説明

微粒チタン酸バリウム系粉末

本発明は、下記化学式1で表されるチタン酸バリウム系粉末に関する。
[化学式1]
(Bar1r2)(Tir3r4)O
(前記Rは、イットリウム(Y)、ランタン族元素からなる群から選択される1種以上であり、前記Rは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)からなる群から選択される1種以上であり、前記Rは、リン(P)及びニオブ(Nb)からなり、前記Rは、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)からなる群から選択される1種以上であり、前記rとrは、互いに独立して0より大きく0.05以下の実数であり、前記rとrは、互いに独立して0より大きく0.1以下の実数であり、(x+r+r)/(y+r+r)は、0.85以上1.15以下である実数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒でありながら、誘電率が高く、温度による容量変化率が小さいチタン酸バリウム系粉末に関し、本発明によるチタン酸バリウム系粉末は、焼結密度が高く、誘電損失が低く、絶縁抵抗が大きい。また、本発明は、チタン酸バリウム系粉末を含む誘電体材料及び前記誘電体材料を含むセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウム(BaTiO、barium titanate)は、誘電率が高く、分極履歴(hysteresis)及び圧電効果に優れ、異種元素添加時に半導性を容易に付与できるため、セラミックコンデンサ(ceramic capacitor)、増幅器(amplifier)、記憶素子(memory)、変調器(modulator)、電気音響変換素子、アクチュエータ(actuator)、その他の圧電体、正特性サーミスタ(thermistor)、半導体などのセラミック電子部品素材として広範囲に使用されている。特に、正方晶(tetragonal)相のチタン酸バリウムは、強誘電体(ferroelectrics)であって誘電率及び分極履歴が非常に大きいため、積層セラミックコンデンサ(MLCC;multi−layer ceramic capacitor)に誘電体材料として広く使用される。
【0003】
近年、電子機器の軽薄短小化の急激な傾向に伴い、セラミック電子部品も小型化及び高容量化が望まれている。特に、積層セラミックコンデンサの場合、誘電体層の薄層化、高積層化が求められている。一層の誘電体層に含まれることができるチタン酸バリウムの大きさと個数に限界があるため、薄層化が進むにつれてチタン酸バリウムの微粒化が要求される。そのため、チタン酸バリウムを高容量の積層セラミックコンデンサに適用するために、微粒でありながら高い誘電率を維持でき、温度による容量変化率を最小化し、さらに、焼結密度、誘電損失、絶縁抵抗などを改善するための様々な方法が試みられてきた。
【0004】
例えば、韓国公開特許第2002−0048101号には、炭酸バリウム(BaCO)と二酸化チタン(TiO)からなる原料物質を混合/乾燥した後、これを一次か焼する段階と、前記一次か焼により得られた粉末を粗粉砕し、これにアクセプタ(acceptor)、ドナー(donor)、粒成長抑制剤及び焼結助剤からなる添加剤を前記粉末100g当たり1.6〜4.0gの範囲に混合して微粉砕する段階と、前記添加剤が混合された粉末を乾燥した後、これを二次か焼する段階と、前記二次か焼により得られた粉末を粗粉砕した後、これを微粉砕する段階と、を含んでなることを特徴とするX7R特性の積層チップコンデンサ用チタン酸バリウム粉末の製造方法が記載されている。しかし、高容量の積層コンデンサに適用するには粒子が粗く、温度による容量変化率が大きい。
【0005】
日本公開特許特開2008−156202号は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子と、該結晶粒子間に形成される粒界とからなる誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、マグネシウム(magnesium)をMgO換算で0.01〜0.06モルの割合で、イットリウム(yttrium)をY換算で0.0015〜0.03モルの割合で、マンガン(manganese)をMnO換算で0.0002〜0.03モルの割合で含有するとともに、前記チタン酸バリウム100質量部に対して、ニオブ(niobium)をNb換算で4.2〜33.3質量部を含有し、かつ前記結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmであることを特徴とする誘電体磁器を提供する。しかし、高容量の積層コンデンサに適用するには誘電率が低すぎる。
【0006】
通常、チタン酸バリウムは、粒径を小さく製造するほど強誘電性の正方晶相の含量が低下し、常誘電性(paraelectric)の立方晶(cubic)相の含量が増加するため、誘電率が減少して容量が低下するという問題がある。そのため、微粒でありながら、誘電率が高く、温度による容量変化率が小さく、セラミックコンデンサに適用するための焼結密度、誘電損失、絶縁抵抗などの電気的特性を満たすチタン酸バリウム系粉末を従来の技術では提供することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2002−0048101号
【特許文献2】日本公開特許特開2008−156202号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、誘電体材料を主原料とするセラミック電子部品、特に、高容量の積層セラミックコンデンサに使用される新しい微粒チタン酸バリウム系粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、微粒でありながら誘電率が高く、温度による容量変化率が小さいチタン酸バリウム系粉末を提供する。また、本発明によるチタン酸バリウム系粉末は、焼結密度が高く、誘電損失が低く、絶縁抵抗が大きい。
【0010】
本発明は、下記化学式1で表されるチタン酸バリウム系粉末に関する。
【0011】
[化学式1]
(Bar1r2)(Tir3r4)O
【0012】
(前記Rは、イットリウム(Y)、ランタン族元素からなる群から選択される1種以上であり、前記Rは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)からなる群から選択される1種以上であり、前記Rは、リン(P)及びニオブ(Nb)からなり、前記Rは、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)からなる群から選択される1種以上であり、前記rとrは、互いに独立して0より大きく0.05以下の実数であり、前記rとrは、互いに独立して0より大きく0.1以下の実数であり、(x+r+r)/(y+r+r)は、0.85〜1.15の実数である。)
【0013】
前記r、r、r及びrは、互いに独立して0より大きく0.03以下であることが好ましい。
【0014】
前記化学式1中、Rは、バリウム元素の位置に置換及び固溶されて陽イオン空孔(vacancy)を生成できる元素である。生成された陽イオン空孔は、還元雰囲気下で焼成時に発生する酸素イオンの空孔を補償して絶縁抵抗の劣化を防止する。ほとんどの希土類元素がこれに含まれることができるが、一部の希土類元素は、拡散速度が相異しているため前記の効果を得ることができず、むしろ異常粒成長を誘発する可能性がある。従って、Rはイットリウム及びランタン族元素からなる群から選択された1種以上の元素であることが好ましく、Rはイットリウムであることがさらに好ましい。
【0015】
前記化学式1中、Rは、Baのような2族元素であって、温度による誘電率の変化を平坦化し、信頼性を向上させる。また、表面層に存在するBa元素を置換して固溶を起こし、粒成長及び焼結密度を制御する。Rは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムからなる群から選択された1種以上の元素であることが好ましく、Rは、マグネシウムであることがさらに好ましい。
【0016】
とRは、Ba元素を置換しているか、表面に非晶質の酸化物形態で存在する。しかし、含まれる量が多すぎると、二次相の生成を誘発したり、結晶質の酸化物として析出され、半導性が付与され電気的特性及び信頼性が悪化するため、rは0より大きく0.05以下、rは0より大きく0.1以下であることが好ましく、r及びrは0より大きく0.03以下であることがさらに好ましい。
【0017】
前記化学式1中、Rは、相対的に小さなイオン半径と大きな拡散係数を有するため、表面層に固溶される元素より先に固溶され、拡散障壁として作用することにより、表面層に存在すべき元素が粒子内部で拡散することを抑制する機能を行う。従って、誘電体の電気的特性を向上させ、寿命及び焼結性を改善し、誘電率の経時変化を減少する機能を行う。従来は、ニオブが主に使用されたが、ニオブの含量が多くなるほど誘電率が急激に低下するだけでなく、半導性が生じて電気的特性及び信頼性が低下するため好ましくない。その代わりに、ニオブの一定量をリンに置換することにより、少量のニオブを使用しても前記効果を充分に発現することができる。従って、Rは、ニオブ及びリンをともに含むことが好ましい。
【0018】
本発明は、前記のようにニオブとリンを両方とも含むことを特徴とする。より具体的に、前記Rのニオブとリンのモル比は1:0.1〜2.0であることを特徴とする。ニオブの代わりに添加したリンの量が少なすぎたり多すぎる場合、効果が現われなかったり電気的特性がむしろ悪化するため、ニオブに対するリンのモル比は0.1以上2.0以下であることが好ましい。
【0019】
前記化学式1中、Rは、温度による容量変化率を調節し、誘電損失及び絶縁抵抗などの誘電体の電気的特性を向上させる機能を行う元素である。Rは、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ジルコニウム、タンタルからなる群から選択された1種以上の元素であることが好ましく、Rは、アルミニウム、バナジウム、クロム及びマンガンを含むことがさらに好ましい。
【0020】
本発明は、前記のように、好ましくは、前記Rはイットリウム(Y)であり、前記Rはマグネシウム(Mg)であり、前記Rはリン(P)及びニオブ(Nb)であり、前記Rはアルミニウム(Al)、バナジウム(V)、クロム(Cr)及びマンガン(Mn)であるチタン酸バリウム系粉末を提供する。
【0021】
及びRは、Ti元素を置換したり、格子間位置に侵入したり、表面に非晶質の酸化物形態で存在する。しかし、含まれる量が多すぎると、二次相の生成を誘発したり、結晶質の酸化物として析出され、半導性が付与され電気的特性及び信頼性が悪化するため、rは0より大きく0.05以下、rは0より大きく0.1以下であることが好ましく、r及びrは0より大きく0.03以下であることがさらに好ましい。
【0022】
また、(x+r+r)/(y+r+r)の値が0.85以上1.15以下になるように調節することが重要である。より具体的には、バリウム、チタン、R、R、R及びRの元素の(x+r+r)/(y+r+r)が0.85以上1.15以下となる実数の条件では、R、R、R及びRの元素が二次相を生成せず、かつ、チタン酸バリウムの格子内に完全に固溶され、表面層に非晶質の酸化物形態で存在できる構成の範囲内に存在する。従って、前記範囲から外れると、低温及び高温における誘電率の変化が大きくなり、焼結性が低下し、信頼性及び耐圧などの電気的特性が大幅に低下される。また、0.95〜1.05の範囲に調節することがさらに好ましい。
【0023】
本発明で前記チタン酸バリウム系粉末に含まれるバリウム元素は、チタン元素1モル当たり0.995〜1.005モルが含まれることを特徴とする。0.995より少ない場合、チタン塩のうち一部がチタン酸バリウムに転換されず残留するようになり、異常粒成長を誘発して、全体の正方晶性を阻害する。また、1.005より多い場合、過量のバリウム塩がチタン酸バリウム系粒子の表面に存在するようになり、粒子間の過度の凝集を誘発し、イオンの円滑な拡散を抑制するため、正方晶相の含量を低下させる可能性がある。
【0024】
本発明による前記化学式1のチタン酸バリウム系粉末は、添加元素により粒成長が制御されるため、微粒に製造することが容易である。特に、ニオブ及びリンにより立方晶相の生成を促進する元素が粒子内部に固溶されることを抑制することにより、微粒であるにもかかわらず、正方晶相の含量が60〜100wt%である強誘電性を維持して高い比誘電率を有することができる。従って、本発明によるチタン酸バリウム系粉末は、正方晶相の割合が全体の60〜100wt%であることを特徴とし、好ましくは、粒子の大きさが10〜500nm、比表面積が2〜35m/gであることを特徴とする。
【0025】
本発明によるチタン酸バリウム系粉末は、正方晶相の含量が高く、強誘電性を有するため、25℃で比誘電率が1,500〜3,000であることが好ましい。また、本発明によるチタン酸バリウム系粉末の比誘電率εは−55〜125℃で下記式1を満す。即ち、EIAで規定したセラミックコンデンサの規格のうちCLASSII(高誘電率系)X7R規格コードによる特性を満たす。
【0026】
[式1]
0.85×ε≦ε≦1.15×ε
(前記εは、25℃での比誘電率である。)
【0027】
本発明によるチタン酸バリウム系粉末は、セラミックコンデンサ、増幅器、記憶素子、変調器、電気音響変換素子、アクチュエータ、圧電体、正特性サーミスタ、半導体などのチタン酸バリウムを主原料とする全てのセラミック電子部品に使用されることができるが、誘電体材料用に使用されることが好ましく、セラミックコンデンサの原料として使用することがさらに好ましく、積層セラミックコンデンサの原料として使用することが最も好ましい。
【0028】
本発明によるチタン酸バリウム系粉末は、酸化物や炭酸塩を混合して焼成する固相法、原料の水溶液とアルカリ水溶液を混合して水熱処理を施した後に焼成する水熱法、水酸塩または有機酸塩を水系で合成した後に焼成する水酸塩法または有機酸塩法、アルコキシド混合物を加水分解した後に焼成するアルコキシド法などを用いて製造されることができるが、好ましくは、下記製造方法により製造されることができる。以下、本発明によるチタン酸バリウム系粉末の好ましい製造方法をより具体的に説明する。
【0029】
本発明による化学式1のチタン酸バリウム系粉末の好ましい製造方法は、
a)炭酸バリウム、チタン塩、水を混合して懸濁液を製造する段階と、
b)前記a)段階の混合懸濁液を湿式で粉砕及び乾燥して炭酸バリウム及びチタン塩が含まれた混合粉末を製造した後、300〜900℃で一次熱処理を施す段階と、
c)前記b)段階の一次熱処理を施した混合粉末、イットリウム(Y)、ランタン族元素、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、リン(P)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)及びタンタル(Ta)からなる群から選択された1種以上の元素を含む酸化物、塩化物、炭酸塩、リン酸塩、窒酸塩、硫酸塩、酢酸塩またはこれらの混合物、水を混合して懸濁液を製造する段階と、
d)前記c)段階の混合懸濁液を湿式で粉砕及び乾燥して混合粉末を製造した後、700〜1,100℃で二次熱処理を施してチタン酸バリウム系粉末を製造する段階と、を含む。
【0030】
前記a)段階でチタン塩は、下記化学式2で表される。
【0031】
[化学式2]
TiO・n(HO)
(前記nは、範囲が0〜2である実数である。)
【0032】
理論上、nが0である場合二酸化チタンであり、nが1ある場合メタチタン酸、nが2である場合オルトチタン酸である。しかし、実際には、最近チタン酸バリウムの原料として使用されるチタン化合物が益々微粒化するに伴い、このような境界が曖昧になっている。特に、四塩化チタン、二塩化チタン、硫酸チタニルから製造されるチタン塩は、初期に粒子の形状を有しない極めて微粒の非晶質相から出発し、結晶化が進行されるにつれてnの値が益々小さくなる。
【0033】
前記製造方法において炭酸バリウム及びチタン塩は微粒であるほど有利である。例えば、前記チタン塩の場合、nが0に近いほど結晶化が強く、結晶子が成長するにつれて粒子の大きさが粗大化する可能性がある。従って、nが0.5以上の値を有することが好ましく、この場合、比表面積は、100m/g以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
高容量の積層セラミックコンデンサに要求される高誘電率及び温度による容量変化率を満たし、詳細には、EIAで規定したセラミックコンデンサの規格のうち、CLASSII(高誘電率系)X7R規格コードによる特性に符合する効果を有する。また、焼結密度、誘電損失、絶縁抵抗に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1により製造されたチタン酸バリウム系粉末のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の具体的な説明のために例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
a)炭酸バリウム及びチタン塩が含まれた懸濁液の製造
反応槽に純水422Lを投与して、チタン塩(Millennium Inorganic Chemicals製、TiO.0.84(HO))104.0kgと、炭酸バリウム(BaCO)216.3kgを投与して攪拌し、懸濁液を製造した。
【0038】
b)炭酸バリウム及びチタン塩が含まれた混合粉末の製造及び熱処理
前記a)段階の懸濁液を二酸化ジルコニウムを主原料とする直径0.3mmの球状ビーズを装入したビーズミルを用いて充分に粉砕及び混合し、懸濁液を少量取って乾燥した後、XRF法でモル比を測定した結果、Ba/Tiモル比が1.001であった。粉砕及び混合が完了した前記懸濁液を噴霧乾燥して炭酸バリウム及びチタン塩が含まれた混合粉末を製造した。この混合粉末に、500℃で4時間の大気雰囲気下で一次熱処理を施した。
【0039】
c)添加元素が含まれた懸濁液の製造
前記b)段階の熱処理粉末に、三酸化イットリウム(Y)、炭酸マグネシウム(MgCO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化リン(P)、三酸化アルミニウム(Al)、五酸化バナジウム(V)、三酸化クロム(Cr)及び二酸化マンガン(MnO)を下記表1のような構成を有するようにそれぞれ秤量して添加し、純水を投与して懸濁液を製造した。
【0040】
d)添加元素が含まれた混合粉末の製造及び最終熱処理
前記c)段階の懸濁液をb)段階のように湿式ビーズミルで充分に粉砕及び混合して、噴霧乾燥した後、電気炉に装入して大気雰囲気下で950℃で2時間か焼してチタン酸バリウム系粉末を製造した。XRF法でモル比を測定した結果、下記表1と同一の構成であることを確認した。製造したチタン酸バリウム系粉末の物性を分析して下記表2に示した。BET法で比表面積を測定し、5万倍の倍率のSEMイメージを用いて粒子の平均大きさを測定し、この際、粒子の大きさは面積が等しい円の直径で計算した。また、リートベルト法を用いた多相解釈により正方晶相の割合を分析した。
【0041】
[実施例2〜9]
前記実施例1と同一に行うが、前記c)段階で添加元素の添加量を下記表1のように異にして行い、その他の工程は、前記実施例1と同様に行った。添加元素の添加量に応じてそれぞれ製造したチタン酸バリウム系粉末を実施例1のように物性を分析して下記表2に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
[試験例1]
前記実施例1〜9から得られたチタン酸バリウム系粉末に、炭酸バリウムと二酸化ケイ素粉末をチタン酸バリウム系粉末100モル当たりそれぞれ1モル、1.5モルになるように添加した。また、エタノール及びトルエンを体積基準1:1に混合した混合液を溶媒とし、直径3mmの二酸化ジルコニウムビーズを用いたボールミルで15時間湿式混合し、前記固形粉が充分に分散した懸濁液を製造した。この懸濁液に、ポリビニル系バインダーとしてポリビニルブチラルを前記チタン酸バリウム系粉末の10wt%になるように添加した後、また、ボールミルで10時間湿式混合し、テープキャスト法を用いて厚さ20μmのシートを製造した。製造されたシートを積層して加圧し、横10mm、縦10mm、高さ1mmの成形体を製造した。前記成形体を窒素雰囲気下の450℃で12時間脱バインダーした後、10−11の水素分圧雰囲気下の1200℃で2時間維持した後、50ppmの酸素雰囲気下の1,000℃で3時間の再酸化して焼成試片を製作した。前記焼成試片の上面と下面にガリウム−インジウム固溶体ペースト(Sigma−Aldrich Corporation製、Gallium−Indium EUTECTIC、99.99+%)を塗布して乾燥した後、25℃で誘電率、誘電損失、絶縁抵抗を測定し、温度を変化させて温度による容量の変化率を測定した。前記電気特性の測定条件及び装置は、下記表3に示し、その結果を下記表4に示しており、EIAで規定したセラミックコンデンサの規格のうち、CLASSII規格コードによるX7R特性を満すことが確認できた。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるチタン酸バリウム系粉末。
[化学式1]
(Bar1r2)(Tir3r4)O
(式中Rは、イットリウム(Y)、ランタン族元素からなる群から選択される1又は2種以上の元素であり、Rは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)からなる群から選択される1又は2種以上の元素であり、Rは、リン(P)及びニオブ(Nb)からなり、Rは、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)からなる群から選択される1種以上であり、rとrは、互いに独立して0より大きく0.05以下の実数であり、rとrは、互いに独立して0より大きく0.1以下の実数であり、(x+r+r)/(y+r+r)は、0.85以上1.15以下である実数である。)
【請求項2】
、r、r及びrは、互いに独立して0より大きく0.03以下である請求項1に記載のチタン酸バリウム系粉末。
【請求項3】
のニオブとリンのモル比は1:0.1〜2.0であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム系粉末。
【請求項4】
はイットリウム(Y)であり、Rはマグネシウム(Mg)であり、Rはリン(P)及びニオブ(Nb)であり、Rはアルミニウム(Al)、バナジウム(V)、クロム(Cr)及びマンガン(Mn)である請求項1に記載のチタン酸バリウム系粉末。
【請求項5】
バリウム元素は、チタン元素1モル当たり0.995〜1.005モル含まれることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム系粉末。
【請求項6】
正方晶相の割合が全体の60〜100wt%であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム系粉末。
【請求項7】
粒子の大きさが10〜500nmであり、比表面積が2〜35m/gであることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム系粉末。
【請求項8】
25℃での比誘電率が1,500〜3,000であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム系粉末。
【請求項9】
比誘電率εが、−55〜125℃において下記式1を満たす請求項1に記載のチタン酸バリウム系粉末。
[式1]
0.85×ε≦ε≦1.15×ε
(前記εは、25℃での比誘電率である。)
【請求項10】
誘電体材料用、セラミック電子部品用であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載のチタン酸バリウム系粉末。

【図1】
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【公表番号】特表2012−520232(P2012−520232A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553961(P2011−553961)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001564
【国際公開番号】WO2010/104358
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(595137310)ハンファ ケミカル コーポレーション (31)
【Fターム(参考)】