説明

微粒子製造装置及び微粒子の製造方法

【課題】噴霧燃焼法において、ナノサイズの微粒子を大量に製造する装置などを提供する。
【解決手段】液滴化した原料溶液を、火炎中で反応させて微粒子を生成する微粒子製造装置であって、液滴化した原料溶液を含む原料流を噴出する原料溶液噴霧部と、前記原料溶液噴霧部の周囲に設けられ、噴霧制御ガスを噴出する噴霧制御ガス噴出部と、前記原料流及び前記噴霧制御ガスが供給される火炎を形成するバーナーと、を具備することを特徴とする微粒子製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料溶液をノズルから噴霧し、火炎中で燃焼させて微粒子を製造する噴霧燃焼法による微粒子の製造装置及び製造方法に関するものである。本発明は、特にリン酸鉄リチウムやケイ酸鉄リチウム等のオリビン構造を持つリチウムイオン二次電池用の正極活物質の前駆体の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラ、ビデオ等の携帯用電子機器の電源として、小型で軽量なリチウムイオン二次電池が広く用いられている。また、電気自動車の普及においては、高性能で安価なリチウムイオン電池が求められている。現在、リチウムイオン二次電池の正極活物質としてはコバルト酸リチウム(LiCoO)が一般的である。しかし、コバルト酸リチウムは、資源的制約が大きく高価な上に毒性も高いコバルトを含むという問題点や、また高温に加熱されると酸素を放出するため発火する恐れがあり安全性が低いという問題点があり、これらの問題点が、特に高出力・大容量を要する電気自動車用リチウムイオン二次電池への採用の障害となっている。これに対し、熱的・化学的安定性においてコバルト酸リチウムよりもはるかに優り、また豊富な原料系から製造できる新しい正極活物質として、オリビン構造を持つリン酸鉄リチウム(LiFePO)やケイ酸鉄リチウム(LiFeSiO)等が注目されている。しかし、これらの材料はそのままでは導電性が低く、結晶内部のLiイオン拡散速度が遅いため、数十〜100nmの一次粒子径を有する微粒子にする必要がある。
【0003】
このようなナノサイズの微粒子の製造方法としては、例えばシロキサンと複数の有機金属化合物を混合して作成した原料液をバーナーに導入し、バーナーの先端に取付けたノズルから噴霧して燃焼させることによって、シリカ及び上記各金属の金属酸化物の核粒子を生成し、当該核粒子の合体成長によってシリカと複数の金属酸化物からなる複合微粒子を製造することが行われている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
また、複数種の金属を含有する原料気体流と当該原料気体流を覆う反応気体流とが高温雰囲気の反応空間に流入し、前記原料気体流の外周部で熱処理によって粒子生成するとともに、前記反応気体流で冷却することによって複合微粒子を製造することが行われている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、反応室内の上部又は下部の中央に設けられた噴霧ノズルと、該噴霧ノズルに周設されたバーナーと、を備えた噴霧熱分解装置もある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−081770号公報
【特許文献2】特開2003−0156872号公報
【特許文献3】特開2005−305202号公報
【特許文献4】特開2001−017857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2に開示されたバーナーによる噴霧燃焼では、複数種の金属を含有する原料液をバーナーの燃料として燃焼させて形成した火炎中にシリカ及びその他の金属酸化物の核粒子が生成されるため、生成した核粒子が冷却され難くて核粒子の合体・凝集や蒸気の粒子表面への凝縮・反応等が促進される結果、複合粒子を構成する各金属酸化物の粒子径が大きくなり、各金属酸化物の粒子を微細な構造(例えば、分子の大きさに近いナノメートル(nm)レベル)で含む複合微粒子を製造することが困難であった。
また、特許文献3に開示された方法では、原料液の噴霧ノズルの気液比の調整により燃焼部ゾーンの長さを調整するため、製造量を増やそうとすると気液比を小さくせざるを得ないため、どうしても生成粒子径が大きくなり、ナノサイズの微粒子を大量に製造することは困難であった。
また、特許文献4には、生成される粒子径が開示されておらず、ナノサイズの微粒子の製造が可能であるかはわからない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような状況を鑑み、噴霧燃焼法において、ナノサイズの微粒子を大量に製造する装置などを提供することを目的とするものである。
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有する。
(1)液滴化した原料溶液を、火炎中で反応させて微粒子を生成する微粒子製造装置であって、液滴化した原料溶液を含む原料流を噴出する原料溶液噴霧部と、前記原料溶液噴霧部の周囲に設けられ、噴霧制御ガスを噴出する噴霧制御ガス噴出部と、前記原料流及び前記噴霧制御ガスが供給される火炎を形成するバーナーと、を具備することを特徴とする微粒子製造装置。
(2)さらに、前記火炎に冷却ガスを供給する、前記火炎の周囲に設けられる冷却ガス供給部と、を具備することを特徴とする(1)に記載の微粒子製造装置。
(3)前記バーナーが、前記原料溶液噴霧部の周囲に設けられ、複数の独立した火口をもつリング状バーナーであることを特徴とする(1)または(2)に記載の微粒子製造装置。
(4)前記原料溶液噴霧部が、二流体噴霧ノズル又は圧力噴霧ノズルである(1)〜(3)のいずれかに記載の微粒子製造装置。
(5)前記原料溶液噴霧部が、二流体噴霧ノズルであり、前記原料溶液の溶媒に、可燃性の溶媒を含み、前記原料溶液噴霧部が、支燃性ガスとともに前記原料溶液を噴霧して液滴化することを特徴とする(4)に記載の微粒子製造装置。
(6)前記原料溶液が、リチウムを含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の微粒子製造装置。
(7)前記原料溶液が、リチウム、遷移金属及びシリコンまたは、リチウム、遷移金属及びリンを含むことを特徴とする(6)に記載の微粒子製造装置。
(8)前記噴霧制御ガスが、窒素、アルゴン、酸素、空気またはこれらの混合ガスであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の微粒子製造装置。
(9)前記冷却ガスが、窒素、アルゴン、二酸化炭素またはこれらの混合ガスであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の微粒子製造装置。
(10)原料溶液噴霧部から、液滴化した原料溶液を含む原料流を噴出しつつ、前記原料流の周囲に噴霧制御ガスを噴出する工程と、前記原料流及び前記噴霧制御ガスを、バーナーにより形成された火炎中に供給して、液滴化した前記原料溶液から微粒子を生成する工程と、を具備することを特徴とする微粒子の製造方法。
(11)前記火炎には、前記火炎の周囲から冷却ガスが流されていることを特徴とする(10)に記載の微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、噴霧燃焼法において、ナノサイズの微粒子を大量に製造する装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態にかかる微粒子製造装置1の構成を示す図。
【図2】(a)噴霧ノズル3とノズルフード7の構成を示す縦断面図、(b)図2(a)のA方向矢視図、(c)リング状バーナー11を示す図。
【図3】微粒子製造装置1と微粒子回収装置25の構成を示す図。
【図4】噴霧燃焼法における微粒子の生成を説明する図。
【図5】第2の実施形態にかかる微粒子製造装置1aの構成を示す図。
【図6】実施例2にかかる微粒子のTEM像。
【図7】実施例2にかかる微粒子の粒径分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる微粒子製造装置1を説明する模式図である。微粒子製造装置1は、原料溶液2が供給され、原料溶液2の液滴31を含む原料流5を噴出する噴霧ノズル3と、噴霧ノズル3を包囲し、先端から噴霧制御ガス9を噴出するノズルフード7と、噴霧ノズル3の周囲に設けられた複数の独立した火口13をもち、原料流5及び噴霧制御ガス9が供給される火炎を形成するリング状バーナー11とを有する。噴霧ノズル3が、請求項中の原料溶液噴霧部に対応し、ノズルフード7が、請求項中の噴霧制御ガス噴出部に対応し、リング状バーナー11が請求項中のバーナーに対応する。
【0014】
噴霧ノズル3は、二流体噴霧ノズル又は圧力噴霧ノズルであり、供給された原料溶液2を、液滴化し、原料流5として噴出する。噴霧ノズル3が二流体噴霧ノズルである場合、噴霧ノズル3には原料溶液2以外に噴霧ガス(図示せず)が供給され、高速の噴霧ガスの気流により、原料溶液2が粉砕され、微細な液滴31になる。噴霧ノズル3が圧力噴霧ノズルである場合、原料溶液2はポンプ(図示せず)により加圧されて噴霧ノズル3に供給され、噴霧ノズル3より噴出する際に微細な液滴31となる。
【0015】
また、噴霧ノズル3が二流体噴霧ノズルである場合、原料溶液2の溶媒が、メタノール、エタノールなどの可燃性の液体を含み、噴霧ガスが、酸素や空気などの支燃性ガスであることが好ましい。
【0016】
微粒子製造装置1にて、リチウムイオン二次電池用の正極活物質を製造する場合には、原料溶液2に、少なくともリチウムを加えることが好ましい。
【0017】
さらに、微粒子製造装置1にて、焼成することでオリビン構造を持つリチウムイオン二次電池用の正極活物質となる、正極活物質の前駆体を製造する場合には、原料溶液2にリチウム、遷移金属、リンを含むか、リチウム、遷移金属、シリコンを含むことが好ましい。原料溶液2にリチウム、遷移金属、リンを含む場合、得られる微粒子は、リチウムの酸化物、遷移金属の酸化物、リンの酸化物などを含み、この微粒子を焼成することでオリビン構造を持つリチウム遷移金属リン酸塩を形成することができる。原料溶液2にリチウム、遷移金属、シリコンを含む場合、得られる微粒子は、リチウムの酸化物、遷移金属の酸化物、シリコンの酸化物などを含み、この微粒子を焼成することでオリビン構造を持つリチウム遷移金属シリケートを形成することができる。例えば、遷移金属として、鉄を含有させれば、オリビン構造を持つリン酸鉄リチウム(LiFePO)やケイ酸鉄リチウム(LiFeSiO)の前駆体を製造することができる。
【0018】
遷移金属としては、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などを、単独または組み合わせて使用できる。
【0019】
図2(a)は、噴霧ノズル3とノズルフード7の構成を示す縦断面図である、図2(b)は、図2(a)のA方向矢視図である。ノズルフード7は、図2(a)、図2(b)に示すように、原料流5の噴出口4を有する噴霧ノズル3の周囲に、噴霧制御ガス9を噴出するリング状の噴出口8を有するように設けられる。ノズルフード7は、噴霧制御ガス9が供給され、先端から噴霧制御ガス9を噴出する。なお、本発明では、円筒形状のノズルフード7を用いているが、ノズルフード7に代えて、噴霧制御ガス9の複数の噴出ノズルを、噴霧ノズル3の周囲に対称に配置したノズルユニットを用いてもよい。
【0020】
ノズルフード7は、多重管構造のフードである。ノズルフード7の役割は、噴霧ノズル3の先端部をリング状バーナー11の輻射熱から保護して噴霧ノズル3の詰まりを防止することと、ノズルフード7の先端から噴霧制御ガス9を流して、噴霧された原料流5を覆う様なガス流を形成し、原料流5の指向性及び流速を制御することにある。噴霧制御ガス9としては、窒素、アルゴン、酸素、空気又はこれらの混合ガスを用いることができる。このように原料流5の指向性及び流速を制御することで、火炎15中に供給される原料流5の割合を増やして効率良く微粒子17を生成するとともに、火炎15中の原料の滞留時間を制御することで、粒子径を制御することができる。
【0021】
図2(c)は、リング状バーナー11を示す図であり、リング状バーナー11を図2(c)のB−B’方向から見たものが、図1に示すリング状バーナー11である。リング状バーナー11は、可燃性ガス10と支燃性ガス14とが供給されたガス導入管12の環状部分に、複数の火口13が設けられる。そして、図1、図2に示すように、原料流5及び噴霧制御ガス9が供給され、リング状バーナー11により火炎15が形成される。なお、第1の実施形態ではリング状バーナー11を用いたが、原料流5及び噴霧制御ガス9が供給される火炎15を形成できるのであれば、バーナーとしてはリング状バーナー11に限られず、火口が一つのバーナーなども使用できる。可燃性ガス10は、特に限定されないが、炭化水素ガスや、水素ガスなどを用いることができる。また、支燃性ガス10は、特に限定されないが、空気や酸素などを用いることができる。
【0022】
リング状バーナー11は、バーナーの中心部に噴霧された原料流5が、バーナーの火炎の内部へ導入されるため、噴霧された原料溶液2をより高温な雰囲気に導入することができる。噴霧された原料溶液2の熱分解効率を向上させるとともに、熱分解時間を大幅に短縮させることができ、装置も小型化することができる。
【0023】
また、リング状バーナー11は、火口13が独立しているため、火口13の交換が容易である。そのため、長期間にわたって使用する場合でも、火口13を交換すれば、リング状バーナー11ごと交換する必要がなく、メンテナンスが容易である。
【0024】
また、リング状バーナー11は、噴霧ノズル3とは別系統の可燃性ガス10と支燃性ガス14の供給系統を持っており、噴霧ノズル3からの原料流5の噴霧量と、リング状バーナー11からの火炎15の火力とを、連動させずに独立して制御できる。そのため、噴霧量を少なくして、大火力で微粒子を生成させることも可能である。
【0025】
図3は、微粒子製造装置1と微粒子回収装置25の構成を示す図であり。微粒子製造装置1の主要部分はチャンバー23内に配置され、チャンバー23に微粒子回収装置25が設けられる。
【0026】
(第1の実施形態にかかる微粒子製造装置による微粒子の製造方法)
以下、図1を参照して、第1の実施形態にかかる微粒子製造装置1を用いた微粒子の製造方法を説明する。
【0027】
まず、原料溶液2が噴霧ノズル3に供給される。噴霧ノズル3は、二流体噴霧ノズル又は圧力噴霧ノズルであり、原料溶液2を液滴化して、原料流5を噴出する。同時に、噴霧制御ガス9がノズルフード7に供給され、ノズルフード7の先端から、原料流5の周囲に噴霧制御ガス9が噴出される。
【0028】
次に、リング状バーナー11に可燃性ガス10と支燃性ガス14が供給され、火炎15が火口13から形成され、原料流5及び噴霧制御ガス9が、リング状バーナー11により形成された火炎15中に供給され、微粒子17が液滴化した原料溶液2から生成される。
【0029】
次に、図3に示すように、微粒子17が、微粒子製造装置1において火炎15中に形成された後、微粒子17が、微粒子製造装置1が設けられたチャンバー23内をとおり、バグフィルターやサイクロン等の微粒子回収装置25により回収される。
【0030】
図4は、噴霧燃焼法における微粒子の生成を説明する図である。原料溶液2が噴霧ノズル3から噴霧され、粒径が数μm〜数十μmの液滴31のミスト(原料流5)が形成され、火炎15中で液滴31が燃焼することで微粒子17を生成する。火炎15中において、液滴31が、瞬時に蒸発し、燃焼反応により酸化され、核粒子33が形成される。さらに、火炎15中において、核粒子33が、合体・凝集して、粒径が数十〜100nm程度の一次粒子35が形成される。チャンバー23内で生成された、核粒子33や一次粒子35などの微粒子17が、微粒子回収装置25で回収される。微粒子17を含む気流が、微粒子回収装置25で微粒子17が回収された後、排気27として排出される。
【0031】
(第1の実施形態の効果)
第1の実施形態に係る微粒子製造装置1は、噴霧制御ガス9を供給するノズルフード7を有し、噴霧制御ガス9により、原料流5の指向性及び流速を制御できるため、効率良く微粒子17を生成するとともに、粒子径を制御することができる。
【0032】
また、リング状バーナー11の火口13は、交換可能であるため、微粒子製造装置1が長期間使用される際に、火口13のみが交換されれば済み、リング状バーナー11ごと交換される必要がない。そのため、長期間の使用する際に、微粒子製造装置1のランニングコストが低い。
【0033】
また、リング状バーナー11は、原料流5とは別の可燃性ガス10と支燃性ガス14の供給系統を有するため、噴霧ノズル3からの原料流5の噴出量とは独立して火炎15の火力を調整できる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態にかかる微粒子製造装置1aの構成を示す図である。以下の実施形態で第1の実施形態と同一の様態を果たす要素には同一の番号を付し、重複した説明は避ける。
【0035】
第2の実施形態の特徴は、第1の実施形態の構成に、冷却ガス供給部として、バーナーフード19が設けられる点である。なお、バーナーフード19が、請求項中の冷却ガス供給部に対応する。
【0036】
バーナーフード19は、リング状バーナー11の火炎15を包囲するように設けられた多重管構造のフードであり、その先端から、火炎15へ冷却ガス21を噴出する。冷却ガス21としては、窒素、アルゴン、二酸化炭素等を用いることができる。
【0037】
また、第2の実施形態に係る微粒子製造装置1aを用いた微粒子17の製造方法は、火炎15に冷却ガス21が供給される点以外は、第1の実施形態に係る微粒子製造装置1と同様の製造方法である。
【0038】
第2の実施形態によれば、バーナーフード19の先端から火炎15内に冷却ガス21を導入することで火炎15の温度を制御し、核粒子33の合体・凝集が進みすぎて一次粒子35の粒子径が大きくなるのを防止することが可能になる。すなわち、バーナーフード19を設けることで、ナノサイズの微粒子17を大量に製造することが可能となる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
<実施例1〜2、比較例1〜2>
純水1Lに、硝酸リチウム(LiNO)を1molと、硝酸鉄(Fe(NO))を1molと、リン酸水素二アンモニウム((NH)HPO)を1molの割合で加えて撹拌し、更にメタノールと純水を加えて2倍に希釈して原料溶液とした。この原料溶液中のメタノール濃度は30%とした。この原料溶液の濃度をLiFePOに換算すると、0.5mol/Lとなった。
この原料溶液2を二流体噴霧ノズル(噴霧ノズル3)から130cc/minの液量で噴霧した。噴霧に使用したガスは酸素で、流量は40L/minであった。噴霧した原料ミスト(原料流5)を8個の火口13を備えたリング状バーナー11で燃焼させ、微粒子17を生成した。リング状バーナー11には、可燃性ガス10としてプロパンガスと、支燃性ガス14として酸素を供給し、プロパンガスの流量は40L/min、酸素流量は140L/minであった。生成した微粒子はバグフィルターで回収した。
【0040】
噴霧ノズル3の周囲に設置したノズルフード7から流す噴霧制御ガス9と、リング状バーナー11の火炎15を包囲するように設置したバーナーフード19から流す冷却ガス21の流量を変えた際に、得られた粒子の生成量と粒子径の範囲を表1に示す。
【0041】
また、図6は実施例2で得られた粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真、図7は実施例2で得られた粒子の粒径分布である。
図6において、直径20〜120nmの粒子が多数観察され、TEM写真で観察された粒子の粒径を測定し、それらをプロットしたところ、図7のようになった。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2を比べるとノズルフード7から噴霧制御ガス9として酸素を流すことにより粒子生成量が増えたことが分かる。また実施例1と2を比較することで、更にバーナーフード19から冷却ガス21として窒素を流すことにより、100nm以上の粒子が減って粒径分布がシャープになっていることがわかる。
【0044】
<実施例3〜4、比較例3〜4>
純水1Lに塩化リチウム(LiCl)を4molと塩化鉄(FeCl)を2molの割合で加えて撹拌した。これにオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)を0.5molの割合で加え、更にメタノールと純水を加えて4倍に希釈して原料溶液とした。原料溶液中のメタノール濃度は30%とした。この原料溶液の濃度をLiFeSiOに換算すると、0.5mol/Lとなった。
この原料溶液2を二流体噴霧ノズル(噴霧ノズル3)から125cc/minの液量で噴霧した。噴霧に使用したガスは酸素で、流量は40L/minであった。噴霧した原料ミスト(原料流5)を8個の火口13を備えたリング状バーナー11で燃焼させ、微粒子17を生成した。リング状バーナー11には、可燃性ガス10としてプロパンガスと、支燃性ガス14として酸素を供給し、プロパンガスの流量は40L/min、酸素流量は140L/minであった。生成した微粒子はバグフィルターで回収した。
【0045】
噴霧ノズル3の周囲に設置したノズルフード7から流す噴霧制御ガス9と、リング状バーナー11の火炎を包囲するように設置したバーナーフード19から流す冷却ガス21の流量を変えた際に、得られた粒子の生成量と粒子径を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2において、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4をそれぞれ比較すると、ノズルフード7から噴霧制御ガス3として酸素を流すことにより粒子生成量が増え、粒子分布のシャープになっていることが分かる。更に、実施例3と4を比較すると、バーナーフード19から冷却ガス21として窒素を流すことにより、100nm以上の粒子が減って粒径分布がシャープになっていることがわかる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
1………微粒子製造装置
2………原料溶液
3………噴霧ノズル
4………原料流5の噴出口
5………原料流
7………ノズルフード
8………噴霧制御ガス9の噴出口
9………噴霧制御ガス
10………可燃性ガス
11………リング状バーナー
12………ガス導入管
13………火口
14………支燃性ガス
15………火炎
17………微粒子
19………バーナーフード
21………冷却ガス
23………チャンバー
25………微粒子回収装置
27………排気
31………液滴
33………核粒子
35………一次粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴化した原料溶液を、火炎中で反応させて微粒子を生成する微粒子製造装置であって、
液滴化した原料溶液を含む原料流を噴出する原料溶液噴霧部と、
前記原料溶液噴霧部の周囲に設けられ、噴霧制御ガスを噴出する噴霧制御ガス噴出部と、
前記原料流及び前記噴霧制御ガスが供給される火炎を形成するバーナーと、
を具備することを特徴とする微粒子製造装置。
【請求項2】
さらに、前記火炎に冷却ガスを供給する、前記火炎の周囲に設けられる冷却ガス供給部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項3】
前記バーナーが、前記原料溶液噴霧部の周囲に設けられ、複数の独立した火口をもつリング状バーナーであることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子製造装置。
【請求項4】
前記原料溶液噴霧部が、二流体噴霧ノズル又は圧力噴霧ノズルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子製造装置。
【請求項5】
前記原料溶液噴霧部が、二流体噴霧ノズルであり、
前記原料溶液の溶媒に、可燃性の溶媒を含み、
前記原料溶液噴霧部が、支燃性ガスとともに前記原料溶液を噴霧して液滴化することを特徴とする請求項4に記載の微粒子製造装置。
【請求項6】
前記原料溶液が、リチウムを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子製造装置。
【請求項7】
前記原料溶液が、リチウム、遷移金属及びリンまたは、リチウム、遷移金属及びシリコンを含むことを特徴とする請求項6に記載の微粒子製造装置。
【請求項8】
前記噴霧制御ガスが、窒素、アルゴン、酸素、空気またはこれらの混合ガスであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の微粒子製造装置。
【請求項9】
前記冷却ガスが、窒素、アルゴン、二酸化炭素またはこれらの混合ガスであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の微粒子製造装置。
【請求項10】
原料溶液噴霧部から、液滴化した原料溶液を含む原料流を噴出しつつ、前記原料流の周囲に噴霧制御ガスを噴出する工程と、
前記原料流及び前記噴霧制御ガスを、バーナーにより形成された火炎中に供給して、液滴化した前記原料溶液から微粒子を生成する工程と、
を具備することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記火炎には、前記火炎の周囲から冷却ガスが流されていることを特徴とする請求項10に記載の微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−17957(P2013−17957A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153781(P2011−153781)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】