説明

感光性レジスト組成物およびカラーフィルター

【課題】薄膜かつ高遮光性を有するパターンをフォトリソグラフィー法で容易に形成でき、アルカリ現像後の未露光部分の残さを抑制し、パターン形状と感度がともに良好なカラーフィルター用感光性レジスト組成物を提供し、カラーフィルターおよび液晶表示装置の信頼性を高く、かつ歩留まりを向上させる。
【解決手段】少なくとも顔料(A)、アクリル系ポリマー(B)、モノマー(C)、光開始剤(D)、および溶媒(E)を含有する感光性レジスト組成物において、該モノマー(C)が、ビスフェノールフルオレン型アクリレートおよび/またはビスフェノールA型エポキシ樹脂のジアクリレートであることを特徴とする感光性レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色感光性樹脂組成物とそれを用いて形成した着色パターンに関し、詳しくはカラーフィルター用感光性カラーレジスト組成物、および液晶表示装置用カラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルターは、通常、ブラックマトリクスを形成したガラス、プラスチックシートなどの透明基板表面に、赤、緑、青の異なる色相を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等の色パターンで形成する方法で製造されている。この遮光性膜として用いられるブラックマトリクスは画素間の光漏れによるコントラスト及び色純度の低下を防止する役割を果たしている。
【0003】
従来、ブラックマトリクスとして、クロム、ニッケル、アルミニウム等の金属あるいは金属化合物の蒸着膜が用いられてきたが、その工程が複雑でかつ高価であり、また金属薄膜の表面が高反射性である等の問題点がある。そこで、この問題を解決するものとして、顔料を分散した樹脂組成物を用いる顔料分散法が現在主流となっている。
【0004】
顔料分散法には、ネガ型とポジ型があるが、アクリルポリマー、アクリル系多官能モノマーあるいはオリゴマー、光開始剤、溶媒および顔料を主成分とするネガ型の感光性組成物が広く用いられている。ネガ型カラーフィルターを形成する際、通常カラーレジストを基板上に塗布、乾燥し、フォトマスクを介して紫外線を照射した後、現像して、未露光部を現像液で溶解することにより、画素パターンを形成する。このサイクルを必要色数分繰り返すことで、着色被膜のパターンが得られる。
【0005】
この顔料分散法によって形成されたブラックマトリクスを有するカラーフィルターにおいて、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5のようにフルオレン骨格またはビスフェノール型構造を有するエポキシ化合物に感光性基を付加させた化合物、またはこれらをさらに酸変性させた化合物を含む感光性樹脂組成物が記載されている。そのフルオレン構造に起因する極めて優れた耐熱性と高い密着性を有しているが、その一方で、未露光部分の接着性も良くなってしまうため、十分に溶解されず、基板上に顔料の残さが残る原因となる。特に、チタンブラックを安定に分散させるためには、酸価とアミン価を共に有する高分子分散剤を用いる必要があり、これにフルオレン骨格を有する感光性樹脂組成物を組み合わせると、アルカリ現像後の未露光部分において、残さが発生するという問題点があった。
【0006】
また、上記フルオレン骨格含有のアルカリ可溶性樹脂をバインダーとした、ブラックマトリクス用感光性樹脂組成物は、依然として露光時の感度が低く、現像後のパターンエッジ形状が良くないという問題点があった。
【特許文献1】特開平05−070528号公報
【特許文献2】特開平08−278629号公報
【特許文献3】特開平08−327813号公報
【特許文献4】特開平09−241339号公報
【特許文献5】特開平10−158374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑み創案されたもので、その目的とするところは、薄膜かつ高遮光性を有するパターンをフォトリソグラフィー法で容易に形成でき、アルカリ現像後の未露光部分の残さを抑制し、パターン形状と感度がともに良好なカラーフィルター用感光性レジスト組成物を提供し、カラーフィルターおよび液晶表示装置の信頼性を高く、かつ歩留まりを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
【0009】
(1) 少なくとも顔料(A)、アクリル系ポリマー(B)、モノマー(C)、光開始剤(D)、および溶媒(E)を含有する感光性レジスト組成物において、該モノマー(C)が、下記一般式(1)および/または一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする感光性レジスト組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R、R、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは任意の有機基で表される。Rは置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又はアルキニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル、炭素数6〜14のアリール基又はアリーレン基、炭素数7〜20のアラルキル基を表す。mは0〜10の整数、nは1〜20の整数である。)
(2) Rが、下記一般式(3)で表される置換基である(1)に記載の感光性レジスト組成物。
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基のいずれかで示され、これらは置換基を有していても良い。)
(3) 前記光開始剤(D)が、下記一般式(4)で表される化合物を必須成分とすることを特徴とする(1)、(2)のいずれかに記載の感光性レジスト組成物。
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、Rは水素原子又は一価の有機基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で表される。)
(4) 上記一価の有機基が下記一般式(5)または(6)で表される置換基である請求項3に記載の感光性レジスト組成物。
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
(5) 前記アクリル系ポリマー(B)が、カルボキシル基を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の感光性レジスト組成物。
【0020】
(6) 前記アクリル系ポリマー(B)が側鎖にエチレン性不飽和基を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の感光性レジスト組成物。
(7) 前記顔料(A)が、チタンブラックおよび/またはカーボンブラックであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の感光性レジスト組成物。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の感光性レジスト組成物を用いたことを特徴とするカラーフィルター。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係わるカラーフィルター用感光性レジスト組成物を用いると現像時に基板上に顔料の残さが発生することなく、また、パターン形状及び感度が共に良好なカラーフィルターを製造でき、かつ液晶表示装置の信頼性を高く、かつ歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の構成要素について説明する。
本発明では顔料(A)として、有機顔料または無機顔料が用いられる。
このような顔料の例としては、Color Index CI(The Society of Dyers and Colourists 出版)でピグメントに分類されている化合物が挙げられる。具体例を挙げると、赤色顔料としてはColor Index No.ピグメントレッド(以下、PRと略す)9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、254等が、緑色顔料としてはColor Index No.ピグメントグリーン(以下、PGと略す)7、36等が、青色顔料としてはColor Index No.ピグメントブルー(以下、PBと略す)15:3、15:4、15:6、21、22、60、64等が、黄色顔料としてはColor Index No.ピグメントイエロー(以下、PYと略す)20、24、86、93、109、110、117、129、138、139、150、153等が、バイオレット顔料としてはColor Index No.ピグメントバイオレット(以下、PVと略す)19、23、29、30、37、40、50等が、オレンジ顔料としてはColor Index No.ピグメントオレンジ(以下、POと略す)36、43、51、55、59、61等が、黒色顔料としてはColor Index No.ピグメントブラック7等やカーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物等が使用できる。これらの顔料は1種のみで使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。また顔料誘導体、例えば、有機顔料をスルホン化した顔料のスルホン酸、具体的には銅フタロシアニンのスルホン酸、ジケトピロロピロール(PR254)のスルホン酸、キノフタロン(PY138)のスルホン酸などを顔料に対して0.5〜10質量%、好ましくは2〜7質量%添加すると顔料の分散を安定化させる効果があり好ましい。さらにポリエチレンイミン系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤を分散時に併用すると分散を安定化させる効果があり好ましい。これらの高分子分散剤は感光性を有していないため、多量に添加すると目的のカラーレジストの感光性能を悪化させる懸念があり、分散安定性、感光性能を加味した適正な添加量にすることが望ましい。とくに上記ポリエチレンイミン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤を顔料に対して5〜50(質量%)添加、さらに好ましくは7〜40(質量%)添加すると、感光性能を悪化させずに、高度に分散を安定化させる効果があり、より一層好ましい。なお、これらの高分子分散剤はアビシヤ(株)製“ソルスパース(登録商標)”24000(または24000SC、32500、33500)やエフカ社製“EFKA(登録商標)”4047(または4046)、味の素ファインテクノ(株)製“アジスパー(登録商標)”PB821(またはPB822など)等の商標名で市販されている。
【0023】
本発明の組成物は塗膜中の顔料割合が高い緑画素や樹脂ブラックマトリックス(以下、樹脂BMという)を形成する場合にとくに有効である。樹脂BM用の顔料としては赤色顔料と青色および/またはバイオレット顔料の混合物、チタンブラック、およびカーボンブラックが好ましい。特に樹脂BMを形成する場合に、チタンブラックを用いると露光時の感度などの感光特性が優れたものが得られる。チタンブラックの中でも窒化チタン含有率が高いものが同じ膜厚で高い光学濃度(OD)を得られるのでより好ましい。また、チタンブラックとカーボンブラックを質量比で50±10質量%混合すると塗膜の透過色が青み(チタンブラックの色)や黄み(カーボンブラックの色)を帯びず無彩色(ニュートラル)に近くなるので樹脂BMとしてとくに適している。カーボンブラックは一次粒子径10〜80nmで、かつその表面を次亜塩素酸、硝酸、過酸化水素などにより酸化処理したものが好ましい。とくに酸価が1〜30(mgKOH/g)、さらに好ましくは5〜25(mgKOH/g)のものが、現像時の接着性、溶解性の点で好ましい。
本発明では、アクリル系ポリマー(B)を必須成分とするが、アクリル系ポリマー(B)としては、カルボキシル基を有するアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。カルボキシル基を有するアクリル系ポリマーとしては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体を好ましく用いることができる。不飽和カルボン酸の例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸などがあげられる。
【0024】
これらは単独で用いても良いが、他の共重合可能なエチレン性不飽和化合物と組み合わせて用いても良い。共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基、あるいはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレートなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。とくにメタクリル酸およびまたはアクリル酸とメタクリル酸メチル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレンから選ばれた2〜4元共重合体で平均分子量Mw2千〜10万、酸価50〜150(mgKOH/g)のポリマーがアルカリ現像液に対する溶解性の観点から好ましい。この範囲をはずれると、アルカリ現像液に対する溶解速度が低下または速くなりすぎ好ましくない。
【0025】
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル系ポリマーを用いると、露光、現像の際の感度がよくなるので好ましく用いることができる。エチレン性不飽和基としては、アクリル基、メタクリル基が好ましい。このようなアクリル系ポリマーは、カルボキシル基を有するアクリル系(共)重合体のカルボキシル基に、グリシジル基あるいは脂環式エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を付加反応させ得ることができる。
【0026】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル系ポリマーの具体例としては、特許第3120476号公報、特開平8−262221号公報に記載されている共重合体、あるいは市販のアクリル系ポリマーである光硬化性樹脂「サイクロマー(登録商標)P」(ダイセル化学工業(株))、アルカリ可溶性カルド樹脂などが挙げられる。特に、側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル系ポリマーで平均分子量(Mw)2千〜10万(テトラヒドロフランをキャリヤーとしてゲルパーミェーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算したもの)、酸価70〜150(mgKOH/g)のポリマーが感光特性、エステル系溶媒に対する溶解性、アルカリ現像液に対する溶解性の各観点から最も好ましい。
【0027】
本発明において、モノマー(C)は、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物またはビスフェノール型エポキシ化合物にエポキシ基と反応し得る官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物を反応させ、得られた生成物の水酸基と反応し得る化合物をさらに反応させることで合成される。
【0028】
モノマー(C)は、特に下記一般式(1)および/または一般式(2)で示される。
【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
(式中、R、R、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは任意の有機基で表される。Rは置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又はアルキニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル、炭素数6〜14のアリール基又はアリーレン基、炭素数7〜20のアラルキル基を表す。nは0〜10の整数である。)
ここで、Rのアルキル基としては、炭素数1〜5であるのが好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基がさらに好ましい。また、nは0〜10の整数であり、0〜5であるのが好ましく、0〜2であるのがさらに好ましい。
【0032】
は、下記一般式(3)で表される置換基を示す。
【0033】
【化9】

【0034】
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基のいずれかで示され、これらは置換基を有していても良い。)
ここで、Rのアルキル基としては炭素数1〜10であるのが好ましく、アルケニル基としては炭素数2〜10であるのが好ましく、シクロアルケニル基としては炭素数3〜10であるのが好ましい。また、アリール基としては炭素数が6〜15であるのが好ましく、中でも本発明においてはアリール基が好ましい。好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、エチニル基、プロピニル基、フェノール基、ベンゾイル基、トルイル基などがあげられる。
【0035】
また、それ以外の成分として多官能、単官能のアクリル系モノマーあるいはオリゴマーを用いることができる。多官能モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレート、あるいはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]エーテル、4,4′−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]シクロヘキサン、9,9−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−クロロ−4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジメタアクリレートなどがあげられる。
【0036】
さらに、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート、トリス−[(メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、または特開2006−259716号公報に記載されているビスフルオレン系チオール化合物などの多官能チオール化合物などがあげられる。これらは単独または混合して用いることができる。
【0037】
これらの多官能モノマーやオリゴマーの選択と組み合わせにより、レジストの感度や加工性の特性をコントロールすることが可能である。とくに感度を上げるためには、官能基が3以上、より好ましくは5以上ある化合物の使用が望ましく、とくにジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。また、樹脂BMのように光架橋に有効な紫外線を吸収する顔料を使用する場合には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートに加え、前記多官能チオール化合物、とくにイソシアヌレート系の多官能チオール化合物や分子中に芳香環を多く含み撥水性が高いフルオレン環を有する多官能チオール化合物の併用が感度と現像時にパターンを望ましい形状にコントロールできるのでより好ましい。
【0038】
本発明のカラーフィルター用感光性カラーレジスト組成物は、カルバゾール系化合物である、一般式(4)で示される光開始剤(D)を必須成分とする。
【0039】
【化10】

【0040】
(式中、Rは水素原子又は一価の有機基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で表される。)
より好ましい一価の有機基として、下記一般式(5)または(6)で表される置換基があげられる。
【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
さらにRが上記一般式(5)または(6)の置換基で示され、かつRがメチル基である下記一般式(7)または(8)で示される化合物が特に好ましい。
【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
また本発明における光開始剤は、必須成分である上記光開始剤以外に、その他の光開始剤を含んでも良く、具体的には、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、オキサントン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、オキシムエステル化合物、カルバゾール系化合物、トリアジン系化合物、リン系化合物あるいはチタネートなど公知のものが使用できる。例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン、チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)“イルガキュア(登録商標)”369である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)CGI−113である2−[4−メチルベンジル]−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)“イルガキュア(登録商標)”OXE01である1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、4−(p−メトキシフェニル)−2,6−ジ−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどがあげられる。
【0047】
カルバゾール系化合物を必須成分として、上記光開始剤を2種類以上併用して用いることもできる。好ましい具体例として、(7)または(8)で表されるカルバゾール系光開始剤に、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノンとチバ・スペシャルティ・ケミカル(株)“イルガキュア(登録商標)”369またはチバ・スペシャルティ・ケミカル(株)CGI−113などの3種類を併用すると、高感度でパターン形状が良好な特性を有するカラーフィルター用感光性レジスト組成物が得られるので好ましい。光開始剤の添加量としては、特に限定はないが、カラーレジスト全固形分に対して、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは10〜50質量%である。
【0048】
本発明のカラーフィルター用感光性レジスト組成物において、樹脂成分(ポリマー、モノマーあるいはオリゴマーと高分子分散剤の合計)と、少なくとも顔料を含む着色剤とは、通常、樹脂成分が20質量%〜95質量%、好ましくは25質量%〜80質量%の範囲で混合して用いられる。樹脂成分の量が少なすぎると、着色被膜の基板との接着性が不良となり、逆に顔料の量が少なすぎると着色度や樹脂BMの場合、厚み当たりの光学濃度(OD値/μm)が低くなり問題となる。
【0049】
本発明のカラーフィルター用感光性レジスト組成物の溶媒(E)について説明する。本発明で用いる溶媒(E)はエステル類、脂肪族アルコール類、ケトン類などが使用できる。
【0050】
具体的なエステル類としては、ベンジルアセテート(沸点214℃)、エチルベンゾエート(沸点213℃)、γ―ブチロラクトン(沸点204℃)、メチルベンゾエート(沸点200℃)、マロン酸ジエチル(沸点199℃)、2−エチルヘキシルアセテート(沸点199℃)、2−ブトキシエチルアセテート(沸点192℃)、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート(沸点188℃)、シュウ酸ジエチル(沸点185℃)、アセト酢酸エチル(沸点181℃)、シクロヘキシルアセテート(沸点174℃)、3−メトキシ−ブチルアセテート(沸点173℃)、アセト酢酸メチル(沸点172℃)、エチル−3−エトキシプロピオネート(沸点170℃)、2−エチルブチルアセテート(沸点162℃)、イソペンチルプロピオネート(沸点160℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点158℃)、酢酸ペンチル(沸点150℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0051】
これらの溶媒のなかで、酢酸エステル系またはプロピオン酸エステル系の溶媒で、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、3−メトキシ−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがとくに好ましい。
【0052】
また、上記以外の溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点133℃)、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル(沸点153℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)などのプロピレングリコール誘導体などの脂肪族エーテル類、上記以外の脂肪族エステル類、例えば、酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸ブチル(沸点126℃)、酢酸イソペンチル(沸点142℃)、あるいは、ブタノール(沸点118℃)、3−メチル−2−ブタノール(沸点112℃)、3―メチル―3―メトキシブタノール(沸点174℃)などの脂肪族アルコール類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、キシレン(沸点144℃)、エチルベンゼン(沸点136℃)、ソルベントナフサ(石油留分:沸点165〜178℃)などの溶媒を併用することも可能である。
【0053】
さらに基板の大型化に伴いダイコーティング装置による塗布が主流になってきているので、適度の揮発性、乾燥性を実現するため、2成分以上の混合溶媒から構成するのが好ましい。該混合溶媒を構成する全ての溶媒の沸点が150℃以下の場合、膜厚の均一性が得られない、塗布終了部の膜厚が厚くなる、塗液をスリットから吐出する口金部に顔料の凝集物が生じ、塗膜にスジが発生するという多くの問題を生じる。一方、該混合溶媒の沸点が200℃以上の溶媒を多く含む場合、塗膜表面が粘着性となり、スティッキングを生じる。したがって沸点が150℃以上200℃の溶媒を30〜75質量%含有する混合溶媒が望ましい。とくに混合溶媒を構成する溶媒の一成分として、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、3−メトキシ−ブチルアセテートから選ばれるエステル系溶媒を30〜75質量%含有する混合溶媒が好ましい。
【0054】
さらに3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテートを混合溶媒の構成成分として選択すると他のエステル類に比較して、同じ固形分濃度で上記カラーレジスト溶液の粘度を高くできるのでより好ましい。
【0055】
本発明の感光性レジスト組成物は必要に応じて各種添加物、例えば、密着改良剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱重合禁止剤、凝集防止剤などの添加物を含有していてもよい。具体的には、密着改良剤としてビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが、酸化防止剤として2、2−メチレンビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4−チオビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)などが、熱重合禁止剤としてハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ベンゾキノン、ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどが、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−n―オクトキシベンゾフェノン、2−(2―ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが、凝集防止剤としてポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0056】
これらの含有量は、カラーレジスト全固形分に対して、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0057】
本発明で用いるカラーフィルター用感光性レジスト組成物には、塗布性、着色被膜の平滑性やベナードセルを防止する目的で、界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤の添加量は通常、顔料の0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。添加量が少なすぎると塗布性、着色被膜の平滑性やベナードセルを防止効果がなく、多すぎると逆に塗膜物性が不良となる場合がある。界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、ポリジメチルシロキサンなどを主骨格とするシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。本発明では、これらに限定されずに、界面活性剤を1種または2種以上用いることができる。
【0058】
本発明のカラーフィルター用感光性レジスト組成物は、固形分(カラーレジストに含有される溶媒以外の全成分のカラーレジスト溶液に対する割合)が5〜30質量%、より好ましくは7〜25質量%の範囲が望ましい。粘度は25℃で測定したとき、1〜40(mPa・s)の範囲、好ましくは2〜20(mPa・s)の範囲に入るよう、ポリマーの分子量およびまたは溶媒の種類、量で調整することにより、塗膜をより一層均一にすることができ望ましい。
【0059】
本発明のカラーフィルター用感光性レジスト組成物を用いたダイコーティング装置によるカラーフィルターの製造方法の例を説明する。基板としては通常、ソーダガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどの透明基板などが用いられるが、特にこれらに限定されない。ダイコーティング装置としては、例えば特許第3139358号公報、特許第3139359号公報などに開示されている枚葉塗布装置を挙げることができる。この装置により、本発明のカラーフィルター用感光性レジスト組成物(塗液)を口金から吐出させ、基板を移動させることにより、基板上にカラーレジストを塗布することができる。この場合、基板は枚葉で多数枚塗布されるため、長時間運転すると、塗液をスリットから吐出する口金部に顔料の凝集物が生じ、これが塗布欠点となり収率低下を招くことがある。この場合、該装置の吐出口である口金を上記150℃以上の沸点を有するエステル系の溶媒を全溶媒に対して40質量%以上含む溶媒で拭き取る工程を設けることにより、塗布欠点が解消され収率が向上する。上記により、基板上にカラーレジストを塗布した後、風乾、減圧乾燥、加熱乾燥などにより、溶媒を除去し、カラーレジストの塗膜を形成する。とくに減圧乾燥工程を設けた後、オーブンあるいはホットプレートで追加の加熱乾燥することにより、対流によって生じる塗布欠点が解消され収率が向上する。減圧乾燥は常温〜100℃、5秒〜10分、減圧度500〜10(Pa)、より好ましくは減圧度150〜50(Pa)の範囲で行うのが好ましい。加熱乾燥はオーブン、ホットプレートなどを使用し、50〜120℃の範囲で10秒〜30分行うのが好ましい。
続いて該被膜上にマスクを置き、露光装置を用いて紫外線を照射する。ついでアルカリ性現像液で現像を行う。非イオン系界面活性剤などの界面活性剤を0.1〜5%添加したアルカリ性現像液を使用すると、より良好なパターンが得られて好ましい。アルカリ性現像液に用いるアルカリ性物質としては特に限定はしないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の1級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の2級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の3級アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン等の4級アンモニウム塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等のアルコールアミン類、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナン、モルホリン等の環状アミン類などの有機アルカリ類が挙げられる。
【0060】
アルカリ性物質の濃度は0.01質量%から50質量%である。好ましくは0.02質量%から10質量%、さらに好ましくは0.02から1質量%である。また現像液がアルカリ水溶液の場合、現像液にエタノール、γーブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の水溶性有機溶媒を適宜加えても良い。
【0061】
これら現像液の中では作業環境、廃現像液処理の点から、アルカリ水溶液の水系現像液が好ましい。
現像方式は浸漬法、スプレー法、パドル法等を用いるが特に限定しない。現像後、純水などによる洗浄工程を加える。
【0062】
得られたカラーレジストの塗膜パターンは、その後、加熱処理(ポストベーク)することによってパターンニングされた着色フィルターとなる。加熱処理は通常、空気中、窒素雰囲気中、あるいは、真空中などで、150〜300℃、好ましくは180〜250℃の温度のもとで、0.25〜5時間、連続的または段階的に行われる。
【0063】
上記方法で本発明のブラック、赤、緑、青のカラーフィルター用感光性レジスト組成物を用いて逐次繰り返し着色パターンを形成せしめると、液晶表示装置用カラーフィルターが作製できる。ここで各色カラーレジストのパターニング順序は限定されない。
【0064】
また、本発明製造方法の後、画素上に保護膜、透明電導膜を形成することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(評価法と評価の基準)
1.顔料残さ
現像ポストベーク後の基板の未露光部分(パターンが形成されていない部分)をエタノールで湿らせた東レ(株)製“トレシー(登録商標)”を用いて2回往復させながら拭き取り、着色の度合いを調べた。評価の基準は次の通りとした。
○:着色無、△:薄く着色有、×:明らかに着色有
2.パターン形状
露光、現像及びポストベイク(220℃×30分)後のパターン形状について、光学顕微鏡(オリンパス販売(株)製、BH3−MJL)を用いて平面観察(蛇行の有無)を、走査型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、S−4800)を用いて断面観察(テーパー形状)を行った。
【0066】
断面観察において、下部の幅と上部の幅が同値であるもの、あるいは下部の幅が上部の幅より広いものを順テーパーとし、下部の幅が上部の幅より狭いものを逆テーパーとした。蛇行が無く、順テーパー状であるパターンを良好なパターンとし、以下の基準で判定した。
◎:パターン10個について観察を行い、全てが順テーパーで蛇行の無いもの
○:パターン10個について観察を行い、蛇行は見られるが、蛇行幅が全て2μm以下であり、順テーパー状となっているもの
×:パターン10個について観察を行い、2μm以上の幅を持つ蛇行が一つでも見られたり、逆テーパー状となっているもの
3.感度
現像しても表面荒れがないパターンを形成するのに必要な最低必要露光量を示す。フォトマスク(HOYA(株)製、ネガマスク)を介して、塗膜に紫外線を(365nmにおいて)200mJ/cmを最大露光量として、随時露光量を下げて露光していき、現像後にパターン表面に荒れが生じない範囲の最低露光量を最低必要露光量とした。
【0067】
参考例1
側鎖にカルボキシル基とメタクリル基を有するアクリルポリマー(P1)の合成
特許第3120476号公報の実施例1に記載の方法により、メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(重量組成比30/40/30)を合成後、グリシジルメタクリレート40重量部を付加させ、精製水で再沈、濾過、乾燥することにより、平均分子量(Mw)10000、酸価50(mgKOH/g)の特性を有するアクリルポリマー(P1)粉末を得た。
【0068】
参考例2
500mlのセパラブルフラスコに、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル296g(エポキシ当量296g/eq)、ジメチルベンジルアミン3.4g、p−メトキシフェノール0.35g、アクリル酸72gを仕込み、20ml/分の流速で空気を吹き込みながら昇温し、110〜120℃の温度で反応させた。この間、酸価を測定し、2.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで10時間を要した。これによってビスフェノールフルオレン型アクリレート(A1)(水酸基当量368g/eq)を得た。
【0069】
合成例1
300mlのセパラブルフラスコに、参考例2で調製したビスフェノールフルオレン型アクリレート(A1)100g、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート150g、トリエチルアミン28.8gを仕込み、溶解させた後、ベンゾイルクロライド38.2gを滴下しながらゆっくり加えた。室温で2時間反応させ、生じた白色沈殿を濾過器を用いて濾過し、化合物(A2)を得た。
【0070】
合成例2
300mlのセパラブルフラスコに、参考例2で調整した化合物(A1)100g、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート130g、アクリル酸20gを仕込み、溶媒の一部に溶解させたN、N’―ジシクロヘキシルカルボジイミド55.7gをゆっくり添加した。室温で3時間反応させ、生じた白色沈殿を濾過器で濾過し、化合物(A3)を得た。
【0071】
合成例3
合成例2において、アクリル酸20gを酢酸16gに変更した以外は、前記(A3)の製造例と同様にして、化合物(A4)を得た。
【0072】
参考例3
500mlのセパラブルフラスコに、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル231g(エポキシ当量231g/eq)、ジメチルベンジルアミン3.0g、p−メトキシフェノール0.30g、アクリル酸72gを仕込み、20ml/分の流速で空気を吹き込みながら昇温し、110〜120℃の温度で反応させた。参考例2と同様な操作を行い、ビスフェノールフルオレン型アクリレート(B1)(水酸基当量303g/eq)を得た。
【0073】
合成例4
300mlのセパラブルフラスコに、参考例3で調製した化合物(B1)100g、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート150g、トリエチルアミン35.1gを仕込み、溶解させた後、ベンゾイルクロライド46.4gを滴下しながらゆっくり加えた。室温で2時間反応させ、生じた白色沈殿を濾過器を用いて濾過し、化合物(B2)を得た。
【0074】
合成例5
300mlのセパラブルフラスコに、参考例3で調整した化合物(B1)100g、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート140g、アクリル酸24gを仕込み、溶媒の一部に溶解させたN、N’―ジシクロヘキシルカルボジイミド68.1gをゆっくり添加した。室温で3時間反応させ、生じた白色沈殿を濾過器で濾過し、化合物(B3)を得た。
【0075】
参考例4
500mlのセパラブルフラスコに、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル258g(エポキシ当量258g/eq)、ジメチルベンジルアミン3.3g、p−メトキシフェノール0.33g、アクリル酸72gを仕込み、20ml/分の流速で空気を吹き込みながら昇温し、110〜120℃の温度で反応させた。参考例2と同様な操作を行い、ビスフェノールフルオレン型アクリレート(C1)(水酸基当量330g/eq)を得た。
【0076】
合成例6
300mlのセパラブルフラスコに、参考例4で調製した化合物(C1)100g、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート150g、トリエチルアミン32.2gを仕込み、溶解させた後、ベンゾイルクロライド42.6gを滴下しながらゆっくり加えた。室温で2時間反応させ、生じた白色沈殿を濾過器を用いて濾過し、化合物(C2)を得た。
【0077】
参考例5
500mlのセパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ化合物185g(エポキシ当量185g/eq)、ジメチルベンジルアミン2.6g、p−メトキシフェノール0.26g、アクリル酸72gを仕込み、20ml/分の流速で空気を吹き込みながら昇温し、110〜120℃の温度で反応させた。参考例2と同様な操作を行い、ビスフェノールフルオレン型アクリレート(D1)(水酸基当量257g/eq)を得た。
【0078】
合成例7
300mlのセパラブルフラスコに、参考例5で調製した化合物(D1)100g、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート150g、トリエチルアミン41.3gを仕込み、溶解させた後、ベンゾイルクロライド54.7gを滴下しながらゆっくり加えた。室温で2時間反応させ、生じた白色沈殿を濾過器を用いて濾過し、化合物(D2)を得た。
【0079】
実施例1
三菱マテリアル(株)製チタンブラック13M−T(窒化チタン)65g、大同化成(株)製の酸性処理カーボンブラック9930CF105g、味の素ファインテクノ(株)製“アジスパー(登録商標)”PB821のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20質量%溶液63gアクリルポリマー(P1)の3―メトキシ―3―メチルブタノール45質量%溶液56g、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート560gおよびプロピレングリコールターシャーリーブチルエーテル150gを秤量し、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて2000rpmで3時間分散し、顔料濃度16.84質量%の顔料分散液(TCB1)を得た。この顔料分散液(TCB1)596gにアクリルポリマー(P1)の3―メトキシ―3―メチルブタノール45質量%溶液6.1g、合成例1で得られたビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート型化合物(A2)の3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート50質量%溶液46.9g、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、DPHA)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量%溶液13.6g、光開始剤としてCGI−113(チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)製)2.37g、(7)または(8)で表されるカルバゾール系光開始剤14.7gおよびN,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン1.9g、密着性改良剤としてKBM1003(信越化学工業(株)製)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量%溶液2.7g、シリコーン系界面活性剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10質量%溶液2.7gを3―メチル―3−メトキシ−ブチルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合溶媒に溶解した溶液を添加、混合し、黒色カラーレジストを調製した。
【0080】
調製したカラーレジストを2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過後、膜厚が1μm(ポストベーク後)になるように無アルカリガラス基板上へダイコーティング装置で塗布した。塗布速度は3m/分とした。塗布した基板を減圧乾燥(100Pa)後、90℃のホットプレートで2分加熱処理し、カラーレジスト塗膜を作製し、この塗布膜に解像度テスト用マスクを介して紫外線を200mJ/cmの露光量で露光した。
【0081】
次に、0.04質量%KOH水溶液に、非イオン界面活性剤として“エマルゲン(登録商標)”A−60(HLB12.8、ポリオキシエチレン誘導体)(花王(株)製)を現像液総量に対して0.2%添加したアルカリ現像液で未露光部分が溶解する時間の1.7倍スプレー現像し、続いて純水洗浄することにより、パターンニング基板を得た。得られたパターンニング基板を熱風オーブン中230℃で30分保持し、ポストベークを行ないパターンニング基板を得た。この基板を評価法と評価の基準に従い、顔料残さ、感度、ポストベーク後のパターン形状を調べた。結果を表1に示した。
【0082】
実施例2〜7、比較例1〜4
実施例1において、モノマー成分の種類を、化合物(A2)の代わりに(A3)〜(D2)に変更した以外は実施例1と同様の操作で黒色カラーレジストを作製した。得られた感光性樹脂組成物について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
実施例1〜7と比較例1〜4の比較から、フルオレン骨格またはビスフェノール型構造を有するアクリレート化合物について本発明で示した化合物を用いると、水酸基を有する(A1)、(B1)、(C1)、(D1)を用いた場合に見られるような残渣の発生が解消され、より良好なパターン形状が得られることが分かる。特に化合物(A2)を用いた場合、感度が最も良好なレジスト組成物が得られる。
【0084】
比較例5
実施例1において、開始剤成分の種類をCGI−124(チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)製)である1−(4−フェニル−チオフェニル)−オクタン−1,2―ジオン−2−オキシム−0−ベンゾエート14.7gに変更した以外は実施例1と同様の操作で感光性樹脂組成物を作製した。評価結果は表1に示す。
【0085】
(7)または(8)で表されるカルバゾール系光開始剤を用いた場合と比較例5を比べると、カルバゾール系光開始剤を用いた系は比較例5の約10倍以上の非常に高い感度を有していることが分かる。
【0086】
実施例8
大同化成(株)製の酸性処理カーボンブラック9930CF 240g、“ソルスパース(登録商標)”24000(アビシヤ(株)製)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20質量%溶液120gアクリルポリマー(P1)の3―メトキシ―3―メチルブタノール45質量%溶液160g、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート980gを秤量し、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて2000rpmで3時間分散し、顔料濃度16質量%の顔料分散液(CB1)を得た。この顔料分散液(CB1)543gにアクリルポリマー(P1)の3―メチル―3―メトキシブタノール45質量%溶液23.1g、合成例1で得られたビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート型化合物(A2)43.6g、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、DPHA)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量%溶液15.6g、光重合開始剤としてCGI−113(チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)製)2.3g、(8)で表されるカルバゾール系光開始剤14.1gおよびN,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン2.3g、接着性改良剤としてKBM403(信越化学工業(株)製)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量%溶液2.7g、シリコーン系界面活性剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10質量%溶液2.7gを3―メチル―3−メトキシ−ブチルアセテート95.3gおよび3―メチル―3―メトキシブタノール199.6gに溶解した溶液を添加、混合し、黒色カラーレジストを調製した。
調製したカラーレジストを2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過後、膜厚が1μm(ポストベーク後)になるように無アルカリガラス基板上へダイコーティング装置で塗布した。以下実施例1と同様にしてパターンニング基板を得た。この基板を評価法と評価の基準に従い、顔料残さ、感度、ポストベーク後のパターン形状を調べた。結果を表1に示した。
【0087】
比較例6
実施例8において、モノマー成分の種類を、化合物(A2)の代わりに(A1)に変更した以外は実施例8と同様の操作で感光性樹脂組成物を作製した。評価結果は表1に示す。
【0088】
比較例7
実施例8において、開始剤成分の種類をCGI−124(チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)製)である1−(4−フェニル−チオフェニル)−オクタン−1,2―ジオン−2−オキシム−0−ベンゾエート14.1gに変更した以外は実施例8と同様の操作で感光性樹脂組成物を作製した。評価結果は表1に示す。
カーボン単独の系においても、(A1)を用いた比較例6では残渣が多発したが、(A2)を用いた実施例8の場合、チタンとカーボンの混合系と同様に残渣はみとめられずパターン形状も良好であった。また実施例8や比較例6(カルバゾール系光開始剤を用いた場合)は比較例7に比べて非常に高い感度が得られる。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料(A)、アクリル系ポリマー(B)、モノマー(C)、光開始剤(D)、および溶媒(E)を含有する感光性レジスト組成物において、該モノマー(C)が、下記一般式(1)および/または一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする感光性レジスト組成物。
【化1】

【化2】

(式中、R、R、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは任意の有機基で表される。Rは置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基若しくはアルキニレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基又は炭素数7〜20のアラルキレン基を表す。mは0〜10の整数、nは1〜20の整数である。)
【請求項2】
が、下記一般式(3)で表される置換基である請求項1に記載の感光性レジスト組成物。
【化3】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基のいずれかで示され、これらは置換基を有していても良い。)
【請求項3】
前記光開始剤(D)が、下記一般式(4)で表される化合物を必須成分とすることを特徴とする請求項1、2いずれかに記載の感光性レジスト組成物。
【化4】

(式中、Rは水素原子または一価の有機基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で表される。)
【請求項4】
上記一価の有機基が下記一般式(5)または(6)で表される置換基である請求項3に記載の感光性レジスト組成物。
【化5】

【化6】

【請求項5】
前記アクリル系ポリマー(B)が、カルボキシル基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性レジスト組成物。
【請求項6】
前記アクリル系ポリマー(B)が側鎖にエチレン性不飽和基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性レジスト組成物。
【請求項7】
前記顔料(A)が、チタンブラックおよび/またはカーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感光性レジスト組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の感光性レジスト組成物を用いたことを特徴とするカラーフィルター。

【公開番号】特開2008−249987(P2008−249987A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91096(P2007−91096)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】