説明

感光性樹脂用基材、感光性樹脂組成物、および光散乱膜

【課題】薄膜で十分な散乱性を示すとともに、平坦性が良好であり、必要な部分に選択的にパターニングすることが可能な感光性組成物を提供する感光性樹脂用基材、この感光性樹脂用基材を含む感光性組成物、この感光性樹脂組成物から形成された光散乱膜を提供する。
【解決手段】下記式により表わされる構造を有することを特徴とする感光性樹脂用基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂用基材、この感光性樹脂用基材を含む感光性樹脂組成物、及びこの感光性樹脂組成物を用いて形成された、液晶表示装置用の光散乱膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、入射した光の偏光方向を液晶の配向状態を用いて制御することによって画像を表示するものである。この液晶表示装置は、光源の有無から、透過型、反射型、半透過型の3種類に大別することが出来る。
【0003】
透過型液晶表示装置は、背面電極基板の裏面もしくは側面に光源を配置し、この光源より照射された光により画面表示を行なう液晶表示装置である。また、反射型液晶は光源を内蔵せず、装置の前面から入射された光を利用して表示を行なう液晶表示装置である。更に近年においては、透過型液晶表示装置と反射型液晶表示装置の両方の機能を兼ね備えた半透過型液晶表示装置が提案されている。
【0004】
反射型液晶表示装置または半透過型液晶表示装置は、前方から入射した室内光若しくは自然光を光源として利用する。このため、これらの液晶表示装置は、背面電極基板の表面に前方から入射した光を反射する反射電極、および表示装置内のいずれかの場所に観察者の表示認識角度すなわち視野角を広くするための、射出される光を散乱する光散乱機能を備えた構造を有する。
【0005】
光散乱機能を備えた構造としては、観察者側電極基板の表面に光散乱膜を設けた構造、あるいは背面電極基板の表面の反射電極表面に凹凸を設けた構造が実用化されている。しかし、観察者側電極基板の表面に光散乱膜を設けた構造は、次のような問題点を抱えている。
【0006】
(1) 後方散乱のため光の利用効率が劣り、画面表示が暗くなるという欠点がある。
【0007】
(2) 観察者側電極基板の厚みを介して光が散乱するため、散乱してからカラーフィルタを通過するまでの距離が長く、カラーフィルタを透過した散乱光が混色してしまうため、解像度が劣るという欠点がある。
【0008】
一方、背面電極基板の表面の反射電極表面に凹凸を設けた構造は、入射光が反射電極で一部吸収される以外は光の損失がないため、光の利用効率に優れているという利点がある。
【0009】
しかし、反射電極表面の凹凸形成には、フォトリソグラフィー法等の処理工程を用いなければならず、製造工程が煩雑になり、歩留まりの低下や、製造コストが上昇する等の欠点がある。
【0010】
以上、これらの光散乱機能を有する構造の不具合点を考慮し、背面電極基板と観察者側電極基板の2枚の電極基板で挟まれた空間内(以下セル内と呼ぶ)に光散乱膜を有する構造が提案されている。そのような構造を有する半透過型液晶表示装置を図2に示す。
【0011】
図2に示す半透過型液晶表示装置は、観察者側電極基板21と背面側電極基板22との間に液晶層23を挟持することにより構成されている。観察者側電極基板21は、透明基板24、カラーフィルタ25、光散乱膜26、及び透明電極27とから構成される。カラーフィルタ25は、透過部28と反射部29とからなり、光散乱膜26は、透明樹脂30に透明粒子31を分散させてなる。
【0012】
図2に示すように、光散乱膜26は、カラーフィルタ25と透明電極27との間、即ちセル内に設けられている。
【0013】
この光散乱膜26は、透明樹脂30である連続層の中に透明粒子31を分散させた構成であり、連続層と粒子の屈折率差により光散乱効果が得られる。この構造を用いることで、反射電極表面に凹凸を形成する必要がないため、パネル製造の歩留まり面で有利であり、かつセル内で光が散乱するため、セル外に配置する場合と比較して解像度が低下しない反射型液晶表示装置を得ることができるという利点がある。
【0014】
しかし、セル内は光散乱膜を配置できる空間が狭いため、光散乱膜は、その他の方式よりも、薄膜で十分な散乱性が必要である。また、光散乱膜の表面は、直接、液晶層の配向に影響を与えるため、十分な平坦性が要求される。更に、セル内の必要な位置に設けるため、光散乱膜をパターニングする必要がある。これらの課題を解決するため、特許文献1に開示されているような技術が提案されている。
【0015】
しかし、光散乱膜に十分なパターニング性を持たせるためには、透明樹脂30がパターニングに必要な重合性不飽和基材を含むことが必要であり、透明樹脂30が重合性不飽和基材を含む場合には、その影響により粒子と連続層に十分な屈折率差を得る事が出来ず、十分な光散乱性を得ることが出来ない。特に、光散乱膜が薄膜の場合には、十分な光散乱性を得ることが出来なかった。
【特許文献1】特開2003−222711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされ、薄膜で十分な散乱性を示すとともに、平坦性が良好であり、必要な部分に選択的にパターニングすることが可能な感光性組成物を提供する感光性樹脂用基材、この感光性樹脂用基材を含む感光性組成物、この感光性樹脂組成物から形成された光散乱膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の形態は、下記式(1)により表わされる構造を有することを特徴とする感光性樹脂用基材を提供する。
【化2】

【0018】
(式中、R1は、水素又はメチル基を示し、Rは、炭素数2〜12のアルキル基又はウレタン基を含む炭素数6〜15の有機基を示し、R3は、炭素数1〜6の有機基を示し、nは1〜2の整数、mは1〜5の整数をそれぞれ示す。)
また、本発明の第2の形態は、上記感光性樹脂用基材と、アルカリ可溶型透明樹脂と、光重合性開始剤と、光散乱剤とを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物を提供する。
【0019】
更に、本発明の第3の形態は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成された光散乱膜を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薄膜で十分な平坦性と、散乱性があり、必要な部分に選択的にパターニングすることが可能な感光性組成物を提供することができ、さらにその感光性組成物から形成される光散乱膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る感光性組成物を用いた半透過型液晶表示装置を示す断面図である。図1に示す半透過型液晶表示装置は、観察者側電極基板1と背面側電極基板2との間に液晶層3を挟持することにより構成されている。観察者側電極基板1は、透明基板4、カラーフィルタ5、光散乱膜6、及び透明電極7とから構成される。カラーフィルタ5は、透過部8と反射部9とからなり、光散乱膜6は、透明樹脂10に透明粒子11を分散させてなる。
【0023】
以下、光散乱膜6の透明樹脂10を構成する、本発明の一実施形態に係る光散乱膜用感光性組成物組成物について、具体的に説明する。
【0024】
本発明の一実施形態に係る光散乱膜用感光性組成物は、感光性樹脂用基材と、アルカリ可溶型透明樹脂と、光重合性開始剤と、光散乱剤とを含有する。以下、それぞれの成分について説明する。
【0025】
感光性樹脂用基材
上記式(1)により表わされる構造を有する感光性樹脂用基材は、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂にアクリル酸を付加した後、イソシアネート基及び不飽和基を有する化合物を付加し、更に、メルカプト基及びカルボン酸基を有する化合物を付加することにより得られる。
【0026】
フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、フルオレンジグリシジルエーテルが例示される。フルオレンジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応割合は、両者の反応性を高める観点から、フルオレンジグリシジルエーテル1モルに対してアクリル酸が1.5〜2.5倍モルであるのが好ましく、1.8〜2.2倍モルであるのがより好ましい。
【0027】
反応温度は、反応性および安定性の観点から80℃〜130℃であるのが好ましく、90℃〜110℃であるのがより好ましい。
【0028】
反応において不飽和基の熱による重合を予防する措置として、必要に応じて、例えば、4−メトキシフェノール、1,4−ヒドロキノン、1,4−ベンゾキノン、ジ−第三ブチルパラクレゾールなどの重合防止剤を使用することができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
これら重合防止剤の配合量は、例えば、アクリル酸に対して0モル%〜10モル%、好ましくは0モル%〜2モル%である。或いは、反応液に空気を吹き込んで不飽和基の熱による重合を予防する公知の事実を利用しても良い。
【0030】
反応の際には、例えば、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルベンジルアミン等のアミン類およびその4級塩などの触媒を用いることができる。触媒の量は、通常、アクリル酸1モルに対して、0.1モル%〜30モル%程度であることが好ましい。
【0031】
無溶媒でもかまわないが、必要に応じ、反応溶剤として、水酸基、アミノ基等の活性水素を有しない溶剤、例えばテトラヒドロフラン等のエーテル類や、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類や、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸エステル類等を用いることができる。芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等を使用してもよい。
【0032】
反応をモニターする手段としては、例えば、酸価滴定を用いることができ、酸価滴定を用いて酸価が消失するまで反応させればよい。
【0033】
このようにして、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂のアクリル酸付加物が得られる。
【0034】
次に、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂のアクリル酸付加物に、イソシアネート基及び不飽和基を有する化合物を付加させる。イソシアネート基及び不飽和基を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜12のアルキル基を介してイソシアネート基と結合したもの、または、ウレタン基を含む炭素数6〜15の有機基を有するものを使用することができる。具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製「カレンズMOI」)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製「カレンズAOI」)、またはペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基1モルに対してイソホロンジイソシアネート1モルを反応させた化合物等が例示される。
【0035】
反応割合としては、両者の反応性を高める観点から、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂のアクリル酸付加物1モルに対して、イソシアネート基及び不飽和基を有する化合物の0.2〜2.5倍モルの使用が好ましく、1.0〜2.0倍モルの使用がより好ましい。イソシアネート基及び不飽和基を有する化合物の割合が上記範囲より多い場合は、反応液中に未反応のイソシアネート基及び不飽和基を有する化合物が残留してしまい、純度を低下させる原因となる。
【0036】
反応温度は、反応性および安定性の観点から、30℃〜120℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましい。
【0037】
反応をモニターする手段としては、例えば、赤外線吸収スペクトルを用いることができ、赤外線吸収スペクトルにより2280cm−1のイソシアネート基によるピークが消失するまで反応させればよい。
【0038】
このようにして、フルオレン骨格に不飽和基を有する樹脂が得られる。
【0039】
次に、フルオレン骨格に不飽和基を有する樹脂に、メルカプト基及びカルボン酸基を有する化合物を付加する。メルカプト基及びカルボン酸基を有する化合物としては、例えば、メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、o−メルカプト安息香酸、2−メルカプトニコチン酸、メルカプトコハク酸などが例示される。
【0040】
反応割合は、現像性および耐薬品性の観点から、樹脂100重量部に対し、メルカプト基及びカルボン酸基を有する化合物0.5〜50重量部、好ましくは1〜20重量部であることが好ましく、その樹脂の固形分に換算した酸価は、現像性および耐薬品性の観点から、5〜150mg−KOH/gが好ましく、10〜80mg−KOH/gであるのが更に好ましい。
【0041】
反応温度は、反応性および安定性の観点から、30〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。
【0042】
反応をモニターする手段としては、例えば、ヨードメトリー滴定法を用いることができ、ヨードメトリー滴定法を用いてメルカプト基含量が消失するまで反応させればよい。
【0043】
アルカリ可溶型透明樹脂
本発明の一実施形態に係る光散乱膜用感光性樹脂組成物に用いることの出来るアルカリ可溶型透明樹脂としては、アルキルアクリレート、環状アクリレート、環状メタクリレート、ヒドロキシエチルエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル系モノマーとエチレン性の不飽和基を有するラジカル重合性のモノマーからなるアクリル系透明樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート透明樹脂を使用することが出来る。ただし、上記樹脂に限定されるものではない。また、必要に応じて2種類以上混合しても構わない。また、アルカリ可溶型透明樹脂の屈折率としては、特に限定されるものではないが、1.50以上、より好ましくは1.57以上であれば良い。
【0044】
光重合開始剤
本発明の一実施形態に係る光散乱膜用感光性樹脂組成物に用いることの出来る光重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリルs−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が挙げられる。上記光重合開始剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いられる。
【0045】
本発明の一実施形態に係る光散乱膜用感光性樹脂組成物は、増感剤を含有してもよい。増感剤としては、例えば、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。上記増感剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いられる。
【0046】
光散乱剤
本発明の一実施形態に係る光散乱膜用感光性樹脂組成物に含まれる光散乱剤としては、熱や薬品耐性のあるものであれば、問題は無い。シリコン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、フッ素系アクリレート樹脂等の有機物の他にも、アモルファスシリカ、酸化アルミニウム等の無機物、さらには、有機物と無機物の複合物等が使用可能である。
【0047】
その他の成分
本発明の一実施形態に係る光散乱膜用感光性樹脂組成物は、均一な光散乱膜を形成するため、溶剤を含有させることが好ましい。溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独で、もしくは混合して用いることができる。
【0048】
本発明の一実施形態に係る光散乱膜用感光性樹脂組成物には、塗工性向上、感度の向上、密着性の向上などを目的として、連鎖移動剤、界面活性剤、シランカップリング剤等の添加剤を添加しても良い。
【0049】
本発明の一実施形態に係る光散乱膜用感光性樹脂組成物は、各成分を混合し、シェーカー、デスパー、サンドミル、アトライター等の各種分散装置を用いて分散することにより製造することができる。光散乱膜用組成物には、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0050】
実施例
以下に、本発明の具体的実施例を示すが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(合成例1)
攪拌機、温度計、冷却管、及び吹き込み管を備えた2L4ツ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル466g(大阪ガス製、エポキシ当量233)、アクリル酸144g(大阪有機化学工業製)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート986g、ジメチルベンジルアミン2g、及びジ第三ブチルパラクレゾール0.1gを仕込み、100℃で20時間反応させた。反応の進行は、酸価滴定によりモニターし、酸価が消失する時点まで反応を続行した。
【0052】
次に、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製「カレンズMOI」)310gを仕込み、50℃で20時間反応させた。反応の進行は、赤外線吸収スペクトルによりモニターし、2280cm-1のイソシアネート基によるピークが消失する時点まで反応を続行した。
【0053】
次いで、メルカプトコハク酸66gを仕込み、50℃で20時間反応させた。反応の進行は、ヨードメトリー滴定法でモニターし、メルカプト基含量が消失する時点まで反応を続行した。
【0054】
その結果、得られた感光性樹脂用基材溶液は、固形分濃度50%、基材の理論二重結合当量277、酸価(固形分換算)50、屈折率1.59であった。
【0055】
(合成例2)
攪拌機、温度計、冷却管、吹き込み管を備えた2L4ツ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル466g(大阪ガス製、エポキシ当量233)、アクリル酸144g(大阪有機化学工業製)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート972g、ジメチルベンジルアミン2g、及びジ第三ブチルパラクレゾール0.1gを仕込み、100℃で20時間反応させた。反応の進行は、酸価滴定にてモニターし、酸価が消失する時点まで反応を続行した。
【0056】
次に、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製「カレンズAOI」)282gを仕込み、50℃で20時間反応させた。反応の進行は、赤外線吸収スペクトルによりモニターし、2280cm-1のイソシアネート基によるピークが消失する時点まで反応を続行した。
【0057】
次いで、メルカプト酢酸80gを仕込み、50℃で20時間反応させた。反応の進行は、ヨードメトリー滴定法でモニターし、メルカプト基含量が消失する時点まで反応を続行した。
【0058】
その結果、得られた感光性樹脂用基材溶液は、固形分濃度50%、基材の理論二重結合当量331、酸価(固形分換算)50、屈折率1.59であった。
【0059】
実施例1
上記合成例1で得た感光性樹脂用基材(C)を含む下記に示す組成の成分を充分混合して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0060】
A:平均粒径1.5μmのフッ素化アクリル粒子 10重量
B:グリシジル基をもつフェニルマレイミド樹脂 20重量部
C:合成例1で得た感光性樹脂用基材 20重量部
D:光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「イルガキュアー907」 0.5重量部
E:有機溶媒 120重量部
次に、このようにして得た感光性樹脂組成物をガラス基板上に滴下した後、スピンナーにてガラス基板を毎分1000回転の回転速度で5秒間回転させ、90℃で2分間ホットプレート上でプリベークして、コート膜厚2.5μmの塗膜を得た。その後、オーブンにて230℃で30分間加熱し、塗膜を硬化させて、厚さ2.0μmの光散乱膜を得た。
【0061】
実施例2
合成例2で得た感光性樹脂用基材を用いたことを除いて、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、光散乱膜を得た。
【0062】
比較例
下記に示す組成の成分を充分混合して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0063】
A:平均粒径2.0μmのフッ素化アクリル粒子 10重量部
B:グリシジル基をもつフェニルマレイミド樹脂 20重量部
C;ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート
(東亞合成製「アロニックスM-402」) 20重量部
D:光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「イルガキュアー907」 0.5重量部
E:有機溶媒 120重量部
次に、このようにして得た感光性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして光散乱膜を得た。
【0064】
光散乱膜の評価方法は、次の通りである。
【0065】
即ち、光散乱膜の散乱度は、ヘイズ値の測定で評価を行った。使用した装置は、HAZEMETER HM-150(村上色彩技術研究所製)であった。その結果を下記表1に示す。
【0066】
光散乱膜の平坦性は、表面粗さ(Ra)により評価を行った。表面粗さは、Dektak 3030(日本真空技術製)で測定した。その結果を下記表1に示す。
【0067】
パターニング性の評価は、下記に示す手順にて行った。
【0068】
即ち、感光性樹脂組成物をガラス基板上に滴下した後、スピンナーにてガラス基板を毎分1000回転の回転速度にて5秒間回転させ、90℃で2分間ホットプレート上でプリベークして、コート膜厚2.5μmの塗膜を得た。その後、この塗膜に所定のマスクを介して露光量200mJ/cm(i線)で露光を行った後、アルカリ現像液にて現像し、純水で洗浄して、ストライプ50μm、スペース50μmのパターン形成の可否について評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【表1】

【0069】
上記表1の結果から、式(1)により表わされる樹脂用基材を含む感光性樹脂組成物(合成例1,2)を用いて得た光散乱膜は、膜厚が2μm程度と薄くても、比較例に係る光散乱膜よりも明るく、白い表示特性を示した。更に、表面の平坦性は、比較例に係る光散乱膜に含まれる散乱粒子よりも粒径が小さくても十分な散乱性が得られるため、比較例に係る光散乱膜よりも十分平坦であり、液晶の表示特性に影響を与えないレベルの粗さにすることが出来た。また、パターニング性は、比較例に係る光散乱膜と同等レベルであった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る感光性樹脂組成物を用いて得た光散乱膜を備える半透過型液晶表示装置の断面図。
【図2】従来の半透過型液晶表示装置の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0071】
1,21・・・観察者側電極基板、2.22・・・背面側電極基板、3,23・・・液晶層、4,24・・・透明基板、5,25・・・カラーフィルタ、6,26・・・光散乱膜、7,27・・・透明電極、8,28・・・透過部、9,20・・・反射部、10,30・・・透明樹脂、11,31・・・透明粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)により表わされる構造を有することを特徴とする感光性樹脂用基材。
【化1】

(式中、R1は、水素又はメチル基を示し、Rは、炭素数2〜12のアルキル基又はウレタン基を含む炭素数6〜15の有機基を示し、R3は、炭素数1〜6の有機基を示し、nは1〜2の整数、mは1〜5の整数をそれぞれ示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂用基材と、アルカリ可溶型透明樹脂と、光重合性開始剤と、光散乱剤とを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された光散乱膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−176964(P2007−176964A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373569(P2005−373569)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】