説明

循環式の噴霧乾燥装置

【課題】循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを効果的に防止する。
【解決手段】噴霧乾燥装置は、ノズルから噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔と、噴霧乾燥塔で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器と、循環ガスを冷却して原料溶液の溶媒を分離する凝縮器と、溶媒の分離された循環ガスを加圧して噴霧乾燥塔のノズルに供給する気体圧縮器とを備える。気体圧縮器は、ピストン41をシリンダ40内で往復運動させるピストン式の強制移送機4Aで、ピストン41の往復運動方向に直線運動するピストンシャフト43と、このピストンシャフト43を往復運動させる往復運動機構34とを備える。シリンダ40の往復運動機構34側の開口部は、閉塞プレート47で閉塞しており、この閉塞プレート47は、摺動自在に貫通するピストンシャフト43の表面をシール48で気密に閉塞している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料溶液を噴霧乾燥塔の内部にミスト状に噴射し、噴霧されたミストを乾燥して微細な粒子とする噴霧乾燥装置に関し、とくに、原料溶液を霧化する循環ガスを閉ループに循環させる噴霧乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤を溶媒とした液体原料を噴霧し、乾燥させることによって粉末を得る、不活性ガスを用いた循環式の噴霧乾燥装置が実用化されている。(特許文献1参照)
【0003】
従来の循環式の噴霧乾燥装置では、ヒーターで加熱された不活性ガスなどの循環ガスにより、噴霧器を備えた噴霧乾燥塔で、噴霧器により噴霧された液体原料を瞬間的に乾燥、粉末化し、サイクロン等の粉末回収器により回収する。粉末回収器を通過した循環ガスは、凝縮器を通過することによりガス中に含まれる溶媒が凝縮され回収され、循環機によりヒーターに送られて循環使用される。
【0004】
従来の循環式の噴霧乾燥装置を図1に示す。この噴霧乾燥装置は、循環する循環ガスに窒素ガスを使用する。窒素ガスは、ヒーター107に加熱されて噴霧乾燥塔101に供給される。加熱された窒素ガスは、噴霧乾燥塔101の内部にノズル105から噴霧されるミストを乾燥して微粒子とする。噴霧乾燥塔101から排出される窒素ガスは、サイクロン102に供給されて微粒子が分離される。微粒子の分離された循環ガスは、凝縮器103で冷却されて循環ガスに含まれる溶媒を分離する。たとえば、ノズルから噴霧される原料溶液の溶媒がアルコールであると、ミストを乾燥して微粒子を分離する状態で窒素ガスに気化したアルコールが含まれる。凝縮器103は、循環ガスを冷却して原料溶液に含まれる溶媒のアルコールを分離する。溶媒の分離された循環ガスは、ブロアー106で噴霧乾燥塔101に循環される。図の噴霧乾燥装置は、2段の凝縮器103の間に循環機としてブロアー106を連結している。
【0005】
図1で示された噴霧乾燥装置は、外部からの圧縮ガスを使用しないタイプのノズルを使用している。このようなノズルは、遠心力を利用する回転板方式を使用しているものが一般的であるが、この方式ではミクロンオーダーもしくはサブミクロンオーダーの粉体を得ることが困難である。
【0006】
さらに、加圧されたガスと液体とを一緒に噴霧するノズルを備える装置も開発されている。(特許文献2参照)
特許文献2に記載されるノズルを図2に示している。このノズル205は、液体を加圧された気体流で微細な粒子に破砕して噴霧できる。このノズル205は、原料溶液のみでなく、加圧された気体を供給する必要がある。循環式の噴霧乾燥装置は、ノズル205に供給する気体に噴霧乾燥塔201に循環する循環ガスを使用することができる。ただ、ノズル205に供給される循環ガスは、供給する気体の圧力を高くして噴霧するミストの平均粒径を小さくできることから、循環ガスをコンプレッサなどの気体圧縮器204で加圧する必要がある。
【0007】
しかしながら、噴霧器が圧縮ガスを使用するノズルタイプである場合は、圧縮ガスを外部から供給し、ノズルに供給した分だけ凝縮器を通過後に排出する形態のものと、凝縮器通過後のガスをコンプレッサーで吸引しノズルに供給する形態のものが存在する。前者は大量の不活性ガスを必要とし、ランニングコストが高くなる、また、凝縮器でも完全に溶媒を回収できるわけではないので、溶媒が残留しているガスを外部放出することになり、高い溶媒回収率を得ることは不可能である。後者の場合、前者と異なり残留ガスを外部排出する量は抑制されるが、一般的に使用されるピストンを往復運動させる圧縮機は、ピストンにしかシール構造を持たないので、完全な気密状態を作り出すことが困難で、気体を加圧して押し出す排出行程で溶媒が残留したガスが外部に流出し、その分、装置内の内圧を保つために不活性ガスの供給が必要であり、高い溶媒回収率を得ることは困難である。また、一般的な冷房装置に用いられる冷媒圧縮用の圧縮器のように、モーターなど関係部材を一体でケーシングし、気密を確保することも考えられるが、この場合、ケーシング内の油分の流入をピストン部分のシールで完全に抑えることが困難で、圧縮ガスに油分が混入するため、原料の種類、粉末の利用分野によっては、供給するガスとして使用することは出来ない。
【0008】
さらに、循環ガスを強制送風する循環機に使用される送風機でも同様のことが言える。一般的には、循環機としては、プロペラ式もしくは、ルーツタイプのブロアーが使用されることが多い。しかし、両者ともに高速で回転する回転軸および軸受けを完全な気密状態にシールすることが難しく、完全な気密を実現するのは困難である。
【0009】
ガス中から溶媒を凝縮するには、ガス圧が高いほど凝縮効率、つまり回収効率が高くなる。したがって、凝縮器の上流側に循環機を配置し、加圧状態で循環ガスを凝縮器に送風することが望ましいが、循環機の気密性が低いと、凝縮前の溶媒の含有濃度が高いガスが外部に流出することになり、溶媒の回収率が著しく損なわれるので、一般的には循環機は凝縮器の下流側に設置される場合が多く循環ガスに溶媒が残留する割合が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−143669号公報
【特許文献2】特開平4−11901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図1の装置の送風機や、図2に示す装置の気体圧縮器は、摺動部からの気体漏れを皆無にすることが難しく、循環ガスが外部に漏れる弊害がある。送風機は軸受けのシールを完全にできず、また、ピストン式の気体圧縮器であるコンプレッサは、ピストンとシリンダとの間からの循環ガスの漏れを皆無にはできない。したがって、たとえば、100リットル/分の流量で吐出圧を0.6MPaとするコンプレッサは、1時間に50リットルものガス漏れが発生する。ピストンは、その外周にピストンリングを入れて気密性を向上しているが、ピストンリングとシリンダとの間に発生するわずかなガス漏れを皆無にはできない。さらに、ピストンリングはシリンダの内面に沿って拡開して、シリンダとの隙間を閉塞するので、その両端面を常に隙間なく密着できず、この隙間からのガス漏れを皆無にできない。コンプレッサから循環ガスが外部に漏れる装置は、装置内の内圧を一定に保つために循環ガスを補充する必要がある。また、凝縮器では溶媒を完全に回収できないことから、溶媒も循環ガスと一緒に外部に漏れる弊害も発生する。
【0012】
コンプレッサのガス漏れは、前述したように、一般的な冷房装置に用いられる冷媒圧縮用の圧縮器のようにモーターなどの関係部材を一体として気密のケーシングに内蔵させる構造で解消できる。しかしながら、この構造は、コンプレッサ内の油分が循環ガス側に流入するので、循環ガスを加圧するコンプレッサには使用できない。
【0013】
潤滑油の混合を阻止するために、コンプレッサはモータとシリンダの両方を気密ケースに収納できない。このため、循環式の噴霧乾燥装置に使用される気体圧縮器は、循環させる循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒が外部に漏れるのを皆無にはできず、わずかな漏れが発生する。このため、運転しながら循環ガスを供給する必要があり、また、アルコールなどの溶媒が外部に漏れて設置している環境を悪くする弊害がある。
【0014】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを効果的に防止できる循環式の噴霧乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0015】
本発明の噴霧乾燥装置は、要約すると上流側から噴霧器を内蔵した噴霧乾燥塔、乾燥した粉末を回収する粉末回収器、溶媒を回収する凝縮器を備えており、さらに装備される気体圧縮器および循環機は、クランク機構等の回転運動をピストンの往復運動に変換する往復運動機構を用いるものでありながら、さらに往復運動を直線往復運動に変換する独特の機構を追加して、ピストンシャフトおよびピストンを直線往復駆動するもの、もしくはダイヤフラム方式であることを特徴とする。
本発明の噴霧乾燥装置は、用いる気体圧縮器および循環機が回転運動をピストンの往復運動に変換しながら、さらに往復運動を直線往復運動に変換する独特の構造とし、ピストンシャフトおよびピストンを直線往復駆動することを特徴としている。
前述したように、従来のレシプロ式の気体圧縮器では、ピストンでしか圧縮ガスのシールを実施することができない。しかし、本発明の噴霧乾燥装置で用いる気体圧縮器および循環機は、モーター等の回転機で得られた回転運動を、クランクなどの機構を用いて往復運動に変換し、さらに往復運動を直線往復運動にしてピストンシャフトをシールして、従来のレシプロ方式では不可能であったピストンシャフトでのシールが可能になった。
【0016】
以上の循環式の噴霧乾燥装置は、ピストン式の強制移送機が、ピストンシャフトのシールが可能となったことにより、従来のピストンとシリンダとの間でのみシールしていたものと比較すると格段に気密性が高い気体圧縮器および循環機を得ることが可能である。
また、本発明の噴霧乾燥装置は、用いる気体圧縮器および循環機が、ダイヤフラム方式でも実現可能である。
【0017】
またダイヤフラム方式でも同様に気密性が高い気体圧縮器、および循環機を得ることが可能である。このような気体圧縮器および循環機を備えた循環式の噴霧乾燥装置は、完全密閉状態なり、循環ガスおよび溶媒を外部に放出することなく噴霧乾燥により製品粉末を得ることができ、対環境性に優れ、運転コストの少ない噴霧乾燥装置を実現する。
また、以上の噴霧乾燥装置は、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを防止しながら、ピストンをシリンダ内で往復運動させて、循環ガスを加圧して圧送するピストン式の強制移送機である気体圧縮器からノズルに供給する循環ガスの圧力を高くできるので、必要であれば、噴霧乾燥塔に噴霧するミストの平均粒径を小さくして製造される微粒子をより小さな微粒子にできる特徴もある。さらにピストン式の強制移送機は、ピストンシャフトの表面と閉塞プレートの貫通孔との摺動部分をシールして気密構造とするので、従来のシリンダとピストンの外周面のシールに比較して、気密にシールする領域を狭くして、気密性を向上できる。以上のように、本発明の循環式の噴霧乾燥装置は、気体圧縮器が循環させる循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒が外部に漏れるのを極減するので、循環ガスの供給を極減しながら、アルコールなどの溶媒が外部に漏れて設置環境を悪化させるのを効果的に防止できる特長が実現できる。
【0018】
とくに、本発明の噴霧乾燥装置は、ピストンシャフトにオイルシールを追加することも可能で、この構造を採用することで、回転軸などに使用されるオイルやグリスが循環ガスに流入することを阻止することが可能である。これは、特に外部からの異物混入が厳禁である医療用途の粉体を製造する場合には、絶大な効果を発揮する。
【0019】
前述したようにガス中から溶媒を凝縮するには、ガス圧が高いほど凝縮効率、つまり回収効率が高くなる。したがって、凝縮器の上流側に循環機を配置し加圧状態で循環ガスを凝縮器に送風することが望ましいが、循環機の気密性が低いと凝縮前の溶媒の含有濃度が高いガスが外部に流出することになり、溶媒の回収率が著しく損なわれるので、一般的には、循環機は凝縮器の下流側に設置される場合が多い。しかし、本発明の循環式の噴霧乾燥装置に用いる循環機は、気密性が高くガスの外部流出がほとんどないので、凝縮器の上流側に循環機を配置することが可能であり、この構造を採用することで、その結果ガス圧が高い凝縮、つまり回収率の高い凝縮が実現可能である。
【0020】
当然ではあるが、循環式の噴霧乾燥装置において、気体圧縮器及び循環機の両方にピストン式の強制移送機の気体圧縮器および循環機、もしくは、ダイヤフラム式の強制移送機からなる気体圧縮器および循環機のどちからを使用するのが理想ではあるが、気体圧縮器と循環機のいずれか片方に、ピストン式の強制移送機の気体圧縮器および循環機、もしくは、ダイヤフラム式の気体圧縮器の気体圧縮器および循環機を用いることによっても外部は流出が低減できるので、大きな効果が期待できる。したがって、循環式の噴霧乾燥装置において、気体圧縮器と循環機のいずれか片方にピストン式の強制移送機、もしくは、ダイヤフラム式の強制移送機が装備される場合においても本発明は有効である。
【0021】
また、循環式の噴霧乾燥機において使用するノズルが圧縮ガスを利用しないタイプのもの、例えば遠心力を利用する回転板方式のノズルを搭載した循環式の噴霧乾燥装置においても、循環機には気密仕様があってガスの外部流出が可能な限り少ないことが求められるので、当然のことながら気密性の高い循環機を搭載する循環式の噴霧乾燥装置を提言する本発明は非常に有効である。
【0022】
本発明の第1の循環式の噴霧乾燥装置は、加圧された循環ガスを介してノズル5から噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔1と、この噴霧乾燥塔1で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器2と、この粉末回収器2で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器3と、この凝縮器3で溶媒の分離された循環ガスを加圧して噴霧乾燥塔1のノズル5に供給する気体圧縮器4とを備えている。
気体圧縮器4は、ピストン41をシリンダ40内で往復運動させて、循環ガスを加圧して圧送するピストン式の強制移送機4Aで、このピストン式の強制移送機4Aはピストン41の往復運動方向に伸びてピストン41の往復運動方向に直線運動するピストンシャフト43と、このピストンシャフト43を往復運動させる往復運動機構34、24とを備えている。さらに、シリンダ40の往復運動機構34、24側の開口部は、ピストンシャフト43が摺動自在に貫通してなる貫通孔47Aを有する閉塞プレート47で閉塞している。この閉塞プレート47は、摺動自在に貫通しているピストンシャフト43の表面を貫通孔47Aに気密構造に密閉するシール48を備えている。循環式の噴霧乾燥装置は、以上のピストン式の強制移送機4Aで循環ガスを加圧してノズル5に供給して、ノズル5から原料溶液を微細なミストに霧化して噴霧する。
【0023】
本発明の第2の循環式の噴霧乾燥装置は、加圧された循環ガスを介してノズル5から噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔1と、この噴霧乾燥塔1で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器2と、この粉末回収器2で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器3と、この凝縮器3で溶媒の分離された循環ガスを加圧して噴霧乾燥塔1のノズル5に供給する気体圧縮器4とを備えている。気体圧縮器4はダイヤフラム式の強制移送機4Bである。この噴霧乾燥装置は、このダイヤフラム式の強制移送機4Bで循環ガスを加圧してノズル5に供給して、ノズル5から原料溶液を微細なミストに霧化して噴霧する。
【0024】
以上の循環式の噴霧乾燥装置は、気体圧縮器をダイヤフラム式の強制移送機とするので、気体圧縮器における循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを確実に防止できる。このため、この噴霧乾燥装置は、気体圧縮器で循環ガスを高圧に加圧してノズルに供給し、噴霧乾燥塔に噴霧するミストの平均粒径を小さくして、より小さな微粒子を製造しながら、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを防止できる。
【0025】
本発明の第3の循環式の噴霧乾燥装置は、第1または第2の側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、循環ガスを噴霧乾燥塔1に循環させる循環路8を備えている。この循環路8は、噴霧乾燥塔1から排出されるガスを循環させる主循環路8Aと、この主循環路8Aの排出側に連結してなる第1の分岐路8Bと第2の分岐路8Cを備え、第1の分岐路8Bは気体圧縮器4を連結してその先端をノズル5に連結しており、第2の分岐路8Cはノズル5を介することなく噴霧乾燥塔1に連結している。さらに、主循環路8Aまたは第2の分岐路8Cには、循環ガスを循環させる循環機6を連結している。この循環機6は、ピストン41をシリンダ40内で往復運動させて、循環ガスを循環させるピストン式の強制移送機6Aである。このピストン式の強制移送機6Aは、ピストン41の往復運動方向に伸びてピストン41の往復運動方向に直線運動するピストンシャフト43と、このピストンシャフト43を往復運動させる往復運動機構34、24とを備えている。さらに、シリンダ40の往復運動機構34、24側の開口部は、ピストンシャフト43が摺動自在に貫通してなる貫通孔47Aを有する閉塞プレート47で閉塞している。この閉塞プレート47は、摺動自在に貫通しているピストンシャフト43の表面を貫通孔47Aに気密構造に密閉するシール48を備えている。噴霧乾燥装置は、ピストン式の強制移送機6Aの循環機6でもって、循環ガスを噴霧乾燥塔1に循環している。
【0026】
以上の循環式の噴霧乾燥装置は、循環ガスを噴霧乾燥塔に循環させる循環路を備えると共に、この循環路には、循環ガスを循環させる循環機を連結して、この循環機を独特の構造とすることにより、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを効果的に防止できる特徴がある。この循環機は、ピストンをシリンダ内で往復運動させて循環ガスを循環させるピストン式の強制移送機で、ピストンの往復運動方向に伸びてピストンを往復運動方向に直線運動するピストンシャフトと、このピストンシャフトを往復運動させる往復運動機構を備え、シリンダの往復運動機構側の開口部をピストンシャフトが貫通する閉塞プレートで閉塞し、この閉塞プレートを摺動自在に貫通するピストンシャフトの表面をシールで気密構造に密閉している。この構造の強制移送機は、シリンダの中心軸方向に往復運動するピストンシャフトが、閉塞プレートの貫通孔に設けたシールの内面に沿って直線状に移動して、ピストンシャフトの表面をシールの内面で気密に密閉する状態で摺動する。このため、ピストンシャフトと閉塞プレートとの摺動部分におけるガス漏れを極減できる。さらに、この循環機は、ピストンシャフトの表面と閉塞プレートの貫通孔との摺動部分において気密構造に密閉するので、気密に密閉するシールする領域を狭くでき、これにより気密性を向上できる。したがって、この循環機を介して循環ガスを循環させる噴霧乾燥装置は、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを効果的に防止できる。
【0027】
本発明の第4の循環式の噴霧乾燥装置は、第1または第2の側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、循環ガスを噴霧乾燥塔1に循環させる循環路8を備えている。この循環路8は、噴霧乾燥塔1から排出されるガスを循環させる主循環路8Aと、この主循環路8Aの排出側に連結してなる第1の分岐路8Bと第2の分岐路8Cを備え、第1の分岐路8Bは気体圧縮器4を連結してその先端をノズル5に連結しており、第2の分岐路8Cはノズル5を介することなく噴霧乾燥塔1に連結している。さらに、主循環路8Aまたは第2の分岐路8Cには、循環ガスを循環させる循環機6を連結している。この循環機6はダイヤフラム式の強制移送機6Bで、このダイヤフラム式の強制移送機6Bでもって、循環ガスを噴霧乾燥塔1に循環している。
【0028】
以上の循環式の噴霧乾燥装置は、循環ガスを噴霧乾燥塔に循環させる循環路を備えると共に、この循環路には、循環ガスを循環させる循環機を連結して、この循環機をダイヤフラム式の強制移送機とするので、循環機における循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを確実に防止できる。このため、この噴霧乾燥装置は、循環機で循環ガスを噴霧乾燥塔に循環しながら、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを防止できる。
【0029】
本発明の第5の循環式の噴霧乾燥装置は、噴霧機9から噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔1と、この噴霧乾燥塔1で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器2と、この粉末回収器2で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器3と、噴霧乾燥塔1から排出される循環ガスを粉末回収器2と凝縮器3を介して噴霧乾燥塔1に循環させる循環路8と、この循環路8に連結されて循環路8に循環ガスを循環させる循環機6とを備えている。循環機6は、ピストン41をシリンダ40内で往復運動させて、循環ガスを循環させるピストン式の強制移送機6Aである。この循環機6は、ピストン41の往復運動方向に伸びてピストン41の往復運動方向に直線運動するピストンシャフト43と、このピストンシャフト43を往復運動させる往復運動機構34、24とを備えている。さらに、シリンダ40の往復運動機構34、24側の開口部は、ピストンシャフト43が摺動自在に貫通してなる貫通孔47Aを有する閉塞プレート47で閉塞している。この閉塞プレート47は、摺動自在に貫通してなるピストンシャフト43の表面を貫通孔47Aに気密構造に密閉するシール48を備えている。噴霧乾燥装置は、以上のピストン式の強制移送機6Aである循環機6でもって、循環ガスを噴霧乾燥塔1に循環している。
【0030】
以上の循環式の噴霧乾燥装置は、噴霧機から噴霧された原料溶液を噴霧乾燥塔で微粒子状に乾燥すると共に、噴霧乾燥塔から排出される循環ガスを、循環路に連結した独特の構造の循環機を介して噴霧乾燥塔に循環させることにより、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを効果的に防止できる。この循環機は、ピストンをシリンダ内で往復運動させて循環ガスを循環させるピストン式の強制移送機で、ピストンの往復運動方向に伸びてピストンを往復運動方向に直線運動するピストンシャフトと、このピストンシャフトを往復運動させる往復運動機構を備え、シリンダの往復運動機構側の開口部をピストンシャフトが貫通する閉塞プレートで閉塞し、この閉塞プレートを摺動自在に貫通するピストンシャフトの表面をシールで気密構造に密閉している。この構造のピストン式の強制移送機は、シリンダの中心軸方向に往復運動するピストンシャフトが、閉塞プレートの貫通孔に設けたシールの内面に沿って直線状に移動して、ピストンシャフトの表面をシールの内面で気密に密閉する状態で摺動する。このため、ピストンシャフトと閉塞プレートとの摺動部分におけるガス漏れを極減できる。さらに、ピストン式の強制移送機は、ピストンシャフトの表面と閉塞プレートの貫通孔との摺動部分において気密構造に密閉するので、気密に密閉する領域を狭くでき、これにより気密性を向上できる。したがって、このピストン式の強制移送機からなる循環機を介して循環ガスを循環させる噴霧乾燥装置は、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを効果的に防止できる。
【0031】
本発明の第6の循環式の噴霧乾燥装置は、噴霧機9から噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔1と、この噴霧乾燥塔1で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器2と、この粉末回収器2で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器3と、噴霧乾燥塔1から排出される循環ガスを粉末回収器2と凝縮器3を介して噴霧乾燥塔1に循環させる循環路8と、この循環路8に連結されて循環路8に循環ガスを循環させる循環機6とを備えている。循環機6は、ダイヤフラム式の強制移送機6Bで、このダイヤフラム式の強制移送機6Bでもって、循環ガスを噴霧乾燥塔1に循環している。
【0032】
以上の循環式の噴霧乾燥装置は、噴霧機から噴霧された原料溶液を噴霧乾燥塔で微粒子状に乾燥すると共に、噴霧乾燥塔から排出される循環ガスを、循環路に連結したダイヤフラム式の強制移送機で噴霧乾燥塔に循環させるので、循環機における循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを確実に防止できる。このため、この噴霧乾燥装置は、循環機で循環ガスを噴霧乾燥塔に循環しながら、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを防止できる。
【0033】
本発明の第7の循環式の噴霧乾燥装置は、第1、第3、及び第5のいずれかの側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、気体圧縮器4または循環機6の往復運動機構34、24が、ピストンシャフト43を往復運動させるクランクアーム42と、このクランクアーム42をピストンシャフト43に連結してなるコンロッド46と、クランクアーム42の回転軸42Aを回転する駆動機構45とを備え、あるいは、ピストン41を往復運動させるカム26と、このカム26を回転する駆動機構25とを備えている。
以上の噴霧乾燥装置は、気体圧縮器または循環機の往復運動機構として、駆動機構で回転されるクランクアームをコンロッドを介してピストンシャフトに連結し、あるいは、駆動機構で回転されるカムを介してピストンシャフトを往復運動させるので、簡単な機構でピストンシャフトをシリンダの軸方向に直線運動させてピストンを往復運動できる特徴がある。
【0034】
本発明の第8の循環式の噴霧乾燥装置は、第1、第3、及び第5のいずれかの側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、ピストン式の強制移送機4A、6Aが、シリンダ40の内部をピストン41の上死点側にある上死点チャンバー40Xと、ピストン41の下死点側にある下死点チャンバー40Yとに区画すると共に、上死点チャンバー40Xと下死点チャンバー40Yとを連結する経路39を備えており、この経路39には、排出行程で閉弁する逆止弁38を設けている。
以上の強制移送機は、循環式の噴霧乾燥装置は、上死点チャンバーを加圧する排出行程において、経路が逆止弁で閉塞されて、上死点チャンバー内の循環ガスを加圧しながら確実に外部に排出できると共に、上死点チャンバーの膨張行程においては、下死点チャンバー内の循環ガスを経路に通過させて上死点チャンバーに移動し、下死点チャンバーに圧力がかかるのを防止できるので、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒が外部に漏れるのを確実に防止できる。
【0035】
本発明の第9の循環式の噴霧乾燥装置は、第8の側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、ピストン式の強制移送機4A、6Aが、シリンダ40の下死点よりも閉塞プレート47側に排気口40Bを設けて、シリンダ40の上死点よりも閉塞端40H側に吸入口40Aを設け、又は、シリンダ40の下死点よりも閉塞プレート47側に吸入口40Aを設けて、シリンダ40の上死点よりも閉塞端40H側に排気口40Bを設けている。
以上の循環式の噴霧乾燥装置は、排気口が設けられるチャンバーを加圧して循環ガスを押し出す排出行程において、膨張するチャンバーに吸入口から気体を吸入するので、吸入口が設けられるチャンバーに負圧がかかるのを有効に防止して、ピストンに作用する負荷を小さくできる。
【0036】
本発明の第10の循環式の噴霧乾燥装置は、第1ないし第9のいずれかの側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、ピストン式の強制移送機4A、6Aが、複数のシリンダ40を備えている。
以上の強制移送機は、複数のシリンダを備えているので、循環ガスの循環量を多くできる。
【0037】
本発明の第11の循環式の噴霧乾燥装置は、第3ないし第10のいずれかの側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、循環機6を、凝縮器3の供給側に配置している。
【0038】
本発明の第12の循環式の噴霧乾燥装置は、第1ないし第11のいずれかの側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、循環ガスを、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガスのいずれかとしている。
【0039】
本発明の第13の循環式の噴霧乾燥装置は、第1ないし第12のいずれかの側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、原料溶液の溶媒をアルコールとしている。
【0040】
本発明の第14の循環式の噴霧乾燥装置は、第1ないし第13のいずれかの側面に係る循環式の噴霧乾燥装置であって、ピストンシャフト43に、ピストンシャフト43を直線運動にガイドする直線運動機構60を連結している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来の循環式の噴霧乾燥装置の概略構成図である。
【図2】従来の他の循環式の噴霧乾燥装置の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる循環式の噴霧乾燥装置の概略構成図である。
【図4】ピストン式の強制移送機の一例を示す概略構成図である。
【図5】図4に示すピストン式の強制移送機の別行程を示す概略構成図である。
【図6】ピストン式の強制移送機の他の一例を示す概略構成図である。
【図7】図6に示すピストン式の強制移送機の別行程を示す概略構成図である。
【図8】ピストン式の強制移送機の往復運動機構の他の一例を示す概略構成図である。
【図9】図8に示す往復運動機構の別行程を示す概略構成図である。
【図10】ダイヤフラム式の強制移送機の一例を示す概略構成図である。
【図11】ノズルの一例を示す拡大断面図である。
【図12】本発明の他の実施例にかかる循環式の噴霧乾燥装置の概略構成図である。
【図13】噴霧器の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための循環式の噴霧乾燥装置を例示するものであって、本発明は循環式の噴霧乾燥装置を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0043】
図3に示す循環式の噴霧乾燥装置は、循環ガスを介してノズル5から噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔1と、この噴霧乾燥塔1で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器2と、この粉末回収器2で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器3と、この凝縮器3で溶媒の分離された循環ガスを加圧して噴霧乾燥塔1のノズル5に供給する気体圧縮器4と、ガスを循環させる循環機6と、噴霧乾燥塔1に送られる循環ガスを加熱するヒーター7と、循環ガス圧を調整する圧力調整機構16を備えている。これらの噴霧乾燥装置は、凝縮器3から排出される循環ガスを気体圧縮器4で加圧してノズル5に供給し、このノズル5に供給される循環ガスでもって原料溶液を噴霧乾燥塔1内に噴霧し、噴霧されたミストを噴霧乾燥塔1で微粒子に乾燥して微粒子とする。
循環機6は、循環式の噴霧乾燥装置においては、ガスを循環させることが目的であるので、ガスを循環させることができれば設置する箇所が特定されるものではないが、粉末回収器2の下流で、凝縮器3の前後に配置されることが一般的である。
【0044】
図3に示す噴霧乾燥装置は、循環ガスを噴霧乾燥塔1に循環させる循環路8と、循環路8に連結している圧力調整機構16とを備えている。図の循環路8は、噴霧乾燥塔1から排出されるガスを循環させる主循環路8Aと、この主循環路8Aの排出側に連結してなる第1の分岐路8Bと第2の分岐路8Cを備えている。
【0045】
主循環路8Aは、圧力調整機構16を連結して、循環される循環ガスの圧力をコントロールしている。圧力調整機構16は、循環機6の排出側を大気圧とし、あるいは吸入側を大気圧とするように、主循環路8A内の圧力を調整する。
【0046】
主循環路8Aは、噴霧乾燥塔1の排出側に配置されて粉末回収器2と凝縮器3とを連結しており、凝縮器3の排出側において、第1の分岐路8Bと第2の分岐路8Cとを連結している。図の主循環路8Aは、粉末回収器2の排出側であって、凝縮器3の供給側に、循環ガスを循環路8に循環させる循環機6を連結している。ただ、循環機は、凝縮器の排出側に連結することもできる。第1の分岐路8Bと第2の分岐路8Cは、凝縮器3の排出側であって、噴霧乾燥塔1の供給側に配置している。第1の分岐路8Bは、気体圧縮器4を連結して、その先端をノズル5に連結している。第2の分岐路8Cは、ノズル5を介することなく噴霧乾燥塔1に連結している。図の第2の分岐路8Cは、噴霧乾燥塔1に供給される循環ガスを加熱するヒーター7を備えている。この噴霧乾燥装置は、噴霧乾燥塔1から排出されて循環路8で循環される循環ガスを循環機6を介して噴霧乾燥塔1に循環し、さらに、凝縮器3から排出される循環ガスの一部を気体圧縮器4で加圧して噴霧乾燥塔1のノズル5に供給している。
【0047】
噴霧乾燥塔1は、閉塞されたチャンバー10を備えており、このチャンバー10の上部に原料溶液をミストに霧化して噴霧するノズル5を備えている。図の噴霧乾燥塔1は、円筒の下部を下方に向かって細くなるテーパー状として閉塞されたチャンバー10を設けており、下端には、乾燥された微粒子と循環ガスとを排出する排出口11を設けている。図3に示す噴霧乾燥塔1は、チャンバー10の上部に、チャンバー10を上下に区画する区画壁12を設けており、この区画壁12の下方をノズル5から噴霧されたミストを乾燥させる乾燥室10Aとし、区画壁12の上方を循環機6で循環される循環ガスが供給される還流室10Bとしている。噴霧乾燥塔1は、区画壁12の中心部に貫通孔12Aを開口しており、この貫通孔12Aの中心に下向きにノズル5を配置している。この噴霧乾燥塔1は、ノズル5から乾燥室10Aに噴霧される原料溶液のミストを、区画壁12の貫通孔12Aから乾燥室10Aに流入する加温された循環ガスで乾燥して微粒子とし、この微粒子を循環ガスと共に下端の排出口11から排出する。図3に示す噴霧乾燥塔1は、循環機6から供給される循環ガスをヒーター7で加熱しており、この加熱された循環ガスでもって、乾燥室10Aにおいて原料溶液のミストを効率よく乾燥して微粒子の粉末とする。図3に示すように、ヒーター7で加温された循環ガスを噴霧乾燥塔1に循環させる噴霧乾燥装置は、図示しないが、チャンバー内にヒーターを設けて加温することもできる。
【0048】
ノズル5は、気体圧縮器4から供給される加圧された循環ガスを噴射して、原料溶液をミストに霧化して噴霧する。図の噴霧乾燥装置は、噴霧乾燥塔1のノズル5に、原料溶液を蓄えている溶液槽14をポンプ15を介して連結しており、ポンプ15を運転して溶液槽14からノズル5に原料液体を供給している。さらに、ノズル5は、気体圧縮器4に連結している。このノズル5は、溶液槽14から供給される原料液体を、気体圧縮器4から供給される加圧された循環ガスでミストに霧化して噴霧乾燥塔1の内部に噴霧する。
【0049】
ノズル5から噴霧された原料溶液のミストは、噴霧乾燥塔1の内部において、原料溶液の溶媒が気化されて微粒子となる。原料溶液の溶媒は、例えばエタノールなどのアルコールである。ただ、原料溶液の溶媒はアルコール以外とすることもできる。噴霧乾燥塔1において、原料溶液の溶媒が気化された微粒子は、循環ガスと共に粉末回収器2に移送される。なお、この噴霧乾燥塔1においては、必ずしもノズル5から噴霧される全てのミストを完全に乾燥させて微粒子とする必要はなく、次の工程である粉末回収器2において、未乾燥状態のミストを乾燥して微粒子とすることができる。したがって、噴霧乾燥塔1において未乾燥状態にある一部のミストも、乾燥された微粒子と共に循環ガスで粉末回収部に移送される。
【0050】
粉末回収器2は、噴霧乾燥塔1で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する。図に示す粉末回収器2は、サイクロン20である。図のサイクロン20は円筒状で、円筒の下部を、下方に向かって細くなるテーパー部としている。サイクロン20は、天板の中心に、循環ガスを排出する排気口21を開口し、テーパー部の下端には、循環ガスから分離された微粒子を排出する排出口22を開口している。このサイクロン20は、供給される循環ガスを水平面内に回転させて微粒子を循環ガスから遠心分離する。したがって、サイクロン20は、微粒子を含む循環ガスを接線方向に流入させる流入口23を開口している。流入口23から流入されてサイクロン20の内部で回転する微粒子は、遠心力を受けて外側に加速されてサイクロン20の内面に沿って落下して下方の排出口22から排出される。循環ガスは、上方の排気口21から排出される。さらに、サイクロン20である粉末回収器2は、噴霧乾燥塔1から排出される循環ガスに含まれる未乾燥状態にあるミストを乾燥し、溶媒を気化させて微粒子とする。気化された溶媒は、循環ガスと一緒に上方の排気口22から排気される。
また、粉末回収器2は、例えばバグフィルターのようなフィルターを用いて実施することも可能である。
本発明において粉末回収器は、循環ガスから粉末を分離することが目的であるので、循環ガスから粉体を分離することができれば、その用いる方法が上記以外の方法であっても本発明を実施する上でなんら問題はない。
【0051】
凝縮器3は、粉末回収器2の排出側に連結されて、粉末回収器2で微粒子の分離された循環ガスに含まれる気化された溶媒を循環ガスから分離する。この凝縮器3は、粉末回収器2から排出される循環ガスを冷却して、気体の状態にある原料溶液の溶媒を液化して分離する。図に示す凝縮器3は、循環ガスを冷却する冷却用熱交換器30を内蔵している。冷却用熱交換器30は、熱交換パイプ31にフィン(図示せず)を固定している。熱交換パイプ31に冷却用の冷媒や冷却水を循環させて、冷却用熱交換器30を冷却する。ノズル5から噴霧されて霧化された原料溶液のミストは、溶媒が気化されて微粒子となり、気化された溶媒が気体となって循環ガスと共に循環される。循環ガスに含まれる気体の状態にある溶媒は、凝縮器3の冷却用熱交換器30で冷却されて液化し、液化した液滴が凝集されて回収される。凝縮器3で溶媒が分離された循環ガスは、再び噴霧乾燥塔1に循環される。
【0052】
凝縮器3の目的は、循環ガスから気化された溶媒を回収することにあるので、溶媒を凝縮できるのであれば、用いる熱交換器は上記のような形式に限ったわけではない。また、凝縮方法として、回収する溶媒の種類によっては活性炭もしくはシリカゲルのような物質に吸収させる、また液体に溶かして吸収させる方法なども考えられ、溶媒を回収できるのであれば、上記以外の方法であっても本発明を実施する上ではなんら問題はない。
【0053】
気体圧縮器4は、凝縮器3で溶媒の分離された循環ガスを加圧して噴霧乾燥塔1のノズル5に供給する。この気体圧縮器4はピストン式の強制移送機4Aである。ただ、ピストン式の強制移送機に代わって、後述するダイヤフラム式の強制移送機も使用できる。ピストン式の強制移送機4Aの拡大断面図を図4ないし図7に示す。
【0054】
従来のピストン式の気体圧縮器であるコンプレッサーは、モータ等の回転運動をクランクとコンロッドにより、往復運動に変換して、ピストンを上下に往復運動させる。この構造の場合、気密シールはピストン部分で実施される。本発明において、気体圧縮器4や循環機6に使用されるピストン式の強制移送機4A、6Aは、ピストン41とコンロッド46との間に、長手方向に直線運動するピストンシャフト43を連結している。さらに、図に示すピストン式の強制移送機4A、6Aは、ピストンシャフト43に直線運動機構60を連結している。
【0055】
直線運動機構60は、シリンダ40の閉塞プレート47に固定している一対のガイドロッド61と、このガイドロッド61に沿って往復運動するスライドベース62とを備えている。ガイドロッド61は、ピストンシャフト43の両側にあって、ピストンシャフト43の往復運動方向に固定されている。スライドベース62は、ピストンシャフト43の下端に固定されて、コンロッド46の上端を傾動できるように連結している。スライドベース62は、直動ベアリング63を介して、あるいは摺動メタルを介して、ガイドロッド61に沿って移動できるように連結している。
【0056】
以上のピストン式の強制移送機4A、6Aは、モーター45により回転軸42Aが回転しクランクアーム42、クランクピン42B、およびコンロッド46で構成されるクランク機構で発生した往復運動が、ピストンシャフト43をガイドロッド61とスライドベース62で構成される直線運動機構60を経てピストンシャフト43へ伝えられ、ピストン41を上下運動させる。以上の強制移送機は、従来のピストン式のコンプレッサーとは異なり、ピストン41に連結されたピストンシャフト43が直線運動する。ピストンシャフト43が直線運動するので、従来型のピストン式のコンプレッサーと異なり、図5で示すように、ピストン部分に加えて、ピストンシャフト43でもシールが実現可能である。
【0057】
ピストンシャフト43のシールは、ピストン側の圧力シール48Bと回転軸42A側のオイルシール48Aで構成され、シリンダ40の下部を塞ぐ閉塞プレート47に取り付けられる。ピストンシャフト43を直線運動にガイドする直線運動機構60は、ガイドロッド61にスライドベース62を往復運動させる機構に限らず、ピストンシャフトを直線運動させる全ての機構とすることができる。
【0058】
以上のピストン式の強制移送機4Aの気体圧縮器4は、ピストンシャフト43を気密にシールして、循環ガスの漏れを阻止できる。ピストンシャフト43は、ピストン41と比較するとその直径を大幅に小さくすることができるので、ピストンシャフト43に用いるシールは非常に狭い領域でシールを実現することができる。ピストンシャフト43を狭い領域でシールして、循環ガスの漏れを阻止できるので、以上の強制移送機は、高いシール効果が得られ、結果として非常に高い気密性が実現可能である。
【0059】
図4ないし図7に示すピストン式の強制移送機4Aは、ピストン41をシリンダ40内で往復運動させて、循環ガスを移送する。図のピストン式の強制移送機4Aは、逆止弁44を介して循環ガスを吸入し、かつ吸入された循環ガスを逆止弁44を介して排出するシリンダ40と、このシリンダ40内を往復運動するピストン41と、このピストン41の往復運動方向に伸びると共に、この方向に直線運動してピストン41を往復運動させるピストンシャフト43と、このピストンシャフト43を往復運動させる往復運動機構34とを備えている。
【0060】
シリンダ40は、その内部を、ピストン41の上死点側にある上死点チャンバー40Xと、この上死点チャンバー40Xの反対側にあってピストン41の下死点側にある下死点チャンバー40Yとに、ピストン41で区画している。図のシリンダ40は、上死点チャンバー側の端を閉塞端40Hで閉塞して、下死点チャンバー側の端を、ピストンシャフト43を貫通させる貫通孔47Aを有する閉塞プレート47で閉塞している。図4と図5のシリンダ40は、上死点チャンバー40Xで循環ガスを押し出し、下死点チャンバー40Yで循環ガスを吸入している。図6と図7のシリンダ40は、上死点チャンバー40Xで循環ガスを吸入し、下死点チャンバー40Yで循環ガスを押し出している。
【0061】
シリンダ40は、往復運動するピストン41の上死点よりも閉塞端40H側と、下死点よりも閉塞プレート47側に通気孔を開口している。図4と図5のシリンダ40は、上死点チャンバー40Xの通気孔を排気口40Bとし、下死点チャンバー40Yの通気孔を吸入口40Aとしている。図6と図7のシリンダ40は、上死点チャンバー40Xの通気孔を吸入口40Aとし、下死点チャンバー40Yの通気孔を排気口40Bとしている。吸入口40Aは、シリンダ40内に循環ガスを吸入する方向に循環ガスを通過させる逆止弁44である吸入弁44Aを連結している。排気口40Bは、シリンダ40から循環ガスを排出する方向にのみ循環ガスを通過させる逆止弁44である排出弁44Bを連結している。気体圧縮器4のシリンダ40は、吸入弁44Aを介して吸入口40Aを凝縮器3の排出側に連結し、排出弁44Bを介して排気口40Bをノズル5に連結している。
【0062】
ピストン41は、シリンダ40内を往復運動する円柱状としている。ピストン41は、シリンダ40の閉塞プレート47側の中心にピストンシャフト43を連結しており、このピストンシャフト43を介して往復運動している。図のピストン41は、シリンダ40との間からの循環ガスの漏れを極減するために、その外周にピストンリング41Bを配置してシリンダ40との気密性を向上している。
【0063】
さらに、ピストン41は、シリンダ40内を往復運動する状態で、閉塞プレート47に圧力がかかるのを防止するために、上死点チャンバー40Xと下死点チャンバー40Yとを連結する経路39を設けている。この経路39には逆止弁38を設けている。図4と図5に示す逆止弁38は、ピストン41が下死点から上死点に向かって移動する行程、すなわち、上死点チャンバー40Xの排出行程で閉塞され、ピストン41が上死点から下死点に向かって移動する吸入行程で開弁される。
【0064】
図4と図5のピストン41は、図の一部断面図に示すように、軸方向に貫通する貫通孔を設けて経路39としている。図に示すピストン41は、上死点チャンバー40X側の端面において、経路39の開口部を開閉自在に閉塞する弁体38Aを設けて、上死点チャンバー40Xに向かってのみ気体を通過させる逆止弁38としている。この逆止弁38は、図5の矢印Bで示すように、ピストン41を上死点から下死点に向かって、すなわち、図において降下させる行程において、弁体38Aを開放して、開口部側の下死点チャンバー40Yの気体を、上死点チャンバー40Xに移動して、下死点チャンバー40Yが加圧されるのを防止する。このため、ピストン41を降下させる吸入行程において、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒が、ピストンシャフト43のシール部から外部に漏れるのを確実に防止できる。
【0065】
また、この逆止弁38は、図4の矢印Aで示すように、ピストン41を下死点から上死点に向かって移動させる状態、すなわち排出行程では、弁体38Aが経路39の開口部を閉塞して、上死点チャンバー40X内の気体を加圧しながら排出弁44Bから外部に排出する。この排気行程で、下死点チャンバー40Yには循環ガスが吸入されて減圧されず、この行程においても、ピストンシャフト43のシール部からのガス漏れを防止できる。
【0066】
ピストン式の強制移送機4Aは、図4と図5に破線で示すように、ピストンの経路39に代わって、ピストン41の両側であって、シリンダ40の閉塞端40H側である上死点チャンバー40Xと開口部側である下死点チャンバー40Yとを連結する経路39をシリンダ40の外部に設けることもできる。この経路39も逆止弁38を設けている。経路39は、ピストン41の上死点よりも閉塞端40H側に一端を開口して、ピストン41の下死点よりも開口端側に他端を開口するように配設される。この経路39に設けられる逆止弁38も、下死点チャンバー40Yから上死点チャンバー40Xへの気体の移動を許可するが、上死点チャンバー40Xから下死点チャンバー40Yへの気体の移動を阻止する構造、すなわち、上死点チャンバー40Xの加圧時に閉塞される構造として、ピストン41のピストンシャフト43のシール部に圧力がかかるのを防止する。
【0067】
以上のピストン式の強制移送機4Aは、ピストン41が上昇する排出行程においては、逆止弁44Aを通過して循環ガスを吸入する。排出行程では、下死点チャンバー40Yに循環ガスが吸入される。下死点チャンバー40Yに吸引されたガスは、ピストン41が下降するときに逆止弁38が開いて経路39を通過して上死点チャンバー40Xに送られる。再度、ピストン41が上昇する排出行程では、ピストン41の上側の上死点チャンバー40Xに送られたガスが、ピストン41で加圧されて逆止弁44Bを通過して、圧縮ガスとして排気されてノズル5に送られる。
【0068】
ピストン41が上昇する排出行程において、上死点チャンバー40Xでは、循環ガスが加圧されてガス圧が上昇するため、ピストンリング41Bには大きな圧力がかかることになる。これに比べて、下死点チャンバー40Yでは、ピストン41が降下する吸入行程においても、内部のガスが経路39と開いた逆止弁38を通過して上死点チャンバー40Xに抜けるので大きな圧力は発生せず、したがって圧力シール48Bに大きな圧力がかかることはない。また、ピストン41が上昇する時には、逆止弁44Aを通じて下死点チャンバー40Yにガスを吸い込むので、下死点チャンバー40Yに大きな負圧が発生することもない。したがって、結果的にピストンシャフト43と閉塞プレート47の間のシール48Bには、正負の大きな圧力が作用することがないので、気体圧縮器4は高い気密性を確保することが可能となる。
【0069】
以上のピストン式の強制移送機4Aは、循環ガスを下死点チャンバー40Yに吸入して、上死点チャンバー40Xから外部に排出するが、図6と図7は循環機6に最適なピストン式の強制移送機6Aを示す。このピストン式の強制移送機6Aは、循環ガスを上死点チャンバー40Xに吸入して、下死点チャンバー40Yから排出する。したがって、ピストン式の強制移送機6Aは、上死点チャンバー40Xに吸入口40Aを、下死点チャンバー40Yに排気口40Bを設けている。このピストン式の強制移送機6Aは、往復運動するピストン41の下死点よりも開口端側に排気口40Bを設けて、この排気口40Bに排出弁44Bを連結すると共に、ピストン41の上死点よりも閉塞端40H側に吸入口40Aを設けて、この吸入口40Aに吸入弁44Aを連結している。
【0070】
図6と図7のシリンダ40は、筒体の開口端部に排気口40Bを設けて、筒体の閉塞端40Hに吸入口40Aを設けている。さらに、ピストン41は、図の一部断面図に示すように、軸方向に貫通する経路39を設けており、この経路39には、下死点チャンバー40Xの加圧時に閉塞される逆止弁38を設けている。図のピストン41は、経路39の下死点チャンバー40Y側の開口部を開閉自在に閉塞する弁体38Aを設けて逆止弁38としている。このピストン式の強制移送機6Aは、ピストン41を上死点から下死点に移動させる、すなわち降下させる排気行程において、ピストン41で下死点チャンバー40Y内の気体を排気口40Bから排出すると共に、上死点チャンバー40X内に吸入口40Aから気体を吸入する。さらに、このピストン式の強制移送機6Aは、ピストン41を下死点から上死点に向かって上昇させて、下死点チャンバー40Yに循環ガスを吸入させる吸入行程において、上死点チャンバー40X内の気体を、経路39を介して下死点チャンバー40Yに流入させる。
【0071】
このピストン式の強制移送機6Aは、ピストン41を降下させる排出行程においては、逆止弁38で経路39を閉塞して、下死点チャンバー40Y内の気体をピストン41で排出し、ピストン41を上昇させる吸入行程においては、上死点チャンバー40X内の気体を経路39に通過させて、下死点チャンバー40Yに流入させる。
【0072】
以上のピストン式の強制移送機6Aは、ピストン41に逆止弁38のある経路39を設けて、上昇するピストン41が下死点チャンバー40Yを減圧するのを防止するが、ピストン内の経路39に代わって、図の破線で示すように、シリンダ40の外部に経路39を設けることもできる。経路39は逆止弁38を設けている。逆止弁38は、上死点チャンバー40Xから下死点チャンバー40Yに向かってのみ循環ガスを移送する。この経路39は、一端を上死点チャンバー40Xに、他端を下死点チャンバー40Yに連結している。経路39を上死点チャンバー40Xに連結する連結部は、ピストン41が往復運動しても、常に上死点チャンバー40Xに連結される位置、すなわち、ピストン41の上死点よりも閉塞端40H側に位置している。また、経路39を下死点チャンバー40Yに連結する連結部は、ピストン41が往復運動しても、常に下死点チャンバー40Yに連結される位置、すなわち、ピストン41の下死点よりも閉塞プレート47側に位置している。
【0073】
以上のピストン式の強制移送機6Aは、ピストン41が降下する排出行程において、逆止弁38が閉弁されて、ピストン41で下死点チャンバー40Y内の気体を排気口40Bから排出して、上死点チャンバー40X内に吸入口40Aから気体を吸入する。さらに、このピストン式の強制移送機6Aは、ピストン41を図において上昇させる行程においては、経路39の逆止弁38が開かれて、上死点チャンバー40X内の気体を、経路39を介して下死点チャンバー40Yに流入させる。このピストン式の強制移送機6Aも、ピストン41の上昇行程において、下死点チャンバー40Yが減圧されない。このため、下死点チャンバー40Yの排出側の圧力を大気圧とする状態で使用されて、ピストンシャフト43のシール部の漏れを確実に阻止できる特徴がある。したがって、以上のピストン式の強制移送機6Aは、排出側の圧力を大気圧とする状態で使用されて、ガス漏れを有効に防止できる。
【0074】
ピストンシャフト43は、シリンダ40の中心に、ピストン41の往復運動方向に延長して配置されており、先端をピストン41に連結固定すると共に、後端を閉塞プレート47に貫通させてシリンダ40から引き出している。このピストンシャフト43は、シリンダ40の開口部を閉塞する閉塞プレート47の貫通孔47Aに摺動自在に貫通している。閉塞プレート47は、ピストンシャフト43の表面を気密構造に密閉するシール48を備えている。シール48は、2列に離して平行に配置しているオイルシール48Aと圧力シール48Bとからなり、オイルシール48Aをクランク側に、圧力シール48Bを下死点チャンバー40Y側に設けている。シール48は、ゴム状弾性体のOリングである。Oリングのシール48は、閉塞プレート47の貫通孔47Aに配設しており、ピストンシャフト43を摺動自在に貫通させている。シール48は、テフロン(登録商標)、シリコン、天然または合成ゴム等のゴム状弾性体である。このシール48は、ピストンシャフト43の表面に隙間なく密着して、ピストンシャフト43を摺動状態で往復運動させて、ピストンシャフト43の摺動部分を気密構造とし、この部分から循環ガスが漏れるの阻止する。ただし、シールには、銅、シンチュウ、アルミニウム、ステンレス等の金属をリング状に加工した金属シールも使用できる。以上のピストンシャフト43は、シール48を介して、その表面を貫通孔47Aに気密に密閉する状態に保持しながら、往復運動機構34で駆動されて、ピストン41の往復運動方向に直線運動する。ピストンシャフト43は、直線運動機構60で直線運動するようにガイドしている。
【0075】
直線運動機構60は、図4と図5に示す強制移送機と同じように、シリンダ40の閉塞プレート47に固定している一対のガイドロッド61と、このガイドロッド61に沿って往復運動するスライドベース62とを備えている。ガイドロッド61は、ピストンシャフト43の両側にあって、ピストンシャフト43の往復運動方向に固定されている。スライドベース62は、ピストンシャフト43の下端に固定されて、コンロッド46の上端を傾動できるように連結している。スライドベース62は、直動ベアリング63を介して、あるいは摺動メタルを介して、ガイドロッド61に沿って移動できるように連結している。
【0076】
往復運動機構34は、ピストンシャフト43の後端を連結固定しているスライドベース62を往復運動して、ピストンシャフト43を往復運動させる。図6と図7に示す往復運動機構34は、ピストンシャフト43が固定されたスライドベース62を往復運動させるクランクアーム42と、このクランクアーム42をスライドベース62を介してピストンシャフト43に連結しているコンロッド46と、クランクアーム42の回転軸42Aを回転する駆動機構45とを備えている。クランクアーム42は、クランクピン42Bを介して、コンロッド46の一端に連結している。一端をクランクアーム42に連結しているコンロッド46は、他端を、ピストンシャフト43を固定しているスライドベース62に傾動軸43Aを介して傾動できるように連結している。駆動機構45はクランクアーム42を固定している回転軸42Aを回転させるモータである。以上の往復運動機構34は、図4と図5に示すように、駆動機構45でクランクアーム42を回転させて、コンロッド46を介してスライドベース62を直線上で、図において上下方向に往復運動させる。
【0077】
直線運動機構60にガイドされて往復運動されるピストンシャフト43は、ガイドロッド61で直線運動方向に案内されて、直線運動方向以外にブレたり、振動することがない。このため、ピストンシャフト43のシール48やピストンリング41Bに無理な負荷が作用することをなく、シール48およびピストンリング41Aの寿命を延ばして、シール効果を最大限に引き出すことが可能である。ただ、本発明は、ピストンシャフト43を直線運動機構60を介して往復運動させる機構には特定せず、クランクアームの一端をピストンシャフトにピンを介して回転できるように連結して、直線運動機構を介することなく、クランクアームでピストンシャフトを往復運動させる構造とすることもできる。
【0078】
ただ、往復運動機構は、以上の構造に特定せず、図8と図9に示すように、ピストンシャフト43を往復運動させるカム26と、このカム26を回転させる駆動機構25とで構成することもできる。この駆動機構25は、カム26を回転させるモータである。図の往復運動機構24は、ピストンシャフト43を、スライドベース62を介してカム26で往復運動させる。回転するカム26が、スライドベース62を往復運動させて、スライドベース62でピストンシャフト43を往復運動させる。図の往復運動機構24は、スライドベース62を介してカム26がピストンシャフト43を往復運動させる。スライドベース62をカム26の表面に弾性的に押圧するために、弾性体27を設けている。弾性体27はコイルスプリング27Aの押しバネで、スライドベース62と閉塞プレート47との間にあって、スライドベース62をカム26に向かって弾性的に押圧している。コイルスプリングの弾性体は、ガイドロッドを挿通するようにして、閉塞プレートとスライドベースとの間に設けることもできる。この構造の往復運動機構24は、駆動機構25であるモータで回転されるカム26の外周面に沿ってピストンシャフト43の後端を移動させて、ピストンシャフト43を往復運動させる。
【0079】
以上のピストン式の強制移送機4A、6Aは、往復運動機構34、24で往復運動されるピストンシャフト43がシリンダ40内のピストン41を往復運動させる。このピストン式の強制移送機4A、6Aは、シリンダ40内をピストン41が往復運動すると、吸入弁44Aを介してシリンダ40内に循環ガスを吸入し、排出弁44Bを介してシリンダ40内の循環ガスを加圧状態で排出する。気体圧縮器4であるピストン式の強制移送機4Aは、ノズル5に送風する循環ガスの圧力を変化させる回転数調節機構49を備えている。図に示す回転数調節機構49は、駆動機構45、25であるモータの運転を制御するインバータである。この回転数調節機構49は、インバータでモータの回転数を制御して、気体圧縮器4であるピストン式の強制移送機4Aがノズル5に供給する循環ガスの圧力を調整する。
【0080】
さらに、以上のピストン式の強制移送機4A、6Aは、ピストンシャフト43を、閉塞プレート47の貫通孔47Aに対して横ブレすることなく、すなわち、貫通孔47Aに設けたシール48の内面に沿って直線状に移動して、ピストンシャフト43の表面をシール48の内面で気密に密閉する状態で摺動する。このため、ピストンシャフト43と閉塞プレート47との摺動部分におけるガス漏れを極減できる。さらに、以上のピストン式の強制移送機4A、6Aは、ピストンシャフト43の表面と閉塞プレート47の貫通孔47Aとの摺動部分において気密構造に密閉するので、従来のように、シリンダ40の内面とピストン41の外周面において気密構造に密閉する構造に比較して、気密に密閉する領域を狭くでき、これにより気密性を向上できる。したがって、このピストン式の強制移送機4Aを気体圧縮器4として使用することにより、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを効果的に防止できる。
【0081】
以上のピストン式の強制移送機4A、6Aは、1気筒のシリンダ40を備える。ただ、ピストン式の強制移送機は、複数のシリンダ、すなわち、2気筒以上のシリンダ40を備えることもできる。
【0082】
以上の気体圧縮器4は、ピストン式のピストン式の強制移送機4Aであるが、気体圧縮器4は、ダイアフラム式の強制移送機4Bとすることもできる。ダイアフラム式の強制移送機4Bを図10に示す。この図に示すダイヤフラム式の強制移送機4Bは、逆止弁54を介して循環ガスを吸入し、かつ吸入された循環ガスを逆止弁54を介して排出するキャビティ50と、このキャビティ50内を往復運動するダイアフラム51と、このダイヤフラム51を往復運動させる駆動機構55とを備える。
【0083】
図に示すダイヤフラム式の強制移送機4Bは、キャビティ50の内部を2分割して、2つのキャビティ50X、50Yの間にダイアフラム51を固定している。一方のキャビティ50Xは、底部の2カ所に通気孔を開口して、吸入口50Aと排気口50Bを設けている。吸入口50Aは、キャビティ50X内に循環ガスを吸入する方向に循環ガスを通過させる逆止弁54である吸入弁54Aを連結している。排気口50Bは、キャビティ50Aから循環ガスを排出する方向にのみ循環ガスを通過させる逆止弁54である排出弁54Bを連結している。キャビティ50Aは、吸入弁54Aを凝縮器3の排出側に連結すると共に、排出弁54Bをノズル5の供給側に連結する。
【0084】
ダイアフラム51は、キャビティ50内を気密に区画すると共に、キャビティ50内を往復運動できるように2つのキャビティ50X、50Yの間に配置している。図のダイヤフラム式の強制移送機4Bは、駆動機構55を電磁石56としており、電磁石56をオンオフに制御して、電磁石56に磁気的にダイヤフラム51を吸着させる状態と元の位置に復元する状態とを繰り返して循環ガスを吸入し、また排気している。この駆動機構55は、電磁石のオンオフを制御回路57で制御してダイヤフラムの振動の周期を調整し、ダイヤフラム式の強制移送機4Bがノズル5に供給する循環ガスの圧力を調整する。ただ、ダイヤフラムを往復運動させる駆動機構は電磁石に特定しない。駆動機構は、ダイヤフラムを往復運動できる他の全ての機構が使用できる。以上のダイヤフラム式の強制移送機4Bは、ピストン式の強制移送機4Aのような摺動部がないので、循環ガスが漏れるのを確実に防止しながら循環ガスを加圧しながら排出できる。
【0085】
循環機6は、図3に示すように、循環路8に配置されて、循環ガスを循環路8に循環させる。この循環機6には、前述の図4ないし図10に示す空気圧縮器4と同じ構造のものが使用できる。すなわち、循環機6は、図4ないし図9に示すピストン式の強制移送機6Aとし、あるいは、図10に示すように、ダイアフラム式の強制移送機6Bとすることができる。
【0086】
循環機6は、循環式の噴霧乾燥装置においてはガスを循環させることが目的であるので、ガスを循環させることができれば設置する箇所が特定されるものではないが、好ましくは、粉末回収器2の下流で、凝縮器3の前後に配置する。
ガス中から溶媒を凝縮するには、ガス圧が高いほど凝縮効率、つまり回収効率が高くなる。したがって、凝縮器3の上流側に循環機6を配置し加圧状態で循環ガスを凝縮器3に送風することが望ましいが、循環機6の気密性が低いと凝縮前の溶媒の含有濃度が高いガスが外部に流出することになり、溶媒の回収率が著しく損なわれるので、好ましくは 循環機は凝縮器の下流側に設置される。しかし、本発明の循環式の噴霧乾燥装置に用いる循環機6は、気密性が高くガスの外部流出がほとんどないので、凝縮器3の上流側に循環機6を配置することが可能であり、その結果、ガス圧が高い凝縮つまり、回収率の高い凝縮が実現可能である。
【0087】
図の循環機6は、クランクアーム42の回転軸42Aであるクランクシャフトの回転数を調整して、循環路8に送風する循環ガスの流量を変化できる。図4ないし図9のピストン式の強制移送機6Aは、クランクシャフトの回転数を調整して循環ガスの流量や圧力を調整する回転数調節機構49を設けている。循環機6に使用されるピストン式の強制移送機6Aは、この回転数調節機構49でクランクシャフトの回転数を調整して、循環ガスの流量をコントロールできる。したがって、循環機6の強制移送機は、回転数調節機構49を流量調整機構として使用できる。
回転数調節機構49の流量調整機構は、インバータでモータの回転数を制御して、循環機6が循環路8に循環させる循環ガスの流量を調整する。
【0088】
循環機6は、循環ガスの流量を、空気圧縮器4の流量の5〜20倍、好ましくは10〜15倍とする。循環機は、駆動機構であるモータの回転数だけでなく、シリンダの内径やピストンを往復させるストロークを種々に設計して流量を調整することもできる。
【0089】
以上のピストン式の強制移送機6Aからなる循環機6は、循環ガスや原料溶液に含まれる溶媒の外部漏れを効果的に防止しながら循環ガスを循環できる。
【0090】
循環式の噴霧乾燥装置は、有機溶剤を溶媒とした液体原料を噴霧して溶媒を外部に漏らさない特徴があるので、循環ガスに不活性ガスを用いて、揮発した有機溶媒の爆発や燃焼を防止する。したがって、循環式の噴霧乾燥装置を運転する場合は、外部の空気を吸い込んで循環ガスに酸素が入り込むことを防ぐため、循環ガスの内圧が最も下がる循環機6の吸い込み口部分の圧力が、大気圧よりも下がらないように、圧力調整機構16で循環路8の圧力を調整する。このような場合、循環機6は、図4と図5で示すように吐出圧がプラス圧になることを前提とした構造である。
これに対して非常に希ではあるが、噴霧乾燥する粉末、および液体原料が特殊で、噴霧乾燥する条件が大気圧よりも負圧で行わなければならない場合もないわけではない。このような場合、循環機6には循環ガスの外部流出というよりは、大気の吸い込みをなくす構造が求められる。この場合、吐出圧よりも吸い込みの負圧の絶対値が大きくなるので、吸い込み側の気密構造が重要となる。したがって、図4と図5で示す構造のピストン式の強制移送機6Aの場合、気密性が高いのは、上死点チャンバー40Xである。
この用途に使用されるピストン式の強制移送機6Aである循環機6は、図6と図7に示すように、大気圧よりも低くなる循環ガスを上死点チャンバー40Xに吸入して、下死点チャンバー40Yから排出する構造として、循環ガスに空気が吸入されるのをより確実に防止できる。
【0091】
さらに、循環機6には、ピストン式の強制移送機6Aに代わって、ダイヤフラム式の強制移送機6Bも使用できる。ダイヤフラム式の強制移送機6Bは、気体圧縮器4に使用される図10に示す構造と同じ構造の強制移送機が使用できる。以上のダイヤフラム式の強制移送機6Bからなる循環機6は、ピストン式の強制移送機6Aのような摺動部がないので、循環ガスが漏れるのを確実に防止しながら循環ガスを循環できる。
【0092】
ヒーター7は、図3に示すように、循環機6の排出側に配設されており、循環機6を介して噴霧乾燥塔1に還流される循環ガスを加熱する。図3に示すヒーター7は電気ヒータで、制御回路35でもって供給される電力が制御されて循環ガスを加熱する温度を制御している。図3に示す噴霧乾燥装置は、ヒーター7の排出側の循環路8に温度検出部36を連結しており、温度検出部36で噴霧乾燥塔1に還流される循環ガスの温度を検出している。制御回路35は、温度検出部36からの入力信号に基づいてヒーター7を制御して循環ガスの温度を最適な温度に制御している。ただ、ヒーターは、電気ヒータに特定せず、循環路に循環される循環ガスを加熱できる他の全ての機構とすることができる。
【0093】
以上の噴霧乾燥装置は、循環ガスとして、好ましくは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性なガスを使用する。この噴霧乾燥装置は、不活性な循環ガスによって、原料溶液から分離される微粒子や溶媒の変質が防止される。このため、より高品質な状態で微粒子を回収することができる。ただし、循環ガスには、炭酸ガスや空気も使用できる。循環ガスは、図3に示すように、圧力調整機構16を介して循環路8に供給される。
【0094】
圧力調整機構16は、図示しないが、循環ガスのガス圧を計測する圧力センサーと、循環ガスを外部排出し減圧するための減圧制御弁と、不活性ガスのボンベなどの不活性ガス供給手段につながり上記不活性ガスの導入量を制御する導入制御弁、および圧力センサーの値に応じて減圧制御弁、導入の制御弁を制御するシーケンサーまたはマイコンなどで構成される制御手段により実施される。
【0095】
以上の噴霧乾燥装置は、気体圧縮器4から加圧された循環ガスをノズル5に供給して、このノズル5で、原料溶液をミストに霧化して噴霧する。このノズル5として、図11に示す構造のものが使用できる。図11のノズル5は、原料液体をリング状に噴射する供給口82を設けている。このノズル5は、中心から順番に、内側リング91と中間リング92と外側リング93を設けている。ノズル5は、内側リング91の内側に循環ガスの噴射路94を設け、内側リング91と中間リング92との間に原料溶液の溶液路96を設け、中間リング92と外側リング93との間にも循環ガスの噴射路95を設けている。噴射路94、95と溶液路96はリング状で、噴射路94、95から循環ガスを噴射し、中間の溶液路96からリング状に原料溶液を噴射する。溶液路96から噴射された原料溶液は、両側から噴射される循環ガスでミストに霧化される。とくに、このノズル5は、内側リング91の内周面と中間リング92の内周面を平滑面として先端を尖った形状とし、内側と外側の両面に循環ガスを高速流動させて、先端で両面の循環ガスを衝突させる。このため、溶液路96から供給される原料溶液は、内側リング91と中間リング92の先端で微細なミストに破砕される。このノズル5は、内側リング91と中間リング92の先端部における気液界面において、原料溶液と循環ガスを理想的な状態で接触させて、原料溶液を速やかに微細な粒子に霧化する。
【0096】
内側リング91は外形を円柱状とし、中間リング92は内形を円柱状に加工し、内側リング91と中間リング92の間に、所定の幅のスリット状の溶液路96を設けている。溶液路96は、リング状に形成されており、スリット幅は、原料溶液が詰まらない幅に設計される。このノズル5は、溶液路96から原料溶液を薄膜にして送り出す必要がない。原料溶液は平滑面87で薄く引き伸ばされて微細な粒子となって噴射されるからである。したがって、溶液路96のスリット幅は、送り出される原料溶液の流量、平滑面87の長さ、平滑面87に噴射される循環ガスの流速、溶液路96の内径等を考慮して最適値に設計される。
【0097】
溶液路96の直径は、噴射する原料溶液の流量、スリット幅の寸法等を考慮して最適値に設計される。溶液路96の直径は、たとえば、1000g/分の原料溶液を噴射するノズル5において、約50mmφに設計される。流量が大きくなると、溶液路96は直径を大きく、流量が少なくなると直径を小さく設計する。
【0098】
内側リング91と中間リング92の先端面は、テーパー状に切削加工されて、平滑面87となっている。内側リング91と中間リング92の平滑面87は、内側リング91の平滑面87に沿って噴射される流動する空気が、内側リング91と中間リング92の境界で乱流とならないように、同一平面に形成されている。内側リング91と中間リング92の平滑面87が同一平面となるとは、内側リング91と中間リング92の平滑面87に段差ができず、内側リング91の平滑面87から中間リング92の平滑面87に直線的に空気が流動される状態を意味する。このように、内側リング91と中間リング92の平滑面87を同一平面のテーパー状に加工するには、内側リング91と中間リング92を連結してテーパー加工すればよい。さらに、平滑面87は、ここに沿って流動する原料溶液が乱流とならないように、原料溶液の流動方向に沿って平滑面87となっている。図11に示すノズル5の平滑面87は、円錐状で全体を平滑面87に仕上げている。
【0099】
内側リング91と中間リング92に平滑面87を設けることによって、平滑面87の中間に溶液路96が開口される。内側リング91と中間リング92に設けられる平滑面87の傾斜角αは、溶液路96の平滑面87に対する角度が鈍角となるように、たとえば、100〜170度、好ましくは120〜160度、さらに好ましくは140〜160度、最適には約150度に設計される。傾斜角αは大きい方が液の流出が安定する。しかしスリット幅により傾斜角αは最適値が変わる。傾斜角αは、好ましくは、平滑面87における溶液路96の開口幅が2mmを越えないように設計される。
【0100】
内側リング91の先端には中心リング90が配設され、この中心リング90の先端と内側リング91との間に噴射口81が開口されている。中心リング90は、外周面を内側リング91の平滑面87に沿うテーパー状に加工している。中心リング90と内側リング91の間に形成される噴射口81はスリット状で、ここから加圧空気を層流状態に噴射して、平滑面87に沿って高速流動させる。
【0101】
内側リング91の噴射路94は空気圧縮器4に連結されている。供給口82は平滑面87に沿って流動する循環ガスを噴射する。空気圧縮器4は、たとえば3〜20kg/cm2、好ましくは4〜15kg/cm2、さらに好ましくは4〜10kg/cm2、最適には約6.5kg/cm2の循環ガスを供給口82に供給する。循環ガスのガス圧を高くすると、平滑面87に沿って高速流動する循環ガスの流速が速くなって、原料溶液をより効果的に薄く引き伸ばして原料溶液を小さい微粒子のミストにできる。
【0102】
さらに、図11に示すノズル5は、平滑面87の外周からも循環ガスを噴射している。この循環ガスは、中間リング92と外側リング93の間に設けられる循環ガスの噴射口83から噴射される。ただ、この反応ガスは、必ずしも噴射する必要はない。外側の噴射口から反応ガスを噴射しないで、内側の噴射口からの循環ガスで原料溶液を微粒子のミストにして噴射できるからである。両側から循環ガスを噴射するノズル5は、循環ガスを平滑面87のエッジ88で衝突させて、原料溶液の含有成分を循環ガスでより効果的に化学反応できる。ミストをより小さい微粒子にでき、しかも気液界面において原料溶液と循環ガスとを激しく衝突できるからである。
【0103】
ふたつの循環ガスを噴射して先端で衝突させるノズル5は、平滑面87の先端を尖鋭なエッジ88としている。中間リング92は先端面に平滑面87を設け、先端の外周を円筒状に加工して、平滑面87の先端にエッジ88を設けている。この形状の中間リング92は、平滑面87の先端に(180度−傾斜角α)の尖鋭なエッジ88を形成できる。ただ、ノズルは、図示しないが、中間リングの外周をテーパー状に加工して、エッジの角度を調整することもできる。
【0104】
図11に示すノズル5は、下記の状態で原料溶液を微粒子の原料溶液にして噴射する。
(1)中心リング90と内側リング91の間に設けた噴射路94と、中間リング92と外側リング93の間に設けた噴射路95に加圧した循環ガスを供給して、内側リング91と中間リング92の間に設けた溶液路96から原料溶液を平滑面87に送り出す。
(2)平滑面87に供給された原料溶液は、平滑面87に沿って高速流動する循環ガスで薄く引き伸ばされて薄膜流となる。
たとえば、平滑面87に沿って循環ガスをマッハ1.5の流速で流動させて溶液路96に原料溶液を送り出し、薄膜流の先端部での流速を循環ガスの1/20とすれば、30.5m/sとなる。平滑面87の先端に設けたエッジ88の直径を50mmとすれば、原料溶液を1リットル/分で供給して薄膜流の膜圧は4μmとなる。
【0105】
(3)4μmの薄膜流は、平滑面87のエッジ88を過ぎると薄すぎて膜状態でいられなくなり、表面張力で粉々にちぎられて微粒子のミストとなる。
(4)微粒子のミストは、エッジ88で両側からの循環ガスが衝突し、摩擦して振動してミストをさらに小さい微粒子とする。
(5)微粒子のミストは、両側からの循環ガスによって放射状に運ばれる。この状態をホロコーンという。ホロコーンのコーン角度は平滑面87の角度で決定されるが、各循環ガスの噴射圧でも調整できる。
【0106】
さらに、ノズルは、図示しないが、異なる2液を混合して微粒子の微粉末とする構造とすることもできる。このノズルは、例えば、中間リングを内側中間リングと外側中間リングの二重管構造として、内側中間リングと外側中間リングの間に第2液の供給口を設けることができる。このノズルは、異なる2液を混合してなる微粒子の粉末を分離して回収できる。
【0107】
以上の噴霧乾燥装置は、噴霧乾燥塔1から排出される循環ガスを気体圧縮器4で加圧してノズル5に供給し、このノズル5で原料溶液をミストに霧化して噴霧している。ただ、本発明の噴霧乾燥装置は、原料溶液をミストに霧化して噴霧する機構をノズルと気体圧縮器には特定しない。噴霧乾燥装置は、図12に示すように、原料溶液をミストに霧化する噴霧機9を噴霧乾燥塔1内に配置して、この噴霧機9で噴霧乾燥塔1内に噴霧されるミストを噴霧乾燥塔1で微粒子に乾燥することもできる。
【0108】
図12に示す噴霧乾燥装置は、噴霧乾燥塔1の上部に噴霧機9を配設しており、溶液槽14から供給される原料溶液を、この噴霧機9でミストに霧化して噴霧乾燥塔1内に噴霧している。この噴霧機9は、図13に示すように、モータ35で高速回転される回転板36と、この回転板36に定量の原料溶液を供給する供給管37とで構成している。この噴霧機9は、高速回転する回転板36にリング状の供給管37から原料溶液を供給し、高速回転する回転板36の遠心力で原料溶液の液滴を微細なミストに破砕・拡散して噴霧する。ただ、噴霧機は、原料溶液を回転板でミストに霧化して噴霧する構造に特定しない。噴霧機には、溶液槽から供給される原料溶液をミストに霧化して噴霧できる他の全ての構造が使用できる。
【0109】
図12に示す循環式の噴霧乾燥装置は、噴霧機9から噴霧された原料溶液を微粒子状に乾燥する噴霧乾燥塔1と、この噴霧乾燥塔1から排出される循環ガスを噴霧乾燥塔1に循環させる循環路8と、この循環路8に連結されて、循環路8に循環ガスを循環させる循環機6とを備えている。さらに、図12の噴霧乾燥装置は、循環路8に、噴霧乾燥塔1で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器2と、この粉末回収器2で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器3と、この凝縮器3で溶媒の分離された循環ガスを加熱するヒーター7とを備えている。
【0110】
循環路8は、噴霧乾燥塔1から排出される循環ガスを粉末回収器2と凝縮器3とヒーター7とに通過させて噴霧乾燥塔1に循環させている。ただ、噴霧乾燥装置は、必ずしも循環路にヒーターを配置する必要はない。噴霧乾燥塔1にヒーターを配置することもできるからである。さらに、図の循環路8は、粉末回収器2の排出側であって、凝縮器3の供給側に、循環ガスを循環路8に循環させる循環機6を連結している。この噴霧乾燥装置は、噴霧乾燥塔1から排出されて循環路8で循環される循環ガスを循環機6を介して噴霧乾燥塔1に循環させている。ただ、循環機は凝縮器の排出側に配置することもできる。
【0111】
循環機6には、前述の循環機と同じ構造のものが使用できる。すなわち、循環機6は、図4ないし図9に示すように、ピストン式の強制移送機6Aとすることができ、あるいは、図10に示すように、ダイアフラム式の強制移送機6Bとすることができる。
【符号の説明】
【0112】
1…噴霧乾燥塔
2…粉末回収器
3…凝縮器
4…気体圧縮器 4A…ピストン式の強制移送機
4B…ダイアフラム式の強制移送機
5…ノズル
6…循環機 6A…ピストン式の強制移送機
6B…ダイヤフラム式の強制移送機
7…ヒーター
8…循環路 8A…主循環路
8B…第1の分岐路
8C…第2の分岐路
9…噴霧機
10…チャンバー 10A…乾燥室
10B…還流室
11…排出口
12…区画壁 12A…貫通孔
14…溶液槽
15…ポンプ
16…圧力調整機構
20…サイクロン
21…排気口
22…排出口
23…流入口
24…往復運動機構
25…駆動機構
26…カム
27…弾性体 27A…コイルスプリング
28…ストッパ
30…冷却用熱交換器
31…熱交換パイプ
34…往復運動機構
35…モータ
36…回転板
37…供給管
38…逆止弁 38A…弁体
39…経路
40…シリンダ 40A…吸入口
40B…排気口
40H…閉塞端
40X…上死点チャンバー
40Y…下死点チャンバー
41…ピストン 41B…ピストンリング
42…クランクアーム 42A…回転軸
42B…クランクピン
43…ピストンシャフト 43A…傾動軸
44…逆止弁 44A…吸入弁
44B…排出弁
45…駆動機構
46…コンロッド
47…閉塞プレート 47A…貫通孔
48…シール 48A…オイルシール
48B…圧力シール
49…回転数調整機構
50…キャビティ 50A…吸入口
50B…排気口
50X…キャビティ
50Y…キャビティ
51…ダイヤフラム
54…逆止弁 54A…吸入弁
54B…排気弁
55…駆動機構
56…電磁石
57…制御回路
60…直線運動機構
61…ガイドロッド
62…スライドベース
63…直動ベアリング
81…噴射口
82…供給口
83…噴射口
87…平滑面
88…エッジ
90…中心リング
91…内側リング
92…中間リング
93…外側リング
94…噴射路
95…噴射路
96…溶液路
101…噴霧乾燥塔
102…サイクロン
103…凝縮器
105…ノズル
106…ブロアー
107…ヒーター
201…噴霧乾燥塔
204…気体圧縮器
205…ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された循環ガスを介してノズルから噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔と、この噴霧乾燥塔で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器と、この粉末回収器で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器と、この凝縮器で溶媒の分離された循環ガスを加圧して噴霧乾燥塔のノズルに供給する気体圧縮器とを備えており、
前記気体圧縮器が、ピストンをシリンダ内で往復運動させて、循環ガスを加圧して移送するピストン式の強制移送機で、このピストン式の強制移送機は前記ピストンの往復運動方向に伸びてピストンの往復運動方向に直線運動するピストンシャフトと、このピストンシャフトを往復運動させる往復運動機構とを備えており、
さらに、前記シリンダの往復運動機構側の開口部は、前記ピストンシャフトが摺動自在に貫通してなる貫通孔を有する閉塞プレートで閉塞しており、この閉塞プレートは、摺動自在に貫通してなるピストンシャフトの表面を貫通孔に気密構造に密閉するシールを備えており、
前記ピストン式の強制移送機でもって、循環ガスを加圧して前記ノズルに供給してノズルから原料溶液をミストに噴霧するようにしてなる循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項2】
加圧された循環ガスを介してノズルから噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔と、この噴霧乾燥塔で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器と、
この粉末回収器で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器と、この凝縮器で溶媒の分離された循環ガスを加圧して噴霧乾燥塔のノズルに供給する気体圧縮器とを備えており、
前記気体圧縮器がダイヤフラム式強制移送機で、このダイヤフラム式の強制移送機でもって、循環ガスを加圧して前記ノズルに供給してノズルから原料溶液をミストに噴霧するようにしてなる循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項3】
前記循環ガスを前記噴霧乾燥塔に循環させる循環路を備え、この循環路は噴霧乾燥塔から排出されるガスを循環させる主循環路と、この主循環路の排出側に連結してなる第1の分岐路と第2の分岐路を備え、第1の分岐路は気体圧縮器を連結してその先端をノズルに連結しており、第2の分岐路はノズルを介することなく噴霧乾燥塔に連結しており、
さらに、前記主循環路または前記第2の分岐路に、循環ガスを循環させる循環機を連結しており、この循環機がピストンをシリンダ内で往復運動させて、循環ガスを循環させるピストン式の強制移送機で、このピストン式の強制移送機は前記ピストンの往復運動方向に伸びてピストンの往復運動方向に直線運動するピストンシャフトと、このピストンシャフトを往復運動させる往復運動機構とを備えており、
さらに、前記シリンダの往復運動機構側の開口部は、前記ピストンシャフトが摺動自在に貫通してなる貫通孔を有する閉塞プレートで閉塞しており、この閉塞プレートは、摺動自在に貫通してなるピストンシャフトの表面を貫通孔に気密構造に密閉するシールを備えており、
前記ピストン式の強制移送機の循環機でもって、循環ガスを前記噴霧乾燥塔に循環するようにしてなる請求項1または2に記載される循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項4】
前記循環ガスを前記噴霧乾燥塔に循環させる循環路を備え、この循環路は噴霧乾燥塔から排出されるガスを循環させる主循環路と、この主循環路の排出側に連結してなる第1の分岐路と第2の分岐路を備え、第1の分岐路は気体圧縮器を連結してその先端をノズルに連結しており、第2の分岐路はノズルを介することなく噴霧乾燥塔に連結しており、
さらに前記主循環路または前記第2の分岐路には、循環ガスを循環させる循環機を連結しており、この循環機がダイヤフラム式の強制移送機で、このダイヤフラム式の強制移送機でもって、循環ガスを前記噴霧乾燥塔に循環するようにしてなる請求項1または2に記載される循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項5】
噴霧機から噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔と、この噴霧乾燥塔で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器と、この粉末回収器で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器と、前記噴霧乾燥塔から排出される循環ガスを前記粉末回収器と前記凝縮器を介して前記噴霧乾燥塔に循環させる循環路と、この循環路に連結されて循環路に循環ガスを循環させる循環機とを備えており、
前記循環機が、ピストンをシリンダ内で往復運動させて、循環ガスを循環させるピストン式の強制移送機で、このピストン式の強制移送機は前記ピストンの往復運動方向に伸びてピストンの往復運動方向に直線運動するピストンシャフトと、このピストンシャフトを往復運動させる往復運動機構とを備えており、
さらに、前記シリンダの往復運動機構側の開口部は、前記ピストンシャフトが摺動自在に貫通してなる貫通孔を有する閉塞プレートで閉塞しており、この閉塞プレートは、摺動自在に貫通してなるピストンシャフトの表面を貫通孔に気密構造に密閉するシールを備えており、
前記ピストン式の強制移送機でもって、循環ガスを前記噴霧乾燥塔に循環するようにしてなる循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項6】
噴霧機から噴霧された原料溶液のミストを乾燥して微粒子とする噴霧乾燥塔と、この噴霧乾燥塔で乾燥された微粒子を循環ガスから分離して回収する粉末回収器と、この粉末回収器で微粒子の分離された循環ガスを冷却して、原料溶液の溶媒を液化して分離する凝縮器と、前記噴霧乾燥塔から排出される循環ガスを前記粉末回収器と前記凝縮器を介して前記噴霧乾燥塔に循環させる循環路と、この循環路に連結されて循環路に循環ガスを循環させる循環機とを備えており、
前記循環機がダイヤフラム式の強制移送機で、このダイヤフラム式の強制移送機でもって、循環ガスを前記噴霧乾燥塔に循環するようにしてなる循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項7】
前記ピストン式の強制移送機の往復運動機構が、前記ピストンシャフトを往復運動させるクランクアームと、このクランクアームを前記ピストンシャフトに連結してなるコンロッドと、前記クランクアームを回転する駆動機構とを備え、あるいは、前記ピストンを往復運動させるカムと、このカムを回転する駆動機構とを備える請求項1、3、5のいずれかに記載される循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項8】
前記ピストン式の強制移送機が、前記シリンダの内部を前記ピストンで加圧される上死点チャンバーと、下死点チャンバーとに区画すると共に、前記上死点チャンバーと前記下死点チャンバーとを連結する経路を備えており、この経路に、排出行程で閉弁する逆止弁を設けてなる請求項1、3、5のいずれかに記載される循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項9】
前記ピストン式の強制移送機が、前記シリンダの下死点よりも閉塞プレート側に排気口を設けて、前記シリンダの上死点よりも閉塞端側に吸入口を設け、
又は、前記シリンダの下死点よりも閉塞プレート側に吸入口を設けて、前記シリンダの上死点よりも閉塞端側に排気口を設けてなる請求項8に記載される循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項10】
前記ピストン式の強制移送機またはダイヤフラム式の強制移送機が、複数のシリンダを備える請求項1、2、3、4、5、6、7,8、9のいずれかに記載される循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項11】
前記循環機が、前記凝縮器の供給側に配置されてなる請求項3ないし10のいずれかに記載される循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項12】
前記循環ガスが窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガスのいずれかである請求項1ないし11のいずれかに記載される循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項13】
前記原料溶液の溶媒がアルコールである請求項1ないし12のいずれかに記載される循環式の噴霧乾燥装置。
【請求項14】
前記ピストンシャフトに、ピストンシャフトを直線運動にガイドする直線運動機構を連結している請求項1ないし13いずれかに記載される循環式の噴霧乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−13265(P2012−13265A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148161(P2010−148161)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(591104295)藤崎電機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】