説明

感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器

【課題】 本発明の目的は、現像性、低損失、耐熱性を同時に兼ね備えた感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を提供することである。
【解決手段】 本発明の観光性樹脂組成物は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する環状オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物であって、前記環状オレフィン系共重合体の重量平均分子量が30,000〜200,000であり、かつ、前記環状オレフィン系共重合体において前記下記式(1)で表される繰り返し単位のモル分率をXとしたときに、Xは20〜50mol%の範囲であることを特徴とする。また本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器は、上記感光性樹脂組成物を用いるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像性、低損失、耐熱性を同時に兼ね備えた感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データ通信量の増大に伴い、従来の電気伝送で問題となる信号の干渉や減衰を解決する手段として光通信が注目されている。光輸送媒体として最も頻繁に使用されているのはガラス光ファイバーであるが、回路の高密度化によって使用上の問題を引き起こしたり、高コストになったりするので、煩雑な高密度回路には好ましくない。一方で、光輸送媒体にポリマー材料を利用した光導波路は、合理的コストで、信頼性があり、実用的なコンポーネントを作成することができ、しかも集積光学に必要な機能が実行できる点で、有望視されている。
【0003】
光導波路は光を伝送するコア部と、コア部より低屈折率な材料から成り立つクラッド部で構成されている(図1)。この構造を作成するのにつかわれる手法の一つとしてフォトリソグラフィ方式がある(特許文献1)。この手法では、目的個所のみを残し、他は完全に除去することが重要となり、現像性が大きな要求特性のひとつとなる。
【0004】
現像性が求められる一方で、光輸送媒体としての光信号の低損失化や、電気・電子部品の実装工程を必要とする製品向けには高温のはんだ耐熱性などが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2005−221556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑み、現像性・低損失・耐熱性を同時に兼ね備えた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、前記感光性樹脂組成物を用いることにより、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(12)に記載の本発明により達成される。
(1)下記式(1)で表される繰り返し単位を有する環状オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物であって、前記環状オレフィン系共重合体の重量平均分子量が30,000〜200,000であり、かつ、前記環状オレフィン系共重合体において前記下記式(1)で表される繰り返し単位のモル分率をXとしたときに、Xは20〜50mol%の範囲であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(2)さらに、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する前記環状オレフィン系共重合体を含む前記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
【0010】
【化2】

【0011】
(3)さらに、下記式(3)で表される繰り返し単位を有する前記環状オレフィン系共重合体を含む前記(1)又は(2)に記載の感光性樹脂組成物。
【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

(4)下記式(8)で表される前記環状オレフィン系共重合体を含む前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0017】
【化8】

【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

(5)前記化学式(1)の側鎖部分は、光二量化反応により架橋するものである前記環状オレフィン系共重合体を含む前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(6)前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の前記感光性樹脂組成物は、光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いられることを特徴とする光導波路形成用感光性樹脂組成物。(7)前記(6)に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする光導波路形成用フィルム。
(8)前記(7)に記載の光導波路形成用フィルムに、光を照射することにより形成されるコア部を有することを特徴とする光導波路。
(9)前記コア部より低い屈折率を有するクラッド部により、前記コア部を覆ってなるものである前記(8)に記載の光導波路。
(10)前記(8)又は(9)に記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
(11)電気配線と、前記(10)に記載の光配線とを有することを特徴とする光電気混載基板。
(12)前記(8)又は(9)に記載の光導波路を備えたことを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、現像性、低損失および耐熱性に優れた感光性樹脂組成物を提供することができる。
また、前記感光性樹脂組成物を用いることにより、現像性、低損失および耐熱性に優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】光を伝搬するためのコア部と、前記コア部より屈折率の小さいクラッド部を備えた光導波路の断面図である。
【図2】図1に示す光導波路を製造する方法を説明するための図である。
【図3】リフロー試験における昇温プログラムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器について説明する。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する環状オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物であって、前記環状オレフィン系共重合体の重量平均分子量が30,000〜200,000であり、かつ、前記環状オレフィン系共重合体において前記環状オレフィン系共重合体において前記下記式(1)で表される繰り返し単位のモル分率をXとしたときに、Xは20〜50mol%の範囲であることを特徴とする。
本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、前記感光性樹脂組成物を光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いられることを特徴とする。
本発明の光導波路形成用フィルムは、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする。
本発明の光導波路は、前記光導波路形成用フィルムに光を照射することにより形成されるコア部を有することを特徴とする。
本発明の光配線は、前記光導波路を備えたことを特徴とする。
本発明の光電気混載基板は、電気配線と、前記光配線とを有することを特徴とする。
本発明の電子機器は、前記光導波路を備えたことを特徴とする。
【0026】
まず、感光性樹脂組成物について説明する。
前記感光性樹脂組成物は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する環状オレフィン系共重合体を含む。これにより、特に耐熱性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
【化1】

【0028】
なかでも、R及び/またはRは炭素数1のヒドロカルビル基であることがより好ましい。これにより、光照射による光二量化反応が起こり、任意の場所のみを残しその他を除去できるフォトリソグラフィ法を用いることができるようになる。さらに、R及び/またはRが炭素数1のヒドロカルビル基であること、かつ、Aがメチレン基、あるいは直鎖状または分岐状の炭素数2〜6のヒドロカルビレン基であることが好ましい。これにより、光二量化反応の反応性が高く、かつ、フィルム成型時に柔軟性及び耐熱性の高い感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0029】
前記環状オレフィン系共重合体の重量平均分子量は、30,000〜200,000である。これにより、フォトリソグラフィ方式を用いて前記光導波路を形成しても、目的個所のみを残し、他は完全に除去することが可能となり、高い現像性を得ることができる。なかでも、前記重量平均分子量は、40,000〜170,000であることがより好ましく、50,000〜150,000であることが、特に好ましい。これにより、さらに高い現像性と高い光伝搬性を兼ね備えた前記光導波路の形成が可能となる。
例えば、前記重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフを用い、標準ポリスチレンで検量線を作成し、ポリスチレン換算で求めることができる。例えば、装置として、東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフHLC−8020システムに、TSK−gel GMLカラムとTSK−gel G2000Hカラム、示差屈折計を用い、移動相としてテトラヒドロフランを用いて、40℃、流速1.0ml/minの条件で測定を行い、標準ポリスチレンとして東ソー製PS−オリゴマーキットを用いて、リテンションタイムと分子量の検量線を作製し、環状オレフィン系共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量を求めることができる。
【0030】
前記環状オレフィン系共重合体において、前記式(1)で表される繰り返し単位のモル分率をXとしたときに、Xは20〜50mol%である。これにより、フォトリソグラフィ方式を用いて前記光導波路を形成しても、目的個所のみを残し、他は完全に除去することが可能となり、高い現像性を得ることができる。
なかでも、前記重環状オレフィン系共重合体のモル分率Xは、20〜40mol%であることがより好ましく、特に、25〜35mol%であることが、さらに好ましい。これにより、高い現像性を備えつつ、高い280℃リフロー耐熱性を併せ持った前記導波路を形成することが可能となる。
【0031】
さらに、前記環状オレフィン系共重合体は、下記式(2)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。これにより、前記環状オレフィン系共重合体に柔軟性が加えられ、成膜したときに破損のない、フレキシブルなフィルムを作製することができる。
【0032】
【化2】

【0033】
なかでも、nは1〜15の整数であることがより好ましい。これにより、前記環状オレフィン系共重合体に柔軟性が加えられ、成膜したときに破損のないフレキシブルなフィルムを作製することができる。さらに、nは4〜8であることが好ましい。これにより、リジッド基板間との内部応力変化に耐えられるほどの引っ張り強度を持ち、さらに温度変化/内部応力変化に柔軟に対応できる伸び率をもった破損のないフレキシブルなフィルムを作製できる。
【0034】
さらに、前記環状オレフィン系共重合体は、下記式(3)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。これにより、前記環状オレフィン系共重合体の屈折率が向上し、光の閉じ込めに有利な導波路のコア部に好適に用いることができる。
【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
前記環状オレフィン系共重合体は、具体的には、下記式(8)で表されるノルボルネン系共重合体を使用することが好ましい。これにより、高い現像性を持ち、高耐熱性で柔軟性の高いフィルムを形成することができ、更に屈折率変調可能な前記光導波路を作製することができる。
【0041】
【化8】

【0042】
【化4】

【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
式(8)で表される環状オレフィン系共重合体において、20≦p≦50であることが好ましい。これにより、フォトリソグラフィ方式を用いて前記光導波路を形成した際に、目的個所のみを残し、他は完全に除去することが可能となり、高い現像性を得ることができる。なかでも、20≦p≦40であることがより好ましく、25≦p≦35であることがさらに好ましい。これにより、高い現像性を備えつつ、高い280℃リフロー耐熱性を併せ持った前記導波路を形成することが可能となる。
また、式(8)で表される環状オレフィン系共重合体において、20≦q≦65であることが好ましい。これにより、前記環状オレフィン系共重合体に柔軟性が加えられ、成膜したときに破損のない、フレキシブルな光導波路形成用フィルムを作製することができる。なかでも、25≦q<60であることがより好ましく、35≦q≦45であることがさらに好ましい。これにより、高い柔軟性を備えつつ、高屈折率性及び高い光二量化反応性を有した環状オレフィン系共重合体を得ることができる。
また、式(8)で表される環状オレフィン系共重合体において、15≦r≦60であることが好ましい。これにより、前記環状オレフィン系共重合体の屈折率が向上し、光の閉じ込めを必要とする導波路のコア部に、好適に用いることができる。なかでも、20≦r≦55であることがより好ましく、25≦r≦35であることがさらに好ましい。これにより、高屈折率性を備えつつ、高い耐熱性および現像性を有する光導波路形成用フィルムを得ることができる。
【0047】
前記式(1)の側鎖部分は、光二量化反応により架橋するものであることが好ましい。光二量化反応とは、光照射により炭素二重結合同士が反応し二量化する反応のことである。これにより、光照射した部分のみが光二量化反応により硬化し、現像により任意の部分のみを残すフォトリソグラフィ法を用いた導波路の作製が可能となる。
【0048】
以上、前記環状オレフィン系共重合体が前記式(1)〜(3)で表される繰り返し単位を有する場合について説明したが、前記式(1)で表される繰り返し単位を有していれば、前記環状オレフィン系共重合体が有する繰り返し単位の種類および数は特に限定されない。
【0049】
前記感光性樹脂組成物は、特に限定されないが、酸化防止剤を含有していてもよい。これにより、前記感光性樹脂組成物を安定的に保管することができる。
前記酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、ニューヨーク州タリータウンのCiba Specialty Chemicals社から入手可能なCiba(登録商標、以下同様である。) IRGANOX(登録商標、以下同様である。) 1076およびCiba IRGAFOS(登録商標、以下同様である。) 168が好適に用いられる。 また、他の酸化防止剤としては、例えば、Ciba Irganox(登録商標) 129、Ciba Irganox 1330、Ciba Irganox 1010、Ciba Cyanox(登録商標) 1790、Ciba Irganox(登録商標) 3114、Ciba Irganox 3125等を用いることもできる。
【0050】
前記感光性樹脂組成物は、前記環状オレフィン系共重合体の他に、増感剤を含有していても良い。
増感剤は、光に対する感光性樹脂組成物の感度を増大して、感光性樹脂組成物の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、感光性樹脂組成物の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0051】
本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、上述したような感光性樹脂組成物を光導波路形成用として用いるものである。
【0052】
本発明の光導波路形成用フィルムは、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物を、適当な溶媒を用いて希釈し、樹脂ワニスを得ることができる。この樹脂ワニスを基板上に塗布・乾燥して光導波路形成用フィルムを得ることができる。
前記溶媒は、特に限定されないが、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、リモネン、デカリン等が挙げられる。これらの溶媒を1種又は2種以上混合して使用してもよい。前記樹脂ワニスにおける前記環状オレフィン系共重合体の含有量は、前記樹脂ワニス中で5〜50重量%であることが好ましい。これにより、ワニスに塗布に適した粘性を付与して、塗布性能を向上させることができる。なかでも、10〜30重量%であることがさらに好ましい。これにより、前記感光性樹脂組成物を基材等に塗布する際に、気泡の巻き込みが防止され、かつ、一定の厚みを得るために適した粘度を得ることが出来る。
【0053】
次に、光導波路について説明する。
図1は、光導波路の一例を示す断面図である。 図1に示すように、光導波路10は、板状の第1クラッド部1と、第1クラッド部1の上側面(図1中の上側)に配置された第1クラッド部よりも屈折率の高いコア部2と、コア部2の側面および上面を覆うように配置され、コア部2よりも屈折率の低い第2クラッド部3から形成されている。
このような構成を有することにより、コア部2の一端側に入射された光信号は、第1クラッド部1および第2クラッド部3との界面で全反射し、コア部2の他端側に伝達され、光通信が可能となる。
なお、第一クラッド部1および第2クラッド部3の構成材料は、それぞれ、同一(同種)のものでも異なるものでもよいが、これらは、屈折率が同じかまたは近似しているものであることが好ましい。第一クラッド部1および第2クラッド部3の構成材料の詳細については、後述する。
【0054】
次に、上述した光導波路10の製造方法について、図2を用いて説明する。
図2(A)に示すように、光導波路形成用フィルム(コア部用)2aの上方に、開口部が形成されたマスク4を配置し、このマスク4の開口を介して、光導波路形成用フィルム(コア部用)2aに光5を照射する。これにより、図2(B)に示すように、光5を照射した領域では、前記前記環状オレフィン系共重合体の側鎖であるマレイミド基が架橋し、コア部2が形成される。
次に、図2(C)に示すように、光導波路形成用フィルム(コア部用)2aにおける光5の未照射領域2bを除去する。
最後に、図2(D)に示すように、コア部2の側面および上部を覆うように第2クラッド部3を形成する。
【0055】
本発明の光導波路形成用フィルムは、上述した光導波路10の第1クラッド部1、コア部2および第2クラッド部3に好適に用いることができるものである。
【0056】
第1クラッド部1、光導波路形成用フィルム(コア部用)2aおよび第2クラッド部3を形成する方法について説明する。はじめに、感光性樹脂組成物を溶媒に溶かして樹脂ワニスを構成する。樹脂ワニスを平滑な支持基板上に塗布し、これを乾燥させ溶媒を蒸発する。次に、支持基板上で乾燥させた樹脂ワニス全体もしくはその一部に、光を照射して、前記感光性樹脂組成物に含まれる前記環状オレフィン系共重合体の架橋密度を向上させることにより、フィルム状に成形する。最後に、成形物を支持基板上から剥離することにより、光導波路形成用フィルムを得る。
また、支持基板を用いず、形成した第1クラッド部1上に直接光導波路形成用フィルム(コア部用)2aを形成してもよいし、反対に、事前に形成した光導波路形成用フィルム(コア部用)2a上に直接第1クラッド部1を形成してもよい。また、第1クラッド部1と光導波路形成用フィルム(コア部用)2aを個別に作成した後に、接着させてもよい。
第2クラッド部3を形成する場合においては、支持基板上ではなく、図2(D)に示すように、第1クラッド部1の上部に接着されたコア部2の側面及び上部を覆うように樹脂ワニスの塗布を行う。
【0057】
第1クラッド部1および第2クラッド部3を構成する樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物は、コア部2を構成する樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物より屈折率が低いものであれば、特に限定されない。これにより、コア部2の一端側から入射された光信号は、第1クラッド部1および第2クラッド部3との界面で全反射され他端側に到達し、光損失を小さくすることができる。
さらに、第1クラッド部1および第2クラッド部3を構成する樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物中の環状オレフィン系共重合体は、コア部2を構成する樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物中の環状オレフィン系共重合体と同種であることが好ましい。これにより、第1クラッド部1、コア部2および第2クラッド部3の界面の密着性が向上し、層間剥離を防止することができる。このため、耐久性に優れた光導波路が得られる。
【0058】
なお、第1クラッド部1および第2クラッド部3を形成するクラッド部形成用樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物は、それぞれ、同一(同種)のものでも、異なるものでもよいが、伝播損失を低減するという点から、これらは、屈折率が同じかまたは近似しているものであることが好ましい。
【0059】
ここで、樹脂ワニスを塗布する方法としては、たとえば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、前述した支持基板としては、光導波路形成用フィルムを剥離しやすいものであれば、特に限定されない。例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が好適に用いられる。
【0060】
前記感光性樹脂組成物に照射する光5としては、特に限定されないが、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、光導波路のコア部およびクラッド部に対して、300nm未満の十分なエネルギーの光を供給することができ、前記樹脂組成物の光二量化反応を促進できるため、現像性を向上することができる。
【0061】
光5の未照射領域2bを除去する方法としては、特に限定されないが、現像およびドライエッチング等が挙げられる。作業性の観点から現像液による現像が好ましい方法である。本発明の一実施形態では、コア部の材料そのものが架橋されるため、フォトレジストなどの余計な材料を用いることなく簡便に現像を行うことができる。現像処理は、従来から公知の方法で行うことができる。現像液の例として、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、リモネン、デカリンなどの溶媒等を挙げることができる。これらの溶媒を、1種又は2種以上混合して使用してもよい。さらに現像液の溶解性をコントロールするために任意の貧溶媒を添加することができる。そのような貧溶媒の例として水やエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類等を挙げることができる。
【0062】
以上の実施形態では、第1クラッド部1および第2クラッド部3の構成材料として感光性樹脂組成物を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、従来から用いられているクラッド部構成材料を用いてもよく、コア部より屈折率が低い材料であれば特に限定されない。従来から用いられているクラッド部構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等のうち、1種または2種以上を組み合わせたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、複合体(積層体)など)が挙げられる。
これらのうち、特に耐熱性に優れるという点で、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、またはそれらを含むもの(主とするもの)を用いることが好ましい。
具体例としては、特に限定されないが、ダイセル化学工業株式会社から入手可能なセロキサイド2021 P(登録商標、以下同様である。)と、東亞合成株式会社から入手可能なOS−SQ(登録商標、以下同様である。)を混合したエポキシ樹脂が上げられる。これにより、光伝搬損失が十分に抑制された光導波路を得ることができる。
【0063】
本発明の光配線は、上述したような光導波路10を有している。これにより、高密度配線基板上の任意の箇所に光配線を行うことが可能となる。
【0064】
また、本発明の光電気混載基板は、電気配線と、上述したような光導波路10を有する光配線とを有している。これにより、従来の電気配線で問題となっていたEMI(電磁波障害)の改善が可能となり、従来よりも信号伝達速度を大幅に向上することができる。
【0065】
また、本発明の電子機器は、上述したような光導波路10を有している。これにより、省スペース化を図ることができる。このような電子機器としては、具体的にはコンピューター、サーバー、携帯電話、ゲーム機器、メモリーテスター、外観検査ロボット等を挙げることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。下記の実施例および比較例において使用した光導波路を形成するための各ワニス溶液は感光性材料を含んでいるので、イエローライトの下で調製した。
【0067】
(実施例1)
(1)環状オレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ジメチルマレイミドノルボルネン(DMMINB)5.9g(25.5mmol)、ヘキシルノルボルネン(HxNB)6.0g(33.6mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)8.1g(25.8mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gを加え、シリコン製のシーラーを被せて密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記式(13)で表わされるNi触媒0.25g(0.51mmol)と脱水トルエン5mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶を35℃のウォーターバスの中に入れ温度を安定化させたあと、下記式(13)で表わされるNi触媒溶液3.3mLをシリンジで正確に計量し、上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で2時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸4.75g、過酸化水素水9g(濃度30%)、イオン交換水15gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次に、この水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液100mLを加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層に分離した後、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。
ポリマー#1の分子量は、GPC測定によりMw=13.9万、Mn=9.3万、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ジメチルマレイミドノルボルネン26mol%、ヘキシルノルボルネン構造単位が44mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が30mol%であった。また屈折率はプリズムカプラープリズムカプラー(品番:モデル2010、米国メトリコン社製)により1.55(測定波長;633nm)であった。
【0068】
(2)感光性樹脂組成物の調製
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、Irgafos168(チバガイギー社製)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV1を調製した。
【0069】
(3)クラッド材の調製
セロキサイド2021 P(ダイセル化学工業株式会社製)48g、OS−SQ(東亞合成株式会社)12g、アデカオプトマーSP−170(株式会社ADEKA製)1.8gを均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なクラッド層用の感光性樹脂組成物ワニスV2を調製した。
【0070】
(3)光導波路の製造
(下層クラッドの作製)
シリコンウエハ上に調製して得られた上述の感光性樹脂組成物ワニスV2をドクターブレードにより均一に塗布した後、塗布された全面に紫外線を714mJ照射し、乾燥機中150℃で10分間加熱して、塗膜を硬化させて、下層クラッドを形成させた。形成された下層クラッドは、厚みが20μmであり、無色透明であり、屈折率は1.51(測定波長;633nm)であった。
【0071】
(コアの作製)
上記下層クラッド上に、調製して得られた上述の感光性樹脂組成物ワニスV1をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃のホットプレートの上に30分間のせて溶媒を除去した。投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1500mJで選択的に照射し、マスクを取り去った。これをシクロペンタノン溶液に80分間浸して未露光部の除去を行い、コア層を形成した後、45℃のホットプレートの上にのせて溶媒を除去した。
【0072】
(上層クラッドの作製)
上述の感光性樹脂組成物ワニスV2を上述で作製したコア層の上にドクターブレードによって均一に塗布した後、塗布された全面に紫外線を714mJ照射し、乾燥機中150℃で10分間加熱して、塗膜を硬化させて、上層クラッドを形成させた。形成された上層クラッドは、厚みが20μmであり、無色透明であり、屈折率は1.51(測定波長;633nm)であった。
【0073】
(実施例2)
(1)環状オレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ジメチルマレイミドノルボルネン(DMMINB)5.9g(25.5mmol)、ヘキシルノルボルネン(HxNB)6.0g(33.6mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)8.1g(25.8mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gを加え、シリコン製のシーラーを被せて密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記式(13)で表わされるNi触媒0.25g(0.51mmol)と脱水トルエン5mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶を45℃のウォーターバスの中に入れ温度を安定化させたあと、下記式(13)で表わされるNi触媒溶液3.3mLをシリンジで正確に計量し、上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で2時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸4.75g、過酸化水素水9g(濃度30%)、イオン交換水15gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次に、この水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液100mLを加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層に分離した後、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#2を得た。
ポリマー#2の分子量は、GPC測定によりMw=6.5万、Mn=3.4万、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ジメチルマレイミドノルボルネン29mol%、ヘキシルノルボルネン構造単位が42mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が29mol%であった。また屈折率はプリズムカプラープリズムカプラー(品番:モデル2010、米国メトリコン社製)により1.55(測定波長;633nm)であった。
ポリマー#1に代えて、上記ポリマー#2を用いること以外は、実施例1と同様にした。
【0074】
(実施例3)
(1)環状オレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ジメチルマレイミドノルボルネン(DMMINB)5.9g(25.5mmol)、ヘキシルノルボルネン(HxNB)6.0g(33.6mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)8.1g(25.8mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gを加え、シリコン製のシーラーを被せて密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記式(13)で表わされるNi触媒0.25g(0.51mmol)と脱水トルエン5mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶を43℃のウォーターバスの中に入れ温度を安定化させたあと、下記式(13)で表わされるNi触媒溶液3.3mLをシリンジで正確に計量し、上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で2時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸4.75g、過酸化水素水9g(濃度30%)、イオン交換水15gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次に、この水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液100mLを加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層に分離した後、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#3を得た。
ポリマー#3の分子量は、GPC測定によりMw=8.9万、Mn=5.9万、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ジメチルマレイミドノルボルネン27mol%、ヘキシルノルボルネン構造単位が44mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が29mol%であった。また屈折率はプリズムカプラープリズムカプラー(品番:モデル2010、米国メトリコン社製)により1.55(測定波長;633nm)であった。
ポリマー#1に代えて、上記ポリマー#3を用いること以外は、実施例1と同様にした。
【0075】
(実施例4)
(1)環状オレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ジメチルマレイミドノルボルネン(DMMINB)5.9g(25.5mmol)、ヘキシルノルボルネン(HxNB)6.0g(33.6mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)8.1g(25.8mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gを加え、シリコン製のシーラーを被せて密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記式(13)で表わされるNi触媒0.25g(0.51mmol)と脱水トルエン5mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶を40℃のウォーターバスの中に入れ温度を安定化させたあと、下記式(13)で表わされるNi触媒溶液3.3mLをシリンジで正確に計量し、上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で2時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸4.75g、過酸化水素水9g(濃度30%)、イオン交換水15gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次に、この水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液100mLを加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層に分離した後、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#4を得た。
ポリマー#4の分子量は、GPC測定によりMw=11.0万、Mn=7.1万、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ジメチルマレイミドノルボルネン29mol%、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が31mol%であった。また屈折率はプリズムカプラープリズムカプラー(品番:モデル2010、米国メトリコン社製)により1.55(測定波長;633nm)であった。
ポリマー#1に代えて、上記ポリマー#4を用いること以外は、実施例1と同様にした。
【0076】
(実施例5)
(1)環状オレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ジメチルマレイミドノルボルネン(DMMINB)4.3g(18.7mmol)、ヘキシルノルボルネン(HxNB)6.7g(37.4mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)9.0g(28.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gを加え、シリコン製のシーラーを被せて密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記式(13)で表わされるNi触媒0.25g(0.51mmol)と脱水トルエン5mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶を35℃のウォーターバスの中に入れ温度を安定化させたあと、下記式(13)で表わされるNi触媒溶液3.3mLをシリンジで正確に計量し、上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で2時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸4.75g、過酸化水素水9g(濃度30%)、イオン交換水15gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次に、この水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液100mLを加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層に分離した後、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#5を得た。
ポリマー#5の分子量は、GPC測定によりMw=16.8万、Mn=9.5万、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ジメチルマレイミドノルボルネン26mol%、ヘキシルノルボルネン構造単位が44mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が30mol%であった。また屈折率はプリズムカプラープリズムカプラー(品番:モデル2010、米国メトリコン社製)により1.55(測定波長;633nm)であった。
ポリマー#1に代えて、上記ポリマー#5を用いること以外は、実施例1と同様にした。
【0077】
(比較例1)
(1)環状オレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ジメチルマレイミドノルボルネン(DMMINB)5.9g(25.5mmol)、ヘキシルノルボルネン(HxNB)6.0g(33.6mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)8.1g(25.8mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gを加え、シリコン製のシーラーを被せて密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記式(13)で表わされるNi触媒0.25g(0.51mmol)と脱水トルエン5mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶を28℃のウォーターバスの中に入れ温度を安定化させたあと、下記式(13)で表わされるNi触媒溶液3.3mLをシリンジで正確に計量し、上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で2時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸4.75g、過酸化水素水9g(濃度30%)、イオン交換水15gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次に、この水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液100mLを加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層に分離した後、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#6を得た。
ポリマー#6の分子量は、GPC測定によりMw=21.3万、Mn=11.9万、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ジメチルマレイミドノルボルネン28mol%、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が32mol%であった。また屈折率はプリズムカプラープリズムカプラー(品番:モデル2010、米国メトリコン社製)により1.55(測定波長;633nm)であった。
ポリマー#1に代えて、上記ポリマー#6を用いること以外は実施例1と同様にしたところ、コアの作製において、シクロペンタノン溶液に80分間浸して未露光部の除去を行った際、除去できない未露光部が明らかに多く、光導波路層を形成することができなかった。
【0078】
(比較例2)
(1)環状オレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ジメチルマレイミドノルボルネン(DMMINB)2.4g(10.5mmol)、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.5g(42.0mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)10.1g(31.5mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gを加え、シリコン製のシーラーを被せて密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記式(13)で表わされるNi触媒0.25g(0.51mmol)と脱水トルエン5mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶を35℃のウォーターバスの中に入れ温度を安定化させたあと、下記式(13)で表わされるNi触媒溶液3.3mLをシリンジで正確に計量し、上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で2時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸4.75g、過酸化水素水9g(濃度30%)、イオン交換水15gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次に、この水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液100mLを加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層に分離した後、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#7を得た。
ポリマー#7の分子量は、GPC測定によりMw=21.0万、Mn=12.0万、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ジメチルマレイミドノルボルネン11mol%、ヘキシルノルボルネン構造単位が54mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が35mol%であった。また屈折率はプリズムカプラープリズムカプラー(品番:モデル2010、米国メトリコン社製)により1.55(測定波長;633nm)であった。
ポリマー#1に代えて、上記ポリマー#7を用いること以外は実施例1と同様にしたところ、コアの作製において、シクロペンタノン溶液に80分間浸して未露光部の除去を行った際にコア部が溶解し、光導波路層を形成することができなかった。
【0079】
各実施例および比較例で得られた光導波路について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に以下に示す。また、実施例および比較例において、得られた結果を表1に示す。
【0080】
(光導波路の損失評価)
得られた光導波路サンプルの伝搬損失をカットバック法を使用して測定した。レーザーダイオードから発生させた光(850nm)を、光ファイバーを通して、各ワニス溶液から形成した導波路のコアの第一の端部に入力した。反対側の第二の端部からの出力を測定した。導波路はある長さを有している。導波路は少なくとも2つの長さに短く「カットバック」され、各長さの導波路に対して第二の端部での光出力を測定した。
各測定での総光損失は下記である。
総光損失(dB) = −10log(Pn/Po)
ここで、「Pn」はP1、P2、…Pnの各長さの導波路の第二の端部で測定された出力であり、「Po」は、光ファイバーを導波路のコアの第一の端部に結合する前の光ファイバーの端部における光源の測定出力である。
また、総光損失は、導波路の長さとの関係により、下記式によっても表わされる。
総光損失(dB)=mx+b
ここで、「x」は導波路の長さ、「m」は伝搬損失、「b」は結合損失(coupling loss)である。
上記カットバック法により、伝搬損失を算出した。
【0081】
(ガラス転移温度の測定)
フィルムサンプルによる測定を行った。
フィルムは次のように作製した。上記コア層用の感光性樹脂組成物ワニスをそれぞれガラス基板上に塗布した。この時、塗布膜厚は乾燥時に300μmになるように塗布した。これを150℃のホットプレート上で2時間以上乾燥させ、フィルムサンプルを得た。
作製したフィルムを熱機械分析装置(ESTAR 6000 TMA/SS、セイコーインスツル(SII)社製)(引っ張り法:荷重29.4mN、昇温速度5℃/分、空気中)を用いて測定した。
【0082】
(リフロー試験評価)
リフロー試験機(卓上型リフロー炉STR−3000、シンアペックス社製)を用いてリフロー試験を行った。試験機の中に導波路サンプルを入れ、図3に示す昇温プログラムで280度まで段階的に昇温させた。リフロー試験後のサンプルについて、上記カットバック法を用いて伝搬損失を算出した。
【0083】
【表1】

【0084】
上記の結果からわかるように、本発明に係る光導波路は光伝播損失が低く、また、ガラス転移点が高いことから、耐熱性に優れることが確認された。また、リフロー前後での伝搬損失の値の変化が小さく、リフロー耐熱性にも優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明にかかる光導波路は、低い光伝播損失と、優れた耐熱性を有し、特に電子機器等の内部に実装される回路基板等の光配線用途に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 第1クラッド部
2 コア部
2a 光導波路形成用フィルム(コア部用)
2b 未照射領域
3 第2クラッド部
4 マスク
5 光
10 光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を有する環状オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物であって、前記環状オレフィン系共重合体の重量平均分子量が30,000〜200,000であり、かつ、前記環状オレフィン系共重合体において前記下記式(1)で表される繰り返し単位のモル分率をXとしたときに、Xは20〜50mol%の範囲であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
さらに、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する前記環状オレフィン系共重合体を含む請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

【請求項3】
さらに、下記式(3)で表される繰り返し単位を有する前記環状オレフィン系共重合体を含む請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【請求項4】
下記式(8)で表される前記環状オレフィン系共重合体を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化8】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【請求項5】
前記化学式(1)の側鎖部分は、光二量化反応により架橋するものである前記環状オレフィン系共重合体を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の前記感光性樹脂組成物は、光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いられることを特徴とする光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする光導波路形成用フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の光導波路形成用フィルムに、光を照射することにより形成されるコア部を有することを特徴とする光導波路。
【請求項9】
前記コア部より低い屈折率を有するクラッド部により、前記コア部を覆ってなるものである請求項8に記載の光導波路。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
【請求項11】
電気配線と、請求項10に記載の光配線とを有することを特徴とする光電気混載基板。
【請求項12】
請求項8又は9に記載の光導波路を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−105791(P2011−105791A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259295(P2009−259295)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】