説明

情報の収集方法

【課題】構成が頻繁に変化するような生産システムにおいても、管理システムやAPの変更を要することなく、生産管理に必要な詳細な情報を容易に収集可能とする。
【解決手段】生産ライン101内を流通する製品及び部品102には、その個体識別情報108を持つRFIDタグ119が添付され、作業実施者106は、実施者の識別情報111を持つRFIDタグ122を持ち、生産システムが設置されている場所103には、場所の識別情報107を持つRFIDタグ118が添付され、作業工程105には、作業工程の識別情報110を持つRFIDタグ121が添付され、作業設備104には、作業設備の識別情報109を持つRFIDタグ120が添付されている。生産管理端末112は、RFID読取装置114からの全識別情報と、内部の時計124からの時刻情報113を収集する。これらの情報は、生産管理端末112に設けられるAPにより、生産管理における追跡情報として生産管理情報に生成され、ネットワーク115を介して、上位の生産管理システム123に送られ、生産管理情報データベース116に蓄積される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報の収集方法に係り、特に、物体に対して様々な処理作業を施すことによって製品を生産する生産システムで、個々の製品の生産過程での状態、作業進捗、作業履歴等の生産管理を行うための情報を収集する情報の収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産管理システムにおいて、生産過程の物体の情報を収集するためには、生産システム上で、個々の製品または製品を構成する部品の個体識別情報及び生産過程に関する情報として、個々の作業工程の識別情報、作業を実施した個々の作業設備の識別情報、個々の作業実施者の識別情報及び場所の識別情報を取得する必要がある。
【0003】
生産システムにおいて、製品または部品の個体識別情報は、製品または部品に添付された荷札に記載された情報を参照するか、あるいは、同様に添付された荷札に記載されたバーコードを専用の機器で読み取ることにより取得するのが一般的となっている。
【0004】
また、作業工程、作業設備及び場所の識別情報は、作業設備と同様に生産システム内に設置された生産管理端末において、生産管理を行うためのアプリケーション(AP)ソフトウェアにプログラム上の設定として保持し、識別情報が必要となる際にこれらを参照するのが一般的である。
【0005】
また、作業実施者の識別情報は、作業実施時に逐一生産管理端末に入力するか、あるいは、製品または部品の識別情報と同様、各作業実施者が持つ名札に記載されているバーコードを読み取ることにより取得するのが一般的である。
【0006】
一方、近年様々な分野での応用が進められている技術として、無線周波数による非接触自動識別技術であるRFID(Radio Frequency Identification)を使用する技術が知られている。RFIDタグは、電子タグ、ICタグ等とも呼称されるものであり、電子的に個体識別情報等の情報が蓄えており、その情報を非接触で読み取ることが可能なタグである。
【0007】
製品または部品の識別に関しては、これらに個々の識別情報を記載したRFIDタグを添付し、このRFIDタグを専用の機器で読み取ることにより、製品または部品の識別情報を取得する方法が実用化されている。
【0008】
また、作業実施者の識別に関しては、作業実施者に個々の識別情報を記載したRFIDタグを所持させ、このRFIDタグを専用の機器で読み取ることにより、作業実施者の識別情報を取得する方法が実用化されている。
【0009】
前述したようなRFIDを活用した生産管理に関する従来技術として、例えば、特許文献1等に記載された技術が知られている。この従来技術は、RFIDタグに生産作業の指示情報を記入しておき、この指示情報に従って生産を進めさせるというものである。
【0010】
また、建設現場等の工務作業向けにRFIDを活用して工具と部材との関連付けを管理すると共に、監視を行うことにより工務作業を管理する方法に関する従来技術が、例えば、特許文献2等に記載されて知られている。
【特許文献1】特開2004−213511号公報
【特許文献2】特開2004−199243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
生産管理に必要な情報を収集するためには、前述した従来技術によって実現されていた製品や作業実施者の識別情報を取得することができるだけではなく、場所や生産設備の識別情報及び工程、時刻情報や生産システム内の人や物体の状態情報等の人や物体の識別情報以外の情報をも取得し、それらを必要に応じて関係付けた情報として収集する必要がある。
【0012】
しかし、前述した従来技術は、RFID読取装置やセンサー等の前述したような情報を取得するための装置が管理対象領域内に複数あり、それらが個別に取得する情報を複合的に活用する場合について考慮されていない。
【0013】
また、前述した従来技術は、生産管理情報を収集しようとするとき、作業工程、作業設備及び場所の識別情報が、個々の生産管理端末のアプリケーションソフトウェア上で個別に固定で設定されているため、生産システムの構成の変更が生じた場合には、それらの設定を、生産システムの構成の変更に併せて逐一変更する必要がある。そのため、構成が頻繁に変化する生産システムで生産管理を行うために前述した従来技術を利用した場合、アプリケーションソフトウェアの設定変更の必要が頻繁に生じ、生産システムの構成の変化に対して柔軟に対応することが困難となる。
【0014】
また、作業設備や場所に固定されていない可搬型の生産管理端末を用いて、生産管理情報を収集しようとする場合、作業工程、作業設備及び場所の情報を、逐一端末上で入力する必要があり、そのため、可搬型生産管理端末による生産管理を行う場合には、生産管理情報の収集にかかる作業負荷が大きくなってしまう。
【0015】
本発明の目的は、生産システムの生産過程における個々の製品について、いつ、誰によって、どこで、どのように、どんな処理が施されたかといった生産管理のための情報を容易に収集することを可能とし、また、生産ラインの変更が頻繁に発生するような場合や、携帯型生産管理端末を利用する場合にも、生産管理端末や生産管理システムへの変更を行うことなく、前述したような情報の収集を容易に行うことができる情報の収集方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば前記目的は、情報の収集方法において、情報を収集すべき対象である人や物体などの要素にそれぞれの識別情報を記載したRFIDタグを添付し、それらのRFIDタグを読み取ることにより識別情報を取得し、センサーその他の情報収集装置により関連する状態情報を取得し、前記取得した識別情報及び状態情報を任意の組み合わせで纏めて追跡情報として収集することにより達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構成が頻繁に変化するような生産システムにおいても、管理システムやアプリケーションソフトウェアへの変更を特に要することなく、生産管理に必要な詳細な情報を容易に収集することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による情報の収集方法の実施形態を図面により詳細に説明する。以下に説明する本発明の実施の形態は、本発明による情報の収集方法を生産管理システムに適用した場合の例である。
【0019】
図1は本発明が適用された生産管理システムを有する生産システムの全体の構成を示す図である。この図1に示す生産システムの構成は、以後に説明する本発明の実施形態に全て共通である。図1において、101は生産ライン、102は製品及び部品、103は場所、104は作業設備、105は作業工程、106は作業実施者、107は場所の識別情報、108は製品または部品の識別情報、109は作業設備の識別情報、110は作業工程の識別情報、111は作業実施者の識別情報、112は生産管理端末、113は時刻情報、114はRFID読取装置、115はネットワーク、116は生産管理情報データベース、117は識別情報管理データベース、118〜122はRFIDタグ、123は生産管理システム、124は時計である。
【0020】
図1に示す生産システムにおいて、生産ライン101内を流通する製品及び部品102には、製品または部品の個体識別情報108を情報として持つRFIDタグ119が添付されている。同様に、作業実施者106は、作業実施者の識別情報111を情報として持つRFIDタグ122を持ち、生産システムが設置されている場所103には、場所の識別情報107を情報として持つRFIDタグ118が添付されており、作業工程105には、作業工程の識別情報110を情報として持つRFIDタグ121が添付されており、作業設備104には、作業設備の識別情報109を情報として持つRFIDタグ120が添付されている。
【0021】
前述したRFIDタグ118〜122の持つ識別情報は、RFID読取装置114によって読み取られ、RFID読取装置114が接続されている生産管理端末112に纏めて送られる。
【0022】
生産管理端末112は、RFID読取装置114から送られてきた全ての識別情報と、内部の時計124から取得される時刻情報113を収集する。そして、これらの情報は、生産管理端末112に設けられるアプリケーション(AP)により、生産管理における追跡情報としての生産管理情報に変換生成され、有線または無線によるネットワーク115を介して、上位の生産管理システム123に送られ、生産管理情報データベース116に蓄積される。
【0023】
なお、前述において、場所の識別情報は、RFID118に持たせなくても、GPS等の位置検出装置から取得された位置情報であってもよい。また、生産管理システム123に設けられている識別情報管理データベース117は、システムで使用されている全てのRFIDが持つ識別情報を管理するためのデータベースである。
【0024】
図2は本発明の第1の実施形態による情報の収集方法が適用された生産管理システムを有する製品を生産する生産システムの構成を示すブロック図である。図2において、220は情報間関連付け処理部、221はネットワークインタフェース、222は情報間関連付けテーブル、223はRFID読み取り装置インタフェース、224はアプリケーション、225は記憶領域であり、他の符号は図1の場合と同一である。
【0025】
図2に示す生産システムは、図1に示すシステムと同一のものであり、図2には、生産管理端末112の機能構成を詳細に示している。すなわち、生産管理端末112は、図1で説明した時計124の他に、ネットワークインタフェース221と、RFID読み取り装置インタフェース223と、記憶装置が備えられており、記憶装置の記憶領域225内には、生産管理情報を生成するためのアプリケーション224としての情報間関連付け処理部220と、情報間関連付けテーブル222とが設けられている。
【0026】
図3は本発明の第1の実施形態における処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0027】
(1)生産管理端末112は、接続されているRFID読取装置114によるRFIDタグの読み取り処理を常時行い、読み取り待ち受けの状態にある(ステップ401)。
【0028】
(2)生産ライン上を流れてきた生産途中の製品または部品102が、RFID読取装置114によって読み取ることが可能な範囲に入ってきたことを監視し、読み取り可能な範囲に製品または部品102が入ってきたことが検出された場合、製品または部品102に貼付されているRFIDタグの識別情報108を読み取る(ステップ402、403)。
【0029】
(3)次に、生産管理端末112は、読み取った識別情報108の内容を識別情報管理データベース117に照会して問い合わせ、読み取られた識別情報が製品または部品のものであるか否かを判定し、そうでない場合、ステップ401の処理に戻って、読み取り待ち受けの状態になる(ステップ404、405)。
【0030】
(4)ステップ405で、読み取られた情報が製品または部品のものであることが判定された場合、生産管理端末112は、読み取られた情報が製品または部品のものであることを認識し、RFID読取装置114を制御して、場所103に添付されたRFIDタグ118から場所の識別情報107を、作業設備104に添付されたRFIDタグ120から作業設備の識別情報109を、作業工程105に添付されたRFIDタグ121から作業工程の識別情報110を、作業実施者106が持つRFIDタグ122から作業実施者の識別情報111を読み取る(ステップ406、407)。
【0031】
前述のステップ407における全てのRFIDからの識別情報読み取りの処理は、生産管理情報を収集する作業者が、生産管理端末112を操作することにより、任意のタイミングで、場所103に添付されたRFIDタグ118から場所の識別情報107を、作業設備104に添付されたRFIDタグ120から作業設備の識別情報109を、作業工程105に添付されたRFIDタグ121から作業工程の識別情報110を、作業実施者106が持つRFIDタグ122から作業実施者の識別情報111を読み取ることにより行ってもよい。
【0032】
(5)生産管理端末112は、読み取った全ての識別情報のそれぞれについて、識別情報と併せて各RFIDタグに記載されている情報から、それぞれが製品、場所、作業設備、作業工程、作業実施者のうちいずれの識別情報であるのかを分別する(ステップ408)。
【0033】
(6)生産管理端末112は、ステップ408の処理で分別した各識別情報に時刻情報113を加えて、製品または部品の識別情報108、場所の識別情報107、作業設備の識別情報109、作業工程の識別情報110、作業実施者の識別情報111及び時刻情報113からなる追跡情報である生産管理情報として意味のある一纏めにした情報に変換生成し、その情報をネットワーク115を介して生産管理情報データベース116に蓄積する。このとき、生産管理端末112は、部品の製品への組み込み作業であった場合、製品と部品との識別情報同士の関連付けも行い、その関連付けの情報も併せて生産管理情報データベース116に蓄積する(ステップ409)。
【0034】
前述したステップ409での処理は、個々の識別情報について、識別情報管理データベース117に問い合わせることによって、それぞれが製品、場所、作業設備、作業工程、作業実施者のうちいずれの識別情報であるのかを分別してから、生産管理情報データベース116に格納するようにすることができる。
【0035】
前述した本発明の第1の実施形態における生産管理端末112は、可搬型のものであってもよい。生産管理に必要な情報を収集する本発明の第1の実施形態によれば、前述したような処理により、作業工程の構成や作業設備の配置等の生産システムの構成が頻繁に変更される場合であっても、生産管理端末112のハードウェア及びアプリケーションソフトウェアに変更を加える必要なく、生産管理のための情報を収集することが可能となる。
【0036】
図4は本発明の第2の実施形態による情報の収集方法が適用された生産管理システムを有する製品を生産する生産システムの構成を示すブロック図である。図4において、309は位置センサー、310はセンサーインタフェースであり、他の符号は図1、図2の場合と同一である。
【0037】
図4に示す本発明の第2の実施形態は、識別情報の収集をRFID読取装置からだけではなく、情報収集装置としてセンサーが接続されている生産管理端末を用いて生産管理を実施する場合の例である。
【0038】
本発明の第2の実施形態が適用されたシステムは、図4に示すように、生産管理端末112にGPS等による位置センサー309が接続されていて、生産管理端末112の内部にセンサーインタフェース310が設けられている点でのみ、図2により説明した本発明の第1の実施形態の場合と相違し、それ以外、第1の実施形態と同一に構成されている。そして、生産管理端末112は、場所103の場所識別情報107として、情報生産管理端末112が位置する場所の位置情報を位置センサー309により検出させ、その情報をセンサーインタフェース310より取り込んで使用する。
【0039】
図5は本発明の第2の実施形態における処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0040】
(1)生産管理端末112は、接続されているRFID読取装置114によるRFIDタグの読み取り処理を常時行い、読み取り待ち受けの状態にある(ステップ501)。
【0041】
(2)生産ライン上を流れてきた生産途中の製品または部品102が、RFID読取装置217によって読み取ることが可能な範囲に入ってきたことを監視し、読み取り可能な範囲に製品または部品102が入ってきたことが検出された場合、製品または部品102に貼付されているRFIDタグの識別情報108を読み取る(ステップ502、503)。
【0042】
(3)次に、生産管理端末112は、読み取った識別情報108の内容を識別情報管理データベース117に照会して問い合わせ、読み取られた識別情報が製品または部品のものであるか否かを判定し、そうでない場合、ステップ501の処理に戻って、読み取り待ち受けの状態になる(ステップ504、505)。
【0043】
(4)ステップ505で、読み取られた情報が製品または部品のものであることが判定された場合、生産管理端末112は、読み取られた情報が製品または部品のものであることを認識し、RFID読取装置114を制御して、作業設備104に添付されたRFIDタグ120から作業設備の識別情報109を、作業工程105に添付されたRFIDタグ121から作業工程の識別情報110を、作業実施者106が持つRFIDタグ122から作業実施者の識別情報111を読み取る(ステップ506、507)。
【0044】
(5)このとき、生産管理端末112は、同時に、位置センサー309を制御し、センサーインタフェース310を介して場所識別情報107を取得する(ステップ508)。
【0045】
前述のステップ507、508における全てのRFIDから及び位置センサー309からの識別情報読み取りの処理は、生産管理情報を収集する作業者が、生産管理端末112を操作することにより、任意のタイミングで、位置センサー309から場所の識別情報107を、作業設備104に添付されたRFIDタグ120から作業設備の識別情報109を、作業工程105に添付されたRFIDタグ121から作業工程の識別情報110を、作業実施者106が持つRFIDタグ122から作業実施者の識別情報111を読み取ることにより行ってもよい。
【0046】
(6)生産管理端末112は、読み取った全ての識別情報のそれぞれについて、識別情報と併せて各RFIDタグに記載されている情報から、それぞれが製品、場所、作業設備、作業工程、作業実施者のうちいずれの識別情報であるのかを分別する(ステップ509)。
【0047】
(7)生産管理端末112は、ステップ509の処理で分別した各識別情報に時刻情報113を加えて、製品または部品の識別情報108、場所の識別情報107、作業設備の識別情報109、作業工程の識別情報110、作業実施者の識別情報111及び時刻情報113からなる生産管理情報として一纏めにした情報を生成し、その情報をネットワーク115を介して生産管理情報データベース116に蓄積する。このとき、生産管理端末112は、部品の製品への組み込み作業であった場合、製品と部品との識別情報同士の関連付けも行い、その関連付けの情報も併せて生産管理情報データベース116に蓄積する(ステップ510)。
【0048】
前述したステップ510での処理は、個々の識別情報について、識別情報管理データベース117に問い合わせることによって、それぞれが製品、場所、作業設備、作業工程、作業実施者のうちいずれの識別情報であるのかを分別してから、生産管理情報データベース116に格納するようにすることができる。また、前述したステップ508の処理とステップ509の処理とは、お互いに入れ替えることもできる。
【0049】
前述した本発明の第2の実施形態における生産管理端末112は、可搬型のものであってもよい。生産管理に必要な情報を収集する本発明の第2の実施形態によれば、前述したような処理により、作業工程の構成や作業設備の配置等の生産システムの構成や、RFID読取装置やセンサーなどの情報収集装置の構成が頻繁に変更される場合であっても、容易に詳細な生産管理のための情報を収集することが可能となる。また、生産管理態勢の増強を図る際に、情報収集装置を増加させようとする場合にも、全く同一のハードウェア及びアプリケーションソフトウェアを利用することができるため、ハードウェアにかかる以外のコストを削減することができる。
【0050】
図6は本発明の第3の実施形態による情報の収集方法が適用された生産管理システムを有する製品を生産する生産システムの構成を示すブロック図である。図6において、625〜629はRFID読取装置、631はキャッシュメモリであり、他の符号は図2の場合と同一である。
【0051】
図6に示す本発明の第3の実施形態は、RFIDの読み取り距離や位置等に制約がある場合に、その制約に対処して複数設置されたRFID読取装置を生産管理端末112に接続して使用する場合の例である。そして、この図6に示すシステムは、基本的に図2に示して説明した本発明の第1の実施形態と同一であるが、生産管理端末に複数のRFID読取装置625〜629が接続されている点、及び、生産管理端末112内の記憶装置の記憶領域225にキャッシュメモリ631が設けられている点が第1の実施形態と相違している。
【0052】
なお、第3の実施形態における複数のRFID読取装置625〜629は、ネットワークを介して接続されていても、また、ネットワークに接続されている別の生産管理端末に接続されているものであってもよい。
【0053】
図7は本発明の第3の実施形態における処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0054】
(1)生産管理端末112は、製品及び部品のRFIDタグを読み取るためのRFID読取装置625、作業実施者のRFIDタグを読み取るためのRFID読取装置626、作業工程のRFIDタグを読み取るためのRFID読取装置628、作業設備のRFIDタグを読み取るためのRFID読取装置629及び場所のRFIDタグを読み取るためのRFID読取装置627が接続されており、それぞれのRFID読取装置が対応するRFIDタグの情報を随時読み取っている(ステップ701)。
【0055】
(2)生産ライン上を流れてきた生産途中の製品または部品102が、RFID読取装置217によって読み取ることが可能な範囲に入ってきたことを監視し、読み取り可能な範囲に製品または部品102が入ってきたことが検出された場合、製品または部品102に貼付されているRFIDタグの識別情報108を読み取る(ステップ702、703)。
【0056】
(3)次に、生産管理端末112は、読み取った識別情報108の内容を識別情報管理データベース117に照会して問い合わせ、読み取られた識別情報が製品または部品のものであるか否かを判定する(ステップ704、705)。
【0057】
(4)ステップ705の判定で、読み取られた識別情報が製品または部品のものではなかった場合、生産管理端末112は、そのRFIDタグの識別情報が何の情報であるかを分別し、随時更新されながら生産管理端末112内のキャッシュメモリ631に種別毎に保持し、その後、ステップ701の処理に戻る(ステップ709、710)。
【0058】
(5)ステップ705の判定で、読み取られた識別情報が製品または部品のものであった場合、生産管理端末112は、読み取られた情報が製品または部品のものであることを認識し、この情報と同時に、キャッシュメモリ631で保持している作業設備104、作業工程105、作業実施者106、場所103の各識別情報を読み込む(ステップ706、707)。
【0059】
(6)生産管理端末112は、ステップ707の処理で読み込んだ全ての識別情報に時刻情報113を加えて、製品または部品の識別情報108、場所の識別情報107、作業設備の識別情報109、作業工程の識別情報110、作業実施者の識別情報111及び時刻情報113からなる生産管理情報として一纏めにした情報を生成し、その情報をネットワーク115を介して生産管理情報データベース116に蓄積する(ステップ708)。
【0060】
図8は前述で使用されるキャッシュメモリ631の内容を説明する図であり、ここで、キャッシュメモリ631の内容について説明する。
【0061】
キャッシュメモリ631には、図8に示すように、識別情報の種別とキャッシュ値とが対応付けられて格納されている。識別情報の種別は、前述で説明した場所、作業工程、作業設備、作業実施者等である。キャッシュ値は、例えば、場所に対して生産システム内の区画名称である区画AAA、作業工程に対して作業処理の名称であるB処理工程であり、また、作業設備に対して設備名称である設備C−4号機、作業実施者に対して社員コードである社員コードXXXXX等である。
【0062】
前述した本発明の第3の実施形態によれば、生産工場、設備のレイアウト等の問題や、RFIDの読み取り可能距離や角度等の性能の問題で、1つのRFID読取装置では、管理対象の人や物のRFIDタグを一括して読み取ることが不可能である場合にも、前述した本発明の第1の実施形態の場合と同様の生産管理システムの運用を行うことが可能となる。
【0063】
図9は本発明の第4の実施形態による情報の収集方法が適用された生産管理システムを有する製品を生産する生産システムの構成を示すブロック図である。図9において、826はキャッシュメモリであり、他の符号は図2の場合と同一である。
【0064】
図9に示す本発明の第4の実施形態は、生産システムの構成要素の変動があまり発生しない場合に適用して好適な例であり、基本的に図2に示して説明した本発明の第1の実施形態と同一であるが、生産管理端末112内の記憶装置の記憶領域225にRFIDの種別毎にキャッシュメモリ826が設けられている点が第1の実施形態と相違している。
【0065】
図10は本発明の第4の実施形態における処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0066】
(1)本発明の第4の実施形態は、生産システムの構成要素の変動が少ない場合であり、ここでは、作業工程、作業設備及び場所について、比較的変更が少ないものとする。そして、この場合、生産管理端末112を設置した際、または、作業工程、作業設備及び場所のうちいずれかが変更された際に、生産管理端末112は、変更のあったもののそれぞれのRFIDタグを読み取り、読み取った識別情報を生産管理端末112上のキャッシュメモリ826に保持し、また、作業実施者がある程度の長い時間、固定の場所で作業に従事する場合であれば、作業実施者が持つRFIDタグ122の識別情報についても、作業実施者が作業実施場所に来た際に読み取って、生産管理端末122上のキャッシュメモリ826にその情報を保持する(ステップ901、902)。
【0067】
なお、ここで使用するキャッシュメモリ826の内容は、図8に示して説明したものと同様のものであってよい。
【0068】
(2)ステップ901、902の処理によるキャッシュ826の更新が終了したか否かを判定し、終了していなかった場合、ステップ901からの処理を繰り返し実行し、終了していた場合、情報管理端末112は、RFIDタグ読み取りの待ち受けの状態となる(ステップ903、904)。
【0069】
前述のような処理をしておくことにより、以後、リアルタイムにRFIDタグの読み取りを行う必要があるのは、基本的に、製品または部品のRFIDタグだけでよいことになる。
【0070】
(3)その後、情報管理端末112は、キャッシュ826の更新が必要となったか否かを判定し、キャッシュ826の更新が必要となった場合、ステップ901からの処理に戻って処理を繰り返す(ステップ905)。
【0071】
(4)生産管理端末112は、生産ライン上を流れてきた生産途中の製品または部品102が、RFID読取装置114によって読み取ることが可能な範囲に入ってきたことを監視し、読み取り可能な範囲に製品または部品102が入ってきたことが検出された場合、製品または部品102に貼付されているRFIDタグの識別情報108を読み取って製品または部品を認識する(ステップ906〜908)。
【0072】
(5)その後、生産管理端末112は、キャッシュメモリ826に保持している、場所の識別情報107、作業設備の識別情報109、作業工程の識別情報110及び作業実施者の識別情報110を読み込む(ステップ909)。
【0073】
(6)ステップ909の処理でキャッシュメモリ826から読み込んだ情報と、新たに読み取った製品または部品の識別情報108及び時刻情報113とを、生産管理情報として一纏めにし、この一纏めにした生産管理情報をネットワーク115を介して、生産管理情報データベース116に送信して蓄積する(ステップ910)。
【0074】
前述で説明した本発明の第4の実施形態によれば、生産システムにおいて発生するレイアウトや設備の変更、作業員の変化等の頻度が低い場合に、RFIDタグの読み取り処理の実行を最小限にしながら、第1の実施形態の場合と同様の効果を挙げることができる。
【0075】
図11は本発明の第5の実施形態における処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0076】
本発明の第5の実施形態は、RFIDタグを用いて収集する識別情報を、生産作業指示や生産計画に対する整合性のチェックに活用することができるようにした例であり、そのシステムの構成は、図2に示して説明した本発明の第1の実施形態における生産管理システム123内に生産計画管理データベースをさらに備えている点でのみ、第1の実施形態と相違し、それ以外は同一に構成されている。
【0077】
(1)本発明の第5の実施形態での基本的な処理は、第1の実施形態の場合の図3に示すフローのステップ401〜ステップ408での処理と同様な処理を実行する(ステップ1101〜1108)。
【0078】
(2)その後、ステップ409の場合と同様に、ステップ1108の処理で分別した各識別情報に時刻情報113を加えて、製品または部品の識別情報108、場所の識別情報107、作業設備の識別情報109、作業工程の識別情報110、作業実施者の識別情報111及び時刻情報113からなる生産管理情報として一纏めにした情報を生成する。その際、生成した生産管理情報について、生産管理情報データベース116に蓄積する必用はない(ステップ1109)。
【0079】
(3)ステップ1109の処理の後、製品または部品の識別情報108、場所の識別情報107、作業設備の識別情報109、作業工程の識別情報110、作業実施者の識別情報111の組み合わせについて、生産管理システム123の中のこの実施形態で設けた生産計画情報データベースから製品の識別情報を用いて関連する作業指示情報及び作業計画情報を参照し、生成した生産管理情報が不適切でないか否かをチェックする(ステップ1110)。
【0080】
このステップ1110での処理は、具体的には、個々の製品について、経由するはずのない作業工程あるいは作業工程を経由する順序の異常、当該作業工程を実施する機能を持たない作業設備の使用、当該作業工程における作業権限を持たない作業実施者による作業の実行等の生産計画に対して不適切なあるいは計画外の処理が存在しないかどうかをチェックする処理である。
【0081】
(4)ステップ1110でのチェックの結果、不適切な処理があったか否かを判定し、不適切な処理がなかった場合、ステップ1101の処理に戻って、RFIDタグの読み取り待ち受けの処理からの処理を繰り返す(ステップ1111)。
【0082】
(5)ステップ1110でのチェックの結果、不適切な処理あるいは計画外の処理があった場合、どのような処理があったのかの情報を、生産管理端末112を通じて作業実施者に通知し、また、生産管理情報として不適切な処理があったことを記録する等の対処イベントを起動し、その後、ステップ1101の処理に戻る(ステップ1112)。
【0083】
前述したステップ1110でのチェックは、製品に対する部品の組み込みを伴う作業であった場合には、当該製品及び部品の識別情報に関連する作業指示情報、作業計画情報及び設計情報を参照することにより、製品組み立ての構成及び作業に異常がないかどうかをチェックように行うことができる。具体的には、個々の製品について、計画通りの部品構成になっているかどうか、部品組み込みの順序に異常はないか、使用してはいけない部品を組み込んではいないか等を検出することであってもよい。
【0084】
前述で説明した本発明の第4の実施形態によれば、生産作業指示や生産計画に対する実際の生産作業の整合性のチェックや、個々の製品の部品構成に対する異常チェック及び不適切な部品の使用チェック等を作業負荷を発生させることなく実施することができる。
【0085】
前述した本発明の各実施形態における各処理はプログラムにより構成し、計算機が備えるCPUに実行させることができ、また、それらのプログラムは、FD、CDROM、DVD等の記録媒体に格納して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明が適用された生産管理システムを有する生産システムの全体の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による情報の収集方法が適用された生産管理システムを有する製品を生産する生産システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における処理動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態による情報の収集方法が適用された生産管理システムを有する製品を生産する生産システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における処理動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態による情報の収集方法が適用された生産管理システムを有する製品を生産する生産システムの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における処理動作を説明するフローチャートである。
【図8】キャッシュメモリの内容を説明する図である。
【図9】本発明の第4の実施形態による情報の収集方法が適用された生産管理システムを有する製品を生産する生産システムの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4の実施形態における処理動作を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第5の実施形態における処理動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
101 生産ライン
102 製品及び部品
103 場所
104 作業設備
105 作業工程
106 作業実施者
107 場所の識別情報
108 製品または部品の識別情報
109 作業設備の識別情報
110 作業工程の識別情報
111 作業実施者の識別情報
112 生産管理端末
113 時刻情報
114 RFID読取装置
115 ネットワーク
116 生産管理情報データベース
117 識別情報管理データベース
118〜122 RFIDタグ
123 生産管理システム
124 時計
220 情報間関連付け処理部
221 ネットワークインタフェース
222 情報間関連付けテーブル
223 RFID読み取り装置インタフェース
224 アプリケーション
225 記憶領域
309 位置センサー
310 センサーインタフェース
625〜629 RFID読取装置
631、826 キャッシュメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報の収集方法において、情報を収集すべき対象である人や物体などの要素にそれぞれの識別情報を記載したRFIDタグを添付し、それらのRFIDタグを読み取ることにより識別情報を取得し、センサーその他の情報収集装置により関連する状態情報を取得し、前記取得した識別情報及び状態情報を任意の組み合わせで纏めて追跡情報として収集することを特徴とする情報の収集方法。
【請求項2】
請求項1記載の情報の収集方法において、収集した識別情報及び状態情報を一纏めにした集合である追跡情報に変換することを特徴とする情報の収集方法。
【請求項3】
請求項1記載の情報の収集方法において、識別情報及び状態情報の収集を複数の情報収集装置によって行い、それら情報収集装置及び情報処理を行う装置の相互間で、収集した識別情報及び状態情報を共有することを特徴とする情報の収集方法。
【請求項4】
請求項1記載の情報の収集方法において、作業工程情報や生産工程情報などの業務プロセスに関する情報を参照することにより、収集した識別情報及び状態情報の関係付け方法を認識して必要な追跡情報に変換することを特徴とする情報の収集方法。
【請求項5】
請求項1記載の情報の収集方法において、追跡情報を収集した際に、作業計画情報や生産計画情報を参照することにより、実施された作業や処理プロセスに誤りがないか否かをチェックすることを特徴とする情報の収集方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、収集する識別情報及び状態情報が、生産管理における生産対象である製品及び製品を構成する部品、生産過程で製品及び部品が経過する作業工程、各生産処理を実施する作業設備、生産現場での場所及び時刻の情報であり、また、人を生産処理の作業実施者とした人の情報であることを特徴とする情報の収集方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【公開番号】特開2006−318193(P2006−318193A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139879(P2005−139879)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】