説明

情報処理装置および情報処理方法

【課題】RF信号の振幅情報を測定するための再生動作の際に、レーザ光源を駆動する駆動信号に重畳される高周波信号の周波数を高くする。
【解決手段】VCO4から高周波信号が発振出力されレーザ駆動回路3に供給される。レーザ駆動回路3は、レーザ光源を駆動する駆動信号に高周波信号を重畳する。高周波信号が重畳された駆動信号が光学ピックアップ2のレーザ光源に供給され、レーザ光源からレーザ光が出射される。ディスク1から読みだされたRF信号がトップホールド部およびボトムホールド部9に供給され、RF信号の振幅情報が測定される。記録特性測定部10は、RF信号の振幅情報に基づいて変調度等を測定する。変調度等の測定のための再生動作の際にVCO4が発振出力する高周波信号の周波数を、通常再生の際にVCO4が発振出力する高周波信号の周波数より高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、レーザ光源を駆動する駆動信号に対して重畳される高周波信号の周波数を制御する情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu-ray Disc(登録商標))などの光ディスクが広く普及している。これらの光ディスクを再生する際には、レーザ光源から出射されたレーザ光を光ディスクの所望の位置に照射し、光ディスクからの反射光を検出する。反射光が電気信号へと変換されることで再生信号(RF(Radio Frequency)信号)が得られる。このとき、反射光の一部(戻り光)がレーザ光源へと戻る。この戻り光がレーザ光のノイズの要因となり実用上の問題となる。
【0003】
戻り光に起因するノイズを抑制するため、レーザ光源を駆動する駆動信号(駆動電流)に高周波信号を重畳することが行われている。駆動信号に対して高周波信号を重畳することによりレーザ光のノイズ特性であるRIN(Relative Intensity Noise:相対強度雑音)値を低下させ、RF信号のS/N(Signal to Noise ratio)を向上させることができる。このような手法は、例えば、下記特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0004】
一方、光ディスク装置では、OPC(Optimum Power Control)と称されるレーザ光の記録パワーを調整する処理が行われる。OPCでは、光ディスクの最内周エリアなどに設けられたOPCエリアに所定のデータを試し書きし、試し書きしたデータを再生してRF信号を得る。RF信号の波形から得られるエンベローブ情報を使用して所定の演算を実行し、RF信号の変調度やRF信号の振幅の非対称性を示すβ値、RF信号の振幅値(以下、適宜、RF振幅値と略す。)と呼ばれる測定値を得る。これらの測定値に基づいてレーザ光の最適な記録パワーが決定される。変調度やβ値、RF振幅値(以下、総称して変調度等と略すこともある)の測定はOPCに限らず、再生時における光学収差を調整するために実行されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−149302号公報
【特許文献2】特開2004−288277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通常再生時において再生されたRF信号は、一般にAC(Alternating Current)信号として扱われるためDC(Direct Current)成分は除去される。これに対して、例えば、変調度の測定にはDC成分が必要とされる場合もあるため、測定時にRF信号のDC成分は除去されないこともある。また、通常再生時において再生されたRF信号に必要とされる周波数帯域と、変調度を測定するためのRF信号に必要とされる周波数帯域とは異なる場合が多い。このため、駆動信号に重畳される高周波信号の高周波信号成分が変調度の測定の際の誤差要因となり、正確な測定値を得ることができなくなるおそれがある。
【0007】
また、光学ピックアップを介して得られるRF信号には、高周波信号の高周波信号成分が混入する。通常再生を行う系には、低域通過フィルタとして、例えば、高次のFIR(Finite Impulse Response)フィルタを含むイコライザ回路が備えられ、高次のFIRフィルタにより高周波信号成分を除去できる。したがって、RF信号に混入する高周波信号成分を十分に抑圧できる。しかしながら、変調度等を測定する系は、高次のFIRフィルタでなく1次のCRアナログローパスフィルタにより構成されることが多い。したがって、RF信号に混入する高周波信号成分を十分且つ厳密に除去できない。
【0008】
特に、倍速再生がなされたときはRF信号の周波数帯域が広がり、RF信号の最高周波数と高周波信号成分の周波数とが接近する。この場合に、1次のCRアナログフィルタにより高周波信号成分のみを厳密に除去してRF信号を検出することは困難である。高周波信号成分が含まれたRF信号に基づいて変調度等を測定すると、高周波信号成分に起因する誤差により正確な変調度等を得ることができない。なお、変調度等を測定する系に対して高次のFIRフィルタを設けることは、装置の複雑化をまねきコスト面でも不利である。
【0009】
変調度等を測定する際に、駆動信号に対して高周波信号を重畳しない(オフ)、または、高周波信号の振幅を小さくすることも考えられる。しかしながら、高周波信号を重畳しないとレーザ光の出射光と戻り光の干渉による突発的なノイズが発生し、トラッキングサーボやフォーカスサーボ、アドレスのデコード等の処理が乱れるおそれがある。
【0010】
したがって、本願開示は、正確な変調度等の測定値を得ることができる装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本願開示の装置は、レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体に対して照射することにより再生信号を得る再生部と、
レーザ光源を駆動する駆動信号に対して、第1の高周波信号と第1の高周波信号より高い周波数とされる第2の高周波信号のいずれか一方を重畳する高周波信号重畳部とを備え、
高周波信号重畳部は、第1の再生動作を行う際に、駆動信号に対して第1の高周波信号を重畳し、再生信号の振幅情報を測定するための第2の再生動作を行う際に、駆動信号に対して第2の高周波信号を重畳する情報処理装置である。
【0012】
また、本願開示の方法は、レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体に対して照射することにより再生信号を得る再生ステップと、
レーザ光源を駆動する駆動信号に対して、第1の高周波信号と第1の高周波信号より高い周波数とされる第2の高周波信号のいずれか一方を重畳する高周波信号重畳ステップとを有し、
高周波信号重畳ステップは、第1の再生動作を行う際に、駆動信号に対して第1の高周波信号を重畳し、再生信号の振幅情報を測定するための第2の再生動作を行う際に、駆動信号に対して第2の高周波信号を重畳する情報処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
少なくとも一つの実施形態によれば、RF信号の正確な振幅情報を得ることができる。したがって、振幅情報を使用して測定される変調度等の測定値も正確となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態における情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】一実施形態における情報処理装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】理想的なRF信号の波形図である。
【図4】高周波信号成分の影響をうけたRF信号の波形図である。
【図5】高周波信号成分の影響を軽減したRF信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態および変形例について図面を参照しながら説明する。説明は以下の順序で行う。
<一実施形態>
<変形例>
なお、以下に説明する実施形態等は好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、以下の説明において、明示的に限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態等に限定されないものとする。
【0016】
<一実施形態>
1.情報処理装置の構成
図1は、一実施形態における情報処理装置20の構成を示す。情報処理装置20は、光ディスク1に信号を記録し、記録された信号を再生する機能を有し、光学ピックアップ(OP)2、レーザ駆動回路3、VCO(Voltage Controlled Oscillator)4、APC(Automatic Power Control)5を備える。また、情報処理装置20は、通常再生の再生系としてイコライザ6、デコーダ7、エラー訂正部8を備え、記録系としてエンコーダ11を備え、測定系としてトップホールド部およびボトムホールド部9、記録特性測定部10を備え、サーボ系としてサーボ装置12、スピンドルモータ13、スレッドモータ14を備える。情報処理装置20の各部は、例えば制御部15により制御される。
【0017】
光ディスク1は、DVD−R(Recordable)やBD−R等の記録可能なディスクである。図示しないターンテーブルに載置された光ディスク1がスピンドルモータ13によって所定の回転速度で回転される。
【0018】
光学ピックアップ2は、記録再生のためのレーザ光源と、このレーザ光源から出射されたレーザ光を対物レンズを介して光ディスク1の記録面に集光させ、この光ディスク1からの反射光を取り込む光学系と、この光学系によって取り込んだ反射光を検出する光検出器とから構成される。
【0019】
また、光学ピックアップ2内には、電磁アクチュエータで実現されるレーザ光位置調節機構が搭載されており、アクチュエータによって対物レンズがフォーカス方向とトラッキング方向に移動するように制御される。
【0020】
光学ピックアップ2のレーザ光源は、レーザ駆動回路3から供給される駆動信号(駆動電流)により駆動される。レーザ駆動回路3に対して、VCO4から高周波信号が供給される。VCO4は、例えば光ディスク1の再生時に、制御部15による制御に応じて高周波信号を発振出力する。VCO4から出力された高周波信号がレーザ駆動回路3に対して供給される。VCO4が発振出力する高周波信号の周波数は、制御部15による制御により可変とされる。
【0021】
レーザ駆動回路3は、VCO4から供給された高周波信号を、レーザ光源を駆動する駆動信号に重畳する。高周波信号が重畳された駆動信号が光学ピックアップ2内のレーザ光源に供給され、レーザ光源から駆動信号に応じたレーザ光が出射される。例えば、レーザ駆動回路3により高周波信号重畳部が構成される。なお、光ディスク1から信号を再生するときに限らず光ディスク1へ信号を記録する処理の際に、駆動信号に対して高周波信号が重畳されてもよい。
【0022】
APC5は、レーザ光源から出射されるレーザ光のレーザパワーを監視し、レーザ光の発光強度が所望のレベルになるようにレーザ駆動回路3を制御する。
【0023】
光ディスク1の通常再生を行う時には、光ディスク1に対してレーザ光が照射され、光ディスク1からの反射光が光検出器によって電気信号へと変換される。電気信号が光学ピックアップ2から図示しないアナログフロントエンド(図示は省略している)に供給される。例えば、光学ピックアップ2と図示しないアナログフロントエンドにより再生部が構成される。アナログフロントエンドから再生データとしてRF信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、ウォブル信号が出力される。
【0024】
アナログフロントエンドから出力されたRF信号がイコライザ6に供給される。イコライザ6は、低域通過フィルタとして、例えば、高次のFIRフィルタ(ディジタルフィルタ)(図示は省略している)を備える。イコライザ6においてRF信号が整形され、高次のFIRフィルタにより高周波信号の高周波信号成分が除去される。イコライザ6が備えるFIRフィルタの高域遮断特性は、後述するトップホールドおよびボトムホールド部9が備える1次のCRアナログフィルタの高域遮断特性より急峻とされる。イコライザ6が有するFIRフィルタを使用して、RF信号に混入する高周波信号成分を厳密に除去できる。
【0025】
イコライザ6において、RF信号に対して二値化処理等の所定の信号処理がなされ、所定の信号処理がなされたRF信号がデコーダ7に供給される。デコーダ7においてデコード処理がなされたRF信号がエラー訂正部8に供給される。エラー訂正部8においてエラー訂正処理がなされることで再生信号を得る。再生信号が制御部15に対して供給される。上述した通常再生の動作が第1の再生動作の一例とされる。
【0026】
制御部15は、例えば、メモリを有するDSP(Digital Signal Processor)により構成され、情報処理装置20の各部を制御する。また、エラー訂正部8から制御部15に対して供給された再生信号を図示しないインタフェースを介して情報処理装置20の外部に出力する。
【0027】
アナログフロントエンドから出力されたフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、ウォブル信号が制御部15に対して供給される。ウォブル信号が制御部15の有するアドレスデコード機能によりデコードされることで光ディスク1上のアドレス情報が取得される。
【0028】
制御部15は、受け取ったフォーカスエラー信号からフォーカスを制御するためのフォーカスドライブ信号を生成する。また、受け取ったトラッキングエラー信号からトラッキングを制御するためのトラッキングドライブ信号を生成する。さらに、制御部15は、光学ピックアップ2を目標位置に移動させるために、スレッドモータを駆動するスレッドモータ信号を生成する。フォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号、スレッドモータ信号がサーボ装置12に対して供給される。
【0029】
サーボ装置12は、制御部15から供給されるフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号、スレッドモータ信号に応じてスレッドモータ14を駆動する。スレッドモータ14が駆動することで光学ピックアップ2が移動(シーク)され、光ディスク1上の所望の位置にレーザ光が照射される。
【0030】
光ディスク1への記録時には、エラー訂正コードを付加する処理等がなされた記録データがエンコーダ11に対して供給される。エンコーダ11において記録データがレーザ光の発光情報へと変調され、レーザ駆動回路3に対して供給される。
【0031】
レーザ駆動回路3は、供給された発光情報に応じて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を光学ピックアップ2のレーザ光源に対して供給する。駆動信号に応じてレーザ光源からレーザ光が出射し、出射したレーザ光が光ディスク1に対して照射されることにより記録データが記録される。一実施形態における情報処理装置20では、例えば、光学ピックアップ2により記録部が構成される。
【0032】
上述した構成とされる情報処理装置20は、OPCと称される、レーザ光の記録パワーや記録パルスを調整する処理を実行する。OPCは、例えば、光ディスク1に対して記録データを記録する前に実行される。OPCの実行時には、光学ピックアップ2を使用して光ディスク1の最内周エリア等に設けられたOPCエリアに既定のデータが書き込まれる。OPCに光学ピックアップ2から出射したレーザ光が照射され、書き込まれたデータが光学ピックアップ2を介して読み取られRF信号が再生される。OPCにおける再生動作が第2の再生動作の一例とされる。再生されたRF信号がトップホールド部およびボトルホールド部9に供給される。
【0033】
トップホールド部およびボトムホールド部9は、供給されたRF信号から変調度やβ値を測定するために必要なRF信号の振幅情報を測定する。振幅情報は、例えば、RF信号のエンベローブ情報であり、トップホールド部およびボトムホールド部9において、RF信号の振幅のトップ(ピーク)とボトムのレベルとがそれぞれ測定される。トップホールド部およびボトムホールド部9は、例えば、1次のCRアナログフィルタ(図示は省略している)を備える。
【0034】
なお、トップホールド部およびボトムホールド部9は、変調度やβ値などの測定対象に応じてRF信号のDC成分を除去する構成とされてもよい。例えば、変調度の測定には一般にRF信号のDC成分が必要とされ、β値は一般にDC成分を含まないRF信号に対して定義される。したがって、トップホールド部およびボトムホールド部9において、光学ピックアップ2から供給されるRF信号のDC成分を除去する処理が測定対象に応じて実行されるようにしてもよい。トップホールド部およびボトムホールド部9で検出されたエンベローブ情報が記録特性測定部10に対して供給される。
【0035】
記録特性測定部10では、トップホールド部およびボトムホールド部9から供給されるエンベローブ情報を使用して所定の演算を行い、変調度やβ値、RF振幅値等の測定値を算出する。記録特性測定部10で算出された測定値が制御部15に対して供給される。
【0036】
制御部15は、記録特性測定部10から供給される測定値に応じてレーザ光の記録パワーを最適化する制御信号をAPC5に対して供給する。APC5は、制御信号に応じてレーザ駆動回路3を駆動する。OPCが実行されることで、記録時におけるレーザ光の記録パワーが最適化される。
【0037】
このように、通常再生を行う際は、光学ピックアップ2から出力されるRF信号が再生系(イコライザ6、デコーダ7、エラー訂正部8)に対して供給される。これに対して、RF信号の振幅情報を測定する際の再生動作を行う際は、光学ピックアップ2から出力されるRF信号が測定系(トップホールド部およびボトムホールド部9、記録特性測定部10)に対して供給される。RF信号の出力先の切り換えは、例えば、制御部15により制御される。
【0038】
ところで、従来は、OPCエリアに試し書きされたデータを再生するときに、通常再生動作と同様の高周波信号が駆動信号に重畳されていた。この高周波信号の高周波信号成分が変調度やβ値等の測定において誤差要因となるおそれがある。
【0039】
トップホールド部およびボトムホールド部9が備える1次のCRアナログフィルタでは、高周波信号成分を十分に除去且つ厳密にできない。このため、RF信号に高周波信号の高周波信号成分が混入する。混入した高周波信号成分がRF信号のエンベローブ情報に影響を与える。混入した高周波信号成分の影響によりトップホールド部およびボトムホールド部9においてRF信号の正確なエンベローブ情報が得られず、記録特定測定部10で算出される変調度やβ値に誤差が生じる。
【0040】
そこで、一実施形態における情報処理装置20は、RF信号のエンベローブ情報を測定するための再生動作の行う際に、駆動信号に重畳される高周波信号の周波数を高くする。すなわち、OPCの再生動作を行う際に制御部15がVCO4を制御し、VCO4が発振出力する高周波信号の周波数を、通常再生動作の際にVCO4が発振出力する高周波信号の周波数より高くする。例えば、制御部15から供給される制御信号に応じてVCO4の設定が変更されることにより高周波信号の周波数が高く変更される。
【0041】
周波数が高くされた高周波信号がVCO4から発振出力され、レーザ駆動回路3に供給される。レーザ駆動回路3は、周波数が高くされた高周波信号を駆動信号に重畳する。この駆動信号が光学ピックアップ2内のレーザ光源に供給されることでレーザ光源が駆動し、レーザ光源からレーザ光が出射される。
【0042】
レーザ光源から出射されたレーザ光が光ディスク1のOPCエリアに照射され、その反射光が電気信号へと変換されRF信号が生成される。生成されたRF信号がトップホールド部およびボトムホールド部9に供給される。上述したように駆動信号に重畳される高周波信号の周波数は、通常再生動作の際に高周波信号に対して高い周波数とされている。このため、トップホールド部およびボトムホールド部9が備える1次のCRアナログフィルタによっても高周波信号成分を除去でき、RF信号への高周波信号成分の混入を防ぐことができる。
【0043】
RF信号に対する高周波信号成分の混入を防ぐことができるため、トップホールド部およびボトムホールド部9がRF信号の正確なエンベローブ情報を測定できる。したがって、測定されたエンベローブ情報に基づいて記録特性測定部10が算出する変調度等の測定値も正確になる。
【0044】
2.OPCの処理
図2は、情報処理装置20において、OPCを行う際に実行される処理の流れを示すフローチャートである。なお、以下の処理は、光ディスク1のOPCエリアに試し書き用のデータが記録され、OPCエリアに記録されたデータを再生する前になされる処理である。
【0045】
ステップS1では、制御部15によりVCO4が制御され、駆動信号に重畳される高周波信号の周波数(以下、適宜、重畳周波数と称する)が、通常再生動作の際の重畳周波数frから重畳周波数fmへ変更される。重畳周波数fmは、RF信号のエンベローブ情報の測定や、エンベローブ情報を使用した変調度、β値等の測定に適した周波数となるように適切に設定される。例えば、トップホールド部およびボトムホールド部9が等価的に有する1次のCRアナログフィルタの高域遮断周波数fcを基準にして十分高い周波数とされる。好ましくは、重畳周波数fmは、高域遮断周波数fcの2倍から4倍程度とされる。
【0046】
例えば、1次のCRアナログフィルタの高域遮断周波数が130MHzである場合に、重畳周波数fmは500MHz付近(130MHzの4倍程度)とされる。なお、光学ピックアップ2とトップホールド部およびボトムホールド部9との間の伝送損失特性を把握できる場合は、この伝送損失特性の値を元に変更する重畳周波数を決定してもよい。重畳周波数の変更がなされると、処理がステップS2に進む。
【0047】
ステップS2では、制御部15によりサーボ装置12が制御され、スレッドモータ14が駆動する。スレッドモータ14が駆動することにより、光ディスク1の測定対象のアドレス(OPCエリア)に対してレーザ光を照射する位置に光学ピックアップ2が移動する。
【0048】
そして、VCO4からは重畳周波数fmである高周波信号が発振出力され、重畳周波数fmである高周波信号がレーザ駆動回路3に対して供給される。レーザ駆動回路3において、重畳周波数fmである高周波信号が駆動信号に対して重畳される。重畳周波数fmである高周波信号が重畳された駆動信号がレーザ駆動回路3からレーザ光源に供給される。駆動信号に応じてレーザ光源からレーザ光が出射し、OPCエリアに対してレーザ光が照射される。
【0049】
OPCエリアに照射されたレーザ光の反射光が電気信号へと変換されてRF信号が再生される。RF信号がトップホールド部およびボトムホールド部9に供給される。トップホールド部およびボトムホールド部9では、1次のCRアナログフィルタを使用したフィルタ処理によりRF信号に含まれる高周波信号成分が除去される。上述したように、重畳周波数fmは、1次のCRアナログフィルタの高域遮断周波数に対して十分高い周波数とされている。したがって、1次のCRアナログフィルタによって高周波信号成分を除去でき、RF信号に対する高周波信号成分の混入を防ぐことができる。
【0050】
トップホールド部およびボトムホールド部9においてRF信号のエンベローブ情報が検出され、例えば、RF信号の振幅のトップ(ピーク)およびボトムがそれぞれ検出される。上述したフィルタ処理により、RF信号に対する高周波信号成分の混入を防ぐことができるため、RF信号のエンベローブ情報をトップホールド部およびボトムホールド部9が正確に測定できる。トップホールド部およびボトムホールド部9において検出されたエンベローブ情報が記録特性測定部10に対して供給される。そして、処理がステップS3に進む。
【0051】
ステップS3では、記録特性測定部10において、トップホールド部およびボトムホールド部9から供給されるエンベローブ情報を使用した所定の演算が実行される。所定の演算が実行されることにより変調度等の測定値が算出される。RF信号のエンベローブ情報を正確に測定できるため、エンベローブ情報を使用した演算により測定される変調度等の測定値も正確となる。記録特性測定部10で測定された測定値が制御部15に対して供給される。
【0052】
制御部15は、測定値に応じてレーザ光の記録パワーを最適化する制御信号を生成し、この制御信号がAPC5に供給される。APC5が制御信号に基づいてレーザ駆動回路3を駆動する。このようにレーザ光の記録パワーが最適化され、OPCが終了する。そして、処理がステップS4に進む。
【0053】
ステップS4では、OPCが終了したことから、重畳周波数fmを通常再生動作の重畳周波数frへと変更する。例えば、制御部15がVCO4の設定を変更する制御を実行することにより、重畳周波数が重畳周波数fmから重畳周波数frへと変更される。重畳周波数frは、RF信号に対して通常再生処理がなされる系(イコライザ6、デコーダ7、エラー訂正部8等)に適した値とされ、例えば、300MHz付近とされる。なお、上述の処理において、光学ピックアップ2がOPCエリアに対してレーザ光を照射する位置に移動された後に、重畳周波数を高くする処理がなれさるようにしてもよい。
【0054】
3.効果の説明
次に、図3、図4、図5を参照して効果の一例を説明する。図3は、光学ピックアップ2からトップホールド部およびボトムホールド部9に対して出力される理想的なRF信号を模式的に示したものである。
【0055】
図3に示したRF信号は、光ディスク1から光学ピックアップ2によって読みだされた情報が例えば電流に変換されているものである。図3中のIa、Ibは、RF信号のエンベローブ情報である。RF信号のエンベローブ情報は、トップホールド部およびボトムホールド部9で測定される。
【0056】
記録特定測定部10は、トップホールド部およびボトムホールド部9で測定されたエンベローブ情報を使用して演算を行い、変調度やβ値、RF振幅値を算出する。例えば、変調度Mについては、例えば、以下の式(1)で算出される。
M=(Ia−Ib)/Ia・・・(1)
【0057】
また、β値は、一般にDC成分を含まないRF信号に対して定義されるが、便宜上IaおよびIbを用いると以下の式(2)で定義される。
β=(Ia+Ib)/(Ia−Ib)・・・(2)
【0058】
また、RF信号の振幅値は、一般にDC成分を含む場合と含まない場合のそれぞれで定義されるが、便宜上IaおよびIbを用いると以下の式(3)で定義される。
RF振幅値=(Ia−Ib)・・・(3)
【0059】
図4を参照して、OPCの再生動作の際に重畳周波数を高くする処理がなされていない場合について説明する。重畳周波数を高くする処理がなされていないため、トップホールド部およびボトムホールド部9が備える1次アナログCRフィルタにより高周波信号成分を除去できず、RF信号に対して高周波信号成分が混入する。図4は、高周波信号成分が混入したRF信号を模式的に示したものである。
【0060】
図4に示すように、RF信号に対して高周波信号成分が混入することで、RF信号のエンベローブ情報が高周波信号成分に起因する誤差を含むIa’およびIb’となる。したがって、Ia’およびIb’を使用して上述の式(1)による変調度Mを計算すると、正確な変調度Mを得ることができない。式(2)や式(3)を使用してβ値、RF振幅値を測定する場合も同様であり、正確なβ値やRF振幅値を得ることができない。
【0061】
図5を参照して、OPCの再生動作の際に重畳周波数を高くする処理がなされた場合について説明する。RF信号のエンベローブ情報や変調度等の測定のために変更された重畳周波数は、トップホールド部およびボトムホールド部9が備える1次のCRアナログフィルタの高域遮断周波数より十分高い周波数に設定される。このため、1次のCRアナログフィルタによっても十分、高周波信号成分を抑圧することができる。
【0062】
図5は、高周波信号成分が抑圧されたRF信号を模式的に示したものである。図5に示すように、フィルタ処理により高周波信号成分が除去され、高周波信号成分に起因する誤差Ia’およびIb’が抑圧されている。高周波信号成分が抑圧されることで、式(1)を使用して得られる変調度Mを理想的なRF信号における変調度Mに近づけることができる。β値やRF振幅値についても同様であり、β値やRF振幅値を理想的なRF信号におけるβ値やRF振幅値に近づけることができる。なお、上述したように高周波信号の周波数を300MHz付近から500MHz付近に変更した場合に、レーザ光のノイズ特性であるRIN値は若干上昇する。変調度系の測定で有意に影響するのはディスクが持っているノイズ、面内の特性変動等となる。RINは白色ノイズで安定しているので、例えば記録信号のないエリアでトップおよびボトムホールド値への影響を測定しておき、本来の測定の際に差し引くことで容易に抑圧できるので大きな影響は与えない。
【0063】
このように、RF信号の振幅情報を測定するための再生動作を行う際の重畳周波数を、通常再生時の重畳周波数より高くすることで、RF信号に混入する高周波信号成分の影響を低減できる。重畳周波数を変更するだけなので、トップホールド部およびボトムホールド部9等の測定系に高次のFIRフィルタを用いる必要が無い。したがって、装置の複雑化を防ぎコスト面でも有利となる。
【0064】
<変形例>
以上、一実施形態について具体的に説明したが、情報処理装置の構成、処理等において各種の変形が可能であることは言うまでもない。以下、変形例について説明する。
【0065】
上述した一実施形態では、RF信号のエンベローブ情報の測定や、エンベローブ情報を使用した変調度やβ値、RF振幅値の測定がOPCの処理で実行されるものとしたが、他の処理において実行されてもよい。例えば、光学収差を補正するための処理において、RF信号のエンベローブ情報の測定や、エンベローブ情報を使用した変調度やβ値、RF振幅値の測定がなされてもよい。
【0066】
上述した一実施形態では、情報処理装置の一例として光ディスクに対して記録および再生機能を有する装置として説明したが、再生機能のみを有する装置や、ディスクドライブ装置としても構成できる。例えば、ROM(Read Only Memory)ディスクを再生する再生装置(プレーヤ)において、光学収差を補正するためにRF信号のエンベローブ情報の測定がなされ、測定されたエンベローブ情報を使用して変調度やβ値、RF振幅値が測定される。光学収差を補正するためのRF信号を得る再生動作の際に、重畳周波数を通常再生動作の際の重畳周波数より高く変更する処理がなされてもよい。
【0067】
上述した一実施形態におけるOPCは、記録処理の前に行われるものとして説明したがこれに限られない。例えば、記録処理を行いながら間欠的にOPCが実行されてもよい(ランニングキャリブレーション)。すなわち、記録信号の一部を記録した後に一旦記録処理を停止し、既に記録した信号を再生してOPCを実行し、OPCが終了した後に再度記録処理が行われる。このように実行されるOPCの再生動作の際に、重畳周波数を通常再生動作の際の重畳周波数より高く変更する処理がなされてもよい。OPCは、記録処理の前および記録処理中の少なくとも一方において実行されればよい。
【0068】
上述した一実施形態で示した高域遮断周波数や重畳周波数などの数値は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、異なる波長を有するレーザ光毎に通常再生動作の際の重畳周波数や、RF信号の振幅情報を測定するための再生動作の際の重畳周波数が適切に設定される。
【0069】
上述した一実施形態では、変調度、β値、RF振幅値を測定するものとしたが、これに限られない。RF信号の振幅情報を使用して得られる他の測定値を測定するときに重畳周波数が通常再生動作の際の重畳周波数より高く変更されても良い。
【0070】
上述した一実施形態および変形例において、光学ピックアップ2からトップホールド部およびボトムホールド部9に対して供給されるRF信号が、1倍速に対してN倍速(ただし、N>1)の再生速度で再生(倍速再生)された信号とされてもよい。例えば、4倍速で再生されたRF信号の最高周波数は、変更前の重畳周波数(通常再生動作の重畳周波数)とより接近するため、1次のCRアナログフィルタにより高周波信号成分を厳密に除去することが困難となる。本願では、重畳周波数を通常再生動作の際の重畳周波数より高く変更するため1次のCRアナログフィルタによるフィルタ処理により高周波信号成分を除去できる。このように、RF信号が倍速再生された信号でも同様の効果を得ることができる。
【0071】
一実施形態および変形例における情報処理装置の構成や作用は、情報処理装置のほか、情報処理方法やプログラム、プログラムを記録した記録媒体としても実現することができる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・・光ディスク
2・・・・光学ピックアップ
3・・・・レーザ駆動回路
4・・・・VCO
9・・・・トップホールド部およびボトムホールド部
10・・・記録特性測定部
15・・・制御部
20・・・情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体に対して照射することにより再生信号を得る再生部と、
前記レーザ光源を駆動する駆動信号に対して、第1の高周波信号と前記第1の高周波信号より高い周波数とされる第2の高周波信号のいずれか一方を重畳する高周波信号重畳部とを備え、
前記高周波信号重畳部は、第1の再生動作を行う際に、前記駆動信号に対して前記第1の高周波信号を重畳し、前記再生信号の振幅情報を測定するための第2の再生動作を行う際に、前記駆動信号に対して前記第2の高周波信号を重畳する情報処理装置。
【請求項2】
前記記録媒体に対して前記レーザ光を照射することにより信号を記録する記録部を備え、
前記再生信号の振幅情報の測定は、記録時における前記レーザ光の記録パワーを最適化するためになされる請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記記録部による記録前および記録中の少なくとも一方において、前記再生信号の振幅情報を測定する請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記再生信号は、N倍速(ただし、N>1)の再生速度で再生された信号である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1の再生動作により再生された再生信号が第1のフィルタに供給され、前記第2の再生動作により再生された再生信号が第2のフィルタに供給され、前記第1のフィルタの高域遮断特性が前記第2のフィルタの高域遮断特性より急峻とされる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第2の高周波信号の周波数は、前記第2のフィルタの高域遮断周波数の2倍から4倍とされる請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1のフィルタがディジタルフィルタであり、前記第2のフィルタがアナログフィルタである請求項5または6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体に対して照射することにより再生信号を得る再生ステップと、
前記レーザ光源を駆動する駆動信号に対して、第1の高周波信号と前記第1の高周波信号より高い周波数とされる第2の高周波信号のいずれか一方を重畳する高周波信号重畳ステップとを有し、
前記高周波信号重畳ステップは、第1の再生動作を行う際に、前記駆動信号に対して前記第1の高周波信号を重畳し、前記再生信号の振幅情報を測定するための第2の再生動作を行う際に、前記駆動信号に対して前記第2の高周波信号を重畳する情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−48801(P2012−48801A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192789(P2010−192789)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】