応力緩和スリットを有する機械的溶接構造物及びこの構造物を具備した液化ガス運搬船
【課題】従来技術に見られる欠点を有さない機械的溶接構造物を提供する。
【解決手段】本発明は、平面内に延在し一辺が直線エッジ(15)によって画定された第1の平坦な薄型金属構造要素(10)と、第1の金属構造要素(10)の直線エッジ、又は、この直線エッジ(15)に連結された中間要素(25)に溶接された第2の金属構造要素(20)と、を有する機械的溶接構造物に関する。中間要素は第1の金属構造要素(10)と第2の金属構造要素(20)の間に挿入され、第2の金属要素(20)は、直線エッジ(15)の少なくとも1点(151)に、直線エッジ(15)に対して垂直に前記平面内で延びる少なくとも一つの成分に分解する力を印加する。本発明によれば、第1の構造要素(10)は、直線エッジ(15)に対して平行に延在し、前記力が印加される点に対向して位置している応力緩和スリット(12)を有する。
【解決手段】本発明は、平面内に延在し一辺が直線エッジ(15)によって画定された第1の平坦な薄型金属構造要素(10)と、第1の金属構造要素(10)の直線エッジ、又は、この直線エッジ(15)に連結された中間要素(25)に溶接された第2の金属構造要素(20)と、を有する機械的溶接構造物に関する。中間要素は第1の金属構造要素(10)と第2の金属構造要素(20)の間に挿入され、第2の金属要素(20)は、直線エッジ(15)の少なくとも1点(151)に、直線エッジ(15)に対して垂直に前記平面内で延びる少なくとも一つの成分に分解する力を印加する。本発明によれば、第1の構造要素(10)は、直線エッジ(15)に対して平行に延在し、前記力が印加される点に対向して位置している応力緩和スリット(12)を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に金属建造物産業に関する。
【0002】
より詳細には、第1の態様によれば、本発明は、平面内に延在し一辺が直線エッジで画定された第1の平坦な薄型構造要素と、第1の金属構造要素の直線エッジ、又は、この直線エッジに連結された中間要素に溶接された第2の金属構造要素と、を有し、中間要素は第1の金属構造要素と第2の金属構造要素の間に挿入され、第2の金属要素は、直線エッジの少なくとも1点に、直線エッジに対して垂直に前記平面内で延びる少なくとも一つの成分に分解する力を印加する、機械的溶接構造物に関する。
【背景技術】
【0003】
このタイプの構造物は従来技術として公知であり、各種の金属建造物に使用されている。
【0004】
これらは、特に、メタンガスタンカーとして知られている液化ガス運搬船の建造物として使用される。
【0005】
メタンガスタンカーは多数のセルに分割され、各セルは液化ガス用のタンクを格納する。各タンクは、セルの壁に溶接されたアンカーバーに取り付けられた、ガスのコンテナ用の1次膜及び2次膜を備えている。1次断熱設備は2次バリアから1次バリアを隔離し、2次断熱設備はセルの壁から2次バリアを隔離する。リブの形式の補強材が壁の外面に溶接される。
【0006】
補強材、アンカーバー及びセルの壁は、上述のタイプの機械的溶接構造物の構成要素であり、それぞれ、第1の構造要素、第2の構造要素及び中間要素に対応する。
【0007】
上記の船は、セルの壁上のあるアンカーバーの溶接シームが広範囲に亘る疲労応力による影響を受けるという欠点がある。
【0008】
実際上、これらの溶接シームは、膜によってアンカーバーに加えられた応力から生じる永続的な負荷の影響を受ける。これらの膜は、タンクが液化ガスで充填されたとき、非常に低温にさらされ、収縮し、アンカーバーをセルの内側へ向かって引っ張る。
【0009】
更に、船は、膨張によって生じる交互の伸長と縦方向圧縮のサイクルにさらされる。これらの伸長と圧縮によって発生したこの循環的な応力は、溶接シームに永続的な負荷を加える。
【0010】
アンカーバーが特に堅い壁の場所に置かれたときには、船の数年の運用後に、ある溶接シームに疲労破壊が発生する可能性がある。この状況は、特に、アンカーバーが補強材の付近に置かれたとき、とりわけ、アンカーバー及び補強材が、壁の両側に互いに対向して配置され、図1に示されるように交差するときに起こる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況において、本発明は、上記の欠点を取り除くことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明の構造物は、或いは、冒頭に記載した一般的な定義による構造物は、原則的に、第1の構造要素が、直線エッジに対して平行に延在し、前記力が印加される点に対向して位置している応力緩和スリットを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の考えられる一実施の形態によれば、応力緩和スリットが直線エッジの直ぐ近傍に設けられる。
【0014】
有利には、圧力緩和スリットは静止時に2cm未満の幅である。
【0015】
好ましくは、第1の構造要素は、直線エッジに対して平行な方向に伸長する形状を有し、第1の構造要素は、前記方向に対し垂直方向に、力が印加される点のレベルで第1の寸法を有し、応力緩和スリットは前記方向に沿って前記第1の寸法よりも大きい長さを有する。
【0016】
例えば、応力緩和スリットは、両端において、第1の構造要素に穿孔された丸穴へ通じ、これらの丸穴は少なくとも応力緩和スリットの幅の3倍の径を有する。
【0017】
有利には、第1の構造要素はバッキングプレートによって丸穴の周りで補強される。
【0018】
第2の態様によれば、本発明は、船体と、船体に連結された隔壁によって画定されたセルと、セル内に設置された液化ガス貯蔵タンクと、を有し、セルの少なくとも一つの隔壁が上述のタイプの機械的溶接構造体であり、隔壁が、中間要素を構成する壁と、貯蔵タンクとは反対側の壁の外面に溶接され第1の構造要素を構成する少なくとも一つの補強材と、外面とは反対側の壁の内面に溶接され第2の構造要素を構成する補強ガセット又はアンカー要素のような部品と、を有する、液化ガス運搬船に関する。
【0019】
有利には、第2の構造要素はアンカー要素であり、貯蔵タンクはこのアンカー要素に取り付けられた液化ガス封じ込め膜を有し、補強材に印加される力は封じ込め膜によってアンカー要素へ加えられた応力によって発生される。
【0020】
好ましくは、アンカー要素は、補強材に対して垂直な平面内に延在するアンカーバーである。
【0021】
例えば、壁は船の標準的な進行方向に対して垂直な平面内に延在し、補強材は壁に対して垂直な平面内に延在する。
【0022】
本発明のその他の特徴及び効果は、添付図面を参照して、例示的かつ非限定的な形で、以下に記載された説明から明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に示された機械的溶接構造物は、平面P内に延在する第1の平坦な薄型金属構造要素10を有し、この要素は直線エッジ15によって一辺が画定される。機械的溶接構造物は、この直線エッジ15と連結された中間要素25に溶接された第2の金属構造要素20を有する。
【0024】
中間要素25は第1の構造要素10と第2の構造要素20の間に挿入され、第2の構造要素20は、直線エッジ15の少なくとも一つの点151に、直線エッジ15に対して垂直に平面P内で延びる少なくとも一つの成分に分解する力Fを印加する。
【0025】
図1において、中間要素25は平坦な金属プレートであり、第1の構造要素10はプレート25の第1の面251に溶接されたリブであり、第2の構造要素20は第1の面とは反対側のプレートの第2の面252に溶接された別のリブである。
【0026】
第2の構造要素20は、プレート25に溶接された直線取り付けエッジ21を有する。
【0027】
第1の構造要素10及び第2の構造要素20は、壁25の両側に、互いに対向して配置され、直交する。
【0028】
力Fが印加される点151は、第1の構造要素10と第2の構造要素20の交点に対応する。
【0029】
第1の構造要素10が延在する平面Pは、原則的にプレート25に対して垂直である。同様に、第2の構造要素20は、プレート25に対して垂直な平面内に延在する。
【0030】
本発明によれば、第1の構造要素10は直線エッジ15に対して平行に延在する応力緩和スリット12を有し、応力緩和スリットは力Fが印加される点151に対向した場所にある。
【0031】
図2A及び2Bと図3A及び3Bを比較することによって、この応力緩和スリットの効果が実際に分かる。
【0032】
図2Aは、応力緩和スリットが無い場合における典型的な負荷状況の機械的溶接構造物の応力レベルを表している。この構造物は、等応力線によってゾーンに分割され、応力レベルを表す符号が各ゾーンに割り当てられている。符号は、a、b、c、d、e、f又はgの値を取り、その順番に増加する応力レベルを符号化する。
【0033】
図2A及び2Bから分かるように、第1の構造体10と第2の構造体20の間の交点151の周囲に位置するゾーンには符号gが割り当てられる。
【0034】
第2の構造要素20の溶接シーム上の応力は、図2Bに示されるように、点151から遠ざかるにつれて、ほぼ同心円状に、gからaまで徐々に減少する。
【0035】
図3A及び3Bは、応力緩和スリット12が存在する場合に、同じ負荷状況下での応力レベルを表している。これらのレベルは図2A及び2Bと同じ方法で符号化されている。
【0036】
図3Aに示されるように、応力緩和スリット12は力Fの効果によって開く。このスリットは、直線エッジ15と平行であり、この直線エッジ15に近い方の近接縦方向エッジ122、及び、この直線エッジ15から遠い方の遠方縦方向エッジ123によって画定される。遠方エッジ123は本質的に直線のままである。これに対し、近接エッジ122は変形の際に遠方エッジ123から離れる。
【0037】
図1から分かるように、応力緩和スリット12は交点151がスリット12の中心点に対向して位置するように配置される。この中心点はスリットの二つの反対側の縦方向端部121の中間に位置する。
【0038】
図3Aから分かるように、近接エッジ122は、応力緩和スリット12の中心で直線エッジ15の方向に遠方エッジ123から大きく離れ、スリットの二つの縦方向端部121では、実際には遠方エッジ123から離れない。
【0039】
交点151のゾーンにおける応力は著しく低減され、このゾーンはcとして符号化されたストレスレベルしか割り当てられない。
【0040】
上述の通り、第2の構造要素20の溶接シーム上の応力は、図3Bに示されるように、点151から遠ざかるにつれて、ほぼ同心円状に、cからaまで徐々に減少する。
【0041】
応力緩和スリット12は、この溶接シームの場所における応力を著しく低減する効果を奏する。
【0042】
応力緩和スリット12は、好ましくは、直線エッジ15の直ぐ近傍に配置される。その位置の正確な選定は、構造物の様々な要素の幾何学的特性、及び、材料に応じてこの分野の専門家によって行われる。
【0043】
この選定は二つの矛盾した要件に依存する。
【0044】
一方で、スリットは、近接エッジ122が変形し易くなるように、直線エッジ15に十分に接近させることが必要である。他方で、スリットは、スリットが第1の構造要素10に開けられるときにプレート25上の第1の構造要素10の溶接シームが損傷を受けないように、接近させ過ぎないことが必要である。
【0045】
必要に応じて、スリットは、図8A及び8Cに示されるように、プレート25に沿って製作してもよい。この場合、スリットは第1の構造要素10の直線エッジ15に開けられ、その遠方エッジ123は第1の構造要素10に属し、その近接エッジ122はプレート25に属する。この構成により、近接エッジ122の最大限の変形が可能になる。
【0046】
後者の場合、応力緩和スリット12は、第1の構造要素10をプレート25に溶接した後に現場で開けることが不可能である。これに対して、スリットは、工場で直線エッジ15に開けられ、次に、第1の構造要素がプレート25に取り付けられる。
【0047】
更に、応力緩和スリット12は、静止時、即ち、力Fが存在しない場合、横方向に2cm未満の幅を有する。
【0048】
この幅は、原則的に、スリットを製作するために使用されるツールによって決まる。スリットの幅は、第1の構造要素10の慣性を変化させることがないように、大きくなり過ぎないようにしなければならない。
【0049】
スリットが原則的に張力によって機能する場合、即ち、力Fが近接エッジ122を遠方エッジ123から引き離す傾向がある場合、このスリットの幅は好ましくは約1mmである。
【0050】
スリットが張力と圧縮によって機能する場合、即ち、力Fが状況に応じて近接エッジ122を遠方エッジ123から引き離すか、又は、近接エッジと遠方エッジを接近させる傾向がある場合、スリットの幅は5から20mmである。このようなスリットは図8Aに示されている。
【0051】
図1に示されるように、第1の構造要素10は、直線エッジ15に対し垂直方向に、交点151の場所で第1の寸法を有し、圧力緩和スリットは、上記第1の寸法よりも長い縦方向の長さを有する。
【0052】
この特性によって、近接エッジ122に十分な柔軟性を与えることが可能になる。
【0053】
応力緩和スリット12は、その両側の端部121で、第1の構造要素10に穿孔された丸穴13に通じる。これらの穴13は、好ましくは、応力緩和スリット12の幅の少なくとも3倍の大きさの径を有する。
【0054】
スリット幅が5mmである場合、穴13の径は30mmである。
【0055】
これらの穴の中心は応力緩和スリット12と一直線に配置される。
【0056】
応力緩和スリットがプレート25に接触して配置された場合、丸穴13は直線エッジ15とは逆の方向へ中心が外れる。
【0057】
この場合、丸穴は、遠方エッジ123から始まり、約240°の範囲に広がり、プレート25まで直線的なエッジにより延ばされた、円弧の形状のエッジによって画定される。この直線的なエッジはプレート25に対し垂直である。穴13は、したがって、図8A及び8Cに示されるように、プレートの片側に開けられる。
【0058】
これらの穴は、応力緩和スリット12の端部121に加えられた応力を低減させることができる。これらの穴が無い場合、この応力は非常に大きくなり、長期的にはこれらの端部が裂ける可能性が高くなる。
【0059】
しかし、スリット12の近接エッジ122と遠方エッジ123が引き離されているときには、穴13の周囲の応力は高い。このゾーンの強度を高めるため、第1の構造要素10は、図4及び5に示されたバッキングプレート14によって丸穴13の周囲で補強される。
【0060】
これらのプレートの各々は、第1の構造要素10に溶接されたスチールリングの形をなす。各リングは、30mm径の穴13に対して約70mmの径を有し、穴13と同じ径の中心開口を有し、穴と位置を合わされる。
【0061】
このタイプの機械的溶接構造物は、当然のことながら、メタンガスタンカータイプの液化ガス運搬船に適用することができる。
【0062】
このような船は、図7に示され、船の標準的な進行方向に沿って細長い船体30と、船体30に連結された隔壁50によって画定されたセル40と、セル40内に配置された液化ガス貯蔵タンク60と、を有する。
【0063】
セル40の二つの隔壁は、上述のタイプの機械的溶接構造物である。
【0064】
これらの隔壁50の各々は、中間要素25の構成要素である壁51と、貯蔵タンク60とは反対側にある壁の外面511に溶接された、第1の構造要素10の構成要素である少なくとも一つの補強材52と、外面511とは反対側にある壁51の内面512に溶接された、第2の構造要素20の構成要素である補強ガセット又はアンカー要素のような少なくとも一つの部品と、を有する。
【0065】
図7に示された実施の形態において、各壁51は、アンカー要素を構成する二つの第2の構成要素20を有し、貯蔵タンク60は、これらのアンカー要素に取り付けられた二つの液化ガス封じ込め膜61を有し、補強材52は、封じ込め膜61によってアンカー要素へ加えられた応力によって発生された力の影響を受ける。
【0066】
これらのアンカー要素は、補強材52に対して垂直な平面内に延在するアンカーバー62である。
【0067】
壁51は、船の標準的な進行方向に対して垂直な平面内に延在し、補強材52は壁51に対して垂直な平面内に延在する。
【0068】
図1の要素の配置が全くそのままここに再現されている。
【0069】
補強材52は、アンカーバー62に対向して配置された二つの応力緩和スリット12を有する。
【0070】
その他の船の構造物が上述の機械的溶接構造物の特性を備えることが可能である。
【0071】
第1実施例は図4に示され、この例は横隔壁50tと縦隔壁50lの間のコーナーに対応し、これらの隔壁は図7に関して説明した隔壁50と同じタイプのものである。
【0072】
横隔壁50tは、横壁51tと、横壁51tの外面に溶接された横補強材52tと、を有する。
【0073】
同様に、縦隔壁50lは、縦壁51lと、縦壁51lの外面に溶接された縦補強材52lと、を有する。
【0074】
横壁51tは船の標準的な進行方向に対して垂直な平面内に延在する。縦壁51lは船の標準的な進行方向に対して平行な平面内に延在する。横壁及び縦壁のそれぞれの内面512は直角をなし、エッジを共有する。
【0075】
縦補強材52l及び横補強材52tは、横壁51tと縦壁51lの両方に垂直な同一平面内に延在する。
【0076】
アンカーブラケット54が二つの内面512によって形成されたコーナーに溶接される。このブラケットは、タンク60の封じ込め膜61をセル40のコーナーに取り付けるため使用される。
【0077】
このブラケットはL字形であり、横壁51tに対して平行に延びる第1の突出部分541と、縦壁51lに対して平行に延びる第2の突出部分542とを有する。これらの突出部分は連結され、互いに垂直である。
【0078】
ブラケットは、二つの突出部分の接合点に、縦壁51lと横壁51tの共有エッジへ向いている屈曲部分を有する。
【0079】
第1の突出部分541及び第2の突出部分542の各々は、それぞれ、横壁51t及び縦壁51lの内面に溶接された二つのアンカー点543によって取り付けられる。
【0080】
第1の突出部分541のアンカー点543は横壁51tに溶接された横補強材52tのエッジに沿って配置される。
【0081】
同様に、第2の突出部分542のアンカー点543は縦壁51lに溶接された縦補強材52lのエッジに沿って配置される。
【0082】
応力緩和スリット12は、第1の突出部分541のアンカー点543に対向して横補強材52t内に延在し、これらのアンカー点543の溶接部分への応力を制限することを可能にする。
【0083】
図4に示されるように、縦壁の最も近くにあるアンカー点543はスリット12の端部121に対向して配置され、縦壁から最も離れているアンカー点543はスリット12の中心に対向して配置される。
【0084】
第2実施例は図5に示されている。第2実施例は、図7に関して説明した隔壁50のタイプの隔壁に関係する。壁51の内面512に溶接された部品は、梁55を支持するガセット53である。梁55は、膜61、又は、たるみを取り除く必要があるその他の要素を取り付けるため使用できる。
【0085】
ガセット53は、一般的に、直角をなす支持エッジ531と取り付けエッジ532を含む三角形の形状を有する。支持エッジ531は梁55に溶接され、取り付けエッジ532は壁51の内面512に溶接される。
【0086】
取り付けエッジ532は壁51に溶接された補強材52のエッジに沿って延在する。応力緩和スリット12は、ガセット53の取り付けエッジ532に対向させて、補強材52に製作される。
【0087】
スリット12の中心は、梁55から遠い方の取り付けエッジ532の端部と対向させて配置される。
【0088】
図6に示された最後の実施例は、図7に関して説明した隔壁50のタイプの二つの隔壁の間のコーナーに対応する。この構造は図4の構造と非常に類似しているが、アンカーブラケット54が補強ガセット53によって置き換えられている点、及び、横補強材52tが縦壁51lに平行に延在し、図4におけるように縦壁51lに対して垂直ではない点だけで相違している。
【0089】
ガセット53は、横壁51tの内面512に溶接された第1のエッジと、縦壁51lの内面512に溶接された第2のエッジと、を有する。
【0090】
第1のエッジは横補強材52tと交差する。応力緩和スリット12は、この横補強材に製作され、第1のエッジがこのスリット12とスリットの中心で交差するように配置される。
【0091】
したがって、実際上、上述のタイプの機械的溶接構造物は、特に、液化ガス運搬船に好適であることが分かるが、様々な金属建造物にも使用することが可能である。
【0092】
上述の実施例は、原則として、船の標準的な進行方向に対して垂直である船の隔壁に関係しているが、異なる方向へ向けられた隔壁を構築するために本発明の機械的溶接構造物を使用することが妨げられるものではない。
【0093】
壁のような中間要素は、第1の構造要素と第2の構造要素の間に挿入することが可能であるが、第1及び第2の構造要素を互いに直接的に溶接してもよい。
【0094】
本発明の応力緩和スリットは、種々の構造要素における応力を低減させることを可能にするので、これらの構造要素の寸法に関する要求条件を軽減することを可能にする。
【0095】
この結果として、材料の節約と経済的節約を実現できる。
【0096】
溶接シーム上の応力が小さくなると、これらの溶接シームに関する法規制を容易にすることができる。
【0097】
最後に、本発明の構造物を構成する種々の要素は、典型的にカーボン・スチールから作られるが、本発明の範囲を逸脱することなく他の材料を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明による機械的溶接構造物の第1の実施の形態の斜視図である。
【図2A】応力緩和スリットが無い場合の典型的な負荷状況における図1の構造物の下方4分の一の応力レベルを表すグラフである。
【図2B】第2の構造要素における応力の拡大平面図である。
【図3A】圧力緩和スリットが設けられた構造物に対する図2Aと等価的な図である。
【図3B】第2の構造要素における応力の拡大平面図である。
【図4】本発明によるガス運搬船の機械的溶接構造物の第1実施例の斜視図である。
【図5】本発明によるガス運搬船の機械的溶接構造物の第2実施例の斜視図である。
【図6】本発明によるガス運搬船の機械的溶接構造物の第3実施例の斜視図である。
【図7】本発明による船の略構成図である。
【図8A】図1の矢印VIIIによって定められた平面による断面図である。
【図8B】図1の矢印VIIIによって定められた平面による断面図である。
【図8C】図1の矢印VIIIによって定められた平面による断面図である。
【符号の説明】
【0099】
10 薄型金属構造要素
12 応力緩和スリット
13 丸穴
14 バッキングプレート
15 直線エッジ
20 第2の金属構造要素
21 直線取り付けエッジ
25 中間要素
30 船体
40 セル
50 隔壁
50l 縦隔壁
50t 横隔壁
51 壁
51t 横壁
51l縦壁
52 補強材
52t 横補強材
53 補強ガセット
54、62 アンカー要素
55 梁
60 液化ガス貯蔵タンク
61 封じ込め膜
62 アンカーバー
121 縦方向端部
122 近接縦方向エッジ
123 遠方縦方向エッジ
151 点
251、252 面
511 外面
512 内面
531 支持エッジ
532 取り付けエッジ
543 アンカー点
541 第1の突出部分
542 第2の突出部分
P 平面
F 力
a、b、c、d、e、f、g 応力レベル
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に金属建造物産業に関する。
【0002】
より詳細には、第1の態様によれば、本発明は、平面内に延在し一辺が直線エッジで画定された第1の平坦な薄型構造要素と、第1の金属構造要素の直線エッジ、又は、この直線エッジに連結された中間要素に溶接された第2の金属構造要素と、を有し、中間要素は第1の金属構造要素と第2の金属構造要素の間に挿入され、第2の金属要素は、直線エッジの少なくとも1点に、直線エッジに対して垂直に前記平面内で延びる少なくとも一つの成分に分解する力を印加する、機械的溶接構造物に関する。
【背景技術】
【0003】
このタイプの構造物は従来技術として公知であり、各種の金属建造物に使用されている。
【0004】
これらは、特に、メタンガスタンカーとして知られている液化ガス運搬船の建造物として使用される。
【0005】
メタンガスタンカーは多数のセルに分割され、各セルは液化ガス用のタンクを格納する。各タンクは、セルの壁に溶接されたアンカーバーに取り付けられた、ガスのコンテナ用の1次膜及び2次膜を備えている。1次断熱設備は2次バリアから1次バリアを隔離し、2次断熱設備はセルの壁から2次バリアを隔離する。リブの形式の補強材が壁の外面に溶接される。
【0006】
補強材、アンカーバー及びセルの壁は、上述のタイプの機械的溶接構造物の構成要素であり、それぞれ、第1の構造要素、第2の構造要素及び中間要素に対応する。
【0007】
上記の船は、セルの壁上のあるアンカーバーの溶接シームが広範囲に亘る疲労応力による影響を受けるという欠点がある。
【0008】
実際上、これらの溶接シームは、膜によってアンカーバーに加えられた応力から生じる永続的な負荷の影響を受ける。これらの膜は、タンクが液化ガスで充填されたとき、非常に低温にさらされ、収縮し、アンカーバーをセルの内側へ向かって引っ張る。
【0009】
更に、船は、膨張によって生じる交互の伸長と縦方向圧縮のサイクルにさらされる。これらの伸長と圧縮によって発生したこの循環的な応力は、溶接シームに永続的な負荷を加える。
【0010】
アンカーバーが特に堅い壁の場所に置かれたときには、船の数年の運用後に、ある溶接シームに疲労破壊が発生する可能性がある。この状況は、特に、アンカーバーが補強材の付近に置かれたとき、とりわけ、アンカーバー及び補強材が、壁の両側に互いに対向して配置され、図1に示されるように交差するときに起こる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況において、本発明は、上記の欠点を取り除くことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明の構造物は、或いは、冒頭に記載した一般的な定義による構造物は、原則的に、第1の構造要素が、直線エッジに対して平行に延在し、前記力が印加される点に対向して位置している応力緩和スリットを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の考えられる一実施の形態によれば、応力緩和スリットが直線エッジの直ぐ近傍に設けられる。
【0014】
有利には、圧力緩和スリットは静止時に2cm未満の幅である。
【0015】
好ましくは、第1の構造要素は、直線エッジに対して平行な方向に伸長する形状を有し、第1の構造要素は、前記方向に対し垂直方向に、力が印加される点のレベルで第1の寸法を有し、応力緩和スリットは前記方向に沿って前記第1の寸法よりも大きい長さを有する。
【0016】
例えば、応力緩和スリットは、両端において、第1の構造要素に穿孔された丸穴へ通じ、これらの丸穴は少なくとも応力緩和スリットの幅の3倍の径を有する。
【0017】
有利には、第1の構造要素はバッキングプレートによって丸穴の周りで補強される。
【0018】
第2の態様によれば、本発明は、船体と、船体に連結された隔壁によって画定されたセルと、セル内に設置された液化ガス貯蔵タンクと、を有し、セルの少なくとも一つの隔壁が上述のタイプの機械的溶接構造体であり、隔壁が、中間要素を構成する壁と、貯蔵タンクとは反対側の壁の外面に溶接され第1の構造要素を構成する少なくとも一つの補強材と、外面とは反対側の壁の内面に溶接され第2の構造要素を構成する補強ガセット又はアンカー要素のような部品と、を有する、液化ガス運搬船に関する。
【0019】
有利には、第2の構造要素はアンカー要素であり、貯蔵タンクはこのアンカー要素に取り付けられた液化ガス封じ込め膜を有し、補強材に印加される力は封じ込め膜によってアンカー要素へ加えられた応力によって発生される。
【0020】
好ましくは、アンカー要素は、補強材に対して垂直な平面内に延在するアンカーバーである。
【0021】
例えば、壁は船の標準的な進行方向に対して垂直な平面内に延在し、補強材は壁に対して垂直な平面内に延在する。
【0022】
本発明のその他の特徴及び効果は、添付図面を参照して、例示的かつ非限定的な形で、以下に記載された説明から明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に示された機械的溶接構造物は、平面P内に延在する第1の平坦な薄型金属構造要素10を有し、この要素は直線エッジ15によって一辺が画定される。機械的溶接構造物は、この直線エッジ15と連結された中間要素25に溶接された第2の金属構造要素20を有する。
【0024】
中間要素25は第1の構造要素10と第2の構造要素20の間に挿入され、第2の構造要素20は、直線エッジ15の少なくとも一つの点151に、直線エッジ15に対して垂直に平面P内で延びる少なくとも一つの成分に分解する力Fを印加する。
【0025】
図1において、中間要素25は平坦な金属プレートであり、第1の構造要素10はプレート25の第1の面251に溶接されたリブであり、第2の構造要素20は第1の面とは反対側のプレートの第2の面252に溶接された別のリブである。
【0026】
第2の構造要素20は、プレート25に溶接された直線取り付けエッジ21を有する。
【0027】
第1の構造要素10及び第2の構造要素20は、壁25の両側に、互いに対向して配置され、直交する。
【0028】
力Fが印加される点151は、第1の構造要素10と第2の構造要素20の交点に対応する。
【0029】
第1の構造要素10が延在する平面Pは、原則的にプレート25に対して垂直である。同様に、第2の構造要素20は、プレート25に対して垂直な平面内に延在する。
【0030】
本発明によれば、第1の構造要素10は直線エッジ15に対して平行に延在する応力緩和スリット12を有し、応力緩和スリットは力Fが印加される点151に対向した場所にある。
【0031】
図2A及び2Bと図3A及び3Bを比較することによって、この応力緩和スリットの効果が実際に分かる。
【0032】
図2Aは、応力緩和スリットが無い場合における典型的な負荷状況の機械的溶接構造物の応力レベルを表している。この構造物は、等応力線によってゾーンに分割され、応力レベルを表す符号が各ゾーンに割り当てられている。符号は、a、b、c、d、e、f又はgの値を取り、その順番に増加する応力レベルを符号化する。
【0033】
図2A及び2Bから分かるように、第1の構造体10と第2の構造体20の間の交点151の周囲に位置するゾーンには符号gが割り当てられる。
【0034】
第2の構造要素20の溶接シーム上の応力は、図2Bに示されるように、点151から遠ざかるにつれて、ほぼ同心円状に、gからaまで徐々に減少する。
【0035】
図3A及び3Bは、応力緩和スリット12が存在する場合に、同じ負荷状況下での応力レベルを表している。これらのレベルは図2A及び2Bと同じ方法で符号化されている。
【0036】
図3Aに示されるように、応力緩和スリット12は力Fの効果によって開く。このスリットは、直線エッジ15と平行であり、この直線エッジ15に近い方の近接縦方向エッジ122、及び、この直線エッジ15から遠い方の遠方縦方向エッジ123によって画定される。遠方エッジ123は本質的に直線のままである。これに対し、近接エッジ122は変形の際に遠方エッジ123から離れる。
【0037】
図1から分かるように、応力緩和スリット12は交点151がスリット12の中心点に対向して位置するように配置される。この中心点はスリットの二つの反対側の縦方向端部121の中間に位置する。
【0038】
図3Aから分かるように、近接エッジ122は、応力緩和スリット12の中心で直線エッジ15の方向に遠方エッジ123から大きく離れ、スリットの二つの縦方向端部121では、実際には遠方エッジ123から離れない。
【0039】
交点151のゾーンにおける応力は著しく低減され、このゾーンはcとして符号化されたストレスレベルしか割り当てられない。
【0040】
上述の通り、第2の構造要素20の溶接シーム上の応力は、図3Bに示されるように、点151から遠ざかるにつれて、ほぼ同心円状に、cからaまで徐々に減少する。
【0041】
応力緩和スリット12は、この溶接シームの場所における応力を著しく低減する効果を奏する。
【0042】
応力緩和スリット12は、好ましくは、直線エッジ15の直ぐ近傍に配置される。その位置の正確な選定は、構造物の様々な要素の幾何学的特性、及び、材料に応じてこの分野の専門家によって行われる。
【0043】
この選定は二つの矛盾した要件に依存する。
【0044】
一方で、スリットは、近接エッジ122が変形し易くなるように、直線エッジ15に十分に接近させることが必要である。他方で、スリットは、スリットが第1の構造要素10に開けられるときにプレート25上の第1の構造要素10の溶接シームが損傷を受けないように、接近させ過ぎないことが必要である。
【0045】
必要に応じて、スリットは、図8A及び8Cに示されるように、プレート25に沿って製作してもよい。この場合、スリットは第1の構造要素10の直線エッジ15に開けられ、その遠方エッジ123は第1の構造要素10に属し、その近接エッジ122はプレート25に属する。この構成により、近接エッジ122の最大限の変形が可能になる。
【0046】
後者の場合、応力緩和スリット12は、第1の構造要素10をプレート25に溶接した後に現場で開けることが不可能である。これに対して、スリットは、工場で直線エッジ15に開けられ、次に、第1の構造要素がプレート25に取り付けられる。
【0047】
更に、応力緩和スリット12は、静止時、即ち、力Fが存在しない場合、横方向に2cm未満の幅を有する。
【0048】
この幅は、原則的に、スリットを製作するために使用されるツールによって決まる。スリットの幅は、第1の構造要素10の慣性を変化させることがないように、大きくなり過ぎないようにしなければならない。
【0049】
スリットが原則的に張力によって機能する場合、即ち、力Fが近接エッジ122を遠方エッジ123から引き離す傾向がある場合、このスリットの幅は好ましくは約1mmである。
【0050】
スリットが張力と圧縮によって機能する場合、即ち、力Fが状況に応じて近接エッジ122を遠方エッジ123から引き離すか、又は、近接エッジと遠方エッジを接近させる傾向がある場合、スリットの幅は5から20mmである。このようなスリットは図8Aに示されている。
【0051】
図1に示されるように、第1の構造要素10は、直線エッジ15に対し垂直方向に、交点151の場所で第1の寸法を有し、圧力緩和スリットは、上記第1の寸法よりも長い縦方向の長さを有する。
【0052】
この特性によって、近接エッジ122に十分な柔軟性を与えることが可能になる。
【0053】
応力緩和スリット12は、その両側の端部121で、第1の構造要素10に穿孔された丸穴13に通じる。これらの穴13は、好ましくは、応力緩和スリット12の幅の少なくとも3倍の大きさの径を有する。
【0054】
スリット幅が5mmである場合、穴13の径は30mmである。
【0055】
これらの穴の中心は応力緩和スリット12と一直線に配置される。
【0056】
応力緩和スリットがプレート25に接触して配置された場合、丸穴13は直線エッジ15とは逆の方向へ中心が外れる。
【0057】
この場合、丸穴は、遠方エッジ123から始まり、約240°の範囲に広がり、プレート25まで直線的なエッジにより延ばされた、円弧の形状のエッジによって画定される。この直線的なエッジはプレート25に対し垂直である。穴13は、したがって、図8A及び8Cに示されるように、プレートの片側に開けられる。
【0058】
これらの穴は、応力緩和スリット12の端部121に加えられた応力を低減させることができる。これらの穴が無い場合、この応力は非常に大きくなり、長期的にはこれらの端部が裂ける可能性が高くなる。
【0059】
しかし、スリット12の近接エッジ122と遠方エッジ123が引き離されているときには、穴13の周囲の応力は高い。このゾーンの強度を高めるため、第1の構造要素10は、図4及び5に示されたバッキングプレート14によって丸穴13の周囲で補強される。
【0060】
これらのプレートの各々は、第1の構造要素10に溶接されたスチールリングの形をなす。各リングは、30mm径の穴13に対して約70mmの径を有し、穴13と同じ径の中心開口を有し、穴と位置を合わされる。
【0061】
このタイプの機械的溶接構造物は、当然のことながら、メタンガスタンカータイプの液化ガス運搬船に適用することができる。
【0062】
このような船は、図7に示され、船の標準的な進行方向に沿って細長い船体30と、船体30に連結された隔壁50によって画定されたセル40と、セル40内に配置された液化ガス貯蔵タンク60と、を有する。
【0063】
セル40の二つの隔壁は、上述のタイプの機械的溶接構造物である。
【0064】
これらの隔壁50の各々は、中間要素25の構成要素である壁51と、貯蔵タンク60とは反対側にある壁の外面511に溶接された、第1の構造要素10の構成要素である少なくとも一つの補強材52と、外面511とは反対側にある壁51の内面512に溶接された、第2の構造要素20の構成要素である補強ガセット又はアンカー要素のような少なくとも一つの部品と、を有する。
【0065】
図7に示された実施の形態において、各壁51は、アンカー要素を構成する二つの第2の構成要素20を有し、貯蔵タンク60は、これらのアンカー要素に取り付けられた二つの液化ガス封じ込め膜61を有し、補強材52は、封じ込め膜61によってアンカー要素へ加えられた応力によって発生された力の影響を受ける。
【0066】
これらのアンカー要素は、補強材52に対して垂直な平面内に延在するアンカーバー62である。
【0067】
壁51は、船の標準的な進行方向に対して垂直な平面内に延在し、補強材52は壁51に対して垂直な平面内に延在する。
【0068】
図1の要素の配置が全くそのままここに再現されている。
【0069】
補強材52は、アンカーバー62に対向して配置された二つの応力緩和スリット12を有する。
【0070】
その他の船の構造物が上述の機械的溶接構造物の特性を備えることが可能である。
【0071】
第1実施例は図4に示され、この例は横隔壁50tと縦隔壁50lの間のコーナーに対応し、これらの隔壁は図7に関して説明した隔壁50と同じタイプのものである。
【0072】
横隔壁50tは、横壁51tと、横壁51tの外面に溶接された横補強材52tと、を有する。
【0073】
同様に、縦隔壁50lは、縦壁51lと、縦壁51lの外面に溶接された縦補強材52lと、を有する。
【0074】
横壁51tは船の標準的な進行方向に対して垂直な平面内に延在する。縦壁51lは船の標準的な進行方向に対して平行な平面内に延在する。横壁及び縦壁のそれぞれの内面512は直角をなし、エッジを共有する。
【0075】
縦補強材52l及び横補強材52tは、横壁51tと縦壁51lの両方に垂直な同一平面内に延在する。
【0076】
アンカーブラケット54が二つの内面512によって形成されたコーナーに溶接される。このブラケットは、タンク60の封じ込め膜61をセル40のコーナーに取り付けるため使用される。
【0077】
このブラケットはL字形であり、横壁51tに対して平行に延びる第1の突出部分541と、縦壁51lに対して平行に延びる第2の突出部分542とを有する。これらの突出部分は連結され、互いに垂直である。
【0078】
ブラケットは、二つの突出部分の接合点に、縦壁51lと横壁51tの共有エッジへ向いている屈曲部分を有する。
【0079】
第1の突出部分541及び第2の突出部分542の各々は、それぞれ、横壁51t及び縦壁51lの内面に溶接された二つのアンカー点543によって取り付けられる。
【0080】
第1の突出部分541のアンカー点543は横壁51tに溶接された横補強材52tのエッジに沿って配置される。
【0081】
同様に、第2の突出部分542のアンカー点543は縦壁51lに溶接された縦補強材52lのエッジに沿って配置される。
【0082】
応力緩和スリット12は、第1の突出部分541のアンカー点543に対向して横補強材52t内に延在し、これらのアンカー点543の溶接部分への応力を制限することを可能にする。
【0083】
図4に示されるように、縦壁の最も近くにあるアンカー点543はスリット12の端部121に対向して配置され、縦壁から最も離れているアンカー点543はスリット12の中心に対向して配置される。
【0084】
第2実施例は図5に示されている。第2実施例は、図7に関して説明した隔壁50のタイプの隔壁に関係する。壁51の内面512に溶接された部品は、梁55を支持するガセット53である。梁55は、膜61、又は、たるみを取り除く必要があるその他の要素を取り付けるため使用できる。
【0085】
ガセット53は、一般的に、直角をなす支持エッジ531と取り付けエッジ532を含む三角形の形状を有する。支持エッジ531は梁55に溶接され、取り付けエッジ532は壁51の内面512に溶接される。
【0086】
取り付けエッジ532は壁51に溶接された補強材52のエッジに沿って延在する。応力緩和スリット12は、ガセット53の取り付けエッジ532に対向させて、補強材52に製作される。
【0087】
スリット12の中心は、梁55から遠い方の取り付けエッジ532の端部と対向させて配置される。
【0088】
図6に示された最後の実施例は、図7に関して説明した隔壁50のタイプの二つの隔壁の間のコーナーに対応する。この構造は図4の構造と非常に類似しているが、アンカーブラケット54が補強ガセット53によって置き換えられている点、及び、横補強材52tが縦壁51lに平行に延在し、図4におけるように縦壁51lに対して垂直ではない点だけで相違している。
【0089】
ガセット53は、横壁51tの内面512に溶接された第1のエッジと、縦壁51lの内面512に溶接された第2のエッジと、を有する。
【0090】
第1のエッジは横補強材52tと交差する。応力緩和スリット12は、この横補強材に製作され、第1のエッジがこのスリット12とスリットの中心で交差するように配置される。
【0091】
したがって、実際上、上述のタイプの機械的溶接構造物は、特に、液化ガス運搬船に好適であることが分かるが、様々な金属建造物にも使用することが可能である。
【0092】
上述の実施例は、原則として、船の標準的な進行方向に対して垂直である船の隔壁に関係しているが、異なる方向へ向けられた隔壁を構築するために本発明の機械的溶接構造物を使用することが妨げられるものではない。
【0093】
壁のような中間要素は、第1の構造要素と第2の構造要素の間に挿入することが可能であるが、第1及び第2の構造要素を互いに直接的に溶接してもよい。
【0094】
本発明の応力緩和スリットは、種々の構造要素における応力を低減させることを可能にするので、これらの構造要素の寸法に関する要求条件を軽減することを可能にする。
【0095】
この結果として、材料の節約と経済的節約を実現できる。
【0096】
溶接シーム上の応力が小さくなると、これらの溶接シームに関する法規制を容易にすることができる。
【0097】
最後に、本発明の構造物を構成する種々の要素は、典型的にカーボン・スチールから作られるが、本発明の範囲を逸脱することなく他の材料を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明による機械的溶接構造物の第1の実施の形態の斜視図である。
【図2A】応力緩和スリットが無い場合の典型的な負荷状況における図1の構造物の下方4分の一の応力レベルを表すグラフである。
【図2B】第2の構造要素における応力の拡大平面図である。
【図3A】圧力緩和スリットが設けられた構造物に対する図2Aと等価的な図である。
【図3B】第2の構造要素における応力の拡大平面図である。
【図4】本発明によるガス運搬船の機械的溶接構造物の第1実施例の斜視図である。
【図5】本発明によるガス運搬船の機械的溶接構造物の第2実施例の斜視図である。
【図6】本発明によるガス運搬船の機械的溶接構造物の第3実施例の斜視図である。
【図7】本発明による船の略構成図である。
【図8A】図1の矢印VIIIによって定められた平面による断面図である。
【図8B】図1の矢印VIIIによって定められた平面による断面図である。
【図8C】図1の矢印VIIIによって定められた平面による断面図である。
【符号の説明】
【0099】
10 薄型金属構造要素
12 応力緩和スリット
13 丸穴
14 バッキングプレート
15 直線エッジ
20 第2の金属構造要素
21 直線取り付けエッジ
25 中間要素
30 船体
40 セル
50 隔壁
50l 縦隔壁
50t 横隔壁
51 壁
51t 横壁
51l縦壁
52 補強材
52t 横補強材
53 補強ガセット
54、62 アンカー要素
55 梁
60 液化ガス貯蔵タンク
61 封じ込め膜
62 アンカーバー
121 縦方向端部
122 近接縦方向エッジ
123 遠方縦方向エッジ
151 点
251、252 面
511 外面
512 内面
531 支持エッジ
532 取り付けエッジ
543 アンカー点
541 第1の突出部分
542 第2の突出部分
P 平面
F 力
a、b、c、d、e、f、g 応力レベル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面内に延在し一辺が直線エッジによって画定された第1の平坦な薄型金属構造要素と、
前記第1の金属構造要素の直線エッジ、又は、この直線エッジに連結された中間要素に溶接された第2の金属構造要素と、を有し、
前記中間要素は前記第1の金属構造要素と前記第2の金属構造要素の間に挿入され、
前記第2の金属要素は、前記直線エッジの少なくとも1点から、当該直線エッジに対して垂直、且つ前記平面方向に延びる方向に分解された力を印加する、機械的溶接構造物であって、
前記第1の構造要素は、前記直線エッジに対して平行に延在し、前記力が印加される点に対向して位置する応力緩和スリットを有することを特徴とする、機械的溶接構造物。
【請求項2】
船体と、
前記船体に連結された隔壁によって画定されたセルと、
前記セル内に設置された液化ガス貯蔵タンクと、
を有し、
前記セルの少なくとも一つの隔壁は請求項1に記載の機械的溶接構造体であり、
前記隔壁は、
中間要素を構成する壁と、
前記貯蔵タンクとは反対側にある前記壁の外面に溶接され、前記第1の構造要素を構成する少なくとも一つの補強材と、
前記外面とは反対側にある前記壁の内面に溶接され、前記第2の構造要素を構成する、補強ガセット又はアンカー要素のような部品と、を有する、
液化ガス運搬船。
【請求項3】
前記第2の構造要素はアンカー要素であり、
前記貯蔵タンクは前記アンカー要素に取り付けられた液化ガス封じ込め膜を有し、
前記補強材に印加される力は前記封じ込め膜によって前記アンカー要素へ加えられた応力によって発生される、ことを特徴とする、
請求項2に記載の液化ガス運搬船。
【請求項4】
前記アンカー要素は、前記補強材に対して垂直な平面内に延在するアンカーバーであることを特徴とする、請求項3に記載の液化ガス運搬船。
【請求項5】
前記壁は当該船の標準的な進行方向に対して垂直な平面内に延在し、
前記補強材は前記壁に対して垂直な平面内に延在する、ことを特徴とする、
請求項2から4のいずれか一項に記載の液化ガス運搬船。
【請求項1】
平面内に延在し一辺が直線エッジによって画定された第1の平坦な薄型金属構造要素と、
前記第1の金属構造要素の直線エッジ、又は、この直線エッジに連結された中間要素に溶接された第2の金属構造要素と、を有し、
前記中間要素は前記第1の金属構造要素と前記第2の金属構造要素の間に挿入され、
前記第2の金属要素は、前記直線エッジの少なくとも1点から、当該直線エッジに対して垂直、且つ前記平面方向に延びる方向に分解された力を印加する、機械的溶接構造物であって、
前記第1の構造要素は、前記直線エッジに対して平行に延在し、前記力が印加される点に対向して位置する応力緩和スリットを有することを特徴とする、機械的溶接構造物。
【請求項2】
船体と、
前記船体に連結された隔壁によって画定されたセルと、
前記セル内に設置された液化ガス貯蔵タンクと、
を有し、
前記セルの少なくとも一つの隔壁は請求項1に記載の機械的溶接構造体であり、
前記隔壁は、
中間要素を構成する壁と、
前記貯蔵タンクとは反対側にある前記壁の外面に溶接され、前記第1の構造要素を構成する少なくとも一つの補強材と、
前記外面とは反対側にある前記壁の内面に溶接され、前記第2の構造要素を構成する、補強ガセット又はアンカー要素のような部品と、を有する、
液化ガス運搬船。
【請求項3】
前記第2の構造要素はアンカー要素であり、
前記貯蔵タンクは前記アンカー要素に取り付けられた液化ガス封じ込め膜を有し、
前記補強材に印加される力は前記封じ込め膜によって前記アンカー要素へ加えられた応力によって発生される、ことを特徴とする、
請求項2に記載の液化ガス運搬船。
【請求項4】
前記アンカー要素は、前記補強材に対して垂直な平面内に延在するアンカーバーであることを特徴とする、請求項3に記載の液化ガス運搬船。
【請求項5】
前記壁は当該船の標準的な進行方向に対して垂直な平面内に延在し、
前記補強材は前記壁に対して垂直な平面内に延在する、ことを特徴とする、
請求項2から4のいずれか一項に記載の液化ガス運搬船。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公開番号】特開2009−28790(P2009−28790A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208669(P2008−208669)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【分割の表示】特願2003−390834(P2003−390834)の分割
【原出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(595133839)ガズトランスポール エ テクニガズ (24)
【氏名又は名称原語表記】GAZTRANSPORT ET TECHNIGAZ
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【分割の表示】特願2003−390834(P2003−390834)の分割
【原出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(595133839)ガズトランスポール エ テクニガズ (24)
【氏名又は名称原語表記】GAZTRANSPORT ET TECHNIGAZ
【Fターム(参考)】
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