微粒子の製造装置および微粒子の製造方法
【課題】粒径が小さく、粒径のばらつきが小さい微粒子を製造することができる製造装置および微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】微粒子の製造装置は、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給する原料供給手段と、内部に熱プラズマ炎が発生されるものであり、原料供給手段により間歇的に供給される原料を熱プラズマ炎で蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、プラズマトーチの内部に熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生手段とを有する。
【解決手段】微粒子の製造装置は、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給する原料供給手段と、内部に熱プラズマ炎が発生されるものであり、原料供給手段により間歇的に供給される原料を熱プラズマ炎で蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、プラズマトーチの内部に熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いたナノサイズの微粒子の製造装置および微粒子の製造方法に関し、特に、得られる微粒子の粒径が小さく、粒径のばらつきが小さい微粒子の製造装置および微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子等の微粒子は、半導体基板、プリント基板、各種電気絶縁部品などの電気絶縁材料、切削工具、ダイス、軸受などの高硬度高精度の機械工作材料、粒界コンデンサ、湿度センサなどの機能性材料、精密焼結成形材料などの焼結体の製造、エンジンバルブなどの高温耐摩耗性が要求される材料などの溶射部品製造、さらには燃料電池の電極、電解質材料および各種触媒などの分野で用いられている。このような微粒子を用いることにより、焼結体および溶射部品などにおける異種セラミックス同士または異種金属同士の接合強度および緻密性、更には機能性を向上させている。
【0003】
このような微粒子を製造する方法の一つに、気相法がある。気相法には、各種のガス等を高温で化学反応させる化学的方法と、電子ビームまたはレーザなどのビームを照射して物質を分解・蒸発させ、微粒子を生成する物理的方法とがある。
【0004】
上記気相法の中の一つとして、熱プラズマ法がある。熱プラズマ法は、熱プラズマ中で原材料を瞬時に蒸発させた後、急冷凝固させ、微粒子を製造する方法である。また、熱プラズマ法は、クリーンで生産性が高く、高温で熱容量が大きいため高融点材料にも対応可能であり、他の気相法に比べて複合化が比較的容易であるといった多くの利点を有する。このため、熱プラズマ法は、微粒子を製造する方法として積極的に利用されている。
【0005】
従来の熱プラズマ法を用いた微粒子の製造方法では、原材料物質を粉末状にし、この粉末状にされた原材料(粉末原材料、粉体)をキャリアガス等と共に、分散させて直接熱プラズマ中に投入することにより、微粒子を製造している。
【0006】
また、特許文献1には、微粒子製造用材料を可燃性材料中に分散させたスラリー、または微粒子製造用材料を分散媒と可燃性材料とを用いたスラリーを、液滴化させて連続的に熱プラズマ炎中に導入して、気相状態の混合物にし、気相状態の混合物を急冷することにより、微粒子を生成する微粒子の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−102737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の微粒子の製造方法では、ナノサイズの微粒子を製造することができるものの、得られる微粒子のばらつきをコントロールすることができないという問題点がある。また、より小さな微粒子を生成するのが困難であるという問題点がある。
【0009】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、粒径が小さく、粒径のばらつきが小さい微粒子を製造することができる製造装置および微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、微粒子の製造装置であって、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給する原料供給手段と、内部に前記熱プラズマ炎が発生されるものであり、前記原料供給手段により間歇的に供給される前記原料を前記熱プラズマ炎で蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、前記プラズマトーチの内部に前記熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生手段とを有することを特徴とする微粒子の製造装置を提供するものである。
【0011】
前記プラズマ発生手段は、前記プラズマトーチに設けられたコイルに前記熱プラズマ炎を発生させるための電流を供給するとともに、前記コイルへの電流を振幅変調させることができる電源部を備えるものであり、前記プラズマ発生手段は、前記コイルへの電流を振幅変調させることにより前記熱プラズマ炎を周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にさせ、前記熱プラズマ炎の温度状態が時間変調された変調誘導熱プラズマ炎を発生させるものであることが好ましい。
【0012】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析する分光分析手段と、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記プラズマ発生手段に、前記原料が前記変調誘導熱プラズマ炎に供給されたときに、前記コイルへの電流の振幅を相対的に大きくし、前記変調誘導熱プラズマ炎を高温状態させる制御部とを有することが好ましい。
【0013】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析する分光分析手段と、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記原料供給手段に、前記コイルへの電流の振幅が相対的に大きくなり、前記変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときに、前記原料を前記変調誘導熱プラズマ炎に供給させる制御部とを有することが好ましい。
【0014】
また、前記原料供給手段は、例えば、前記原料を粒子状態に分散させ、前記粒子状態に分散された前記原料を間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである。この場合、前記原料は、気体により粒子状態に分散される。
さらに、前記原料供給手段は、例えば、前記原料を分散媒中に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである。
さらにまた、前記原料供給手段は、例えば、前記原料を分散媒中に分散させてコロイド溶液にし、前記コロイド溶液を液滴化して間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである。
また、前記原料供給手段は、例えば、前記原料を溶媒中に溶解させて溶液にし、前記溶解させた溶液を液滴化して間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである。
【0015】
前記電源部において前記コイルへの電流を振幅変調する際には、前記コイルへの電流を予め定められている波形により振幅変調させることが好ましい。
前記電源部において前記コイル電流を振幅変調する際に用いる予め定められている波形として、矩形波、三角波、のこぎり波、逆のこぎり波、もしくは正弦波を含む曲線を含む繰り返し波からなる波形を用いることができる。
前記コイルへの電流を振幅変調させる前記所定時間間隔は、マイクロ秒から数秒オーダーであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、微粒子の製造方法であって、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給して、前記原料を蒸発させ気相状態の混合物とし、この混合物を冷却して微粒子を製造することを特徴とする微粒子の製造方法を提供するものである。
【0017】
前記熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されて周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態とにされる変調誘導熱プラズマ炎に、前記原料を間歇的に供給することが好ましい。
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析し、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記原料が前記変調誘導熱プラズマ炎に供給されたときに、前記変調誘導熱プラズマ炎を高温状態することが好ましい。
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析し、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときに、前記原料を前記変調誘導熱プラズマ炎に供給することが好ましい。
【0018】
また、前記原料は、例えば、粒子状態に分散されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される。この場合、前記原料は、気体により粒子状態に分散される。
さらに、前記原料は、例えば、分散媒中に分散されてスラリーにされ、前記スラリーが液滴化されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される。
さらにまた、前記原料は、例えば、分散媒中に懸濁されてコロイド溶液にされ、前記コロイド溶液が液滴化されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される。
また、前記原料は、例えば、溶媒中に溶解された溶液にされ、前記溶解させた溶液が液滴化されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の微粒子の製造装置および製造方法によれば、粒径が小さく、しかも粒径のばらつきが小さい微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置の原料供給部の概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置のプラズマトーチを示す模式的部分断面図である。
【図4】パルス変調時のコイル電流の時間変化を示すグラフである。
【図5】(a)は、コイル電流を変調するためのパルス制御信号を示すグラフであり、(b)は、バルブの開閉タイミングを示すグラフであり、(c)は、原料の供給を示すグラフである。
【図6】変調誘導熱プラズマ炎の分光分析の結果の一例を示すグラフである。
【図7】(a)は、バルブへの入力波形信号を示すグラフであり、(b)は、変調誘導熱プラズマ炎のTiおよびTiOの放射強度の時間変化の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置の原料供給部の他の例を示す模式図である。
【図9】(a)〜(c)は、フィルターで回収した実験例1〜3の微粒子のSEM画像を示す(写真代用)図である。
【図10】(a)〜(c)は、フィルターで回収した実験例1〜3の微粒子の粒径度数分布を示すグラフである。
【図11】実験例4〜9の微粒子の粒径を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置を示す模式図である。
【0022】
図1に示す微粒子の製造装置(以下、単に製造装置という)10は、例えば、粉体原料を用いてナノサイズの微粒子を製造するものである。この粉体原料としては、例えば、Ti粉末が用いられる。
製造装置10は、原料供給部12と、高周波変調誘導熱プラズマ発生部(プラズマ発生手段)14と、プラズマトーチ16と、チャンバー18と、回収部20と、間歇供給部22と、プラズマ分光分析部(分光分析手段)28と、DSP(制御部)30と、プラズマガス供給部32とを有する。原料供給部12と間歇供給部22とにより原料供給手段が構成される。
【0023】
原料供給部12は間歇供給部22に接続されている。この間歇供給部22とプラズマトーチ16とは、中空状の水冷プローブ24を介して接続されている。また、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14により、プラズマトーチ16の内部に変調誘導熱プラズマ炎100が発生されるとともに、熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されて、変調誘導熱プラズマ炎100が周期的に高温状態と低温状態とになる。
また、製造装置10では、プラズマ分光分析部28により、変調誘導熱プラズマ炎100について分光分析され、DSP30により変調誘導熱プラズマ炎100の放射光のうち、原料に由来する波長の光の強度に基づいて高周波変調誘導熱プラズマ発生部14により変調誘導熱プラズマ炎100の温度状態が時間変調される。
【0024】
原料供給部12は、間歇供給部22とともに、微粒子製造用の原料をプラズマトーチ16の内部で発生する熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100中に供給するためのものである。この原料供給部12は、搬送管82(図2参照)を介してプラズマトーチ16の上部に設けられた間歇供給部22のバルブ22cに接続されている。
【0025】
例えば、微粒子製造用の原料に粉体を用いた場合、プラズマトーチ16内の熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100中に原料が供給される際には原料が分散されている必要がある。このため、原料は、キャリガスに分散させて供給される。この場合、例えば、原料供給部12は、粉体原料を分散状態に維持しつつ、定量的にプラズマトーチ16内部の熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100中に供給するものである。このような機能を有する原料供給部12としては、例えば、本出願人の出願に係る特許第3217415号公報に開示されている粉体分散装置のような装置が利用可能である。
【0026】
原料供給部12は、図2に示すように、主に、粉体原料を貯蔵する貯蔵槽42と、粉体原料を定量搬送するスクリューフィーダ60と、スクリューフィーダ60で搬送された粉体原料が最終的に散布される前に、これを一次粒子の状態に分散させる分散部70とから構成されている。
【0027】
貯蔵槽42の内部には、貯蔵された粉体原料44の凝集を防止するために、攪拌軸46とそれに接続された攪拌羽根48とが設けられる。攪拌軸46は、オイルシール50aと軸受け52aとによって、貯蔵槽42内で回転可能に配設されている。また、貯蔵槽42外部にある攪拌軸46の端部は、モータ54aに接続されており、図示しない制御装置によってその回転が制御される。
【0028】
貯蔵槽42の下部には、スクリューフィーダ60が設けられ、粉体原料44の定量的な搬送を可能にする。スクリューフィーダ60は、スクリュー62と、スクリュー62の軸64と、ケーシング66と、スクリュー62の回転動力源であるモータ54bとを含み構成されている。スクリュー62および軸64は、貯蔵槽42内の下部を横切って設けられている。軸64は、オイルシール50bと軸受け52bとによって貯蔵槽42内で回転可能に配設されている。
【0029】
また、貯蔵槽42外部にある軸64の端部は、モータ54bに接続されており、図示しない制御装置によってその回転が制御される。さらに、貯蔵槽42の下部の開口部と、後述する分散部70とを接続し、スクリュー62を包む筒状通路であるケーシング66が設けられる。ケーシング66は、後述する分散部70の内部途中まで延設されている。
【0030】
図2に示すように、分散部70は、ケーシング66の一部に外挿固定された外管72と、軸64の先端部に植設された回転ブラシ56を有し、スクリューフィーダ60によって定量搬送された粉体原料44を一次分散させることができる。
外管72の外挿固定された端部と反対の端部は、その形状が円錐台形状であり、その内部にも円錐台形状の空間である粉体分散室74を有する。また、その端部には分散部70で分散された粉体原料を搬送する搬送管82が接続される。この搬送管82は、バルブ22cに接続されている。
【0031】
外管72の側面には気体供給口78が設けられており、また、ケーシング66の外壁と外管72の内壁とによって設けられる空間は、供給された気体が通過する気体通路80としての機能を有する。
回転ブラシ56は、ナイロン等の比較的柔軟な材質、あるいは鋼線等の硬質な材質からなる針状部材で、ケーシング66の先端部近傍の内部から粉体分散室74の内部まで、軸64の径外方に延出して密集植設されることによって形成される。
【0032】
分散部70では、分散・搬送用の気体(キャリアガス)が、図示しない圧力気体供給源から気体供給口78、気体通路80を通って回転ブラシ56の径方向外側から回転ブラシ56に噴出され、定量的に搬送される粉体原料44が、回転ブラシ56の針状部材間を通過することで一次粒子に分散される。なお、キャリアガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)ガス,窒素ガス、水素ガス等が単独、またはこれらを適宜組み合わせて用いられる。
【0033】
搬送管82は、その一端は外管72と接続され、他端はプラズマトーチ16に接続される。また、搬送管82は、その管径の10倍以上の管長を有し、少なくとも途中に分散粉体を含む気流が流速20m/sec以上になる管径部分を設けることが好ましい。これにより分散部70で一次粒子の状態に分散された粉体原料44の凝集を防止し上記の分散状態を維持したまま、粉体原料44をバルブ22cに供給し、バルブ22cから水冷プローブ24を経てプラズマトーチ16内部に散布される。
例えば、微粒子製造用の原料として使用する粉体原料は、熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100中で蒸発させることができるものであり、その粒径が100μm以下であることが好ましい。
【0034】
プラズマトーチ16は、内部に熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100が発生されるものであり、変調誘導熱プラズマ炎100中に間歇的に供給される原料を、熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100で蒸発させて気相状態の混合物とするものである。
なお、熱プラズマ炎とは、温度状態が時間変調されてないプラズマ炎のことであり、変調誘導熱プラズマ炎とは、熱プラズマ炎が所定時間間隔で周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にされたもの、すなわち、熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されたものである。
図3に示すように、プラズマトーチ16は、石英管16aと、その外側を取り巻く高周波発振用コイル16bとで構成されている。プラズマトーチ16の上部には、水冷プローブ24が挿入される供給口16cがその中央部に設けられており、プラズマガス供給口16dがその周辺部(同一円周上)に形成されている。
水冷プローブ24により、例えば、原料粉末であるTi粒子と、Arガス等のキャリアガスとがプラズマトーチ16内に供給される。
【0035】
プラズマガス供給口16dは、例えば、図示しない配管によりプラズマガス供給部32が接続されている。プラズマガス供給部32は、プラズマガス供給口16dを介してプラズマトーチ16内にプラズマガスを供給するものであり、例えば、2種類のプラズマガスが準備されている。プラズマガスとしては、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、水素ガス、酸素ガス等が単独または適宜組み合わせて用いられる。
プラズマトーチ16内にプラズマガスがある状態で、高周波発振用コイル16bに、高周波誘導熱プラズマ発生部14により振幅変調された高周波電流が印加されると、プラズマトーチ16の内部に変調誘導熱プラズマ炎100が発生する。また、高周波誘導熱プラズマ発生部14により、高周波発振用コイル16bに単に高周波電流が印加されると、プラズマトーチ16の内部に熱プラズマ炎が発生する。なお、プラズマガスに酸素ガスが含まれる場合、プラズマトーチ16内は酸素雰囲気になる。
【0036】
また、プラズマトーチ16の石英管16aの外側は、同心円状に形成された石英管16eで囲まれており、石英管16aと16eの間に冷却水16fを循環させて石英管16aを水冷し、プラズマトーチ16内で発生した変調誘導熱プラズマ炎100(熱プラズマ炎)により石英管16aが高温になりすぎるのを防止している。
【0037】
プラズマトーチ16においては、例えば、内径75mm,長さ330mmの石英管16aが用いられる。
また、プラズマ発生用誘導コイル16bは、外径130mm,コイル導体径14mmφ,コイル長155mmの8ターンのものを使用している。水冷プローブ24は、その先端が、例えば、プラズマ発生用誘導コイル16bの4、5ターン目の間にある。
【0038】
このコイル長155mmは一般的なものに比べ約3倍程度長い。このように、コイル長を長くすることの利点としては、軸方向に長く強い電磁場を発生させることができるため、それにより発生するプラズマも軸方向に長くなり、トーチヘッドから投入される原料粉体の蒸発に有利な特徴を持っている。
【0039】
プラズマトーチ16の下流部には、水冷のチャンバー18が接続されている。このチャンバー18は、原料が熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100で蒸発されてなる気相状態の混合物を急冷し、微粒子を生成するとともに、得られた微粒子を捕集するものである。
図1に示すように、チャンバー18は、プラズマトーチ16に近い方から、上流チャンバー18aがプラズマトーチ16と同軸方向に取り付けられている。また、上流チャンバー18aと垂直に下流チャンバー18bを設け、さらに下流には,生成された微粒子を捕集するための所望のフィルター20aを備える回収部20が設けられている。製造装置10において、微粒子の回収場所は、フィルター20aとしている。
【0040】
フィルター部20は、フィルター20aを備えた回収室と、この回収室内下方に設けられた管を介して接続された真空ポンプ20bとを備えている。チャンバー18から送られた微粒子は、上述の真空ポンプ20bで吸引されることにより、回収室内に引き込まれ、フィルター20aの表面で留まった状態にて回収される。
【0041】
また、プラズマトーチ16内における圧力雰囲気は、大気圧以下であることが好ましい。ここで、大気圧以下の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、5Torr〜750Torrとすることができる。
【0042】
高周波変調誘導熱プラズマ発生部14は、変調誘導熱プラズマ炎100を発生させるための高周波電流を高周波発振用コイル16bに供給するとともに、高周波発振用コイル16bへの高周波電流を所定時間間隔で振幅変調することができるものである。以下、変調誘導熱プラズマ炎100を発生させるために高周波発振用コイル16bに供給する高周波電流を、コイル電流という。
高周波変調誘導熱プラズマ発生部14は、高周波インバータ電源26aと、インピーダンス整合回路26bと、パルス信号発生器26cと、FETゲート信号回路26dとを有する。
高周波インバータ電源26aは、基本周波数450kHz,最大電力50kW、定格電圧150V、定格電流460AのMOSFETインバータ電源である。通常、真空管電源を用いて生成される誘導熱プラズマに用いられる周波数が数MHzであるのに対し、高周波インバータ電源26aには周波数f=450kHzのものを用いている。
【0043】
高周波インバータ電源26aを構成するMOSFETインバータ電源は、電力変換効率が90%であり、従来の真空管型電源の効率30〜60%に比較して高く、エネルギー効率が低いというICP(誘導結合プラズマ)の欠点を克服するものである。また、このMOSFETインバータ電源は電流の振幅を変調できる機能を有している。すなわち、MOSFETインバータ電源は、コイル電流を振幅変調できる。
高周波インバータ電源26aは、例えば、整流回路と、MOSFETインバータ回路とを有する。高周波インバータ電源26aにおいて、整流回路は、例えば、入力電源として三相交流を用いるものであり、三相全波整流回路により交流−直流変換を行った後、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いたDC−DCコンバータにより、その出力電圧値を変化させる。
【0044】
MOSFETインバータ回路は、整流回路に接続されており、整流回路で得られた直流を交流に変換するものである。これにより、インバータ出力、すなわち、コイル電流が振幅変調(AM変調)される。
高周波インバータ電源26aは、出力側にインピーダンス整合回路26bが接続されている。このインピーダンス整合回路26bは、コンデンサ、共振コイルからなる直列共振回路により構成されており、プラズマ負荷を含めた負荷インピーダンスの共振周波数が高周波インバータ電源26aの駆動周波数領域内となるようにインピーダンスマッチングを行うものである。
【0045】
パルス信号発生器26cは、高周波変調誘導熱プラズマを維持するコイル電流の振幅に矩形波変調を加えるためのパルス制御信号を発生させるものである。
FETゲート信号回路26dは、パルス信号発生器26cで発生されたパルス制御信号に基づく変調信号を、高周波インバータ電源26aのMOSFETインバータ回路のMOSFETのゲートに供給するものである。これにより、パルス信号発生器26cによるパルス制御信号でコイル電流を振幅変調して振幅を相対的に大きくするか、または小さくして、例えば、図4に示す矩形波102のように、コイル電流をパルス変調することができる。コイル電流をパルス変調することにより、変調誘導熱プラズマ炎100を、所定時間間隔で周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にすることができる。高周波変調誘導熱プラズマ発生部14においては、高周波発振用コイル16bに、単に高周波電流を供給することにより、熱プラズマ炎を発生させることができる。
例えば、原料粉末を間歇的に供給する場合、プラズマの高温状態に同期させて原料粉末を供給すれば、原料粉末を高温状態で完全に蒸発させて気相状態の混合とし、さらに低温状態の時には、原料粉末を供給せずに、蒸発させた原料粉末を急冷させることができる。
【0046】
なお、図4に示す矩形波102において、コイル電流に対して電流振幅の高値(HCL)、低値(LCL)と定義し、変調一周期の中で、HCLをとる時間をオン時間、LCLをとる時間をオフ時間と定義する。さらに、一周期におけるオン時間の割合(オン時間/(オン時間+オフ時間)×100(%))をデューティ比(DF)とする。また、コイルの電流振幅の比(LCL/HCL×100(%))を電流変調率(SCL)とする。
また、矩形波102において、オン時間、オフ時間、および1サイクルは、いずれもマイクロ秒から数秒オーダーであることが好ましい。
【0047】
さらには、パルス制御信号を用いて、コイル電流を振幅変調する際には、予め定められている波形、例えば、矩形波を用いて振幅変調することが好ましい。なお、矩形波に限定されるものではなく、三角波、のこぎり波、逆のこぎり波、または正弦波等を含む曲線を含む繰り返し波からなる波形を用いることができることは言うまでもない。
【0048】
間歇供給部22は、プラズマトーチ16内への原料の供給を間歇的に行うためのものである。この間歇供給部22は、トリガ回路22aと、電磁コイル22bと、バルブ22cとを有する。
トリガ回路22aは、パルス信号発生器26cに接続されており、パルス信号発生器26cからパルス制御信号が入力されて、この入力されたパルス制御信号に同期してTTLレベルの信号を発生するものである。
電磁コイル22bは、トリガ回路22aに接続されており、トリガ回路22aからのTTLレベルの信号に基づいてバルブ22cを開閉させるものである。
【0049】
バルブ22cは、原料供給部12から、例えば、キャリガスとともに供給される微粒子製造用の原料のプラズマトーチ16内部への進入を制御するものであり、上述のように、電磁コイル22bにより開閉が制御される。これにより、原料が間歇的に供給される。
本実施形態においては、図5(a)に示すパルス制御信号104がパルス発生器26cから出力されて、このパルス制御信号104に同期したTTLレベルの信号がトリガ回路22aで作成される。このTTLレベルの信号に基づいて、図5(b)に示すタイミングで、バルブ22cが所定の時間間隔で開閉される。その結果、図5(c)に示す波形108のように原料がプラズマトーチ16内に間歇的に供給される。
【0050】
プラズマ分光分析部28は、プラズマトーチ16内の変調誘導熱プラズマ炎100について分光分析するものであり、例えば、変調誘導熱プラズマ炎100の分光強度を測定する。このプラズマ分光分析部28は、光学系28aと、分光器28bと、PMT28cとを有する。分光器28bとPMT28cとが接続されており、さらに、PMT28cはDSP30に接続されている。
光学系28aは、レンズ29aと、光ファイバ等の導光部29bとを備える。プラズマ炎の光りがレンズ29aを介して導光部29bに入射される。
分光器28bは、導光部29bに接続されており、変調誘導熱プラズマ炎100の放射光が入力されると、変調誘導熱プラズマ炎100の放射光を所定の時間間隔で分光するものである。
【0051】
PMT28cは、光電子増倍管を有するものであり、変調誘導熱プラズマ炎100の放射光の分光スペクトルが所定の時間間隔で入力されると、これを所定の倍率に増幅してDSP30に出力するものである。
プラズマ分光分析部28では、例えば、図6に示す変調誘導熱プラズマ炎100の分光スペクトルが得られる。
【0052】
DSP30は、分光分析結果に基づいて、原料供給とプラズマの変調のタイミングを一致させるフィードバック制御をするためのものである。
このDSP30は、PMT28cから入力された、例えば、図6に示す変調誘導熱プラズマ炎100の分光スペクトルに基づいて、変調誘導熱プラズマ炎100の分光スペクトルのうち、原料に由来する波長の光の波長の強度を求めるものである。この場合、原料がTi粉末で、酸素雰囲気で処理されていれば、Ti、TiOに由来する波長の光の強度が求められる。
【0053】
また、DSP30は、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14から出力されるパルス制御信号と、原料に由来する波長の光の発光強度とのタイミングのずれ量を算出するものである。さらに、このタイミングのずれ量に基づいて、高周波誘導熱プラズマ発生部14の高周波インバータ電源26aのMOSFETインバータ回路のMOSFETのゲートに供給されるパルス制御信号の位相、ハイレベルの時間、ロウレベルの時間等が適正になるような信号を供給する。すなわち、矩形波102におけるオン時間の長さ、オフ時間の長さ、およびデューティ比が適正になるような信号を供給する。これにより、原料の供給のタイミングを、変調誘導熱プラズマ炎100が高温状態、すなわち、オン時間とすることができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、変調誘導熱プラズマ炎100の高温状態、低温状態の温度状態のタイミングをフィードバック制御したが、これに限定されるものではなく、バルブ22cの開閉タイミングを制御してもよい。この場合、DSP30をトリガ回路22aに接続する。そして、DSP30では、ずれ量に基づいて、トリガ回路22aで作成されるTTLレベルの信号、すなわち、電磁コイル22bへの入力信号の位相をずらすような信号を作成し、この信号をトリガ回路22aに供給する。これにより、原料の供給のタイミングを、熱プラズマ炎が高温状態、すなわち、オン時間とすることができる。
【0055】
なお、本実施形態の製造装置10において、プラズマ分光分析部28およびDSP30を動作させることなく、すなわち、変調誘導熱プラズマ炎100の発光スペクトルに基づくフィードバック制御をすることなく、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14により、コイル電流を振幅変調させて、この変調に同期させて間歇供給部22により原料を間歇供給することもできる。
また、本実施形態の製造装置10においては、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14においてコイル電流を振幅変調させることなく、すなわち、変調誘導熱プラズマ炎の温度状態を一定の状態として、間歇供給部22だけを動作させて原料を間歇供給することもできる。
【0056】
次に、本実施形態の製造装置10の微粒子の製造方法について、原料にTi粒子を用いてTiO2微粒子を製造することを例にして説明する。
【0057】
押出し圧力をかけられたキャリアガス、例えば、Arガスが、原料供給部12内の圧力気体供給源(図示せず)から微粒子製造用の原料であるTi粒子とともにバルブ22cに供給される。このとき、バルブ22cは閉じた状態に保たれており、Ti粒子はプラズマトーチ16内に供給されない。
次に、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14において、パルス信号発生器26cからパルス制御信号がFETゲート回路26dおよび間歇供給部22のトリガ回路22aに出力される。
【0058】
次に、FETゲート回路26dからパルス制御信号に基づく変調信号が高周波インバータ電源26aに出力されて高周波発振用コイル16bに供給されるコイル電流が図4に示す矩形波102のようにパルス変調される。
このとき、プラズマガス供給部32からプラズマトーチ16内に、プラズマガスとしては、例えば、アルゴンガスおよび酸素ガスの混合ガスが供給されている。パルス変調されたコイル電流により、変調誘導熱プラズマ炎100が所定の時間間隔で周期的に高温状態と、低温状態になる。
【0059】
高周波変調誘導熱プラズマ発生部14とともに、間歇供給部22のトリガ回路22aにおいては、パルス制御信号に同期するTTLレベルの信号を作成し、このTTLレベルの信号に基づいて電磁コイル22bによりバルブ22cが開閉される。これにより、プラズマトーチ16内の変調誘導熱プラズマ炎100に、パルス制御信号に応じてTi粒子およびArガスが間歇的に供給される。
【0060】
本実施形態においては、共通するパルス制御信号を用いて、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14の変調信号およびバルブ22cの開閉信号を作成しているため、変調誘導熱プラズマ炎100が高温状態のときに、Ti粉末がArガスとともに供給され、変調誘導熱プラズマ炎100が低温状態の時には供給されないようにTTLレベルの信号を作成している。これにより、高温状態の変調誘導熱プラズマ炎100により、Ti粉末が蒸発して気相状態の混合物となり、プラズマガスに酸素ガスが含まれ、さらに低温状態の時に、蒸発されたTiが急冷されてTiO2の生成が促進される。
その直後に、この混合物が上流チャンバー18aからその下流の下流チャンバー18b内で急冷され、TiO2微粒子が生成される。すなわち、上流チャンバー18aからその下流の下流チャンバー18bは冷却槽としての機能を有する。
この際、下流のチャンバー18内壁面等から気体を射出してTiO2微粒子がチャンバー18の内壁面への付着を防止することが望ましい。
さらに、真空ポンプ20bで吸引されることにより、生成されたTiO2微粒子がチャンバー18の下流に設けられたフィルター20aの表面で留まった状態にて回収される。
【0061】
また、本実施形態においては、変調誘導熱プラズマ炎100の放射光がプラズマ分光分析部28により分光分析されている。変調誘導熱プラズマ炎100の放射光が光学系28aにより分光器28bに入力され、分光器28bで所定の時間間隔で分光され、得られた分光スペクトルがPMT28cで、所定の倍率に増幅された後、DSP30に出力される。
【0062】
DSP30においては、原料に由来する物質の波長の光について、この場合、Ti粒子を用い、プラズマガスにO2ガスを用いているので、TiとTiOに由来する波長の光について、例えば、図7(b)に示すように、曲線110で表されるTiの放射強度の時間変化、曲線112で表されるTiOの放射強度の時間変化が求められる。
図7(b)に示すTiの放射強度の時間変化(曲線110)およびTiOの放射強度の時間変化(曲線112)と、図7(a)に示すバルブの入力波形信号とを比較すると、バルブ22cが開いている状態よりもバルブ22cが閉じている状態の方がTiの放射強度およびTiOの放射強度が高い。これは、変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときにTi粒子がプラズマトーチ16内に供給されていないことを示している。
【0063】
この場合、Tiの放射強度およびTiOの放射強度の極小値が6ms程度であり、Tiの放射強度およびTiOの放射強度の極大値が13ms程度である。このため、DSP30では、プラズマ炎が高温になるタイミングのずれが、例えば、7ms程度であると判定する。この7msのずれの時間が、ずれ量である。
【0064】
DSP30においては、高周波誘導熱プラズマ発生部14の高周波インバータ電源26aのMOSFETインバータ回路のMOSFETのゲートに供給されるパルス制御信号の位相を、例えば、7msずらすような信号を供給する。このように、例えば、曲線110aで表されるTiの放射強度の時間変化、曲線112aで表されるTiOの放射強度の時間変化となるように、変調誘導熱プラズマ炎100の高温状態、低温状態の温度状態のタイミングがフィードバック制御される。
【0065】
このようにして、変調誘導熱プラズマ炎100を分光分析し、フィードバック制御することにより、変調誘導熱プラズマ炎100が高温状態のときにTi粉末を供給することができる。このため、微細でかつ粒度分布幅の狭いTiO2微粒子を高効率に得ることができる。
【0066】
なお、本実施形態においては、変調誘導熱プラズマ炎100の高温状態、低温状態の温度状態のタイミングをフィードバック制御したが、これに限定されるものではなく、バルブ22cの開閉タイミングを制御してもよい。この場合、DSP30では、トリガ回路22aで作成されるTTLレベルの信号、すなわち、電磁コイル22bへの入力信号の位相を、ずれ量、例えば、7msずらすような信号を供給し、トリガ回路22aに出力する。これにより、原料粉末の供給タイミングとプラズマ炎の変調のタイミングとを合わせて、熱プラズマ炎が高温状態のときに、Ti粉末を供給させるようにすることができる。この場合においても、微細でかつ粒度分布幅の狭いTiO2微粒子を高効率に得ることができる。
【0067】
なお、微粒子の製造方法においては、コイル電流を振幅変調させることなく、すなわち、熱プラズマ炎の温度状態が一定の状態で、原料粉末の供給だけを間歇供給して微粒子を製造することができる。この場合、熱プラズマ炎の温度状態が一定の状態で、Ti粉末を連続的に供給する従来のものに比して、微細でかつ粒度分布幅の狭いTiO2微粒子を高効率に得ることができる。
【0068】
また、微粒子の製造方法においては、フィードバック制御することなく、熱プラズマ炎の温度状態を高温状態と低温状態に周期的に変えるとともに、原料粉末の供給だけを間歇供給して微粒子を製造することができる。この場合、熱プラズマ炎の温度状態が一定の状態で、Ti粉末を間歇的に供給するものに比して、微細でかつ粒度分布幅の狭いTiO2微粒子を高効率に得ることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、原料にTi粉体を用い、キャリアガスで分散させたがこれに限定されるものではなく、原料としては、スラリーまたはコロイド液であってもよい。スラリーまたはコロイド液としては、例えば、Ti粒子を分散媒中に分散、または混濁させたものがある。この場合、原料供給部12に、図8に示す液状原料供給装置90を用いる。この液状原料供給装置90を、配管等を用いてバルブ22cに接続する。
【0070】
液状原料供給装置90は、スラリー92(コロイド液)を入れる容器94と、容器94中のスラリー92を攪拌する攪拌機96と、スラリー92(コロイド液)に高圧をかけてバルブ22cに供給するためのポンプ98と、スラリー92(コロイド液)を液滴化するための噴霧ガス供給源(図示せず)とを有する。そして、押し出し圧力がかけられた噴霧ガスにより液滴化されたスラリー92(コロイド液)がバルブ22cを経てプラズマトーチ16内に供給される。
【0071】
なお、本実施形態では、原料としては、原料を溶媒中に溶解させて溶液にしたものであってもよい。この場合においても、上述のスラリーまたはコロイド液と同様にして、液状原料供給装置90が用いられる。この場合でも、押し出し圧力がかけられた噴霧ガスにより液滴化された、原料が溶解した溶液がバルブ22cを経てプラズマトーチ16内に供給される。
【0072】
なお、本実施形態においては、Ti粒子を酸化させてTiO2微粒子を製造する場合を例として挙げたが、他の元素の粒子を微粒子製造用の原料として用いて、その酸化物,金属,窒化物,炭化物等の微粒子製造を行うことも可能である。
【0073】
例えば、原料としては、熱プラズマ炎により蒸発させられるものであれば、その種類を問わないが、好ましくは、以下のものがよい。すなわち、原子番号3〜6、11〜15、19〜34、37〜52、55〜60、62〜79および81〜83の元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、単体酸化物、複合酸化物、複酸化物、酸化物固溶体、金属、合金、水酸化物、炭酸化合物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物、水素化物、金属塩または金属有機化合物を適宜選択すればよい。
【0074】
なお、単体酸化物とは酸素以外に1種の元素からなる酸化物をいい、複合酸化物とは複数種の酸化物から構成されるものをいい、複酸化物とは2種以上の酸化物からできている高次酸化物をいい、酸化物固溶体とは異なる酸化物が互いに均一に溶け合った固体をいう。また、金属とは1種以上の金属元素のみで構成されるものをいい、合金とは2種以上の金属元素から構成されるものをいい、その組織状態としては、固溶体、共融混合物、金属間化合物あるいはそれらの混合物をなす場合がある。
【0075】
また、水酸化物とは水酸基と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、炭酸化合物とは炭酸基と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、ハロゲン化物とはハロゲン元素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、硫化物とは硫黄と1種以上の金属元素から構成されるものをいう。また、窒化物とは窒素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、炭化物とは炭素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、水素化物とは水素と1種以上の金属元素から構成されるものをいう。また、金属塩は少なくとも1種以上の金属元素を含むイオン性化合物をいい、金属有機化合物とは1種以上の金属元素と少なくともC、O、N元素のいずれかとの結合を含む有機化合物をいい、金属アルコキシドや有機金属錯体等が挙げられる。
【0076】
例えば、単体酸化物としては、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化銀(Ag2O)、酸化鉄、酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(Mn3O4)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ベリリウム(BeO)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化バリウム(BaO)などを挙げることができる。
【0077】
また、複合酸化物としては、アルミン酸リチウム(LiAlO2)、バナジウム酸イットリウム、リン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、ジルコン酸チタン鉛、酸化チタン鉄(FeTiO3)、酸化チタンコバルト(CoTiO3)等を、複酸化物としては、錫酸バリウム(BaSnO3)、(メタ)チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸バリウムに酸化ジルコニウムと酸化カルシウムが固溶した固溶体などを挙げることができる。
さらに、水酸化物としてはZr(OH)4、炭酸化合物としてはCaCO3、ハロゲン化物としてはMgF2、硫化物としてはZnS、窒化物としてはTiN、炭化物としてはSiC、水素化物としてはTiH2等を挙げることができる。
【0078】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【0079】
以下、本発明の微粒子の製造方法の実施例について、具体的に説明する。
本実施例においては、微粒子の製造には、図1に示す製造装置10を用いた。
なお、下記表1に、以下に示す実験例1〜9において共通する実験条件を示す。
【実施例1】
【0080】
実験条件としては、プラズマへの平均入力を20kW一定として、プラズマガスとしてArガス+O2ガスを用いて合計流量を100L/min(標準状態換算、以下同様)、流量組成をAr90%+O210%とした。すなわち、アルゴンガスの流量を90L/min(標準状態換算)とし、O2ガスを10L/min(標準状態換算)とした。また、キャリアガスにはArガスを用い、その流量は4L/minとした。プラズマトーチ内圧力は、300torr(≒40kPa)に固定し、原料Ti粉体には平均直径が45μmのものを用いた。粉体を投入する水冷プローブのトーチ内部挿入長は誘導コイル4,5ターン目の間(挿入長:134mm)とした。
【0081】
【表1】
【0082】
本実施例1においては、下記表2に示すように、プラズマ変調の有無、原料供給方法を変えた実験例1〜3の製造方法で、TiO2微粒子の製造を試みた。
なお、電流変調率(SCL)は、コイルの電流振幅の比(LCL/HCL×100(%))で定義され、実施例1ではSCL=70%とした。
また、間歇供給については、オン時間を12ms、オフ時間を3msとし、1サイクル、15msとした。
【0083】
プラズマの変調の有無については、図1に示す製造装置10において、コイル電流をパルス変調した場合を「変調あり」とし、コイル電流をパルス変調しない場合を「変調なし」とした。また、原料供給方法については、連続供給の場合には、電磁バルブを開けたままの状態とし、間歇供給の場合には、電磁バルブを上述の条件で開閉させた。
【0084】
本実施例では、実験例1〜3で得られた微粒子について、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、平均粒径および粒径の度数分布を調べた。
【0085】
【表2】
【0086】
SEM観察結果:
実験例1〜3の各実験条件で微粒子の製造実験を行い、その結果、フィルター20aで回収した微粒子のSEM画像を図9(a)〜(c)に示す。図9(a)は実験例1、図9(b)は実験例2、図9(c)は実験例3のSEM画像を示している。なお、フィルター20aには、日本フィルター工業社製のバグフィルター(ミクロテックスMT−1000)を用いた。
図9(a)〜(c)に示すように、実験例1〜3のいずれの条件でも、直径数十nmの球状のTiO2のナノ粒子を得ることができた。
【0087】
粒径度数分布・平均粒径:
実験例1〜3について、それぞれ得られた上述のSEM画像を用いて、200個の粒子を無作為に抽出し、その粒径度数分布を調べた。具体的には、異なる測定での倍率10万倍のSEM画像を2枚使用し,それぞれ100個計200個の粒子の粒径を測定した。
その結果を図10(a)〜(c)に示す。図10(a)は実験例1、図10(b)は実験例2、図10(c)は実験例3の結果を示すものである。
図10(a)〜(c)は、粒径の度数分布および累積割合を示すものであり、さらに平均粒径、d50および粒径の標準偏差の各値も示す。
【0088】
実験例1は、従来例に相当するものであり、平均粒径、d50および粒径の標準偏差がいずれも、実験例1〜3の中で最も大きい。
実験例2は、実験例1に比して間歇供給する点が異なる。実験例2は、平均粒径、d50および粒径の標準偏差がいずれも実験例1よりも小さい。このように、間歇供給することにより、平均粒径、d50および粒径の標準偏差を小さくすることができた。
【0089】
実験例3は、実験例1に比してプラズマ変調する点が異なる。実験例3は、平均粒径、d50および粒径の標準偏差がいずれも実験例1よりも小さく、しかも実験例2よりも小さい。
【実施例2】
【0090】
次に、プラズマ変調と原料の間歇投入による効果を検討した。本実施例2においては、微粒子の製造には、図1に示す製造装置10において、DSP30の信号をトリガ回路22aに接続し、原料投入のバルブ開閉タイミングをフィードバック制御した。下記表3に示すように、プラズマ変調の有無、原料供給方法、およびフィードバックにより原料投入のバルブ開閉タイミングを変えた実験例4〜9の製造方法で、TiO2微粒子の製造を試みた。なお、本実施例2では、SCLは80%とした以外は、実施例1と同様の実験条件でTiO2微粒子の製造を試みた。
【0091】
【表3】
【0092】
実験例4〜9の各実験条件で微粒子の製造実験を行い、その結果、フィルター20aで回収した微粒子の平均粒径を図11に示す。本実施例2において、平均粒径は、実施例1と同様にSEM画像を用いて求めた。
【0093】
コイル電流をパルス変調した、プラズマ変調ありの場合では、原料を連続供給した実験例5と、間歇投入した場合において、バルブ開閉タイミングをフィードバック制御しない実験例6では、製造された微粒子の平均粒径は、ほぼ同等であった。
一方、TiOの放射強度のタイミングを元にフィードバックを行い、原料投入のバルブ開閉タイミングを6msまたは8ms遅延させた実験例7、実験例8においては、実験例5に比して、さらに平均粒径が小さい微粒子を製造することができた。原料投入のバルブ開閉タイミングを12ms遅延させた実験例9は、実験例7、8に比して平均粒径が大きい。これは、図7(a)、(b)に示す例では、ずれ量は7ms程度であるのに対して、12msと遅延時間が長く原料投入のバルブ開閉タイミングがずれているためであると考えられる。しかしながら、単に間歇供給する実施例4に比して平均粒径が小さい。
【符号の説明】
【0094】
10 微粒子の製造装置(製造装置)
12 原料供給部
14 高周波誘導熱プラズマ発生部
16 プラズマトーチ
18 チャンバー
20 回収部
22 間歇供給部
24 水冷プローブ
28 プラズマ分光分析部
30 DSP
32 プラズマガス供給部
100 熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いたナノサイズの微粒子の製造装置および微粒子の製造方法に関し、特に、得られる微粒子の粒径が小さく、粒径のばらつきが小さい微粒子の製造装置および微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子等の微粒子は、半導体基板、プリント基板、各種電気絶縁部品などの電気絶縁材料、切削工具、ダイス、軸受などの高硬度高精度の機械工作材料、粒界コンデンサ、湿度センサなどの機能性材料、精密焼結成形材料などの焼結体の製造、エンジンバルブなどの高温耐摩耗性が要求される材料などの溶射部品製造、さらには燃料電池の電極、電解質材料および各種触媒などの分野で用いられている。このような微粒子を用いることにより、焼結体および溶射部品などにおける異種セラミックス同士または異種金属同士の接合強度および緻密性、更には機能性を向上させている。
【0003】
このような微粒子を製造する方法の一つに、気相法がある。気相法には、各種のガス等を高温で化学反応させる化学的方法と、電子ビームまたはレーザなどのビームを照射して物質を分解・蒸発させ、微粒子を生成する物理的方法とがある。
【0004】
上記気相法の中の一つとして、熱プラズマ法がある。熱プラズマ法は、熱プラズマ中で原材料を瞬時に蒸発させた後、急冷凝固させ、微粒子を製造する方法である。また、熱プラズマ法は、クリーンで生産性が高く、高温で熱容量が大きいため高融点材料にも対応可能であり、他の気相法に比べて複合化が比較的容易であるといった多くの利点を有する。このため、熱プラズマ法は、微粒子を製造する方法として積極的に利用されている。
【0005】
従来の熱プラズマ法を用いた微粒子の製造方法では、原材料物質を粉末状にし、この粉末状にされた原材料(粉末原材料、粉体)をキャリアガス等と共に、分散させて直接熱プラズマ中に投入することにより、微粒子を製造している。
【0006】
また、特許文献1には、微粒子製造用材料を可燃性材料中に分散させたスラリー、または微粒子製造用材料を分散媒と可燃性材料とを用いたスラリーを、液滴化させて連続的に熱プラズマ炎中に導入して、気相状態の混合物にし、気相状態の混合物を急冷することにより、微粒子を生成する微粒子の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−102737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の微粒子の製造方法では、ナノサイズの微粒子を製造することができるものの、得られる微粒子のばらつきをコントロールすることができないという問題点がある。また、より小さな微粒子を生成するのが困難であるという問題点がある。
【0009】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、粒径が小さく、粒径のばらつきが小さい微粒子を製造することができる製造装置および微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、微粒子の製造装置であって、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給する原料供給手段と、内部に前記熱プラズマ炎が発生されるものであり、前記原料供給手段により間歇的に供給される前記原料を前記熱プラズマ炎で蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、前記プラズマトーチの内部に前記熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生手段とを有することを特徴とする微粒子の製造装置を提供するものである。
【0011】
前記プラズマ発生手段は、前記プラズマトーチに設けられたコイルに前記熱プラズマ炎を発生させるための電流を供給するとともに、前記コイルへの電流を振幅変調させることができる電源部を備えるものであり、前記プラズマ発生手段は、前記コイルへの電流を振幅変調させることにより前記熱プラズマ炎を周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にさせ、前記熱プラズマ炎の温度状態が時間変調された変調誘導熱プラズマ炎を発生させるものであることが好ましい。
【0012】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析する分光分析手段と、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記プラズマ発生手段に、前記原料が前記変調誘導熱プラズマ炎に供給されたときに、前記コイルへの電流の振幅を相対的に大きくし、前記変調誘導熱プラズマ炎を高温状態させる制御部とを有することが好ましい。
【0013】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析する分光分析手段と、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記原料供給手段に、前記コイルへの電流の振幅が相対的に大きくなり、前記変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときに、前記原料を前記変調誘導熱プラズマ炎に供給させる制御部とを有することが好ましい。
【0014】
また、前記原料供給手段は、例えば、前記原料を粒子状態に分散させ、前記粒子状態に分散された前記原料を間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである。この場合、前記原料は、気体により粒子状態に分散される。
さらに、前記原料供給手段は、例えば、前記原料を分散媒中に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである。
さらにまた、前記原料供給手段は、例えば、前記原料を分散媒中に分散させてコロイド溶液にし、前記コロイド溶液を液滴化して間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである。
また、前記原料供給手段は、例えば、前記原料を溶媒中に溶解させて溶液にし、前記溶解させた溶液を液滴化して間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである。
【0015】
前記電源部において前記コイルへの電流を振幅変調する際には、前記コイルへの電流を予め定められている波形により振幅変調させることが好ましい。
前記電源部において前記コイル電流を振幅変調する際に用いる予め定められている波形として、矩形波、三角波、のこぎり波、逆のこぎり波、もしくは正弦波を含む曲線を含む繰り返し波からなる波形を用いることができる。
前記コイルへの電流を振幅変調させる前記所定時間間隔は、マイクロ秒から数秒オーダーであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、微粒子の製造方法であって、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給して、前記原料を蒸発させ気相状態の混合物とし、この混合物を冷却して微粒子を製造することを特徴とする微粒子の製造方法を提供するものである。
【0017】
前記熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されて周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態とにされる変調誘導熱プラズマ炎に、前記原料を間歇的に供給することが好ましい。
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析し、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記原料が前記変調誘導熱プラズマ炎に供給されたときに、前記変調誘導熱プラズマ炎を高温状態することが好ましい。
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析し、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときに、前記原料を前記変調誘導熱プラズマ炎に供給することが好ましい。
【0018】
また、前記原料は、例えば、粒子状態に分散されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される。この場合、前記原料は、気体により粒子状態に分散される。
さらに、前記原料は、例えば、分散媒中に分散されてスラリーにされ、前記スラリーが液滴化されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される。
さらにまた、前記原料は、例えば、分散媒中に懸濁されてコロイド溶液にされ、前記コロイド溶液が液滴化されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される。
また、前記原料は、例えば、溶媒中に溶解された溶液にされ、前記溶解させた溶液が液滴化されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の微粒子の製造装置および製造方法によれば、粒径が小さく、しかも粒径のばらつきが小さい微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置の原料供給部の概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置のプラズマトーチを示す模式的部分断面図である。
【図4】パルス変調時のコイル電流の時間変化を示すグラフである。
【図5】(a)は、コイル電流を変調するためのパルス制御信号を示すグラフであり、(b)は、バルブの開閉タイミングを示すグラフであり、(c)は、原料の供給を示すグラフである。
【図6】変調誘導熱プラズマ炎の分光分析の結果の一例を示すグラフである。
【図7】(a)は、バルブへの入力波形信号を示すグラフであり、(b)は、変調誘導熱プラズマ炎のTiおよびTiOの放射強度の時間変化の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置の原料供給部の他の例を示す模式図である。
【図9】(a)〜(c)は、フィルターで回収した実験例1〜3の微粒子のSEM画像を示す(写真代用)図である。
【図10】(a)〜(c)は、フィルターで回収した実験例1〜3の微粒子の粒径度数分布を示すグラフである。
【図11】実験例4〜9の微粒子の粒径を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る微粒子の製造装置を示す模式図である。
【0022】
図1に示す微粒子の製造装置(以下、単に製造装置という)10は、例えば、粉体原料を用いてナノサイズの微粒子を製造するものである。この粉体原料としては、例えば、Ti粉末が用いられる。
製造装置10は、原料供給部12と、高周波変調誘導熱プラズマ発生部(プラズマ発生手段)14と、プラズマトーチ16と、チャンバー18と、回収部20と、間歇供給部22と、プラズマ分光分析部(分光分析手段)28と、DSP(制御部)30と、プラズマガス供給部32とを有する。原料供給部12と間歇供給部22とにより原料供給手段が構成される。
【0023】
原料供給部12は間歇供給部22に接続されている。この間歇供給部22とプラズマトーチ16とは、中空状の水冷プローブ24を介して接続されている。また、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14により、プラズマトーチ16の内部に変調誘導熱プラズマ炎100が発生されるとともに、熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されて、変調誘導熱プラズマ炎100が周期的に高温状態と低温状態とになる。
また、製造装置10では、プラズマ分光分析部28により、変調誘導熱プラズマ炎100について分光分析され、DSP30により変調誘導熱プラズマ炎100の放射光のうち、原料に由来する波長の光の強度に基づいて高周波変調誘導熱プラズマ発生部14により変調誘導熱プラズマ炎100の温度状態が時間変調される。
【0024】
原料供給部12は、間歇供給部22とともに、微粒子製造用の原料をプラズマトーチ16の内部で発生する熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100中に供給するためのものである。この原料供給部12は、搬送管82(図2参照)を介してプラズマトーチ16の上部に設けられた間歇供給部22のバルブ22cに接続されている。
【0025】
例えば、微粒子製造用の原料に粉体を用いた場合、プラズマトーチ16内の熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100中に原料が供給される際には原料が分散されている必要がある。このため、原料は、キャリガスに分散させて供給される。この場合、例えば、原料供給部12は、粉体原料を分散状態に維持しつつ、定量的にプラズマトーチ16内部の熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100中に供給するものである。このような機能を有する原料供給部12としては、例えば、本出願人の出願に係る特許第3217415号公報に開示されている粉体分散装置のような装置が利用可能である。
【0026】
原料供給部12は、図2に示すように、主に、粉体原料を貯蔵する貯蔵槽42と、粉体原料を定量搬送するスクリューフィーダ60と、スクリューフィーダ60で搬送された粉体原料が最終的に散布される前に、これを一次粒子の状態に分散させる分散部70とから構成されている。
【0027】
貯蔵槽42の内部には、貯蔵された粉体原料44の凝集を防止するために、攪拌軸46とそれに接続された攪拌羽根48とが設けられる。攪拌軸46は、オイルシール50aと軸受け52aとによって、貯蔵槽42内で回転可能に配設されている。また、貯蔵槽42外部にある攪拌軸46の端部は、モータ54aに接続されており、図示しない制御装置によってその回転が制御される。
【0028】
貯蔵槽42の下部には、スクリューフィーダ60が設けられ、粉体原料44の定量的な搬送を可能にする。スクリューフィーダ60は、スクリュー62と、スクリュー62の軸64と、ケーシング66と、スクリュー62の回転動力源であるモータ54bとを含み構成されている。スクリュー62および軸64は、貯蔵槽42内の下部を横切って設けられている。軸64は、オイルシール50bと軸受け52bとによって貯蔵槽42内で回転可能に配設されている。
【0029】
また、貯蔵槽42外部にある軸64の端部は、モータ54bに接続されており、図示しない制御装置によってその回転が制御される。さらに、貯蔵槽42の下部の開口部と、後述する分散部70とを接続し、スクリュー62を包む筒状通路であるケーシング66が設けられる。ケーシング66は、後述する分散部70の内部途中まで延設されている。
【0030】
図2に示すように、分散部70は、ケーシング66の一部に外挿固定された外管72と、軸64の先端部に植設された回転ブラシ56を有し、スクリューフィーダ60によって定量搬送された粉体原料44を一次分散させることができる。
外管72の外挿固定された端部と反対の端部は、その形状が円錐台形状であり、その内部にも円錐台形状の空間である粉体分散室74を有する。また、その端部には分散部70で分散された粉体原料を搬送する搬送管82が接続される。この搬送管82は、バルブ22cに接続されている。
【0031】
外管72の側面には気体供給口78が設けられており、また、ケーシング66の外壁と外管72の内壁とによって設けられる空間は、供給された気体が通過する気体通路80としての機能を有する。
回転ブラシ56は、ナイロン等の比較的柔軟な材質、あるいは鋼線等の硬質な材質からなる針状部材で、ケーシング66の先端部近傍の内部から粉体分散室74の内部まで、軸64の径外方に延出して密集植設されることによって形成される。
【0032】
分散部70では、分散・搬送用の気体(キャリアガス)が、図示しない圧力気体供給源から気体供給口78、気体通路80を通って回転ブラシ56の径方向外側から回転ブラシ56に噴出され、定量的に搬送される粉体原料44が、回転ブラシ56の針状部材間を通過することで一次粒子に分散される。なお、キャリアガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)ガス,窒素ガス、水素ガス等が単独、またはこれらを適宜組み合わせて用いられる。
【0033】
搬送管82は、その一端は外管72と接続され、他端はプラズマトーチ16に接続される。また、搬送管82は、その管径の10倍以上の管長を有し、少なくとも途中に分散粉体を含む気流が流速20m/sec以上になる管径部分を設けることが好ましい。これにより分散部70で一次粒子の状態に分散された粉体原料44の凝集を防止し上記の分散状態を維持したまま、粉体原料44をバルブ22cに供給し、バルブ22cから水冷プローブ24を経てプラズマトーチ16内部に散布される。
例えば、微粒子製造用の原料として使用する粉体原料は、熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100中で蒸発させることができるものであり、その粒径が100μm以下であることが好ましい。
【0034】
プラズマトーチ16は、内部に熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100が発生されるものであり、変調誘導熱プラズマ炎100中に間歇的に供給される原料を、熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100で蒸発させて気相状態の混合物とするものである。
なお、熱プラズマ炎とは、温度状態が時間変調されてないプラズマ炎のことであり、変調誘導熱プラズマ炎とは、熱プラズマ炎が所定時間間隔で周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にされたもの、すなわち、熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されたものである。
図3に示すように、プラズマトーチ16は、石英管16aと、その外側を取り巻く高周波発振用コイル16bとで構成されている。プラズマトーチ16の上部には、水冷プローブ24が挿入される供給口16cがその中央部に設けられており、プラズマガス供給口16dがその周辺部(同一円周上)に形成されている。
水冷プローブ24により、例えば、原料粉末であるTi粒子と、Arガス等のキャリアガスとがプラズマトーチ16内に供給される。
【0035】
プラズマガス供給口16dは、例えば、図示しない配管によりプラズマガス供給部32が接続されている。プラズマガス供給部32は、プラズマガス供給口16dを介してプラズマトーチ16内にプラズマガスを供給するものであり、例えば、2種類のプラズマガスが準備されている。プラズマガスとしては、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、水素ガス、酸素ガス等が単独または適宜組み合わせて用いられる。
プラズマトーチ16内にプラズマガスがある状態で、高周波発振用コイル16bに、高周波誘導熱プラズマ発生部14により振幅変調された高周波電流が印加されると、プラズマトーチ16の内部に変調誘導熱プラズマ炎100が発生する。また、高周波誘導熱プラズマ発生部14により、高周波発振用コイル16bに単に高周波電流が印加されると、プラズマトーチ16の内部に熱プラズマ炎が発生する。なお、プラズマガスに酸素ガスが含まれる場合、プラズマトーチ16内は酸素雰囲気になる。
【0036】
また、プラズマトーチ16の石英管16aの外側は、同心円状に形成された石英管16eで囲まれており、石英管16aと16eの間に冷却水16fを循環させて石英管16aを水冷し、プラズマトーチ16内で発生した変調誘導熱プラズマ炎100(熱プラズマ炎)により石英管16aが高温になりすぎるのを防止している。
【0037】
プラズマトーチ16においては、例えば、内径75mm,長さ330mmの石英管16aが用いられる。
また、プラズマ発生用誘導コイル16bは、外径130mm,コイル導体径14mmφ,コイル長155mmの8ターンのものを使用している。水冷プローブ24は、その先端が、例えば、プラズマ発生用誘導コイル16bの4、5ターン目の間にある。
【0038】
このコイル長155mmは一般的なものに比べ約3倍程度長い。このように、コイル長を長くすることの利点としては、軸方向に長く強い電磁場を発生させることができるため、それにより発生するプラズマも軸方向に長くなり、トーチヘッドから投入される原料粉体の蒸発に有利な特徴を持っている。
【0039】
プラズマトーチ16の下流部には、水冷のチャンバー18が接続されている。このチャンバー18は、原料が熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎100で蒸発されてなる気相状態の混合物を急冷し、微粒子を生成するとともに、得られた微粒子を捕集するものである。
図1に示すように、チャンバー18は、プラズマトーチ16に近い方から、上流チャンバー18aがプラズマトーチ16と同軸方向に取り付けられている。また、上流チャンバー18aと垂直に下流チャンバー18bを設け、さらに下流には,生成された微粒子を捕集するための所望のフィルター20aを備える回収部20が設けられている。製造装置10において、微粒子の回収場所は、フィルター20aとしている。
【0040】
フィルター部20は、フィルター20aを備えた回収室と、この回収室内下方に設けられた管を介して接続された真空ポンプ20bとを備えている。チャンバー18から送られた微粒子は、上述の真空ポンプ20bで吸引されることにより、回収室内に引き込まれ、フィルター20aの表面で留まった状態にて回収される。
【0041】
また、プラズマトーチ16内における圧力雰囲気は、大気圧以下であることが好ましい。ここで、大気圧以下の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、5Torr〜750Torrとすることができる。
【0042】
高周波変調誘導熱プラズマ発生部14は、変調誘導熱プラズマ炎100を発生させるための高周波電流を高周波発振用コイル16bに供給するとともに、高周波発振用コイル16bへの高周波電流を所定時間間隔で振幅変調することができるものである。以下、変調誘導熱プラズマ炎100を発生させるために高周波発振用コイル16bに供給する高周波電流を、コイル電流という。
高周波変調誘導熱プラズマ発生部14は、高周波インバータ電源26aと、インピーダンス整合回路26bと、パルス信号発生器26cと、FETゲート信号回路26dとを有する。
高周波インバータ電源26aは、基本周波数450kHz,最大電力50kW、定格電圧150V、定格電流460AのMOSFETインバータ電源である。通常、真空管電源を用いて生成される誘導熱プラズマに用いられる周波数が数MHzであるのに対し、高周波インバータ電源26aには周波数f=450kHzのものを用いている。
【0043】
高周波インバータ電源26aを構成するMOSFETインバータ電源は、電力変換効率が90%であり、従来の真空管型電源の効率30〜60%に比較して高く、エネルギー効率が低いというICP(誘導結合プラズマ)の欠点を克服するものである。また、このMOSFETインバータ電源は電流の振幅を変調できる機能を有している。すなわち、MOSFETインバータ電源は、コイル電流を振幅変調できる。
高周波インバータ電源26aは、例えば、整流回路と、MOSFETインバータ回路とを有する。高周波インバータ電源26aにおいて、整流回路は、例えば、入力電源として三相交流を用いるものであり、三相全波整流回路により交流−直流変換を行った後、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いたDC−DCコンバータにより、その出力電圧値を変化させる。
【0044】
MOSFETインバータ回路は、整流回路に接続されており、整流回路で得られた直流を交流に変換するものである。これにより、インバータ出力、すなわち、コイル電流が振幅変調(AM変調)される。
高周波インバータ電源26aは、出力側にインピーダンス整合回路26bが接続されている。このインピーダンス整合回路26bは、コンデンサ、共振コイルからなる直列共振回路により構成されており、プラズマ負荷を含めた負荷インピーダンスの共振周波数が高周波インバータ電源26aの駆動周波数領域内となるようにインピーダンスマッチングを行うものである。
【0045】
パルス信号発生器26cは、高周波変調誘導熱プラズマを維持するコイル電流の振幅に矩形波変調を加えるためのパルス制御信号を発生させるものである。
FETゲート信号回路26dは、パルス信号発生器26cで発生されたパルス制御信号に基づく変調信号を、高周波インバータ電源26aのMOSFETインバータ回路のMOSFETのゲートに供給するものである。これにより、パルス信号発生器26cによるパルス制御信号でコイル電流を振幅変調して振幅を相対的に大きくするか、または小さくして、例えば、図4に示す矩形波102のように、コイル電流をパルス変調することができる。コイル電流をパルス変調することにより、変調誘導熱プラズマ炎100を、所定時間間隔で周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にすることができる。高周波変調誘導熱プラズマ発生部14においては、高周波発振用コイル16bに、単に高周波電流を供給することにより、熱プラズマ炎を発生させることができる。
例えば、原料粉末を間歇的に供給する場合、プラズマの高温状態に同期させて原料粉末を供給すれば、原料粉末を高温状態で完全に蒸発させて気相状態の混合とし、さらに低温状態の時には、原料粉末を供給せずに、蒸発させた原料粉末を急冷させることができる。
【0046】
なお、図4に示す矩形波102において、コイル電流に対して電流振幅の高値(HCL)、低値(LCL)と定義し、変調一周期の中で、HCLをとる時間をオン時間、LCLをとる時間をオフ時間と定義する。さらに、一周期におけるオン時間の割合(オン時間/(オン時間+オフ時間)×100(%))をデューティ比(DF)とする。また、コイルの電流振幅の比(LCL/HCL×100(%))を電流変調率(SCL)とする。
また、矩形波102において、オン時間、オフ時間、および1サイクルは、いずれもマイクロ秒から数秒オーダーであることが好ましい。
【0047】
さらには、パルス制御信号を用いて、コイル電流を振幅変調する際には、予め定められている波形、例えば、矩形波を用いて振幅変調することが好ましい。なお、矩形波に限定されるものではなく、三角波、のこぎり波、逆のこぎり波、または正弦波等を含む曲線を含む繰り返し波からなる波形を用いることができることは言うまでもない。
【0048】
間歇供給部22は、プラズマトーチ16内への原料の供給を間歇的に行うためのものである。この間歇供給部22は、トリガ回路22aと、電磁コイル22bと、バルブ22cとを有する。
トリガ回路22aは、パルス信号発生器26cに接続されており、パルス信号発生器26cからパルス制御信号が入力されて、この入力されたパルス制御信号に同期してTTLレベルの信号を発生するものである。
電磁コイル22bは、トリガ回路22aに接続されており、トリガ回路22aからのTTLレベルの信号に基づいてバルブ22cを開閉させるものである。
【0049】
バルブ22cは、原料供給部12から、例えば、キャリガスとともに供給される微粒子製造用の原料のプラズマトーチ16内部への進入を制御するものであり、上述のように、電磁コイル22bにより開閉が制御される。これにより、原料が間歇的に供給される。
本実施形態においては、図5(a)に示すパルス制御信号104がパルス発生器26cから出力されて、このパルス制御信号104に同期したTTLレベルの信号がトリガ回路22aで作成される。このTTLレベルの信号に基づいて、図5(b)に示すタイミングで、バルブ22cが所定の時間間隔で開閉される。その結果、図5(c)に示す波形108のように原料がプラズマトーチ16内に間歇的に供給される。
【0050】
プラズマ分光分析部28は、プラズマトーチ16内の変調誘導熱プラズマ炎100について分光分析するものであり、例えば、変調誘導熱プラズマ炎100の分光強度を測定する。このプラズマ分光分析部28は、光学系28aと、分光器28bと、PMT28cとを有する。分光器28bとPMT28cとが接続されており、さらに、PMT28cはDSP30に接続されている。
光学系28aは、レンズ29aと、光ファイバ等の導光部29bとを備える。プラズマ炎の光りがレンズ29aを介して導光部29bに入射される。
分光器28bは、導光部29bに接続されており、変調誘導熱プラズマ炎100の放射光が入力されると、変調誘導熱プラズマ炎100の放射光を所定の時間間隔で分光するものである。
【0051】
PMT28cは、光電子増倍管を有するものであり、変調誘導熱プラズマ炎100の放射光の分光スペクトルが所定の時間間隔で入力されると、これを所定の倍率に増幅してDSP30に出力するものである。
プラズマ分光分析部28では、例えば、図6に示す変調誘導熱プラズマ炎100の分光スペクトルが得られる。
【0052】
DSP30は、分光分析結果に基づいて、原料供給とプラズマの変調のタイミングを一致させるフィードバック制御をするためのものである。
このDSP30は、PMT28cから入力された、例えば、図6に示す変調誘導熱プラズマ炎100の分光スペクトルに基づいて、変調誘導熱プラズマ炎100の分光スペクトルのうち、原料に由来する波長の光の波長の強度を求めるものである。この場合、原料がTi粉末で、酸素雰囲気で処理されていれば、Ti、TiOに由来する波長の光の強度が求められる。
【0053】
また、DSP30は、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14から出力されるパルス制御信号と、原料に由来する波長の光の発光強度とのタイミングのずれ量を算出するものである。さらに、このタイミングのずれ量に基づいて、高周波誘導熱プラズマ発生部14の高周波インバータ電源26aのMOSFETインバータ回路のMOSFETのゲートに供給されるパルス制御信号の位相、ハイレベルの時間、ロウレベルの時間等が適正になるような信号を供給する。すなわち、矩形波102におけるオン時間の長さ、オフ時間の長さ、およびデューティ比が適正になるような信号を供給する。これにより、原料の供給のタイミングを、変調誘導熱プラズマ炎100が高温状態、すなわち、オン時間とすることができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、変調誘導熱プラズマ炎100の高温状態、低温状態の温度状態のタイミングをフィードバック制御したが、これに限定されるものではなく、バルブ22cの開閉タイミングを制御してもよい。この場合、DSP30をトリガ回路22aに接続する。そして、DSP30では、ずれ量に基づいて、トリガ回路22aで作成されるTTLレベルの信号、すなわち、電磁コイル22bへの入力信号の位相をずらすような信号を作成し、この信号をトリガ回路22aに供給する。これにより、原料の供給のタイミングを、熱プラズマ炎が高温状態、すなわち、オン時間とすることができる。
【0055】
なお、本実施形態の製造装置10において、プラズマ分光分析部28およびDSP30を動作させることなく、すなわち、変調誘導熱プラズマ炎100の発光スペクトルに基づくフィードバック制御をすることなく、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14により、コイル電流を振幅変調させて、この変調に同期させて間歇供給部22により原料を間歇供給することもできる。
また、本実施形態の製造装置10においては、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14においてコイル電流を振幅変調させることなく、すなわち、変調誘導熱プラズマ炎の温度状態を一定の状態として、間歇供給部22だけを動作させて原料を間歇供給することもできる。
【0056】
次に、本実施形態の製造装置10の微粒子の製造方法について、原料にTi粒子を用いてTiO2微粒子を製造することを例にして説明する。
【0057】
押出し圧力をかけられたキャリアガス、例えば、Arガスが、原料供給部12内の圧力気体供給源(図示せず)から微粒子製造用の原料であるTi粒子とともにバルブ22cに供給される。このとき、バルブ22cは閉じた状態に保たれており、Ti粒子はプラズマトーチ16内に供給されない。
次に、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14において、パルス信号発生器26cからパルス制御信号がFETゲート回路26dおよび間歇供給部22のトリガ回路22aに出力される。
【0058】
次に、FETゲート回路26dからパルス制御信号に基づく変調信号が高周波インバータ電源26aに出力されて高周波発振用コイル16bに供給されるコイル電流が図4に示す矩形波102のようにパルス変調される。
このとき、プラズマガス供給部32からプラズマトーチ16内に、プラズマガスとしては、例えば、アルゴンガスおよび酸素ガスの混合ガスが供給されている。パルス変調されたコイル電流により、変調誘導熱プラズマ炎100が所定の時間間隔で周期的に高温状態と、低温状態になる。
【0059】
高周波変調誘導熱プラズマ発生部14とともに、間歇供給部22のトリガ回路22aにおいては、パルス制御信号に同期するTTLレベルの信号を作成し、このTTLレベルの信号に基づいて電磁コイル22bによりバルブ22cが開閉される。これにより、プラズマトーチ16内の変調誘導熱プラズマ炎100に、パルス制御信号に応じてTi粒子およびArガスが間歇的に供給される。
【0060】
本実施形態においては、共通するパルス制御信号を用いて、高周波変調誘導熱プラズマ発生部14の変調信号およびバルブ22cの開閉信号を作成しているため、変調誘導熱プラズマ炎100が高温状態のときに、Ti粉末がArガスとともに供給され、変調誘導熱プラズマ炎100が低温状態の時には供給されないようにTTLレベルの信号を作成している。これにより、高温状態の変調誘導熱プラズマ炎100により、Ti粉末が蒸発して気相状態の混合物となり、プラズマガスに酸素ガスが含まれ、さらに低温状態の時に、蒸発されたTiが急冷されてTiO2の生成が促進される。
その直後に、この混合物が上流チャンバー18aからその下流の下流チャンバー18b内で急冷され、TiO2微粒子が生成される。すなわち、上流チャンバー18aからその下流の下流チャンバー18bは冷却槽としての機能を有する。
この際、下流のチャンバー18内壁面等から気体を射出してTiO2微粒子がチャンバー18の内壁面への付着を防止することが望ましい。
さらに、真空ポンプ20bで吸引されることにより、生成されたTiO2微粒子がチャンバー18の下流に設けられたフィルター20aの表面で留まった状態にて回収される。
【0061】
また、本実施形態においては、変調誘導熱プラズマ炎100の放射光がプラズマ分光分析部28により分光分析されている。変調誘導熱プラズマ炎100の放射光が光学系28aにより分光器28bに入力され、分光器28bで所定の時間間隔で分光され、得られた分光スペクトルがPMT28cで、所定の倍率に増幅された後、DSP30に出力される。
【0062】
DSP30においては、原料に由来する物質の波長の光について、この場合、Ti粒子を用い、プラズマガスにO2ガスを用いているので、TiとTiOに由来する波長の光について、例えば、図7(b)に示すように、曲線110で表されるTiの放射強度の時間変化、曲線112で表されるTiOの放射強度の時間変化が求められる。
図7(b)に示すTiの放射強度の時間変化(曲線110)およびTiOの放射強度の時間変化(曲線112)と、図7(a)に示すバルブの入力波形信号とを比較すると、バルブ22cが開いている状態よりもバルブ22cが閉じている状態の方がTiの放射強度およびTiOの放射強度が高い。これは、変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときにTi粒子がプラズマトーチ16内に供給されていないことを示している。
【0063】
この場合、Tiの放射強度およびTiOの放射強度の極小値が6ms程度であり、Tiの放射強度およびTiOの放射強度の極大値が13ms程度である。このため、DSP30では、プラズマ炎が高温になるタイミングのずれが、例えば、7ms程度であると判定する。この7msのずれの時間が、ずれ量である。
【0064】
DSP30においては、高周波誘導熱プラズマ発生部14の高周波インバータ電源26aのMOSFETインバータ回路のMOSFETのゲートに供給されるパルス制御信号の位相を、例えば、7msずらすような信号を供給する。このように、例えば、曲線110aで表されるTiの放射強度の時間変化、曲線112aで表されるTiOの放射強度の時間変化となるように、変調誘導熱プラズマ炎100の高温状態、低温状態の温度状態のタイミングがフィードバック制御される。
【0065】
このようにして、変調誘導熱プラズマ炎100を分光分析し、フィードバック制御することにより、変調誘導熱プラズマ炎100が高温状態のときにTi粉末を供給することができる。このため、微細でかつ粒度分布幅の狭いTiO2微粒子を高効率に得ることができる。
【0066】
なお、本実施形態においては、変調誘導熱プラズマ炎100の高温状態、低温状態の温度状態のタイミングをフィードバック制御したが、これに限定されるものではなく、バルブ22cの開閉タイミングを制御してもよい。この場合、DSP30では、トリガ回路22aで作成されるTTLレベルの信号、すなわち、電磁コイル22bへの入力信号の位相を、ずれ量、例えば、7msずらすような信号を供給し、トリガ回路22aに出力する。これにより、原料粉末の供給タイミングとプラズマ炎の変調のタイミングとを合わせて、熱プラズマ炎が高温状態のときに、Ti粉末を供給させるようにすることができる。この場合においても、微細でかつ粒度分布幅の狭いTiO2微粒子を高効率に得ることができる。
【0067】
なお、微粒子の製造方法においては、コイル電流を振幅変調させることなく、すなわち、熱プラズマ炎の温度状態が一定の状態で、原料粉末の供給だけを間歇供給して微粒子を製造することができる。この場合、熱プラズマ炎の温度状態が一定の状態で、Ti粉末を連続的に供給する従来のものに比して、微細でかつ粒度分布幅の狭いTiO2微粒子を高効率に得ることができる。
【0068】
また、微粒子の製造方法においては、フィードバック制御することなく、熱プラズマ炎の温度状態を高温状態と低温状態に周期的に変えるとともに、原料粉末の供給だけを間歇供給して微粒子を製造することができる。この場合、熱プラズマ炎の温度状態が一定の状態で、Ti粉末を間歇的に供給するものに比して、微細でかつ粒度分布幅の狭いTiO2微粒子を高効率に得ることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、原料にTi粉体を用い、キャリアガスで分散させたがこれに限定されるものではなく、原料としては、スラリーまたはコロイド液であってもよい。スラリーまたはコロイド液としては、例えば、Ti粒子を分散媒中に分散、または混濁させたものがある。この場合、原料供給部12に、図8に示す液状原料供給装置90を用いる。この液状原料供給装置90を、配管等を用いてバルブ22cに接続する。
【0070】
液状原料供給装置90は、スラリー92(コロイド液)を入れる容器94と、容器94中のスラリー92を攪拌する攪拌機96と、スラリー92(コロイド液)に高圧をかけてバルブ22cに供給するためのポンプ98と、スラリー92(コロイド液)を液滴化するための噴霧ガス供給源(図示せず)とを有する。そして、押し出し圧力がかけられた噴霧ガスにより液滴化されたスラリー92(コロイド液)がバルブ22cを経てプラズマトーチ16内に供給される。
【0071】
なお、本実施形態では、原料としては、原料を溶媒中に溶解させて溶液にしたものであってもよい。この場合においても、上述のスラリーまたはコロイド液と同様にして、液状原料供給装置90が用いられる。この場合でも、押し出し圧力がかけられた噴霧ガスにより液滴化された、原料が溶解した溶液がバルブ22cを経てプラズマトーチ16内に供給される。
【0072】
なお、本実施形態においては、Ti粒子を酸化させてTiO2微粒子を製造する場合を例として挙げたが、他の元素の粒子を微粒子製造用の原料として用いて、その酸化物,金属,窒化物,炭化物等の微粒子製造を行うことも可能である。
【0073】
例えば、原料としては、熱プラズマ炎により蒸発させられるものであれば、その種類を問わないが、好ましくは、以下のものがよい。すなわち、原子番号3〜6、11〜15、19〜34、37〜52、55〜60、62〜79および81〜83の元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、単体酸化物、複合酸化物、複酸化物、酸化物固溶体、金属、合金、水酸化物、炭酸化合物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物、水素化物、金属塩または金属有機化合物を適宜選択すればよい。
【0074】
なお、単体酸化物とは酸素以外に1種の元素からなる酸化物をいい、複合酸化物とは複数種の酸化物から構成されるものをいい、複酸化物とは2種以上の酸化物からできている高次酸化物をいい、酸化物固溶体とは異なる酸化物が互いに均一に溶け合った固体をいう。また、金属とは1種以上の金属元素のみで構成されるものをいい、合金とは2種以上の金属元素から構成されるものをいい、その組織状態としては、固溶体、共融混合物、金属間化合物あるいはそれらの混合物をなす場合がある。
【0075】
また、水酸化物とは水酸基と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、炭酸化合物とは炭酸基と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、ハロゲン化物とはハロゲン元素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、硫化物とは硫黄と1種以上の金属元素から構成されるものをいう。また、窒化物とは窒素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、炭化物とは炭素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、水素化物とは水素と1種以上の金属元素から構成されるものをいう。また、金属塩は少なくとも1種以上の金属元素を含むイオン性化合物をいい、金属有機化合物とは1種以上の金属元素と少なくともC、O、N元素のいずれかとの結合を含む有機化合物をいい、金属アルコキシドや有機金属錯体等が挙げられる。
【0076】
例えば、単体酸化物としては、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化銀(Ag2O)、酸化鉄、酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(Mn3O4)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ベリリウム(BeO)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化バリウム(BaO)などを挙げることができる。
【0077】
また、複合酸化物としては、アルミン酸リチウム(LiAlO2)、バナジウム酸イットリウム、リン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、ジルコン酸チタン鉛、酸化チタン鉄(FeTiO3)、酸化チタンコバルト(CoTiO3)等を、複酸化物としては、錫酸バリウム(BaSnO3)、(メタ)チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸バリウムに酸化ジルコニウムと酸化カルシウムが固溶した固溶体などを挙げることができる。
さらに、水酸化物としてはZr(OH)4、炭酸化合物としてはCaCO3、ハロゲン化物としてはMgF2、硫化物としてはZnS、窒化物としてはTiN、炭化物としてはSiC、水素化物としてはTiH2等を挙げることができる。
【0078】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【0079】
以下、本発明の微粒子の製造方法の実施例について、具体的に説明する。
本実施例においては、微粒子の製造には、図1に示す製造装置10を用いた。
なお、下記表1に、以下に示す実験例1〜9において共通する実験条件を示す。
【実施例1】
【0080】
実験条件としては、プラズマへの平均入力を20kW一定として、プラズマガスとしてArガス+O2ガスを用いて合計流量を100L/min(標準状態換算、以下同様)、流量組成をAr90%+O210%とした。すなわち、アルゴンガスの流量を90L/min(標準状態換算)とし、O2ガスを10L/min(標準状態換算)とした。また、キャリアガスにはArガスを用い、その流量は4L/minとした。プラズマトーチ内圧力は、300torr(≒40kPa)に固定し、原料Ti粉体には平均直径が45μmのものを用いた。粉体を投入する水冷プローブのトーチ内部挿入長は誘導コイル4,5ターン目の間(挿入長:134mm)とした。
【0081】
【表1】
【0082】
本実施例1においては、下記表2に示すように、プラズマ変調の有無、原料供給方法を変えた実験例1〜3の製造方法で、TiO2微粒子の製造を試みた。
なお、電流変調率(SCL)は、コイルの電流振幅の比(LCL/HCL×100(%))で定義され、実施例1ではSCL=70%とした。
また、間歇供給については、オン時間を12ms、オフ時間を3msとし、1サイクル、15msとした。
【0083】
プラズマの変調の有無については、図1に示す製造装置10において、コイル電流をパルス変調した場合を「変調あり」とし、コイル電流をパルス変調しない場合を「変調なし」とした。また、原料供給方法については、連続供給の場合には、電磁バルブを開けたままの状態とし、間歇供給の場合には、電磁バルブを上述の条件で開閉させた。
【0084】
本実施例では、実験例1〜3で得られた微粒子について、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、平均粒径および粒径の度数分布を調べた。
【0085】
【表2】
【0086】
SEM観察結果:
実験例1〜3の各実験条件で微粒子の製造実験を行い、その結果、フィルター20aで回収した微粒子のSEM画像を図9(a)〜(c)に示す。図9(a)は実験例1、図9(b)は実験例2、図9(c)は実験例3のSEM画像を示している。なお、フィルター20aには、日本フィルター工業社製のバグフィルター(ミクロテックスMT−1000)を用いた。
図9(a)〜(c)に示すように、実験例1〜3のいずれの条件でも、直径数十nmの球状のTiO2のナノ粒子を得ることができた。
【0087】
粒径度数分布・平均粒径:
実験例1〜3について、それぞれ得られた上述のSEM画像を用いて、200個の粒子を無作為に抽出し、その粒径度数分布を調べた。具体的には、異なる測定での倍率10万倍のSEM画像を2枚使用し,それぞれ100個計200個の粒子の粒径を測定した。
その結果を図10(a)〜(c)に示す。図10(a)は実験例1、図10(b)は実験例2、図10(c)は実験例3の結果を示すものである。
図10(a)〜(c)は、粒径の度数分布および累積割合を示すものであり、さらに平均粒径、d50および粒径の標準偏差の各値も示す。
【0088】
実験例1は、従来例に相当するものであり、平均粒径、d50および粒径の標準偏差がいずれも、実験例1〜3の中で最も大きい。
実験例2は、実験例1に比して間歇供給する点が異なる。実験例2は、平均粒径、d50および粒径の標準偏差がいずれも実験例1よりも小さい。このように、間歇供給することにより、平均粒径、d50および粒径の標準偏差を小さくすることができた。
【0089】
実験例3は、実験例1に比してプラズマ変調する点が異なる。実験例3は、平均粒径、d50および粒径の標準偏差がいずれも実験例1よりも小さく、しかも実験例2よりも小さい。
【実施例2】
【0090】
次に、プラズマ変調と原料の間歇投入による効果を検討した。本実施例2においては、微粒子の製造には、図1に示す製造装置10において、DSP30の信号をトリガ回路22aに接続し、原料投入のバルブ開閉タイミングをフィードバック制御した。下記表3に示すように、プラズマ変調の有無、原料供給方法、およびフィードバックにより原料投入のバルブ開閉タイミングを変えた実験例4〜9の製造方法で、TiO2微粒子の製造を試みた。なお、本実施例2では、SCLは80%とした以外は、実施例1と同様の実験条件でTiO2微粒子の製造を試みた。
【0091】
【表3】
【0092】
実験例4〜9の各実験条件で微粒子の製造実験を行い、その結果、フィルター20aで回収した微粒子の平均粒径を図11に示す。本実施例2において、平均粒径は、実施例1と同様にSEM画像を用いて求めた。
【0093】
コイル電流をパルス変調した、プラズマ変調ありの場合では、原料を連続供給した実験例5と、間歇投入した場合において、バルブ開閉タイミングをフィードバック制御しない実験例6では、製造された微粒子の平均粒径は、ほぼ同等であった。
一方、TiOの放射強度のタイミングを元にフィードバックを行い、原料投入のバルブ開閉タイミングを6msまたは8ms遅延させた実験例7、実験例8においては、実験例5に比して、さらに平均粒径が小さい微粒子を製造することができた。原料投入のバルブ開閉タイミングを12ms遅延させた実験例9は、実験例7、8に比して平均粒径が大きい。これは、図7(a)、(b)に示す例では、ずれ量は7ms程度であるのに対して、12msと遅延時間が長く原料投入のバルブ開閉タイミングがずれているためであると考えられる。しかしながら、単に間歇供給する実施例4に比して平均粒径が小さい。
【符号の説明】
【0094】
10 微粒子の製造装置(製造装置)
12 原料供給部
14 高周波誘導熱プラズマ発生部
16 プラズマトーチ
18 チャンバー
20 回収部
22 間歇供給部
24 水冷プローブ
28 プラズマ分光分析部
30 DSP
32 プラズマガス供給部
100 熱プラズマ炎または変調誘導熱プラズマ炎
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子の製造装置であって、
微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給する原料供給手段と、
内部に前記熱プラズマ炎が発生されるものであり、前記原料供給手段により間歇的に供給される前記原料を前記熱プラズマ炎で蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、
前記プラズマトーチの内部に前記熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生手段とを有することを特徴とする微粒子の製造装置。
【請求項2】
前記プラズマ発生手段は、前記プラズマトーチに設けられたコイルに前記熱プラズマ炎を発生させるための電流を供給するとともに、前記コイルへの電流を振幅変調させることができる電源部を備えるものであり、
前記プラズマ発生手段は、前記コイルへの電流を振幅変調させることにより前記熱プラズマ炎を周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にさせ、前記熱プラズマ炎の温度状態が時間変調された変調誘導熱プラズマ炎を発生させるものである請求項1に記載の微粒子の製造装置。
【請求項3】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析する分光分析手段と、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記プラズマ発生手段に、前記原料が前記変調誘導熱プラズマ炎に供給されたときに、前記コイルへの電流の振幅を相対的に大きくし、前記変調誘導熱プラズマ炎を高温状態させる制御部とを有する請求項2に記載の微粒子の製造装置。
【請求項4】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析する分光分析手段と、
前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記原料供給手段に、前記コイルへの電流の振幅が相対的に大きくなり、前記変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときに、前記原料を前記変調誘導熱プラズマ炎に供給させる制御部とを有する請求項2に記載の微粒子の製造装置。
【請求項5】
前記原料供給手段は、前記原料を粒子状態に分散させ、前記粒子状態に分散された前記原料を間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項6】
微粒子の製造方法であって、
微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給して、前記原料を蒸発させ気相状態の混合物とし、この混合物を冷却して微粒子を製造することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されて周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態とにされる変調誘導熱プラズマ炎に、前記原料を間歇的に供給する請求項6に記載の微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析し、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記原料が前記変調誘導熱プラズマ炎に供給されたときに、前記変調誘導熱プラズマ炎を高温状態する請求項7に記載の微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析し、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときに、前記原料を前記変調誘導熱プラズマ炎に供給する請求項7に記載の微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記原料は、粒子状態に分散されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される請求項6〜9のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項1】
微粒子の製造装置であって、
微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給する原料供給手段と、
内部に前記熱プラズマ炎が発生されるものであり、前記原料供給手段により間歇的に供給される前記原料を前記熱プラズマ炎で蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、
前記プラズマトーチの内部に前記熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生手段とを有することを特徴とする微粒子の製造装置。
【請求項2】
前記プラズマ発生手段は、前記プラズマトーチに設けられたコイルに前記熱プラズマ炎を発生させるための電流を供給するとともに、前記コイルへの電流を振幅変調させることができる電源部を備えるものであり、
前記プラズマ発生手段は、前記コイルへの電流を振幅変調させることにより前記熱プラズマ炎を周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にさせ、前記熱プラズマ炎の温度状態が時間変調された変調誘導熱プラズマ炎を発生させるものである請求項1に記載の微粒子の製造装置。
【請求項3】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析する分光分析手段と、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記プラズマ発生手段に、前記原料が前記変調誘導熱プラズマ炎に供給されたときに、前記コイルへの電流の振幅を相対的に大きくし、前記変調誘導熱プラズマ炎を高温状態させる制御部とを有する請求項2に記載の微粒子の製造装置。
【請求項4】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析する分光分析手段と、
前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記原料供給手段に、前記コイルへの電流の振幅が相対的に大きくなり、前記変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときに、前記原料を前記変調誘導熱プラズマ炎に供給させる制御部とを有する請求項2に記載の微粒子の製造装置。
【請求項5】
前記原料供給手段は、前記原料を粒子状態に分散させ、前記粒子状態に分散された前記原料を間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項6】
微粒子の製造方法であって、
微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に間歇的に供給して、前記原料を蒸発させ気相状態の混合物とし、この混合物を冷却して微粒子を製造することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されて周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態とにされる変調誘導熱プラズマ炎に、前記原料を間歇的に供給する請求項6に記載の微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析し、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記原料が前記変調誘導熱プラズマ炎に供給されたときに、前記変調誘導熱プラズマ炎を高温状態する請求項7に記載の微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記変調誘導熱プラズマ炎について前記原料に由来する波長の光を分光分析し、前記原料に由来する波長の光の分光分析の結果に基づいて、前記変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときに、前記原料を前記変調誘導熱プラズマ炎に供給する請求項7に記載の微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記原料は、粒子状態に分散されて間歇的に前記熱プラズマ炎または前記変調誘導熱プラズマ炎に供給される請求項6〜9のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【公開番号】特開2012−55840(P2012−55840A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202351(P2010−202351)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】
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