説明

復調装置

【課題】受信アンテナブランチ間の電波伝搬経路長及びケーブル長の違いにより信号の入力タイミングが異なる場合であっても、各信号の遅延時間差を補正し、受信特性の劣化を抑制する。
【解決手段】遅延補正部15−1は、シンボル開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し、データをバッファに格納して遅延させ、シンボルタイミングを合わせる。遅延補正部15−2は、フレーム開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し、データをバッファに格納して遅延させ、フレームタイミングを合わせる。遅延補正部15−3は、各データをバッファに格納し、所定の遅延量分遅延させた後に読み出す。そして、シンボル番号が重複したと判定したとき、新たな受信アンテナブランチのデータが最も遅れているとして、読み出しポインタを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに離れた場所に分散配置された複数の受信アンテナを用いて、受信信号をデジタル信号処理して合成するためのマクロダイバーシチ受信を行い、ダイバーシチ受信、アダプティブアレーアンテナ受信、MIMO(Multi-Input Multi-Output)伝送等を実現する復調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マラソン等のロードレース中継を市街地にて実施するための移動中継システムが知られている。この移動中継システムでは、カメラにより撮影されたハイビジョン映像信号が、移動中継車に積載されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の無線伝送装置(FPU:Field Pick-up Unit)を介して、コース沿いのビルの屋上等に設置された受信ポイント(受信アンテナ)へ伝送される。各受信ポイントで受信された信号は、電気信号から光信号に変換され、光ファイバーを介してスイッチングセンターと呼ばれる受信親局へ集められ、受信アンテナブランチ毎に設けられた、それぞれ独立した復調装置により復調される。復調装置から出力される各受信アンテナブランチのTS(Transport Stream)信号は、その品質に従って、自動スイッチャーにより適切に切り替えられる。これにより、途切れのない放送中継を実現することができる。
【0003】
しかしながら、この移動中継ステムは、TS信号を出力する復調装置を受信アンテナブランチ毎に備える必要があるから、システムの規模が大きくなってしまう。また、この移動中継システムの受信方式は、複数の受信アンテナブランチのTS信号のうち、いずれか1つのTS信号を選択する選択ダイバーシチ受信方式であることから、複数の受信ポイントで同時に信号を受信している場合であっても、選択された受信ポイント以外の信号は破棄されてしまう。そこで、移動中継システムの簡略化と回線信頼性とを両立させるために、移動中継システムの受信方式は、各受信ポイントの信号を適切に合成する合成ダイバーシチ受信方式またはアダプティブアレー受信方式であることが望ましい。
【0004】
一方、伝送容量を飛躍的に向上させることができるMIMO伝送技術を、FPUに適用する検討が進められている(非特許文献1を参照)。MIMO伝送技術では、送信装置及び受信装置共に複数のアレーアンテナ素子を用いることが前提となっている。このため、MIMO伝送技術をロードレース中継に適用する場合には、複数の受信ポイントの信号が復調装置に同時に入力される必要がある。
【0005】
移動中継システムの受信方式として、合成ダイバーシチ受信方式、アダプティブアレー受信方式またはMIMO伝送のいずれの方式を用いた場合であっても、復調装置が、各受信ポイントから入力した複数の受信アンテナブランチの信号をデジタル信号処理により合成するときには、電波伝搬経路長及び光ファイバーの経路長の違いに起因した信号の遅延時間差が受信アンテナブランチ間で存在する。この遅延時間差が大きくなると、復調装置は、シンボルタイミングの異なる信号を合成することになるから、受信特性が劣化するだけでなく、映像が完全に破綻することも想定される。したがって、復調装置は、各受信アンテナブランチの信号を合成処理する前に、受信アンテナブランチ間の信号の遅延時間差を正確に補正することが、要素技術として必須になる。
【0006】
受信アンテナブランチ間の信号の遅延時間差を補正する第1の手法として、各受信ポイントから復調装置までの間に設けられた光ファイバーの経路長を測定し、その経路長差に相当する時間分の遅延を行う固定のバッファを設け、信号をバッファに格納して遅延させることが想定される。これにより、受信アンテナブランチ間の信号のシンボルタイミングを揃えることができる。
【0007】
また、第2の手法として、ガードインターバル(以下、GI(Guard Interval)という。)と呼ばれる信号をシンボルに付加し、このGI期間内において信号の遅延時間差を吸収させることが想定される。このGIは、移動通信分野で利用されることの多いOFDM信号において、マルチパスによるシンボル間干渉の影響を抑えるための信号である。この手法を用いた場合の受信特性について報告されている(非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】光山,神原,鵜澤,中川,池田、「ロードレースコースにおけるLDPC符号化MIMO-OFDM伝送実験」、映像情報メディア学会技術報告、vol. 34, no. 5, pp.13-16, BCT2010-27, 2010
【非特許文献2】S. Okamura, M. Okada, and S. Komaki, “Ubiquitous antenna system for joint detection of COFDM signals,” IEICE Trans. Fundamentals, vol. E85-A, no. 7, pp.1685-1692, Jul. 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の第1の手法(光ファイバーの経路長の差に相当する時間分の遅延を行う固定のバッファを用いて、受信アンテナブランチ間の信号のシンボルタイミングを揃える手法)では、中継コースが異なる場合は使用する光ファイバーの経路長も異なるから、処理が複雑になって柔軟に対応できないという問題がある。また、移動中継車の移動に伴って、電波伝搬経路差が時々刻々と異なる場合に対応できないという問題もある。
【0010】
また、前述の第2の手法(GI期間内において受信アンテナブランチ間の信号の遅延時間差を吸収する手法)では、遅延時間差がGI期間を超える場合に対応することができないという問題がある。FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)窓位置を遅延時間差分だけ時間的に前方にずらして対応する手法も想定されるが、マルチパスに有効なGI期間が短くなるため、耐マルチパス特性が劣化するという問題が生じる。
【0011】
図29は、従来技術において、FFT窓を前方にずらす遅延時間差補正法を説明する図であり、(1)は、受信アンテナブランチ間で遅延時間差がない場合を示し、(2)は受信アンテナブランチ間で遅延時間差がある場合を示す。図29(1)を参照して、受信アンテナブランチ#1と受信アンテナブランチ#2との間の信号に遅延時間差がない場合は、シンボル間干渉を起こさないFFT窓位置がGI期間の範囲内で設定されるから、実効的なGI期間は不変であることがわかる。一方、図29(2)を参照して、受信アンテナブランチ#1と受信アンテナブランチ#2との間の信号に遅延時間差がある場合は、シンボル間干渉を起こさないFFT窓位置が遅延時間差分だけ時間的に前方にずらして設定されるから、実効的なGI期間は短くなることがわかる。この場合、耐マルチパス特性が劣化してしまう。
【0012】
このように、移動中継システムでは、マクロダイバーシチによる合成ダイバーシチ受信、アダプティブアレー受信またはMIMO伝送を実現する場合、電波伝搬経路長及び光ファイバーの経路長が受信アンテナブランチ間で異なることがあり、信号のシンボルタイミングが揃わないから、適切な合成処理が行えず、受信特性が大幅に劣化する、または受信そのものができなくなるという問題があった。
【0013】
この問題を解決するためには、受信アンテナブランチ間の信号の遅延時間差を補正する手法として、最も遅れた受信アンテナブランチの信号を時間軸のリファレンスとし、他の受信アンテナブランチの信号をバッファに格納して遅延させ、各信号のシンボルタイミングを合わせることが望ましい。また、各受信アンテナブランチの信号が復調装置に時間的にランダムに入力されたとしても、補正処理による遅延を可能な限り小さくすると共に、バッファ容量は必要最小限とし、時間軸の連続性を維持できることが望ましい。
【0014】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、分散配置された複数の受信アンテナから光ファイバー等のケーブルを介してマクロダイバーシチ受信を行う際に、受信アンテナブランチ間の電波伝搬経路長及びケーブル長の違いにより、信号の入力タイミングが異なる場合であっても、各信号の遅延時間差を補正し、受信特性の劣化を抑制可能な復調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明による復調装置は、分散配置された複数の受信アンテナ及びケーブルを介してマクロダイバーシチ受信を行い、各受信アンテナブランチの受信信号を入力して復調し、前記復調した信号を合成する復調装置において、前記受信信号を受信アンテナブランチ毎にデジタル直交復調するデジタル直交復調部と、前記デジタル直交復調された信号からシンボル開始タイミングを検出し、前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に生成するシンボル同期部と、前記デジタル直交復調された信号に含まれる有効シンボルをFFT(Fast Fourier Transform)し、周波数領域の信号を受信アンテナブランチ毎に生成するFFT部と、前記FFTされた信号及び前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記シンボル開始タイミングの信号に基づいて、前記FFTされた信号を第1のバッファに書き込み、各受信アンテナブランチにおいてシンボルタイミングの一致した信号を前記第1のバッファから読み出して出力する第1の遅延補正部と、前記シンボルタイミングの一致した信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記入力した信号を第2のバッファに書き込み、各受信アンテナブランチにおいてフレームタイミングの一致した信号を前記第2のバッファから読み出して出力する第2の遅延補正部と、前記フレームタイミングの一致した信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記入力した信号を第3のバッファに書き込み、前記第3のバッファ内で遅延させた各受信アンテナブランチの信号を前記第3のバッファから読み出して出力する第3の遅延補正部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による復調装置は、前記第1の遅延補正部が、前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記シンボル開始タイミングの信号毎に、前記FFTされた信号のシンボルを構成するサンプルについて、前記サンプルを前記第1のバッファに書き込むための書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する第1の書き込みタイミング制御部と、前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記シンボル開始タイミングの信号毎に、前記第2のバッファからサンプルを読み出すための読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、さらに、任意の時間位置に1シンボル長のシンボル開始タイミングパルス観測窓を設定し、前記シンボル開始タイミングパルス観測窓内で、前記シンボル開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出し、前記基準ブランチのシンボル開始タイミングにて、前記第1のバッファに書き込まれたサンプルをシンボルの最初から読み出すための前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、前記基準ブランチのシンボル開始タイミングの信号を基準ブランチシンボル開始タイミングの信号として出力する第1の読み出しタイミング制御部と、前記FFTされた信号及び前記書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記書き込み制御信号に基づいて、前記FFTされた信号のサンプルを前記第1のバッファに書き込み、前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記読み出し制御信号に基づいて、前記第1のバッファに書き込まれたサンプルを受信アンテナブランチ毎に読み出す第1のメモリと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明による復調装置は、前記第1の遅延補正部が、前記第1の読み出しタイミング制御部の代わりに新たな第1の読み出しタイミング制御部を備え、前記新たな第1の読み出しタイミング制御部が、1OFDMシンボル期間長毎に生成される基準パルスのタイミングにて、前記第1のバッファに書き込まれたサンプルをシンボルの最初から読み出すための前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、前記基準ブランチのシンボル開始タイミングの信号を基準ブランチシンボル開始タイミングの信号として出力する、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明による復調装置は、前記第2の遅延補正部が、前記シンボルタイミングの一致した信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記受信アンテナブランチの信号に基づいてフレーム開始タイミングを検出し、前記フレーム開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に生成するフレーム開始タイミング検出部と、前記シンボルタイミングの一致した信号におけるシンボル開始タイミングの信号を基準ブランチシンボル開始タイミングの信号として入力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号毎に、前記シンボルタイミングの一致した信号のシンボルを前記第2のバッファに書き込むための書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する第2の書き込みタイミング制御部と、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号を入力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号毎に、前記第2のバッファからシンボルを読み出すための読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号を出力し、さらに、前記フレーム開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、全受信アンテナブランチの中で最も先行したフレーム開始タイミングを検出し、前記フレーム開始タイミングを始端とする1フレーム長のフレーム開始タイミングパルス観測窓を設定し、前記フレーム開始タイミングパルス観測窓内で、前記フレーム開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出し、前記基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、前記第2のバッファに書き込まれたシンボルをフレームの最初から読み出すための前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する第2の読み出しタイミング制御部と、前記シンボルタイミングの一致した信号及び前記書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記書き込み制御信号に基づいて、前記シンボルタイミングの一致した信号のシンボルを前記第2のバッファに書き込み、前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記読み出し制御信号に基づいて、前記第2のバッファに書き込まれたシンボルを受信アンテナブランチ毎に読み出す第2のメモリと、を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明による復調装置は、前記第2の遅延補正部が、前記第2の読み出しタイミング制御部の代わりに新たな第2の読み出しタイミング制御部を備え、前記新たな第2の読み出しタイミング制御部が、前記第2の読み出しタイミング制御部に加え、さらに、前記検出した基準ブランチ及び前記基準ブランチのフレーム開始タイミングを保持し、前記フレーム開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、全受信アンテナブランチの中で最も先行したフレーム開始タイミングを検出し、前記フレーム開始タイミングを始端とする1フレーム長のフレーム開始タイミングパルス観測窓を設定し、前記フレーム開始タイミングパルス観測窓内で、前記保持した基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、前記第2のバッファに書き込まれたシンボルをフレームの最初から読み出すための前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明による復調装置は、前記第3の遅延補正部が、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号を入力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号毎に、前記フレームタイミングの一致した信号のシンボルを前記第3のバッファに書き込むための書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する第3の書き込みタイミング制御部と、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号を入力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号毎に、前記第3のバッファに書き込まれたシンボルの位置よりも所定量遅延した位置のシンボルを読み出すための読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、さらに、前記第2の遅延補正部により新たな基準ブランチが検出され、前記基準ブランチのフレーム開始タイミングが以前の基準ブランチのフレーム開始タイミングよりも遅れ、前記フレームタイミングの一致した信号のシンボルが重複した場合、前記重複したシンボルの数に応じて、前記重複したシンボルを前記第3のバッファから読み出さないようにするための前記読み出し制御信号を出力する第3の読み出しタイミング制御部と、前記フレームタイミングの一致した信号及び前記書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記書き込み制御信号に基づいて、前記フレームタイミングの一致した信号のシンボルを前記第3のバッファに書き込み、前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記読み出し制御信号に基づいて、前記第3のバッファに書き込まれたシンボルを受信アンテナブランチ毎に読み出す第3のメモリと、を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明による復調装置は、前記デジタル直交復調部と、前記シンボル同期部と、前記シンボル同期部の後段に設けられた前記第1の遅延補正部と、前記FFT部と、前記FFT部の後段に設けられた前記第2の遅延補正部と、前記第3の遅延補正部とを備え、前記第1の遅延補正部が、時間領域の信号及び前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記シンボル開始タイミングの信号に基づいて、前記時間領域の信号を前記第1のバッファに書き込み、各受信アンテナブランチにおいてシンボルタイミングの一致した信号を前記第1のバッファから読み出して出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、受信アンテナブランチ間の電波伝搬経路長及びケーブル長の違いにより、信号の入力タイミングが異なる場合であっても、各信号の遅延時間差を補正することができる。したがって、受信アンテナブランチ間で信号のタイミングを合わせることができるから、信号を適切に合成することができ、受信特性の劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による復調装置を含むマクロダイバーシチ受信システムをロードレース中継に用いた場合の概要を説明する図である。
【図2】実施例1における復調装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の遅延補正部の構成を示すブロック図である。
【図4】第1の遅延補正部の処理を示すタイミングチャートである。
【図5】第1の遅延補正部の処理を示すフローチャートである。
【図6】第1の遅延補正部における書き込みタイミング制御部の処理を示すフローチャートである。
【図7】第1の遅延補正部における読み出しタイミング制御部の処理を示すフローチャートである。
【図8】第1の遅延補正部における読み出しタイミング制御部によるポインタ管理を説明する図である。
【図9】第1の遅延補正部におけるメモリ部の処理を示すフローチャートである。
【図10】第1の遅延補正部における変形例の処理を示すタイミングチャートである。
【図11】第1の遅延補正部における変形例の処理を示すフローチャートである。
【図12】第1の遅延補正部における変形例の読み出しタイミング制御部の処理を示すフローチャートである。
【図13】第2の遅延補正部の構成を示すブロック図である。
【図14】第2の遅延補正部の処理を示すタイミングチャートである。
【図15】第2の遅延補正部の処理を示すフローチャートである。
【図16】第2の遅延補正部における読み出しタイミング制御部の処理を示すフローチャートである。
【図17】第2の遅延補正部における読み出しタイミング制御部によるポインタ管理を説明する図である。
【図18】第2の遅延補正部におけるRDポインタを説明する図であり、(1)は基準ブランチの信号が途切れない場合を示し、(2)は基準ブランチの信号が途切れた場合を示す。
【図19】第2の遅延補正部における変形例の処理を示すタイミングチャートである。
【図20】第2の遅延補正部における変形例の処理を示すフローチャートである。
【図21】第2の遅延補正部における変形例の読み出しタイミング制御部の処理を示すフローチャートである。
【図22】第2の遅延補正部の変形例において、最も遅れた受信アンテナブランチが変更され、シンボルが重複して出力される状態を示すタイミングチャートである。
【図23】第2の遅延補正部の変形例において、最も遅れた受信アンテナブランチが変更された場合にシンボルが重複して出力される状態のRDポインタを説明する図である。
【図24】第3の遅延補正部の構成を示すブロック図である。
【図25】第3の遅延補正部の処理を示すフローチャートである。
【図26】第3の遅延補正部における読み出しタイミング制御部の処理を示すフローチャートである。
【図27】第3の遅延補正部における読み出しタイミング制御部によるポインタ管理を説明する図であり、(1)は基準ブランチが変わらない場合を示し、(2)は1シンボル期間遅れた新たな基準ブランチに更新された場合を示す。
【図28】実施例2における復調装置の構成を示すブロック図である。
【図29】従来技術において、FFT窓を前方にずらす遅延時間差補正法を説明する図であり、(1)は受信アンテナブランチ間で遅延時間差がない場合を示し、(2)は受信アンテナブランチ間で遅延時間差がある場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔マクロダイバーシチ受信システム〕
まず、本発明の実施形態による復調装置を含むマクロダイバーシチ受信システムの概要について説明する。図1は、マクロダイバーシチ受信システムをロードレース中継に用いた場合の概要を説明する図である。
【0025】
移動中継車1には変調装置(図示せず)が積載されており、変調装置は、撮影されたロードレースのハイビジョン映像信号をOFDM変調し、送信ポイント(アンテナ)2から変調信号を送信する。移動中継車1の近傍の各ビルには、その屋上に受信ポイント(アンテナ)3が設置されている。複数の受信ポイント3は、移動中継車1の送信ポイント2から送信された変調信号を受信する。受信ポイント3により受信された変調信号は、E/O(電気/光)変換器(Electrical to Optical Converter)7において電気信号から光信号に変換され、光信号として光ファイバー4を介してO/E(光/電気)変換器(Optical to Electrical Converter)8へ伝送される。O/E変換器8において光信号が電気信号に変換される。スイッチングセンター5には復調装置6が設置されており、復調装置6は、複数の受信ポイント3からの変調信号を、E/O変換器7、光ファイバー4及びO/E変換器8を介して入力し、複数の変調信号に対し復調処理及び合成処理を行う。
【0026】
移動中継車1の送信ポイント2から送信された変調信号を受信可能な受信ポイント3は、移動中継車1の移動に伴って異なるものとなる。移動中継車1の移動に伴って、変調信号の受信を終了する(変調信号が途切れる)受信ポイント3が存在し、また、変調信号の受信を新たに開始する受信ポイント3も存在する。各受信ポイント3が互いに離れた場所に設置される場合、移動中継車1における送信ポイント2の送信アンテナから受信ポイント3の受信アンテナまでの間の電波伝搬経路長は、移動中継車1の位置によって大きく異なる。また、光ファイバー4による光回線として、既設のダークファイバー等を利用する場合、一般には、各受信ポイント3からスイッチングセンター5までの間の光ファイバー4の経路長は異なるものとなる。例えば、光ファイバー4の経路長の最も短い光回線と最も長い光回線とは、例えば30km程度の差がある。
【0027】
本発明の実施形態による復調装置6は、受信アンテナブランチ間の電波伝搬経路長及び光ファイバー4の経路長の違いにより、送信ポイント2から送信された変調信号を、受信ポイント3、E/O変換器7、光ファイバー4及びO/E変換器8を介して入力するタイミングが受信アンテナブランチ間で異なる場合であっても、また、変調信号が途切れて入力できなくなったり、変調信号の入力を新たに開始したりする受信アンテナブランチが存在する場合であっても、受信アンテナブランチ間の信号の遅延時間差を適切に補正し、各信号のタイミング(シンボル開始タイミング及びフレーム開始タイミング)を合わせることに特徴がある。
【0028】
以下に示す実施例では、放送素材伝送用無線装置が取り扱うARIB STD-B33規格「テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形OFDM方式デジタル無線伝送システム」に準拠したOFDM信号等に基づいて説明を行うが、OFDM信号であれば前記規格に限定されない。また、GIと同様に一部の信号が巡回的に繰り返されている信号形式等であれば、OFDM信号に限らず、その他の信号形式でも適用可能である。
【0029】
以下、図1に示した復調装置6について詳細に説明する。以下に説明する実施例1の復調装置6は、3つの遅延補正部を備え、FFT演算後の周波数領域において、受信アンテナブランチ間の信号の遅延時間差を補正する。また、以下に説明する実施例2の復調装置6は、実施例1と同様に3つの遅延補正部を備え、第1の遅延補正部がFFT演算前の時間領域にて処理を行い、第2及び第3の遅延補正部がFFT演算後の周波数領域にて処理を行い、受信アンテナブランチ間の信号の遅延時間差を補正する。
【0030】
第1の遅延補正部は、所定のシンボル開始タイミングパルス観測窓内において、複数の受信アンテナブランチの信号のうち、シンボル開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し、他の信号を第1のバッファに格納して遅延させ、基準ブランチの信号に合わせる。これにより、受信アンテナブランチ間の信号のシンボルタイミングを合わせることができる。
【0031】
第1の遅延補正部の変形例は、全受信アンテナブランチの信号を第1のバッファに格納して遅延させ、周期が各受信アンテナブランチのシンボルタイミングに一致し、位相は独立した特定ブランチのシンボルタイミングに依存しないタイミングで、全受信アンテナブランチの信号を読み出す。これにより、受信アンテナブランチ間の信号のシンボルタイミングを合わせることができる。
【0032】
第2の遅延補正部は、第1の遅延補正部によりシンボルタイミングが合った各受信アンテナブランチの信号に対し、フレームタイミングを合わせる処理を行う。すなわち、第2の遅延補正部は、最も先行した信号のフレームの先頭から1フレーム長のフレーム開始タイミングパルス観測窓内において、フレーム開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し、他の信号を第2のバッファに格納して遅延させ、基準ブランチの信号に合わせる。これにより、受信アンテナブランチ間の信号に1シンボル期間以上の遅延時間差がある場合、各信号のフレームタイミングを合わせることができる。
【0033】
第3の遅延補正部は、第2の遅延補正部によりフレームタイミングが合った各受信アンテナブランチの信号を第3のバッファに格納し、所定の遅延量分遅延させた後に読み出す。そして、基準ブランチの信号よりも遅れた信号を入力した場合、読み出しポインタを変更して第3のバッファから信号を読み出す。この場合、第3のバッファには、同じシンボルの重複した信号が格納されるが、読み出しポインタが変更されるから、同じシンボルが連続して読み出されることがなく、時間軸の連続性を確保することができる。
【実施例1】
【0034】
〔復調装置/実施例1〕
まず、実施例1の復調装置6について詳細に説明する。図2は、実施例1における復調装置6の構成を示すブロック図である。この復調装置6−1は、A/D変換部(Analogue to Digital Converter)10、デジタル直交復調部11、シンボル同期/AFC(Automatic Frequency Control)部12、GI除去部13、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部14、遅延補正部15−1〜15−3及び複素ウェイト演算/乗加算部16を備えている。A/D変換部10、デジタル直交復調部11、シンボル同期/AFC部12、GI除去部13及びFFT部14によりOFDM復調処理が行われ、遅延補正部15−1〜15−3により遅延補正処理が行われる。
【0035】
復調装置6−1が、各受信ポイント3からE/O変換器7、光ファイバー4及びO/E変換器8を介して、無線周波数帯(RF:Radio Frequency)または無線周波数よりも低い中間周波数帯(IF:Intermediate Frequency)の信号を入力すると、図示しない変換部は、入力した信号を、デジタル信号処理が可能な周波数帯の信号に変換する。A/D変換部10は、図示しない変換部から信号を入力し、入力したアナログ信号を量子化し、デジタル信号に変換する。デジタル直交復調部11は、A/D変換部10からデジタル信号を入力し、デジタル直交復調を行なう。
【0036】
シンボル同期/AFC部12は、デジタル直交復調部11からデジタル直交復調された信号を入力し、入力した信号にシンボル同期処理及びAFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)を施し、GI相関によりシンボルの開始タイミングを検出する。シンボル同期/AFC部12により検出された各受信アンテナブランチのシンボル開始タイミングの信号は、GI除去部13及びFFT部14を介して遅延補正部15−1へ出力される。ここで、受信ポイント3において変調信号を適切に受信できた受信アンテナブランチについてのみ、シンボル開始タイミングが検出され、その受信アンテナブランチにおけるシンボル開始タイミングの信号が出力される。したがって、変調信号が途切れた場合、その受信アンテナブランチのシンボル開始タイミングの信号は出力されなくなり、新たな受信アンテナブランチの変調信号が受信された場合、その受信アンテナブランチのシンボル開始タイミングの信号が出力されるようになる。
【0037】
GI除去部13は、シンボル同期/AFC部12からAFCされた信号及びシンボル開始タイミングの信号を入力し、FFT窓を設定し、GIを除去して有効シンボルを抽出し、有効シンボル長の信号を生成する。FFT部14は、GI除去部13から有効シンボル長の信号及びシンボル開始タイミングの信号を入力し、時間領域の信号をFFTし、周波数領域の信号に変換する。FFT窓位置の更新は、複素ウェイト演算/乗加算部16が所定の複数のシンボル毎に合成処理を行う場合に、前記所定の複数のシンボルを単位として、同じタイミングで行う。これにより、FFT窓位置の更新タイミングと、複素ウェイト演算/乗加算部16の更新タイミングを一致させることができ、同じ対象シンボル毎にFFT窓位置の更新と、合成処理が行われる。
【0038】
尚、A/D変換部10、デジタル直交復調部11、シンボル同期/AFC部12、GI除去部13及びFFT部14において、サンプリング周波数及び動作クロックは受信アンテナブランチ間で共通である。また、周波数変換における局部発振器、シンボル同期タイミング及び周波数補正の処理は、受信アンテナブランチ間で共通ではなく、受信アンテナブランチ毎に独立しているものとする。
【0039】
A/D変換部10、デジタル直交復調部11、シンボル同期/AFC部12、GI除去部13及びFFT部14のOFDM復調処理により、各受信アンテナブランチにおける周波数領域の信号及びシンボル開始タイミングの信号が生成され、遅延補正部15−1へ出力される。
【0040】
遅延補正部15−1は、FFT部14から各受信アンテナブランチにおける周波数領域の信号(データ)及びシンボル開始タイミングの信号を入力し、所定のシンボル開始タイミングパルス観測窓内において、シンボル開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し、他の受信アンテナブランチのデータを第1のバッファに格納して遅延させ、基準ブランチのデータにシンボルタイミングを合わせる。シンボルタイミングが合った各受信アンテナブランチのデータ、及び基準ブランチのシンボル開始タイミング(基準ブランチシンボル開始タイミング)の信号は、遅延補正部15−2へ出力される。
【0041】
遅延補正部15−2は、遅延補正部15−1から、シンボルタイミングが合った各受信アンテナブランチのデータ及び基準ブランチシンボル開始タイミングの信号を入力し、任意のタイミングで検出したフレーム開始タイミングを基準に、その前後の所定のシンボル数に相当する期間(例えば、±10シンボル期間)をフレーム開始タイミングパルス観測窓として設定し、その観測窓内において、フレーム開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し、他の受信アンテナブランチを第2のバッファに格納して遅延させ、基準ブランチのデータにフレームタイミングを合わせる。フレームタイミングが合った各受信アンテナブランチのデータ、及び基準ブランチシンボル開始タイミングの信号(シンボル番号を含む)は、遅延補正部15−3へ出力される。
【0042】
遅延補正部15−3は、遅延補正部15−2から、フレームタイミングが合った各受信アンテナブランチのデータ及び基準ブランチシンボル開始タイミングの信号(シンボル番号を含む)を入力し、各受信アンテナブランチのデータを第3のバッファに格納し、所定の遅延量分遅延させた後に読み出して出力する。そして、入力した基準ブランチシンボル開始タイミングの信号に含まれるシンボル番号が重複した場合、基準ブランチの信号よりも遅れた信号であると判定し、読み出しポインタを、重複した数に応じて変更し、第3のバッファからデータを読み出す。これにより、第3のバッファから同じシンボルのデータが重複して読み出されることがなく、時間軸においてシンボル番号の連続したシンボルが読み出される。尚、遅延補正部15−3は、遅延補正部15−2からシンボル番号の代わりにシンボル移動量を入力し、読み出しポインタをシンボル移動量の示す数だけ進め、第3のバッファからデータを読み出すようにしてもよい。この場合、遅延補正部15−2は、基準ブランチのフレーム開始タイミングが何シンボル移動したかを監視し、そのシンボル移動量を遅延補正部15−3に出力する。
【0043】
複素ウェイト演算/乗加算部16は、遅延補正部15−3から、受信アンテナブランチ間で遅延時間差が補正されたデータ、すなわちシンボル及びフレームタイミングが一致し、時間軸におけるシンボルの連続性が確保された各受信アンテナブランチのデータを入力し、各データに対し複素重み演算及び乗算処理を行ってデータを合成し、合成後のデータを出力する。例えば、MIMO伝送の場合、ZF(Zero Forcing)法、MMSE(Minimum Mean Square Error:最小自乗誤差)等の信号分離及び検出アルゴリズムにより変調装置から送信された信号が検出され出力される。
【0044】
このように、復調装置6−1によれば、受信アンテナブランチ間の信号の遅延時間差を補正し、シンボル及びフレームタイミングが一致し、かつ時間軸におけるシンボルの連続性が確保された複数のデータを合成するようにしたから、受信特性の劣化を抑制することができる。
【0045】
〔第1の遅延補正〕
次に、図2に示した遅延補正部15−1による第1の遅延補正処理について詳細に説明する。図3は、遅延補正部15−1の構成を示すブロック図であり、図4は、遅延補正部15−1の処理を示すタイミングチャートであり、図5は、遅延補正部15−1の処理を示すフローチャートである。前述のとおり、遅延補正部15−1は、1OFDMシンボル期間内の遅延時間差を補正し、シンボルタイミングを合わせる機能を有する。以下、受信アンテナブランチの数を3として説明する。この遅延補正部15−1は、書き込みタイミング制御部21−1〜21−3、メモリ部22−1〜22−3及び読み出しタイミング制御部23を備えている。
【0046】
遅延補正部15−1の図示しない無信号ブランチ検出/無効化部は、FFT部14から、各受信アンテナブランチの周波数領域の信号(データ1,2,・・・)及びシンボル開始タイミングの信号(SYC1,2,・・・)を入力し、シンボル毎に、無効化すべきブランチを検出して遅延補正部15−1への出力を無効化する。具体的には、無信号ブランチ検出/無効化部は、入力した各系統のデータ1,2,・・・に対し、所定のデータキャリヤ、またはパイロット信号とガードバンドに相当する無変調キャリア等の比を算出し、算出した値が所定のしきい値以下であると判定した場合、その信号を後段に出力しないよう無効化する。無効と判定されたブランチ以外のブランチの信号は遅延補正部15−1に出力する。また、無信号ブランチ検出/無効化部は、入力したSYC1,2,・・・が周期性を持ち、事前に設定したしきい値を超える場合は、有効なシンボル開始タイミングであると判断し、その系統では正しく信号を受信できたとして、受信対象の受信アンテナブランチを判断し、上記条件を満たさないブランチは無効であると判断するようにしてもよい。以下、データ1〜3及びSYC1〜3の系統が受信対象の受信アンテナブランチであると特定され、その数は3であるとする。
【0047】
また、遅延補正部15−1の図示しないヌル信号挿入部は、図示しない無信号ブランチ検出/無効化部により特定された受信アンテナブランチのデータに対し、シンボル毎にGI期間に相当する期間のヌル信号を挿入する。このヌル信号は、処理タイミングを維持するための信号である。
【0048】
遅延補正部15−1は、FFT部14から図示しない無信号ブランチ検出/無効化部及びヌル信号挿入部を介して、周波数領域に変換されたデータ1〜3及びシンボル開始タイミングの信号であるSYC1〜3を入力する(ステップS501)。書き込みタイミング制御部21−1は、SYC1を入力し、データ1をサンプル毎にメモリ部22−1のバッファに書き込むための制御信号WR1(書き込み位置を示すWRポインタ1を含む)を生成し、メモリ部22−1に出力する(ステップS502)。書き込みタイミング制御部21−2,21−3も、書き込みタイミング制御部21−1と同様の処理を行い、SYC2,3を入力して制御信号WR2,3(WRポインタ2,3を含む)を生成し、メモリ部22−2,22−3に出力する。ここで、書き込みタイミング制御部21−1〜21−3は、データを1サンプル入力する毎に(図示せず)、WRポインタ1〜3をインクリメントする。尚、初期状態においては、WRポインタ1と後述するRDポインタ1は同じ位置を示しており、WRポインタ2,3と後述するRDポインタ2,3もそれぞれ同じ位置を示している。後述する遅延補正部15−1’,15−2,15−2’,15−3についても同様である。
【0049】
メモリ部22−1は、データ1(ヌル信号が挿入されたデータ1)を入力すると共に、書き込みタイミング制御部21−1から制御信号WR1(WRポインタ1を含む)を入力し、制御信号WR1の入力タイミングにて、データ1をバッファ内のWRポインタ1の示す位置に書き込む(ステップS503)。メモリ部22−2,22−3も、メモリ部22−1と同様の処理を行い、制御信号WR2,3(WRポインタ2,3を含む)の入力タイミングにて、入力したデータ2,3をバッファ内のWRポインタ2,3の示す位置に書き込む。
【0050】
読み出しタイミング制御部23は、SYC1〜3を入力し、任意の時間位置にシンボル開始タイミングパルス観測窓(1OFDMシンボル長)を設定し、その観測窓内で、SYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出する(ステップS504)。この場合、読み出しタイミング制御部23は、図示しない無信号ブランチ検出/無効化部から有効な受信アンテナブランチの数を入力し、この受信アンテナブランチの数と、入力したSYC1〜3の数とを比較し、同数を判定した場合に、SYC1〜3のうちの最も遅れた信号を入力したと判断し、そのタイミングで基準ブランチを検出する。そして、読み出しタイミング制御部23は、基準ブランチのシンボル開始タイミングを基準ブランチシンボル開始タイミングとし、このタイミングにて、メモリ部22−1〜22−3のバッファからデータ1〜3をサンプル毎に同じタイミングで読み出すための、共通の読み出しタイミングとなる制御信号RD1〜3(読み出し位置を示すRDポインタ1〜3を含む)を生成し、同じタイミングで制御信号RD1〜3をメモリ部22−1〜22−3にそれぞれ出力する(ステップS505)。
【0051】
メモリ部22−1は、読み出しタイミング制御部23から制御信号RD1(RDポインタ1を含む)を入力し、制御信号RD1の入力タイミングにて、バッファ内のRDポインタ1の示す位置からデータ1を読み出す(ステップS506)。メモリ部22−2,22−3も、メモリ部22−1と同様の処理を行い、制御信号RD2,3(RDポインタ2,3を含む)の入力タイミングにて、バッファ内のRDポインタ2,3の示す位置からデータ2,3を1サンプル毎に順次読み出す。
【0052】
遅延補正部15−1は、メモリ部22−1〜22−3から読み出されたデータ1〜3及び読み出しタイミング制御部23により生成された基準ブランチシンボル開始タイミングの信号であるSYCを遅延補正部15−2に出力する(ステップS507)。
【0053】
図4において、各Si(i=0〜407)は、シンボルを示し、キャリア番号順に時系列に並べられたFFTサイズと等しい1024ポイントの複素信号値で構成されている。また、xxは、GI期間に相当する期間の信号であり、FFT演算の過程で除去される区間の信号であるが、図示しないヌル信号挿入部により挿入されたヌル信号を示している。
【0054】
書き込みタイミング制御部21−1〜21−3により生成される制御信号WR1〜3は、SYC1〜3のタイミングでオン(high)となり、FFTサイズ分(1024ポイント)のクロック後にオフ(low)となる信号である。また、SYC1〜3のうちSYC2が最も遅れているから、SYC2がSYCとなる。また、読み出しタイミング制御部23により生成される制御信号RD1〜3は、SYCのタイミングでオン(high)となり、FFTサイズ分(1024ポイント)のクロック後にオフ(low)となる信号である。
【0055】
図4に示すように、受信アンテナブランチ間に電波伝搬経路長及び光ファイバー4の経路長に起因する遅延時間差がある場合、SYC1〜3の位相は、受信アンテナブランチでそれぞれ異なるものとなる。そのため、遅延補正部15−1は、任意の位置に設定可能なシンボル開始タイミングパルス観測窓(1OFDMシンボル期間に相当する観測窓)を設定し、その観測窓内において、シンボル開始タイミングの位相が最も遅れた受信アンテナブランチ#2(基準ブランチ)を検出し、他の受信アンテナブランチ#1,3のデータ1,3を遅延させ、基準ブランチである受信アンテナブランチ#2にシンボル開始タイミングを揃えたデータ1〜3(データ1のS0、データ2のS407及びデータ3のS0)を出力する。これにより、1OFDMシンボル期間内の遅延差が吸収され、シンボルタイミングの合ったデータ1〜3が出力される。
【0056】
(書き込みタイミング制御部)
次に、図3に示した書き込みタイミング制御部21−1〜21−3について詳細に説明する。図6は、書き込みタイミング制御部21−1の処理を示すフローチャートである。書き込みタイミング制御部21−1は、FFT部14及び図示しない無信号ブランチ検出/無効化部から出力された信号がキャリア番号順にメモリ部22−1〜22−3のバッファに1サンプルずつ入力された場合、WRポインタ1を1つずつインクリメントする(ステップS601)。つまり、データ1を1サンプル入力する毎に1つずつインクリメントする。WRポインタ1は、メモリ部22−1のバッファにデータ1のサンプルを書き込む位置を示すポインタである。
【0057】
書き込みタイミング制御部21−1は、ステップS601の後、WRポインタ1の位置にデータ1を書き込むタイミングを示す制御信号WR1(WRポインタ1を含む)を生成し、メモリ部22−1に出力する(ステップS602)。書き込みタイミング制御部21−2,21−3も、書き込みタイミング制御部21−1と同様の処理を行う。
【0058】
このように、書き込みタイミング制御部21−1〜21−3は、FFT部14及び図示しない無信号ブランチ検出/無効化部から出力された信号がキャリア番号順にメモリ部22−1〜22−3のバッファに1サンプルずつ入力された場合、データ1を1サンプル入力する毎に、WRポインタ1〜3をインクリメントし、制御信号WR1〜3を生成してメモリ部22−1〜22−3に出力する。これにより、メモリ部22−1〜22−3において、制御信号WR1〜3に含まれるWRポインタ1〜3の位置に、データ1〜3が順次書き込まれる。
【0059】
(読み出しタイミング制御部)
次に、図3に示した読み出しタイミング制御部23について詳細に説明する。図7は、読み出しタイミング制御部23の処理を示すフローチャートであり、図8は、読み出しタイミング制御部23によるポインタ管理を説明する図である。読み出しタイミング制御部23は、1OFDMシンボル期間長のシンボル開始タイミングパルス観測窓を任意の時間位置に設定し(ステップS701)、SYC1〜3のいずれかの信号を入力したか否かを判定する(ステップS702)。
【0060】
読み出しタイミング制御部23は、ステップS702において、SYC1〜3のいずれかの信号を入力したと判定した場合(ステップS702:Y)、その入力した信号がSYC1〜3のうちの最も遅れたシンボル開始タイミングの信号であるか否かを判定する(ステップS703)。一方、ステップS702において、SYC1〜3のいずれかの信号を入力していないと判定した場合(ステップS702:N)、入力するまで待つ。
【0061】
読み出しタイミング制御部23は、ステップS703において、入力した信号がSYC1〜3のうちの最も遅れたシンボル開始タイミングの信号であると判定した場合(ステップS703:Y)、ステップS704へ移行する。一方、ステップS703において、入力した信号がSYC1〜3のうちの最も遅れたシンボル開始タイミングの信号でないと判定した場合(ステップS703:N)、ステップS702へ移行する。具合的には、読み出しタイミング制御部23は、ステップS703において、図示しない無信号ブランチ検出/無効化部から受信アンテナブランチの数(本例の場合3)を入力し、シンボル開始タイミングパルス観測窓の開始時点から入力したSYC1〜3の数をカウントし、カウント数が3よりも小さい場合に、その入力した信号がSYC1〜3のうちの最も遅れたシンボル開始タイミングの信号でないと判定し、カウント数が3の場合に、その入力した信号がSYC1〜3のうちの最も遅れたシンボル開始タイミングの信号であると判定する。これにより、シンボル開始タイミングパルス観測窓内の途中で、SYC1〜3のうちの最も遅れた信号を判定することができ、そのタイミングで、以下に示すステップS704〜ステップS707の処理を行うことができる。
【0062】
読み出しタイミング制御部23は、ステップS703から移行して、シンボル開始タイミングパルス観測窓内で最も遅れたシンボル開始タイミングの受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出する(ステップS704)。そして、読み出しタイミング制御部23は、キャリア番号順にメモリ部22−1〜22−3のバッファから1サンプルずつ出力される場合、基準ブランチのシンボル開始タイミングにて、サンプルを順番に読み出すためのRDポインタ1〜3をインクリメントすることにより、RDポインタ1〜3を順次設定する(ステップS705)。そして、読み出しタイミング制御部23は、RDポインタ1〜3の位置からデータ1〜3のサンプルを読み出すための制御信号RD1〜3(RDポインタ1〜3を含む)を生成し、メモリ部22−1〜22−3に出力する(ステップS706)。図8に示すように、WRポインタ1〜3とRDポインタ1〜3との間の差は、図4に示したSYC1〜3の入力タイミングの差が反映される。つまり、SYC2が最も遅れた信号であり、SYC2のタイミングでデータ1〜3が読み出されるから、メモリ部22−1において、WRポインタ1とRDポインタ1との間の差は、SYC1とSYC2との間のタイミング差に相当するものとなり、メモリ部22−3において、WRポインタ3とRDポインタ3との間の差は、SYC3とSYC2との間のタイミング差に相当するものとなる。また、読み出しタイミング制御部23は、ステップS704から移行して、基準ブランチのシンボル開始タイミングの信号をSYCとして遅延補正部15−2に出力する(ステップS707)。
【0063】
このように、読み出しタイミング制御部23は、SYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチを基準ブランチとし、SYC1〜3のうちの最も遅れた信号のシンボル開始タイミングにて、シンボルの最初からサンプルを読み出すためのRDポインタ1〜3を順次設定し、バッファからデータ1〜3を同じタイミングで読み出すための制御信号RD1〜3を生成してメモリ部22−1〜22−3に出力する。これにより、シンボル開始タイミングパルス観測窓内において、データ1〜3共に同じタイミングでメモリ部22−1〜22−3のバッファから読み出され、SYC1〜3のうちの最も遅れた信号のシンボル開始タイミング毎に、データ1〜3がメモリ部22−1〜22−3のバッファから順次読み出される。
【0064】
(メモリ部)
次に、図3に示したメモリ部22−1〜22−3について詳細に説明する。図9は、メモリ部22−1の処理を示すフローチャートである。メモリ部22−1は、書き込みタイミング制御部21−1から制御信号WR1(WRポインタ1を含む)を入力したか否かを判定し(ステップS901)、制御信号WR1を入力したと判定した場合(ステップS901:Y)、入力したデータ1を、バッファ内のWRポインタ1の位置に書き込む(ステップS902)。一方、制御信号WR1を入力していないと判定した場合(ステップS901:N)、ステップS903へ移行する。
【0065】
メモリ部22−1は、ステップS901またはステップS902から移行して、読み出しタイミング制御部23から制御信号RD1(RDポインタ1を含む)を入力したか否かを判定し(ステップS903)、制御信号RD1を入力したと判定した場合(ステップS903:Y)、バッファ内のRDポインタ1の位置からデータ1を読み出す(ステップS904)。一方、制御信号RD1を入力していないと判定した場合(ステップS903:N)、処理を終了し、ステップS901へ移行する。メモリ部22−2,22−3も、メモリ部22−1と同様の処理を行う。
【0066】
このように、メモリ部22−1〜22−3は、制御信号WR1〜3を入力する毎に、データ1〜3をバッファ内のWRポインタ1〜3の位置に書き込み、制御信号RD1〜3を入力する毎に、バッファ内のRDポインタ1〜3の位置からデータ1〜3を同じタイミングで読み出す。
【0067】
尚、第1の遅延補正部15−1では、各受信アンテナブランチ間で1OFDMシンボル期間内のずれを補正するだけなので、メモリ部22−1〜22−3において、各受信アンテナブランチ#1〜#3で必要となるバッファのサイズは、1OFDMシンボル期間に相当する容量があればよい。図4において、サブキャリア毎にIQ各12ビットの複素信号値で処理される場合、1OFDMシンボルの最大1024サブキャリア分の信号を遅延させるバッファが必要になるため、2×12×1kbit=24kbit(1kbit=1024bit)のバッファ容量が受信アンテナブランチ毎に必要となる。
【0068】
このように、メモリ部22−1〜22−3によれば、最大で1OFDMシンボル期間に相当する遅延バッファにてデータを遅延させ、全データのシンボルタイミングを合わせることができる。つまり、必要最小限のバッファ容量にて1OFDMシンボル期間内の遅延時間が補正され、シンボルタイミングを一致させることができる。
【0069】
以上のように、図2及び図3に示した遅延補正部15−1によれば、FFT部14及び無信号ブランチ検出/無効化部からデータが出力される毎に、データ1〜3をバッファに書き込み、シンボル開始タイミングパルス観測窓内において、SYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出し、基準ブランチのシンボル開始タイミングにて、データ1〜3を同時に読み出すようにした。これにより、基準ブランチ以外の受信アンテナブランチのデータを格納して遅延させることができ、受信アンテナブランチ間において、データ1〜3に遅延時間差がある場合、各データ1〜3のシンボルタイミングを、基準ブランチのシンボルタイミングに合わせることができる。
【0070】
これは、遅延補正部15−1が、複数の受信アンテナブランチのデータ及びシンボル開始タイミングを入力し、その後に信号が途切れたり、新たな受信アンテナブランチの信号を入力したりして、受信アンテナブランチの数または系統に変動がある場合であっても、シンボル開始タイミングパルス観測窓内において、シンボル開始タイミングにてデータをバッファに書き込み、最も遅れたシンボル開始タイミングにてバッファからデータを読み出すから、受信アンテナブランチの数または系統に変更のある、入力した全データに対し、シンボル開始タイミングパルス観測窓内の基準ブランチのシンボルタイミングに合わせることができる。尚、遅延補正部15−1は、実際には、最も遅れた受信アンテナブランチを検出することができないため、あくまでもランダムなタイミングで決定されるシンボル開始タイミングパルス観測窓内で、最も遅れた信号に合わせるだけの処理を行う。但し、遅延補正部15−1により、受信アンテナブランチ間のシンボルタイミングを事前に一致させておくと、後述するように基準ブランチの信号が途切れた場合、基準ブランチの信号よりも遅れた新たな受信アンテナブランチの信号を入力したとき等、基準となるシンボルタイミングが変わったときに、後述する遅延補正部15−2,15−3にてシンボル単位でそのずれを容易に調整できるというメリットがある。また、全ブランチの信号を同じシンボルタイミングで処理できるため、信号の連続性を維持するための回路の実装が容易になるメリットも有する。
【0071】
(遅延補正部15−1の問題)
しかしながら、遅延補正部15−1では、有効となっているブランチ以外に新しいブランチの信号が入力され、その信号のシンボルタイミングが基準ブランチのタイミングより後ろにある場合、新しく入力されたブランチが基準となるため、既入力ブランチの遅延量が増えてしまう。そして、ブランチの信号を入力したり、入力しなかったりを繰り返すと、1シンボル分のバッファが短時間でフルに近い状態になってしまう。
【0072】
そこで、遅延補正部15−1の変形例は、前述した第1の遅延補正処理に代えて、以下に示す処理を行う。
【0073】
〔第1の遅延補正の変形例〕
次に、図2及び図3に示した遅延補正部15−1による第1の遅延補正処理の変形例について詳細に説明する。この変形例は、前述したとおり、全受信アンテナブランチの信号を第1のバッファに格納して遅延させ、周期が各受信アンテナブランチのシンボルタイミングに一致し、位相は独立した特定ブランチのシンボルタイミングに依存しないタイミングで、全受信アンテナブランチの信号を読み出す。これにより、受信アンテナブランチ間の信号のシンボルタイミングを合わせることができる。
【0074】
遅延補正部15−1’は、図3に示した遅延補正部15−1と同じ構成部を備えている。前述の遅延補正部15−1とこの遅延補正部15−1’とを比較すると、両者は、OFDMシンボル期間内の遅延時間差を補正し、シンボルタイミングを合わせる機能を有する点で同一であるが、前述の遅延補正部15−1は、SYC1〜3のうちの最も遅れた信号のタイミングにてバッファから読み出しを行うのに対し、遅延補正部15−1’は、SYC1〜3とは関係しない所定のタイミングにてバッファから読み出しを行う点で相違する。図3において、遅延補正部15−1’は、前述の遅延補正部15−1とは異なる処理を行う読み出しタイミング制御部23(以下、読み出しタイミング制御部23’という。)を備えている。書き込みタイミング制御部21−1〜21−3、メモリ部22−1〜22−3及び図示しない無信号ブランチ検出/無効化部及びヌル信号挿入部については、前述と同様の処理を行う。以下、受信アンテナブランチの数を3として説明する。
【0075】
図11のフローチャートにおいて、ステップS1101〜ステップS1103、ステップS1105及びステップS1106の各処理は、図5に示した遅延補正部15−1の処理を示すフローチャートのステップS501〜ステップS503、ステップS506及びステップS507の各処理と同様である。遅延補正部15−1’の読み出しタイミング制御部23’は、ステップS1103から移行して、所定のタイミングにてSYCを生成し、SYCに基づいて、メモリ部22−1〜22−3のバッファからデータ1〜3のシンボルを同じタイミングで読み出すための、共通の読み出しタイミングとなる制御信号RD1〜3(RDポインタ1〜3を含む)を生成し、同じタイミングで制御信号RD1〜3をメモリ部22−1〜22−3にそれぞれ出力する(ステップS1104)。SYCを生成する所定のタイミングの詳細については後述する。
【0076】
図10において、各Si(i=0〜407)は、図4と同様にシンボルを示し、xxは、GI期間に相当する期間の信号であり、FFT演算の過程で除去される区間の信号であるが、図示しないヌル信号挿入部により挿入されたヌル信号を示している。
【0077】
書き込みタイミング制御部21−1〜21−3により生成される制御信号WR1〜3は、SYC1〜3のタイミングでオン(high)となり、FFTサイズ分(1024ポイント)のクロック後にオフ(low)となる信号である。また、読み出しタイミング制御部23’により生成される制御信号RD1〜3は、所定のタイミングにて生成されるSYCのタイミングでオン(high)となり、FFTサイズ分(1024ポイント)のクロック後にオフ(low)となる信号である。
【0078】
図10に示すように、受信アンテナブランチ間に電波伝搬経路長及び光ファイバー4の経路長に起因する遅延時間差がある場合、シンボル開始タイミングパルスであるSYC1〜3の位相は、受信アンテナブランチでそれぞれ異なるものとなる。そのため、遅延補正部15−1’は、所定のタイミングにてSYCを生成し、全てのデータ1〜3を遅延させ、シンボル開始タイミングを揃えたデータ1〜3(データ1のS0、データ2のS407及びデータ3のS0)を出力する。これにより、1OFDMシンボル期間内の遅延時間差が吸収され、シンボルタイミングの合ったデータ1〜3が出力される。
【0079】
(読み出しタイミング制御部)
次に、遅延補正部15−1’の読み出しタイミング制御部23’について詳細に説明する。図12は、読み出しタイミング制御部23’の処理を示すフローチャートである。読み出しタイミング制御部23’は、復調装置6−1に備えたクロック再生部(図2には図示せず)において再生されたクロックに基づいて、1OFDMシンボル期間長毎に基準パルスを生成(ステップS1201、図10を参照)する。読み出しタイミング制御部23’は、このタイミングにてSYCを生成し、図7に示した読み出しタイミング制御部23と同様の処理を行い、メモリ部22−1〜22−3のバッファからデータが読み出される。尚、この基準パルスは、復調装置6−1内部で発生し、各ブランチのシンボルタイミングに周期が一致し、位相が独立な基準パルスである。
【0080】
読み出しタイミング制御部23’は、キャリア番号順にメモリ部22−1〜22−3のバッファから1サンプルずつ出力される場合、基準パルスのタイミングにて、サンプルを順番に読み出すためのRDポインタ1〜3をインクリメントすることにより、RDポインタ1〜3を順次設定する(ステップS1202)。そして、読み出しタイミング制御部23’は、RDポインタ1〜3の位置からデータ1〜3のサンプルを読み出すための制御信号RD1〜3(RDポインタ1〜3を含む)を生成し、メモリ部22−1〜22−3に出力する(ステップS1203)。また、読み出しタイミング制御部23’は、ステップS1201から移行して、基準パルスからSYCを生成し、遅延補正部15−2に出力する(ステップS1204)。
【0081】
以上のように、遅延補正部15−1’によれば、FFT部14及び図示しない無信号ブランチ検出/無効化部からの信号を順次バッファに書き込み、所定のタイミングで読み出すようにした。これにより、全ての受信アンテナブランチのデータ1〜3をバッファに格納して遅延させることができ、受信アンテナブランチ間において、データ1〜3に遅延時間差がある場合、各データ1〜3のシンボルタイミングを合わせることができる。
【0082】
(遅延補正部15−1,15−1’の問題)
しかしながら、前述した遅延補正部15−1,15−1’では、フレーム開始タイミングが一致しない場合がある。図4及び図10の例のように、遅延補正部15−1,15−1’により出力されるデータ1〜3は、それぞれS0,S407,S0であり、シンボル開始タイミングは一致しているが、シンボル番号がずれており、フレーム開始タイミングは一致していない。このように、データ2が他の受信アンテナブランチのデータ1,3に対して1OFDMシンボル期間を超えて遅延する場合、遅延補正部15−1,15−1’による第1の遅延補正処理のみでは、OFDMシンボル単位のずれが残留してしまう。
【0083】
そこで、後段の遅延補正部15−2は、OFDMシンボル単位での遅延補正、すなわち、フレームタイミングを一致させるための第2の遅延補正を行う。
【0084】
〔第2の遅延補正〕
次に、図2に示した遅延補正部15−2による第2の遅延補正処理について詳細に説明する。図13は、遅延補正部15−2の構成を示すブロック図であり、図14は、遅延補正部15−2の処理を示すタイミングチャートであり、図15は、遅延補正部15−2の処理を示すフローチャートである。前述のとおり、遅延補正部15−2は、遅延補正部15−1による第1の遅延補正処理の結果、1OFDMシンボル期間を超えた受信アンテナブランチ間の遅延時間差がある場合に、OFDMシンボル単位のずれを補正し、フレームタイミングを合わせる機能を有する。以下、受信アンテナブランチの数を3として説明する。この遅延補正部15−2は、フレーム開始タイミング検出部24−1〜24−3、書き込みタイミング制御部25−1〜25−3、メモリ部26−1〜26−3及び読み出しタイミング制御部27を備えている。
【0085】
遅延補正部15−2は、遅延補正部15−1からデータ1〜3及び基準ブランチシンボル開始タイミングの信号であるSYCを入力する(ステップS1501)。フレーム開始タイミング検出部24−1は、データ1を入力し、データ1に含まれるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)の制御信号に基づいてシンボル番号を取得し、シンボル番号0(S0)のときのSYCをフレーム開始タイミングFRMSYC1として検出し、FRMSYC1を読み出しタイミング制御部27に出力する(ステップS1502)。フレーム開始タイミング検出部24−2,24−3も、フレーム開始タイミング検出部24−1と同様の処理を行い、データ2,3を入力し、データ2,3に含まれるTMCCの制御信号からシンボル番号を取得し、フレーム開始タイミングFRMSYC2,3を検出し、読み出しタイミング制御部27に出力する。
【0086】
書き込みタイミング制御部25−1は、SYCを入力し、データ1のシンボルをメモリ部26−1のバッファに書き込むための制御信号WR1(WRポインタ1を含む)を生成し、メモリ部26−1に出力する(ステップS1503)。書き込みタイミング制御部25−2,25−3も、書き込みタイミング制御部25−1と同様の処理を行い、SYCを入力して制御信号WR2,3(WRポインタ2,3を含む)を生成し、メモリ部26−2,26−3に出力する。ここで、書き込みタイミング制御部25−1〜25−3は、SYCを入力する毎に、WRポインタ1〜3をインクリメントする。
【0087】
メモリ部26−1は、データ1を入力すると共に、書き込みタイミング制御部25−1から制御信号WR1(WRポインタ1を含む)を入力し、制御信号WR1の入力タイミングにて、データ1のシンボルをバッファ内のWRポインタ1の示す位置に書き込む(ステップS1504)。メモリ部26−2,26−3も、メモリ部26−1と同様の処理を行い、制御信号WR2,3(WRポインタ2,3を含む)の入力タイミングにて、入力したデータ2,3のシンボルをバッファ内のWRポインタ2,3の示す位置に書き込む。
【0088】
読み出しタイミング制御部27は、SYCを入力すると共に、フレーム開始タイミング検出部24−1〜24−3からFRMSYC1〜3を入力し、FRMSYC1〜3のうち最も先行した信号のフレーム開始タイミングから(フレームの先頭から)1フレーム期間をフレーム開始タイミングパルス観測窓に設定する(ステップS1505)。具体的には、読み出しタイミング制御部27は、任意のタイミングで検出されたフレーム開始タイミングを基準に、その前後の所定のシンボル数に相当する期間(例えば、±10シンボル期間)を設定し、その期間内に全てのFRMSYC1〜3を入力した場合の最も先行した信号から1フレーム期間をフレーム開始タイミングパルス観測窓に設定する。そして、読み出しタイミング制御部27は、フレーム開始タイミングパルス観測窓内で、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出する(ステップS1506)。具体的には、読み出しタイミング制御部27は、遅延補正部15−1の図示しない無信号ブランチ検出/無効化部から受信アンテナブランチの数を入力し、この受信アンテナブランチの数と、入力したFRMSYC1〜3の数とを比較し、同数を判定した場合に、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れた信号を入力したと判断し、そのタイミングで、基準ブランチを検出する。
【0089】
読み出しタイミング制御部27は、基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、メモリ部26−1〜26−3のバッファからデータ1〜3のシンボルを同じタイミングで読み出すための、共通の読み出しタイミングとなる制御信号RD1〜3(RDポインタ1〜3を含む)を生成し、同じタイミングで制御信号RD1〜3をメモリ部26−1〜26−3にそれぞれ出力する(ステップS1507)。これにより、基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、データ1〜3のフレームの開始のシンボル(シンボル番号0(S0)のシンボル)が読み出され、それ以降のシンボルも順次読み出される。
【0090】
メモリ部26−1は、読み出しタイミング制御部27から制御信号RD1(RDポインタ1を含む)を入力し、制御信号RD1の入力タイミングにて、バッファからデータ1のシンボルを読み出す(ステップS1508)。メモリ部26−2,26−3も、メモリ部26−1と同様の処理を行い、制御信号RD2,3(RDポインタ2,3を含む)の入力タイミングにて、バッファからデータ2,3のシンボルを読み出す。つまり、メモリ部26−1〜26−3は、制御信号RD1〜RD3(RDポインタ1〜3を含む)を入力する毎に、バッファに書き込まれたデータ1〜3を、受信アンテナブランチ間で同じタイミングにて、シンボル番号0(S0)のシンボルから順次読み出す。
【0091】
遅延補正部15−2は、メモリ部26−1〜26−3から読み出されたデータ1〜3及びSYC(シンボル番号を含む)を遅延補正部15−3に出力する(ステップS1509)。尚、シンボル番号は、読み出しタイミング制御部27において、基準ブランチのフレーム開始タイミングのときのSYCに対しシンボル番号0(S0)が付与され、それ以降SYCが入力される毎にインクリメントされる。尚、遅延補正部15−3が遅延補正部15−2からシンボル番号の代わりにシンボル移動量を入力する場合、遅延補正部15−2は、基準ブランチのフレーム開始タイミングが何シンボル移動したかを監視し、そのシンボル移動量を算出する。そして、遅延補正部15−2は、SYC(シンボル移動量を含む)を遅延補正部15−3に出力する。
【0092】
図14において、遅延補正部15−1から入力したデータ1〜3のうち、データ3が最も遅れており、データ3を基準にすると、データ1に対して3OFDMシンボル分の遅延時間差が残留しており、データ2に対して2OFDMシンボル分の遅延時間差が残留している。ARIB STD-B33に規定する標準規格では、例えば408OFDMシンボルを1OFDMフレームとして、フレーム開始タイミングは、408シンボル毎に検出される。また、フレーム番号は、例えば8フレームで構成されるスーパーフレーム内で0から7までの番号で割り当てられている。
【0093】
図14に示すように、フレーム開始タイミングを示すFRMSYC1〜3の時間位置が受信アンテナブランチ#1〜#3において異なっている。そのため、遅延補正部15−2は、任意のタイミングで検出されたフレーム開始タイミングのFRMSYC1を基準にした場合、その前後の所定のシンボル数に相当する期間を設定し、その期間内に全てのFRMSYC1〜3を入力した場合の最も先行したFRMSYC1を検出し、そのフレームの先頭から1フレーム期間をフレーム開始タイミングパルス観測窓として設定する。そして、遅延補正部15−2は、その観測窓内で最もパルス位相が遅れた受信アンテナブランチ#3を基準ブランチとし、その他の受信アンテナブランチ#1,2のデータをバッファに格納して遅延させ、受信アンテナブランチ間で時間軸上のフレーム位置を一致させる。
【0094】
(書き込みタイミング制御部)
図13に示した書き込みタイミング制御部25−1〜25−3は、図6と同様の処理を行う。つまり、書き込みタイミング制御部25−1〜25−3は、SYCを入力する毎に、WRポインタ1〜3をインクリメントし、制御信号WR1〜3を生成してメモリ部26−1〜26−3に出力する。これにより、メモリ部26−1〜26−3において、SYCのタイミング毎に、制御信号WR1〜3に含まれるWRポインタ1〜3の位置に、データ1〜3のシンボルが順次書き込まれる。
【0095】
(読み出しタイミング制御部)
次に、図13に示した読み出しタイミング制御部27について詳細に説明する。図16は、読み出しタイミング制御部27の処理を示すフローチャートであり、図17は、読み出しタイミング制御部27によるポインタ管理を説明する図である。読み出しタイミング制御部27は、SYCを入力したか否かを判定し(ステップS1601)、SYCを入力したと判定した場合(ステップS1601:Y)、FRMSYC1〜3のいずれかを入力したか否かを判定する(ステップS1602)。読み出しタイミング制御部27は、ステップS1601において、SYCを入力していないと判定した場合(ステップS1601:N)、処理を終了し、ステップS1601へ移行してSYCの入力を待つ。
【0096】
読み出しタイミング制御部27は、ステップS1602において、FRMSYC1〜3のいずれかを入力したと判定した場合(ステップS1602:Y)、入力したフレーム開始タイミングを基準にして、その前後の所定のシンボル数に相当する期間を設定する。そして、読み出しタイミング制御部27は、その期間内に全てのFRMSYC1〜3を入力した場合の最も先行したフレーム開始タイミングの信号であるか否かを判定し(ステップS1603)、最も先行したフレーム開始タイミングの信号であると判定した場合(ステップS1603:Y)、そのフレーム開始タイミングから1フレーム期間長のフレーム開始タイミングパルス観測窓を設定し(ステップS1604)、ステップS1607へ移行する。
【0097】
一方、読み出しタイミング制御部27は、ステップS1603において、入力したFRMSYC1〜3が最も先行したフレーム開始タイミングの信号でないと判定した場合(ステップS1603:N)、最も遅いフレーム開始タイミングの信号であるか否かを判定する(ステップS1605)。具合的には、読み出しタイミング制御部27は、遅延補正部15−1の図示しない無信号ブランチ検出/無効化部から受信アンテナブランチの数(本例の場合3)を入力し、フレーム開始タイミングパルス観測窓の開始時点から入力したFRMSYC1〜3の数をカウントし、カウント数が3よりも小さい場合に、その入力した信号がFRMSYC1〜3のうちの最も遅れたフレーム開始タイミングの信号でないと判定し、カウント数が3の場合に、その入力した信号がFRMSYC1〜3のうちの最も遅れたフレーム開始タイミングの信号であると判定する。これにより、フレーム開始タイミングパルス観測窓内の途中で、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れた信号を判定することができる。
【0098】
読み出しタイミング制御部27は、ステップS1605において、入力したFRMSYC1〜3が最も遅いフレーム開始タイミングの信号であると判定した場合(ステップS1605:Y)、フレーム開始タイミングパルス観測窓内で最も遅れたフレーム開始タイミングの受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出する(ステップS1606)。
【0099】
読み出しタイミング制御部27は、ステップS1602において、FRMSYC1〜3のいずれかを入力していないと判定した場合(ステップS1602:N)、またはステップS1604から移行して、またはステップS1605において、入力したFRMSYC1〜3が最も遅いフレーム開始タイミングの信号でないと判定した場合(ステップS1605:N)、またはステップS1606から移行して、RDポインタ1〜3をインクリメントし(ステップS1607)、ステップS1608及びステップS1609へ移行する。尚、読み出しタイミング制御部27は、ステップS1606から移行した場合、シンボル番号0のシンボルから順次読み出すためのRDポインタ1〜3を設定する。
【0100】
読み出しタイミング制御部27は、ステップS1607から移行して、RDポインタ1〜3の位置からデータ1〜3のシンボルを読み出すための制御信号RD1〜3(RDポインタ1〜3を含む)を生成し、メモリ部26−1〜26−3に出力する(ステップS1608)。また、読み出しタイミング制御部27は、ステップS1607から移行して、基準ブランチのフレーム開始タイミングではシンボル番号0(S0)を付与し、その後SYCを入力する毎にシンボル番号をインクリメントし、入力したSYC(シンボル番号を含む)を遅延補正部15−3に出力する(ステップS1609)。尚、遅延補正部15−3が遅延補正部15−2からシンボル番号の代わりにシンボル移動量を入力する場合、遅延補正部15−2は、前述のとおり、SYC(シンボル移動量を含む)を遅延補正部15−3に出力する。
【0101】
このように、読み出しタイミング制御部27は、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチを基準ブランチとし、このタイミングにて、バッファからデータ1〜3のシンボルを、シンボル番号0から順次同じタイミングで読み出すための制御信号RD1〜3を生成してメモリ部26−1〜26−3に出力する。つまり、メモリ部26−1〜26−3のバッファに書き込まれたデータ1〜3は、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れたフレーム開始タイミングにて、シンボル番号0(S0)のシンボルが読み出され、SYCが入力される毎に、それ以降のシンボルが順次読み出される。
【0102】
(メモリ部)
図13に示したメモリ部26−1〜26−3は、図9と同様の処理を行う。つまり、メモリ部26−1〜26−3は、書き込みタイミング制御部25−1〜25−3から制御信号WR1〜3(WRポインタ1〜3を含む)を入力する毎に、データ1〜3のシンボルをバッファ内のWRポインタ1〜3の位置に書き込み、読み出しタイミング制御部27から制御信号RD1〜3(RDポインタ1〜3を含む)を入力する毎に、バッファ内のRDポインタ1〜3の位置からデータ1〜3のシンボルを同じタイミングで読み出す。
【0103】
尚、各受信アンテナブランチ#1〜#3で必要となるメモリ部26−1〜26−3の遅延バッファのサイズは、実際に想定される遅延量とFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアに搭載されるメモリ容量を考慮して、OFDMシンボル単位で設定される。例えば、最大で10OFDMシンボル分の遅延時間差まで補正する必要がある場合、受信アンテナブランチ毎に2×12×1024×10=240kbitのバッファ容量が必要となる。尚、OFDMシンボル長を56μsecとした場合、10OFDMシンボルの遅延は約160kmの経路長差に相当する。
【0104】
このように、メモリ部26−1〜26−3によれば、遅延が想定される最大のOFDMシンボル長に相当する容量のバッファにてデータを遅延させ、全データ1〜3のフレーム開始タイミングを合わせることができる。つまり、必要最小限のバッファ容量にて1フレーム期間内の遅延時間が補正され、フレームタイミングを一致させることができる。
【0105】
以上のように、図2及び図13に示した遅延補正部15−2によれば、SYC1〜3を入力する毎に、データ1〜3のシンボルをバッファに書き込み、フレーム開始タイミングパルス観測窓内において、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出し、基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、データ1〜3のシンボルを順次同時に読み出すようにした。つまり、基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、データ1〜3のシンボル番号0(S0)のシンボルを読み出し、それ以降のシンボルも順次読み出すようにした。これにより、基準ブランチ以外の受信アンテナブランチのデータを格納して遅延させることができ、受信アンテナブランチ間において、データ1〜3に1OFDMシンボル期間を超える遅延時間差がある場合、各データ1〜3のフレームタイミングを合わせることができる。
【0106】
(遅延補正部15−2の問題)
ところで、図1に示したマクロダイバーシチ受信システムでは、複数の受信ポイント3を介して復調装置6−1に入力される信号の系統及び数が、移動中継車1の移動に伴って変化する。つまり、最も遅れたフレーム開始タイミングの時間位置が変動する場合もあるし、途中で信号が途切れる場合もあるし、途中から新たな受信アンテナ3を介して信号が入力される場合もある。しかしながら、図13に示した遅延補正部15−2は、このような場合を想定していない。初期状態で前記遅延補正処理が確立した後、基準ブランチの信号が途切れた場合(a)、または、基準ブランチの信号よりも遅れた新たな受信アンテナブランチの信号を入力した場合(b)には、以下に示す不都合が生じてしまう。
【0107】
前記(a)の場合、例えば、基準ブランチが2番目に遅れた受信アンテナブランチに変わったとすると、遅延補正部15−2の処理により、過去の基準ブランチと2番目に遅れた受信アンテナブランチとの間の差に相当するシンボル期間が抜けてしまい、結果として、一時的に映像が途切れてしまうという問題が生じる。
【0108】
図18は、メモリ部26−1におけるバッファのRDポインタを説明する図であり、図14のタイミングチャートに対応している。(1)は、基準ブランチ(受信アンテナブランチ#3)の信号が途切れない場合を示し、(2)は、基準ブランチ(受信アンテナブランチ#3)の信号が途切れて、新たな受信アンテナブランチ#2が基準ブランチとして検出された場合を示している。図14及び図18(1)に示すように、受信アンテナブランチ#3が基準ブランチとして検出されていた状態において、FRMSYC2のタイミングでは、メモリ部26−1のバッファから、データ1のシンボル番号406(S406)のシンボルが読み出される(図18(1)の時刻t2の箇所を参照)。
【0109】
そして、最も遅れた受信アンテナブランチ#3の信号が途切れた場合、読み出しタイミング制御部27は、遅延補正部15−1の図示しない無信号ブランチ検出/無効化部から受信アンテナブランチの数2を入力し、FRMSYC1を入力した後にFRMSYC2を入力し、これを最も遅れたフレーム開始タイミングとして判断する。そして、読み出しタイミング制御部27は、シンボル番号0のシンボルを読み出すためのRDポインタ1,2を設定し、制御信号RD1,2を生成する。この場合、図18(2)に示すように、FRMSYC2のタイミングが基準ブランチのフレーム開始タイミングになるから、FRMSYC2のタイミングにて、メモリ部26−1のバッファから、データ1のシンボル番号0(S0)のシンボルが読み出される(図18(2)の時刻t2の箇所を参照)。つまり、データ1のシンボル番号405(S405)が読み出された後(時刻t1の箇所を参照)、シンボル番号406(S406)及びシンボル番号407(S407)のシンボルが読み出されることなく、抜けてしまう。
【0110】
図18(2)は、前記(a)における基準ブランチの信号が途切れた場合を示しているが、この場合、基準ブランチのフレーム開始タイミングが以前よりも早い時間位置に移動するため、シンボル番号406(S406)及びシンボル番号407(S407)のシンボルが読み出されることなく、抜けてしまう。
【0111】
そこで、遅延補正部15−2の変形例は、前述した遅延補正部15−2による第2の遅延補正処理に代えて、以下に示す処理を行う。尚、前記(b)の場合に生じる問題及び対応処理については後述する。
【0112】
〔第2の遅延補正の変形例〕
次に、図13に示した遅延補正部15−2による第2の遅延補正処理の変形例について詳細に説明する。この変形例は、基準ブランチの受信信号が途切れた場合であってもシンボルが抜けないようにするために、一旦検出した基準ブランチを常に基準ブランチとして保持し、バッファからの読み出しタイミングを不変とすることにより、時間軸におけるシンボルの連続性を維持するものである。図19は、遅延補正部15−2の変形例(以下、遅延補正部15−2’という。)の処理を示すタイミングチャートであり、図20は、遅延補正部15−2’の処理を示すフローチャートである。
【0113】
遅延補正部15−2’は、図13に示した遅延補正部15−2と同じ構成部を備えている。前述の遅延補正部15−2とこの遅延補正部15−2’とを比較すると、両者は、1OFDMシンボル期間を超える遅延時間差を補正して、フレームタイミングを合わせる機能を有する点で同一である。しかし、前述の遅延補正部15−2は、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチを基準ブランチとし、そのタイミングにてシンボル番号0(S0)のシンボルの読み出しを行うのに対し、遅延補正部15−2’は、検出した基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを保持し、常にそのタイミングにて、データ1〜3のシンボル番号0(S0)のシンボルの読み出しを行う点で相違する。図13において、遅延補正部15−2’は、前述の遅延補正部15−2とは異なる処理を行う読み出しタイミング制御部27(以下、読み出しタイミング制御部27’という。)を備えている。フレーム開始タイミング検出部24−1〜24−3、書き込みタイミング制御部25−1〜25−3及びメモリ部26−1〜26−3については、前述と同様の処理を行う。以下、受信アンテナブランチの数を3として説明する。
【0114】
図20に示すフローチャートにおいて、ステップS2001〜ステップS2005、ステップS2007、ステップS2009〜ステップS2011の各処理は、図15に示した遅延補正部15−2の処理を示すフローチャートのステップS1501〜ステップS1509の各処理と同様である。遅延補正部15−2’の読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2005から移行して、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを保持済みであるか否かを判定する(ステップS2006)。読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2006において、保持済みでないと判定した場合(ステップS2006:N)、フレーム開始タイミングパルス観測窓内で、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し(ステップS2007)、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを保持し(ステップS2008)、ステップS2009へ移行する。
【0115】
一方、読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2006において、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを保持済みであると判定した場合(ステップS2006:Y)、ステップS2009へ移行する。これにより、基準ブランチの信号が途切れた場合であっても、新たな基準ブランチを検出することなく(2番目に遅れた受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出することなく)、ステップS2008にて保持した基準ブランチを用いることができる。そして、そのフレーム開始タイミングにて、制御信号RD1〜3を生成し、バッファからデータ1〜3を読み出すことができる(後述のステップS2009〜ステップS2011)。
【0116】
尚、受信アンテナブランチ#3の信号が途切れた場合は、データ3が入力されず、FRMSYC3が生成されないから、ステップS2009では制御信号RD1,2が生成され、ステップS2010及びステップS2011ではデータ1,2がバッファから読み出され出力される。
【0117】
図19において、FRMSYC1〜3のうちFRMSYC3が最も遅れているから、受信アンテナブランチ#3が基準ブランチとなり、FRMSYC3が基準ブランチのフレーム開始タイミングとなり、保持される。遅延補正部15−2’は、保持した基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを用いることにより、新たな基準ブランチを検出することなく、常に受信アンテナブランチ#3を基準ブランチとし、保持した基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、シンボル番号0のシンボルから順次読み出すための制御信号RD1〜3を生成し、このタイミング以降、バッファに書き込まれたデータ1〜3のシンボルをシンボル番号0(S0)から順次読み出す。そして、受信アンテナブランチ#3の信号が途切れた場合、FRMSYC3及びデータ3が入力されなくなる。この場合、遅延補正部15−2’は、新たな基準ブランチを検出しないから、常に同じタイミングにて、バッファからデータ1,2を読み出すことができる。
【0118】
(読み出しタイミング制御部)
次に、遅延補正部15−2’の読み出しタイミング制御部27’について詳細に説明する。図21は、読み出しタイミング制御部27’の処理を示すフローチャートである。読み出しタイミング制御部27’は、SYCを入力したか否かを判定し(ステップS2101)、SYCを入力したと判定した場合(ステップS2101:Y)、現時点が保持済みのフレーム開始タイミングを経過したか否かを判定する(ステップS2102)。読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2101において、SYCを入力していないと判定した場合(ステップS2101:N)、処理を終了し、ステップS2101へ移行してSYCの入力を待つ。
【0119】
一方、読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2102において、現時点が保持済みのフレーム開始タイミングを経過していないと判定した場合、またはフレーム開始タイミングを保持していないと判定した場合(ステップS2102:N)、FRMSYC1〜3のいずれかを入力したか否かを判定する(ステップS2103)。読み出しタイミング制御部27’の処理を開始したときには、基準ブランチ及びフレーム開始タイミングは保持されていないから、ステップS2103へ移行する。一方、ステップS2102において、現時点が保持済みのフレーム開始タイミングを経過したと判定した場合(ステップS2102:Y)、ステップS2110へ移行する。
【0120】
読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2103において、FRMSYC1〜3のいずれかを入力したと判定した場合(ステップS2103:Y)、入力したフレーム開始タイミングを基準にして、その前後の所定のシンボル数に相当する期間を設定する。そして、読み出しタイミング制御部27’は、その期間内に全てのFRMSYC1〜3を入力した場合の最も先行したフレーム開始タイミングの信号であるか否かを判定し(ステップS2104)、最も先行したフレーム開始タイミングの信号であると判定した場合(ステップS2104:Y)、そのフレーム開始タイミングから1フレーム期間長のフレーム開始タイミングパルス観測窓を設定し(ステップS2105)、ステップS2110へ移行する。
【0121】
一方、読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2104において、入力したFRMSYC1〜3が最も先行したフレーム開始タイミングの信号でないと判定した場合(ステップS2104:N)、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを保持済みであるか否かを判定する(ステップS2106)。
【0122】
読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2106において、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを保持済みでないと判定した場合(ステップS2106:N)、入力したFRMSYC1〜3が最も遅いフレーム開始タイミングの信号であるか否かを判定する(ステップS2107)。一方、ステップS2106において、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを保持済みであると判定した場合(ステップS2106:Y)、ステップS2110へ移行する。
【0123】
読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2107において、入力したFRMSYC1〜3が最も遅いフレーム開始タイミングの信号であると判定した場合(ステップS2107:Y)、フレーム開始タイミングパルス観測窓内で最も遅れたフレーム開始タイミングの受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出し(ステップS2108)、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを保持し(ステップS2109)、ステップS2110へ移行する。一方、ステップS2107において、入力したFRMSYC1〜3が最も遅いフレーム開始タイミングの信号でないと判定した場合(ステップS2107:N)、ステップS2110へ移行する。
【0124】
読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2102、ステップS2103、ステップS2105、ステップS2106、ステップS2107またはステップS2109から移行して、RDポインタ1〜3をインクリメントし(ステップS2110)、ステップS2111及びステップS2112へ移行する。尚、読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2102またはステップS2109から移行した場合、シンボル番号0のシンボルから順次読み出すためのRDポインタ1〜3を設定する。
【0125】
読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2110から移行して、RDポインタ1〜3の位置からデータ1〜3のシンボルを読み出すための制御信号RD1〜3(RDポインタ1〜3を含む)を生成し、メモリ部26−1〜26−3に出力する(ステップS2111)。また、読み出しタイミング制御部27’は、ステップS2110から移行して、基準ブランチのフレーム開始タイミングではシンボル番号0(S0)とし、その後SYCを入力する毎にシンボル番号をインクリメントし、入力したSYC(シンボル番号を含む)を遅延補正部15−3に出力する(ステップS2112)。尚、遅延補正部15−3が遅延補正部15−2からシンボル番号の代わりにシンボル移動量を入力する場合、遅延補正部15−2は、前述のとおり、SYC(シンボル移動量を含む)を遅延補正部15−3に出力する。
【0126】
このように、読み出しタイミング制御部27’は、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチを基準ブランチとし、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを保持し、これ以降は、基準ブランチを検出することなく、保持したフレーム開始タイミングにて、バッファからデータ1〜3のシンボルを、シンボル番号0から順次同じタイミングで読み出すための制御信号RD1〜3を生成してメモリ部26−1〜26−3に出力する。つまり、基準ブランチの信号が途切れた場合であっても、バッファに書き込まれたデータ1〜3は、保持したシンボル開始タイミング毎に、シンボル番号0(S0)のシンボルから順次読み出される。
【0127】
以上のように、遅延補正部15−2’によれば、SYC1〜3を入力する毎に、データ1〜3のシンボルをバッファに書き込み、フレーム開始タイミングパルス観測窓内において、FRMSYC1〜3のうちの最も遅れた信号の受信アンテナブランチを基準ブランチとして保持すると共に、そのフレーム開始タイミングも保持し、基準ブランチを検出することなく、保持したフレーム開始タイミングにて、データ1〜3のシンボルを同時に読み出すようにした。つまり、基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、データ1〜3のシンボル番号0(S0)のシンボルを読み出し、それ以降も順次読み出すようにした。これにより、基準ブランチ以外の受信アンテナブランチのデータを格納して遅延させることができ、受信アンテナブランチ間において、データ1〜3に1OFDMシンボル期間を超える遅延時間差がある場合、各データ1〜3のフレームタイミングを合わせることができる。また、基準ブランチの信号が途切れた場合であっても、バッファから、各データ1〜3のフレームタイミングが一致し、かつ連続したシンボルを読み出すことができる。
【0128】
(遅延補正部15−2’の問題)
前述したとおり、図1に示したマクロダイバーシチ受信システムでは、複数の受信ポイント3を介して復調装置6−1に入力される信号の系統及び数が、移動中継車1の移動に伴って変化するから、基準ブランチの信号が途切れた場合(a)、及び、基準ブランチの信号よりも遅れた新たな受信アンテナブランチの信号を入力した場合(b)が想定される。前述の遅延補正部15−2’は、前記(a)の場合に対応することができる。しかしながら、遅延補正部15−2’では、前記(b)の場合に対応することができない。
【0129】
そこで、遅延補正部15−2’は、前記処理に加え、検出した基準ブランチの信号または保持済みの基準ブランチの信号よりも遅れた信号を入力した場合、すなわち、基準ブランチのフレーム開始タイミングの信号よりも遅れたフレーム開始タイミングの信号を入力した場合、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを更新する必要がある。
【0130】
しかしながら、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを更新する処理を加えたとしても、バッファから読み出されるシンボルが不連続になり、同一シンボルが重複して出力され、時間軸におけるシンボルの連続性が失われるという問題が生じる。
【0131】
図22は、遅延補正部15−2’において、最も遅れた受信アンテナブランチが変更され、シンボルが重複して出力される状態を示すタイミングチャートであり、図23は、その状態におけるRDポインタを説明する図である。図22に示すように、最初に、受信アンテナブランチ#1〜#3の信号が受信されており、最も遅延した受信アンテナブランチ#3が基準ブランチとして検出され、データ1,2がバッファにより遅延し、シンボル開始タイミングを一致させている。
【0132】
次に、受信アンテナブランチ#3である基準ブランチよりも1OFDMシンボルだけ遅延した新たな受信アンテナブランチ#4の信号が入力されたとする。この場合、基準ブランチは、受信アンテナブランチ#3から受信アンテナブランチ#4に更新され、基準ブランチのフレーム開始タイミングも受信アンテナブランチ#4のFRMSYC4に更新される。つまり、基準ブランチのフレーム開始タイミングは、FRMSYC3からFRMSYC4へ1OFDMシンボル分遅くなる。したがって、FRMSYC3のタイミングにてバッファからシンボル番号0(S0)のシンボルが読み出され(図23の時刻t4の箇所を参照)、FRMSYC3から1OFDMシンボル後のFRMSYC4のタイミングにて、バッファから同じシンボル番号0(S0)のシンボルが読み出されるから(図23の時刻t5の箇所を参照)、シンボル番号0(S0)のシンボルが2回連続して出力されることになる。この場合、後段において、フレーム同期のタイミングずれの他、デインタリーブまたは誤り訂正処理に不整合が生じるため、瞬間的な映像断等の原因となる。
【0133】
図22及び図23は、前記(b)における基準ブランチの信号よりも遅れた新たな受信アンテナブランチの信号を入力した場合、基準ブランチのフレーム開始タイミングが以前よりも遅い時間位置に移動し、シンボル番号0(S0)のシンボルが2回連続して出力されることを示している。
【0134】
そこで、遅延補正部15−3は、同一シンボルを重複して出力しないように、時間軸におけるシンボルの連続性を確保するための第3の遅延補正を行う。
【0135】
〔第3の遅延補正〕
次に、図2に示した遅延補正部15−3による第3の遅延補正処理について詳細に説明する。図24は、遅延補正部15−3の構成を示すブロック図であり、図25は、遅延補正部15−3の処理を示すフローチャートである。前述のとおり、遅延補正部15−3は、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを更新した場合に、バッファから読み出して出力するシンボルの時間軸における連続性を確保する機能を有する。具体的には、遅延補正部15−3は、全受信アンテナブランチの信号をバッファに格納して、事前に指定シンボルの同じ量だけ遅延させておき、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングを更新した場合に、そのRDポインタを、全受信アンテナブランチに対し、時間軸上で同じ量だけ進行させる。以下、受信アンテナブランチの数が3から4に変化し、基準ブランチ及びそのフレーム開始タイミングが更新された場合について説明する。この遅延補正部15−3は、書き込みタイミング制御部28、メモリ部29−1〜29−4及び読み出しタイミング制御部30を備えている。
【0136】
遅延補正部15−3は、遅延補正部15−2からデータ1〜n及びSYC(シンボル番号を含む)を入力する(ステップS2501)。ここで、nは、受信アンテナブランチの数を示し、基準ブランチが更新される前は3、更新された後は4とし、遅延補正部15−1の図示しない無信号ブランチ検出/無効化部から入力される。書き込みタイミング制御部28は、SYCを入力し、データ1〜nのシンボルをメモリ部29−1〜29−nのバッファに書き込むための制御信号WR1〜n(WRポインタ1〜nを含む)を生成し、メモリ部29−1〜29−nに出力する(ステップS2502)。ここで、書き込みタイミング制御部28は、SYCを入力する毎に、WRポインタ1〜nをインクリメントする。
【0137】
メモリ部29−1から29−nは、データ1〜nを入力すると共に、書き込みタイミング制御部28から制御信号WR1〜n(WRポインタ1〜nを含む)を入力し、制御信号WR1〜nの入力タイミングにて、データ1〜nのシンボルをバッファ内のWRポインタ1〜nの位置に書き込む(ステップS2503)。
【0138】
読み出しタイミング制御部30は、SYC(シンボル番号を含む)を入力し、入力するSYC毎にシンボル番号の重複の有無を判定し、パラメータαを設定する(ステップS2504)。このパラメータαは、シンボル番号が重複していると判定された場合に、RDポインタ1〜nを決定するためのデータである。読み出しタイミング制御部30は、シンボル番号が重複していないと判定した場合、基準ブランチは不変であると判断し、αを設定しない。また、シンボル番号が重複していると判定した場合、α=(重複したシンボル数)を設定する。パラメータαの具体的な設定手法については後述する。尚、遅延補正部15−2がシンボル番号の代わりにシンボル移動量を出力する場合、遅延補正部15−3は、SYC(シンボル移動量を含む)を入力し、シンボル移動量をパラメータαに設定する。
【0139】
読み出しタイミング制御部30は、SYCを入力したタイミングにて、RDポインタ1〜nを設定し、メモリ部29−1〜29−nのバッファからデータ1〜nのシンボルを同じタイミングで読み出すための、共通の読み出しタイミングとなる制御信号RD1〜nを生成する(ステップS2505)。ここで、RDポインタ1〜nは、WRポインタ1〜nに対して予め所定の遅延量分ずらしておき、シンボル番号が重複している場合(シンボル移動量が0以外の場合)、パラメータαだけ進められる。
【0140】
例えば、復調装置6−1が受信アンテナブランチ#1〜#3の信号を受信しており、受信アンテナブランチ#3が基準ブランチとて動作していたときに、新たに受信アンテナブランチ#4の信号を受信し、受信アンテナブランチ#3よりも1OFDMシンボル期間遅れた受信アンテナブランチ#4が基準ブランチに更新された場合、α=1が設定され、RDポインタ1〜nは1だけ進められる。詳細については後述する。
【0141】
メモリ部29−1〜29−nは、読み出しタイミング制御部30から制御信号RD1〜n(RDポインタ1〜nを含む)を入力し、制御信号RD1〜nの入力タイミングにて、バッファ内のRDポインタ1〜nの位置からデータ1〜nのシンボルを読み出す(ステップS2506)。遅延補正部15−3は、メモリ部29−1〜29−nから読み出されたデータ1〜nを出力する(ステップS2507)。
【0142】
このように、読み出しタイミング制御部30によれば、RDポインタ1〜nをWRポインタ1〜nに対して予め所定の遅延量分ずらしておき、基準シンボルの更新に伴ってシンボル番号が重複していることを判定した場合、その重複した数だけRDポインタ1〜nをずらすようにした。または、入力したシンボル移動量の数だけRDポインタ1〜nをずらすようにした。これにより、遅延補正部15−3から同一シンボルが重複して出力されることがなく、時間軸におけるシンボルの連続性を確保することができる。
【0143】
(書き込みタイミング制御部)
図24に示した書き込みタイミング制御部28は、図6と同様の処理を行う。つまり、書き込みタイミング制御部28は、SYCを入力する毎に、WRポインタ1〜4をインクリメントし、制御信号WR1〜4を生成してメモリ部29−1〜29−4に出力する。これにより、メモリ部29−1〜29−4において、SYCのタイミング毎に、制御信号WR1〜4に含まれるWRポインタ1〜4の位置に、データ1〜4のシンボルが順次書き込まれる。
【0144】
(読み出しタイミング制御部)
次に、図24に示した読み出しタイミング制御部30について詳細に説明する。図26は、読み出しタイミング制御部30の処理を示すフローチャートであり、図27は、読み出しタイミング制御部30によるポインタ管理を説明する図である。読み出しタイミング制御部30は、初期のRDポインタ1〜nとして、予め設定された初期のWRポインタ1〜nに対して所定の初期遅延量(例えば10)を加算したポインタを設定する。ここで、初期遅延量は、データ1〜nを事前に指定シンボルだけバッファに遅延させておく(WRポインタ1〜nに対してRDポインタ1〜nをずらしておく)ためのポインタ数である。また、nは、受信アンテナブランチの数を示し、基準ブランチが更新される前は3、更新された後は4とし、遅延補正部15−1の図示しない無信号ブランチ検出/無効化部から入力される。
【0145】
読み出しタイミング制御部30は、SYCを入力したか否かを判定し(ステップS2601)、SYCを入力したと判定した場合(ステップS2601:Y)、SYCに含まれるシンボル番号を取得し、シンボル番号が重複しているか否かを判定する(ステップS2602)。具体的には、読み出しタイミング制御部30は、SYCを入力する毎に、シンボル番号がインクリメントしているときはシンボル番号が重複していないと判定し、シンボル番号407(S407)以外のシンボル番号を入力した後にS0のシンボル番号を入力した場合、シンボル番号が重複していると判定する。例えば、図22及び図27(2)の例では、シンボル番号0(S0)を入力した後に連続してシンボル番号0(S0)を入力することになるから、シンボル番号が重複していると判定する。この場合のシンボル番号の重複数は1である。また、例えば、シンボル番号0(S0),1(S1),2(S2)を入力した後に、シンボル番号0(S0)を入力した場合、シンボルが重複したと判定する。この場合のシンボル番号の重複数は3である。読み出しタイミング制御部30は、ステップS2601において、SYCを入力していないと判定した場合(ステップS2601:N)、処理を終了してSYCを入力するまで待つ。
【0146】
読み出しタイミング制御部30は、ステップS2602において、シンボル番号が重複していると判定した場合(ステップS2602:Y)、α=重複数を設定し(ステップS2603)、ステップS2604へ移行する。一方、ステップS2602において、シンボル番号が重複していないと判定した場合(ステップS2602:N)、ステップS2604へ移行する。尚、遅延補正部15−3は、遅延補正部15−2からシンボル番号の代わりにシンボル移動量を入力する場合、入力したシンボル移動量をパラメータαに設定する。図22及び図27(2)の例では、遅延補正部15−3は、シンボル移動量1を入力し、パラメータα=1に設定する。
【0147】
読み出しタイミング制御部30は、現在のRDポインタ1〜nの位置が、407番目のシンボルが書き込まれている位置であるか否かを判定する(ステップS2604)。ステップS2604において、現在のRDポインタ1〜nの位置が、407番目のシンボルが書き込まれている位置であると判定した場合(ステップS2604:Y)、現在のRDポインタ1〜nをインクリメントし、さらにαを加算した新たなRDポインタ1〜nを生成する(ステップS2605)。ステップS2602においてシンボル番号の重複がある場合(シンボル移動量が0以外の場合)、RDポインタ1〜nは、インクリメントされた後αだけ進められる。一方、現在のRDポインタ1〜nの位置がキャリア番号の最大値407のシンボルが書き込まれている位置でないと判定した場合(ステップS2604:N)、現在のRDポインタ1〜nをインクリメントする(ステップS2606)。
【0148】
読み出しタイミング制御部30は、RDポインタ1〜nの位置からデータ1〜nのシンボルを読み出すための制御信号RD1〜n(RDポインタ1〜nを含む)を生成し、メモリ部29−1〜29−nに出力する(ステップS2607)。
【0149】
このように、読み出しタイミング制御部30は、初期のRDポインタ1〜nを初期のWRポインタ1〜n+初期遅延量に設定し、SYCを入力したときにシンボル番号が重複しているか否かを判定し、重複している場合にα=重複数を設定し、現在のRDポインタ1〜nの位置がシンボル番号の最大値の位置である場合にRDポインタ1〜nをインクリメントすると共にαだけ進めるようにした。尚、この読み出しタイミング制御部30は、基準ブランチが更新された場合に、キャリア番号0のシンボルを出力するタイミングを調整することを前提としている。これにより、メモリ部29−1〜29−nのバッファに書き込まれたデータ1〜nのシンボルが、WRポインタ1〜nよりも初期遅延量だけずらして読み出され、シンボル番号が重複している場合、重複数のαだけずらした位置のシンボル番号0(S0)から順次読み出される。
【0150】
図27(1)は、基準ブランチが変わらない場合のWRポインタ及びRDポインタを示している。読み出しタイミング制御部30により、初期状態において、初期のRDポインタが初期のWRポインタ+初期遅延量10に設定されたとすると、基準ブランチが変わらない場合のWRポインタとRDポインタとの遅延量(遅延シンボル長)は10である。図27(1)に示すように、まず、時刻t1のときにSYCが入力されると、WRポインタ=(t1)の位置にシンボル番号7(S7)のシンボルが書き込まれる。そして、読み出しタイミング制御部30において、シンボル番号が重複していないと判定され、RDポインタがインクリメントされ、WRポインタ=(t1)に対して遅延量10離れたRDポインタ=(t1)の位置からシンボル番号406(S406)が読み出される。次に、時刻t2のときにSYCが入力された場合、WRポインタ=(t2)の位置にシンボル番号8(S8)が書き込まれる。そして、読み出しタイミング制御部30において、シンボル番号が重複していないと判定され、RDポインタがインクリメントされ、WRポインタ=(t2)に対して遅延量10離れたRDポインタ=(t2)の位置からシンボル番号407(S407)が読み出される。次に、時刻t3のときにSYCが入力された場合、WRポインタ=(t3)の位置にシンボル番号9(S9)が書き込まれる。そして、読み出しタイミング制御部30において、シンボル番号が重複していないと判定され、RDポインタの位置がシンボル番号407(S407)の書き込まれた位置であると判定され、RDポインタがインクリメントされると共にα=0が加算され、WRポインタ=(t3)に対して遅延量10離れたRDポインタ=(t3)の位置からシンボル番号0(S0)が読み出される。
【0151】
このように、基準ブランチが変わらない場合、シンボルがシンボル番号の順番にバッファに格納される。また、WRポインタとRDポインタとの間の遅延量は10に維持された状態で、RDポインタは1ずつインクリメントされる。これにより、同一シンボルがバッファから重複して出力されることがなく、シンボルは番号順に連続して出力される。
【0152】
図27(2)は、1シンボル期間遅れた新たな基準ブランチに更新された場合のWRポインタ及びRDポインタを示している。読み出しタイミング制御部30により、初期状態において、初期のRDポインタが初期のWRポインタ+初期遅延量10に設定され、基準ブランチが変わらない場合のWRポインタとRDポインタとの遅延量は10である。受信アンテナブランチ#3を基準ブランチとして動作が確立しているとする。そして、基準ブランチが受信アンテナブランチ#3から1シンボル期間遅れた新たな受信アンテナブランチ#4に更新されたとすると、遅延量は9となる。図27(2)に示すように、まず、時刻ta〜teのときにSYCがそれぞれ入力されると、読み出しタイミング制御部30において、時刻tcのときに、シンボル番号0(S0)が判定されてα=0に初期化され、時刻tdのときに、シンボル番号0(S0)が重複していると判定され、α=1が設定される。
【0153】
次に、時刻t1のときにSYCが入力された場合、WRポインタ=(t1)の位置にシンボル番号6(S6)が書き込まれる。そして、読み出しタイミング制御部30において、シンボル番号が重複していないと判定され、RDポインタがインクリメントされ、WRポインタ=(t1)に対して遅延量10離れたRDポインタ=(t1)の位置からシンボル番号406(S406)が読み出される。次に、時刻t2のときにSYCが入力された場合、WRポインタ=(t2)の位置にシンボル番号7(S7)が書き込まれる。そして、読み出しタイミング制御部30において、シンボル番号が重複していないと判定され、RDポインタがインクリメントされ、WRポインタ=(t2)に対して遅延量10離れたRDポインタ=(t2)の位置からシンボル番号407(S407)が読み出される。次に、時刻t3のときにSYCが入力された場合、WRポインタ=(t3)の位置にシンボル番号8(S8)が書き込まれる。そして、読み出しタイミング制御部30において、シンボル番号が重複していないと判定され、RDポインタの位置がシンボル番号407(S407)の書き込まれた位置であると判定され、RDポインタがインクリメントされると共にα=1が加算され、WRポインタ=(t3)に対して遅延量9離れたRDポインタ=(t3)の位置からシンボル番号0(S0)が読み出される。RDポインタにα=1が加算され、RDポインタを1シンボル進めるのは、シンボル番号0(S0)のシンボルがバッファに重複して書き込まれており、重複した読み出しを回避するためである。
【0154】
このように、1シンボル期間遅れた新たな基準ブランチに更新された場合、RDポインタは、シンボル番号0(S0)のシンボルを読み出す際にα=1だけ進められ、WRポインタとRDポインタとの間の遅延量を10から9に変更するから、同一シンボルがバッファから重複して出力されることがなく、シンボルは番号順に連続して出力される。
【0155】
(メモリ部)
図24に示したメモリ部29−1〜29−4は、図9と同様の処理を行う。つまり、メモリ部29−1〜29−4は、書き込みタイミング制御部28から制御信号WR1〜4(WRポインタ1〜4を含む)を入力する毎に、データ1〜4のシンボルをバッファ内のWRポインタ1〜4の位置に書き込み、読み出しタイミング制御部30から制御信号RD1〜4(RDポインタ1〜4を含む)を入力する毎に、バッファ内のRDポインタ1〜4の位置からデータ1〜4のシンボルを同じタイミングで読み出す。
【0156】
以上のように、図2及び図24に示した遅延補正部15−3によれば、SYCを入力する毎に、受信アンテナブランチ#1〜#3のデータ1〜3のシンボルをバッファに書き込み、所定の遅延量分遅延させた後に読み出して出力する。そして、新たな受信アンテナブランチ#4のデータ4が最も遅れた信号であると判定され、基準ブランチが更新されてシンボル番号0(S0)が重複した場合、RDポインタ1〜4を、重複したシンボル番号0(S0)の数に応じて変更し、バッファからデータ1〜4を読み出す。これにより、同一シンボルがバッファから重複して読み出されることがなく、連続したシンボルが出力される。したがって、時間的にランダムな受信信号であっても、時間軸の連続性を維持した受信処理を行うことができ、映像等が破綻することがない。基準ブランチの信号よりも遅れた新たな受信アンテナブランチの信号を入力した場合、つまり基準ブランチのフレーム開始タイミングが以前よりも遅い時間位置に移動した場合であっても、同一シンボルがバッファから重複して読み出されることがなく、連続したシンボルが出力される。
【0157】
また、メモリ部29−1〜29−4におけるバッファは、10シンボル長のシンボルを格納できればよいから、その容量は少なくて済む。
【0158】
以上のように、実施例1の復調装置6−1によれば、遅延補正部15−1が、所定のシンボル開始タイミングパルス観測窓内において、シンボル開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し、他の受信アンテナブランチのデータを第1のバッファに格納して遅延させ、基準ブランチのデータにシンボルタイミングを合わせて出力するようにした。また、遅延補正部15−2が、シンボルタイミングが合った各受信アンテナブランチのデータのうち、最も先行したデータのフレームの先頭から1フレーム長のフレーム開始タイミングパルス観測窓を設定し、その観測窓内において、フレーム開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し、他の受信アンテナブランチを第2のバッファに格納して遅延させ、基準ブランチのデータにフレームタイミングを合わせて出力するようにした。さらに、遅延補正部15−3が、フレームタイミングが合った各受信アンテナブランチのデータを第3のバッファに格納し、所定の遅延量分遅延させた後に読み出して出力する。そして、シンボル番号が重複した場合、読み出しポインタを、重複した数に応じて変更し、第3のバッファからデータを読み出すようにした。
【0159】
これにより、受信アンテナブランチ間の受信信号の遅延時間差が1OFDMシンボル期間を超えて大幅に異なる場合、または受信信号が復調装置6−1に時間的にランダムに入力される場合であっても、必要最小限の処理遅延を保ちながら、時間軸の連続性を維持した信号を生成することができ、後段の複素ウェイト演算/乗加算部16に、シンボル及びフレームタイミングが一致し、シンボル番号の連続性が確保された信号を入力することができる。つまり、受信アンテナブランチ間の電波伝搬経路長及び有線の伝送路長の違いにより、受信タイミングが異なる場合であっても、受信信号の遅延時間差を正確に補正することができる。したがって、受信アンテナブランチ間で受信タイミングを合わせることができるから、受信信号を適切に合成することができ、受信特性の劣化を抑制することが可能となる。そして、マクロダイバーシチによる合成ダイバーシチ受信、アダプティブアレー受信またはMIMO伝送を実現することができるようになる。
【実施例2】
【0160】
〔復調装置/実施例2〕
次に、実施例2の復調装置6について詳細に説明する。図28は、実施例2における復調装置6の構成を示すブロック図である。この復調装置6−2は、A/D変換部10、デジタル直交復調部11、シンボル同期/AFC部12、遅延補正部15−1、GI除去部13、FFT部14、遅延補正部15−2、遅延補正部15−3及び複素ウェイト演算/乗加算部16を備えている。図2に示した実施例1の復調装置6−1と実施例2の復調装置6−2とを比較すると、復調装置6−1では、遅延補正部15−1がFFT部14の後段に設けられ、周波数領域の信号に対して第1の遅延補正を行うのに対し、復調装置6−2では、遅延補正部15−1がシンボル同期/AFC部12とGI除去部13との間に設けられ、時間領域の信号に対して第1の遅延補正を行う点で相違する。
【0161】
復調装置6−2の遅延補正部15−1は、シンボル同期/AFC部12からAFCされた信号(データ)及びシンボル開始タイミングの信号を入力し、全ての時間領域のデータについて、最も遅れたシンボル開始タイミングを有する受信アンテナブランチ(基準ブランチ)を検出し、全てのデータについて、基準ブランチのデータにシンボルタイミングを合わせる。シンボルタイミングが合った各受信アンテナブランチのデータ及びSYCの信号は、GI除去部13へ出力される。尚、復調装置6−1は、シンボル毎にGI期間に相当する期間のヌル信号を挿入するヌル信号挿入部を備えているが、復調装置6−2は備えていない。
【0162】
GI除去部13は、遅延補正部15−1から各受信アンテナブランチのデータ及びSYCを入力し、FFT窓位置を設定し、GIを除去して有効シンボルを抽出し、有効シンボル長の信号を生成する。
【0163】
遅延補正部15−2は、FFT部14から、シンボルタイミングが合った各受信アンテナブランチのデータ及びSYCを入力し、全てのデータについて、基準ブランチのデータにフレームタイミングを合わせる。各構成部の処理の詳細については説明済みであるので、ここでは説明を省略する。
【0164】
以上のように、実施例2の復調装置6−2によれば、実施例1と同様の効果を奏する。また、実施例2のFFT部14は、シンボルタイミングが合った各受信アンテナブランチのデータをFFTするから、全ての受信アンテナブランチのデータに対して一括で処理を行うことができる。これに対し、実施例1のFFT部14では、シンボルタイミングが合っていない各受信アンテナブランチのデータをFFTするから、受信アンテナブランチ毎に用意されたFFT回路にて並列処理を行う必要がある。つまり、実施例2のFFT部14では、動作クロックを高速にすることで全受信アンテナブランチに対する単一のFFT回路にて直列に処理を行うことができる。したがって、FFT回路の規模を小さくすることができる。例えば、受信アンテナブランチの数が2の場合、2倍の速度で処理を行うことで、受信アンテナブランチの数が3の場合、3倍の速度で処理を行うことでFFT回路の規模を1ブランチの場合と同じにすることができる。
【0165】
以上、実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。前記実施例では、遅延補正部15−3において、メモリ部29−1〜29−4におけるバッファの容量は、10シンボル長のシンボルを格納する量としたが、構成するハードウェアまたは実環境において想定される遅延量を考慮して適切な容量とすることが望ましい。これにより、ハードウェアまたは実環境に応じて、処理遅延を必要最小限に抑えることができる。
【0166】
また、前記実施例では、図1に示したように、受信ポイント3と復調装置6との間のケーブルを光ファイバー4としたが、銅線等の他のケーブルを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0167】
1 移動中継車
2 送信ポイント
3 受信ポイント
4 光ファイバー
5 スイッチングセンター
6 復調装置
7 E/O変換器
8 O/E変換器
10 A/D変換部
11 デジタル直交復調部
12 シンボル同期/AFC部
13 GI除去部
14 FFT部
15 遅延補正部
16 複素ウェイト演算/乗加算部
21,25,28 書き込みタイミング制御部
22,26,29 メモリ部
23,27,30 読み出しタイミング制御部
24 フレーム開始タイミング検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散配置された複数の受信アンテナ及びケーブルを介してマクロダイバーシチ受信を行い、各受信アンテナブランチの受信信号を入力して復調し、前記復調した信号を合成する復調装置において、
前記受信信号を受信アンテナブランチ毎にデジタル直交復調するデジタル直交復調部と、
前記デジタル直交復調された信号からシンボル開始タイミングを検出し、前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に生成するシンボル同期部と、
前記デジタル直交復調された信号に含まれる有効シンボルをFFT(Fast Fourier Transform)し、周波数領域の信号を受信アンテナブランチ毎に生成するFFT部と、
前記FFTされた信号及び前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記シンボル開始タイミングの信号に基づいて、前記FFTされた信号を第1のバッファに書き込み、各受信アンテナブランチにおいてシンボルタイミングの一致した信号を前記第1のバッファから読み出して出力する第1の遅延補正部と、
前記シンボルタイミングの一致した信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記入力した信号を第2のバッファに書き込み、各受信アンテナブランチにおいてフレームタイミングの一致した信号を前記第2のバッファから読み出して出力する第2の遅延補正部と、
前記フレームタイミングの一致した信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記入力した信号を第3のバッファに書き込み、前記第3のバッファ内で遅延させた各受信アンテナブランチの信号を前記第3のバッファから読み出して出力する第3の遅延補正部と、
を備えたことを特徴とする復調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の復調装置において、
前記第1の遅延補正部は、
前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記シンボル開始タイミングの信号毎に、前記FFTされた信号のシンボルを構成するサンプルについて、前記サンプルを前記第1のバッファに書き込むための書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する第1の書き込みタイミング制御部と、
前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記シンボル開始タイミングの信号毎に、前記第2のバッファからサンプルを読み出すための読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、さらに、任意の時間位置に1シンボル長のシンボル開始タイミングパルス観測窓を設定し、前記シンボル開始タイミングパルス観測窓内で、前記シンボル開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出し、前記基準ブランチのシンボル開始タイミングにて、前記第1のバッファに書き込まれたサンプルをシンボルの最初から読み出すための前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、前記基準ブランチのシンボル開始タイミングの信号を基準ブランチシンボル開始タイミングの信号として出力する第1の読み出しタイミング制御部と、
前記FFTされた信号及び前記書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記書き込み制御信号に基づいて、前記FFTされた信号のサンプルを前記第1のバッファに書き込み、前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記読み出し制御信号に基づいて、前記第1のバッファに書き込まれたサンプルを受信アンテナブランチ毎に読み出す第1のメモリと、
を備えたことを特徴とする復調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の復調装置において、
前記第1の遅延補正部は、前記第1の読み出しタイミング制御部の代わりに新たな第1の読み出しタイミング制御部を備え、
前記新たな第1の読み出しタイミング制御部は、1OFDMシンボル期間長毎に生成される基準パルスのタイミングにて、前記第1のバッファに書き込まれたサンプルをシンボルの最初から読み出すための前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、前記基準ブランチのシンボル開始タイミングの信号を基準ブランチシンボル開始タイミングの信号として出力する、ことを特徴とする復調装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の復調装置において、
前記第2の遅延補正部は、
前記シンボルタイミングの一致した信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記受信アンテナブランチの信号に基づいてフレーム開始タイミングを検出し、前記フレーム開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に生成するフレーム開始タイミング検出部と、
前記シンボルタイミングの一致した信号におけるシンボル開始タイミングの信号を基準ブランチシンボル開始タイミングの信号として入力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号毎に、前記シンボルタイミングの一致した信号のシンボルを前記第2のバッファに書き込むための書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する第2の書き込みタイミング制御部と、
前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号を入力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号毎に、前記第2のバッファからシンボルを読み出すための読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号を出力し、さらに、前記フレーム開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、全受信アンテナブランチの中で最も先行したフレーム開始タイミングを検出し、前記フレーム開始タイミングを始端とする1フレーム長のフレーム開始タイミングパルス観測窓を設定し、前記フレーム開始タイミングパルス観測窓内で、前記フレーム開始タイミングが最も遅れた受信アンテナブランチを基準ブランチとして検出し、前記基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、前記第2のバッファに書き込まれたシンボルをフレームの最初から読み出すための前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する第2の読み出しタイミング制御部と、
前記シンボルタイミングの一致した信号及び前記書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記書き込み制御信号に基づいて、前記シンボルタイミングの一致した信号のシンボルを前記第2のバッファに書き込み、前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記読み出し制御信号に基づいて、前記第2のバッファに書き込まれたシンボルを受信アンテナブランチ毎に読み出す第2のメモリと、
を備えたことを特徴とする復調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の復調装置において、
前記第2の遅延補正部は、前記第2の読み出しタイミング制御部の代わりに新たな第2の読み出しタイミング制御部を備え、
前記新たな第2の読み出しタイミング制御部は、前記第2の読み出しタイミング制御部に加え、さらに、前記検出した基準ブランチ及び前記基準ブランチのフレーム開始タイミングを保持し、前記フレーム開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、全受信アンテナブランチの中で最も先行したフレーム開始タイミングを検出し、前記フレーム開始タイミングを始端とする1フレーム長のフレーム開始タイミングパルス観測窓を設定し、前記フレーム開始タイミングパルス観測窓内で、前記保持した基準ブランチのフレーム開始タイミングにて、前記第2のバッファに書き込まれたシンボルをフレームの最初から読み出すための前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する、ことを特徴とする復調装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の復調装置において、
前記第3の遅延補正部は、
前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号を入力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号毎に、前記フレームタイミングの一致した信号のシンボルを前記第3のバッファに書き込むための書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力する第3の書き込みタイミング制御部と、
前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号を入力し、前記基準ブランチシンボル開始タイミングの信号毎に、前記第3のバッファに書き込まれたシンボルの位置よりも所定量遅延した位置のシンボルを読み出すための読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に出力し、さらに、前記第2の遅延補正部により新たな基準ブランチが検出され、前記基準ブランチのフレーム開始タイミングが以前の基準ブランチのフレーム開始タイミングよりも遅れ、前記フレームタイミングの一致した信号のシンボルが重複した場合、前記重複したシンボルの数に応じて、前記重複したシンボルを前記第3のバッファから読み出さないようにするための前記読み出し制御信号を出力する第3の読み出しタイミング制御部と、
前記フレームタイミングの一致した信号及び前記書き込み制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記書き込み制御信号に基づいて、前記フレームタイミングの一致した信号のシンボルを前記第3のバッファに書き込み、前記読み出し制御信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記読み出し制御信号に基づいて、前記第3のバッファに書き込まれたシンボルを受信アンテナブランチ毎に読み出す第3のメモリと、
を備えたことを特徴とする復調装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の復調装置において、
前記デジタル直交復調部と、前記シンボル同期部と、前記シンボル同期部の後段に設けられた前記第1の遅延補正部と、前記FFT部と、前記FFT部の後段に設けられた前記第2の遅延補正部と、前記第3の遅延補正部とを備え、
前記第1の遅延補正部は、時間領域の信号及び前記シンボル開始タイミングの信号を受信アンテナブランチ毎に入力し、前記シンボル開始タイミングの信号に基づいて、前記時間領域の信号を前記第1のバッファに書き込み、各受信アンテナブランチにおいてシンボルタイミングの一致した信号を前記第1のバッファから読み出して出力する、ことを特徴とする復調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−34135(P2012−34135A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171121(P2010−171121)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】