説明

情報記録装置

【課題】車両情報が流通していない期間においてもダイアグ情報を記録することができるとともに、レコード全長を短縮することができる車両情報記録装置を、提供する。
【解決手段】CANドライバ37は、CAN上に送出された車両情報を受信する。ダイアグ情報取得モジュール39は、ダイアグレコードECU1自体の動作が正常であるかどうかを監視してダイアグ情報を生成する。時刻情報作成モジュール35は、時刻情報Aを毎秒生成するとともに、当該時刻情報Aの生成タイミングからの時間差を1/100秒単位で表す時刻
情報Bを生成する。ダイアグレコードモジュール44は、時刻情報作成モジュール35が時刻情報Aを生成する毎に、当該時刻情報A及びその時点で生成されたダイアグ情報を含む第1種のレコードをメモリマネージャ34に渡し、当該車両情報及びその時点で生成された時刻情報Bを含む第2種のレコードをメモリマネージャ34に渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ネットワークを通じて受信した各種情報を記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車等の車両においては、電子部品のユニット化が進んでおり、各電子部品を夫々制御するためのECU(Electronic Control Unit)や、各ECUに入力される状態
情報(例えば、加速度、スロットル開度、排気温度、O2濃度、各種スイッチ類の操作内
容、等)を検出するセンサや、各ECUからの制御情報に従って電子制御部品を駆動するアクチュエータ等が、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを通じ
て、相互に通信可能に接続された構成が採用されることが多い。このようなECUの一つとして、データ記録装置がある。
【0003】
データ記録装置は、車載ネットワーク上を流れている上記状態情報及び制御情報、並びに、各ECU自身による異常診断の結果情報(ダイアグコード等のダイアグ情報)(以下、これらの情報を「車両情報」と総称する)を傍受して所定の不揮発性記憶媒体に記録するECUである。このデータ記録装置によって不揮発性記憶媒体に記録された車両情報が、車両の点検・修理時において、車両外の検査装置(コンピュータ)によって読み出され、各センサ自体や機械部品の故障や、各ECUの異常の有無が診断されたり、故障原因が解析されたりするのである。
【0004】
不揮発性記録媒体に記録する車両情報には、異常診断や原因解析を行うための情報として、車両情報の発生順序やタイミングを知るために、車両情報の発生時刻を対応させて記録させておく必要がある。
【0005】
また、上記した診断が適切に行われるには、データ記録装置によって不揮発性記憶媒体に記録された車両情報が、車載ネットワーク上を流通していた車両情報と同じものであるとの保証がなければならない。即ち、データ記録装置自体が正常に動作していたことが保証されなければならない。そのためには、データ記録装置自体に、自ECUの動作が正常であるか否かを検知するダイアグノーシス機能を持たせ、自ECUについてのダイアグ情報(ダイアグノーシス機能によって検知された自ECUの動作が正常であるか否かを示す情報)を、車両情報に紐付けて不揮発性記憶媒体に記憶させれば良い。
【0006】
図14は、時刻情報、車両情報及びダイアグ情報を記載するレコードのフォーマット図である。図14において、「CANID」とは、車載ネットワークがCANである場合において車両情報を他から識別するための識別情報であり、「時刻情報A(日時分秒)」は、車両情報及びダイアグ情報が得られた時刻を表す日時分秒を示す情報であり、「時刻情報B(1/100秒)」とは、上記時刻を表す1秒未満の端数を1/100秒単位で表す値(0/100〜99/100)であり、「データ」とは上記車両情報であり、「SUM」とはチェックサム値である。
【0007】
また、図15は、かかるレコードが複数不揮発性記憶媒体に蓄積された状態を概念的に示す概念図である。図15において、“OK”及び“NG”は「ダイアグ情報」の値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−213393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、記録を行う全てのレコードに、詳細な時刻情報(例えば、時刻情報A[日時分秒]と時刻情報B[1/100秒]の時刻情報の両方)を記録するように構成すると、1つのレコードのデータ量が多くなってしまい、不揮発性記憶媒体が簡単にオーバーフローしてしまうという問題がある。
【0010】
また、上記のようなレコードを、車両情報を受信した場合に生成して蓄積するように構成した場合で、例えば、データ記録装置自体に異常が発生して車両情報の受信処理が正常に行われないようになった場合には、レコードが生成されてしなくなってしまう。
【0011】
すなわち、データ記録装置にダイアグノーシス機能を持たせても、その診断結果がレコードとして記録されないという現象が発生してしまう可能性がある。
【0012】
そこで、本発明は、ネットワーク上を流通する記録対象情報を時刻情報も含めて記録する場合に、記録する際の1レコードのデータ量を少なくすることができる情報記録装置の提供を、課題とする。
【0013】
また、本発明のその他の課題(追加的な課題)は、装置自体に異常が発生したような場合でも、記録されたレコードを解析することで、その状態(装置自体に異常が発生してしまったことから、車両情報の記録が行われなくなってしまっている状態)を把握することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本案による情報記録装置は、各種ECUや各種センサからネットワークへ送出されたデータのうち所定の記録対象情報を記録する情報記録装置であって、前記ネットワークから前記記録対象情報を受信する通信手段と、絶対時刻情報と、当該絶対時刻情報との差分時間を当該絶対時刻情報よりも少ないデータ量で表す相対時刻情報を生成する時刻情報生成手段と、所定時間毎に、現在の前記絶対時刻情報を含む第1の記録データを生成し、前記通信手段が前記記録対象情報を受信する毎に、当該記録対象情報及び現在の前記相対時刻情報を含む第2の記録データを生成する記録データ生成手段と、前記記録データ生成手段が生成した第1の記録データと第2の記録データとを、これら記録データが生成された順に並ぶように記録媒体に記録する記録処理手段とを、備えることを特徴とする。
【0015】
このように構成されると、ネットワーク上から受信された記録対象情報を記録する場合において、当該情報を記録する第2の記録データには絶対時刻情報が記録されないので、記録データの全長を短くすることができる。
【0016】
絶対時刻情報の単位と相対時刻情報の単位とは、前者が日時分秒であって後者がそれより小さい単位であっても良いし、前者が日時分であって後者が秒であっても良い。また、絶対時刻情報生成の位相は、絶対時刻情の単位が示す時刻丁度であっても良いし、丁度の時刻から一定時間ずれていても良い。
【0017】
ネットワークは、車載ネットワークであっても良いし、その他の機械制御のためのネットワークであっても良い。前者の場合、CANであっても良いし、その他の規格による車載
ネットワークであっても良い。
【発明の効果】
【0018】
以上のように構成された本案によると、ネットワーク上を流通する記録対象情報を記録
媒体に記録するに際して、記録対象情報を記載するレコードのデータ量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】データ記録装置を含む車載ネットワークシステムの概略構成を示すブロック図
【図2】データ記録装置のマイクロコンピュータによって実行される各種プログラム及びRAM上の各種情報を示すソフトウェア構成図
【図3】各プログラムによるデータ処理の流れを示すデータフロー図
【図4】CANデータのフォーマット図
【図5】車両情報を格納したCANデータレコードのフォーマット図
【図6】ダイアグ情報を格納した時刻データレコードのフォーマット図
【図7】時刻データレコードの変形例のフォーマット図
【図8】正常時におけるレコード蓄積用バッファ及び記憶素子に蓄積されたレコード群のフォーマット図
【図9】異常時におけるレコード蓄積用バッファ及び記憶素子に蓄積されたレコード群のフォーマット図
【図10】CAN通信制御部の記録データ生成部への転送処理を示すフローチャート
【図11】記録データ生成部の処理を示すフローチャート
【図12】メモリマネージャの書き込みバッファへの転送処理を示すフローチャート
【図13】メモリマネージャの記憶装置制御部への転送処理を示すフローチャート
【図14】車両情報とダイアグ情報とを同一レコードに書き込んだ場合におけるレコードのフォーマット図
【図15】車両情報とダイアグ情報とを同一レコードに書き込んだ場合におけるデータファイルのデータ構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、この発明を実施するための形態を例示的に説明する。以下に示す実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
図1は、本実施形態によるデータ記憶装置(情報記憶装置に相当)を含む車載ネットワークシステムの概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、車両の各電子部品(アクチュエータ、メータ等)を夫々制御するための各種ECU(Electric Control Unit)2や、車両の状態を検出するための各種センサ3は、車載ネットワークの一種である
CAN(Controller Area Network)によって相互に通信可能に接続されている。ここに
、各種ECU2には、エンジン制御ECU、ABS(Antilock Brake System)ECU、
等が含まれる。また、各種センサには、加速度センサ、排気温センサ、O2センサ、各種
スイッチやペダル類が、含まれる。これら各種ECU2及び各種センサ3は、夫々、他のECU2宛のデータを所定フォーマットのフレーム(図4)に格納して、CANへ送出する。このようにしてCANへ送出されたフレーム(以下、「CANデータ」という)は、これを必要とするECU2によって取り込まれて、当該ECU2による電子部品の制御に用いられる。
【0022】
データ記憶装置1は、このようにしてCAN上を流通しているCANデータのうち、車両情報(制御情報及び状態情報)を含むものを傍受して、後日における故障検査に備えて記憶素子17に記憶するためのECUであるので、他のECU2と同様にCANに接続されている。ここで、CANは車載ネットワークの一種であるが、ECU間を如何なる車載ネットワークを通じて接続するかは、必要とされるデータ帯域やコストに依る。従って、他の種類の車載ネットワーク(例えば、LIN[Local Interconnect Network]、FlexRay[ダイムラー社の登録商標])に接続されているECUが存在する場合には、デ
ータ記憶装置1は、当該他の種類の車載ネットワークにも、接続されることが望ましい。
【0023】
データ記憶装置1は、CANとのインタフェースをなすCANトランシーバ16、CANデータに対する処理を実行するマイクロコンピュータ14及び当該マイクロコンピュータ14に接続された不揮発性記憶装置15の他、電源(バッテリー)4からの電力を降圧してマイクロコンピュータや不揮発性記憶装置15に供給する電源回路12を内蔵している。なお、不揮発性記憶装置15は、不揮発性記憶素子によって記憶領域を構成した記憶素子を用いることにより、電源が断たれてもデータを保持可能にしたもののみならず、電源が断たれても揮発性メモリ(RAM)に記憶保持用の電力を供給してデータを保持するバックアップRAMとしてもよい。また、不揮発性記憶装置15は、マイクロコンピュータ14に内蔵される構成を採っても良い。
【0024】
CANトランシーバ16は、CANの物理層を終端する装置であり、CAN上で2線式作動電圧方式で変調されているCANデータを、H/Lの二値信号に変換して、マイクロコンピュータ14に伝達する。
【0025】
マイクロコンピュータ14は、ハードウェア構成として、プログラムを実行する図示せぬプロセッサの他、RAM21及びROM22を、有している。また、入力情報監視部23は、イグニッションスイッチ5から他のECUに入力されるイグニッション信号の状態(ON/OFF)を監視し、監視結果をプロセッサに入力する機能である。また、電源電圧監視部24は、プロセッサがウェイクアップ状態にある間に電源(バッテリー)4の電圧を監視し、監視結果をプロセッサに入力する機能である。これら各機能は、プログラムを実行することによってプロセッサが実現する機能である。
【0026】
なお、データ記録装置1は、イグニッションスイッチやアクセサリスイッチを介さずに直接バッテリに接続されているので、イグニッションスイッチがOFFの間も電源が供給されている。これは、主として、RAM21のデータを保持するためである。そして、イグニッションスイッチがONである間のみRAM21へのデータの記録処理が行われ、イグニッションスイッチがOFFである間はスタンバイ状態(省電力モード)となる。但し、イグニッションスイッチがOFFである間もRAM21へのデータ記録がなされるように、改変されても良い。
【0027】
ROM22は、プロセッサが読み出して実行する各種プログラムを格納している。
【0028】
RAM21(揮発性メモリに相当)は、プロセッサが上記各種プログラムに従った処理を実行することによって各種バッファを構築する作業領域である。
【0029】
記憶素子17(不揮発性メモリに相当)は、不揮発性記憶素子によって記憶領域が構成されている。
【0030】
図2は、ROM22に格納されたプログラムをプロセッサが実行することによって実現される各機能を示すソフトウェア構成図である。図2に示すように、プロセッサによって実現される機能には、上述した各機能23,24の他、ECUシステム管理部31、CAN通信制御部32、記録データ生成部33及びメモリマネージャ34に、大別される。
【0031】
ECUシステム管理部31は、データ記憶装置1を構成する各回路を制御する機能であって、時刻情報作成部35及び異常検出部36を支配下に有している。
【0032】
時刻情報作成部35は、カウントアップしていくことで現在時刻を管理するソフトウェアタイマであり、現在時刻における毎秒丁度からの時間差を1/100秒の単位(0/1
00秒〜99/100秒)で示す時刻情報B(相対時刻情報)を、1/100秒毎に生成するとともに、時刻情報Bがオーバーフローするタイミング(1秒毎)で、現在時刻を日時分秒の単位(所定単位)で示す時刻情報A(絶対時刻情報)を生成する。以下において、時刻情報Aのデータ量は、時刻情報Bのデータ量よりも多いことを前提に説明するが、必ずしもこのような関係に限定されるものでは無い。時刻情報作成部35は、時刻情報Aを作成すると、直ちに当該時刻情報Aを記録データ生成部33へ送る。また、時刻情報作成部35は、記録データ生成部33から要求があると、時刻情報Bを記録データ生成部33へ送る(時刻情報生成手段に相当)。
【0033】
異常検出部36は、データ記録装置1の自己診断を実行し、診断結果をダイアグ情報として記録データ生成部33に通知する機能である。例えば、異常検出部36は、所定時間以上CAN通信制御部32から記録データ生成部33に対してデータの出力がない場合に、CAN通信制御部32が異常であると判断する。また、異常検出部36は、各種バッファの書込み及び読出しのチェックを行い、異常を検出する(異常検出手段に相当)。
【0034】
また、ECUシステム管理部31は、マイクロコンピュータ14全体のウェイクアップ状態とスリープ状態との間での遷移を管理し、入力情報監視部23の監視結果がイグニッション信号のOFFであれば、他のプログラムによる必要な処理が完了した後に、マイクロコンピュータ14全体をスリープ状態に遷移させ、他方、スリープ状態にあっても入力情報監視部23の監視結果をチェックし、それがイグニッション信号のONを示すならば、マイクロコンピュータ14全体をウェイクアップ状態に遷移させる。
【0035】
なお、時刻情報作成部35は、スリープ状態にあるときもタイマをカウントアップする処理を行うことで、スリープ状態にあるときも現在時刻の管理を継続して行う。
【0036】
CAN通信制御部32は、CANプロトロコルの論理層を終端し、CANドライバ27を用いて、CANトランシーバ18から伝達されたCANデータに対する処理を、実行する。
【0037】
記録データ生成部33は、CAN通信制御部32から渡された車両情報、異常検出部36から渡されたダイアグ情報、及び、時刻情報作成部35から渡された時刻情報A、Bを、所定のフォーマットにまとめて、メモリマネージャ34に渡す(記録データ生成手段に相当)。
【0038】
メモリマネージャ34は、記憶装置制御部42を用いて記憶素子17にアクセスし、データの書き込みを行う(記憶処理手段に相当)。
【0039】
以下、図3のデータフロー図、図5〜図9のフォーマット図、図10〜図13のフローチャートを参照して、上述した各機能による各データに対する具体的処理内容を説明する。なお、図3において、書込みバッファ49内の書込みデータや読出しバッファ内の読出しデータは、複数個分のレコードデータがまとめられたものである。また、図5〜図9のフォーマット図は、フォーマットの一例を示すものであり、フォーマットの内容は改変してもよい。
【0040】
先ず、図4の概略フォーマット図に示すように、CANデータは、CANIDを格納する「CANID」フィールド、流通対象データを格納する「データ」フィールド、当該「データ」フィールドのバイト長が記述される「DLC」フィールド、CANデータの発行時刻が記述される「タイムスタンプ」フィールドを、有している。
【0041】
そして、CAN通信制御部32は、CANドライバ37を用いて、CANトランシーバ
18から伝達されたCANデータを、随時、受信バッファ47に格納する。他方、CAN通信制御部32は、図10に示すように、定期的に、受信バッファ47にCANデータが格納されているかどうかをチェックし(S001)、受信バッファにCANデータがある場合に限り、受信バッファ47内のCANデータを、記録データ生成部33に転送する(S002)。
【0042】
記録データ生成部33は、CAN通信制御部32から転送されたCANデータを受信する毎、及び、時刻情報作成部35から時刻情報Aを受信する毎に、図11に示す処理を割込スタートする。そして、スタート後最初のS101において、記録データ生成部33は、CANデータを受信したのか時刻情報Aを受信したのかを、チェックする。
【0043】
そして、時刻情報作成部35から時刻情報Aを受信した場合には、記録データ生成部33は、S102において、異常検出部36から、ダイアグ情報を取得する。
【0044】
次のS103では、記録データ生成部33は、時刻情報作成部35から取得した時刻情報Aと異常検出部36から取得したダイアグ情報とから、記録用データを作成する。当該記録用データは、図5のフォーマット図に示すように、CANIDが格納される「識別子(CANID)」フィールド、時刻情報Aが格納される「時刻情報」フィールド、ダイアグ情報が格納される「データ(ダイアグ情報)」フィールド、及び、チェックサムの値が格納される「SUM」フィールドからなるレコードである。なお、図6のフォーマット図に示すように、「データ(ダイアグ情報)」フィールドを更に分割し、正常(OK)/異常(NG)を示す「ダイアグ情報」フィールドと空き領域としても良い。この場合、空き領域には、異常種別、異常の要因等の情報を格納するようにしても良い。S103の完了後、記録データ生成部33は、処理をS104へ進める。なお、図5や図6と図14とを見比べると明らかなように、図5や図6に示すフォーマットは図14に示すフォーマットよりもフィールドが少ないため、図5や図6に示すフォーマットのデータ量は図14のものよりも少ない。但し、本願発明の適用にあたっては、フォーマットのデータ量が必ずしもこのような関係になっているものに限定されるものではない。
【0045】
一方、CAN通信制御部32から転送されたCANデータを受信したとS101にて判断した場合には、記録データ作成部33は、S105において、時刻情報作成部35から時刻情報Bを取得する。
【0046】
次のS106では、記録データ作成部33は、CAN通信制御部32から受信したCANデータと時刻情報作成部35から取得した時刻情報Bとから、記録用データを作成する。当該記録用データは、図7のフォーマット図に示すように、CANIDが格納される「識別子(CANID)」フィールド、時刻情報Bが格納される「時刻情報」フィールド、CANデータ中の流通対象データが格納される「データ」フィールド、及び、チェックサムの値が格納される「SUM」フィールドからなるレコードである。S106の完了後、記録データ作成部33は、処理をS104へ進める。なお、図7と図14とを見比べると明らかなように、図7に示すフォーマットは図14に示すフォーマットよりもフィールドが少ないため、図7に示すフォーマットのデータ量は図14のものよりも少なくなっている。また、図7に示すフォーマットのデータ量は、図5や図6に示すフォーマットのデータ量と同等である。但し、本願発明の適用にあたっては、フォーマットのデータ量が必ずしもこのような関係になっているものに限定されるものではない。
【0047】
S104では、記録データ作成部33は、S103又はS106にて作成した記録用データを、メモリマネージャ34に転送して、レコード蓄積用バッファ48に格納させる。
【0048】
メモリマネージャ34は、記録データ生成部40から記録用データの転送を受ける度に
、受け取った記録用データを、N個のレコードをリング形式で蓄積できるレコード蓄積用バッファ48に、サイクリックな順序で格納(上書き)していく。
【0049】
また、メモリマネージャ34は、図12に示すように、定期的に、所定量、即ち、記憶装置制御部42が一度の書込処理で記憶素子17への書込みが行える最大データ量以上の記録用データが、レコード蓄積用バッファ48に格納されているかどうかをチェックし(S201)、上記所定量以上の記録用データが格納されている場合のみ、上記所定量分の記録用データを、書込みバッファ49に転送する(S202)。
【0050】
また、メモリマネージャ34は、図13に示すように、定期的に、書込みバッファ49に記録用データが格納されているかどうかをチェックし(S301)、書込みバッファ49に記録用データが格納されている場合のみ、書込みバッファ49内に格納されている上記所定量分のデータを、記憶装置制御部42に転送する(S302)。
【0051】
記憶装置制御部42は、メモリマネージャ34から転送されてきた記録用データを、転送順(即ち、記録データ生成部33にて生成された順)に、記憶素子17に蓄積する。
【0052】
以上に説明した本実施形態によると、異常検出部36において異常が検出されていない正常時においては、記憶素子17に蓄積されるデータの状態は、論理的に、図8に示したものとなる。図8における各行は、個々の記録用データを示し、上から下に向かうにつれて、生成タイミングが新しくなっている。そのため、各記録用データの蓄積状態は、CANデータの受信の有無に拘わらず毎秒丁度にS103にて生成された時刻情報A及びダイアグ情報を含む記録用データ同士の間に、当該各記録用データ中の時刻情報Aが夫々示す時刻の間にS104にて生成された、時刻情報B及びCANデータ中の流通対象データを含む幾つかの記録用データが、挿入された形態となっている。また、異常検出部部36において異常が検出された異常時においては、各記録用データの蓄積状態は、図9に示したものとなる。
【0053】
これら図8及び図9と図15とを比較すれば明らかなように、本実施形態によると、CANデータの受信の有無に拘わらず毎秒丁度にデータ記録装置1自体のダイアグ情報が記録されるが、車両情報については、受信の都度独立のレコードに記録されるので、ダイアグ情報と車両情報とを同一レコードに記録する必要がない。
【0054】
また、本実施形態によると、CANデータを格納した各記録用データには、「日時分秒」についての情報は含まれていないが、毎秒丁度からの時間差を示す時刻情報Bが含まれているので、直前に在る時刻情報Aに当該記録用データ中の時刻情報Bを加算することで、当該記録用データが得られた時刻(≒CANデータの発生時刻)を算出することができる。よって、CANデータを格納する記録用データ中に「日時分秒」についての情報を格納する必要がなくなった。加えて、時刻情報A及びダイアグ情報を格納する記録用データには、時刻情報Bを格納する必要がない。
【0055】
なお、時刻情報A及びダイアグ情報を格納する記録用データにおける時刻情報に、時刻情報Bを含むように構成しても良い。
【0056】
以上により、各記録用データのデータ量を短縮することが可能になった。そして、一般に、車載ネットワーク上を流通する車両情報のCANデータの一秒当たりの平均個数は12個を遙かに超える。従って、本実施形態によると、ダイアグ情報をCANデータとは別個独立の記録用データに格納する分だけ従来のものよりも記録用データの総数は増加するものの、トータルのデータ量は従来のものよりも十分に削減されるのである。
【0057】
なお、本実施形態によれば、データ記録装置1自体のダイアグ情報が、その他の記録データ(車両情報)と同じ場所に記録されるので、記録データ(車両情報)の解析が容易であるという点において、望ましいものである。
【0058】
なお、CANは、車両以外の機械制御のためにも用いられており、本発明が前提とした問
題は、車両以外にCANを用いた場合にも生じるし、CAN以外の車載ネットワークを用いた場合にも生じうる。よって、これらの場合に、本実施形態が適用されても良い。また、上記実施形態では、イグニッションスイッチ5などの状態に応じて動作が変更されるように構成されていたが、車両の情報を記録すべき状態であるか否かを検知するにあたっては必ずしもこのようなスイッチ類の状態を契機とするものに限定されるものではない。例えば、電気自動車や燃料電池自動車など、駐車中においても充電等の何らかの動作が行われるような車両においては、例えば、車両の制御を統轄するECUからの制御信号に応じてデータの記録の開始や停止が制御されてもよい。その他、本願発明を実現できる範囲内で、データ記録装置1のシステム構成などを適宜改変してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 データ記録装置
14 マイクロコンピュータ
17 記憶素子
21 RAM
22 ROM
23 入力情報監視部
24 電源電圧監視部
32 CAN通信制御部
34 メモリマネージャ
35 時刻情報作成部
36 異常検出部
33 記録データ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種ECUや各種センサからネットワークへ送出されたデータのうち所定の記録対象情報を記録する情報記録装置であって、
前記ネットワークから前記記録対象情報を受信する通信手段と、
絶対時刻情報と、当該絶対時刻情報との差分時間を当該絶対時刻情報よりも少ないデータ量で表す相対時刻情報を生成する時刻情報生成手段と、
所定時間毎に、現在の前記絶対時刻情報を含む第1の記録データを生成し、前記通信手段が前記記録対象情報を受信する毎に、当該記録対象情報及び現在の前記相対時刻情報を含む第2の記録データを生成する記録データ生成手段と、
前記記録データ生成手段が生成した第1の記録データと第2の記録データとを、これら記録データが生成された順に並ぶように記録媒体に記録する記録処理手段と
を備えることを特徴とする情報記録装置。
【請求項2】
各種ECUや各種センサからネットワークへ送出されたデータのうち所定の記録対象情報を記録する情報記録装置であって、
前記ネットワークから前記記録対象情報を受信する通信手段と、
情報記録装置自体の動作が正常であるかどうかを自己診断し、診断結果を表すダイアグ情報を生成する異常検出手段と、
絶対時刻情報と、当該絶対時刻情報との差分時間を当該絶対時刻情報よりも少ないデータ量で表す相対時刻情報を生成する時刻情報生成手段と、
所定時間毎に、現在の前記絶対時刻情報及び前記ダイアグ情報を含む第1の記録データを生成し、前記通信手段が前記記録対象情報を受信する毎に、当該記録対象情報及び現在の前記相対時刻情報を含む第2の記録データを生成する記録データ生成手段と、
前記記録データ生成手段が生成した第1の記録データと第2の記録データとを、これら記録データが生成された順に並ぶように記録媒体に記録する記録処理手段と
を備えることを特徴とする情報記録装置。
【請求項3】
前記記録対象情報に、前記各種ECUからネットワークに送出される、前記各種ECUによる異常診断の結果であるダイアグ情報が含まれている
ことを特徴とする請求項2記載の情報記録装置。
【請求項4】
前記通信手段は、前記ネットワークから前記記録対象情報を受信すると、前記記録対象情報を前記記録データ生成手段に送付し、
前記時刻情報作成手段は、前記絶対時刻情報を、前記所定時間の周期で作成して前記記録データ生成手段に送付し、
前記記録データ生成手段は、前記第1の記録データを、前記時刻情報作成手段から前記絶対時刻情報の送付があったタイミングで生成し、前記第2の記録データを、前記通信手段がから前記記録対象情報の送付があったタイミングで生成する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の情報記録装置。
【請求項5】
前記時刻情報生成手段が前記絶対時刻情報を生成するタイミングは、前記絶対時刻情報における最下位の値に変化が生じるタイミングである
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の情報記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−103911(P2012−103911A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251954(P2010−251954)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】