説明

微小生体関連物質保持用微細構造の複製成形

微細構造の複製成形方法であって、
該方法は、少なくとも一つの微小生体関連物質を保持するように構成される微細構造の雌型を形成し、該雌型上に流動性を有する高分子材料をキャスティングし、基材を該流動性を有する高分子材料と該雌型に当て、該流動性を有する高分子材料を雌型内および基材上で固化し、ついで基材および固化した高分子材料を雌型から切り離し、それによって、基材上に少なくとも1つの微細構造の雄型複製が残ることを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小生体関連物質保持用微細構造の複製成形に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞物質のような微小生体関連物質(biological material)は、通常、観察のためにカバーガラス上や、細胞培養プレートの中に保持される。カバーガラスは安価であるが、その平らな表面は、微小生体関連物質を保持するには不適当である。細胞培養プレートは、ライブセルイメージング(live cell imaging)の標準的な視野より大きい肉眼的ウェル(macroscopic well)に配列した微小生体関連物質を保持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それゆえ、微小生体関連物質保持用基盤技術の低コスト化が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、微細構造の複製成形(replica moulding)方法が提供され、該方法は、少なくとも一つの微小生体関連物質を保持するように構成される微細構造の雌型(ネガティブマスター、negative master)を形成し、該雌型上に流動性を有する高分子材料をキャスティングし、基材を該流動性を有する高分子材料と該雌型に当て、該流動性を有する高分子材料を雌型内および基材上で固化し、そして、該基材と該固化した高分子材料を雌型から切り離し、それによって、基材上に少なくとも1つの微細構造の雄型複製(ポジティブレプリカ、positive replica)が残ることを含んでいる。
【0005】
前記少なくとも一つの微細構造は、マイクログリッド(microgrid)、マイクロウェル(microwell)、マイクロプラットフォーム(microplatform)、およびそれらの組合わせから選ぶことができる。
【0006】
前記流動性を有する高分子材料がポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)であってもよい。
前記基材が、カバースリップ(cover slip)または顕微鏡用スライド(microscope slide)であってもよい。
【0007】
また、本発明は、前記複製成形方法によって製造される微小生体関連物質保持用デバイスを提供する。
前記デバイスが、細胞培養プレート(cell culturing plate)または、マイクロウェルプレート(microwell plate)であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施態様は、低コストで、微小生体関連物質保持のための基盤技術(generic technology)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下、添付の図面を参照して制限されないほんの一例として本発明を説明する。
【図1】図1は、微小生体関連物質保持用微細構造の複製成形方法に関するフローチャートである。
【図2】図2(a)〜(d)は、複製成形方法により形成される、異なる微細構造の走査型電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の1実施形態である複製成形方法を示す。該方法は、まず、例えば細胞や、細胞物質のような微小生体関連物質を保持するように構成される1つもしくはそれ以上の微細構造の雌母型(negative master mould)を形成することによるステップ100を行う。
【0011】
前記微細構造は、マイクログリッド、マイクロウェル、マイクロプラットフォーム、およびそれらの組合わせてであってもよい。微小生体関連物質を保持するためにデザインされる他の同等の微細構造をも使用することができる。
【0012】
前記雌型は、例えば、ポリ(メチルメタアクリレート)(PMMA)で形成することができる。雌型は、また、他の同等の物質を用いてもよい。
前記雌型は増幅フェムト秒パルスレーザー(amplified femtosecond pulse laser (Spitfire, Spectra Physics))を用いて最終的な微細構造とは逆の構造にエッチングすることで作ることができる。また、他の同等の製造技術も用いることができる。製造後、前記雌型は洗浄される。
【0013】
次のステップ110では、液体ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)が前記雌型上にキャストされる。また、他の同等のキャスティング材料を使用してもよい。PDMSを雌型に浸透した後、該雌型内のPDMSを例えばカバ−スリップ、顕微鏡用スライド、シリコンウエハなどの基材で覆う。
【0014】
ステップ120では、雌型をホットプレート上、20分間85℃で加熱し、これによりPDMが該雌型や該基材上で硬化し、固化する。該基材と該硬化したPDMSは、ステップ130で該雌型から切り離され、それによって、基材上に微細構造を有する雄型PDMSレプリカが残る。
【0015】
図2(a)〜2(d)は、上記複製成形方法100で作られ、生物学的研究に用いるための異なる微細構造を示す。例えば、図2(a)と2(b)の雄型複製PDMSマイクロプラットフォームは細胞機構を詳しく調べるために用いることができる。一方で、図2(c)と2(d)の雄型複製PDMSマイクログリッドと雄型複製PDMSマイクロウェルは閉鎖環境内に閉じ込め、細胞活性を観察するのに用いることができる。本発明の実施態様は、例えば、細胞培養プレートやマイクロウェルプレートなどの微小生体関連物質保持用デバイスとして実施することができる。
本発明の実施態様は、ほんの一例として述べたものであって、以下の特許請求の範囲の範囲内であれば変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造の複製成形方法であって、
該方法は、
少なくとも一つの微小生体関連物質を保持するように構成される微細構造の雌型を形成し、
該雌型上に流動性を有する高分子材料をキャスティングし、
基材を該流動性を有する高分子材料と該雌型に当て、
該流動性を有する高分子材料を雌型内および基材上で固化し、ついで
基材および固化した高分子材料を雌型から切り離し、それによって、基材上に少なくとも1つの微細構造の雄型複製が残ることを含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つの微細構造がマイクログリッド、マイクロウェル、マイクロプラットフォーム、およびそれらの組合わせから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流動性を有する高分子材料がポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基材が、カバースリップまたは顕微鏡用スライドであることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかに記載の方法によって製造される微小生体関連物質保持用デバイス。
【請求項6】
前記デバイスが、細胞培養プレートまたは、マイクロウェルプレートであることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−511191(P2010−511191A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538554(P2009−538554)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001853
【国際公開番号】WO2008/064430
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(503206064)スウィンバーン ユニバーシティ オブ テクノロジー (2)
【Fターム(参考)】