説明

微粉砕ゴムの製造方法および装置並びにゴム組成物

【課題】リサイクルに供される加硫済みゴム12から高い割合で微粉砕ゴム36を容易に製造する。
【解決手段】加硫済みゴム12の粉砕に先立ち、該加硫済みゴム12に対して照射手段17から電子線等のエネルギー線を照射するようにしているが、このようにエネルギー線を照射すると、切断されていたゴムのポリマー分子鎖が再架橋されるため、ゴム内部の架橋密度が高くなってゴム硬度が上昇するとともに脆弱化し、粉砕が容易となる。しかも、前述した再架橋によりゴム表面の粘着性が低下するため、粉砕されたゴム同士の再凝集を効果的に抑制することができ、これにより、高い割合で微粉砕ゴム36を容易に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リサイクルに供される加硫済みゴムから微粉砕ゴムを製造する製造方法および装置並びに前記微粉砕ゴムを含有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃タイヤから取り出されたゴムチップや更生タイヤ用台タイヤを成形する際に除去されたトレッドゴムは、セメント工場等において燃料として利用されているが、近年、環境問題の高まりとともに、前述のようなゴムを粉末状とし、タイヤに再使用するいわゆるマテリアルリサイクルが行われるようになってきた。この場合には、ゴムチップ等を粉砕して微粉砕ゴムとする必要があるが、このような微粉砕ゴムの製造方法・装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−348179号公報
【0004】
このものは、リサイクルに供される加硫済みゴムからなるゴム原材料に固着防止剤を添加しながら粉砕手段によって荒粉砕、中粉砕および仕上げ粉砕を行い、荒粉砕ゴムから中粉砕ゴムを経て仕上げ粉砕ゴムに順次仕上げていく粉砕工程と、上記仕上げ粉砕ゴムを分級回収手段により分級して少なくともその一部を微粉砕ゴムとして回収する分級回収工程とを備えたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の微粉砕ゴムの製造方法・装置にあっては、ゴム原材料を荒粉砕、中粉砕および仕上げ粉砕する際、ゴム原料の表面が局部的に発熱して熱軟化するため、ポリマーの分子鎖が切断されて粉砕されたゴム表面の粘着性が上昇し、この結果、粉砕されたゴム同士が再凝集して、仕上げ粉砕された後の粉砕ゴムに占める微粉砕ゴムの割合を充分な値とすることが困難であるという課題があった。
【0006】
このような事態を抑制するため、従来では前述のように固着防止剤を添加しているが、この固着防止剤を多量に添加しても、微粉砕ゴムの割合を充分な値とすることが困難であった。また、ゴム原料を粉砕に先立ち加熱して劣化させることも考えられるが、このように加熱を行うと、粉砕は容易となるものの、前述と同様にポリマーの分子鎖切断が促進されるため、粘着性が上昇して粉砕されたゴム同士の再凝集がより促進されてしまい、実用的ではなかった。
【0007】
この発明は、高い割合で微粉砕ゴムを容易に製造することができる微粉砕ゴムの製造方法および装置並びにゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、第1に、リサイクルに供される加硫済みゴムに対しエネルギー線を照射する照射工程と、エネルギー線が照射された加硫済みゴムを微粉状になるまで粉砕する粉砕工程と、微粉状となった加硫済みゴムを分級し、該加硫済みゴムの中から微粉砕ゴムを回収する分級回収工程とを備えた微粉砕ゴムの製造方法により、達成することができる。
【0009】
第2に、リサイクルに供される加硫済みゴムに対しエネルギー線を照射する照射手段と、エネルギー線が照射された加硫済みゴムを微粉状になるまで粉砕する粉砕手段と、微粉状となった加硫済みゴムを分級し、該加硫済みゴムの中から微粉砕ゴムを回収する分級回収手段とを備えた微粉砕ゴムの製造装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、加硫済みゴムの粉砕に先立ち、該加硫済みゴムに対してエネルギー線を照射するようにしているが、このようにエネルギー線を照射すると、切断されていたゴムのポリマー分子鎖が再架橋されるため、ゴム内部の架橋密度が高くなってゴム硬度が上昇するとともに脆弱化し、粉砕が容易となる。しかも、前述した再架橋によりゴム表面の粘着性が低下するため、粉砕されたゴム同士の再凝集を効果的に抑制することができる。これにより、高い割合で微粉砕ゴムを容易に製造することができる。
【0011】
また、請求項3、4に記載のように構成すれば、エネルギー線を安価な費用で比較的安全に照射することができる。さらに、請求項5、6に記載のように構成すれば、加硫済みゴムを微粉状になるまで容易かつ高能率で粉砕することができる。また、請求項7に記載のように構成すれば、マテリアルリサイクル率を容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態1を示す概略正面図である。
【図2】この発明の実施形態2を示す粉砕手段の概略正面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1において、11は水平な搬送コンベアであり、この搬送コンベア11の上流部にはリサイクルに供されるチップ状、リボン状、粉末状等の加硫済みゴム12が供給される。ここで、前述の加硫済みゴム12としては、例えば、廃タイヤからビード、ベルト層、カーカス層等のタイヤ補強部材を除去した後、残ったゴム部を所定の大きさにカットしたゴムチップ、あるいは、更生タイヤ用台タイヤを成形するために使用済タイヤから除去したトレッドゴム等を挙げることができる。
【0014】
そして、前述の搬送コンベア11に供給された加硫済みゴム12は前記搬送コンベア11の作動により下流側(後方)に向かって搬送された後、該搬送コンベア11の下流端からその直下に設置された第1攪拌器15内に落下供給される。ここで、この第1攪拌器15内には固着防止剤も供給され、これにより、該第1攪拌器15内において加硫済みゴム12と添加された固着防止剤とが攪拌スクリュー等により均一に攪拌される。
【0015】
ここで、前述の固着防止剤としては、例えば炭酸カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛等の充填材や、カーボンブラック、タルク、シリカ等の補強材を用いることができる。そして、このように固着防止剤を添加すれば、加硫済みゴム12の表面がコーティングされ、後述のように粉砕された加硫済みゴム12同士が再凝集する事態をある程度抑制することができる。
【0016】
前記搬送コンベア11の上方には該搬送コンベア11によって搬送されている途中の加硫済みゴム12に対しエネルギー線を照射する照射手段17が設置されているが、この照射手段17としては、電子線、紫外線、X線、ガンマ線等を照射する照射機を用いることができ、その中でも、エネルギー線を安価な費用で比較的安全に照射することができる電子線照射機、紫外線照射機を用いることが好ましい。そして、このように加硫済みゴム12に対し電子線、紫外線等のエネルギー線を照射すると、切断されていたゴムのポリマー分子鎖が再架橋されるため、ゴム内部の架橋密度が高くなってゴム硬度が上昇するとともに脆弱化し、また、ゴム表面の粘着性が低下する。
【0017】
19は前記第1攪拌器15の直下に設置された第1粉砕手段であり、この第1粉砕手段19には第1攪拌器15から落下した加硫済みゴム12が供給される。ここで、前記第1粉砕手段19は、外周面が通常、凹凸面となった対をなす、ここでは一対の粉砕ロール20a、bを有し、これらの粉砕ロール20a、bの回転軸は平行で同一高さに配置している。そして、前述した粉砕ロール20a、bの凹凸面(外周面)は、例えば、ローレット切りにより形成された片綾目または両綾目、あるいは、外周面に形成されたスパイラル状の溝、または、外周面に対して溶射されたダイヤモンド粉等から構成することができる。なお、前記粉砕ロール20a、bの外周面は凹凸のない平滑面であってもよい。
【0018】
また、前記対をなす粉砕ロール20a、bの一方は周速度が他方より高速であり、両者の間で周速度が異なっている(回転速度に差がある)。このため、前述のように加硫済みゴム12が逆方向に回転している粉砕ロール20a、b間に供給されると、該加硫済みゴム12は粉砕ロール20a、b間を下方に向かって通過する際、粉砕ロール20a、bからせん断力を受けて粗粉砕される。
【0019】
このように加硫済みゴム12の粉砕を行うと、加硫済みゴム12の表面が局部的に発熱して熱軟化するため、ポリマーの分子鎖が切断されて、粉砕された加硫済みゴム12表面の粘着性が上昇し、この結果、粉砕された加硫済みゴム12同士が再凝集することがある。しかしながら、この実施形態では、前述のように加硫済みゴム12の粉砕に先立ち加硫済みゴム12に対して照射手段17によりエネルギー線を照射することで、ゴム硬度を上昇させるとともに脆弱化させたので、加硫済みゴム12の粉砕が容易となるとともに、粘着性の低下により、粉砕された加硫済みゴム12同士の再凝集を効果的に抑制することができる。なお、前記粉砕ロール20a、b内に冷水を循環させて粉砕ロール20a、bを冷却し、粉砕時における加硫済みゴム12の温度を低下させることで、加硫済みゴム12表面の粘着性をさらに低下させることもできる。
【0020】
23は前記第1粉砕手段19の直下に設置されたふるい器であり、このふるい機23は第1粉砕手段19によって粗粉砕された加硫済みゴム12を所定の大きさ(粒径)以下の加硫済みゴム12と、所定の大きさを超えている加硫済みゴム12とに選別する。そして、所定の大きさ以下の加硫済みゴム12は第1ダクト25によって第1攪拌器15の後方に設置された第2攪拌器27に搬送され、一方、所定の大きさを超えた加硫済みゴム12は第1戻しダクト26により第1攪拌器15に再び戻され、第1粉砕手段19により再度粉砕される。
【0021】
前記第2攪拌器27に供給された加硫済みゴム12は前記第1攪拌器15に供給された加硫済みゴム12と同様に、添加された固着防止剤と共に均一に攪拌された後、落下して第2攪拌器27の下方で第1粉砕手段19の後方に設置された第2粉砕手段28に供給される。この第2粉砕手段28は前記第1粉砕手段19と同様に外周面が凹凸面となった対をなす粉砕ロール29a、bを有し、これら粉砕ロール29a、bが逆方向に異なって周速度で回転しているとき、これら粉砕ロール29a、b間に第2攪拌器27から粗粉砕された加硫済みゴム12が供給されると、該加硫済みゴム12は粉砕ロール29a、bから粉砕ロール20a、bと同様のせん断力を受けて細粉砕され微粉状となる。
【0022】
このときも粉砕ロール20a、bによる粉砕時と同様に、加硫済みゴム12がエネルギー線の照射によりゴム硬度が上昇しているとともに脆弱化しているので、加硫済みゴム12の粉砕が容易となるとともに、粘着性が低下しているので、細粉砕された加硫済みゴム12同士の再凝集が効果的に抑制される。前述した第1、第2粉砕手段19、28は全体として粉砕手段30を構成するが、このように粉砕手段30(第1、第2粉砕手段19、28)として、周速度が異なり対をなす粉砕ロール20a、bおよび29a、bを用いるようにすれば、加硫済みゴム12を微粉状になるまで容易かつ高能率で粉砕することができる。
【0023】
なお、この実施形態においては、一対の粉砕ロールからなる第1、第2粉砕手段19、28を前後方向に離して2台設置したが、この発明においては、1台のみ設置してもよく、あるいは、前後方向に3台以上離して設置してもよい。また、一対の粉砕ロールを上下に複数段設置し、加硫済みゴム12を次々と細かく粉砕しながら落下させるようにしてもよく、このようにすれば、小型でありながら高能率で加硫済みゴム12を微粉状まで粉砕することができる。
【0024】
前述のようにして微粉状となった加硫済みゴム12は、その後、第2ダクト32により分級回収手段33に供給されるが、この分級回収手段33としては、例えば前述のふるい機23と同様のふるい機を用いることができる。そして、この分級回収手段33において加硫済みゴム12は所定メッシュ、例えば 200メッシュのフィルターにより規定の大きさ(粒径)以下である微粉砕ゴム36と、規定の大きさを超えている加硫済みゴム12とに分級(選別)され、規定の大きさ以下の微粉砕ゴム36はそのまま落下して回収タンク34に回収される。
【0025】
このように粉砕手段30(第1、第2粉砕手段19、28)に供給される加硫済みゴム12に対し予め照射手段17によってエネルギー線を照射し、加硫済みゴム12の脆弱化、粘着性の低下を図っているので、粉砕が容易となるとともに粉砕された加硫済みゴム12同士の再凝集が効果的に抑制され、第2粉砕手段28によって粉砕された後の細粉砕ゴムに占める微粉砕ゴム36の割合を容易に高めることができるとともに、固着防止剤の添加量を低減させることもできる。一方、規定の大きさを超えた加硫済みゴム12は第2戻しダクト35により第2攪拌器27に再び戻され、第2粉砕手段28により再度粉砕される。
【0026】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
搬送コンベア11の上流部に加硫済みゴム12を供給すると、該加硫済みゴム12は搬送コンベア11の作動によって下流側に向かって搬送されるが、この搬送の途中で搬送コンベア11上の加硫済みゴム12に対し照射手段17からエネルギー線が照射される。この結果、切断されていた加硫済みゴム12のポリマー分子鎖が再架橋され、ゴム内部の架橋密度が高くなってゴム硬度が上昇するとともに脆弱化する一方、ゴム表面の粘着性が低下する。
【0027】
次に、前記加硫済みゴム12は搬送コンベア11の下流端から第1攪拌器15内に落下し、この第1攪拌器15内において前記加硫済みゴム12と添加された固着防止剤とが均一に攪拌される。その後、第1攪拌器15から加硫済みゴム12が第1粉砕手段19に供給され、逆方向に回転している粉砕ロール20a、b間を下方に向かって通過するが、このとき、該加硫済みゴム12は粉砕ロール20a、bからせん断力を受けて粗粉砕される。
【0028】
このとき、前述のように加硫済みゴム12の粉砕に先立って加硫済みゴム12に対し照射手段17からエネルギー線を照射したので、ゴム硬度が上昇するとともに脆弱化し、加硫済みゴム12の粉砕が容易となるとともに、粘着性の低下により、粉砕された加硫済みゴム12同士の再凝集が効果的に抑制される。しかも、粉砕された加硫済みゴム12の表面の粘着性は低いため、該加硫済みゴム12が固着防止剤としての機能をある程度果たすことができ、これにより、前述した固着防止剤の添加量を低減することもできる。
【0029】
前述のようにして粗粉砕された加硫済みゴム12は、その後、ふるい機23により所定の大きさ以下のものと、所定の大きさを超えているものとに選別され、所定の大きさ以下の加硫済みゴム12は第1ダクト25によって第2攪拌器27に搬送される一方、所定の大きさを超えた加硫済みゴム12は第1攪拌器15に戻されて第1粉砕手段19により再度粉砕される。ここで、第2攪拌器27に供給された加硫済みゴム12は固着防止剤と共に均一に攪拌された後、第2粉砕手段28に供給され、該第2粉砕手段28の粉砕ロール29a、bにより細粉砕され微粉状となる。
【0030】
このようにして微粉状となった加硫済みゴム12は分級回収手段33に供給され、該分級回収手段33において規定の大きさ以下である微粉砕ゴム36と、規定の大きさを超えている加硫済みゴム12とに分級(選別)され、規定の大きさ以下の微粉砕ゴム36は回収タンク34に回収される一方、規定の大きさを超えた加硫済みゴム12は第2攪拌器27に再び戻され、第2粉砕手段28により再度粉砕される。
【0031】
前述のようにして分級回収された微粉砕ゴム36を用いてタイヤ用のゴム組成物を製造することができ、この場合には、新ゴムに対し前記微粉砕ゴム36および各種配合剤を所定の配合割合で配合した後、混練、熱入れ等を行う。ここで、前述の新ゴムとしては、前記微粉砕ゴム36のゴム成分と同様の天然ゴムや合成ゴムなどの各種のゴムを用いることができる。
【0032】
また、前述の各種配合剤としては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウムなどの充填剤を挙げることができ、その他に、通常ゴム工業界で用いられる、例えば、加硫剤、加硫促進剤、プロセスオイル、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸なども適宜含有させることが可能である。そして、このようなゴム物性に優れたゴム組成物をタイヤに用いれば、廃ゴムのマテリアルリサイクル率を向上させることができる。
【0033】
図2、3は、この発明の実施形態2を示す図である。この実施形態においては、粉砕手段を粗粉砕手段40と、該粗粉砕手段40の直下に設置された細粉砕手段41とから構成している。ここで、これら粗粉砕手段40、細粉砕手段41は共に後側面中央部に断面弧状の凹み42、43がそれぞれ形成された固定刃44、45と、前記固定刃44、45の凹み42、43に前側の一部が挿入された円柱状の粗粉砕ロール46、細粉砕ロール47とから構成され、前記粗粉砕ロール46、細粉砕ロール47は図示していない駆動源から駆動力を受けて水平な軸線を中心に矢印方向に回転することができる。
【0034】
また、前記凹み42、43には軸方向に延びる複数の溝50が上下方向に離れて設けられ、一方、粗粉砕ロール46、細粉砕ロール47の外周には軸方向一端から軸方向他端まで延びる互いに平行な複数の粉砕刃51が周方向に離れて多数設けられている。ここで、前記各粉砕刃51は、粉砕作業を能率的に行うためには、V字形に折れ曲がっていることが好ましい。
【0035】
そして、前述のような粗粉砕手段40の固定刃44と回転している粗粉砕ロール46との間に加硫済みゴム12が上方から供給されると、該加硫済みゴム12は固定刃44と粗粉砕ロール46との間を通過する際にせん断力等を受けて粗粉砕される。このようにして粗粉砕された加硫済みゴム12は粗粉砕手段40から落下した後、細粉砕手段41の固定刃45と回転している細粉砕ロール47との間に供給され、固定刃45と細粉砕ロール47との間を通過する際にせん断力等を受けて細粉砕され微粉状となる。
【0036】
このように粉砕手段を、弧状の凹み42、43が形成された固定刃44、45と、該固定刃44、45の凹み42、43に一部が挿入された回転する粗粉砕ロール46、細粉砕ロール47から構成し、これら固定刃44、45と粗粉砕ロール46、細粉砕ロール47との間に加硫済みゴム12を供給することにより、該加硫済みゴム12を粉砕するようにすれば、加硫済みゴム12を微粉状になるまで容易かつ高能率で粉砕することができる。なお、この実施形態では2台の粗粉砕手段40、細粉砕手段41で粉砕手段を構成したが、この発明においては、1台あるいは3台以上で構成するようにしてもよく、また、その配置に特に制限はない。
【実施例1】
【0037】
次に、試験例について説明する。この試験に当たっては、エネルギー線が照射されていない加硫済みゴムからなる従来ゴムと、エネルギー線として電子線を照射した加硫済みゴムからなる実施ゴム1と、エネルギー線として紫外線を照射した加硫済みゴムからなる実施ゴム2、3とを、それぞれ20kg準備した。ここで、従来ゴムおよび実施ゴム1、2は 3mm角のチップであり、一方、実施ゴム3は更生タイヤ用台タイヤを成形するために使用済タイヤから除去したトレッドゴムであった。
【0038】
次に、従来ゴムおよび各実施ゴムを前記実施形態1で説明した微粉砕ゴムの製造装置を用いて微粉状に粉砕したが、この際、従来ゴムでは炭酸カルシウムからなる固着防止剤を合計 3kg添加し、一方、実施ゴム1〜3では同様の固着防止剤をいずれも合計 1kg添加した。
【0039】
その後、微粉状となった加硫済みゴムを 200メッシュのフィルターを有する分級回収手段により分級回収したが、従来ゴムでは前記フィルターを通過した微粉砕ゴムを12kg(回収率52%)しか回収できなかったのに対し、実施ゴム1では固着防止剤を低減させた状態でも微粉砕ゴムを17kg(回収率81%)、実施ゴム2では18kg(回収率86%)、実施ゴム3では17kg(回収率81%)も回収することができ、本願発明の効果を確認することができた。ここで、前述の回収率は、微粉砕ゴムの回収量÷(原料ゴム量+固着防止剤量)× 100で求められた数値である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、リサイクルに供される加硫済みゴムから微粉砕ゴムを製造する産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
12…加硫済みゴム 17…照射手段
20a、b、29a、b…粉砕ロール
30…粉砕手段 33…分級回収手段
44、45…固定刃 46、47…粉砕ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルに供される加硫済みゴムに対しエネルギー線を照射する照射工程と、エネルギー線が照射された加硫済みゴムを微粉状になるまで粉砕する粉砕工程と、微粉状となった加硫済みゴムを分級し、該加硫済みゴムの中から微粉砕ゴムを回収する分級回収工程とを備えたことを特徴とする微粉砕ゴムの製造方法。
【請求項2】
リサイクルに供される加硫済みゴムに対しエネルギー線を照射する照射手段と、エネルギー線が照射された加硫済みゴムを微粉状になるまで粉砕する粉砕手段と、微粉状となった加硫済みゴムを分級し、該加硫済みゴムの中から微粉砕ゴムを回収する分級回収手段とを備えたことを特徴とする微粉砕ゴムの製造装置。
【請求項3】
前記エネルギー線は電子線である請求項2記載の微粉砕ゴムの製造装置。
【請求項4】
前記エネルギー線は紫外線である請求項2記載の微粉砕ゴムの製造装置。
【請求項5】
前記粉砕手段は周速度が異なり対をなす粉砕ロールを有し、これら粉砕ロール間に加硫済みゴムを供給することにより、該加硫済みゴムを粉砕するようにした請求項2〜4のいずれかに記載の微粉砕ゴムの製造装置。
【請求項6】
前記粉砕手段は、弧状の凹みが形成された固定刃と、該固定刃の凹みに一部が挿入された回転する粉砕ロールを有し、これら固定刃と粉砕ロールとの間に加硫済みゴムを供給することにより、該加硫済みゴムを粉砕するようにした請求項2〜4のいずれかに記載の微粉砕ゴムの製造装置。
【請求項7】
前記請求項1に記載された製造方法で製造された微粉砕ゴムを含有することを特徴とするゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−260208(P2010−260208A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111271(P2009−111271)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】