説明

情報読み取り装置及びこれに用いられるレンズ付き光源

【課題】大出力の発光ダイオードや半導体レーザを用いることなく正確なアドレスの検出を行うことができる情報読み取り装置を提供することにある。
【解決手段】ユーザが手指にて把持可能な形状及びサイズに形成された本体1と、本体1の内部に収納された照明用光源2と、照明用光源2の光出射側に配置された光整形用レンズ3と、手書き媒体101の表面に発光インクをもって所要の配列で印刷されたマーク102の励起光を受光して電子データに変換する2次元撮像素子4と、当該2次元撮像素子4の光入射側に配置されたスリット5及び集光レンズ6とを備えて情報読み取り装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被読み取り対象物に照明光を照射し、被読み取り対象物からの戻り光を検出して照明光の移動軌跡を読み取る情報読み取り装置及びこれに用いられるレンズ付き光源に係り、特に、被読み取り対象物上に照射される照明光の照度分布を均一化するための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のコンピュータの普及及び高性能化に伴い、手書き情報を電子データ化してコンピュータ上で処理する事例が増加しつつある。
【0003】
従来より、手書き情報を電子データ化する手段としては、書類等の被読み取り対象物に表記された手書き情報を画像情報として電子データ化するスキャナや、専用のペンを用いて静電容量式や電磁誘導式などの方式でタブレット上の座標を認識するペンベースコンピュータなどが用いられているが、スキャナは可搬性に欠けるだけでなく、書類等に表記された元々の情報量に対して電子化データの容量が大きくなるので効率が悪いという問題がある。また、ペンベースコンピュータは、その構成上高価かつ大重量であるために大型化することが難しいという問題がある。
【0004】
かかる不都合を解消するための手段として、紙やボードなどの手書き媒体に光学的手段で読み出し可能なアドレス情報(座標情報)を予め付与しておき、このアドレス情報を光源と2次元撮像素子とを備えた情報読み取り装置にて読み取ることにより、情報読み取り装置の先端部に備えられたペン先の移動軌跡を電子データ化する方法も従来より提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図9は従来より知られている手書き媒体の要部平面図、図10は従来より知られている情報読み取り装置の構成図である。図9に示すように、手書き媒体101の表面には、当該表面上の位置情報を示すマーク102が、所定波長の照明光が照射されたときにそれとは異なる所定波長の励起光を発光する発光インクを用いて所要の配列で印刷されている。一方、情報読み取り装置201は、図10に示すように、ユーザが手指にて把持可能な形状及びサイズに形成された本体202と、本体202の先端部に設けられたペン先203と、本体部202内に収納された照明用光源204と、前記マーク102の励起光を受光して電子データに変換する2次元撮像素子205と、変換された電子データを一次蓄えるメモリ207と、図示しないコンピュータとの間で電子データの通信を行う通信インタフェース208と、装置各部を制御するプロセッサ206と、装置各部に電源を供給するバッテリ209とから構成されている。
【0006】
前記照明用光源204としては、手書き媒体101上にペン先203にて表記された手書き情報がノイズとならないように、紫外線領域又は赤外線領域の照明光を出射する発光ダイオード又は半導体レーザが用いられる。また、前記2次元撮像素子205としては、マーク102から励起される紫外線領域又は赤外線領域の励起光を受光可能なCCDカメラやCMOSカメラが用いられる。
【特許文献1】特開2003−256122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、発光ダイオードの光出力は、図11に示すように、光軸方向(0°の方向)に指向性が強く、光軸方向からずれるにしたがって急激に光り出力が低下する。また、半導体レーザの放射パターンは、図12に示すように、光軸方向(0°の方向)のレーザ強度が最も高いガウシアン分布になっている。
【0008】
したがって、照明用光源204として発光ダイオードや半導体レーザを用いた場合、手書き媒体101上に照射される照明光の照度は、照明範囲の中心において高く周辺部において低い分布となり、マーク102の読み取り範囲内において照明光の照度を均一の保とうとすると、図13に示すように照明範囲の中心付近のみを使用せざるを得なくなるので、光エネルギの無駄が多いと共にマーク102の読み取り範囲が狭くなり、正確なアドレスの検出が困難になる。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の不備を解決するためになされたものであり、その目的は、大出力の発光ダイオードや半導体レーザを用いることなく正確なアドレスの検出を行うことができる情報読み取り装置とこれに好適なレンズ付き光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記の課題を解決するため、情報読み取り装置に関しては、外部に向けて照明光を照射する照明用光源と外部からの入射光を受光して電子データに変換する2次元撮像素子とを本体内に備えた情報読み取り装置であって、前記電子データに位置情報を付与するためのマークが発光インクにて印刷された被読み取り対象物に前記照明光を照射し、前記マークからの励起光を前記2次元撮像素子に入射して前記被読み取り対象物上における前記照明光の移動軌跡を電子データ化するものにおいて、前記照明用光源の照明光出射側に、前記被読み取り対象物上における前記照明光の照度分布を均一化するための光整形手段を備えるという構成にした。
【0011】
前記光整形手段としては、端面に複数個の小径の球面が突設されたレンズ又は端面に微細な同心円状の凹凸パターンからなる回折格子が形成されたレンズ若しくは端面に同心円状の輪帯が形成されたレンズを備えることができる。
【0012】
また、前記本体の照明光放射側の端部には、前記被読み取り対象物に情報を手書きするためのペン先を備えることができる。
【0013】
照明用光源の照明光出射側に被読み取り対象物上における照明光の照度分布を均一化するための光整形手段を備えると、大出力の照明用光源を用いなくても被読み取り対象物上における照明光の照度分布の均一化を実現することができるので、光エネルギの無駄を減少することができ、かつ被読み取り対象物からのアドレス検出精度を高めることができる。また、光整形手段として端面に複数個の小径の球面が突設された円柱状のレンズ又は端面に微細な同心円状の凹凸パターンからなる回折格子が形成された円柱状のレンズ若しくは端面に同心円状の輪帯が形成された円柱状のレンズを備えると、被読み取り対象物に対して照明光の光軸を傾けた場合にも、照明光の照射範囲内における照明光の照度分布を均一化することができるので、被読み取り対象物からのアドレス検出を高精度に行うことができる。さらに、本体の照明光放射側の端部にペン先を備えると、実際に被読み取り対象物上に手書き情報を書き込むことができるので、被読み取り対象物に対するペン先の移動軌跡の検出を高精度に行うことができ、信頼性の高い手書き情報の電子データ化を行うことができる。
【0014】
一方、レンズ付き光源に関しては、照明用光源と当該照明用光源の照明光出射側に一体に配置されたレンズとからなるレンズ付き光源において、前記レンズに前記照明光の照度分布を均一化するための球面状の突起群、回折格子又は輪帯を形成するという構成にした。
【0015】
このように、レンズ付き光源のレンズに照明光の照度分布を均一化するための球面状の突起群、回折格子又は輪帯を形成すると、情報読み取り装置に適用した場合に、大出力の照明用光源を用いなくても被読み取り対象物上における照明光の照度分布の均一化を実現することができるので、光エネルギの無駄を減少することができ、かつ被読み取り対象物からのアドレス検出精度を高めることができる。また、情報読み取り装置における光学系の構成を簡略化することができるので、情報読み取り装置の小型軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の情報読み取り装置は、照明用光源の照明光出射側に被読み取り対象物上における照明光の照度分布を均一化するための光整形手段を備えたので、大出力の照明用光源を用いなくても被読み取り対象物上における照明光の照度分布の均一化を実現することができ、光エネルギの無駄の減少とアドレス検出精度の向上とを図ることができる。
【0017】
本発明のレンズ付き光源は、レンズ付き光源のレンズに照明光の照度分布を均一化するための球面状の突起群、回折格子又は輪帯を形成したので、情報読み取り装置に適用した場合に、大出力の照明用光源を用いなくても被読み取り対象物上における照明光の照度分布の均一化を実現することができ、光エネルギの無駄の減少とアドレス検出精度の向上とを図ることができる。また、情報読み取り装置における光学系の構成を簡略化することができ、情報読み取り装置の小型軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る情報読み取り装置の実施形態を図1乃至図6に基づいて説明する。図1は実施形態例に係る情報読み取り装置の構成図、図2は実施形態例に係る光整形用レンズの斜視図、図3は実施形態例に係る光整形用レンズの側面図、図4は実施形態例に係る光整形用レンズの効果を模式的に示す説明図、図5及び図6は実施形態例に係る情報読み取り装置の効果を従来例に係る情報読み取り装置と比較して示すグラフ図である。
【0019】
図1に示すように、実施形態例に係る情報読み取り装置は、ユーザが手指にて把持可能な形状及びサイズに形成された本体1と、本体1の内部に収納された照明用光源2と、照明用光源2の光出射側に配置された光整形用レンズ3と、手書き媒体101の表面に発光インクをもって所要の配列で印刷されたマーク102の励起光を受光して電子データに変換する2次元撮像素子4と、当該2次元撮像素子4の光入射側に配置されたスリット5及び集光レンズ6とを備えて構成されている。なお、図示は省略するが、実施形態例に係る情報読み取り装置には、必要に応じて、変換された電子データを一次蓄えるメモリ、コンピュータとの間で電子データの通信を行う通信インタフェース、装置各部を制御するプロセッサ、装置各部に電源を供給するバッテリ及び手書き媒体101に手書き情報を書き込むペン先も備えられる。
【0020】
照明用光源2としては、マーク102を励起可能でペン先を用いて手書き媒体101に表記された手書き情報に吸収されない赤外線領域又は紫外線領域の特定波長の照明光2aを放射する発光ダイオード又は半導体レーザが用いられる。なお、この照明用光源2としては、レンズ付きのものを用いることもできるし、レンズを備えていないものを用いることもできる。
【0021】
光整形用レンズ3は、図2及び図3に示すように、透光性の材料をもって全体が円柱状に形成されており、照明用光源2と対向する光入射側の面には複数個の小径の球面3aが突設され、それと対向する光出射側の面には1つの大径の球面3bが突設されている。
【0022】
2次元撮像素子4としては、マーク102の励起光2bを受光可能なCCDカメラ又はCMOSカメラが用いられる。
【0023】
スリット5及び集光レンズ6は、各マーク102の励起光2bを選択的に2次元撮像素子4に入射可能な位置に配置される。
【0024】
本例の情報読み取り装置は、ペン先を有しない場合には、本体1の先端部を手書き媒体101の表面に押し当てるか、本体1の先端部を手書き媒体101の表面に接近させて所望の手書き情報を書き込む動作を行い、そのときの本体1の先端部の移動軌跡を2次元撮像素子4で捉えて手書き情報を電子データに変換する。また、ペン先を有する場合には、ペン先を手書き媒体101の表面に押し当てて所望の手書き情報を書き込み、その時のペン先の移動軌跡を2次元撮像素子4で捉えて手書き情報を電子データに変換する。
【0025】
本例の情報読み取り装置は、照明用光源2の光出射側に光整形用レンズ3を有する光整形用レンズ3を配置したので、図4に示すように、光整形用レンズ3の中央部に配置された球面3aを透過した照明光の照射範囲はdとなり、当該球面3aの周囲に配置された球面3aを透過した照明光の照射範囲はb,cとなり、球面3a間を透過した照明光の照射範囲はaとなる。したがって、図5に示すように、球面3aを有する光整形用レンズ3を配置しない場合に比べて、手書き媒体101上における照明光の照射範囲を拡大できると共に、その内部における照明光の照度分布を均一化することができる。よって、光エネルギの無駄を減少できると共に、手書き媒体101からのアドレス検出精度を高めることができる。また、照明用光源2の光出射側に光整形用レンズ3を配置したことから、手書き媒体101に対して情報読み取り装置の本体1(照明光2aの光軸)を傾けた場合にも、図6に示すように、光整形用レンズ3を備えない場合に比べて、照明光2aの照射範囲内における照明光2aの照度分布を均一化することができ、手書き媒体101からのアドレス検出を高精度に行うことができる。
【0026】
なお、前記実施形態例においては、光整形用レンズ3として端面に複数個の小径の球面3aが形成されたものを用いたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、図7に示すように、端面に微細な同心円状の凹凸パターンからなる回折格子3bが形成された円柱状のレンズを備えることもできるし、図8に示すように、端面に同心円状の輪帯3cが形成されたレンズを備えることもできる。
【0027】
光整形用レンズ3として端面に微細な同心円状の凹凸パターンからなる回折格子3bが形成された円柱状のレンズを備えると、図7に示すように、0次回折光の照射範囲はaとなり、±1次回折光の照射範囲はb,cとなる。したがって、光整形用レンズ3を配置しない場合に比べて、手書き媒体101上における照明光の照度分布を均一化することができる。また、光整形用レンズ3として端面に同心円状の輪帯3cが形成された円柱状のレンズを備えると、図8に示すように、光整形用レンズ3の中央部に形成された輪帯3cを透過した照明光の照射範囲はaとなり、その外周に形成された輪帯3cを透過した照明光の照射範囲はbとなり、さらにその外周に形成された輪帯3cを透過した照明光の照射範囲はcとなる。したがって、光整形用レンズ3を配置しない場合に比べて、手書き媒体101上における照明光の照度分布を均一化することができる。
【0028】
また、前記実施形態例においては、照明用光源2と光整形用レンズ3とを独立の別体に構成したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、レンズ付きの照明用光源2のレンズに前記実施形態例にて説明した小径の球面3a又は回折格子3b若しくは輪帯3cを形成して、情報読み出し装置用のレンズ付き光源とすることもできる。このレンズ付き光源を用いると、前記と同様の効果を発揮できるほか、情報読み取り装置における光学系の構成を簡略化することができて、情報読み取り装置の小型軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態例に係る情報読み取り装置の構成図である。
【図2】実施形態例に係る光整形用レンズの斜視図である。
【図3】実施形態例に係る光整形用レンズの側面図である。
【図4】実施形態例に係る光整形用レンズの効果を模式的に示す説明図である。
【図5】実施形態例に係る情報読み取り装置の効果を従来例に係る情報読み取り装置と比較して示すグラフ図である。
【図6】実施形態例に係る情報読み取り装置の効果を従来例に係る情報読み取り装置と比較して示すグラフ図である。
【図7】実施形態例に係る光整形用レンズの他の例を示す説明図である。
【図8】実施形態例に係る光整形用レンズのさらに他の例を示す説明図である。
【図9】従来より知られている手書き媒体の要部平面図である。
【図10】従来より知られている情報読み取り装置の構成図である。
【図11】発光ダイオードの光出力の指向性を示すグラフ図である。
【図12】半導体レーザの放射パターン指向性を示すグラフ図である。
【図13】従来例に係る情報読み取り装置の不都合を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本体
2 照明用光源
2a 照明光
2b 励起光
3 光整形用レンズ
3a 球面
3b 回折格子
3c 輪帯
4 2次元撮像素子
5 スリット
6 集光レンズ
101 手書き媒体
102 マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に向けて照明光を照射する照明用光源と外部からの入射光を受光して電子データに変換する2次元撮像素子とを本体内に備えた情報読み取り装置であって、前記電子データに位置情報を付与するためのマークが発光インクにて印刷された被読み取り対象物に前記照明光を照射し、前記マークからの励起光を前記2次元撮像素子に入射して前記被読み取り対象物上における前記照明光の移動軌跡を電子データ化するものにおいて、前記照明用光源の照明光出射側に、前記被読み取り対象物上における前記照明光の照度分布を均一化するための光整形手段を備えたことを特徴とする情報読み取り装置。
【請求項2】
前記光整形手段として、端面に複数個の小径の球面が突設されたレンズを備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報読み取り装置。
【請求項3】
前記光整形手段として、端面に微細な同心円状の凹凸パターンからなる回折格子が形成されたレンズを備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報読み取り装置。
【請求項4】
前記光整形手段として、端面に同心円状の輪帯が形成されたレンズを備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報読み取り装置。
【請求項5】
前記本体の照明光出射側の端部に、前記被読み取り対象物に情報を手書きするためのペン先を備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報読み取り装置。
【請求項6】
照明用光源と当該照明用光源の照明光出射側に一体に配置されたレンズとからなるレンズ付き光源において、前記レンズに前記照明光の照度分布を均一化するための球面状の突起群、回折格子又は輪帯を形成したことを特徴とするレンズ付き光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−31623(P2006−31623A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213239(P2004−213239)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】