシウムフェロシリコン、フェロモリブデン、フェロニッケル、フェロチタン、フェロリン(ferrophosphorous)、フェロタングステン、フェロバナジウム、フェロジルコニウム等が含まれる。
【0012】
本方法の一形態では、炭素含有ポリマーは特に、炭素含有ポリマー中の炭素が優先的にフェロアロイに溶融し、かつ実質的又は悪影響をもたらす程度までは燃焼しないように、添加される前に取鍋又は取鍋炉にあうように適合させることができる。
【0013】
例えば、炭素含有ポリマーが復炭剤として機能するのに最も適合させることができる一つの方法は、添加前に、所定の取鍋又は取鍋炉へのポリマーのサイズ(例えば、ポリマーの形状及び/又は寸法)を最適化する工程を備える。このサイズの最適化によって、炭素の溶解を促進し、溶融フェロアロイに接触したときのポリマー燃焼を最小化することが観測されている。
【0014】
一の実施形態では、サイズの最適化は、塊を形成するために複数のポリマー層を結合することを含む。例えば、ゴム屑を含むポリマーの場合、適当なフェロアロイワイヤによって、タイヤのトレッド/壁又はコンベヤベルトの複数の層を、一つのバンドルに束ねることができる。
【0015】
取鍋での添加の場合、炭素含有ポリマーを、取鍋への溶融フェロアロイの出湯前に、取鍋の中に添加させることができる。
【0016】
取鍋炉での添加の場合、炭素含有ポリマーを、取鍋からの溶融フェロアロイと共に又はその上に、取鍋炉の中に添加させることができる。例えば、炭素含有ポリマーを、取鍋炉に(例えば、スラグ層等の最上層に)注入してもよい。
【0017】
ある形態では、炭素含有ポリマーは、廃プラスチック又はゴム屑である。この形態では、廃プラスチックは、ポリエチレン(例えば、HDPE)と、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエンスチレン、ABS等の他のプラスチックとを含み、及び、例えば(登録商標)ベークライト等の加工するのが困難なプラスチックを含む。また、この形態では、ゴムは、使用されたタイヤ又はベルトから抽出される。ベルトは、使用された/廃棄されたゴムコンベヤベルトであってもよい。
【0018】
取鍋又は取鍋炉への廃プラスチック又はゴム屑の添加は、環境上の問題を起こす廃棄物の有効な処分手段を提供する。
【0019】
典型的には、炭素含有ポリマーは、C、H及び選択的にOなる原子のみを含む。ポリマー中に他の元素(例えば、N、S、P、Si、ハロゲン等)が存在してもよい。これら他の元素は、フェロアロイ製造を妨げ、及び/又は不純物、汚染物、有害ガス(例えば、ハロゲンガス)等を生成する。炭素含有ポリマーを適切に選択し、適切に添加することによって、及び/又は、フラックス添加剤を取鍋/取鍋炉に注入することによって、有害ガス及びその他の好ましくない、又は有害な生成物の生成を回避又は緩和することができる。
【0020】
ある形態では、製造されたフェロアロイは、スチール又は合金スチールである。
【0021】
本方法の一の変形例は、炭素含有ポリマーに加えて、他の炭素供給が取鍋又は取鍋炉に添加されてもよい。他の炭素供給源は、1以上の石炭、コークス、炭素木炭(carbon char)、木炭及び/又はグラファイトからなる炭素供給源である。
【0022】
ある形態では、取鍋又は取鍋炉が、電気アーク炉から溶融フェロアロイを受ける取鍋、及び、取鍋から溶融フェロアロイを受ける取鍋炉を備える、電気アーク製鋼プロセスの一部を形成する。
【0023】
第2の態様においては、取鍋又は取鍋炉中のフェロアロイの復炭剤として、炭素含有ポリマーの使用が提供される。
【0024】
第2の態様では、炭素含有ポリマーは第1の態様と同様に定義される。
【0025】
第3の態様においては、溶融フェロアロイの復炭方法が提供される。本方法は、復炭剤として機能し得る炭素含有ポリマーを溶融フェロアロイと接触させる工程を備える。それによって、ポリマーは、溶融フェロアロイと接触したとき、ポリマーから溶融フェロアロイに炭素の溶融が促進される構造を有する。
【0026】
ポリマー構造(例えば、その形状及び/又は寸法)を、溶融フェロアロイと接触したとき、燃焼又はガス化するよりも、ポリマー中に炭素の大部分が溶解するように、最適化することができる。この結果、今度はポリマーの復炭機能(recarburisation function)を強化することができる。
【0027】
第3の態様の方法において、ポリマー構造は、その塊に比較して露出する表面積を最小にするように寸法化された構成単位を備える。さらに、ポリマーの寸法を、所定の取鍋又は取鍋炉に対して最適化することができる。この結果、最大炭素溶融を生じさせることが可能となり、ポリマー中の炭素の燃焼又はガス化を最小化することが可能となる。1以上のそのような構成単位(例えば、1以上の10kgの廃ポリマーの塊)を、フェロアロイの復炭剤として用いることができる。
【0028】
第3の態様の方法では、ポリマーを溶融アロイに添加することができ、又は溶融アロイをポリマー上に添加することができ、又はポリマーを、例えば取鍋又は取鍋炉の中に溶融アロイと共に添加することができる。
【0029】
その他、第3の態様の方法は、第1の態様と同様に定義される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1記載の、a)(現在の復炭剤としての)未処理の冶金コークス、及びb)(廃プラスチック復炭剤としての)未処理の高密度ポリエチレン(HDPE)に対するX線回折のプロット図。
【図2】実施例1記載の、未処理の冶金コークス及び未処理の高密度ポリエチレンと、燃焼後の高密度ポリエチレン及び冶金コークスとに対するX線回折のプロット図。
【図3】実施例1記載の、液滴アプローチのための水平管抵抗炉構成の第1の概略図。
【図4】実施例2記載の、冶金コークス100%と、高密度ポリエチレン30%と冶金コークス30%の混合物とに関する2つの実験結果に対する炭素ピックアップ(炭素含有率である%)を時間に対してプロットした図。
【図5】実施例3記載の、落下管炉の概略図。
【図6】実施例3記載の、液滴アプローチのための水平管抵抗炉構成の第2の概略図。
【図7】実施例3記載の、冶金コークス100%と、ベークライト30%と冶金コークス30%の混合物とに関する実験結果に対する炭素ピックアップ(炭素含有率である%)を時間に対してプロットした図。
【図8】スチール等のフェロアロイを製造するための電気アークプロセスの概略図。
【図9】取鍋に出湯された電気アーク炉の拡大概略図。
【図10】図9の取鍋の拡大概略図。
【図11】図11Aは、出湯取鍋の中に添加するのに適するタイヤトレッドのバンドルの側面斜視図。図11Bは、出湯取鍋の中に添加するのに適するタイヤトレッドのバンドルの平面斜視図。
【図12】図12Aは、転炉における、プラスチック(ゴム屑)と標準的な炭素復炭剤(carbon recarburiser)の炭素ピックアップ(10kgサンプル毎の%)のプロット図。図12Bは、取鍋炉における、プラスチック(ゴム屑)と標準的な炭素復炭剤の炭素ピックアップ(10kgサンプル毎の%)のプロット図。図12Cは、プラスチック(ゴム屑)と標準的な炭素復炭剤の炭素ピックアップ(10kgサンプル毎の%)の標準化されたデータのプロット図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
他の実施形態が発明の概要で定義されたフェロアロイの復炭処理方法に含まれる。以下に、添付図面を参照して、実施例により本方法の特定の実施形態が示される。
【0032】
炭素含有ポリマー(例えば、廃プラスチック又はゴム屑)により、基本的なフェロアロイ形成の後(例えば、溶鉱炉や酸素転炉の後、又は電気アーク炉(EAF)中でのスチール形成後)に存在する工程で、復炭剤としての機能(すなわち、フェロアロイ中の「トリム(trim)」炭素含有物)が、フェロアロイ(例えば、スチール)製品に注入されることが前提とされていた。その際、炭素含有ポリマーが、搬送取鍋と取鍋冶金炉の一方又は両方において、復炭剤として機能できることが前提とされていた。
【0033】
現在世界中で、製鋼に対して、2つの主要なプロセスルートがある。具体的には、鉱石とコークスから鉄を製造し、鉄をスチールに変える「一貫工場(Integrated Mill)」ルートと、屑鉄からスチールを製造する「ミニミル(Mini-Mill)」ルートである。2つのルートの間の主な相違点は、スチールを製造するために使用される炉の種類である。しかしながら、取鍋の中に溶融スチールを搬送することと、取鍋冶金炉(LMF)を使用する取鍋の中でのスチール温度及び組成を調整すること、及び、スチールを成型すること(例えば、連続鋳造機(CCM)を使用すること)は、2つのプロセスに共通する。
【0034】
一貫工場(Integrated Mill)は、鉄鉱石、コークス、溶剤が装入され、熱風が供給される溶鉱炉の中で、高炭素溶鉄を製造する。溶鉱炉からの鉄は、1以上の酸素転炉(BOFs)溶融状態で搬送される。酸素は、炭素の大部分を除去するために使用され、鉄を低炭素スチールに変える。BOFの最大25%まで、固体の廃重鋼を装入することができる。その後、炭素含有率に対するスチールの調整が実施される。
【0035】
ミニミル(Mini-Mill)は、重量スクラップ、軽量スクラップ、及び(溶鉱炉からの)銑鉄を含む固体の廃スチールを溶かすために、1以上の電気アーク炉(EAFs)を使用する。酸素は、炭素と、例えばシリコン、アルミニウム及びマンガン等の溶融スチールからの他の不純物とを除去するために使用される。シリコン、アルミニウム及びマンガンは、酸素と反応し、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)及び酸化マンガン(MnO)を生成する。多量の鉄はまた、注入された酸素により反応し、酸化鉄(FeO又はFe2O3)を生成する。酸化カルシウム(CaO)及び酸化マグネシウム(MgO)が、スラグ層をスチールの上部に形成するために、炉に添加される。このスラグ層は、酸化鉄の割合に従い、スチールを燃焼させる様々な不純物の酸化物を捕捉し、不純物の酸化物による化学攻撃から炉の内側を覆い、そしてまた、アークから炉の天井部や側壁への熱損失を低減化する。
【0036】
スチールの組成及び温度が補正されると、電気アーク炉は出湯する。これは、スチールを炉から取鍋に搬送することを含み、スチールを溶融状態でLMFに搬送させることができる。図5に、EAF製造プロセスの概略図を示す。図6は、取鍋に出湯されるスチールの詳細図である。図7は、スチールトリミングの第1段階が行われる、取鍋の詳細図を示す。
【0037】
出湯中、比較的純粋な形状(通常、冶金グレード炭素(metallurgical grade carbon))の炭素(「復炭剤」)が、スチールを要求される仕様にするために、スチールに添加される(「復炭(recarburisation)」として知られている)。冶金グレード炭素は、粒状化され、前記プロセスの比較的高価な部分を形成する。様々なフェロアロイはまた、金属の物理的性質を向上させるために、スチールに添加される。従って、従来適切であるとは考えられていなかった別の炭素代替品に関して、研究調査が行われていた。
【0038】
実施例
フェロアロイの製造方法の非制限的な実施例が以下に示される。実施例1、2及び3は、炭素含有ポリマー(廃プラスチック)中の炭素が溶融金属中に溶解し、従って復炭剤として機能することが可能であることをサポートする、実験室で得た実験データを提供する。実施例4は、搬送取鍋及び取鍋炉中における、復炭剤としての炭素含有ポリマー(ゴム屑)に対して、実際の現場での試験データを提供する。
【0039】
実施例1〜3の手順は、炭素溶解の検査をする前に、揮発性物質物(VM)を除去することを含む。一方、(現場試験である)実施例4の方法は、そのような事前の除去処理を含まない。従って、実施例1〜3のデータは、実施例4のデータと直接比較することができない。
【0040】
また、使用された冶金コークスの種類と品質が実施例1、2、3の間で異なっており、それが溶鋼の中への炭素溶解に関し、異なった結果の一因となっていることに注意してこの変化が起きたことに留意すべきである。従って、実施例1、2、3の結果の間で、直接比較はできない。
【0041】
さらに、コークスの性質及び廃プラスチックの性質の効果実験が実施され、それにより、それらの性質が溶鋼の中に炭素溶解を向上するために最適化されることに留意すべきである。
【0042】
実施例1−炭素溶解/廃プラスチックの復炭
1550℃の溶鋼中に、HDPE30%及び冶金コークス70%の混合物の炭素溶解を調べるために、実験を実施し、取鍋及び取鍋炉中で用いる適合性を確認した。実験は、サンプルの評価を表し、近似分析及びX線パターンを含むデータを提供し、同時に、炭素溶解実験の詳細な結果を提供した。
【0043】
サンプルの評価
炭素溶解試験のために使用された廃プラスチック及び冶金コークスの混合物の炭化残渣は、落下管炉(DTF)中での燃焼で形成された。DTFから収集された残渣は、ある程度の揮発性物質を含むことが判明した。従って、さらに、水平管炉(HF)(図3)を使用し、これらの残渣を液化させた。落下管炉及び水平管炉それぞれから収集された未処理のサンプル及び炭化残渣は、固定炭素、灰分、揮発性物質(VM)及び蒸気の割合が分析され、そして、これらの構造がX線回折を用いて明らかにされた。
【0044】
近似分析
得られたサンプルの近似分析データは、表1に示される。基準物質−冶金コークス−に関して、未処理のサンプルと、落下管炉及び水平管炉での燃焼後のサンプルとの固定炭素含有率は、約64.5%で一定であった。従って、落下管炉及び水平管炉での冶金コークスの燃焼は、実験条件下で変わらないということが理解できた。冶金コークスがプラスチックと混合すると、固定炭素含有率が、落下管炉及び水平管炉での燃焼後、増加する。一方、揮発性物質は有意に減少する。
【0045】
【表1】
【0046】
X線回折
HDPE及びコークスの混合物の炭化残渣のX線回折パターンを、シーメンス社製のX線回折計D5000を使用して観測した。まず、未処理の冶金コークス及び未処理のプラスチックを分析し、続いてこれらの混合物を分析した。次に、落下管炉で燃焼し、さらに水平管炉で液化させた後、これらの残渣を評価した。冶金コークスは基準コークスとみなされ、混合物のX線パターン全てを基準コークスと比較した。炭素のサンプル全てのX線パターンを、図1及び図2に示す。図1及び図2から、未処理の混合物が炭化水素(プラスチック)の高い強度ピークを示すことがわかった。落下管炉及び水平管炉での燃焼後、残渣サンプルのX線パターンはさらに、低い強度を有するプラスチックの炭化水素のピークを示す。これは、プラスチックが復炭剤として用いるのに適していることを示している。
【0047】
実施例2−廃プラスチックの溶解に対する実験の詳細
冶金コークス100%、並びに、HDPE30%及び冶金コークス70%の混合物の炭素溶解を、液滴技術(sessile drop technique)を用いて調べた。まず、調べられる物質を、粒状化し、1mmより小さなサイズの粒子になるようにふるいにかけ、そして窒素80%及び酸素20%の雰囲気中で、1200℃の落下管炉で燃焼した。落下管炉から収集された残渣は、高い揮発性物質含有量を含むことがわかった。従って、残渣を、アルゴン雰囲気中で、15分間、1200℃の水平管炉で再び液化した。収集された残渣を再び、粉砕機(grinding machine)を用いて紛体にまで粒状化し、炭素溶解実験に使用した。
【0048】
基体を形成するためには、約1.6gの残渣サンプルを使用した。油圧プレスを用いて7KNの負荷の下、残渣をスチール製金型で圧縮した。金型から得られた基体は、3.14cm2の上部表面積を有していた。基体を、グラファイトのサンプルフォルダー上に配置し、そして、約0.5gの電解純鉄(Feが99.98%)を基体の中央に配置した。炭素溶解実験は、1550℃の不活性アルゴンの雰囲気下で実施された。液滴アセンブリを、サンプルフォルダーを熱衝撃から保護し、揮発性物質が基体から逃げられように、温度が約1200℃である、水平管炉のコールドゾーンに設置した。約15分後、液滴アセンブリを、温度が1550℃であるホットゾーンに押し出した。時間生成器は、金属が溶融し、液滴を形成すると、計測を開始する。サンプルを、1、2、4、8、15、20、30そして60分後、急冷した。実験中、炉内の反応を、CCDカメラを用いて観察した。液滴実験後、液滴中に含まれる炭素含有量を、LECO社製の炭素−硫黄分析器(CS230型)を用いて計測した。水平管炉の概略図を図3に示す。
【0049】
実験結果
炭素基体の炭素ピックアップが鉄塊によって得られ、図4に示される。HDPE30%及び冶金コークス70%の基体と反応した鉄の炭素ピックアップが、冶金コークスと反応した鉄の炭素ピックアップよりも高いということが、はっきりと観察された。
【0050】
実施例3−ベークライト/コークス混合物を用いた炭素溶解
材料選択及び準備
実施例3では、電解純鉄(Feが99.98質量%)を使用した。実験された炭素材料は、純冶金コークスと、ベークライトとコークスの混合物を含む。ベークライト(フェノールホルムアルデヒド)は、フェノールとホルムアルデヒドの縮合重合によって製造された、高架橋結合熱硬化性材料である。ベークライトは、C、H及びOの原子からなる。化学組成は、フェノールのホルムアルデヒドに対する相対的な比率(1:1又は1:2)によって決まる。しかしながら、CaCO3が、フィラーとして一般的に商業グレードのベークライトに添加される。
【0051】
サンプルを準備するために、ベークライト及びコークスをそれぞれ、30%及び70%の比率で混合した。混合物を、ジョークラッシャ(jaw crusher)で砕き、1mmより小さい大きさにふるいにかけ、そしてボールミルで均一的に混合した。混合物を、0.52g/分の割合で落下管炉(DTF)にフィードし、O220%及びN280%の雰囲気中で、1200℃で燃焼させた。落下管炉の概略図を、図5に示す。
【0052】
炭素残渣を、近似分析及び灰分分析で分析した。全ての炭素残渣の近似分析値は、表2に示され、固定炭素、灰分、揮発性物質及び硫黄含有物を含む。また、残渣サンプル中の灰分の化学組成を分析し、表3に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
炭素溶解
液滴法を使用して、炭素溶解実験を実施した。液滴法は、溶鉄への炭素転移、そして、グラファイト/Fe及びコークス/Feのウェッティング中の界面現象を調べるために使用される。基体を作成するために、DTFから収集された約1.6gの紛体残渣を、金型に投入し、油圧プレスを用いて75KNの力をかけることにより成形した。3.14cm2の上部の表面積を有する基体を、グラファイトのサンプルフォルダー上に配置した。約0.5gの電解純鉄(Feが99.98%)を基体の中央に配置した。まず、このアセンブリを、温度が約1200℃で、1.0L/分の流量で炉から流れるアルゴンガスでシールされた、水平管炉のコールドゾーンに設置した。約15分後、アセンブルを、温度が1550℃であるホットゾーンに挿入した。金属が完全に溶融し、液滴を形成したとき、反応時間が開始することに留意した。サンプルを、アセンブリをコールドゾーンにスライドさせ、次いで金属/炭素の界面上で起きる反応を終了させることにより、1、2、4、8、15、20、30、60そして180分後、急冷した。水平管炉の概略図を図6に示す。
【0056】
実験後、金属液滴の炭素含有物を、炭素−硫黄分析器(LECO社製CS230型)を用いて計測した。金属/炭素の界面及び反応生成物を、エネルギー分散型分析装置(EDS)と接続した走査型電子顕微鏡(SEM)(Hitachi社製3400X)を用いて調べた。
【0057】
コークスと比較して、鉄塊のベークライト/コークスの混合物の炭素ピックアップを、時間とともにプロットし、図7に示す。データを表にし、表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
実施例4−廃プラスチック及びタイヤ屑を用いた、EAFの取鍋及びEAFの取鍋炉での復炭
製鋼作業における復炭剤としてのポリマー材料の使用を調べるために、EAFスチール製造プロセスにおいて実験を実施した。実験の目的は、比較的高価な復炭材料(単価が約$650/トンの冶金グレードカーボン)の割合を、現在使用中の(有意に低コストで得ることができる)廃ポリマーに置き換えることであった。従って、炭素材料の置き換えは、コストに関して効果があり、また環境に対して影響を与えることが理解できる。
【0060】
第1の実験ポリマーを、約95%炭素を含有する現在の復炭剤と比較して、約85%の結合した炭素及び約15%の結合した水素を含有する高密度ポリエチレン(HDPE)とした。状態を最適化し、かつリサイクル材料への置換の実現可能性を示すために、リサイクルされた材料よりもむしろ未使用のプラスチックを用いて、第1実験を実施した。
【0061】
実験の大部分を、出湯前に、EAF取鍋に装入されるポリマーを用いて実施したが、さらに取鍋炉でも実験を実施した。出湯位置に搬送される前の島(isle)にある間に、ポリマーを取鍋に添加した。取鍋に添加することができるバケツで、10kgのポリマーを検量した。電気アーク炉のサンプルを取り、所望の復炭剤量をレシピ通り取り出した。ポリマーを取鍋(10kg)に添加し、揮発性物質が燃焼するのを可能にし、炭素の残渣を残した。通常の(公知の)復炭剤をレシピに従って、この上部に任意に添加した。そして、取鍋を出湯位置に搬送し、出湯を行った。
【0062】
到着すると、取鍋炉での実験を実施した。ポリマー材料をポーラス状のプラグの上でスチールの上部に添加し、溶解可能とした。EAF取鍋で取得したデータは、初期の炭素含有物、添加されたプラスチック、添加された復炭剤、取鍋に到着した炭素である。取鍋炉で取得したデータは、到着した炭素、添加されたポリマー、添加された復炭剤、及び取鍋炉から出発する炭素である。このデータは常温で比較され、実験結果を以下に示す。
【0063】
図11A及び図11Bに示すように、タイヤ及びベルト由来のポリマー添加物を、約10kgの重量で、300×300×300mm3の体積を有するマットの複数のバンドルとして、任意に添加したことがわかる。複数のバンドルを手作業で取鍋に添加した。また、フェロアロイを添加した。直径約50mmの金属の塊の形状で添加し、取鍋に重力送りをさせる前にホッパーにバッチ処理した。これらのアロイを、出湯プロセスの途中で添加した。EAFが出湯を行う直前に、又は出湯プロセスの開始直後、炭素の割合を任意に増加した。
【0064】
バンドルの重量と比較して表面積が最小化するように(例えば、最適化された形状が略球状のバンドルに近づけてもよい)、マットの複数のバンドルを形状化及び寸法化した。これにより、ポリマー中の炭素の溶融金属に最大化された溶解を提供し、かつ、燃焼又はガス化されたポリマーのバンドル中の炭素量を最小化することが観測された。また、溶融金属が瞬時にバンドルを覆い、従ってバンドルに酸素流量を制限し、これによってさらにバンドル中の炭素の燃焼及びガス化を減少することができる。
【0065】
プロセスの工程は以下の通りである。
1.取鍋を予熱器から取り外し、取鍋車に設置する。
2.取鍋炉のオペレターは、損傷の可能性があるため、れんが造りの取鍋を検査し、そして、スライドゲートのノズルを磨いた。
3.出湯のために、取鍋をEAFに搬送した。
4.出湯口の下に搬送される前に、スチール中の炭素の割合に従って、10kgバッグのコークスの形状で炭素添加物を取鍋に添加した。ポリマー復炭剤を単独で使用する場合、本工程は省略される。所望の数量のバッグを添加すると、取鍋を出湯口の下に搬送する。
5.複数のアルミニウム棒(30〜80kg)を取鍋に添加し、出湯中、アロイの酸化を抑制した。次に、ポリマー復炭剤をこれらの棒の上に置いた。
6.出湯口を開放し、スチール/アロイに要求された炭素の割合に従って、ポリマー復炭剤複数のマット/バンドル(図11)を10kgバッチで取鍋に連続添加した。
7.取鍋の1/4が満たされると、フェロアロイ等のアロイ添加物を取鍋に添加した。
8.アロイ添加物を添加した後すぐに、フラックス添加物を取鍋に添加する。取鍋に添加される復炭剤の数量を規定し、生成されたスチールのグレードに従って、取鍋中の溶融アロイに重力送りされる前に、炭素添加物の一部をホッパーにバッチ処理する。ポリマー復炭剤を、炉の出湯中そして取鍋炉でも添加できることに留意すべきである。
【0066】
実験結果
実験を、いわゆる「ES35グリーンシフト(ES35 Green Shift)」中に実施し、そして、通常ES35グリーンシフト中に生じた、通常の復炭剤の取り込み結果と比較した。図12Aは、%炭素ピックアップの結果をプロットした図である。これらの結果は、ポリマー復炭剤使用による炭素ピックアップが許容できるレベルであることを示した。炭素値は全て、(一貫して)Celox社製の測定器で得られ、到着したLFサンプルと比較された。「プラスチック」とラベルされた柱(column)は、20kgのプラスチックと、残りが通常の復炭剤であるものの結果である。図表は、添加された材料10kgごとのピックアップを示す。図12Aは、復炭剤としてプラスチックが、純粋な復炭剤よりも重量で効果的ではないが、この差異が2つの材料中の結合された炭素の割合の差異(プラスチックの炭素が少ないこと)にある程度起因することを示す。図12Bに示すように、同様の傾向が取鍋炉の実験で観測された。
【0067】
混合物中の異なる組成の寄与を評価するために、プラスチックの重量を0.85で乗じ、復炭剤の重量を0.95で乗じ、全ての結合された炭素をスチール中で溶解したと仮定した。この計算した結果をプロットし、図12Cに示す。「プラスチック」と「復炭剤」の間の格差がわずかに増加した。
【0068】
本分析から、冶金グレード炭素復炭剤の特定の構造が、ポリマー復炭剤の構造から生じるよりも、より効率的な取り込みをもたらすことに留意すべきである。この差異は、ガス排出量(すなわち、CO/CO2の形状で)の炭素損失に起因し、それによりポリマーの一部が溶融アロイと接触し燃焼させる。
【0069】
上記から、ポリマーの構造(例えば、形状及び寸法)を最適化し、このような燃焼を改善して最小化した。その際、ポリマー復炭剤の表面積を低減する一方、ポリマー復炭剤の重量を増加することにより、さらに最適化される。
【0070】
全般的に、実験は、廃プラスチック及びゴム屑が、フェロアロイの復炭剤に対してコークス及びグラファイトへの効果的な代替品を提供できることを示した。従って、社会で多量の廃プラスチック及びゴム屑を使用して消費する効果的な手段を提供する。
【0071】
多くの実施形態を説明したが、本方法は他の多くの形態で具現化し得ることを理解されるべきである。
【0072】
例えば、特定の廃プラチック及びゴム屑を説明したが、炭素含有ポリマーが、(非制限的であるが)大型家電製品{おおがた かでん せいひん}多種多様な供給源からもたらされてもよいことを理解されるべきである。現在の廃棄処理問題及び環境問題を示す供給源が好ましい。
【技術分野】
【0001】
フェロアロイ(例えば、スチール等)の復炭処理(recarburising)方法が開示される。本方法は特に、(通常、高炉と酸素転炉を備える)一貫工場製鋼(integrated mill steelmaking)及び(通常、電気アーク炉(EAF)を備える)ミニミル製鋼(mini-mill steelmaking)に続いて用いられる、出湯取鍋(tapping ladles)及び取鍋炉(ladle furnaces)中のフェロアロイの復炭処理に用いられる。本方法は主に、出湯取鍋及び取鍋炉での復炭処理に関連して説明されているが、当然のことながら上記の復炭処理の種類に限定されない。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品及びタイヤの廃棄に関連する問題は深刻化している。プラスチック製品及びタイヤのリサイクルは、資源回収の一部にすぎない。その大部分は未だに、埋め立てられ、又は焼却炉で焼却されて廃棄されている。埋め立てでは、物質はすぐに分解されず、そして、物質はまた、有害物質を土壌及び地下水にしみ出す可能性がある。一方、従来の焼却は大抵、ダイオキシン等の汚染物質の排出を生じ、また温室効果ガスの排出を増加する可能性がある。
【0003】
世界中で、製鉄業はエネルギー及び資源利用の効率を改善することによって環境に与える影響を最小にする必要性に、そして特に、CO2の排出を削減する必要性に直面している。
【0004】
電気アーク炉への廃プラスチックの添加が知られている。例えば、特許文献1や特許文献2に示されている。
【0005】
本出願人の特許文献3はまた、電気アーク炉への廃プラスチックの添加を開示し、さらに、復炭剤(recarburiser)として廃プラスチックの活用可能性を開示するが、誘導炉の関連に限定され、かつ、本方法がどのように実行されるのかを開示していない。
【0006】
本明細書における公知技術文献の引用は、当該文献がオーストラリア又はその他の国の当業者の通常の知識の一部を形成することを認めるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5554207号
【特許文献2】日本国特開2004−052002号公報
【特許文献3】国際公開2006/024069号公報
【発明の概要】
【0008】
第1の態様においては、取鍋又は取鍋炉中の溶融フェロアロイの復炭処理方法が提供される。本方法は、炭素含有ポリマーを取鍋又は取鍋炉に添加する工程を備える。炭素含有ポリマーは、フェロアロイの復炭剤として機能するのに適している。
【0009】
従来、炭素含有ポリマーがフェロアロイの製造において復炭剤として最も機能することができる方法は、研究されていなかった(すなわち、炭素含有ポリマーは、製造された最終フェロアロイ中に含まれる炭素量を増加するために使用される、例えば石炭、コークス、グラファイト等の従来の復炭剤の代わりに使用される)。炭素含有ポリマーは、例えば、無煙炭(anthracite coal)やグラファイト等の高価な復炭剤を代替するか、又はその使用を抑制することができるように、選択そして適合させることができる。
【0010】
これに関して、特許文献3は復炭剤として廃プラスチックの潜在的な使用を開示する一方、これをどのように実施するかは教示しておらず、また廃プラスチックが出湯取鍋及び取鍋炉中でフェロアロイを復炭するのに使用される方法も教示していない。
【0011】
「フェロアロイ」なる用語が本明細書で用いられる場合、広範な鉄−炭素合金(スチールを含む)並びにその他の鉄−炭素及び/又は鉄系合金を包含するものと意図され、フェロクロム、フェロクロムシリコン、フェロマンガン、フェロシリコマンガン、フェロシリコン、マグネシウムフェロシリコン、フェロモリブデン、フェロニッケル、フェロチタン、フェロリン(ferrophosphorous)、フェロタングステン、フェロバナジウム、フェロジルコニウム等が含まれる。
【0012】
本方法の一形態では、炭素含有ポリマーは特に、炭素含有ポリマー中の炭素が優先的にフェロアロイに溶融し、かつ実質的又は悪影響をもたらす程度までは燃焼しないように、添加される前に取鍋又は取鍋炉にあうように適合させることができる。
【0013】
例えば、炭素含有ポリマーが復炭剤として機能するのに最も適合させることができる一つの方法は、添加前に、所定の取鍋又は取鍋炉へのポリマーのサイズ(例えば、ポリマーの形状及び/又は寸法)を最適化する工程を備える。このサイズの最適化によって、炭素の溶解を促進し、溶融フェロアロイに接触したときのポリマー燃焼を最小化することが観測されている。
【0014】
一の実施形態では、サイズの最適化は、塊を形成するために複数のポリマー層を結合することを含む。例えば、ゴム屑を含むポリマーの場合、適当なフェロアロイワイヤによって、タイヤのトレッド/壁又はコンベヤベルトの複数の層を、一つのバンドルに束ねることができる。
【0015】
取鍋での添加の場合、炭素含有ポリマーを、取鍋への溶融フェロアロイの出湯前に、取鍋の中に添加させることができる。
【0016】
取鍋炉での添加の場合、炭素含有ポリマーを、取鍋からの溶融フェロアロイと共に又はその上に、取鍋炉の中に添加させることができる。例えば、炭素含有ポリマーを、取鍋炉に(例えば、スラグ層等の最上層に)注入してもよい。
【0017】
ある形態では、炭素含有ポリマーは、廃プラスチック又はゴム屑である。この形態では、廃プラスチックは、ポリエチレン(例えば、HDPE)と、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエンスチレン、ABS等の他のプラスチックとを含み、及び、例えば(登録商標)ベークライト等の加工するのが困難なプラスチックを含む。また、この形態では、ゴムは、使用されたタイヤ又はベルトから抽出される。ベルトは、使用された/廃棄されたゴムコンベヤベルトであってもよい。
【0018】
取鍋又は取鍋炉への廃プラスチック又はゴム屑の添加は、環境上の問題を起こす廃棄物の有効な処分手段を提供する。
【0019】
典型的には、炭素含有ポリマーは、C、H及び選択的にOなる原子のみを含む。ポリマー中に他の元素(例えば、N、S、P、Si、ハロゲン等)が存在してもよい。これら他の元素は、フェロアロイ製造を妨げ、及び/又は不純物、汚染物、有害ガス(例えば、ハロゲンガス)等を生成する。炭素含有ポリマーを適切に選択し、適切に添加することによって、及び/又は、フラックス添加剤を取鍋/取鍋炉に注入することによって、有害ガス及びその他の好ましくない、又は有害な生成物の生成を回避又は緩和することができる。
【0020】
ある形態では、製造されたフェロアロイは、スチール又は合金スチールである。
【0021】
本方法の一の変形例は、炭素含有ポリマーに加えて、他の炭素供給が取鍋又は取鍋炉に添加されてもよい。他の炭素供給源は、1以上の石炭、コークス、炭素木炭(carbon char)、木炭及び/又はグラファイトからなる炭素供給源である。
【0022】
ある形態では、取鍋又は取鍋炉が、電気アーク炉から溶融フェロアロイを受ける取鍋、及び、取鍋から溶融フェロアロイを受ける取鍋炉を備える、電気アーク製鋼プロセスの一部を形成する。
【0023】
第2の態様においては、取鍋又は取鍋炉中のフェロアロイの復炭剤として、炭素含有ポリマーの使用が提供される。
【0024】
第2の態様では、炭素含有ポリマーは第1の態様と同様に定義される。
【0025】
第3の態様においては、溶融フェロアロイの復炭方法が提供される。本方法は、復炭剤として機能し得る炭素含有ポリマーを溶融フェロアロイと接触させる工程を備える。それによって、ポリマーは、溶融フェロアロイと接触したとき、ポリマーから溶融フェロアロイに炭素の溶融が促進される構造を有する。
【0026】
ポリマー構造(例えば、その形状及び/又は寸法)を、溶融フェロアロイと接触したとき、燃焼又はガス化するよりも、ポリマー中に炭素の大部分が溶解するように、最適化することができる。この結果、今度はポリマーの復炭機能(recarburisation function)を強化することができる。
【0027】
第3の態様の方法において、ポリマー構造は、その塊に比較して露出する表面積を最小にするように寸法化された構成単位を備える。さらに、ポリマーの寸法を、所定の取鍋又は取鍋炉に対して最適化することができる。この結果、最大炭素溶融を生じさせることが可能となり、ポリマー中の炭素の燃焼又はガス化を最小化することが可能となる。1以上のそのような構成単位(例えば、1以上の10kgの廃ポリマーの塊)を、フェロアロイの復炭剤として用いることができる。
【0028】
第3の態様の方法では、ポリマーを溶融アロイに添加することができ、又は溶融アロイをポリマー上に添加することができ、又はポリマーを、例えば取鍋又は取鍋炉の中に溶融アロイと共に添加することができる。
【0029】
その他、第3の態様の方法は、第1の態様と同様に定義される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1記載の、a)(現在の復炭剤としての)未処理の冶金コークス、及びb)(廃プラスチック復炭剤としての)未処理の高密度ポリエチレン(HDPE)に対するX線回折のプロット図。
【図2】実施例1記載の、未処理の冶金コークス及び未処理の高密度ポリエチレンと、燃焼後の高密度ポリエチレン及び冶金コークスとに対するX線回折のプロット図。
【図3】実施例1記載の、液滴アプローチのための水平管抵抗炉構成の第1の概略図。
【図4】実施例2記載の、冶金コークス100%と、高密度ポリエチレン30%と冶金コークス30%の混合物とに関する2つの実験結果に対する炭素ピックアップ(炭素含有率である%)を時間に対してプロットした図。
【図5】実施例3記載の、落下管炉の概略図。
【図6】実施例3記載の、液滴アプローチのための水平管抵抗炉構成の第2の概略図。
【図7】実施例3記載の、冶金コークス100%と、ベークライト30%と冶金コークス30%の混合物とに関する実験結果に対する炭素ピックアップ(炭素含有率である%)を時間に対してプロットした図。
【図8】スチール等のフェロアロイを製造するための電気アークプロセスの概略図。
【図9】取鍋に出湯された電気アーク炉の拡大概略図。
【図10】図9の取鍋の拡大概略図。
【図11】図11Aは、出湯取鍋の中に添加するのに適するタイヤトレッドのバンドルの側面斜視図。図11Bは、出湯取鍋の中に添加するのに適するタイヤトレッドのバンドルの平面斜視図。
【図12】図12Aは、転炉における、プラスチック(ゴム屑)と標準的な炭素復炭剤(carbon recarburiser)の炭素ピックアップ(10kgサンプル毎の%)のプロット図。図12Bは、取鍋炉における、プラスチック(ゴム屑)と標準的な炭素復炭剤の炭素ピックアップ(10kgサンプル毎の%)のプロット図。図12Cは、プラスチック(ゴム屑)と標準的な炭素復炭剤の炭素ピックアップ(10kgサンプル毎の%)の標準化されたデータのプロット図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
他の実施形態が発明の概要で定義されたフェロアロイの復炭処理方法に含まれる。以下に、添付図面を参照して、実施例により本方法の特定の実施形態が示される。
【0032】
炭素含有ポリマー(例えば、廃プラスチック又はゴム屑)により、基本的なフェロアロイ形成の後(例えば、溶鉱炉や酸素転炉の後、又は電気アーク炉(EAF)中でのスチール形成後)に存在する工程で、復炭剤としての機能(すなわち、フェロアロイ中の「トリム(trim)」炭素含有物)が、フェロアロイ(例えば、スチール)製品に注入されることが前提とされていた。その際、炭素含有ポリマーが、搬送取鍋と取鍋冶金炉の一方又は両方において、復炭剤として機能できることが前提とされていた。
【0033】
現在世界中で、製鋼に対して、2つの主要なプロセスルートがある。具体的には、鉱石とコークスから鉄を製造し、鉄をスチールに変える「一貫工場(Integrated Mill)」ルートと、屑鉄からスチールを製造する「ミニミル(Mini-Mill)」ルートである。2つのルートの間の主な相違点は、スチールを製造するために使用される炉の種類である。しかしながら、取鍋の中に溶融スチールを搬送することと、取鍋冶金炉(LMF)を使用する取鍋の中でのスチール温度及び組成を調整すること、及び、スチールを成型すること(例えば、連続鋳造機(CCM)を使用すること)は、2つのプロセスに共通する。
【0034】
一貫工場(Integrated Mill)は、鉄鉱石、コークス、溶剤が装入され、熱風が供給される溶鉱炉の中で、高炭素溶鉄を製造する。溶鉱炉からの鉄は、1以上の酸素転炉(BOFs)溶融状態で搬送される。酸素は、炭素の大部分を除去するために使用され、鉄を低炭素スチールに変える。BOFの最大25%まで、固体の廃重鋼を装入することができる。その後、炭素含有率に対するスチールの調整が実施される。
【0035】
ミニミル(Mini-Mill)は、重量スクラップ、軽量スクラップ、及び(溶鉱炉からの)銑鉄を含む固体の廃スチールを溶かすために、1以上の電気アーク炉(EAFs)を使用する。酸素は、炭素と、例えばシリコン、アルミニウム及びマンガン等の溶融スチールからの他の不純物とを除去するために使用される。シリコン、アルミニウム及びマンガンは、酸素と反応し、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)及び酸化マンガン(MnO)を生成する。多量の鉄はまた、注入された酸素により反応し、酸化鉄(FeO又はFe2O3)を生成する。酸化カルシウム(CaO)及び酸化マグネシウム(MgO)が、スラグ層をスチールの上部に形成するために、炉に添加される。このスラグ層は、酸化鉄の割合に従い、スチールを燃焼させる様々な不純物の酸化物を捕捉し、不純物の酸化物による化学攻撃から炉の内側を覆い、そしてまた、アークから炉の天井部や側壁への熱損失を低減化する。
【0036】
スチールの組成及び温度が補正されると、電気アーク炉は出湯する。これは、スチールを炉から取鍋に搬送することを含み、スチールを溶融状態でLMFに搬送させることができる。図5に、EAF製造プロセスの概略図を示す。図6は、取鍋に出湯されるスチールの詳細図である。図7は、スチールトリミングの第1段階が行われる、取鍋の詳細図を示す。
【0037】
出湯中、比較的純粋な形状(通常、冶金グレード炭素(metallurgical grade carbon))の炭素(「復炭剤」)が、スチールを要求される仕様にするために、スチールに添加される(「復炭(recarburisation)」として知られている)。冶金グレード炭素は、粒状化され、前記プロセスの比較的高価な部分を形成する。様々なフェロアロイはまた、金属の物理的性質を向上させるために、スチールに添加される。従って、従来適切であるとは考えられていなかった別の炭素代替品に関して、研究調査が行われていた。
【0038】
実施例
フェロアロイの製造方法の非制限的な実施例が以下に示される。実施例1、2及び3は、炭素含有ポリマー(廃プラスチック)中の炭素が溶融金属中に溶解し、従って復炭剤として機能することが可能であることをサポートする、実験室で得た実験データを提供する。実施例4は、搬送取鍋及び取鍋炉中における、復炭剤としての炭素含有ポリマー(ゴム屑)に対して、実際の現場での試験データを提供する。
【0039】
実施例1〜3の手順は、炭素溶解の検査をする前に、揮発性物質物(VM)を除去することを含む。一方、(現場試験である)実施例4の方法は、そのような事前の除去処理を含まない。従って、実施例1〜3のデータは、実施例4のデータと直接比較することができない。
【0040】
また、使用された冶金コークスの種類と品質が実施例1、2、3の間で異なっており、それが溶鋼の中への炭素溶解に関し、異なった結果の一因となっていることに注意してこの変化が起きたことに留意すべきである。従って、実施例1、2、3の結果の間で、直接比較はできない。
【0041】
さらに、コークスの性質及び廃プラスチックの性質の効果実験が実施され、それにより、それらの性質が溶鋼の中に炭素溶解を向上するために最適化されることに留意すべきである。
【0042】
実施例1−炭素溶解/廃プラスチックの復炭
1550℃の溶鋼中に、HDPE30%及び冶金コークス70%の混合物の炭素溶解を調べるために、実験を実施し、取鍋及び取鍋炉中で用いる適合性を確認した。実験は、サンプルの評価を表し、近似分析及びX線パターンを含むデータを提供し、同時に、炭素溶解実験の詳細な結果を提供した。
【0043】
サンプルの評価
炭素溶解試験のために使用された廃プラスチック及び冶金コークスの混合物の炭化残渣は、落下管炉(DTF)中での燃焼で形成された。DTFから収集された残渣は、ある程度の揮発性物質を含むことが判明した。従って、さらに、水平管炉(HF)(図3)を使用し、これらの残渣を液化させた。落下管炉及び水平管炉それぞれから収集された未処理のサンプル及び炭化残渣は、固定炭素、灰分、揮発性物質(VM)及び蒸気の割合が分析され、そして、これらの構造がX線回折を用いて明らかにされた。
【0044】
近似分析
得られたサンプルの近似分析データは、表1に示される。基準物質−冶金コークス−に関して、未処理のサンプルと、落下管炉及び水平管炉での燃焼後のサンプルとの固定炭素含有率は、約64.5%で一定であった。従って、落下管炉及び水平管炉での冶金コークスの燃焼は、実験条件下で変わらないということが理解できた。冶金コークスがプラスチックと混合すると、固定炭素含有率が、落下管炉及び水平管炉での燃焼後、増加する。一方、揮発性物質は有意に減少する。
【0045】
【表1】
【0046】
X線回折
HDPE及びコークスの混合物の炭化残渣のX線回折パターンを、シーメンス社製のX線回折計D5000を使用して観測した。まず、未処理の冶金コークス及び未処理のプラスチックを分析し、続いてこれらの混合物を分析した。次に、落下管炉で燃焼し、さらに水平管炉で液化させた後、これらの残渣を評価した。冶金コークスは基準コークスとみなされ、混合物のX線パターン全てを基準コークスと比較した。炭素のサンプル全てのX線パターンを、図1及び図2に示す。図1及び図2から、未処理の混合物が炭化水素(プラスチック)の高い強度ピークを示すことがわかった。落下管炉及び水平管炉での燃焼後、残渣サンプルのX線パターンはさらに、低い強度を有するプラスチックの炭化水素のピークを示す。これは、プラスチックが復炭剤として用いるのに適していることを示している。
【0047】
実施例2−廃プラスチックの溶解に対する実験の詳細
冶金コークス100%、並びに、HDPE30%及び冶金コークス70%の混合物の炭素溶解を、液滴技術(sessile drop technique)を用いて調べた。まず、調べられる物質を、粒状化し、1mmより小さなサイズの粒子になるようにふるいにかけ、そして窒素80%及び酸素20%の雰囲気中で、1200℃の落下管炉で燃焼した。落下管炉から収集された残渣は、高い揮発性物質含有量を含むことがわかった。従って、残渣を、アルゴン雰囲気中で、15分間、1200℃の水平管炉で再び液化した。収集された残渣を再び、粉砕機(grinding machine)を用いて紛体にまで粒状化し、炭素溶解実験に使用した。
【0048】
基体を形成するためには、約1.6gの残渣サンプルを使用した。油圧プレスを用いて7KNの負荷の下、残渣をスチール製金型で圧縮した。金型から得られた基体は、3.14cm2の上部表面積を有していた。基体を、グラファイトのサンプルフォルダー上に配置し、そして、約0.5gの電解純鉄(Feが99.98%)を基体の中央に配置した。炭素溶解実験は、1550℃の不活性アルゴンの雰囲気下で実施された。液滴アセンブリを、サンプルフォルダーを熱衝撃から保護し、揮発性物質が基体から逃げられように、温度が約1200℃である、水平管炉のコールドゾーンに設置した。約15分後、液滴アセンブリを、温度が1550℃であるホットゾーンに押し出した。時間生成器は、金属が溶融し、液滴を形成すると、計測を開始する。サンプルを、1、2、4、8、15、20、30そして60分後、急冷した。実験中、炉内の反応を、CCDカメラを用いて観察した。液滴実験後、液滴中に含まれる炭素含有量を、LECO社製の炭素−硫黄分析器(CS230型)を用いて計測した。水平管炉の概略図を図3に示す。
【0049】
実験結果
炭素基体の炭素ピックアップが鉄塊によって得られ、図4に示される。HDPE30%及び冶金コークス70%の基体と反応した鉄の炭素ピックアップが、冶金コークスと反応した鉄の炭素ピックアップよりも高いということが、はっきりと観察された。
【0050】
実施例3−ベークライト/コークス混合物を用いた炭素溶解
材料選択及び準備
実施例3では、電解純鉄(Feが99.98質量%)を使用した。実験された炭素材料は、純冶金コークスと、ベークライトとコークスの混合物を含む。ベークライト(フェノールホルムアルデヒド)は、フェノールとホルムアルデヒドの縮合重合によって製造された、高架橋結合熱硬化性材料である。ベークライトは、C、H及びOの原子からなる。化学組成は、フェノールのホルムアルデヒドに対する相対的な比率(1:1又は1:2)によって決まる。しかしながら、CaCO3が、フィラーとして一般的に商業グレードのベークライトに添加される。
【0051】
サンプルを準備するために、ベークライト及びコークスをそれぞれ、30%及び70%の比率で混合した。混合物を、ジョークラッシャ(jaw crusher)で砕き、1mmより小さい大きさにふるいにかけ、そしてボールミルで均一的に混合した。混合物を、0.52g/分の割合で落下管炉(DTF)にフィードし、O220%及びN280%の雰囲気中で、1200℃で燃焼させた。落下管炉の概略図を、図5に示す。
【0052】
炭素残渣を、近似分析及び灰分分析で分析した。全ての炭素残渣の近似分析値は、表2に示され、固定炭素、灰分、揮発性物質及び硫黄含有物を含む。また、残渣サンプル中の灰分の化学組成を分析し、表3に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
炭素溶解
液滴法を使用して、炭素溶解実験を実施した。液滴法は、溶鉄への炭素転移、そして、グラファイト/Fe及びコークス/Feのウェッティング中の界面現象を調べるために使用される。基体を作成するために、DTFから収集された約1.6gの紛体残渣を、金型に投入し、油圧プレスを用いて75KNの力をかけることにより成形した。3.14cm2の上部の表面積を有する基体を、グラファイトのサンプルフォルダー上に配置した。約0.5gの電解純鉄(Feが99.98%)を基体の中央に配置した。まず、このアセンブリを、温度が約1200℃で、1.0L/分の流量で炉から流れるアルゴンガスでシールされた、水平管炉のコールドゾーンに設置した。約15分後、アセンブルを、温度が1550℃であるホットゾーンに挿入した。金属が完全に溶融し、液滴を形成したとき、反応時間が開始することに留意した。サンプルを、アセンブリをコールドゾーンにスライドさせ、次いで金属/炭素の界面上で起きる反応を終了させることにより、1、2、4、8、15、20、30、60そして180分後、急冷した。水平管炉の概略図を図6に示す。
【0056】
実験後、金属液滴の炭素含有物を、炭素−硫黄分析器(LECO社製CS230型)を用いて計測した。金属/炭素の界面及び反応生成物を、エネルギー分散型分析装置(EDS)と接続した走査型電子顕微鏡(SEM)(Hitachi社製3400X)を用いて調べた。
【0057】
コークスと比較して、鉄塊のベークライト/コークスの混合物の炭素ピックアップを、時間とともにプロットし、図7に示す。データを表にし、表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
実施例4−廃プラスチック及びタイヤ屑を用いた、EAFの取鍋及びEAFの取鍋炉での復炭
製鋼作業における復炭剤としてのポリマー材料の使用を調べるために、EAFスチール製造プロセスにおいて実験を実施した。実験の目的は、比較的高価な復炭材料(単価が約$650/トンの冶金グレードカーボン)の割合を、現在使用中の(有意に低コストで得ることができる)廃ポリマーに置き換えることであった。従って、炭素材料の置き換えは、コストに関して効果があり、また環境に対して影響を与えることが理解できる。
【0060】
第1の実験ポリマーを、約95%炭素を含有する現在の復炭剤と比較して、約85%の結合した炭素及び約15%の結合した水素を含有する高密度ポリエチレン(HDPE)とした。状態を最適化し、かつリサイクル材料への置換の実現可能性を示すために、リサイクルされた材料よりもむしろ未使用のプラスチックを用いて、第1実験を実施した。
【0061】
実験の大部分を、出湯前に、EAF取鍋に装入されるポリマーを用いて実施したが、さらに取鍋炉でも実験を実施した。出湯位置に搬送される前の島(isle)にある間に、ポリマーを取鍋に添加した。取鍋に添加することができるバケツで、10kgのポリマーを検量した。電気アーク炉のサンプルを取り、所望の復炭剤量をレシピ通り取り出した。ポリマーを取鍋(10kg)に添加し、揮発性物質が燃焼するのを可能にし、炭素の残渣を残した。通常の(公知の)復炭剤をレシピに従って、この上部に任意に添加した。そして、取鍋を出湯位置に搬送し、出湯を行った。
【0062】
到着すると、取鍋炉での実験を実施した。ポリマー材料をポーラス状のプラグの上でスチールの上部に添加し、溶解可能とした。EAF取鍋で取得したデータは、初期の炭素含有物、添加されたプラスチック、添加された復炭剤、取鍋に到着した炭素である。取鍋炉で取得したデータは、到着した炭素、添加されたポリマー、添加された復炭剤、及び取鍋炉から出発する炭素である。このデータは常温で比較され、実験結果を以下に示す。
【0063】
図11A及び図11Bに示すように、タイヤ及びベルト由来のポリマー添加物を、約10kgの重量で、300×300×300mm3の体積を有するマットの複数のバンドルとして、任意に添加したことがわかる。複数のバンドルを手作業で取鍋に添加した。また、フェロアロイを添加した。直径約50mmの金属の塊の形状で添加し、取鍋に重力送りをさせる前にホッパーにバッチ処理した。これらのアロイを、出湯プロセスの途中で添加した。EAFが出湯を行う直前に、又は出湯プロセスの開始直後、炭素の割合を任意に増加した。
【0064】
バンドルの重量と比較して表面積が最小化するように(例えば、最適化された形状が略球状のバンドルに近づけてもよい)、マットの複数のバンドルを形状化及び寸法化した。これにより、ポリマー中の炭素の溶融金属に最大化された溶解を提供し、かつ、燃焼又はガス化されたポリマーのバンドル中の炭素量を最小化することが観測された。また、溶融金属が瞬時にバンドルを覆い、従ってバンドルに酸素流量を制限し、これによってさらにバンドル中の炭素の燃焼及びガス化を減少することができる。
【0065】
プロセスの工程は以下の通りである。
1.取鍋を予熱器から取り外し、取鍋車に設置する。
2.取鍋炉のオペレターは、損傷の可能性があるため、れんが造りの取鍋を検査し、そして、スライドゲートのノズルを磨いた。
3.出湯のために、取鍋をEAFに搬送した。
4.出湯口の下に搬送される前に、スチール中の炭素の割合に従って、10kgバッグのコークスの形状で炭素添加物を取鍋に添加した。ポリマー復炭剤を単独で使用する場合、本工程は省略される。所望の数量のバッグを添加すると、取鍋を出湯口の下に搬送する。
5.複数のアルミニウム棒(30〜80kg)を取鍋に添加し、出湯中、アロイの酸化を抑制した。次に、ポリマー復炭剤をこれらの棒の上に置いた。
6.出湯口を開放し、スチール/アロイに要求された炭素の割合に従って、ポリマー復炭剤複数のマット/バンドル(図11)を10kgバッチで取鍋に連続添加した。
7.取鍋の1/4が満たされると、フェロアロイ等のアロイ添加物を取鍋に添加した。
8.アロイ添加物を添加した後すぐに、フラックス添加物を取鍋に添加する。取鍋に添加される復炭剤の数量を規定し、生成されたスチールのグレードに従って、取鍋中の溶融アロイに重力送りされる前に、炭素添加物の一部をホッパーにバッチ処理する。ポリマー復炭剤を、炉の出湯中そして取鍋炉でも添加できることに留意すべきである。
【0066】
実験結果
実験を、いわゆる「ES35グリーンシフト(ES35 Green Shift)」中に実施し、そして、通常ES35グリーンシフト中に生じた、通常の復炭剤の取り込み結果と比較した。図12Aは、%炭素ピックアップの結果をプロットした図である。これらの結果は、ポリマー復炭剤使用による炭素ピックアップが許容できるレベルであることを示した。炭素値は全て、(一貫して)Celox社製の測定器で得られ、到着したLFサンプルと比較された。「プラスチック」とラベルされた柱(column)は、20kgのプラスチックと、残りが通常の復炭剤であるものの結果である。図表は、添加された材料10kgごとのピックアップを示す。図12Aは、復炭剤としてプラスチックが、純粋な復炭剤よりも重量で効果的ではないが、この差異が2つの材料中の結合された炭素の割合の差異(プラスチックの炭素が少ないこと)にある程度起因することを示す。図12Bに示すように、同様の傾向が取鍋炉の実験で観測された。
【0067】
混合物中の異なる組成の寄与を評価するために、プラスチックの重量を0.85で乗じ、復炭剤の重量を0.95で乗じ、全ての結合された炭素をスチール中で溶解したと仮定した。この計算した結果をプロットし、図12Cに示す。「プラスチック」と「復炭剤」の間の格差がわずかに増加した。
【0068】
本分析から、冶金グレード炭素復炭剤の特定の構造が、ポリマー復炭剤の構造から生じるよりも、より効率的な取り込みをもたらすことに留意すべきである。この差異は、ガス排出量(すなわち、CO/CO2の形状で)の炭素損失に起因し、それによりポリマーの一部が溶融アロイと接触し燃焼させる。
【0069】
上記から、ポリマーの構造(例えば、形状及び寸法)を最適化し、このような燃焼を改善して最小化した。その際、ポリマー復炭剤の表面積を低減する一方、ポリマー復炭剤の重量を増加することにより、さらに最適化される。
【0070】
全般的に、実験は、廃プラスチック及びゴム屑が、フェロアロイの復炭剤に対してコークス及びグラファイトへの効果的な代替品を提供できることを示した。従って、社会で多量の廃プラスチック及びゴム屑を使用して消費する効果的な手段を提供する。
【0071】
多くの実施形態を説明したが、本方法は他の多くの形態で具現化し得ることを理解されるべきである。
【0072】
例えば、特定の廃プラチック及びゴム屑を説明したが、炭素含有ポリマーが、(非制限的であるが)大型家電製品{おおがた かでん せいひん}多種多様な供給源からもたらされてもよいことを理解されるべきである。現在の廃棄処理問題及び環境問題を示す供給源が好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋又は取鍋炉の中の溶融フェロアロイの復炭処理方法であって、
該取鍋又は該取鍋炉に炭素含有ポリマーを添加する工程を備え、
該ポリマーが該フェロアロイの復炭剤として機能するのに適していることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーの構造が、該ポリマーから前記溶融フェロアロイへの炭素の溶解を促進するのに適していることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーが復炭剤として機能することができる前記ポリマーの構造の適合は、装入前に、前記取鍋又は前記取鍋炉に添加される該ポリマーの形状及び構造を最適化する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーが、塊を形成するように結合されている複数のポリマー層を備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記取鍋に対しては、前記炭素含有ポリマーが該取鍋への溶融フェロアロイの出湯前に該取鍋中に添加され、
前記取鍋炉に対しては、該炭素含有ポリマーが該取鍋からの溶融フェロアロイと共に又は該溶融フェロアロイ上に該取鍋炉中に添加されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーが廃プラスチック又はゴム屑であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、
前記ゴム屑が使用されたタイヤ又はベルトであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記フェロアロイがスチール又は合金スチールであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーに加えて、石炭、コークス、炭素木炭、木炭及び/又はグラファイトのうちの1以上からなる他の炭素供給源を有する別の炭素供給源が前記取鍋又は前記取鍋炉の中に添加されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法であって、
前記取鍋又は前記取鍋炉が、電気アーク製鋼プロセスの一部を形成することを特徴とする方法。
【請求項11】
取鍋又は取鍋炉の中のフェロアロイの復炭剤としての炭素含有ポリマーの使用。
【請求項12】
請求項11記載の使用であって、
前記炭素含有ポリマーが、請求項2〜4、6又は7記載のものであることを特徴とする使用。
【請求項13】
溶融フェロアロイの復炭処理方法であって、
復炭剤として機能し得る炭素含有ポリマーを該溶融フェロアロイに接触させる工程を備え、
それによって、該炭素含有ポリマーは、該溶融フェロアロイと接触したとき、該炭素含有ポリマーから該溶融フェロアロイに炭素の溶解が促進される構造を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマー構造が、該ポリマーの塊に比較して露出する表面積を最小にするように寸法化された構成単位を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、
前記ポリマーの寸法が、前記所定の取鍋又は取鍋炉に対して最適化されていることを特徴とする方法。
【請求項1】
取鍋又は取鍋炉の中の溶融フェロアロイの復炭処理方法であって、
該取鍋又は該取鍋炉に炭素含有ポリマーを添加する工程を備え、
該ポリマーが該フェロアロイの復炭剤として機能するのに適していることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーの構造が、該ポリマーから前記溶融フェロアロイへの炭素の溶解を促進するのに適していることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーが復炭剤として機能することができる前記ポリマーの構造の適合は、装入前に、前記取鍋又は前記取鍋炉に添加される該ポリマーの形状及び構造を最適化する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーが、塊を形成するように結合されている複数のポリマー層を備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記取鍋に対しては、前記炭素含有ポリマーが該取鍋への溶融フェロアロイの出湯前に該取鍋中に添加され、
前記取鍋炉に対しては、該炭素含有ポリマーが該取鍋からの溶融フェロアロイと共に又は該溶融フェロアロイ上に該取鍋炉中に添加されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーが廃プラスチック又はゴム屑であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、
前記ゴム屑が使用されたタイヤ又はベルトであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記フェロアロイがスチール又は合金スチールであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマーに加えて、石炭、コークス、炭素木炭、木炭及び/又はグラファイトのうちの1以上からなる他の炭素供給源を有する別の炭素供給源が前記取鍋又は前記取鍋炉の中に添加されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法であって、
前記取鍋又は前記取鍋炉が、電気アーク製鋼プロセスの一部を形成することを特徴とする方法。
【請求項11】
取鍋又は取鍋炉の中のフェロアロイの復炭剤としての炭素含有ポリマーの使用。
【請求項12】
請求項11記載の使用であって、
前記炭素含有ポリマーが、請求項2〜4、6又は7記載のものであることを特徴とする使用。
【請求項13】
溶融フェロアロイの復炭処理方法であって、
復炭剤として機能し得る炭素含有ポリマーを該溶融フェロアロイに接触させる工程を備え、
それによって、該炭素含有ポリマーは、該溶融フェロアロイと接触したとき、該炭素含有ポリマーから該溶融フェロアロイに炭素の溶解が促進される構造を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、
前記炭素含有ポリマー構造が、該ポリマーの塊に比較して露出する表面積を最小にするように寸法化された構成単位を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、
前記ポリマーの寸法が、前記所定の取鍋又は取鍋炉に対して最適化されていることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−530007(P2011−530007A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521412(P2011−521412)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001018
【国際公開番号】WO2010/015041
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(503226040)ニューサウス・イノベーションズ・ピーティーワイ・リミテッド (7)
【住所又は居所原語表記】Rupert Myers Building, Gate 14, Barker Street, UNSW, Sydney, New South Wales 2052, Australia
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001018
【国際公開番号】WO2010/015041
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(503226040)ニューサウス・イノベーションズ・ピーティーワイ・リミテッド (7)
【住所又は居所原語表記】Rupert Myers Building, Gate 14, Barker Street, UNSW, Sydney, New South Wales 2052, Australia
【Fターム(参考)】
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