説明

微結晶型(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸

【課題】CRTH2受容体上のPGD阻害剤である、微結晶型の化合物、並びに、薬理学的活性化合物の表面積を最大にし、それにより経口摂取における消化管から体内へのそれらの取り込みを最大にするための薬剤の調製方法の提供。
【解決手段】i)結晶状の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を塩基性水溶液で処理する工程と、ii)弱酸で処理する工程と、iii)微結晶型の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を沈殿させて回収する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCRTH2受容体のPGDの阻害剤である化合物に関する。具体的には、本発明は微結晶型の該化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に行った特許出願(特許文献1)において、我々は多くのインドール酢酸誘導剤を開示しており、それらはCRTH2受容体上のPGDの阻害剤であり、ゆえに、例えばアレルギー性喘息、永続性アレルギー性鼻炎、季節性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、接触過敏症(接触皮膚炎を含む)、結膜炎、特にアレルギー性結膜炎、好酸性気管支炎、食物アレルギー、好酸性胃腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病、肥満細胞症、更には他のPGDによって媒介される疾患(例えば自己免疫疾患(例えば高IgE症候群及び全身狼瘡エリテマトーデス))、乾癬、ざ瘡、多発性硬化症、同種移植拒否、虚血再灌流障害、慢性閉塞性肺疾患、並びに、場合によっては、慢性関節リウマチ、乾癬の関節炎及び骨関節炎及び神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中及び筋萎縮性側索硬化症)などの疾患及び症状の治療又は予防に有用である。
【特許文献1】国際公開第2005/044260号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
薬理学的活性化合物の表面積を最大にし、それにより経口摂取における消化管から体内へのそれらの取り込みを最大にするために、微結晶型に調製することが有利であることは、当業者に周知である。この種の微結晶型への調製には通常化合物をミリングして所望の粒径とする工程が必要となり、そのような製造工程の追加に伴い、必然的に生産コストが上昇する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
しかしながら、驚くべきことに発明者らは、特許文献1に記載の化合物のうちの1つの微結晶型が、付加的な工程段階なしで簡便かつ安価に調整できることを見出した。
【0005】
したがって、本発明の第1の態様では、微結晶型の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸であって、当該結晶の少なくとも90%が約3μm以下の直径を有するものを提供する。
【0006】
好ましくは当該結晶の少なくとも90%が約2μm以下の直径を有し、特に好ましくは当該結晶の少なくとも90%が約1μm以下の直径を有する。
【0007】
驚くべきことに、この化合物の微結晶型がミリング工程を含まない、簡便かつ安価な方法によって調製できることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
我々の過去の特許出願において、酢酸テトラヒドロフラン:水=1:1の混合溶液中で、(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)などの化合物を、それらのエチルエステルから、水酸化リチウム水和物を使用する加水分解により調製した例を開示している。生成物をジメチルスルホキシド/水(DMSO/水)から再結晶させる場合、結晶の90%において、直径が50〜70μm未満であることが見出された。
【0009】
しかしながら、穏やかな塩基性水溶液及びそれに続くクエン酸で処理して再結晶生成物からDMSOを除去したとき、意外なことに5μm未満、実際は通常約1μm以下の直径を有する微結晶固体の形で生成物が得られることを見出した。
【0010】
したがって、本発明の第2の態様では、微結晶型の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸の調製方法であって、当該結晶の少なくとも90%が約3μm以下の直径を有する方法を提供する。当該方法は以下の工程を含んでなる。すなわち、
i)結晶状の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を塩基性水溶液で処理する工程と、
ii)弱酸で処理する工程と、
iii)微結晶型の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を沈殿させて回収する工程、である。
【0011】
本発明の方法に用いられる適切な塩基は、5.5より大きいpKbを有するものであり、例えばカルボン酸塩(例えばナトリウム、カリウム又はアンモニウムの炭酸塩)が挙げられる。炭酸カリウムが特に有用である。
【0012】
当該方法における(i)の工程では、結晶状の固体と弱塩基の混合物を加熱し、(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を部分的な溶解させてもよい。弱塩基がカルボン酸カリウム塩のようなカルボン酸塩であるときは、約45〜60℃、好ましくは50〜55℃での加熱が適当であることを見出した。
【0013】
当該方法の(ii)の工程で用いられている用語「弱酸」とは公知の用語であって、水溶液中で部分的に解離する酸を意味する。本明細書における弱酸とは2以上のpKaを有する酸であって、2.8のpKaの値を有する(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を沈殿させることができるものを指す。
【0014】
(ii)の工程に用いられる適切な弱酸としてはクエン酸、酒石酸及びベンゼンスルホン酸が挙げられ、特にクエン酸が適切である。
【0015】
(ii)の工程において、弱酸の量は、溶液のpHをpH6未満に、より典型的には約pH5.5に調整し、酸が溶液から沈殿を形成することを確実にする態様で選択される。
【0016】
約1〜5時間かけて徐々に前記の酸を添加し、例えば酸添加の間、約10〜30℃(好ましくは15〜25℃)に溶液を冷却するのが好ましい。
【0017】
上記の方法の(i)の工程の前に、以下の1つ以上の工程を追加してもよい。
a)(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸のC−Cアルキルエステルを塩基で加水分解し、(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を得る工程、及び
b)極性有機溶剤から(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を再結晶させる工程。
【0018】
典型的には、(a)の工程で使用する塩基は、水及び有機溶剤(例えばテトラヒドロフラン(THF))の混合溶液中の、アルカリ金属の水酸化物(例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム水酸化物)である。
【0019】
生成物(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸は大部分の溶媒においてやや溶解しにくいが、DMSO、N−メチルピロリジン及びジメチルホルムアミド(そのいずれかは水と任意に混合できる)は全て再結晶の工程における適切な溶媒であり、特に好適にはDMSOと水の混合液である。
【0020】
上記したように、微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸はCRTH2受容体に対するPGDのアンタゴニストであり、ゆえに、CRTH2受容体上でPGDによって媒介される疾患及び症状の治療を必要とする患者に、微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸の適切な量を投与することを含んでなる方法は有用である。
【0021】
本発明の更なる態様では、微結晶型の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸であって、当該結晶の少なくとも90%は約3μm以下の直径を有し、医学用途に、具体的にはCRTH2受容体上でPGDによって媒介される疾患及び症状の治療又は予防用に用途に用いられるものを提供する。
【0022】
上記のように、そのような疾患及び症状としては、例えばアレルギー性喘息、永続性アレルギー性鼻炎、季節性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、接触過敏症(接触皮膚炎を含む)、結膜炎、特にアレルギー性結膜炎、好酸性気管支炎、食物アレルギー、好酸性胃腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病、肥満細胞症、更には他のPGDによって媒介される疾患(例えば自己免疫疾患(例えば高IgE症候群及び全身狼瘡エリテマトーデス))、乾癬、ざ瘡、多発性硬化症、同種移植拒否、虚血再灌流障害、慢性閉塞性肺疾患、並びに、場合によっては、慢性関節リウマチ、乾癬の関節炎及び骨関節炎及び神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中及び筋萎縮性側索硬化症)などが挙げられる。
【0023】
微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸は、治療を必要とする疾患又は症状に応じた適切な方法で製剤化される必要がある。
【0024】
したがって、本発明の更なる態様では、微結晶型の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を、医薬賦形剤又は担体と共に含んでなり、当該結晶が約3μm以下の直径を有する医薬組成物を提供する。治療又は予防される疾病又は病状に適切又は有益と考えられる他の活性物質を存在させてもよい。
【0025】
担体は、又はもし1種以上存在する場合には各担体は、その製剤の他の成分と適合し、受用者に有害ではないという意味で許容可能でなければならない。
【0026】
経口、直腸、経鼻、気管支(吸入)、局所(点眼、口腔、舌下)、膣内又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与に適切な製剤としてもよく、薬学の分野で公知の方法で調製できる。
【0027】
投与経路は治療対象の症状にもよるが、好ましくは組成物は経口、経鼻、気管支又は局所投与用に製剤化される。
【0028】
組成物は上記で定義された活性薬剤を担体と会合させることによって調製してもよい。一般に、製剤は活性薬剤を液性の担体、微細に分割した固体の担体又はその両者と均一にかつ緊密に会合させ、必要であれば生成物を成形して調製される。本発明には、約3μm以下の直径を有する微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を、薬理学的又は獣医学的に許容できる担体又は賦形剤と会合させる医薬組成物の調製方法が包含される。
【0029】
本発明における経口投与用の製剤はカプセル、薬用小袋又は錠剤のような別個の単位として投与してもよく、それぞれ所定量の活性薬剤を粉末又は顆粒として、活性薬剤の水性若しくは非水性の溶液又は懸濁液として、又は水中油滴型乳剤又は油中水滴型エマルジョンとして、又はボーラスの形態で含有させてもよい。
【0030】
経口投与(例えば錠剤及びカプセル)用の組成物の場合、「許容できる担体」という用語には例えば、結合剤(例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン(Povidone)、メチルセルロース、エチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース及び澱粉)、充填材及び担体(例えば穀物澱粉、ゼラチン、乳糖、スクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウム及びアルギン酸)、並びに潤滑油(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム及び他のステアリン酸金属塩、ステアリン酸グリセロール、ステアリン酸、シリコーン流体、タルクワックス、油及びコロイド状シリカ)などの通常用いられる賦形剤が含まれる。ハッカ、冬緑油、サクランボ香味料等の香料も使用できる。剤形を容易に形成できるように着色剤の添加も望ましいと考えられる。また、錠剤は公知の方法により被覆してもよい。
【0031】
任意に1つ以上の補助成分と共に、圧縮又は成形により錠剤を調製してもよい。自由に流動する粉末状又は顆粒状などの活性薬剤を適切な機械で圧縮し、任意に結合剤、潤滑剤、不活性の希釈剤、保存剤、表面活性剤又は分散剤と混合して圧縮錠剤を調製してもよい。成形錠剤は、不活性な希釈液で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械内で成形して調製してもよい。錠剤は任意に被覆し、又は切れ目を入れてもよく、活性薬剤が緩慢に放出又は徐放される態様で製剤化してもよい。
【0032】
経口投与に適している他の製剤としては、風味ベース(通常スクロース及びアカシア又はトラガカント)中に活性薬剤を含んでなるロゼンジ、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアのような不活性ベース中に活性薬剤を含んでなるパステルア、並びに適切な液体担体中に活性薬剤を含んでなるマウスウォッシュが挙げられる。
【0033】
皮膚に対する局所投与用に、微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を、クリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液などの形態で調製してもよい。上記薬剤に適用かのうなクリーム又は軟膏の製剤形態は、例えば、British Pharmacopoeiaのような薬剤学における標準的な教本に記載されている公知の製剤形態である。
【0034】
微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を、鼻腔、気管支又はバッカルへの投与用に、例えば粉末状、溶液状又は懸濁液状の形態で薬理学的活性成分を分散できる、例えばエアゾール又はスプレーにより使用し、気道の治療を行ってもよい。粉末散布性を持つ医薬組成物は通常、活性成分に加えて、室温以下の沸点を持つ推進剤、及び、必要であれば、液体又は固体状の非イオン性又は陰イオン性の界面活性剤及び/又は希釈剤のような添加剤を含む。薬理的活性成分が溶液となっている医薬組成物は、この成分に加えて、適切な推進剤、更に、必要であれば、更に別の溶媒及び/又は安定剤を含む。推進剤の代わりに圧搾空気を使用してもよく、必要であれば、適切な圧搾及び膨張装置によってこの圧搾空気を生成させてもよい。
【0035】
非経口投与用の製剤は一般に滅菌されている。
【0036】
典型的には、微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸の投与量は、CRTH2受容体におけるPGDの阻害に効果的な血漿中の薬剤濃度を維持する場合、約0.01〜100mg/kgである。微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸の治療効果を有する正確な量、及びこの種の化合物の最適な投与経路は、当該技術分野の当業者であれば、薬品の血液濃度を、治療効果を有するのに必要となる濃度と比較することによって簡便にできる。
【0037】
微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を、上記の疾患及び症状の治療に有用な1つ以上の活性薬剤と組み合わせて使用してもよいが、これらの活性薬剤が必ずしもCRTH2受容体のPGDの阻害剤である必要はない。
【0038】
すなわち、上記の医薬組成物は追加的にこれらの活性薬剤の1種以上を含んでもよい。
【0039】
本発明はまた、CRTH2受容体上でPGDによって媒介される疾患及び症状の治療用薬剤の調製における、微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸(結晶は約3μm以下の直径を有する)の使用であって、当該薬剤が同じ疾患及び症状の治療に有用な活性薬剤を更に含んでなる使用を提供する。
【0040】
全く異なる作用機序を持つ可能性のあるこれら追加的な活性薬剤としては、以下のアレルギー性及びその他の炎症性疾患に対する既存の治療用薬剤が挙げられる。すなわち、サルメテロールなどのβ2アゴニスト、フルチカゾンなどのコルチコステロイド、ロラチジンなどの抗ヒスタミン剤、モンテルカストなどのロイコトリエンアンタゴニスト、オマリズマブなどの抗IgE抗体治療薬、フシジン酸などの抗感染薬(特にアトピー性皮膚炎の治療用)、クロトリマゾールなどの抗真菌薬(特にアトピー性皮膚炎の治療用)、タクロリムス及び炎症性皮膚疾患の場合は特にピメクロリムスなどの免疫阻害剤。
【0041】
CRTH2アンタゴニストは、炎症性の徴候の進行時に使用される以下のような治療薬と組み合わせてもよい。すなわち、他の受容体上で作用するPGDに対する他のアンタゴニスト(例えばDPアンタゴニスト)、タイプ4ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えばシロニラスト)、サイトカイン産生調整剤(例えばTNFα変換酵素の阻害剤(TACE))、IL−4及びIL−5の活性を調節する薬剤(例えばモノクローナル抗体及び可溶性受容体をブロックするようなTh2サイトカイン)、PPAR−γアゴニスト(例えばロシグリタゾーン)、5−リポオキシゲナーゼ阻害剤(例えばジロイトン)。
【0042】
本発明の更なる態様では、微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸(結晶は約3μm以下の直径を有する)、並びに上記した薬品の1つ以上を含んでなる製品であって、CRTH2受容体上のPGDの作用によって媒介される疾患又は症状の治療において、同時、個別又は連続的に使用される複合調製物としての製品を提供する。
【0043】
本発明は以下の実施例を参照して詳細に記述されるが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>:微結晶型(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸の合成
【0045】
反応式1に記載の反応式に従い合成を実施した。
反応式1
【化1】

【0046】
段階1:エチル−(5−フルオロ−2−メチルインドリル−1−アセテート)の合成
【化2】

5−フルオロ−2−メチルインドール(0.45kg、3.017モル、1.0重量部)、粉末状のカルボン酸カリウム塩(1.251kg、9.05モル、2.78重量部)及びアセトニトリル(9.0L、20容)を、15〜25℃で20Lのフランジフラスコに充填した。エチルブロモアセテート(0.671L、2.67モル、1.49容)を添加し、18時間還流を維持しながら加熱し、その後、H NMR反応液をサンプリングし、サンプルを濃縮し、D−DMSOに残余物を取り込ませ、濾過し、H NMRスペクトルを記録)によって製造過程をチェックし、その結果87%の転換を示した。エチルブロモアセテート(0.333L、1.32モル、0.74容)及び粉末状のカルボン酸カリウム塩(0.626kg、4.53モル、1.39重量部)を更に充填し、還流条件を更なる6時間に設定した。H NMR反応液をサンプリングし、サンプルを濃縮し、D−DMSOに残余物を取り込ませ、濾過し、H NMRスペクトルを記録)によって製造過程をチェックし、その結果98.4%の転換を示した。フラスコ内容物を16時間にわたり15〜25℃にまで冷却させた。固体を濾過除去し、瀘過物ケーキをアセトニトリル(2×1L、2×2容)で洗浄した。濾過された混合物を、40℃(水浴)で真空下で乾燥して濃縮し、茶色の油状物(1.286kg)として粗製の段階1の生成物を得た。粗生成物を、ヘプタン→ヘプタン:トルエン→トルエンの勾配溶出を使用する乾燥フラッシュクロマトグラフィで精製し、オフホワイトの固体(0.573kg、理論値80.7%、残余のトルエンで補正)としてエチル−(5−フルオロ−2−メチルインドリル−1−アセテート)を得た。混合フラクションを適宜再度クロマトグラフ処理した。
【0047】
段階2:(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)酢酸エチルエステルの合成
【化3】

0〜5℃のジクロロメタン(5.73L,10容)中溶液としての、エチル−(5−フルオロ−2−メチルインドリル−1−アセテート)(0.573kg、2.44モル、1.0重量部)及びキノリン−2−カルボキシアルデヒド(0.418kg、2.66モル、0.735重量部)をトリエチルシラン(1.369L、8.51モル、2.39容)で処理し、更に0〜10℃でトリフルオロ酢酸(0.561L、7.28モル、0.98容)を液滴により添加した。得られる暗赤色の溶液を3時間還流を維持しつつ加熱し、H NMRMET/PR/0344)で製造過程を分析してチェックし、その結果反応の完了を示した。反応液を15〜25℃に冷却し、0.5時間以上にわたり飽和ナトリウム水素カルボン酸塩溶液(11.5L、20容)を添加して反応をクエンチした(注:発泡及びガス発生を伴う)。層分離し、水性層をジクロロメタン(1×2.8L、1×5.0容)で抽出し、混合複合層を20%(w/w)の塩化ナトリウム水溶液(1×3.0L、1×5容)で洗浄し、硫酸ナトリウム(0.6kg、1.05重量部)を通じて乾燥させた。懸濁液を濾過し、瀘過物ケーキをジクロロメタン(2×0.6L、2×1.05容)で洗浄し、濾過された混合物を40℃(水浴)で真空濃縮し、(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)−酢酸エチルエステルの茶色の油状固形物(1.227kg、理論値133.8%)(シリル関連の副産物が混入)を得た。
【0048】
段階3:(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)−酢酸
【化4】

【0049】
段階3への投入量を算出するため、段階2における反応が理論的に収率100%で進行したと仮定された。
【0050】
水酸化カリウム(0.486kg、0.53重量部)の水溶液(5.5L、6容)を、(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インド−1−イル)−酢酸エチルエステル(0.916kg、2.44モル、1重量部:仮定値)のテトラヒドロフラン(3.66L、4容)中溶液に添加し、反応混合液を30〜35℃にまで昇温度させた。反応液を30〜35℃で2時間維持し、更にTLC分析前にTHF:水で希釈した反応混合液)で分析し(酢酸エチル:トルエン=1:1、視覚化:UV)、は出発原料の消失によって反応完了を確認した。tert−ブチルメチルエーテル(4.6L、5容)を添加し、界面材料が水性相に保持されるように層分離させた。水性層は、tert−ブチルメチルエーテル(4.6L、5容)で更に洗浄し、1にわたり35〜40℃(水浴)で真空濃縮して残余の有機物質を除去し、更に15〜25℃にまで冷却した。温度を20〜25℃の範囲に維持しつつ、得られたスラリーを塩酸水(2M、3.44L、3.75容)によってpH5.5に酸性化した(酸性化により溶液が濃赤色に変化する)。スラリーを15〜25℃で1時間エージングさせ、pH5.5であることを確認し、スラリーを濾過(徐々に)し、更に回収された固体を水(1×1容、1×0.92L)で洗浄した。湿式のケーキを、カールフィッシャー分析で含水率0.3%となるまでトルエン(35L)によって共沸乾燥し、紫色の固体(0.767kg、理論値90.5%、5.6重量%トルエンで補正)として粗生成物を得た。
【0051】
段階4/4a:(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)−酢酸の再結晶化及び再沈殿
【化5】

【0052】
(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)−酢酸(0.767kg、2.2モル、1.0重量部)のジメチルスルホキシド(9.21L、12容)中のスラリーを95〜100℃にまで加熱し、溶解させた。得られた物質を95℃で濾過し、温度を70〜80℃で維持しつつ濾過物を10分にわたり水(2.3L、3.0容)で処理し、3時間にわたり15〜25℃に冷却した。観察された沈殿物を濾過して回収し、回収した黄色の固体を水(3×0.8L、3×1容)で洗浄し、フィルタで吸引して乾燥させ、初期のバッチから得た(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)−酢酸0.175kgと更に混合した。混合物を16時間(0.942kg)45℃で真空乾燥させた。H NMR分析(D−DMSO)において、0.6%w/wのジメチルスルホキシドの存在を示した。
【0053】
(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)−酢酸(0.942kg、2.28モル、l.0重量部)及びカルボン酸カリウム塩(0.953kg、1.20重量部)の水(12.71L、12容)中のスラリーを、50〜55℃に加熱し、40分間撹拌し、固体を部分的に消失させた。クエン酸水溶液(20%w/v)を、15〜25℃(注:発泡あり)に冷却しつつ、3時間以上にわたり添加し、pHを5.5(6.54L、8.23容)に調節した。0.5時間撹拌し、pHが5.5であることを確認し、沈殿物が観察され、それらを濾過(徐々に)して回収した。回収した固体を水(2×2.78L、2×3.5容)で洗浄し、フィルタで吸引して乾燥させ、45℃で一定の重量となるまで真空乾燥し、1.4mmのメッシュにかけ、黄色の固体(0.722kg)として(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)−酢酸を得た。
【0054】
<実施例2>:結晶のサイズ
1バッチの生成物A(実施例1に記載の通りにDMSO/水から再結晶(段階4)させた(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)−酢酸))、及び3バッチの生成物B(DMSO/水から再結晶し、更に実施例1で先に述べた通りにカルボン酸カリウム塩及びクエン酸で処理した(ステップ4a)(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチルインド−1−イル)−酢酸)を用い、結晶のサイズをレーザー回折で測定し、比較した。結果を以下の表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果から、生成物Aの粒子のわずか10%が直径約10μm未満である一方で、生成物Bの粒子の90%が直径2μm未満であることが明らかとなった。
【0057】
以上の結果は、我々の過去の特許出願で開示した生成物である生成物Aと比較し、本発明の微結晶型生成物Bを含んでなる医薬製剤では、経口投与による体内への取り込みが大幅に向上することを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶の少なくとも90%が約3μm以下の直径を有する、微結晶型(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸。
【請求項2】
結晶の少なくとも90%が約2μm以下の直径を有する、微結晶型(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の微結晶型(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸の調製方法であって、
i)結晶状の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を弱塩基水溶液で処理する工程と、
ii)弱酸で処理する工程と、
iii)微結晶型の(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を沈殿させて回収する工程を含む方法。
【請求項4】
前記弱塩基が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は炭酸アンモニウムである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記弱塩基が炭酸カリウムである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
(i)の工程において、結晶状の固体と弱塩基との混合物を加熱し、(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を部分的に溶解させる、請求項3から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記弱塩基が炭酸カリウムであり、前記混合物を50〜55℃に加熱する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記弱酸がクエン酸、酒石酸又はベンゼンスルホン酸である、請求項3から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記弱酸がクエン酸である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記方法における(i)の工程の前に、
a)(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸のC−Cアルキルエステルを塩基で加水分解し、(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を得る工程、及び
b)極性有機溶剤から(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を再結晶させる工程
のうちの1つ以上の工程が追加されてもよい、請求項3から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
(a)の工程で、前記塩基が水及び有機溶剤(例えばテトラヒドロフラン(THF))の混合溶液中の、アルカリ金属の水酸化物(例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム水酸化物)である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
(b)の工程の極性有機溶剤が、水と任意に混合させてもよいDMSO、N−メチルピロリジン及びジメチルホルムアミドのいずれかである、請求項10又は請求項11記載の方法。
【請求項13】
医療用の、請求項1又は請求項2記載の微結晶型(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸。
【請求項14】
アレルギー性喘息、永続性アレルギー性鼻炎、季節性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、接触過敏症(接触皮膚炎を含む)、結膜炎、特にアレルギー性結膜炎、好酸性気管支炎、食物アレルギー、好酸性胃腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病、肥満細胞症、更には他のPGDによって媒介される疾患(例えば自己免疫疾患(例えば高IgE症候群及び全身狼瘡エリテマトーデス)、乾癬、ざ瘡、多発性硬化症、同種移植拒否、虚血再灌流障害、慢性閉塞性肺疾患、並びに、慢性関節リウマチ、乾癬の関節炎及び骨関節炎及び神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中及び筋萎縮性側索硬化症)の治療又は予防用の、請求項1又は請求項2記載の微結晶型(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸。
【請求項15】
アレルギー性喘息、永続性アレルギー性鼻炎、季節性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、接触過敏症(接触皮膚炎を含む)、結膜炎、特にアレルギー性結膜炎、好酸性気管支炎、食物アレルギー、好酸性胃腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病、肥満細胞症、更には他のPGDによって媒介される疾患(例えば自己免疫疾患(例えば高IgE症候群及び全身狼瘡エリテマトーデス)、乾癬、ざ瘡、多発性硬化症、同種移植拒否、虚血再灌流障害、慢性閉塞性肺疾患、並びに、慢性関節リウマチ、乾癬の関節炎及び骨関節炎及び神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中及び筋萎縮性側索硬化症)の治療又は予防用薬剤の調製のための、請求項1又は請求項2記載の微結晶型(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸の使用。
【請求項16】
微結晶型(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸を、医薬用賦形剤又は担体と共に含んでなる、請求項1又は請求項2記載の医薬組成物。
【請求項17】
経口、経鼻、気管支又は局所投与用に製剤化されている、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
CRTH2受容体上でPGD2が媒介する疾患及び症状の治療に有用な1つ以上の追加的な活性薬剤を更に含んでなる、請求項16又は17記載の組成物。
【請求項19】
前記追加的な活性薬剤が、サルメテロールなどのβ2アゴニスト、フルチカゾンなどのコルチコステロイド、ロラチジンなどの抗ヒスタミン剤、モンテルカストなどのロイコトリエンアンタゴニスト、オマリズマブなどの抗IgE抗体治療薬、フシジン酸などの抗感染薬(特にアトピー性皮膚炎の治療用)、クロトリマゾールなどの抗真菌薬(特にアトピー性皮膚炎の治療用)、タクロリムス及び炎症性皮膚疾患の場合は特にピメクロリムスなどの免疫阻害剤、他の受容体上で作用するPGDに対する他のアンタゴニスト(例えばDPアンタゴニスト)、タイプ4ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えばシロニラスト)、サイトカイン生産調整薬剤(例えばTNFα変換酵素の阻害剤(TACE))、IL−4及びIL−5の活性を調節する薬剤(例えばモノクローナル抗体及び可溶性受容体をブロックするようなTh2サイトカイン)、PPAR−γアゴニスト(例えばロシグリタゾーン)、5−リポオキシゲナーゼ阻害剤(例えばジロイトン)から選択される、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の化合物を、薬理学的又は獣医学的に許容できる担体又は賦形剤と結合又は会合させることを含む、請求項16から19のいずれか1項記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項21】
請求項1又は2記載の微結晶(5−フルオロ−2−メチル−3−キノリン−2−イルメチル−インドール−1−イル)−酢酸、並びに請求項19記載の薬剤の1つ以上を含んでなる製品であって、CRTH2受容体上のPGDの作用によって媒介される疾患又は症状の治療において、同時、個別又は連続的に使用される複合調製物としての製品。
【請求項22】
前記薬剤が更にCRTH2及び/又はDP受容体上でPGDによって媒介される疾患及び症状の治療に有用な追加的な活性薬剤を含んでなる、請求項15記載の使用。
【請求項23】
前記追加的な活性薬剤が、請求項19記載の薬剤のうちの1つの薬剤である、請求項22記載の使用。

【公表番号】特表2008−531668(P2008−531668A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557577(P2007−557577)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000704
【国際公開番号】WO2006/092579
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(506107391)オキサジェン リミテッド (10)
【Fターム(参考)】