説明

微粒子コーティング装置及び微粒子コーティング方法

【課題】高圧ガスを用いることなく、よりシンプルな構成の装置にて、微粒子を被コーティング部材により高速で衝突させることが可能であり、より短時間にコーティングできる、微粒子コーティング装置及び微粒子コーティング方法を提供する。
【解決手段】内部を減圧したチャンバ10と第1直流電源20と針金状の線状電極部材30と微粒子NRの径よりも大きな幅のスリット31Sが形成された円筒状の筒状電極部材31とを備え、筒状電極部材には微粒子が収容または供給され、線状電極部材と筒状電極部材は、互いに接触しないように、且つ筒状電極部材の軸位置に線状電極部材が位置するようにチャンバ内に配置され、被コーティング部材Wは、チャンバ内にスリットと対向する位置に配置されている。第1直流電源は、線状電極部材と筒状電極部材との間に第1電位差を与え、筒状電極部材内の微粒子を、スリットから出射させて被コーティング部材に衝突させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子等の種々の微粒子を、種々の被コーティング部材の表面にコーティングする、微粒子コーティング装置及び微粒子コーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体状態のセラミックス微粒子を、加熱することなく常温にて被コーティング部材に高速で吹き付けることで、衝撃エネルギーを利用して被コーティング部材に硬質のセラミックス被膜を形成するエアロゾルデポジション法(以下、AD法と記載する)が開発されている。
AD法は、ドライ状態で被膜を形成できるので、従来の、微粒子混合液を吹き付けた後に液体を蒸発させる(加熱・乾燥させる)工程及び設備が不要であり、設備及びコストを抑制し、被コーティング部材の材料を選ばず、短時間に、均一な被膜を、高品質に形成することができる。
AD法では、図10に示すように、タンク120内の高圧ガスを、流量調整手段121を介して微粒子NR(O)が収容されているエアロゾル発生器122に導入してタバコの煙のようなエアロゾル状態にした後、所定の粒径分布を保つように解砕・分級器123を経由させて、ノズル130から高圧噴射する。チャンバ10内は減圧手段11(真空ポンプ等)にて減圧されており、微粒子を含むエアロゾルは減速されることなく高速で被コーティング部材Wの表面に衝突し、その衝撃エネルギーで破砕・変質して常温で固化する。なお、図10において、相対移動手段12は被コーティング部材Wを任意の方向に移動及び回転可能であり、濃度調整器150は、レーザ光等を用いた測定手段151、152からの信号に基づいて流量調整手段121を制御して微粒子の濃度や流量を調整している。
また、特許文献1に記載された従来技術では、所定間隔に配置した電極間に、微粒子と、微粒子の径よりも大きな径の補助粒子と、を配置し、電極間に被コーティング部材を配置している。そして電極間に電位差を与え、微粒子と補助粒子とを電極間で往復運動させて補助粒子で微粒子を分散させるとともに、補助粒子にて被コーティング部材に微粒子を叩き付けてコーティングする、微粒子のコーティング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−137122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AD法は、高圧ガスを必要としており、装置が大型化及び複雑化する可能性がある。また、チャンバ10内の空気を減圧手段11にて減圧しているにもかかわらず、微粒子を含むエアロゾル(高圧ガス)をノズル130から噴射しており、減圧手段11の効率が悪い。また図10において、ノズル130におけるノズル幅WNの長さが数[mm]程度までという制限があり、更なるコーティング時間の短縮化は困難である。
また、特許文献1に記載された従来技術では、高圧ガスを用いることなく直流電源を用いており、装置が単純で小型化が可能である。しかし、特許文献1に記載されたコーティング方法を減圧されたチャンバ内で行ったとしても、被コーティング部材Wに衝突させる微粒子の速度を、AD法と同等まで高速化することは非常に困難である。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、高圧ガスを用いることなく、よりシンプルな構成の装置にて、微粒子を被コーティング部材により高速で衝突させることが可能であり、より短時間にコーティングできる、微粒子コーティング装置及び微粒子コーティング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの微粒子コーティング装置である。
請求項1に記載の微粒子コーティング装置は、仕切られた空間を形成しているチャンバと、減圧手段と、第1直流電源と、導電性を有して所定の径にて任意の長さの針金状の線状電極部材と、導電性を有して前記線状電極部材の径よりも大きな径の円筒状であって軸方向に任意の長さの筒状電極部材と、を備えた微粒子コーティング装置である。
前記筒状電極部材には、軸方向に、微粒子の径よりも大きな幅のスリットが形成されており、被コーティング部材にコーティングする微粒子が収容または供給されており、前記線状電極部材と前記筒状電極部材は、互いに接触しないように、且つ前記筒状電極部材の軸位置に前記線状電極部材が位置するように、前記チャンバ内に配置されている。
前記減圧手段は、前記チャンバ内を減圧し、前記被コーティング部材は、前記チャンバ内に、且つ前記筒状電極部材の前記スリットと対向する位置に配置されている。
そして前記第1直流電源は、前記線状電極部材と前記筒状電極部材との間に第1電位差を与え、前記筒状電極部材内で前記第1電位差に基づいて運動している微粒子を、前記スリットから出射させて前記被コーティング部材に衝突させて、前記被コーティング部材に微粒子をコーティングする。
【0006】
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの微粒子コーティング装置である。
請求項2に記載の微粒子コーティング装置は、請求項1に記載の微粒子コーティング装置であって、前記線状電極部材と前記筒状電極部材は、前記スリットが下向きにならないように、水平に配置されており、前記筒状電極部材における下側となる面には、微粒子の径よりも大きな径の単数または複数の被供給側貫通孔が形成されており、前記チャンバ内における前記筒状電極部材の下方には、単数または複数の微粒子出射供給手段が配置されている。
前記微粒子出射供給手段は、互いに平行となるように所定間隔にて水平に配置した2枚の板状電極部材と、2枚の板状電極部材のそれぞれを互いに電気的に絶縁した状態で前記所定間隔を保持するとともに2枚の板状電極部材の間に所定空間を形成する筒状壁部材と、で構成され、前記所定空間には、微粒子と、微粒子の径よりも大きな径の供給側補助粒子と、が収容されており、2枚の板状電極部材は、前記第1直流電源から前記第1電位差が与えられ、あるいは第2直流電源が設けられて当該第2直流電源から第2電位差が与えられ、2枚の板状電極部材における上側の板状電極部材には、前記所定空間における任意の位置に微粒子の径よりも大きな径の単数または複数の供給側貫通孔が形成されている。
前記微粒子出射供給手段は、前記供給側貫通孔と前記被供給側貫通孔とが対向するように配置されており、前記第1電位差あるいは前記第2電位差に基づいて運動する前記供給側補助粒子にて分散された微粒子を、前記第1電位差あるいは前記第2電位差に基づいて2枚の板状電極部材の間で往復運動させて、前記供給側貫通孔と前記被供給側貫通孔を経由させて前記筒状電極部材内に供給する。
【0007】
また、本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの微粒子コーティング装置である。
請求項3に記載の微粒子コーティング装置は、請求項2に記載の微粒子コーティング装置であって、前記供給側貫通孔の径は、前記供給側補助粒子の径よりも小さく形成されている。
【0008】
また、本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの微粒子コーティング装置である。
請求項4に記載の微粒子コーティング装置は、請求項1に記載の微粒子コーティング装置であって、前記線状電極部材と前記筒状電極部材は、鉛直方向に沿って、あるいは鉛直方向に対して所定角度に傾斜させるとともに前記スリットが下向きにならないように、配置されており、前記筒状電極部材の両端部における上方となる一方の端部から、前記筒状電極部材の内部に微粒子を落下させて供給する微粒子落下供給手段を備えている。
【0009】
また、本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりの微粒子コーティング装置である。
請求項5に記載の微粒子コーティング装置は、請求項1に記載の微粒子コーティング装置であって、前記線状電極部材と前記筒状電極部材は、前記スリットが下向きにならないように、水平に配置されており、前記筒状電極部材内には、微粒子の径よりも大きな径の出射側補助粒子が収容されており、前記第1電位差に基づいて前記出射側補助粒子を運動させて、前記筒状電極部材内の微粒子を分散させ、分散した微粒子を前記第1電位差に基づいて運動させて前記スリットから出射する。
【0010】
また、本発明の第6発明は、請求項6に記載されたとおりの微粒子コーティング装置である。
請求項6に記載の微粒子コーティング装置は、請求項5に記載の微粒子コーティング装置であって、前記スリットの幅は、前記出射側補助粒子の径よりも小さく形成されている。
【0011】
また、本発明の第7発明は、請求項7に記載されたとおりの微粒子コーティング装置である。
請求項7に記載の微粒子コーティング装置は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微粒子コーティング装置であって、前記筒状電極部材と前記被コーティング部材が電気的に接地されている。
【0012】
また、本発明の第8発明は、請求項8に記載されたとおりの微粒子コーティング装置である。
請求項8に記載の微粒子コーティング装置は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の微粒子コーティング装置であって、
前記筒状電極部材の前記スリットの位置に対して、前記被コーティング部材を相対的に移動可能な相対移動手段を備えている。
【0013】
また、本発明の第9発明は、請求項9に記載されたとおりの微粒子コーティング方法である。
請求項9に記載の微粒子コーティング方法は、仕切られた空間を形成しているチャンバと、減圧手段と、被コーティング部材と、導電性を有して所定の径にて任意の長さの針金状の線状電極部材と、導電性を有して前記線状電極部材の径よりも大きな径の円筒状であって軸方向に任意の長さの筒状電極部材と、第1直流電源と、相対移動手段と、を用いる。
そして前記筒状電極部材に、軸方向に、微粒子の径よりも大きな幅のスリットを形成し、前記筒状電極部材の内側に、被コーティング部材にコーティングする微粒子を収容または供給し、前記線状電極部材と前記筒状電極部材を、互いに接触しないように、且つ前記筒状電極部材の軸位置に前記線状電極部材が位置するように前記チャンバ内に配置し、前記被コーティング部材を、前記筒状電極部材の前記スリットと対向するように前記チャンバ内に配置する。
そして前記減圧手段にて前記チャンバ内を減圧するステップと、前記第1直流電源にて、前記線状電極部材と前記筒状電極部材との間に第1電位差を与えるステップと、前記相対移動手段を用いて前記筒状電極部材及び前記線状電極部材に対して前記被コーティング部材を相対的に移動させながら、前記筒状電極部材内で前記第1電位差に基づいて運動している微粒子を、前記スリットから出射させて前記被コーティング部材に衝突させて、前記被コーティング部材に微粒子をコーティングするステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜8に記載の微粒子コーティング装置、または請求項9に記載の微粒子コーティング方法を用いれば、加熱・乾燥の工程が必要なく、高圧ガスも必要なく、減圧されたチャンバと直流電流と線状電極部材と筒状電極部材の、よりシンプルな構成の装置にて微粒子コーティング装置を実現することができる。
また、チャンバ内を減圧して空気抵抗を低減するとともに、線状電極部材と筒状電極部材を同軸上(中心軸の位置)に配置することで、平行に配置した平面にて微粒子に与えることが可能な電場のエネルギーよりも、線状電極部材から非常に大きな電場のエネルギーを微粒子に与えることが可能であり、微粒子をより高速に運動させて被コーティング部材に衝突させることができる。
また、微粒子を出射させるスリット31Sの長さは、特に制限がないので、より短時間にコーティングをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態における微粒子コーティング装置1の全体構成を説明する図である。
【図2】線状電極部材30と筒状電極部材31の概略形状を説明する図である。
【図3】微粒子出射供給手段40の概略形状を説明する図である。
【図4】第1の実施の形態において、微粒子NR(K)の供給と、微粒子NR(S)がスリット31Sから高速で出射される様子を説明する図である。
【図5】線状電極部材30にて帯電した微粒子における、線状電極部材30から筒状電極部材31に向かう方向への距離と、微粒子の運動速度との関係を説明する図である。
【図6】第2の実施の形態における微粒子コーティング装置2の全体構成を説明する図である。
【図7】第2の実施の形態において、微粒子NR(K)の供給と、微粒子NR(S)がスリット31Sから高速で出射される様子を説明する図である。
【図8】第3の実施の形態における微粒子コーティング装置3の全体構成を説明する図である。
【図9】第3の実施の形態において、微粒子NR(S)がスリット31Sから高速で出射される様子を説明する図である。
【図10】AD法を用いて微粒子を被コーティング部材Wにコーティングする、従来のコーティング装置100の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための第1〜第3の実施の形態を、図面を用いて説明する。第1〜第3の実施の形態のそれぞれは、被コーティング部材Wにコーティングする微粒子NRの供給方法が異なる。
なお、以下の説明では、被コーティング部材Wにコーティングする微粒子について、微粒子NR(O)、微粒子NR(K)、微粒子NR(S)のいずれかを用いて説明するが、どれも同じ微粒子であるが、運動状態が異なる。微粒子NR(O)は静止状態を示しており、微粒子NR(S)は被コーティング部材Wに衝突する非常に高速で運動している状態を示しており、微粒子NR(K)は微粒子NR(O)と微粒子NR(S)の間の速度で運動している状態を示している。
以下、第1の実施の形態から順に説明する。
【0017】
●●[第1の実施の形態(図1〜図5)]
図1は、第1の実施の形態における微粒子コーティング装置1の全体構成の例を示している。第1の実施の形態では、微粒子出射供給手段40から微粒子NR(K)を出射させて、筒状電極部材31内に微粒子を供給する微粒子コーティング装置1である。
●[全体構成(図1)]
図1の例に示す第1の実施の形態における微粒子コーティング装置1は、チャンバ10と、減圧手段11と、相対移動手段12と、第1直流電源20と、第2直流電源21と、線状電極部材30と、筒状電極部材31と、微粒子出射供給手段40と、調整手段50と、測定手段51、52とを備えている。
仕切られた空間を形成しているチャンバ10の内部には、微粒子NRをコーティングする対象物である被コーティング部材Wと、線状電極部材30と、筒状電極部材31と、微粒子出射供給手段40と、微粒子NR(S)の濃度や流量等を測定する測定手段51、52が収容されている。
【0018】
被コーティング部材Wは、相対移動手段12と連結され、筒状電極部材31のスリット31Sに対して、例えばX軸、Y軸、Z軸の直交3軸の方向に相対的に平行移動が可能であるとともに、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの軸の回りに旋回可能であり、スリット31Sと対向する位置に配置されている。
また、チャンバ10の内部は、減圧手段11(真空ポンプ等)にて減圧され、筒状電極部材31に形成されているスリット31Sから出射される微粒子NR(S)の空気抵抗を減少させ、微粒子NR(S)の速度の低下を防ぐ。
なお第1〜第3の実施の形態では、減圧手段11による減圧の度合いは、線状電極部材30と筒状電極部材31との間にてプラズマが発生しない、10-4パスカル程度まで減圧した。
【0019】
測定手段51、52は、例えばレーザ光等を用いたセンサであり、調整手段50は、測定手段51、52からの信号に基づいて、筒状電極部材31に供給する微粒子NR(K)の量を調整するために、第2直流電源21を制御し、被コーティング部材Wにコーティングされる微粒子NR(S)の量が所定量(所定濃度や所定流量等)となるように制御する。
なお、測定手段51、52、調整手段50は省略してもよい。
【0020】
●[微粒子出射供給手段40の構成(図1、図3、図4)]
図3に示すように、微粒子出射供給手段40は、互いに平行となるように所定間隔に配置された2枚の板状電極部材41、42と、板状電極部材41、42の間に所定空間40Kを形成するとともに板状電極部材41、42のそれぞれが互いに電気的に絶縁した状態で所定間隔を保持するための筒状壁部材43と、で構成されている。また上方の板状電極部材41には、板状電極部材41と42の間で往復運動する微粒子NR(K)を外部に出射させるための、単数または複数の供給側貫通孔HKが任意の位置に設けられている。
所定空間40Kには、微粒子NR(O)と、微粒子NR(O)の径(例えば約0.9[nm])よりも大きな径(例えば約数十[μm])の補助粒子BR(K)(セラミック粒子等であり、供給側補助粒子に相当)が収容されている。
【0021】
そして板状電極部材41、42は、第2直流電源21から第2電位差が与えられるように接続されるが、板状電極部材41の方が板状電極部材42よりも高い電位となるように接続されていてもよいし、板状電極部材41の方が板状電極部材42よりも低い電位となるように接続されていてもよい。本実施の形態では、上方の板状電極部材41の方が、下方の板状電極部材42よりも低い電位となるように接続され、板状電極部材41が電気的に接地されている接続の例を示している。
この接続状態にて第2直流電源21から第2電位差(例えば約20[KV]の電位差)を与えると、補助粒子BR(K)が板状電極部材41と42の間で往復運動し、凝集している微粒子NR(O)は補助粒子BR(K)にて分散される。そして分散された微粒子NR(K)も補助粒子BR(K)と同様に板状電極部材41と42の間で往復運動し、やがて供給側貫通孔HKから微粒子NR(K)が出射される。
補助粒子BR(K)(または微粒子NR(O))が往復運動する原理は、まず、静止している補助粒子BR(K)(または微粒子NR(O))が、下方の板状電極部材42にて+(または−)に帯電され、−側(または+側)である上方の板状電極部材41の側に移動する(電場で加速される)。板状電極部材41の側に移動した補助粒子(K)(または微粒子NR(K))は、板状電極部材41に接触すると、今度は−(または+)に帯電し、+側(または−側)である下方の板状電極部材42の側に移動する(電場で加速される)。この帯電と移動を繰り返して往復運動する。
【0022】
なお、供給側貫通孔HKの径は、微粒子NR(K)の径よりも大きい径であればよいが、微粒子NR(K)の径よりも大きく、補助粒子BR(K)の径よりも小さく設定すると、補助粒子BR(K)が外部に飛び出すことを防止することができる。
また、供給側貫通孔HKは単数でも複数でもよく、筒状電極部材31に形成された被供給側貫通孔HTに対応する数であればよい。
なお、微粒子出射供給手段40に第2直流電源21を接続せず、第1直流電源20を用いて第1電位差を与え、第2直流電源21を省略してもよい。
【0023】
また、図1の例では、複数の微粒子出射供給手段40を水平に配置した例を示しているが、1個の微粒子出射供給手段40を水平に配置し(この場合、測定手段51、52、第2直流電源21も各1個でよい)、供給側貫通孔HKを複数設けてもよい。
そして図4に示すように、微粒子出射供給手段40の供給側貫通孔HKから出射した微粒子NR(K)は、供給側貫通孔HKに対向する位置に設けられた筒状電極部材31の被供給側貫通孔HTを通って筒状電極部材31の内部へと供給される。
【0024】
●[線状電極部材30と筒状電極部材31の構成(図1、図2、図4)]
図2及び図4に示すように、線状電極部材30は、導電性を有して所定の径RSにて任意の長さLSの針金状であり、筒状電極部材31は、導電性を有して線状電極部材30の径RSよりも大きな径RTにて任意の長さLTの円筒状である。そして線状電極部材30と筒状電極部材31は、第1直流電源20にて、第1電位差が与えられるように接続されている。なお、線状電極部材30の方が筒状電極部材31よりも高い電位となるように接続されていてもよいし、線状電極部材30の方が筒状電極部材31よりも低い電位となるように接続されていてもよい。本実施の形態では、線状電極部材30の方が、筒状電極部材31よりも高い電位となるように接続された例を示している。
そして図4に示すように、線状電極部材30と筒状電極部材31は、互いに接触しないように、且つ筒状電極部材31の同軸上に(中心軸の位置に)線状電極部材30が位置するようにチャンバ10内に配置されている。
【0025】
なお、第1直流電源20の+側、−側のいずれを電気的に接地してもよいが、以下のように接地すると、より好ましい。
筒状電極部材31を電気的に接地し、被コーティング部材Wは、出射された微粒子NR(S)を反発しないように、筒状電極部材31と同じ電位となるように接地する。
また同様に、図4において、筒状電極部材31が、微粒子出射供給手段40から出射された微粒子NR(K)を反発しないように、筒状電極部材31と板状電極部材41とが同じ電位となるように接地する。
ここで、線状電極部材30、筒状電極部材31、被コーティング部材W、(上方の)板状電極部材41、(下方の)板状電極部材42の電気的な接続をまとめておく。
筒状電極部材31と被コーティング部材Wと板状電極部材41を電気的に接地すれば、筒状電極部材31に対して線状電極部材30が高い電位となるように接続されていてもよいし、筒状電極部材31に対して線状電極部材30が低い電位となるように接続されていてもよい。また、板状電極部材41に対して板状電極部材42が高い電位となるように接続されていてもよいし、板状電極部材41に対して板状電極部材42が低い電位となるように接続されていてもよい。
また、線状電極部材31と板状電極部材42の双方を低い電位、または双方を高い電位となるように接続した場合は、微粒子出射供給手段40から出射された微粒子NR(K)が線状電極部材30に向かうように、供給側貫通孔HKと被供給側貫通孔HTと線状電極部材30とが直線上に並ぶように配置することが好ましい。
また、線状電極部材31と板状電極部材42の一方を低い電位、他方を高い電位となるように接続した場合は、微粒子出射供給手段40から出射された微粒子NR(K)が加速されてそのままスリット31Sから出射されないように、線状電極部材30を避けるように、供給側貫通孔HKと被供給側貫通孔HTとスリット31Sとが直線上に並ぶように配置することが好ましい(スリット31Sと線状電極部材30と被供給側貫通孔HTと供給側貫通孔HKとが直線上に並ばないように、被供給側貫通孔HTと供給側貫通孔HKの位置を、図4においてスリット31Sと線状電極部材30とを結んだ直線上からずらした位置とする)。
【0026】
また図2及び図4に示すように、筒状電極部材31には、微粒子の径よりも大きなスリット幅31Wのスリット31Sが軸方向に沿って形成されており、微粒子出射供給手段40から微粒子NR(K)の供給を受けるための単数または複数の被供給側貫通孔HTが形成されている。
なお、筒状電極部材31の長さLTと線状電極部材30の長さLSは、特に制限がなく任意の長さに設定することができる。筒状電極部材31の長さLTと線状電極部材30の長さLSを長くすると、微粒子NR(S)を出射するスリット31Sが長くなり、コーティング時間をより短縮できるので、より好ましい。
そして図4に示すように、微粒子NR(S)はスリット31Sから出射される(線状電極部材30からスリット31Sに向かう方向に出射される)ので、このスリット31Sと対向する位置に被コーティング部材Wが配置されている。
また、図2に示す絶縁蓋32は、筒状電極部材31の両端部の開口部を覆う蓋であり、線状電極部材30を挿通可能な貫通孔が設けられている。なお、絶縁蓋32は省略してもよい。
また、本実施の形態では、筒状電極部材31を水平に配置し、スリット31Sが上側に位置するように配置したが、特に水平に配置しなくてもよく、スリット31Sも下側にならなければ、特にどの方向に向けられていてもよい。
【0027】
そして、図4に示すように、筒状電極部材31と線状電極部材30には、第1直流電源20から第1電位差(例えば50[KV]の電位差)が与えられ、筒状電極部材31内に供給された微粒子NR(K)は、線状電極部材30と筒状電極部材31との間で往復運動を繰り返し、やがてスリット31Sから微粒子NR(S)が出射される。
なお、微粒子NR(K)が線状電極部材30と筒状電極部材31との間で往復運動する原理は、板状電極部材41と42との間で往復運動する補助粒子BR(K)(または微粒子NR(K))の場合と同様であり、供給された微粒子NR(K)が筒状電極部材31に接触した場合に−(または+)に帯電し、+側(または−側)である線状電極部材30の側に移動する。そして線状電極部材30に接触すると、+(または−)に帯電し、−側(または+側)である筒状電極部材31の側に移動する。この帯電と移動を繰り返して往復運動する。
この微粒子NR(S)がスリット31Sから出射する速度が重要である。
スリット31Sから出射する微粒子NR(S)の速度を大きくするには、筒状電極部材31内にて微粒子に与えるエネルギーをより大きくする必要がある。筒状電極部材31内の微粒子には、第1直流電源20からの第1電位差に基づいたエネルギーが与えられる。
【0028】
ここで、平行に配置した板状電極部材41と42の構成に対する、線状電極部材30と筒状電極部材31の構成のメリットについて説明する。
微粒子NR(K)に与えるエネルギーの大きさは、平行に配置した板状電極部材41と42の構成においては各電極間に与える電位差と微粒子の電荷(電極間の距離(電場))に依存する。また、線状電極部材30と筒状電極部材31の構成においては各電極間に与える電位差と電極間の距離と、線状電極部材30の径に対する筒状電極部材31の径の比、に依存する。
一般的に実用できる直流電源は、50[KV]程度までのものである。そこで、50[KV]の直流電源を用いて、微粒子の出射速度が、図10に示す従来のAD法と同等の速度となるようにするには、平行に配置した板状電極部材41と42の構成では、電極間の距離を非常に小さくしなければならなくなり、実際には電極間の絶縁状態を維持できずに放電してしまい、電圧が維持できない。
ところが、線状電極部材30と筒状電極部材31の構成では、同じ50[KV]の直流電源を用いても、筒状電極部材31の径に対する線状電極部材30の径の比を小さくすることで、線状電極部材近傍の電場のみを大きくすることができ、それによって微粒子の電荷を飛躍的に大きくでき、電極間の放電を発生させることなく、微粒子の出射速度を大きくすることができる。例えば、板状電極部材41と42の構成において電位差が50[KV]、電極間の距離が10[mm]の場合に微粒子に与えることができるエネルギーを『W』とする。そして、線状電極部材30と筒状電極部材31の構成において電位差が50[KV]、電極間の距離(筒状電極部材31のほぼ半径)が10[mm]、線状電極部材の径が0.1[mm](筒状電極部材の直径(RT)/線状電極部材の直径(RS)=約200)の場合に微粒子に与えることができるエネルギーは、理論上、『W』の約25倍となる。
従って、筒状電極部材の直径(RT)/線状電極部材の直径(RS)を大きくしていくだけで、電極間の放電を発生させることなく、微粒子の出射速度を大きくすることが可能であり、実際に微粒子の出射速度を、AD法と同等の速度に到達させることができる。
【0029】
例えば、第1直流電源20から与える第1電位差を20[KV]、微粒子NRの径を1[nm]、線状電極部材30の表面から筒状電極部材31の内壁までの距離Rを5[mm]、線状電極部材30の径RSを0.1[mm](すなわち、筒状電極部材31の径RT/線状電極部材30の径RS=100)、チャンバ10内の圧力を10-4[パスカル]、とした場合、出射される微粒子NR(S)の速度は、理論上、300[m/sec]に達し、常温で被コーティング部材Wに衝突させて被膜を成形させる(コーティングする)のに充分な速度に到達させることができる。
なお図5は、微粒子NR(S)における、線状電極部材30(の表面)からの距離と、微粒子NR(S)の速度の関係の例を示すグラフである。このグラフから判るように、微粒子NR(S)は、距離Rの位置(すなわちスリット31Sの位置)にて最大速度Vmに達し、その速度Vmにて被コーティング部材Wに衝突する。
【0030】
●●[第2の実施の形態(図6、図7)]
図6は、第2の実施の形態における微粒子コーティング装置2の全体構成の例を示している。第2の実施の形態では、微粒子落下供給手段60から適量の微粒子NR(O)を落下させて、筒状電極部材31内に微粒子を供給する微粒子コーティング装置2である。以下、第1の実施の形態にて説明した微粒子コーティング装置1との相違点について主に説明する。
【0031】
●[全体構成(図6)]
図6に示す第2の実施の形態における微粒子コーティング装置2は、図1に示す微粒子コーティング装置1に対して、線状電極部材30及び筒状電極部材31が鉛直方向、または鉛直方向に対して所定角度に傾斜するようにチャンバ10内に配置されている。なお、傾斜させる場合は、微粒子がスリットから落下しないように、スリット31Sが下向きにならないようにすることが好ましい。
そして被コーティング部材W及び相対移動手段12は、筒状電極部材31のスリット31Sと対向する位置に配置されている。
また、図1に示す微粒子コーティング装置1に対して、微粒子出射供給手段40の代わりに、微粒子落下供給手段60が、筒状電極部材31の上端部に配置されている。
また、線状電極部材30及び筒状電極部材31のそれぞれの形状は、被供給側貫通孔HTが設けられていない点を除き、第1の実施の形態と同じである。また、線状電極部材30と筒状電極部材31が同軸上に配置されている点も第1の実施の形態と同じであり、第1直流電源20の接続も、第1の実施の形態と同じである。
【0032】
●[微粒子の供給方法と微粒子が出射される様子(図7)]
図7に示すように、第2の実施の形態では、コーティングに使用される微粒子NR(O)は、微粒子落下供給手段60にストックされている。
測定手段51、52は、例えばレーザ光等を用いたセンサであり、調整手段50は、測定手段51、52からの信号に基づいて、筒状電極部材31に供給する微粒子NR(O)の落下量を調整するために、微粒子落下供給手段60の開閉手段61を制御し、被コーティング部材Wにコーティングされる微粒子NR(S)の量が所定濃度となるように制御する。
なお、測定手段51、52、調整手段50は省略してもよい。
測定手段51、52、調整手段50を省略する場合は、一定量の微粒子NR(O)が随時落下するように開閉手段61を調整しておく。
なお、筒状電極部材31の内部に落下して供給された微粒子NR(O)がスリット31Sから出射される動作は第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0033】
●●[第3の実施の形態(図8、図9)]
図8は、第3の実施の形態における微粒子コーティング装置3の全体構成の例を示している。第3の実施の形態では、第1の実施の形態(図1)における微粒子出射供給手段40も、第2の実施の形態(図6)における微粒子落下供給手段60も備えておらず、微粒子NR(O)を予め筒状電極部材31内に収容している。以下、第1の実施の形態にて説明した微粒子コーティング装置1との相違点について主に説明する。
【0034】
●[全体構成(図8)]
図8に示す第3の実施の形態における微粒子コーティング装置3は、図1に示す微粒子コーティング装置1に対して、微粒子出射供給手段40、第2直流電源21、測定手段51、52、調整手段50が省略されている点と、筒状電極部材31には被供給側貫通孔HTが形成されていない点が異なる。また、図9に示すように、筒状電極部材31の内部に、微粒子NR(O)と、微粒子NR(O)の径よりも大きな径を有する補助粒子BR(K)(出射側補助粒子に相当)と、が収容されている点も異なる。
なお、線状電極部材30及び筒状電極部材31は、チャンバ10内にて水平に配置されている点と、筒状電極部材31のスリット31Sが下側にならないように向けられている点と、スリット31Sに対向する位置に被コーティング部材が配置されている点は、図1に示す微粒子コーティング装置1と同様である。
また、線状電極部材30及び筒状電極部材31のそれぞれの形状は、被供給側貫通孔HTが設けられていない点を除き、第1の実施と同じである。また、線状電極部材30と筒状電極部材31が同軸上に配置されている点も第1の実施の形態と同じであり、第1直流電源20の接続も、第1の実施の形態と同じである。
なお、筒状電極部材31に、図2に示す絶縁蓋32を設けてもよい。
【0035】
●[微粒子の供給方法と微粒子が出射される様子(図9)]
図9に示すように、第3の実施の形態では、コーティングに使用される微粒子NR(K)は、予め筒状電極部材31の内部に収容されている。また図8の例では、筒状電極部材31の内部に補助粒子BR(K)も収容しているが、補助粒子BR(K)は省略してもよい。
また、補助粒子BR(K)の有無にかかわらず、微粒子NR(S)がスリット31Sから出射される動作は第1の実施の形態にて説明しているので省略する。
なお、補助粒子BR(K)を筒状電極部材31の内部に収容させておく場合、スリット31Sの幅31Wを、微粒子NR(S)の径よりも大きく、且つ補助粒子BR(K)の径よりも小さく設定しておくと、補助粒子BR(K)が筒状電極部材31の外部に飛び出すことを防止できる。
【0036】
以上、第1〜第3の実施の形態にて説明したように、本発明の微粒子コーティング装置1〜3は、高圧ガスを用いることなく、電力を用いて、AD法と比較して、よりシンプルな構成とすることができる。また、線状電極部材30と筒状電極部材31の形状と配置を適切にすることで、微粒子を被コーティング部材により高速で衝突させることができ、常温でのコーティングが可能であり、加熱・乾燥の工程及び設備が不要である。また、スリット31Sの長さを任意の長さにすることが可能であるので、AD法と比較して、より広い幅でのコーティングが可能であり、コーティング時間をより短縮化することができる。
【0037】
以上、第1〜第3の実施の形態にて、微粒子コーティング装置1〜3を説明したが、微粒子コーティング方法として、チャンバ10、減圧手段11、被コーティング部材W、線状電極部材30、スリット31Sを形成した筒状電極部材31、第1直流電源20、相対移動手段12、を用い、筒状電極部材31の内部に微粒子NR(K)を収容または供給し、筒状電極部材31と線状電極部材30とを同軸上に配置し、スリット31Sと対向する位置に被コーティング部材Wを配置する。
そして減圧手段11にてチャンバ10内を減圧するステップと、第1直流電源20にて線状電極部材30と筒状電極部材31に第1電位差を与えるステップと、相対移動手段12を用いてスリット31Sに対する被コーティング部材Wを相対的に移動させながら、スリット31Sから微粒子NR(S)を出射させて被コーティング部材Wに衝突させることで微粒子NR(S)を被コーティング部材Wにコーティングするステップと、を有する、種々の被コーティング部材に種々の微粒子をコーティングできる微粒子コーティング方法として利用することができる。
【0038】
本発明の微粒子コーティング装置及び微粒子コーティング方法は、本実施の形態で説明した外観、構成、構造、動作等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
コーティングに使用する微粒子NRは、ナノ粒子等に限定されず、種々の微粒子を利用することができる。
被コーティング部材Wは、導電性の有無にかかわらず、また形状も平面に限定されず、立体的な凹凸があってもコーティング可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 微粒子コーティング装置(第1の実施の形態)
2 微粒子コーティング装置(第2の実施の形態)
3 微粒子コーティング装置(第3の実施の形態)
10 チャンバ
11 減圧手段
12 相対移動手段
20 第1直流電源
21 第2直流電源
30 線状電極部材
31 筒状電極部材
31S スリット
40 微粒子出射供給手段
41、42 板状電極部材
43 筒状壁部材
50 調整手段
51、52 測定手段
60 微粒子落下供給手段
61 開閉手段
HT 被供給側貫通孔
HK 供給側貫通孔
NR(O) 微粒子
NR(K) 微粒子
NR(S) 微粒子
BR(K) (供給側)補助粒子、(出射側)補助粒子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切られた空間を形成しているチャンバと、
減圧手段と、
第1直流電源と、
導電性を有して所定の径にて任意の長さの針金状の線状電極部材と、
導電性を有して前記線状電極部材の径よりも大きな径の円筒状であって軸方向に任意の長さの筒状電極部材と、を備えた微粒子コーティング装置であって、
前記筒状電極部材には、軸方向に、微粒子の径よりも大きな幅のスリットが形成されており、被コーティング部材にコーティングする微粒子が収容または供給されており、
前記線状電極部材と前記筒状電極部材は、互いに接触しないように、且つ前記筒状電極部材の軸位置に前記線状電極部材が位置するように、前記チャンバ内に配置され、
前記減圧手段は、前記チャンバ内を減圧し、
前記被コーティング部材は、前記チャンバ内に、且つ前記筒状電極部材の前記スリットと対向する位置に配置され、
前記第1直流電源は、前記線状電極部材と前記筒状電極部材との間に第1電位差を与え、
前記筒状電極部材内で前記第1電位差に基づいて運動している微粒子を、前記スリットから出射させて前記被コーティング部材に衝突させて、前記被コーティング部材に微粒子をコーティングする、
微粒子コーティング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子コーティング装置であって、
前記線状電極部材と前記筒状電極部材は、前記スリットが下向きにならないように、水平に配置されており、
前記筒状電極部材における下側となる面には、微粒子の径よりも大きな径の単数または複数の被供給側貫通孔が形成されており、
前記チャンバ内における前記筒状電極部材の下方には、単数または複数の微粒子出射供給手段が配置されており、
前記微粒子出射供給手段は、互いに平行となるように所定間隔にて水平に配置した2枚の板状電極部材と、2枚の板状電極部材のそれぞれを互いに電気的に絶縁した状態で前記所定間隔を保持するとともに2枚の板状電極部材の間に所定空間を形成する筒状壁部材と、で構成され、
前記所定空間には、微粒子と、微粒子の径よりも大きな径の供給側補助粒子と、が収容されており、
2枚の板状電極部材は、前記第1直流電源から前記第1電位差が与えられ、あるいは第2直流電源が設けられて当該第2直流電源から第2電位差が与えられ、
2枚の板状電極部材における上側の板状電極部材には、前記所定空間における任意の位置に微粒子の径よりも大きな径の単数または複数の供給側貫通孔が形成されており、
前記微粒子出射供給手段は、
前記供給側貫通孔と前記被供給側貫通孔とが対向するように配置されており、
前記第1電位差あるいは前記第2電位差に基づいて運動する前記供給側補助粒子にて分散された微粒子を、前記第1電位差あるいは前記第2電位差に基づいて2枚の板状電極部材の間で往復運動させて、前記供給側貫通孔と前記被供給側貫通孔を経由させて前記筒状電極部材内に供給する、
微粒子コーティング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の微粒子コーティング装置であって、
前記供給側貫通孔の径は、前記供給側補助粒子の径よりも小さく形成されている、
微粒子コーティング装置。
【請求項4】
請求項1に記載の微粒子コーティング装置であって、
前記線状電極部材と前記筒状電極部材は、鉛直方向に沿って、あるいは鉛直方向に対して所定角度に傾斜させるとともに前記スリットが下向きにならないように、配置されており、
前記筒状電極部材の両端部における上方となる一方の端部から、前記筒状電極部材の内部に微粒子を落下させて供給する微粒子落下供給手段を備えている、
微粒子コーティング装置。
【請求項5】
請求項1に記載の微粒子コーティング装置であって、
前記線状電極部材と前記筒状電極部材は、前記スリットが下向きにならないように、水平に配置されており、
前記筒状電極部材内には、微粒子の径よりも大きな径の出射側補助粒子が収容されており、
前記第1電位差に基づいて前記出射側補助粒子を運動させて、前記筒状電極部材内の微粒子を分散させ、分散した微粒子を前記第1電位差に基づいて運動させて前記スリットから出射する、
微粒子コーティング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の微粒子コーティング装置であって、
前記スリットの幅は、前記出射側補助粒子の径よりも小さく形成されている、
微粒子コーティング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の微粒子コーティング装置であって、
前記筒状電極部材と前記被コーティング部材が電気的に接地されている、
微粒子コーティング装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の微粒子コーティング装置であって、
前記筒状電極部材の前記スリットの位置に対して、前記被コーティング部材を相対的に移動可能な相対移動手段を備えている、
微粒子コーティング装置。
【請求項9】
仕切られた空間を形成しているチャンバと、減圧手段と、被コーティング部材と、導電性を有して所定の径にて任意の長さの針金状の線状電極部材と、導電性を有して前記線状電極部材の径よりも大きな径の円筒状であって軸方向に任意の長さの筒状電極部材と、第1直流電源と、相対移動手段と、を用い、
前記筒状電極部材に、軸方向に、微粒子の径よりも大きな幅のスリットを形成し、
前記筒状電極部材の内側に、被コーティング部材にコーティングする微粒子を収容または供給し、
前記線状電極部材と前記筒状電極部材を、互いに接触しないように、且つ前記筒状電極部材の軸位置に前記線状電極部材が位置するように前記チャンバ内に配置し、
前記被コーティング部材を、前記筒状電極部材の前記スリットと対向するように前記チャンバ内に配置し、
前記減圧手段にて前記チャンバ内を減圧するステップと、
前記第1直流電源にて、前記線状電極部材と前記筒状電極部材との間に第1電位差を与えるステップと、
前記相対移動手段を用いて前記筒状電極部材及び前記線状電極部材に対して前記被コーティング部材を相対的に移動させながら、前記筒状電極部材内で前記第1電位差に基づいて運動している微粒子を、前記スリットから出射させて前記被コーティング部材に衝突させて、前記被コーティング部材に微粒子をコーティングするステップと、を有する、
微粒子コーティング方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−5379(P2011−5379A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149379(P2009−149379)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(502168208)
【出願人】(509220286)
【Fターム(参考)】