説明

情報通信システムおよび情報通信方法

【課題】中継装置を含む通信網を介して複数の情報通信路を用いて通信を行うシステムにおいて、障害が発生した場合のパケット喪失の軽減と複数経路におけるトラフィックの負荷分散とを両立させる方式を提供する。
【解決手段】送信側の情報通信装置は、定期的に各情報通信路のBERを測定する通信路検査部と、測定されたBERをもとに情報を送出する情報通信路および情報複製の要否を決定する送信制御部とを備える。送信制御部は、複数の情報を送出するときに、異なる情報通信路を用いて情報を送出することにより、複数の情報通信路の間で負荷分散を行う。さらに、送信制御部は、BERが判定基準より高い情報通信路を用いて情報を送出するときに情報を複製し、異なる複数の情報通信路を用いて同じ情報を送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報通信システムおよび情報通信方法に関し、特に送信側と受信側とが複数の情報通信路を用いて接続された情報通信システムおよびそのシステムにおける情報通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信路の障害対策として、情報を複製し、複数の情報通信路を介して受信側の情報通信装置宛に伝送する方式が知られている(例えば特許文献1)。
特許文献1に開示された情報伝送方式は、送信側の情報通信装置と受信側の情報通信装置との間を接続する複数の異なる情報通信路を備える。
送信側の情報通信装置は、送信すべき情報を複数に複製する情報複製手段と、情報複製手段により複製された複数の情報の各々を複数の異なる情報通信路を介して受信側の情報通信装置宛に送出する機能と、を備える。
受信側の情報通信装置は、複数の異なる情報通信路を介して到着した複製された情報のうちの一つを選択的に受信する選択受信手段を備えている。そして、送信側情報通信装置は情報を送信するときに、情報複製手段を用いて情報を複製し、複製された各々の情報を異なる複数の情報通信路を介して受信側情報通信装置宛に送出する。
このような特許文献1の構成によれば、複製された情報のうち一部が失われたとしても受信側情報通信装置に情報を届けることができる。
【0003】
また、複数経路間におけるトラフィックの負荷分散方式が知られている(例えば特許文献2)。
特許文献2に開示された負荷分散方式は、送信側の情報通信装置と受信側の情報通信装置との間を接続する複数の異なる情報通信路と、同時に複数の情報通信路を利用し各々のトラフィック量を調整する手段と、を備えている。
送信側の情報通信装置は、送信すべき情報を複数の異なる情報通信路のうちの一つを介して受信側の情報通信装置宛に送出する。さらに、送信側の情報通信装置は、上記の送信すべき情報とは異なる情報を先の送出に使用されない情報通信路を介して受信側の情報通信装置宛に送出する。このような特許文献2の構成によれば、複数の情報通信路の同時利用を行い、情報通信路の利用効率向上を実現できる。
【0004】
また、BER(Bit Error Rate)が所定の判断基準より高いと判断される場合には送信情報を複製し、異なる周波数(チャンネル)を介して前記複製した送信情報を受信側の情報通信装置宛に伝送する方式が知られている(例えば特許文献3)。
特許文献3では、送信側の情報通信装置と受信側の情報通信装置との間を接続する無線情報通信路を備え、送信側の情報通信装置および受信側の情報通信装置は一定の周期で同時に周波数(チャンネル)を切り替えて通信する。
また、送信側の情報通信装置は、チャンネル毎に各々のBERを検出する手段と、検出されたBERが基準を満たすかどうかを判断する手段と、基準を満たさないチャンネルを使用するときには送信されるべき情報を複製するとともに複数回送信を繰り返す手段と、を備える。
送信側の情報通信装置は、BERが基準を満たさないチャンネルを使うときに同じ情報を複数回送信する。
このような特許文献3の構成によれば、BERが基準を満たさないチャンネルの有効利用を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-69171号公報
【特許文献2】特開2000-216817号公報
【特許文献3】特開2008-219193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の手法にはそれぞれ次のような問題がある。
特許文献1の方式では、複数の情報通信路を介して同じ情報を伝送するため、各々の情報通信路の負荷が大きくなるという問題がある。
また、複数経路間におけるトラフィックの負荷分散方式(特許文献2)では、情報通信路の一部で障害が発生したときでも障害が発生した情報通信路を切り離して縮退運転が可能である。
しかしながら、障害検出には時間が必要である。障害が発生した情報通信路を切り離す前にこの情報通信路を介して送出した情報は失われてしまうという問題がある。
【0007】
特許文献3では、その適用範囲が複数のチャンネルを用いて通信を行う無線情報通信路に限定されている。そのため、送信側の情報通信装置と受信側の情報通信装置とを中継装置を介して繋ぐ通信網を利用する通信システムに対しては、送信側の情報通信装置と受信側の情報通信装置との間の情報通信路のBERを単純に求めることができない。中継装置を介した通信網を利用する情報通信システムには特許文献3を単純に適用することはできず、負荷分散性能と耐障害性能とを両立させることは依然として大きな課題である。
【0008】
本発明の目的は、中継装置を含む複数の情報通信路を用いて通信を行う情報通信システムにおいて、障害が発生した場合におけるパケット消失の軽減と、複数経路におけるトラフィックの負荷分散と、を両立させるシステムおよび情報通信を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の情報通信システムは、複数の中継装置を間に介した複数の情報通信路によって送信装置と受信装置とが接続される情報通信システムであって、前記送信装置は、前記情報通信路のうちいずれを用いて情報を送信するかを決定する送信制御部と、前記情報通信路の各々のBER(Bit Error Rate)を取得する通信路検査部と、を備え、前記送信制御部は、複数の送信するべき情報に対してそれぞれ異なる情報通信路を選択する経路選択部と、前記通信路検査部によって取得された情報通信路のBERを予め設定されたBER判定閾値と対比するBER判定部と、前記経路選択部によって選択された情報通信路のBERが前記BER判定部により前記BER判定閾値よりも高いと判断された場合に、この情報通信路の他に異なる情報通信路を追加で選択する追加経路選択部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の情報通信方法は、複数の中継装置を間に介した複数の情報通信路を有する通信網によって情報を伝送する情報通信方法において、前記情報通信路の各々のBER(Bit Error Rate)を取得し、複数の送信するべき情報に対してそれぞれ異なる情報通信路を選択し、前記取得された情報通信路のBERを予め設定されたBER判定閾値と対比し、前記選択された情報通信路のBERが前記BER判定閾値よりも高い場合に、この情報通信路の他に異なる情報通信路を追加で選択することを特徴とする。
【0011】
このような構成において、BERが高く障害が起こりやすい情報通信路を用いる場合には、パケットを複製するとともに経路を追加で選択する。したがって、障害が発生したときの情報喪失を軽減することができる。
また、BERが低く障害が起こりにくい情報通信路では、情報通信路ごとに異なる情報が送出されるため、情報通信路の間で負荷の分散を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】情報通信システムの通信網の一例を示す図。
【図2】送信装置Aの機能ブロック図。
【図3】中継装置Cの機能ブロック図。
【図4】受信装置Bの機能ブロック図。
【図5】通信路BERを取得する動作手順を示すフローチャート。
【図6】送信装置Aが送信すべき情報を送信する動作手順を示すフローチャート。
【図7】パケットを送信する経路の一例を示す図。
【図8】中継装置Cの動作手順を示すフローチャート。
【図9】受信装置Bの動作手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、情報通信システムの通信網の一例を示す図である。
通信網100は、送信側の情報通信装置である送信装置Aと、受信側の情報通信装置である受信装置Bと、中継装置である中継装置Cから中継装置Hと、装置間を接続するリンクと、を備える。
【0014】
リンクとしては、リンクA→C、リンクC→D、リンクD→B、リンクA→E、リンクE→F、リンクF→B、リンクA→G、リンクG→H、リンクH→Bがある。そして、送信装置Aと受信装置Bとの間には(1)A→C→D→B、(2)A→E→F→B、(3)A→G→H→Bの3つの情報通信路がある。
【0015】
図1中の各リンクに付した数値は、それぞれのリンクのBER(ビット誤り率、Bit Error Rate)である。
【0016】
なお、説明の都合上、送信装置Aと受信装置Bのように送信側の装置と受信側の装置とを固定しているが、実際には送信装置Aと受信装置Bはともに送受信装置として構成し、双方向に送受信できてもよいことはもちろんである。
また、通信網は、送信装置と受信装置との間により多くの中継装置を配置し、より多くの情報通信路を備えていてもよいことはもちろんである。
【0017】
図2は、送信側の情報通信装置である送信装置Aの機能ブロック図である。
送信装置Aは、送信部C、E、Gと、受信部C、E、Gと、キューC、E、Gと、通信路検査部210と、送信制御部250と、を備える。
【0018】
送信部Cおよび受信部Cは、リンクA→Cに接続されている。
送信部Eおよび受信部Eは、リンクA→Eに接続されている。
送信部Gおよび受信部Gは、リンクA→Gに接続されている。
【0019】
キューCは、送信制御部250からパケットを受け、送信部Cに送る。
キューEは、送信制御部250からパケットを受け、送信部Eに送る。
キューGは、送信制御部250からパケットを受け、送信部Gに送る。
また、キューC、E、Gは、送信制御部250から待ち行列の長さを問う要求を受けると、送信制御部250に対して自身の待ち行列の長さを返答する。
【0020】
通信路検査部210は、各通信路の伝送状態を検査し、その結果を送信制御部250に送る。
通信路検査部210は、BER収集制御部220と、通信路BER計算部230と、リンクBER測定部240と、を備える。
BER収集制御部220は、送信装置A自身および中継装置C〜HにリンクのBERを収集するように指令を出す。BER収集制御部220は、中継装置C〜Hに対してリンクのBERを測定させるBER測定要求パケットを順次送信する。
BER測定要求パケットはキューC、E、Gに出力され、そこから各中継装置C〜Hに送信される。
【0021】
通信路BER計算部230は、各リンクのBERに基づいて各通信路のBERを計算する。例えば、BER収集制御部220による測定要求によって、リンクA−CのBERが0.01、リンクC-DのBERが0.02、リンクD−BのBERが0.03であると収集されたとする。すると、通信路BER計算部230は、1−(1−0.01)×(1−0.02)×(1−0.03)≒0.059として通信路A−C−D−BのBERを算出する。通信路BER計算部230は、求めた通信路のBERを送信制御部に送る。
【0022】
リンクBER測定部240は、BER収集制御部220からの指令に応じて、送信装置A自身が繋がるリンクのBERを測定する。すなわち、リンクA−C、リンクA−E、リンクA−GのBERを測定する。このとき、リンクBER測定部240は、キューC、キューE、キューGにエラー測定用パターン信号を出力し、次段の中継装置である中継装置C、E、Gにエラー測定用パターン信号を送信する。そして、中継装置C、E、Gから送り返されてきたエラー測定用パターン信号のビットエラーをカウントし、リンクA→C、リンクA−E、リンクA−GのBERを測定する。
このように測定した各リンクのBERは、通信路計算部に送る。
【0023】
送信制御部250は、経路選択部260と、BER判定部と、追加経路選択部280と、備える。
【0024】
経路選択部260は、送信すべきパケットが到着すると、パケットを送信する経路を選択する。このとき、経路選択部260は、キューC、キューE、キューGのうち待ち行列が一番短いキューを選択する。経路選択部260は、パケットを挿入するキューを決定すると、パケットをそのキューに挿入するとともに選択したキューをBER判定部に伝える。
【0025】
BER判定部270には、BER判定閾値を設定記憶する記憶部271が付設されている。
BER判定閾値は、パケット伝送品質として許容できる最大誤り率の値である。すなわち、BERがこのBER判定閾値を超えている場合には正確な情報伝送ができないと判断される。
また、BER判定部には、通信路BER計算部230によって求められた各情報通信路のBERが通知されている。
経路選択部260がパケットを挿入するキューを選択するところ、BER判定部は、経路選択部260で選択されたキューに繋がる情報通信路のBERをBER判定閾値に対比する。そして、前記情報通信路のBERがBER判定閾値以下であれば、その情報通信路によってパケット伝送を実行させ、処理は終了する。
また、前記情報通信路のBERがBER判定閾値を超えている場合には、追加経路選択部280に対してその旨を通知する。
【0026】
追加経路選択部280は、経路選択部260で選択されたキューの他にさらに別のキューにパケットを挿入する。
パケットを伝送する通信路のBERが閾値を超えていることがBER判定部によって判定されているところ、追加経路選択部280は、前記パケットを複製するとともに複製したパケットを伝送する別の通信路を追加的に選択する。
追加経路選択部280は、追加の経路を選択するにあたり、経路選択部260にて選択されているキューを除き、次に待ち行列が少ないキューを選択する。そして、パケットを複製してその選択したキューに挿入する。追加経路選択部280には、複製回数閾値を設定記憶する記憶部281が付設されている。追加経路選択部280は、設定された複製回数に達するまでパケットの複製と追加経路の選択を行う。
【0027】
ここで、追加経路選択部280によって選択された経路のBERがBER閾値を超えている場合があり得る。
このような場合には、複製されたパケットをBER閾値以下である通信路に所定回数挿入するまで追加経路の選択を継続させてもよい。
【0028】
図3は、中継装置である中継装置Cの機能ブロック図である。
中継装置Cは、送信部A、Dと、受信部A、Dと、キューA、Dと、パケット中継部310と、リンクBER測定部320と、を備える。
送信部Aおよび受信部Aは、リンクA→Cと接続されている。
送信部Dおよび受信部Dは、リンクC→Dと接続されている。
パケット中継部310は、受信部Aから受信したパケットをキューDに送り、受信部Dから受信したパケットをキューAに送る。
キューAは、パケット中継部310からパケットを受け、送信部Aに送る。
キューDは、パケット中継部310からパケットを受け、送信部Dに送る。
【0029】
リンクBER測定部320は、中継装置Cが繋がるリンクのBERを測定する。
このとき、前段の装置(ここでは送信装置A)からエラー測定用パターン信号を受けた場合には、それを送り返す。
また、リンクBER測定部320は、送信装置AのBER収集制御部220からBER測定要求パケットを受け取った場合、後段の装置(ここでは中継装置D)との間のリンクを測定する。すなわち、中継装置Dに対してエラー測定用パターン信号を送信して、かえって来た前記エラー測定用パターン信号のビットエラーをカウントする。これによってリンクC-DのBERを求めて、BER測定応答パケットとして送信装置Aに向けて送信する。
【0030】
なお、中継装置Cの構成を説明したが、他の中継装置の構成は、基本的に中継装置Cの構成と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0031】
図4は、受信側の情報通信装置である受信装置Bの機能ブロック図である。
受信装置Bは、受信部D、F、Hと、パケット選択部410と、受信済みパケットID記録部と、を備える。
受信部Dは、リンクD→Bに接続されている。
受信部Fは、リンクF→Bに接続されている。
受信部Hは、リンクH→Bに接続されている。
各受信部D、F、Hを介してパケット選択部410にパケットが到着する。
パケット選択部410は、同じパケットが複数ある場合には、複製されたパケットのうち最初に到着したパケットのみを選択し、最初に到着したパケット以外は破棄する。
受信済みパケットID記録部420には、過去に受信したパケットのIDが記録される。
【0032】
このような構成を備える第1実施形態の動作を説明する。
図5は、送信側の情報通信装置である送信装置Aにおいて、通信路BERを取得する動作手順を示すフローチャートである。
送信装置Aは、各情報通信路に対して図5のフローチャートによる処理を定期的に行う。
これにより、各リンクのBERを取得し、さらに、(1)A→C→D→B、(2)A→E→F→B、(3)A→G→H→Bの各情報通信路のBERを計算によって取得する。
【0033】
主として、情報通信路(1)A→C→D→Bの通信路BERを計算する場合を例にして説明する。
送信装置Aは、送信装置A自身繋がるリンクのBERを取得する(ST100)
まず、リンクA→CのBERを取得する。
すなわち、BER収集制御部220は、リンクBER測定部240にリンクA-CのBERを問い合わせる。すると、リンクBER測定部240は、エラー測定用パターン信号をキューCに送る。
エラー測定用パターン信号は、キューCから送信部Bを介してリンクA→C送信され、中継装置Cの受信部Aで受信される。
中継装置CのリンクBER測定部240は、受信したエラー測定用パターン信号をキューAおよび送信部Aを介して送信装置Aに送り返す。
送信装置AのリンクBER測定部240では、受信したエラー測定用パターン信号のビットエラーをカウントし、リンクA→CのBERを得る。
【0034】
ここでは図1に例示するようにリンクA→CのBERは0.01であるので、リンク測定部はリンクA→CのBERとして0.01を得る。
このように取得されたリンクのBERは通信路BER計算部230に送られる。
なお、リンクA→CのBERが0.01であるので、リンクA→Cにおいてビットを誤らない確率は0.99となる。
【0035】
送信装置Aに繋がるリンクとしては、リンクA-Cの他に、リンクA−E、リンクA−Gがあるところ、リンクA-Cの場合と同じようにして各リンクのBERを取得する。すなわち、送信装置Aに繋がる総てのリンクのBERを取得するまで順番に次のリンクのBERを取得していく(ST120)。
送信装置Aに繋がる総てのリンクのBERを取得したところで(ST110:YES)、次に、各中継装置を経由してリンクのBERを取得する。
【0036】
送信装置Aは、中継装置C〜中継装置Hに対して順番にリンクのBERを問い合わせる(ST130)。
まず、中継装置CにリンクC→DのBERを問い合わせる。
この場合、送信装置AのBER収集制御部220は、BER測定要求パケットを中継装置Cに送る。すると、中継装置Cは、エラー測定用パターン信号を中継装置Dとの間でやり取りし、帰ってきたエラー測定用パターン信号のビットエラーに基づいてリンクC→DのBERを得る。
ここでは図1に例示するようにリンクC→DのBERは0.02であるので、中継装置CはリンクC→DのBERとして0.02を得る。
【0037】
中継装置Cは、リンクC→DのBERである0.02をBER測定応答パケットとして送信装置Aに送信する。すると、送信装置Aは、このBER測定応答パケットよりリンクC→DのBERとして0.02を得る。
ここで、リンクC→DのBERが0.02であるので、リンクC→Dでビットを誤らない確率は0.98となる。すると、情報通信路A→C→Dでビットを誤らない確率は0.99×0.98となる。
【0038】
同様の手順によって、すべての中継装置からリンクのBERを得るまで順番に次の中継装置に問い合わせていく(ST140)。そして、中継装置DにリンクD−BのBERを問い合わせて、リンクD-BのBERとして0.03を得る。
ここで、リンクD-BのBERが0.03であるので、リンクD→Bでビットを誤らない確率は0.97となる。
【0039】
このようにして総ての中継装置にリンクのBERを問い合わせたところで(ST150:YES)、次に、通信路BER計算部230によって各通信路のBERを計算して求める(ST160)。
【0040】
通信路BER計算部230は、これまでに取得されたリンクBERを用いて各通信路のBERを算出するところ、情報通信路A→C→D→Bでビットを誤らない確率は、0.99×0.98×0.97≒0.941として求める。そして、情報通信路A→C→D→Bでビットを誤らない確率(≒0.941)から、情報通信路A→C→D→BのBERを1−0.941=0.059として算出する。
同様に全ての情報通信路に対してBERを計算する。
このようにして求められた各情報通信路のBERは表1となる。
【0041】
【表1】

【0042】
次に、送信装置Aが送信すべき情報を送信する動作手順について説明する。
図6は、送信装置Aが送信すべき情報を送信する動作手順を示すフローチャートである。
図7は、パケットを送信する経路の一例を示す図である。
【0043】
ここで、BER閾値はと複製回数閾値は事前に設定されており、BER閾値として0.1000が設定されており、複製回数閾値として2回が設定されているとする。
また、キューC、キューE、キューGの全てが空である初期状態から、パケット1を送信し、その後パケット2を送信する場合を例にして説明する。
【0044】
送信制御部250にパケット1が到着すると(ST200)、まず、選択可能なキューを決定する(ST201)。
ここでは、キューC、キューE、キューGのすべてが選択可能なキューである。
次に、送信制御部250は選択可能なキュー(キューC、キューE、キューG)のうち、挿入されているパケットが最も少ないキューを選択する(ST202)。
ここでは、全てのキューが空であるため、キューCを選択したとする。そして、到着したパケット(パケット1)を選択したキュー(キューC)に挿入する(ST203)。
このように選択したキューはパケット1についての選択可能なキューのリストから削除する(ST204)。
【0045】
次に、パケット1をキューCに挿入しているところ、キューCに対応する通信路である通信路A−C−D−BのBERをBER判定部によって判定する(ST205)。
キューCに対応する情報通信路A→C→D→BのBERは0.059であり、BER閾値未満であるため(ST206:YES)、送信制御部250の処理は終了となる。
【0046】
続いてパケット2が送信制御部250に到着すると、パケット1と同様、キューC、キューE、キューGのうち、挿入されているパケットが最も少ないキューにパケット2を挿入する(ST203)。
ここではキューEにパケット2を挿入したとする。このとき、キューEはパケット2についての選択可能なキューのリストからは削除される(ST204)。キューEに対応する情報通信路A→E→F→BのBERは0.118であってBER閾値である0.1000を超えている(ST206:NO)。
この場合、BER判定部270は、追加経路選択部280に選択された経路のBERが閾値を超えていることを伝える。そして、追加経路選択部280によってパケットの複製とキューへの挿入が実行される。
【0047】
まず、追加経路選択部280は、送信すべきパケットであるパケット2の複製回数を複製回数閾値と対比する(ST207)。
ここではパケット2はまだ複製されていないのでパケット2の複製回数は複製回数閾値より少ない(ST208:YES)。さらに、追加経路選択部280は、選択可能なキューがあるか否かを見る。パケット2についてキューCおよびキューGが選択可能であるため、選択可能なキューはある(ST209:YES)。
【0048】
この場合、ST201にもどって、追加経路選択部280によってST201からST206までが実行される。
ここで、パケット2を挿入可能なキューC、キューGのうち、最も挿入されているパケットの少ないキューにパケット2が挿入されるところ(ST202)、ここではキューGを選択してパケット2を挿入したとする。
【0049】
キューGに対応する情報通信路A→G→H→BのBERは0.030であってBER閾値未満である(ST206)。したがって、送信制御部250の処理は終了となる。
【0050】
パケットをキューに挿入する処理は、通信路BERがBER閾値未満である情報通信路に対応するキューにパケットが挿入されるか、複製回数が複製回数閾値に達するか、全てのキューにパケットが挿入されるまで繰り返される。
【0051】
各キューに挿入されたパケットは、それぞれFIFO(First In First Out)により送信部から順に送信された後、キューから取り除かれる。
各送信部は並列動作が可能であるので、パケット1は送信部Cから、パケット2は送信部Eおよび送信部Gから並列送信される。
【0052】
次に、中継装置の動作を説明する。
図8は、中継装置Cの動作手順を示すフローチャートである。
送信装置から送信されたパケットは、受信部Aにて受信する(ST300)。
受信部Aにて受信したパケットをパケット中継部310によってルーティングし(ST310)、指定されたキューに挿入する(ST330)。キューに挿入されたパケットは順番に送信部から宛先へ送信される。このように、中継装置は、指定された装置に向けてパケットを中継する。
ただし、受信したパケットが自装置宛のBER測定要求パケットであった場合(ST320:NO)、パケットをリンクBER測定部320に渡す。
リンクBER測定部320は、BER測定要求パケットを受け取るとリンクC→DのBERを測定し、BER測定応答パケットを生成する(ST340)。
BER測定応答パケットを送信装置A宛のルーティング設定に従ってキューAに挿入し、送信装置Aに向けて送信する。
【0053】
次に、受信装置の動作を説明する。
図9は、受信装置Bの動作手順を示すフローチャートである。
受信装置Bにパケットが到着すると、複製されたパケットのうち最初に到着したパケットのみが取り込まれ、最初に到着したパケット以外はパケット選択部410によって破棄される。すなわち、受信部D、F、Hにてパケットを受信する(ST400)。続いて、受信したパケットがすでに受信済みのパケットであるかを確認する。すなわち、受信済みパケットID記憶部420に受信済みのパケットIDが記録されているところ、受信したパケットのIDがすでに記録されているかを調べる。
受信したパケットが受信済みのパケットである場合には(ST410:YES)、受信したパケットは破棄する(ST420)。
また、受信したパケットが新規である場合には(ST410:NO)、受信パケットを取り込む(ST430)とともに、そのパケットのIDを受信済みパケットID記録部に記録する(ST440)。
これにより、重複なしに必要なパケットだけを取り込んでいく。
【0054】
このような構成を備える実施形態によれば次の効果を奏することができる。
(1)送信側の情報通信装置における送信制御部が、複数の異なる情報通信路を用いて異なるパケットの並列送信を行うため、複数の情報通信路の間で負荷の分散を行うことができる。
【0055】
(2)送信側の情報通信装置における送信制御部が選択した情報通信路のBERが高いときに、パケットを複製して複数の異なる情報通信路を用いて送出するため、複製されたパケットのうち一部が喪失した場合にも受信側の情報通信装置にパケットを届けることが可能となる。
【0056】
(3)送信装置および中継装置はリンク測定部を備えており、次段装置までのリンクのBERを測定することができる。そして、送信装置のBER収集制御部がBER測定要求パケットをすべてのリンク測定部に送ることにより、送信装置にすべてのリンクのBERを収集する。
これにより複数の中継装置を介した情報通信路のBERを送信装置の側で求めることができる。
このように複数の中継装置を介した情報通信路のBERを送信装置の側で求めることができるので、パケットを送る情報通信路のBERに応じて効率よくかつ確実に情報を送ることができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えうることはもちろんである。
送信制御部および通信路検査部は、各種論理素子等のハードウェアで構成されたものに限らず、CPU(中央処理装置)、メモリ(記憶装置)等を備えたコンピュータによって構成してもよく、このコンピュータに所定のプログラムを組み込んで経路選択部、BER判定部、追加経路選択部、BER収集制御部、通信路BER計算部、リンクBER測定部としての各機能を実現させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100…通信網、210…通信路検査部、220…BER収集制御部、230…通信路BER計算部、240…リンクBER測定部、250…送信制御部、260…経路選択部、270…BER判定部、271…BER判定閾値記憶部、280…追加経路選択部、281…複製回数閾値記憶部、310…パケット中継部、320…リンクBER測定部、410…パケット選択部、420…受信済みパケットID記録部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中継装置を間に介した複数の情報通信路によって送信装置と受信装置とが接続される情報通信システムであって、
前記送信装置は、
前記情報通信路のうちいずれを用いて情報を送信するかを決定する送信制御部と、
前記情報通信路の各々のBER(Bit Error Rate)を取得する通信路検査部と、を備え、
前記送信制御部は、
複数の送信するべき情報に対してそれぞれ異なる情報通信路を選択する経路選択部と、
前記通信路検査部によって取得された情報通信路のBERを予め設定されたBER判定閾値と対比するBER判定部と、
前記経路選択部によって選択された情報通信路のBERが前記BER判定部により前記BER判定閾値よりも高いと判断された場合に、この情報通信路の他に異なる情報通信路を追加で選択する追加経路選択部と、を備える
ことを特徴とする情報通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報通信システムにおいて、
前記情報通信路は、複数の中継装置および装置間を接続する複数のリンクによって構成され、
前記通信路検査部は、
各々のリンクのBERを収集するBER収集制御部と、
各リンクのBERに基づいて各通信路のBERを算出する通信路BER計算部と、
次段の装置までを繋ぐリンクのBERを測定するリンクBER測定部と、を備え、
前記中継装置は、
伝送するべき情報を中継する情報中継部と、
次段の装置までを繋ぐリンクのBERを測定するリンクBER測定部と、を備え、
前記BER収集制御部は、次段装置までのリンクのBERを測定させるBER測定要求を前記送信装置および総ての前記中継装置のリンクBER測定部に送る
ことを特徴とする情報通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報通信装置において、
前記BER収集制御部から出力されるBER測定要求を受けて、前記送信装置および総ての前記中継装置のリンクBER測定部は、次段の装置までのBERを測定するとともに、測定によって得たBERを前記通信路BER計算部に送る
ことを特徴とする情報通信システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の情報通信システムにおいて、
受信側の情報通信装置は、
複製された情報を受信した場合には、複製された情報のうち一つのみを選択し、その他は破棄する情報選択部を備えている
ことを特徴とする情報通信システム。
【請求項5】
複数の中継装置を間に介した複数の情報通信路を有する通信網によって情報を伝送する情報通信方法において、
前記情報通信路の各々のBER(Bit Error Rate)を取得し、
複数の送信するべき情報に対してそれぞれ異なる情報通信路を選択し、
前記取得された情報通信路のBERを予め設定されたBER判定閾値と対比し、
前記選択された情報通信路のBERが前記BER判定閾値よりも高い場合に、この情報通信路の他に異なる情報通信路を追加で選択する
ことを特徴とする情報通信方法。
【請求項6】
請求項5に記載の情報通信方法において、
前記送信装置は、次段装置までのリンクのBERを測定させるBER測定要求を送信装置自身および総ての中継装置に送り、
前記送信装置および総ての前記中継装置は、前記BER測定要求を受けて次段装置までのリンクのBERを測定するとともに、測定によって得たBERを送信装置に送り、
前記送信装置は、各リンクのBERに基づいて各情報通信路のBERを算出する
ことを特徴とする情報通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−177738(P2010−177738A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15121(P2009−15121)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】