説明

微細加工用二軸延伸積層フィルム

【課題】本発明は、微細加工性に優れ、易滑性、耐傷つき性を付与し、生産性に優れる微細加工用二軸延伸積層フィルムを提供せんとするものである。
【解決手段】支持層の片面に成形層を設けた二軸延伸積層フィルムであって、支持層に粒子を塗布した塗布層を有し、塗布層の十点平均表面粗さRzが70〜450nm、算術平均表面粗さRaが6nm〜12nm、成形層と塗布層の静摩擦係数μsが0.5以下であることを特徴とする微細加工用二軸延伸積層フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細加工、特に高アスペクト比の構造体を大面積で成形でき、且つ機械的強度に優れ、易滑性、耐傷つき性を兼ね備えた二軸延伸積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学分野において微細構造を高精度に形成する技術の重要性が高まってきている。液晶ディスプレイに用いられるバックライト、例えば、画面の直下に蛍光管を配置した構造をもつ直下型バックライトでは、輝度および面内の均斉度を向上させることが必要である。このため、例えば表面に特定の微細パターンを形成することにより、蛍光管の像が透けて見える、いわゆる管むらを解消して均斉度を向上させ、かつ輝度を高めることができる安価で高性能な拡散シートの検討が進められている。この拡散シートの一つとして、表面に半円形状を形成したレンチキュラーレンズがあり、近年高機能化へ向けた開発が進んでいる。また、表面加工の代表的技術であるロールエンボス法については、より微細な寸法を高精度に作製できるようになってきた。
【0003】
しかしながら、レンチキュラーレンズは凹凸形状が高アスペクト比であるものの、薄膜化、凹凸形状の微細化が困難であり、液晶ディスプレイに搭載した場合、ディスプレイが厚くなり、また拡散性も不十分であるのが現状である。また、高アスペクト比のパターンを作製したロールでエンボスした場合、量産には適しているものの離型がしづらい、均一に微細パターンが成形されない、およびこれに起因して大面積での微細加工が困難などの問題があるのが現状である。
【0004】
そこで、近年、微細構造体を容易に成形する技術としてインプリントリソグラフィーがChouらによって提唱されている(非特許文献1参照)。インプリントリソグラフィーとは、樹脂をガラス転移温度Tg以上融点Tm未満に加熱して、そこに凹凸形状のパターンを有する金型を押し付けることで、金型のパターンを樹脂に転写する技術である。本技術は、ロールエンボスに比べ、量産性は劣るものの、微細形状を均一且つ高精度に成形できるという特徴を有する。
【0005】
これまでこの技術を用い、高アスペクト比のパターンを高精度で成形するための検討が種々行われている。例えば金型の表面処理剤の検討(特許文献1、2及び3参照)、金型の表面処理プロセスを成形プロセス中に取り込む検討(特許文献4参照)、溶媒可溶型表面処理剤によって処理し、溶媒中で表面処理剤を溶かしながら離型する検討(特許文献5)などが挙げられる。
【0006】
しかしながら、これらの方法は、主に金型の表面処理方法の改善によって離型性を向上させることや、金型の形状についてのみ記載されている。また微細な高アスペクト比パターン、かつ大面積成形についての記載は見当たらない。
【0007】
また、成形性と機械的強度を両立するため二軸に延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)上に溶融したポリブチレンテレフタレートを積層したエンボス加工性を有する積層フィルムの検討(特許文献6参照)が行われている。しかし、これらの方法では成形層が二軸に延伸されていないため平面性が悪く、微細加工における均一な成形が不可能であった。
一軸以上に延伸しながらも微細加工における均一な成形を達成する手段として、低融点の成形層と支持層からなる積層フィルムを一軸以上に延伸後、成形層の融点以上で熱処理を行う方法が挙げられる(特許文献7)。かかる方法を用いることにより、延伸により生じた配向を緩和させることが可能となり、平面性を保持したまた、微細加工性に優れる均一な成形が可能となる。
一方、フィルムに易滑性を付与する方法として、例えば特許文献8にあるように樹脂中に反応性の乏しい有機・無機粒子を添加して押出した後、延伸を行うことでフィルム表面に微細な突起を形成する方法や、例えば特許文献9にあるようにコーティング法により粒子を塗布する方法などが知られており、かかる方法による易滑性を有するフィルムはハンドリング性や巻き取り性に優れる。
【非特許文献1】チョウら(S.Y.Chou et al.),「アプライド・フィジックス・レター(Appl.Phys.Lett.)」,米国,アメリカ物理学会,1995年,第67巻,第21号,p.3314
【特許文献1】特開2002−283354号公報
【特許文献2】特開2002−270541号公報
【特許文献3】特開2003−077807号公報
【特許文献4】特開2003−109915号公報
【特許文献5】特開2003−332211号公報
【特許文献6】特開平9−300564号公報
【特許文献7】特開2002−96438号公報
【特許文献8】特開平8−52978号公報
【特許文献9】特開2001−201612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、微細加工性を付与するために、特許文献7にある方法を用い、特許文献8や9のような方法にて易滑性を付与させる検討を行った結果、融点以上の熱処理により樹脂に添加した粒子や塗布粒子が樹脂の中に埋没が起こり、易滑性を得ることができなかった。
そこで本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、微細加工性に優れ、易滑性、耐傷つき性を付与し、さらに高透明である、微細加工用二軸延伸積層フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のいずれかの手段を採用するものである。
(1)支持層の片面に成形層を設け、成形層と反対面の支持層面に粒子を塗布した塗布層を有する二軸延伸積層フィルムであって、該塗布層の十点平均表面粗さRzが70〜450nm、算術平均表面粗さRaが6nm〜12nm、成形層と塗布層の静摩擦係数μsが0.5以下であることを特徴とする微細加工用二軸延伸積層フィルム。
(2)成形層の面配向係数fnが0.10以下である(1)に記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
(3)二軸延伸積層フィルムを該成形層の融点より10℃高い温度で15秒熱処理を行ったときの、該塗布層の表面粗さの変化量が±10%以内である(1)または(2)に記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
(4)ヘイズが8%以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
(5)塗布する粒子の最大粒子径が1000nm未満である(1)〜(4)のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
(6)支持層または成形層の主たる成分がポリエステルである(1)〜(5)のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、支持層に塗布する塗布層に特徴を設けることで、易滑性と傷付防止性を兼ね備えることが可能となる。すなわち、支持層の片面に成形層を設け、成形層と反対面の支持層面に粒子を塗布した塗布層を有する二軸延伸積層フィルムであって、塗布層の十点平均表面粗さRzが70〜450nm、算術平均表面粗さRaが6nm〜12nm、成形層と塗布層の静摩擦係数μsが0.5以下であることを特徴とすることで、易滑性と傷付防止性を兼ね備えたフィルムを得ることができる。また、二軸延伸したフィルムの面配向係数を0.10以下とすることで良好な成形性が得られるようになる。さらに、ヘイズが10%以下の高透明なフィルムとすることで、バックライトなどに用いられる光学部材とすることで、輝度の低下を起こさず高輝度化することができる。これらにより、微細加工性に優れ、成形前後のフィルムに良好な巻取り特性が付与され、生産性向上及びフィルム品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの構成を模式的に例示するものである。
【図2】図2は、本発明における、傷付性評価方法の構成を模式的に例示するものである。
【図3】図3(a)〜(f)は、いずれも本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の成形に用いる金型の面と平行な断面における断面図であり、凸部1の形状を模式的に例示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、前記課題、つまり微細加工に使用することができる二軸延伸積層フィルムに易滑性と傷付防止性を兼ね備えるべく鋭意検討した結果、支持層に塗布する塗布層に特徴を設けることで、かかる課題を解決できることを究明したものである。
本発明の光学用シートは、すなわち、支持層の片面に成形層を設け、成形層と反対面の支持層面に粒子を塗布した塗布層を有する二軸延伸積層フィルムであって、塗布層の十点平均表面粗さRzが70〜450nm、算術平均表面粗さRaが6nm〜12nm、成形層と塗布層の静摩擦係数μsが0.5以下であることを特徴とすることで、易滑性と傷付防止性の両立が可能となることを見出した。
【0013】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、支持層の片面に成形層を設ける。高アスペクト比、大面積での成形のために少なくとも成形層を1層設け、これに少なくとも1層の支持層を積層することにより機械的強度を付与する。支持層のみの場合は、機械的強度はあるものの成形性が不良であり、成形層のみの場合は成形性が良好であるものの機械特性が不良となる。
【0014】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層と支持層の積層比は、特に限定されないが、好ましくは成形層の厚み:支持層の厚み=1:0.05〜1:20、より好ましくは成形層の厚み:支持層の厚み=1:1〜1:10である。成形層と支持層の積層比をこの範囲とすることで、薄膜でも充分な厚みの成形層を有し、機械的強度を保ちながら、成形後の成形加工シート全体の反りが低減するため好ましい。
【0015】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの支持層、成形層は二軸に延伸されていることが好ましい。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法など、一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができるが、本発明ではこれら延伸方法に限定されるものではない。また、これら延伸方法によって微細加工用積層フィルムを二軸に延伸することで、支持層は機械特性に優れ、また、成形層は平面性が向上し均一な成形が可能となる。すなわち、二軸延伸することにより機械的強度と均一で良好な成形性の両立が可能となる。
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム厚みは、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは20〜300μmであるのがよいが、本発明の効果が阻害されない範囲であればこれに限定されるものではない。
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、成形層と反対面の支持層面に粒子を塗布した塗布層を有することで、積層フィルムとしての易滑性と傷付防止性を兼ね備えることが可能となる。該塗布層の十点平均表面粗さRzは70〜450nm、算術平均表面粗さRaは6nm〜12nmであることが必要である。RaとRzをかかる範囲とすることで初めて易滑性と傷付防止性を得ることが出来る。RaとRzがかかる範囲より小さいと良好な滑りを得ることができず不可である。またRaとRzがかかる範囲より大きいとフィルム同士の擦れによる傷が目立つようになり、傷付防止性を得ることができず不可である。Raがかかる範囲よりも小さいとフィルム同士の滑り性が悪くなるため不可である。またRaがかかる範囲よりも大きくなると耐傷つき性が低下するため不可である。また、Rzがかかる範囲よりも小さくなると、フィルム同士の密着防止効果が充分に得られず、滑り性の悪いフィルムとなる。またRzがかかる範囲より大きくなると、フィルム同士が擦れる際に傷が生じ易くなり、耐傷つき性が劣るため不可である。本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、成形層と塗布層の静摩擦係数μsが0.5以下であることが必要である。かかる要件を満たすことで、フィルム巻上げ時に生じるツブ状の欠点を少なくし、ロールの巻き姿をきれいにすることができるようになる。
【0016】
本発明の二軸延伸積層フィルムのRaとRz、及び静摩擦係数μsをかかる範囲にするためには、粒子含有層の形成時に、粒子径のそろった2種類以上(数平均粒径及び/又は粒子の種類(組成)が異なる)の粒子を含有させる方法が挙げられる。ここでいう粒子径のそろった粒子とは、粒度分布の標準偏差σが数平均粒子径の30%以内であることをいう。またここでいう粒子径とは数平均粒子径を言う。粒子径の異なる2種類以上の粒子のうち、粒子径の大きな粒子はフィルム同士の密着を防止させ、滑り性を得るために効果的である。また少なくとも2種類以上の粒子のうち、粒子径の小さな粒子はフィルム同士の摩擦を低下させ、フィルム同士を滑り易くするために効果的である。
【0017】
粒度分布及び粒径を得る方法としては、得られたフィルムの表面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行い、粒子径を確認する方法が挙げられる。粒子が観察し辛い場合、電気炉内でフィルムを加熱して表面を灰化させる方法や、マイクロ波の照射によりフィルム表面を灰化させた後に観察することで粒子径を確認しやすくなることがある。
【0018】
またこれらの数値を満たすためには、塗布粒子のバインダー樹脂に対する質量濃度を4〜9%の範囲にすることが重要である。成形層の融点以上の高温熱処理により塗布粒子の沈み込みが起こるため、塗布粒子のバインダー樹脂に対する質量濃度が4%以下ではRa、Rzは上記範囲より小さくなり、またμsはかかる範囲より大きくなり、良好な滑り性を得ることができない。また、塗布粒子のバインダー樹脂に対する質量濃度が9%以上となると、Ra、Rzはかかる範囲より大きくなり、またμsはかかる範囲より小さくなり、滑り性は得られるが粒子の脱落が起こりやすくなり傷付性に劣るフィルムとなる。粒子径が1種類ではフィルム同士の密着防止及び摩擦低減を同一粒子で達成する必要がある。小さな粒子径の粒子では易滑性を得るためには多量の粒子を添加する必要があり、塗布ムラや塗剤の安定性低下などが起こり、生産面で大きな不具合が生じる。また大きな粒子径の粒子でも滑り易くするためには多くの粒子が必要となり、塗布ムラや塗剤の安定性低下に加え、耐傷つき性を付与することが困難となる。
【0019】
また、本発明の二軸延伸積層フィルムのRaとRz、及び静摩擦係数μsをかかる範囲にする他の方法として、粒子含有層厚みよりも粒子径の大きい粒子を、バインダー樹脂に対する質量濃度が3〜9%の範囲となるように含有させる方法がある。ここでいう粒子含有層厚みとは、粒子含有層中に含まれる粒子に起因する凹凸を含めた粒子含有層の平均厚さのことを言う。粒子含有層厚みよりも粒子径の大きい粒子を用いることで、成形層の融点以上の高温熱処理を行い、含有粒子が沈み込んでも、粒子の一部は塗布層から突出した状態を保つことができるようになる。含有粒子のバインダー樹脂に対する質量濃度が3%未満ではRa、Rzは上記範囲より小さくなり、またμsはかかる範囲より大きくなり、良好な滑り性を得ることができないことがある。また、含有粒子のバインダー樹脂に対する質量濃度が9%を超えると、Ra、Rzはかかる範囲より大きくなり、またμsはかかる範囲より小さくなり、滑り性は得られるが粒子の脱落が起こりやすくなり傷付性に劣るフィルムとなることがある。
【0020】
塗布厚みを求める方法としては、フィルム断面をミクロトームなどを用いて切削して透過型電子顕微鏡を用いて観察する方法が挙げられる。また表面観察より得た粒子径より用いた粒子の径を決定した後、フィルムの断面観察を行い粒子の径を観察し、表面観察より得られた粒子径と断面観察より得られた粒子径の差により塗布厚みを見積もる方法も挙げられる。
【0021】
本発明に係る塗布層に含有する粒子は、数平均粒子径が80nm以上5000nm以下であることが好ましい。また数平均粒子径のより好ましい範囲としては80nm以上1000nm未満である。数平均粒子径が80nmより小さいと、ブロッキング防止層のバインダー樹脂の中に粒子が埋もれてしまい、易滑性、ブロッキング防止性を得られない場合がある。数平均粒子径が5000nmより大きいと、水に分散させることが困難となり、インラインコート法でプラスチックシート基材上に塗布した場合、粒子が均一に点在しなくなり、部分的に易滑性を満足できなくなる場合がある。水に分散可能であり、易滑性を満足させるためには、数平均粒子径が上記範囲であることが好ましい。また数平均粒子径が1000nm未満になると、フィルム同士の擦れにより生じる傷が視認しにくくなり、耐傷つき性向上に効果的である。
【0022】
また本発明に含有する粒子の最大粒子径は1000nm未満であることが好ましい。より好ましくは550μm以下、さらに好ましくは330μm以下である。ここでいう最大粒子径とは、塗布層中に含有する粒子のうち最も大きい粒子径のことを言う。かかる要件を満たすことでフィルム同士の擦れにより生じる傷はより視認しにくくなり、耐傷つき性向上に効果的である。
【0023】
前記粒子の形状に関して、特に規定は無いが、コストや市販されている粒子の種類等を考慮すると、形状が略球形であることが好ましい。
【0024】
支持層に塗布層を設けるために好ましい方法としては、微細加工用二軸延伸積層フィルムの製造工程中に基材フィルム上に粒子を含有する層を設ける方法が好適である。中でも、生産性、コストを考慮すると製造工程中に、粒子を含有する層を形成する塗布液を塗布して、熱処理工程で塗布液を乾燥して塗布層を設ける方法が最も好適である。この方法を用いると、基材フィルムと同時に塗布層を設けることで工程が簡略化し、さらに塗布層による易滑性をフィルムに付与させ、巻取り工程における問題点を解決し、生産性の向上やコストの抑制が可能となる。例えば、溶融押出しされた結晶配向前のポリエステルフィルムを長手方向に2.5〜5倍程度延伸し、一軸延伸されたフィルムに連続的に塗布液を塗布する。塗布されたフィルムを段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥し、幅方向に2.5〜5倍程度延伸する。更に、連続的に150〜250℃の加熱ゾーンに導き結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)によって得ることができる。
【0025】
本発明の光学用シートを得るために使用する前記塗布液は、バインダー樹脂、粒子及び水を含み、塗布液に対する水の含有量が50質量%以上であることが好ましい。塗布液に有機溶剤の含有率が高いと、大気中に放出されないために、回収装置を取り付ける必要が生じたり、有機溶剤の種類によれば、高温の加熱ゾーンを通過する際に発火する恐れがあるため、塗布液は水が主成分であり、含有率は50質量%以上であることが好ましい。
【0026】
また、かかる粒子の例としては、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂およびそれらの共重合体、シリコーン樹脂等の有機粒子やシリカ、酸化チタニウム等の無機粒子および有機−無機の複合材料からなる粒子等を用いることができる。
【0027】
本発明に係る塗布層を形成するバインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、およびメラミン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種で形成されていることが好ましい。前記バインダー樹脂は、プラスチックシート基材から粒子の脱落を防止するために、プラスチックシート基材との密着性がよく、また透明であることが必要で、上記樹脂はこれらの特性を満たすことができる。
【0028】
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層は良好な成形性を得るために、下記で定義する面配向係数が0.10以下の範囲内にあることが好ましい。ここで、面配向係数とは、ナトリウムD線を光源として、アッベ屈折率計を用いて長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)を測定し、fn=(Nx+Ny)/2−Nzより求めた値である。
【0029】
成形層の面配向係数を上述の特定範囲内とすることで、成形層を構成する樹脂が、配向の低いアモルファス状態となり、微細な高アスペクト比パターン、大面積の成形が可能となる。面配向係数が0.10より大きくなると成形層を構成する樹脂の配向が強くなり、弾性率が高くなるため上述の成形が難しくなることがある。また、成形層の面配向係数は本発明の効果を阻害しない範囲であれば、積層フィルムの延伸倍率、二軸延伸後の熱処理温度、熱処理時間によって調整可能である。例えば延伸倍率を低倍率に設定することや、熱処理時間を長時間化することによって成形層の面配向係数を低下させることが可能となる。
かかる要件を満たすための方法として、二軸延伸後に成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度(Tm1)以上、支持層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度(Tm)未満の温度で熱処理を施すことが本発明の効果を発現させる方法がある。かかる熱処理を施すことにより、成形層を構成する樹脂はアモルファス状態となり、支持層を構成する樹脂は、融解することなく配向状態を維持し、機械的強度を向上させることが可能となるのである。すなわち、二軸延伸後の熱処理温度をこの範囲とすることで、共押出しによる一貫した製膜工程において成形性と機械的強度を両立させるフィルムを得ることが可能となるため好ましい。また、かかる熱処理温度は成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm1以上であればよいが、5℃以上高温であることが好ましく、より好ましくは10℃以上、特に好ましくは20℃以上高温である。かかる熱処理温度を成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm1より5℃以上高温化させることによって成形層を構成する樹脂の配向緩和が進行し、アモルファス部分が増加することによって成形性が向上するため好ましい。また、Tmが観察されない非晶性樹脂などは、成形性に寄与するアモルファスの増加、分子鎖の緊張状態緩和の観点から(Tg+100℃)〜(Tg+150℃)の温度で熱処理することが好ましい。
【0030】
ここで、融解吸熱ピーク温度Tmは下記手順にて求める。DSCとして、セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC「RDSC220」、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用い、アルミニウム製受皿に5mgの組成物またはフィルムサンプルを充填し、この試料を常温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して5分間溶融させ、この過程で観察される融解吸熱ピークの温度(Tm)を測定する。
【0031】
また、支持層の面配向係数は0.1以上であることが好ましい。かかる値を0.1以上とすることで、支持層の配向が強くなり、高い弾性率を有することができるため、支持層として充分な機械特性を付与することができるようになる。
【0032】
本発明の二軸延伸積層フィルムはフィルム長手方向と幅方向のうち、小さいほうのヤング率が2500MPa以上6000MPa以下であることが好ましい。ヤング率をかかる範囲とすることで支持層がその役割を充分に果たし、ハンドリング性が向上する。
【0033】
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、該成形層の融点より10℃高い温度で15秒熱処理を行ったときの、該塗布層の表面粗さの変化量が±10%以内であることが好ましい。かかる要件は成形層の融点より10℃高い温度で熱処理を行っても実質的に塗布層の表面粗さの値が変化しないことを意味する。かかる要件を満たすことで、経時による滑り性の変化を防ぐことが可能となり、永続的な滑り性を得ることが出来る。本発明の二軸延伸積層フィルムの成形層の融点より10℃高い温度で15秒熱処理を行ったときの、塗布層の表面粗さの変化量を±10%以内とするためには、二軸延伸後の熱処理工程において、該成形層の融点以上の温度にて熱処理を行うことが重要である。該成形層の融点以上の温度にて熱処理を行うと、塗布層中の粒子が沈み込むために、融点以下の熱処理を行った場合よりも表面粗さは小さくなるが、一度該成形層の融点以上の熱処理を行えば、それ以降に該成形層の融点以上の熱処理を行っても、もはや塗布層中の粒子が沈み込む現象は観察されず、表面粗さは実質的に変わらなくなる。
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、ヘイズが8%以下であることが好ましい。本発明による微細加工用二軸延伸フィルムは、バックライトなどの液晶表示装置に用いられ、かかる用途で用いる場合、光透過性が高いことが求められ、かかる要件を満たすことが好ましい。ヘイズがかかる範囲より大きくなると、バックライト搭載時に輝度低下などを引き起こすため好ましくない。
【0034】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、支持層または成形層の樹脂組成は、ポリエステル系、オレフィン系およびアクリル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が用いられることが好ましい。中でもポリエステル系樹脂は共重合が容易で、種々の用途に応じた物性調整が可能であることや、成形が容易であることなどの理由により、主たる成分がポリエステルで構成されていることが好ましい。ここで、「主たる成分」とは構成する成分につき50質量%以上含まれていることをいう。
【0035】
本発明でいうポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分とジオール成分から構成されるものである。芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸および4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸である。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0036】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの支持層を構成するポリエステル樹脂は、上述したジカルボン酸成分と、ジオール成分を適宜選択して、共重合させることにより得ることができる。
【0038】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層を構成するポリエステル樹脂は、上述したジカルボン酸成分と、ジオール成分を適宜選択して、共重合させることにより得ることができる。ここで、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層を構成するポリエステル樹脂は、酸成分として、イソフタル酸を5〜50モル%、または2,6−ナフタレンジカルボン酸が5〜50モル%の範囲で共重合されていることが好ましい。共重合成分としては、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。共重合量のより好ましい範囲は、5〜30モル%である。
【0039】
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層を構成するポリエステル樹脂は、ジオール成分としてスピログリコールを5〜50モル%、またはフルオレン骨格を有するジオール成分が5〜60モル%の範囲で共重合されていることが好ましい。より好ましくはスピログリコールが20〜40モル%またはフルオレン骨格を有するジオール成分が20〜40モル%共重合されていることである。かかるナフタレンジカルボン酸、スピログリコールおよびフルオレン骨格を有するジオール成分を上記の範囲で共重合させることによって、樹脂の非晶部が増加してアモルファスとなり成形性が向上し、また成形層を構成するポリエステル樹脂が高Tg化して耐熱性の向上や、高い透明性、および光学歪みを低減させる効果を奏するため好ましい。
【0040】
かかるフルオレン骨格を有するジオールの例として、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの他に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−エチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−プロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジイソプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ジ−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジイソブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−(1−メチルプロピル)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−(1−メチルプロピル)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ベンジルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジベンジルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0041】
また、上述のフルオレン骨格を有するジオールのヒドロキシ末端にジオール類を負荷させたジヒドロキシ化合物も好ましく用いられる。用いられるグリコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシルエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族ジオール類、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノールなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。これらのジオール類は、フルオレン骨格を有するジオールの二つのヒドロキシ末端にそれぞれ異なるジオールが付加されていてもよく、さらには、ジオール類が複数個連なっていてもよい。複数個連なっている場合、異なるジオールが混在しても良い。
【0042】
また、本発明でいうオレフィンとは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂や、ノルボルネン系誘導体を開環メタセシス重合することにより得た環状ポリオレフィン系樹脂や、ノルボルネン系誘導体とエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどのα−オレフィン類を共重合した環状ポリオレフィン共重合体樹脂などが挙げられる。
【0043】
また、本発明でいうアクリル系樹脂は、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0044】
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムを構成する成形層樹脂および支持層樹脂は、本発明の効果が失われない範囲内で、各種の添加剤を加えることができる。添加配合することができる添加剤の例としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、重合禁止剤、離型剤、増粘剤、pH調整剤、造核剤および塩などが挙げられる。成形層樹脂に造核剤を添加した場合、成形層樹脂の結晶化速度が増加し、成形中に成形層樹脂の結晶化が進行することによって成形加工シートの耐熱性が向上するため好ましい。造核剤としては、例えば酢酸ナトリウムやモンタン酸ナトリウム、エチレンビスラウリル酸アミド、含水ケイ酸マグネシウム塩、含水ケイ酸アルミニウム塩、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
【0045】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層を構成する樹脂の、明細書で定義する、DSCにより得られるガラス転移温度(以下Tg)が、80℃以上、より好ましくは85℃以上、さらに好ましくは100℃以上、最も好ましくは120〜150℃であると、成形後の成形加工シートが耐熱性に優れるため好ましい。かかるガラス転移温度Tgが80℃未満であると、成形加工シートの耐熱性が低くなり、耐熱性が要求される用途への使用が困難になる。
【0046】
ここでガラス転移温度Tgは、下記手順にて求めた。DSCとして、セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC「RDSC220」、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用い、アルミニウム製受皿に5mgの組成物またはフィルムサンプルを充填し、この試料を常温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して5分間溶融させ、次いで液体窒素で急冷した。この過程でガラス転移温度を測定したものである。
【0047】
また、本発明の二軸延伸積層フィルムは光学欠点の数が1平方メートルあたり10個以下であることが好ましい。本発明の二軸延伸積層フィルムはバックライトなどの液晶表示装置に用いられ、かかる用途で用いる場合、光学欠点の数が多いと見栄えの悪い画面となるため好ましくない。ここでいう光学欠点とは、塗剤をプラスチックシート基材の製膜工程中に塗布し、乾燥・横延伸工程を経る際に、異物、泡等の混入により横延伸方向に長く伸びた、略楕円状に形成された、塗剤が抜けたような塗布欠点のことである。略楕円状の長辺の長さは50μm以上、5mm以下とする。光学欠点の数をかかる範囲にする方法として、本発明に用いる粒子含有層を形成する塗剤を、塗布前に圧力損失の低いフィルターを用いて濾過する方法が挙げられる。濾過することで塗剤中の異物を除去でき、効果的に光学欠点を減少させることができる。ただし、圧力損失の高いフィルターを用いると、濾過時の圧力により粒子の凝集が起こり、濾過しない場合よりも光学欠点の数が増加することがある。そこで、フィルターの圧力損失としては1〜5kPaの範囲が好ましい。
また、微細加工用二軸延伸積層フィルムの製造方法としては、二つの異なる熱可塑性樹脂を二台の押出機に投入し、溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入し溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、単膜で作製したシートをそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、その他、フィルム形成用材料を溶媒に溶解させ、その溶液をシート上に塗布し乾燥する方法(コーティング法)等が挙げられる。これらのうちでは、共押出してシート状に加工する共押出法が、一度の工程で精度良く積層製膜できる点において好ましい方法である。また、支持層と積層する場合にも上述の溶融ラミネート法、熱ラミネート法、コーティング法等を用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下に各実施例・比較例の測定方法及び評価方法について説明する。なお、実施例及び比較例中の「部」は全て質量部を示す。
【0049】
(評価項目および評価方法)
A.積層構成
フィルムの断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い500倍で写真を撮影し、断面観察を行い成形層と支持層の積層厚みの測定を行い、この結果から積層比を算出した。
また表面観察より粒子径を決定し、フィルムの断面観察を行い粒子の径を観察し、表面観察より得られた粒子径と断面観察より得られた粒子径の差により粒子含有層の厚みを見積もった。
【0050】
B.表面粗さ
小坂研究所性Surfcorder ET4000Aを用い、長手4.0cm×幅3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、3次元表面粗さ(算術平均表面粗さRa、十点平均表面粗さRz)を測定した。測定条件を以下に示す。
測定速度:0.1mm/sec.(進行方向をxとする)
測定力:100mN
カットオフ値:0.25mm
測定ピッチ:1.0μm(x方向)、5.0μm(y方向)。
【0051】
C.静摩擦係数μs
東洋テスター工業製摩擦測定器を用い、ASTM−D1894に準じて、フィルムの成形層と塗布層が接触するように重ねて摩擦させた時の初期の立ち上がり抵抗値を測定し、最大値を静摩擦係数μsとした。ただし、初期の立ち上がりが大きくて測定上限値を越えた場合は測定不能とした。サンプルは、幅80mm、長さ200mmの長方形とし、5セット(10枚)切り出した。5回測定を行い、平均値を求めた。
【0052】
D.傷付性
図2に示すように、塩ビシート上に、2枚の評価シートを粒子含有層面と成形層面が接触するように重ね、その上に200gの分銅を載せ、手で5cm引っ張り、フィルムの傷付性を見た。かかる操作を任意の3人で行い、0、1、2点と点を付けた。点数が高いほうが傷付性に優れることを示す。傷付性の評価は、分銅を動かした場所を蛍光灯に透かした場合に、傷が明確に見える場合を0点、見える場合を1点、ほぼ見えない場合を2点として評価した。3人の合計点が3点未満の場合、傷付性は×、3点以上5点未満となった場合、傷付性は○、5点以上となった場合は◎とし、傷付性の評価を行った。ただしフィルムが滑らず傷付性の評価が不能な場合は××とし、区別した。
【0053】
E.成形方法
得られた微細加工用二軸延伸積層フィルム、及び離型処理(金型表面を純水、アセトンの順で超音波洗浄後、濃硫酸:過酸化水素水=1:1中に浸漬し、80℃で15分加熱した。次いで、金型を溶液中から取り出し、純水で洗浄後、110℃の熱風オーブンで乾燥した。次に、乾燥した金型を電気炉内で1000℃、2時間加熱し、表面にSiOの熱酸化膜を形成した。続いて、該金型をダイキン株式会社製フッ素系シランカップリング剤 “オプツールDSX”のダイキン工業株式会社製“デムナムソルベント”0.2%溶液中に1分浸漬した。その後、溶液から金型を取り出し、自然乾燥後、70℃、湿度90%RH雰囲気中で1時間放置した。次いで、デムナムソルベントに10秒間浸漬した。)を施した金型(直角二等辺三角形ストライプパターン(ピッチ25μm、凸部幅S’25μm、高さH’12.5μm、アスペクト比1、図3、(c)参照))を120℃に加熱し、二軸延伸積層フィルムの成形層側と金型の凹凸面を接触させて5MPaでプレスし、そのまま30秒保持した。その後50℃に冷却後プレスを解放し、金型から離型して成形品を得た。
【0054】
F.成形性評価方法
E.成形方法に記載された方法により二軸延伸積層フィルムを成形し、離型せずに金型、成形品の断面を切り出して白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い300倍で写真を撮影し、断面観察を行い、金型凹部の高さH、及び幅S、アスペクト比H/S、凹部の断面積A、成形加工シート凸部の高さH’、及び幅S’、アスペクト比H’/S’、凸部の断面積A’を求めた。ここから成形性は次のように判定した。成形加工シート凹部の断面積A’と金型の凸部断面積AからA’/Aを求めて
0.90以上:○
0.90未満:×
とした。また、成形のときに発生した部分的な欠点や離型性悪化によるパターンの形状変化など、面積は同一であるが金型のパターン形状から成形後に得られた成形加工シートのパターン形状が著しく変化をした場合は成形性不良(×)とみなした。また、金型の断面が切り出しにくい場合は、金型表面凹凸を再現できるようにレプリカを作成し、作成したレプリカ断面の凸部を金型凹部、レプリカ凹部を金型凸部として判定を行った。
【0055】
G.面配向係数fn
成形層/支持層にて構成される2層積層構成の場合は、アッベ屈折率計を用いて面配向係数を測定する層(以下、測定層とする)をガラス面に密着させ、次いでナトリウムD線を光源として、長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)を測定し、下記式より測定層の面配向係数fnを求めた。2層構成の場合、かかる方法にて求めたfnのうち、fnが低い層を成形層のfnとした。fnの値が同じ場合、算術平均表面粗さRaが低い値を成形層のfnとした。
fn=(Nx+Ny)/2−Nz。
【0056】
H.融解吸熱ピーク温度Tm
示差走査熱量測定(DSC)として、セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC「RDSC220」を用い、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用いて、面配向係数fnより決定した成形層を削り取り、削り取った成形層をアルミニウム製受皿に5mgの組成物またはフィルムサンプルを充填する。この試料を常温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して5分間溶融させ、この過程で融点を測定した。
【0057】
また、面配向係数fnより決定した支持層を削り取り、削り取った支持層をかかる方法を用いて融点を測定した。
【0058】
I.熱処理後の表面粗さ
DSCより求めた融点Tmより10℃高い温度で15秒熱処理を行った。その後十点平均表面粗さRzを求め、熱処理前のRzの値で除した値が0.9〜1.1の範囲であれば、融点以上の熱処理により表面粗さが変化しないとし、評価を○とした。熱処理後のRzを熱処理前のRaを除した値が0.9未満、あるいは1.1を超える場合は、融点以上の熱処理により表面粗さが変化したと判断し、評価を×とした。
【0059】
J.ヘイズ
50mm角にカットした微細加工用二軸延伸積層フィルムを、日本電子工業株式会社製ヘーズメーターNDH5000を用い、片面のみに塗布層を有する場合は塗布層を有さない面から光線を入射し、両面の塗布層を有する場合は任意の面から光線を入射して測定した。5回測定した平均値を該サンプルのヘイズとした。
【0060】
K.ヤング率
オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100を用い、試料サイズが幅10mm×長さ200mm、引っ張り速度が100mm/分で試験を行った。ヤング率はJIS Z1702(1976年)に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定はフィルムの長手方向、幅方向の両方を10回ずつ測定し、それらの平均値のうち、幅方向、長手方向で小さいほうををヤング率として求めた。
【0061】
L.光学欠点個数の評価
本発明の二軸延伸積層フィルムを1mの大きさで5枚採取し、略楕円状の光学欠点のうち、長辺が50μm以上、5mm以下である光学欠点の数を目視により数え、その平均値を光学欠点の個数とし、以下の基準で評価した。光学欠点の数が10個/m以下であれば良好である。
【0062】
(実施例1)
微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の樹脂として170℃で3時間乾燥したイソフタル酸17.5モル%共重合PET、支持層の樹脂として180℃で3時間乾燥したPET(F20K)を用い、それぞれ別の押出機内280℃で溶融させ、溶融2層共押出口金から押し出された積層樹脂を25℃に保たれた冷却ドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化した。次いで、該キャストフィルムを長手方向にロール式延伸機にて84℃で3.3倍に延伸した。次いで、このフィルムに空気中で支持層側にコロナ放電処理を施し、この処理面に下記の塗布液をメタバーを用いて塗布した後、テンターに導入し、110℃で3.2倍に横延伸後、225℃に制御された温度ゾーンで熱処理を施し、その後、幅方向に170℃で4%弛緩処理を行った後、室温まで冷却して巻取り、成形層の厚みが100μm、支持層の厚みが200μm、全体で300μmの微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。このとき、積層した塗布層の厚みが150nmとなるように塗布液の塗布量を調整した。
<塗布液>
○バインダー樹脂
・下記の(i)〜(iv)の重合組成からなる水溶性アクリル樹脂をエマルション粒子径約50nmで水分散させたアクリル系樹脂(A−1) 100部
(i)メチルメタクリレート 63部
(ii)エチルアクリレート 35部
(iii)アクリル酸 1部
(iv)N−メチロールアクリルアミド 1部
・メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF) 5部
・アセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業(株)製“オルフィン”EXP4051F) 0.5部
○粒子
・数平均粒子径296nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±20nm 4部
・数平均粒子径1007.1nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±126.1nm 1部
(バインダー樹脂に対する含有粒子の質量濃度:4.7%)
○蒸留水 1328部
得られたフィルムは表1に示すように積層構成は2層構成、Ra=9.9nm、Rz=400nm、μs=0.47で滑り性に優れ、かつ擦れによる傷がつき難いフィルムであった。また成形性は良好であり、易滑性と成形性に優れるフィルムであった。また光学欠点の数は3.1×10個/mであった。
【0063】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。
<塗布液>
○バインダー樹脂
・アクリル系樹脂(A−1) 100部
・メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF) 5部
・アセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業(株)製“オルフィン”EXP4051F) 0.5部
○粒子
・数平均粒子径144nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±21.7nm 5部
・数平均粒子径296nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±20nm 3.4部
(バインダー樹脂に対する塗布粒子の質量濃度:8.0%)
○蒸留水 1340部。
得られたフィルムは表1に示すように、Ra=6.9nm、Rz=197nm、μs=0.44で滑り性に優れるフィルムであり、かつ耐傷つき性が非常に優れるフィルムであった。また成形性も良好であり、易滑性と成形性に優れるフィルムであった。また光学欠点の数は4.2×10個/mであった。
【0064】
(実施例3)
成形層の樹脂を180℃で3時間乾燥した2,6−ナフタレンジカルボン酸12モル%共重合PETとし、ロール式延伸機にて90℃で延伸、熱処理温度を240℃としたこと以外は実施例1と同様の方法にて微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。得られたフィルムは表1に示すように、Ra=6.1nm、Rz=200nm、μs=0.44で滑り性に優れるフィルムであり、かつ耐傷つき性が非常に優れるフィルムであった。また成形性も良好であり、易滑性と成形性に優れるフィルムであった。また光学欠点の数は4.3×10個/m以上であった。
【0065】
(実施例4)
実施例3において、成形層の樹脂を2,6−ナフタレンジカルボン酸13.5モル%共重合PETとしたこと以外は同様の方法にて微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。得られたフィルムは表1に示すように、Ra=6.3nm、Rz=240nm、μs=0.46で滑り性に優れるフィルムであり、かつ耐傷つき性が非常に優れるフィルムであった。また成形性も良好であり、易滑性と成形性に優れるフィルムであった。また光学欠点の数は4.3×10個/m以上であった。
【0066】
(実施例5)
実施例3において、塗布液の組成のみを下記のように変更して二軸延伸積層フィルムを得た。
○バインダー樹脂
・アクリル系樹脂(A−1) 100部
・メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF) 5部
・アセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業(株)製“オルフィン”EXP4051F) 0.5部
○粒子
・数平均粒子径296nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±20nm 5.1部
(バインダー樹脂に対する塗布粒子の質量濃度:4.8%)
○蒸留水 1340部。
【0067】
得られたフィルムは表1,2に示すように、Ra=6.4nm、Rz=252nm、μs=0.48で滑り性に優れ、かつ擦れによる傷がつき難いフィルムであった。また成形性は良好であり、易滑性と成形性に優れるフィルムであった。また光学欠点の数は3.3×10個/m以上であった。
【0068】
(実施例6)
実施例3において、塗布液の組成のみを下記のように変更して二軸延伸積層フィルムを得た。
○バインダー樹脂
・アクリル系樹脂(A−1) 100部
・メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF) 5部
・アセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業(株)製“オルフィン”EXP4051F) 0.5部
○粒子
・数平均粒子径296nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±20nm 3.4部
(バインダー樹脂に対する塗布粒子の質量濃度:3.2%)
○蒸留水 1340部。
【0069】
得られたフィルムは表1,2に示すように、Ra=6.1nm、Rz=225nm、μs=0.49で滑り性に優れ、かつ擦れによる傷がつき難いフィルムであった。また成形性は良好であり、易滑性と成形性に優れるフィルムであった。また光学欠点の数は3.0×10個/m以上であった。
【0070】
(実施例7)
実施例6において、塗布液を日本ポール(株)製のポリプロピレン製、定格濾過精度10μm、初期圧力損失が5.5kPaのデプスフィルターを用いて濾過した後に塗布し、二軸延伸積層フィルムを得た。得られたフィルムは表1,2に示すように、Ra=6.1nm、Rz=225nm、μs=0.49で滑り性に優れ、かつ擦れによる傷がつき難いフィルムであった。また成形性は良好であり、易滑性と成形性に優れるフィルムであった。また光学欠点の数は4.3×10個/m以上であった。
【0071】
(実施例8)
実施例6において、塗布液をヤマシンフィルタ(株)製、ポリプロピレン/ポリエステル製、定格濾過精度5μm、初期圧力損失が1kPaのプリーツフィルターを用いて濾過した後に塗布し、二軸延伸積層フィルムを得た。得られたフィルムは表1,2に示すように、Ra=6.1nm、Rz=225nm、μs=0.49で滑り性に優れ、かつ擦れによる傷がつき難いフィルムであった。また成形性は良好であり、易滑性と成形性に優れるフィルムであった。また光学欠点の数は8個/mで良好であった。
【0072】
(比較例1)
熱処理温度を190℃で実施したこと以外は実施例1と同様の方法にて微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。得られたフィルムは滑り性や耐傷つき性に優れるもが、成形が不可であった。
得られたフィルムは表1に示すように、Ra=13.1nm、Rz=445nm、μs=0.38で滑り性に優れるフィルムであり、かつ耐傷つき性に優れるフィルムであった。成形性を評価した結果、成形性が不十分であり、微細加工用に使用するには不可であった。
【0073】
(比較例2)
実施例1にて、粒子塗布層を成形層側に設けた以外は同様の方法にて微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。得られたフィルムは表1に示すように、Ra=9.6nm、Rz=422nm、μs=0.44で滑り性に優れるフィルムであったが、成形性を評価した結果、成形性が不十分であり、微細加工用に使用するには不可であった。
【0074】
(比較例3)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。
<塗布液>
○バインダー樹脂
・アクリル系樹脂(A−1) 100部
・メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF) 5部
・アセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業(株)製“オルフィン”EXP4051F) 0.5部
○粒子
・数平均粒子径296nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±20nm 0.84部
・数平均粒子径1007.4nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±126.1nm 0.54部
(バインダー樹脂に対する含有粒子の質量濃度:1.3%)
○蒸留水 1286部。
得られたフィルムは表1に示すように、Ra=6.0nm、Rz=52nm、μsは測定不能で滑り性が非常に悪く、かつ傷付性評価においてもフィルムが滑らず、傷付性評価が不能であった。
【0075】
(比較例4)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。
<塗布液>
○バインダー樹脂
・アクリル系樹脂(A−1) 100部
・メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF) 5部
・アセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業(株)製“オルフィン”EXP4051F) 0.5部
○粒子
数平均粒子径296nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±20nm 0.84部
(バインダー樹脂に対する含有粒子の質量濃度:0.8%)
○蒸留水 1365部
得られたフィルムは表1に示すように、Ra=28.6nm、Rz=888nm、μs=0.6で滑り性は良いが、非常に傷がつき易いフィルムであった。
【0076】
(比較例5)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。
<塗布液>
○バインダー樹脂
下記の(v)〜(viii)の重合組成からなる水溶性ポリエステル樹脂を水分散させたポリエステル系樹脂 100部
・(v)テレフタル酸 44部
・(vi)5−ナトリウムスルホイソフタル酸 6部
・(vii)エチレングリコール 45部
・(viii)ジエチレングリコール 5部
・メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF) 5部
・アセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業(株)製“オルフィン”EXP4051F) 0.5部
○粒子
・数平均粒子径296nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±20nm 10部
・数平均粒子径1007.4nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±126.1nm 0.54部
(バインダー樹脂に対する含有粒子の質量濃度:10%)
○蒸留水 1202部。
得られたフィルムは表1に示すように、Ra=11.2nm、Rz=564nm、μs=0.58で滑り性は良いが、非常に傷がつき易いフィルムであった。
【0077】
(比較例6)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して二軸延伸積層フィルムを得た。
○バインダー樹脂
・アクリル系樹脂(A−1) 100部
・メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF) 5部
・アセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業(株)製“オルフィン”EXP4051F) 0.5部
○粒子
・数平均粒子径296nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±20nm 2.6部
(バインダー樹脂に対する塗布粒子の質量濃度:2.5%)
○蒸留水 1340部
得られたフィルムは表1,2に示すように、Ra=5.5nm、Rz=120nm、μs=0.65で傷付性は良いが、滑り性に劣るフィルムであった。また光学欠点の数は2.3×10個/m以上であり、光学欠点の多いフィルムであった。
【0078】
(比較例7)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して二軸延伸積層フィルムを得た。
○バインダー樹脂
・アクリル系樹脂(A−1) 100部
・メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF) 5部
・アセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業(株)製“オルフィン”EXP4051F) 0.5部
○粒子
・数平均粒子径296nmシリカ粒子、粒子径標準偏差σ=±20nm 10.2部
(バインダー樹脂に対する塗布粒子の質量濃度:9.7%)
○蒸留水 1340部
得られたフィルムは表1,2に示すように、Ra=9.2nm、Rz=262nm、μs=0.39で滑り性に優れるが、傷付性に劣るフィルムであった。また光学欠点の数は4.3×10個/m以上であり、光学欠点の多いフィルムであった。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の二軸延伸積層フィルムはバイオチップ、半導体集積材料、意匠部材、光回路、光コネクタ部材、およびディスプレイ用部材など各種分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 金型の凸部
2 金型の凹部
S 金型凹部の幅
H 金型凹部の高さ
t 金型凸部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層の片面に成形層を設け、成形層と反対面の支持層面に粒子を塗布した塗布層を有する二軸延伸積層フィルムであって、該塗布層の十点平均表面粗さRzが70〜450nm、算術平均表面粗さRaが6nm〜12nm、成形層と塗布層の静摩擦係数μsが0.5以下であることを特徴とする微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項2】
成形層の面配向係数fnが0.10以下である請求項1に記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項3】
二軸延伸積層フィルムを該成形層の融点より10℃高い温度で15秒保持したときの、該塗布層の表面粗さの変化量が±10%以内である請求項1または2に記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項4】
ヘイズが8%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項5】
塗布する粒子の最大粒子径が1000nm未満である請求項1〜4のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項6】
支持層または成形層の主たる成分がポリエステルである請求項1〜5のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−137555(P2010−137555A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254580(P2009−254580)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】