説明

感光性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有するフィルム

【課題】エネルギー線によって硬化し、耐擦傷性、耐磨耗性に優れ、反射率の低い感光性樹脂組成物、更にはその硬化皮膜を有するフィルムを提供する。
【解決手段】下記一般式(1)
eSi(OR13 (1)
(式中Reは、エポキシ基を有する置換基を示す。R1はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物と下記一般式(2)
fSi(OR23 (2)
(式中Rfは、フッ素原子を1〜20個有する置換基を示す。R2はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物を、塩基性触媒の存在下、縮合させて得られるエポキシ基含有ケイ素化合物(A)、光カチオン重合開始剤(B)、フッ素原子を有する高分子化合物(C)、フッ素原子を有するモノマー(D)及び側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物(E)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素原子含有ケイ素化合物を含有する感光性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有するフィルムに関する。更に詳しくは、硬度、耐擦傷性、耐磨耗性、密着性に優れ、反射率が低い硬化皮膜を与える感光性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有するフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックは自動車業界、家電業界、電気電子業界を初めとして、種々の産業界で大量に使われている。このようにプラスチックが大量に使われている理由は、その加工性、透明性が優れていることに加えて、軽量、安価で光学特性にも優れているなどの理由による。しかしながら、ガラスなどに比べて柔らかく、表面に傷が付きやすいなどの欠点を有している。これらの欠点を改良するために、表面にハードコート剤をコーティングする事が一般的な手段として行われている。このハードコート剤には、シリコン系塗料、アクリル系塗料、メラミン系塗料などの熱硬化型のハードコート剤が用いられている。この中でも特に、シリコン系ハードコート剤は、ハードネスが高く、品質が優れているため多く用いられている。しかしながら、シリコン系ハードコート剤は、硬化時間が長く、高価であり、連続的に加工するフィルムに設けられるハードコート層には適しているとは言えない。
【0003】
近年、感光性のアクリル系ハードコート剤が開発され、利用されるようになった(特許文献1参照)。感光性ハードコート剤は、紫外線などのエネルギー線を照射することにより、直ちに硬化して硬い皮膜(ハードコート層)を形成するため、加工処理スピードが速く、またハードネス、耐擦傷性などに優れた性能を持ち、トータルコスト的に安価になるため、今やハードコート分野の主流になっている。特に、ポリエステルなどのフィルムの連続加工には適している。プラスチックのフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、塩化ビニルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルムなどがあるが、ポリエステルフィルムが種々の優れた特性から最も広く使用されている。このポリエステルフィルムは、ガラスの飛散防止フィルム、あるいは、自動車の遮光フィルム、ホワイトボード用表面フィルム、システムキッチン表面防汚フィルム、更に電子材料的には、タッチパネル、液晶ディスプレイ、CRTフラットテレビなどに使用される機能性フィルムとして広く用いられている。これらはいずれもその表面に傷が付かないようにするためにハードコート剤を塗工している。
【0004】
更に、近年におけるハードコート剤をコーティングしたフィルム層を設けたCRT、LCDなどの表示体では、反射により表示体画面が見難くなり、目が疲れやすいと言う問題が生ずるため、用途によっては、表面反射防止能のあるハードコート処理が必要となっている。表面反射防止の方法としては、感光性樹脂中に無機フィラーや有機系微粒子を分散させたものをフィルム上にコーティングし、表面に凹凸をつけて反射防止する方法(AG処理)、フィルム上に高屈折率層、低屈折率層の順に多層構造を設け、屈折率の差による光の干渉により、映り込み、反射を防止する方法(AR処理)、または上記2つの方法を組み合わせたAG/AR処理の方法などがあり(特許文献2参照)、例えば特許文献3には、AR処理に用いられる低屈折率層にゾル−ゲル法によるシラン化合物を縮合させるような熱硬化タイプの樹脂組成物を用いることが報告されている。
【0005】
一方、反射防止と表面硬度向上のためにフッ素原子を有する(メタ)アクリレートを用いたエネルギー線硬化型樹脂組成物も開発されている(特許文献4参照)。また、我々は、耐擦傷性を向上させるためコロイダルシリカを用いたエネルギー線硬化型樹脂組成物を(特願2003−364718)、又耐磨耗性の向上のために、側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物を用いたエネルギー線硬化型樹脂組成物を(特願2004−255541)それぞれ特許出願した。
【0006】
【特許文献1】特開平9−48934号公報
【特許文献2】特開平9−145903号公報
【特許文献3】特開平10−726号公報
【特許文献4】特開平10−182745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の熱硬化タイプの樹脂組成物は、硬化に時間が掛るため生産性が悪いことや、ハードコート層が加熱により収縮しクラックが入るといった問題がある。また、特許文献4に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、耐擦傷性が十分ではなく、(メタ)アクリレートを十分硬化させるためには、真空中または窒素雰囲気下で硬化させる必要があるため、設備も高価になるという問題がある。上記特願2003−364718及び上記特願2004−255541に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記課題の多くを解決してはいるが、耐磨耗性や表面反射防止能に関しては、充分満足できるとはいい難い。
【0008】
本発明は、窒素置換等をしなくてもエネルギー線により容易に硬化し、反射防止フィルムに使用した場合、表面硬度、耐擦傷性、耐磨耗性、密着性に優れると共に表面反射防止能も高い感光性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有するフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、特定のフッ素原子を有する化合物他を必須成分として含有する感光性樹脂組成物が前記課題を解決することを見いだし、本発明に至った。
すなわち本発明は、
【0010】
(1)下記一般式(1)
eSi(OR13 (1)
(式中Reは、エポキシ基を有する置換基を示す。R1はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物と下記一般式(2)
fSi(OR23 (2)
(式中Rfは、フッ素原子を1〜20個有する置換基を示す。R2はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物を、塩基性触媒の存在下、縮合させて得られるエポキシ基含有ケイ素化合物(A)、光カチオン重合開始剤(B)、フッ素原子を有する高分子化合物(C)、フッ素原子を有するモノマー(D)及び側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物(E)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、
(2)式(1)の化合物において、Reがエポキシ基を有するC1〜C4のアルキル基である(1)記載の感光性樹脂組成物、
(3)式(1)の化合物において、ReがグリシドキシC1〜C4アルキル基である(1)又は(2)に記載の感光性樹脂組成物、
(4)フッ素原子を有するモノマー(D)の末端がエポキシ基または(メタ)アクリレート基である(1)乃至(3)に記載の感光性樹脂組成物、
(5)フッ素原子を有するモノマー(D)の一分子中のフッ素の数が3〜20である(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(6)側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物(E)が、末端二重結合を有する変性シリコーンと重合可能なモノマーとの共重合により得ることが出来、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分がシリコーンで構成された櫛型グラフトポリマーである(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(7)更に、光ラジカル重合開始剤(G)を含有することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(8)更に、希釈剤(H)を含有することを特徴とする(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(9)基材フィルム上に第一のハードコート剤の硬化皮膜層、屈折率が1.55以上の第二のハードコート剤の硬化皮膜層及び(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化皮膜層をこの順に有する反射防止ハードコートフィルム、
(10)第二のハードコート剤が、多官能(メタ)アクリレート(I)、1次粒径1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)及び光ラジカル重合開始剤(G)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である(9)に記載の反射防止ハードコートフィルム、
(11)1次粒径1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)が、導電性金属酸化物(K)である(10)に記載の反射防止ハードコートフィルム、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物で得られる硬化皮膜は、耐擦傷性、耐磨耗性、耐汚染性、密着性に優れ、反射防止フィルムを製造するのに適している。この様な本発明のフィルムは、特にプラスチック光学部品、タッチパネル、フラットパネルディスプレイ、携帯電話等の表示画面、フィルム液晶素子など反射防止機能を必要とする分野に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、下記一般式(1)
eSi(OR13 (1)
(式中Reは、エポキシ基を有する置換基を示す。R1はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物と下記一般式(2)
fSi(OR23 (2)
(式中Rfは、フッ素原子を1〜20個有する置換基を示す。R2はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物を、塩基性触媒の存在下、縮合させて得られるエポキシ基含有ケイ素化合物(A)、光カチオン重合開始剤(B)、フッ素原子を有する高分子化合物(C)、フッ素原子を有するモノマー(D)及び側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物(E)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物では、下記一般式(1)
eSi(OR13 (1)
(式中Reは、エポキシ基を有する置換基を示す。R1はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物と下記一般式(2)
fSi(OR23 (2)
(式中Rfは、フッ素原子を1〜20個有する置換基を示す。R2はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物を、塩基性触媒の存在下、縮合させて得られるエポキシ基含有ケイ素化合物(A)を用いる。
本発明で使用する前記式(1)で示されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物中の置換基Reとしては、エポキシ基を有する置換基であれば特に制限はないが、好ましくはエポキシ基を有するC1〜C4のアルキル基、更に好ましくはグリシドキシC1〜C3アルキル基であり、例えばβ−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基が挙げられる。
これらの置換基Reを有する式(1)の化合物の好ましい具体例としては、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記式(1)において、R1は、メチル、エチル、ノルマルプロピル、ノルマルブチル、イソプロピル、イソブチル等のC1〜C4のアルキル基を示すが、反応条件の点で好ましいものは、メチル、エチルである。
前記式(1)で表される化合物は、市場から入手することができる。
【0014】
また、本発明で使用する前記式(2)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物としては、置換基Rfがフッ素原子を1〜20個有する置換基であれば良い。具体例としては、例えばトリエトキシフルオロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−ヘプタフルオロプロポキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリメトキシシラン、(トリデカフルオロー1,1,2,2、−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロー1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、ノナフルオロへキシルトリメトキシシラン、ノナフルオロへキシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、(3−メトキシシリル)プロピルペンタデカフルオロオクテート、(3−エトキシシリル)プロピルペンタデカフルオロオクテート、(3−メトキシシリル)プロピルペンタデカフルオロヘプシルアミド、(3−エトキシシリル)プロピルペンタデカフルオロヘプシルアミド、(2−メトキシシリル)エチルヘプタデカフルオロプロピルスルフィド、(2−エトキシシリル)エチルヘプタデカフルオロプロピルスルフィド等が挙げられる。これらの中で、エポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物との相溶性から、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−ヘプタフルオロプロポキシプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルトリメトキシシランが好ましい。
前記式(2)において、置換基R2は、メチル、エチル、ノルマルプロピル、ノルマルブチル、イソプロピル、イソブチル等のC1〜C4のアルキル基を示すが、反応条件の点で好ましいものは、メチル、エチルである。
前記式(2)で表される化合物は、市場から入手することができる。市販品としては、たとえば、KBM−7103、KBM−7803(いずれも信越化学工業(株)製)、T1770(東京化成工業(株)製)が挙げられる。
【0015】
本発明で使用するエポキシ基を有するケイ素化合物(A)は、例えば、特開平10−324749、特開平6−32903、特開平6−298940号公報に記載の方法によっても製造する事が出来るが、本発明においては塩基性触媒存在下、式(1)のエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物と式(2)のフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物を(共)縮合させることにより得られたケイ素化合物(A)を用いることが好ましい。式(1)の化合物と式(2)の化合物の(共)縮合比率は、硬化性や屈折率の観点から、式(1)の化合物1モルに対して式(2)の化合物が0.5〜2モルが好ましい。また、(共)縮合を促進するため、必要に応じ水を添加することができる。水の添加量は、反応混合物全体のアルコキシ基1モルに対し通常0.05〜1.5モル、好ましくは0.07〜1.2モルである。
【0016】
上記縮合反応に使用する触媒は、塩基性であれば特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどの有機塩基を使用することが出来る。これらの中でも、特に生成物からの触媒除去が容易である点で、無機塩基又はアンモニアが好ましい。触媒の添加量としては、エポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物(式(1))とフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物(式(2))の合計量に対し、通常5×10-4〜7.5重量%、好ましくは1×10-3〜5重量%である。
【0017】
上記縮合反応は、無溶剤または溶剤中で行うことができる。溶剤としては、エポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物及びフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物を溶解する溶剤であれば特に制限はない。このような溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンである。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物では、光カチオン重合開始剤(B)を使用する。光カチオン重合開始剤(B)は、紫外線等を照射することでルイス酸などのカチオン重合触媒を生成するものを用いることができる。例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。具体的には、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボーレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロボーレート、4,4'−ビス[ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)スルフォニオ]フェニルスルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート等が挙げられ、好ましくは、ヨードニウム塩類である。これらは、単独又は2種以上を混合して使用しても良い。
【0019】
これらの光カチオン重合開始剤(B)は市場から容易に入手が可能である。光カチオン重合開始剤(B)の市販品としては例えば、UVI−6990、UVI−6992(商品名:いずれもユニオンカーバイド製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−170(商品名:いずれも旭電化製)、CIT−1370、CIT−1682、CIP−1866S、CIP−2048S、CIP−2064S(商品名:いずれも日本曹達製)、DPI−101、DPI−102、DPI−103、DPI−105、MPI−103、MPI−105、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−105、TPS−101、TPS−102、TPS−103、TPS−105、MDS−103、MDS−105、DTS−102、DTS−103(商品名:いずれも、みどり化学製)等が挙げられる。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、増感剤を併用することができる。使用しうる増感剤としては、光カチオン重合を促進するものであれば良い。具体的には、アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ(メトキシエトキシ)アントラセン、フルオレン、ピレン、スチルベン、4'−ニトロベンジル−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、4'−ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、4'−ニトロベンジル−9,10−ジプロポキシアントラセン−2−スルホネート等が挙げられるが、溶解性及び感光性樹脂組成物への相溶性の点で、特に2−エチル−9,10−ジ(メトキシエトキシ)アントラセンが好ましい。これら増感剤を用いる場合の使用量は、光カチオン重合開始剤(B)100重量%に対して1〜200重量%、好ましくは5〜150重量%である。
【0021】
本発明の感光樹脂組成物には、フッ素原子を有する高分子化合物(C)を使用する。フッ素原子を有する高分子化合物(C)としては、フッ素原子を有する高分子化合物であれば特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンやトリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4,−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,3H,3H−2−(ヒドロキシ)パーフルオロへプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,3H,3H−2−(ヒドロキシ)パーフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,3H,3H−2−(ヒドロキシ)−6−トリフルオロメチル−パーフルオロへプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,3H,3H−2−(ヒドロキシ)−8−トリフルオロメチル−パーフルオロノニル(メタ)アクリレート、メチルペンタフルオロメタクリレート、(パーフルオロ−n−デシル)エチレンパーフルオロヘプテン、1H,1H,2H−パーフルオロヘキセンなどのフッ素原子とエチレン性不飽和基を有する化合物を単独または2種以上、あるいはフッ素原子とエチレン性不飽和基を有する化合物とフッ素原子を含まないエチレン性不飽和基を有する化合物を重合したポリマーなどが挙げられる。また、フッ素原子を有する高分子化合物(C)の屈折率としては、1.42以下が好ましく、より好ましくは1.40以下である。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物では、フッ素原子を有するモノマー(D)を使用する。フッ素原子を有するモノマー(D)としては、例えば、トリフルオロエチルアクリレート(屈折率1.348)、トリフルオロエチルメタアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート(屈折率1.363)、オクタフルオロペンチルアクリレート(屈折率1.347)、オクタフルオロペンチルメタアクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;パーフルオロブチルプロピレンオキシド、パーフルオロヘキシルプロピレンオキシド、パーフルオロオクチルプロピレンオキシド(屈折率1.318)等のパーフルオロアルキレンオキシドが挙げられる。
これらフッ素原子を有するモノマー(D)は、屈折率1.38以下が好ましく、末端は光重合可能なエポキシ基および/または(メタ)アクリレート基を有することが好ましい。また、フッ素原子を有するモノマー(D)の一分子中のフッ素の数が3〜20であることが好ましい。これらは、単独または2種以上を混合して使用しても良い。
【0023】
フッ素原子を有するモノマー(D)に(メタ)アクリレート基を有する化合物を使用した場合、光ラジカル重合開始剤(G)を添加する必要がある。
光ラジカル重合開始剤(G)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0024】
これらは、単独または2種以上の混合物として使用でき、更にはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどの安息香酸誘導体などの重合促進剤などと組み合わせて使用することができる。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物では、側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物(E)を使用する。
この化合物(E)は末端二重結合を有する変性シリコーンと重合可能なモノマーとの共重合により得ることが出来、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分がシリコーンで構成された櫛型グラフトポリマーである。該(E)成分は、例えば特公平7−81113号公報に記載の方法に準じて製造する事が出来る。(E)成分中のシリコーンの割合は、(E)成分100重量%に対して10〜50重量%の範囲であり、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは20〜30重量%である。分子量については、5〜10万が好ましい。
側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物(E)の市販品としては、例えばサイマックUS−270、US−350、US−352、US−380(いずれも東亞合成製)等を挙げることができる。
【0026】
本発明の感光樹脂組成物には、希釈剤(H)を使用することができる。使用しうる希釈剤(H)としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;ジオキサン、1,2−ジメトキシメタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トリクロロエタン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤等の有機溶剤類などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して使用しても良い。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物では、消泡剤(L)を使用することができる。特にフッ素系材料を使用した場合、起泡性の問題が生じ易く、消泡剤(L)の添加による改善は塗工時において非常に有用である。消泡剤(L)としては、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤、破泡性ポリマー、高沸点溶剤等が挙げられ、具体的には、BYK−060N、BYK−066N(ビックケミー社製)、AF−600、AF−630(信越化学工業(株)製)等が好ましい。
これらは、単独又は2種以上を混合して使用しても良い。
【0028】
更に、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じてレベリング剤、紫外線吸収剤、光安定化剤などを本発明の感光性樹脂組成物に添加し、それぞれ目的とする機能性を付与することも可能である。レベリング剤としては、フッ素系化合物、シリコン系化合物等が、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分並びに必要に応じて(G)成分、(H)成分、(L)成分及びその他の成分を任意の順序で混合することにより得ることができる。
それらの使用量は、感光性樹脂組成物中の固形分全体を100重量%とした時、(A)成分は通常10〜70重量%、好ましくは20〜50重量%、(B)成分は通常0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、(C)成分は通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%、(D)成分は通常10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%、(E)成分は、通常1〜30重量%、好ましくは3〜10重量%、(L)成分は0〜5重量%である。前記のように、フッ素原子を有するモノマー(D)に(メタ)アクリレート基を有する化合物を使用した場合、光ラジカル重合開始剤(G)を添加する必要があるが、その場合の光ラジカル重合開始剤(G)の使用量は、フッ素原子を有するモノマー(D)を100重量%とした時、0.1〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%である。(H)成分の使用量に関しては、感光性樹脂組成物の全重量を100重量%としたとき、0〜99重量%、更には50〜98重量%が好ましい。
こうして得られた本発明の感光性樹脂組成物は、経時的に安定である。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物は、希釈剤(H)を除いた成分について(感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100%とした場合)の液屈折率が、25℃で1.48以下であることが好ましく、より好ましくは1.45以下、更に好ましくは1.40以下である。尚、上記液屈折率は、25℃において、各成分の液屈折率を測定し、それぞれの成分の含有量との比率で算出することが出来る。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物の液屈折率を下げることにより、得られた硬化皮膜の屈折率も低下し、結果として反射防止の機能が向上する。
【0032】
本発明の反射防止ハードコートフィルムは、基材フィルム(ベースフィルム)上に第一のハードコート剤の硬化皮膜層、第二のハードコート剤の硬化皮膜層及び本発明の感光性樹脂組成物の硬化皮膜層の順に各層を設けることにより得られる。まず、基材フィルム上に第一のハードコート剤を乾燥後膜厚が1〜30μm、好ましくは3〜20μmになるように塗布し、乾燥後エネルギー線を照射して硬化皮膜(ハードコート)層を形成させる。その後、形成された第一のハードコート層の上に、屈折率が1.55以上の第二のハードコート剤を乾燥後膜厚が0.05〜5μm、好ましくは0.05〜3μm(反射率の最大値を示す波長が500〜700nmになるように膜厚を設定するのが好ましい)になるように塗布し、乾燥後、エネルギー線を照射して硬化皮膜(ハードコート)層を形成させる。さらに、第二のハードコート層の上に本発明の感光性樹脂組成物を乾燥後膜厚が0.05〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.3μm(反射率の最小値を示す波長が500〜700nm、好ましくは520〜650nmになるように膜厚を設定するのが好ましい)になるように塗布し、乾燥後エネルギー線を照射して硬化皮膜層を形成させることにより得ることができる。
基材フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルフォン、シクロオレフィン系ポリマーなどが挙げられる。フィルムはある程度厚いシート状のものであっても良い。使用するフィルムは、柄や易接着層を設けたもの、コロナ処理等の表面処理をしたものであっても良い。
【0033】
上記の感光性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、マイクログラビア塗工、ダイコーター塗工、ディップ塗工、スピンコート塗工などが挙げられる。
硬化のために照射するエネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線などが挙げられる。紫外線により硬化させる場合、光源としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが調整される。高圧水銀灯を使用する場合、80〜120W/cmのエネルギーを有するランプ1灯に対して搬送速度5〜60m/分で硬化させるのが好ましい。
【0034】
本発明の反射防止ハードコートフィルムの1層目に使用する第一のハードコート剤としては、市販されているハードコート剤をそのまま用いても良いし、多官能(メタ)アクリレート(I)と光ラジカル重合開始剤(G)、希釈剤(H)を配合して使用しても良い。多官能(メタ)アクリレート(I)の具体例としては、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620など)、ビスフェノールAのEO付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ポリグリシジル化合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなど)と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートなど)とポリイソシアネート化合物(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなど)の反応物である多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独または2種以上を混合して使用しても良い。好ましいものは、3官能以上の(メタ)アクリレートである。
【0035】
光ラジカル重合開始剤(G)としては、前記記載の化合物を使用することができる。
これらは、単独または2種以上の混合物として使用でき、更にはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどの安息香酸誘導体などの重合促進剤などと組み合わせて使用することができる。
【0036】
上記第一のハードコート剤で使用する希釈剤(H)は、前記の希釈剤(H)を使用することができる。
前記第一のハードコート剤に使用する(I)成分、(G)成分、(H)成分は、任意の順序で配合・混合することができ、必要に応じレベリング剤、消泡剤等を添加することができる。各成分の使用比率は、(I)成分+(G)成分を100重量%としたとき、(I)成分80〜99.5重量%、(G)成分0.5〜20重量%で、(H)成分はハードコート剤組成全量中0〜90重量%、好ましくは20〜80重量%である。
【0037】
本発明の反射防止ハードコートフィルムの2層目に使用する第二のハードコート剤は、屈折率1.55以上のものであれば良いが、好ましくは、多官能(メタ)アクリレート(I)、1次粒径が1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)と光ラジカル重合開始剤(G)、希釈剤(H)から得られる感光性樹脂組成物が良い。
多官能(メタ)アクリレート(I)及び光ラジカル重合開始剤(G)、希釈剤(H)は、前記記載の化合物を使用することができる。
【0038】
1次粒径が1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アンチモン酸亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、錫ドープアンチモン酸亜鉛などが挙げられる。これらは、微粉末もしくは有機溶剤に分散させた分散液として入手することができる。
また、本発明の反射防止ハードコートフィルムに帯電防止性能を付与するため、金属酸化物(J)として、導電性金属酸化物(M)を用いることができる。使用しうる導電性金属酸化物(M)としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アンチモン酸亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛などが挙げられる。価格、安定性、分散性などからアンチモン酸亜鉛が好ましい。
分散液に使用しうる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの非極性溶媒などが挙げられる。有機溶剤の量は、通常、金属酸化物100重量%に対して70〜900重量%である。
【0039】
第二のハードコート剤に使用する(I)成分、(J)成分、(G)成分、(H)成分は、任意の順序で配合・混合することができ、必要に応じてレベリング剤、消泡剤等を添加することができる。各成分の使用比率は、(I)成分+(J)成分+(G)成分を100重量%としたとき、通常(I)成分19.5〜79.5重量%、(J)成分20〜80重量%、(G)成分0.5〜20重量%で、(H)成分は第二のハードコート剤組成全量中、0〜99重量%、好ましくは50〜98重量%である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例中、特に断りがない限り、「部」は「重量部」を示す。なお、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。
(1)エポキシ当量:JIS K−7236に準じた方法で測定。
(2)屈折率 :アッベ屈折率計にて25℃で測定
【0041】
合成例1 エポキシ基含有ケイ素化合物(A−1)の合成
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン47.2部、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン43.6部、メチルイソブチルケトン181.8部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液10.8部を反応容器に仕込み、80℃に昇温し、5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで、0.5重量%酢酸水溶液を用いて水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することによりエポキシ基含有ケイ素化合物(A−1)65部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は319g/eq、屈折率は1.433であった。また、室温1ヶ月の経時でもゲル化は観察されなかった。
【0042】
合成例2 エポキシ基含有ケイ素化合物(A−2)の合成
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン47.2部、3−ヘプタフルオロプロポキシプロピルトリメトキシシラン69.7部、メチルイソブチルケトン233.8部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液10.8部を反応容器に仕込み、80℃に昇温し、5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで、0.5重量%酢酸水溶液を用いて水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することによりエポキシ基含有ケイ素化合物(A−2)90部を得た。得られた化合物の屈折率は1.407であった。また、室温1ヶ月の経時でもゲル化は観察されなかった。
【0043】
合成例3 エポキシ基含有ケイ素化合物(A−3)の合成
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン47.2部、パーフルオロオクチルトリメトキシシラン113.7部、メチルイソブチルケトン321.8部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液10.8部を反応容器に仕込み、80℃に昇温し、5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで、0.5重量%酢酸水溶液を用いて水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することによりエポキシ基含有ケイ素化合物(A−3)135部を得た。得られた化合物の屈折率は1.386であった。また、室温1ヶ月の経時でもゲル化は観察されなかった。
【0044】
製造例1
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA)42部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート((株)化薬サートマー製、KS−HDDA)5部、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)3部、メチルエチルケトン25部、メチルイソブチルケトン25部を混合、溶解し、第一のハードコート剤を得た。
得られた第一のハードコート剤をマイクログラビアコーターでPETフィルム(東洋紡績(株)製、A−4300、膜厚188μm)上に膜厚が約5μmになるように塗布し、80℃で乾燥後、紫外線照射器により硬化させ、ハードコート層の設けられたPETフィルムを得た。
【0045】
製造例2
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA)1.2部、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)0.15部、イルガキュア907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン)0.15部、セルナックスCX−Z600M−3F2(日産化学工業(株)製、アンチモン酸亜鉛のメタノール分散ゾル、固形分60重量%、一次粒径10〜20nm)7.5部、メタノール31部、プロピレングリコールモノメチルエーテル60部を混合し、固形分6重量%の第二のハードコート剤を得た。
次いで、製造例1で得た第一のハードコート層を形成したPETフィルム上に、この第二のハードコート剤をマイクログラビアコーターで塗布し、80℃で乾燥後、紫外線照射器により硬化させ、第一のハードコート層上に第二のハードコート層を形成させたPETフィルムを得た。この時、反射率の最大値を示す波長が500〜700nmになるように膜厚を調整した。硬化膜の密着性は良好であった。
【0046】
実施例1〜6及び比較例1〜2
表1に示す材料を配合した感光性樹脂組成物を製造例2で得られた第一のハードコート層及び第二のハードコート層の設けられたPETフィルム上に塗布し、80℃で乾燥後、紫外線照射器により硬化させ反射防止ハードコートフィルムを得た。この時、反射率の最小値が520〜650nmになるように膜厚を調整した。実施例1〜6は本発明の感光性樹脂組成物であり、比較例1は特願2004−255541の組成に準じて、比較例2は特願2003−364718の組成に準じて調製した。尚、表1において単位は「部」を表す。
【0047】
表1
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5 実施例6 比較例1 比較例2
(A)成分
A-1 1.35 1.35 0.81 1.35 0.95
A-2 1.08 1.08
A-3 1.08
(B)成分
BBI-102 0.15 0.15 0.15 0.15 0.15 0.15 0.15 0.15
(C)成分
NK-8 1.75 1.75 1.80 1.80 1.80 1.80 2.25
NK-4 2.48
(D)成分
H010 0.83 1.35 1.08 1.08
V-8F 1.06
V-3F 0.66
(E)成分
US-270 1.00 0.50 0.50 0.50 0.50 0.50 0.50
(G)成分
Irg.184 0.02 0.03
シリカゾル
MEK-ST 2.25 2.84
(H)成分
MEK 95.07 95.42 95.39 95.38 95.39 95.39 93.50 93.58
【0048】
注)
BBI−102:みどり化学(株)製、光カチオン重合開始剤(ヨードニウム塩)
NK−8:関東電化工業(株)製、フッ素系ポリマー(固形分30重量%、実測屈折率1.387)
NK−4:関東電化工業(株)製、フッ素系ポリマー(固形分42重量%)
H010:東ソーエフテック(株)、パーフルオロオクチルプロピレンオキシド
V−8F:大阪有機化学工業(株)、オクタフルオロペンチルアクリレート
V−3F:大阪有機化学工業(株)、トリフルオロエチルアクリレート
US−270:東亞合成(株)製、側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物(固形分30重量%)
Irg.184:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、光ラジカル重合開始剤)
MEK−ST:日産化学工業(株)製、オルガノシリカゾル(固形分30重量%)
MEK:メチルエチルケトン
【0049】
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた本発明及び比較用の反射防止ハードコートフィルムにつき、下記項目を評価し、その結果を表2に示した。
(鉛筆硬度)
JIS K 5400に従い、鉛筆引っかき試験機を用いて、上記組成の塗工フィルムの鉛筆硬度を測定した。詳しくは、測定する硬化皮膜を有するポリエステルフィルム上に、鉛筆を45度の角度で、上から1kgの荷重を掛け5mm程度鉛筆の芯で引っかき、5回中、4回以上傷の付かなかった鉛筆の硬さで表した。
【0050】
(耐擦傷性)
学振耐摩擦性試験機(大栄科学工業株式会社製、RT−200)を用いて、スチールウール#0000上に500g/cm2の荷重を掛けて各フィルムを10往復させ、傷の状況を目視で判定した。
評価 A:0〜5傷なし
B:6〜9本の傷発生
C:10本以上の傷発生
【0051】
(耐磨耗性)
学振耐摩擦性試験機(大栄科学工業株式会社製、RT−200)を用いて、市販のクロス(眼鏡拭き)上に1kg/cm2の荷重を掛けて各フィルムを200往復させ、傷の状況、剥がれを目視で観察した。
評価 A:変化なし
B:傷あるが色目に変化なし
C:剥がれ発生
【0052】
(密着性)
JIS D 0202に従い、測定する各フィルムの表面に1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個の碁盤目を作る。セロハンテープをその表面に密着させた後、一気に剥がしたときに剥離せず残存したマス目の個数を示した。
【0053】
(液屈折率)
アッベの屈折率計にて測定した。各成分について25℃での液屈折率を測定し、不揮発分を100重量%とした場合の屈折率を算出した(各成分の含有量の比率から屈折率を算出)。
上記評価結果を表2に示した。
【0054】
表2
鉛筆硬度 耐擦傷性 耐磨耗性 密着性 液屈折率
実施例1 3H A B 100/100 1.41
実施例2 3H A A 100/100 1.40
実施例3 3H A B 100/100 1.38
実施例4 3H B B 100/100 1.39
実施例5 3H B A 100/100 1.38
実施例6 3H B A 100/100 1.37
比較例1 3H B C 100/100 1.44
比較例2 3H C C 100/100 1.43
【0055】
表2から明らかなように、本発明の反射防止ハードコートフィルムは、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐磨耗性、密着性等に優れているが、特に耐磨耗性に優れて性能を示すと共に、屈折率も小さく、反射防止能においても好ましいものであり、本発明の感光性樹脂組成物及びそれを用いた本発明の反射防止ハードコートフィルムの高い実用性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
eSi(OR13 (1)
(式中Reは、エポキシ基を有する置換基を示す。R1はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物と下記一般式(2)
fSi(OR23 (2)
(式中Rfは、フッ素原子を1〜20個有する置換基を示す。R2はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物を、塩基性触媒の存在下、縮合させて得られるエポキシ基含有ケイ素化合物(A)、光カチオン重合開始剤(B)、フッ素原子を有する高分子化合物(C)、フッ素原子を有するモノマー(D)及び側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物(E)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
式(1)の化合物において、Reがエポキシ基を有するC1〜C4のアルキル基である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
式(1)の化合物において、ReがグリシドキシC1〜C4アルキル基である請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
フッ素原子を有するモノマー(D)の末端がエポキシ基または(メタ)アクリレート基である請求項1乃至請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
フッ素原子を有するモノマー(D)の一分子中のフッ素の数が3〜20である請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
側鎖に(ポリ)シロキサン構造を有する高分子化合物(E)が、末端二重結合を有する変性シリコーンと重合可能なモノマーとの共重合により得ることが出来、幹部分がアクリル系ポリマーで、枝部分がシリコーンで構成された櫛型グラフトポリマーである請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
更に、光ラジカル重合開始剤(G)を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、希釈剤(H)を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
基材フィルム上に第一のハードコート剤の硬化皮膜層、屈折率が1.55以上の第二のハードコート剤の硬化皮膜層及び請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化皮膜層をこの順に有する反射防止ハードコートフィルム。
【請求項10】
第二のハードコート剤が、多官能(メタ)アクリレート(I)、1次粒径1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)及び光ラジカル重合開始剤(G)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である請求項9に記載の反射防止ハードコートフィルム。
【請求項11】
1次粒径1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)が、導電性金属酸化物(K)である請求項10に記載の反射防止ハードコートフィルム。

【公開番号】特開2006−199765(P2006−199765A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11095(P2005−11095)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】