説明

感光膜塗布装置及び製版工場

【課題】感光膜塗布作業を行うエリアの雰囲気がクリーンルームの清浄空気と同等であり、雰囲気温度が室温に一定に保たれ、感光膜塗布において成膜が行える湿度範囲に抑制される感光膜塗布及び製版工場。
【解決手段】扉を備えたケーシングで感光膜塗布装置が密閉され、ケーシングに設けられた空気取り入れ口と空気排出口に温湿度制御機能付き空気浄化装置の清浄空気噴出しダクトと空気取り込みダクトが接続され、ケーシング内が、温湿度制御機能付き空気浄化装置によって、クリーンルーム化され、空気温度が室温に一定に保たれ、感光膜塗布において成膜が行える湿度範囲に抑制されるようになっている。製版工場は、ハンドリングロボットと、該ハンドリングロボットとの間で被製版ロールの受渡しを行うことができ被製版ロールに対して所要の処理を施す感光膜塗布装置とレーザ露光装置を備え、該感光膜塗布装置として、上記感光膜塗布装置が設備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、感光膜塗布作業を行うエリアの雰囲気がクリーンルームの清浄空気と同等であり、雰囲気温度が室温に一定に保たれ、感光膜塗布において成膜が行える湿度範囲に抑制される感光膜塗布及び製版工場に関する。
【背景技術】
【0002】
製版作業、特に感光膜塗布−レーザー露光による潜像形成−エッチングによるセル形成の工程を経る製版作業は、製版工場の雰囲気がクリーンルームの清浄空気と同等であり、雰囲気温度が室温に一定に保たれ、感光膜塗布において成膜が行える湿度範囲に抑制される必要がある。
【0003】
感光剤を被製版ロールに塗布して良好な成膜を得るためには、製版工場の雰囲気に塵埃が存在しないようにする必要がある。雰囲気中に塵埃があると、塗膜時に塵埃が付着してピンホールの原因になる。
さらに、ポジ形感光剤には温湿度依存性があるので、ポジ形感光剤を被製版ロールに塗布して良好な成膜を得るためには、製版工場の雰囲気が25℃の室温に保たれること、並びに湿度対応が良好なポジ形感光剤では、35%〜55%、湿度対応が少し劣るポジ形感光剤では、40%〜50%の範囲に保たれることが必要である。夏と冬とで製版工場の雰囲気温湿度が異なると、成膜条件が異なってくる。6月の梅雨の日には、製版工場の湿度が60%以上になる日があり、そのような条件で塗膜を行うと全面的な成膜不良となり、現像するとレジストが全面的に脱落流失する事態が起きる。又、製版工場の雰囲気温度が冷たくて湿度が例えば25%以下であるとハッカ現象が生じて成膜不良になる。
他方、製版工場は多くの人が出入りするし、また、製版工場には研磨装置等の発塵装置を備えているので、製版工場をクリーンルーム化しても効果が小さく、製版工場の雰囲気は常に汚れてしまう。
製版工場をクリーンルーム化して雰囲気温度を室温に一定に保ち、感光膜塗布において良好な成膜が得られる一定湿度範囲に抑制するには、大掛かりなクリーンルームシステムが必要となり、莫大な費用を必要とする。(特開平11−156135)
【特許文献1】特公平7−109511号公報、
【特許文献2】特開平11−156135号公報、
【特許文献3】特開平10−193551号公報、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、上述した点に鑑み案出したもので、小額費用をかけるだけで場所を大きくとらずに設備することができて、感光膜塗布作業を行うエリアの雰囲気がきわめて短時間に大きなクリーンルームの清浄空気と同等にすることができ未塗布ピンホールの発生を回避でき、感光膜塗布作業を行うエリアの雰囲気温度が室温に一定に保たれ、感光膜塗布において良好な成膜が得られる一定湿度範囲に抑制しうる、感光膜塗布装置及び製版工場を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願第1の発明は、感光剤を被製版ロールに対して均一な膜厚となるように塗布し、乾いたらハンドリングロボットとの間で被製版ロールの受渡しを行うことができる感光膜塗布装置であって、被製版ロールの出し入れを行う扉を備えたケーシングで感光膜塗布装置が密閉され、ケーシングに設けられた空気取り入れ口に温湿度制御機能付き空気浄化装置の清浄空気噴出しダクトが接続され、またケーシングに設けられた空気排出口に温湿度制御機能付き空気浄化装置の空気取り込みダクトが接続され、ケーシング内が、温湿度制御機能付き空気浄化装置によって、クリーンルーム化され、空気温度が室温に一定に保たれ、感光膜塗布において成膜が行える湿度範囲に抑制されるようになっていることを特徴とする感光膜塗布装置を提供するものである。
本願第2の発明は、ケーシングの扉の開口を介してハンドリングロボットとの間で被製版ロールの受け取りを行って閉扉してから、温湿度制御機能付き空気浄化装置の稼動が数分経過してケーシング内がクリーンルーム化されたら、感光剤を被製版ロールに対して塗布することを開始するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の感光膜塗布装置を提供するものである。
本願第3の発明は、被製版ロールをチャックしてハンドリングできるハンドリングロボットと、該ハンドリングロボットとの間で被製版ロールの受渡しを行うことができ被製版ロールに対して所要の処理を施す複数の処理装置を有する製版工場であって、前記複数の処理装置とは、感光膜塗布装置とレーザ露光装置を含み、該感光膜塗布装置として、請求項1に記載の感光膜塗布装置が設備されていることを特徴とする製版工場を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の感光膜塗布装置及び製版工場によれば、
扉を備えたケーシングで感光膜塗布装置が密閉され、ケーシングに設けられた空気取り入れ口と空気排出口に温湿度制御機能付き空気浄化装置の清浄空気噴出しダクトと空気取り込みダクトが接続される構成であるから、
小額費用をかけるだけできわめて省スペースで設備することができて、製版工場に人が出入りしても感光膜塗布作業を行うエリアの雰囲気がきわめて短時間に大きなクリーンルームの清浄空気と同等にすることができ、雨の日や冬の寒い日の乾燥した日に製版工場内の温度や湿度が感光膜塗布作業にとって極端に不適である条件になっても、感光膜塗布作業を行うエリアの雰囲気の温度を室温に正確に保つことができ、また、湿度についても例えば最も条件が良い40%前後に正確に安定させることができるから、感光膜塗布において良好な成膜が得られ塵埃の付着による未塗布ピンホールの発生、多湿による成膜不良の発生、及び低温低湿時のハッカ現象による成膜不良の発生を回避でき、ひいては、製版工場の全体的な稼動の安定性が保証される。
特に、請求項2の発明では、ケーシングを閉扉して数分経過してから感光膜塗布作業を行うように構成されているから、開扉時にケーシング内のクリーン度が一次的に落ちても僅か2分位で復帰するから、感光膜塗布を良好な雰囲気中で行うことが一層高い確率で補償される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本願発明の感光膜塗布装置及び製版工場の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、製版工場の平面図を示すもので、ロボット室Aとメッキ室Bとに区分される。
ロボット室Aには、被製版ロールRの両端をチャックするハンド1aを有する垂直スカラー型のハンドリングロボット1と、該ロボット1のハンドリングエリア内に、搬入搬出パレット装置2と、回転テーブル式ロールストック装置3と、感光膜塗布装置4と、感光膜乾燥促進装置5と、レーザ露光装置6を有していて、ハンドリングロボット1によって、装置2〜6との間で及びメッキ室Bの中継台装置8の位置のカセット形ロールチャック回転搬送ユニットUとの間で被製版ロールRの受渡しが行われる。感光膜塗布装置4の上に感光膜乾燥促進装置5が載っている。
メッキ室Bには、天井に設備されたスタッカクレーン7の走行ラインの下側に中継台装置8と中仕上げ用電解砥粒研磨装置9と鏡面仕上げ用電解砥粒研磨装置10と写真廃液塗布装置11とカセット形ロールチャック回転搬送ユニットUをストックするカセットストック台12、13と脱脂装置14と現像装置15と腐食装置16とレジスト剥離装置17とアルカリ性銅メッキ(下地メッキ)装置18と二基の硫酸銅メッキ装置19,19と二基のクロムメッキ装置20,20が設備されている。
アウトラインとして、落版のための精密円筒加工ができるNC旋盤21と、ロール計測装置22と校正刷り印刷機23が備えられている。
【0008】
図2に示すように、感光膜塗布装置4は、スピンドル側チャック4aとテイル側チャック4bとで被製版ロールRを両端チャックして所要回転数で回転してロール下面一端にワイピングクロス4cを押しつけて他端まで移動することにより、ロール表面に付着している汚れを拭い去り、次いで、ワイピングクロス拭浄装置と同じ台車装置4dに搭載されているポジ形感光剤が上端から溢れ出るコーティングパイプ4eをロール下面の一端近傍に近づけて他端まで所定速度で移動して、ロールの回転走査と、コーティングパイプの復走査との共同により、ポジ形感光剤を被製版ロールに対してスパイラルにかつ隙間が生じないように塗布して均一な膜厚とし、乾いたらハンドリングロボットとの間で被製版ロールの受渡しを行うことができる感光膜塗布装置が設備されている。
そして、被製版ロールの出し入れを行う扉25aを備えたケーシング25で感光膜塗布装置4が密閉され、ケーシング25に設けられた空気取り入れ口25bに温湿度制御機能付き空気浄化装置Pの清浄空気噴出しダクト26が接続され、またケーシング25に設けられた空気排出口25cに温湿度制御機能付き空気浄化装置Pの空気取り込みダクト27が接続されている。ロールを受け入れて閉扉後、ケーシング25内が、温湿度制御機能付き空気浄化装置Pの運転が僅か2、3分を経過することによって、クラス100,000以上からクラス500以下の清浄空気となってクリーンルーム化され、空気温度が室温の25℃にほぼ一定に保たれ、感光膜塗布において成膜が行える45%〜50%というきわめて狭い湿度範囲に容易に抑制されるようになっている。
【0009】
感光膜塗布装置4は、被製版ロールを立てて上下端面のテーパ孔を両端チャックし、被製版ロールの上端に環状のお皿が被嵌されて該お皿にポジ形感光剤が供給され、該お皿がゆっくりと下降してポジ形感光剤が回転しない被製版ロールに塗布される竪型塗布装置も含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の製版工場の平面図を示す。
【図2】本願発明の感光膜塗布装置の平面図を示す。
【符号の説明】
【0011】
4・・・感光膜塗布装置、R・・・被製版ロール、25a・・・扉、25・・・ケーシング、25b・・・空気取り入れ口、25c・・・空気排出口、P・・・温湿度制御機能付き空気浄化装置、26・・・清浄空気噴出しダクト、27・・・空気取り込みダクト、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光剤を被製版ロールに対して均一な膜厚となるように塗布し、乾いたらハンドリングロボットとの間で被製版ロールの受渡しを行うことができる感光膜塗布装置であって、被製版ロールの出し入れを行う扉を備えたケーシングで感光膜塗布装置が密閉され、ケーシングに設けられた空気取り入れ口に温湿度制御機能付き空気浄化装置の清浄空気噴出しダクトが接続され、またケーシングに設けられた空気排出口に温湿度制御機能付き空気浄化装置の空気取り込みダクトが接続され、ケーシング内が、温湿度制御機能付き空気浄化装置によって、クリーンルーム化され、空気温度が室温に一定に保たれ、感光膜塗布において成膜が行える湿度範囲に抑制されるようになっていることを特徴とする感光膜塗布装置。
【請求項2】
ケーシングの扉の開口を介してハンドリングロボットとの間で被製版ロールの受け取りを行って閉扉してから、温湿度制御機能付き空気浄化装置の稼動が数分経過してケーシング内がクリーンルーム化されたら、感光剤を被製版ロールに対して塗布することを開始するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の感光膜塗布装置。
【請求項3】
被製版ロールをチャックしてハンドリングできるハンドリングロボットと、該ハンドリングロボットとの間で被製版ロールの受渡しを行うことができ被製版ロールに対して所要の処理を施す複数の処理装置を有する製版工場であって、
前記複数の処理装置とは、感光膜塗布装置とレーザ露光装置を含み、該感光膜塗布装置として、請求項1に記載の感光膜塗布装置が設備されていることを特徴とする製版工場。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−15279(P2006−15279A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197161(P2004−197161)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000131625)株式会社シンク・ラボラトリー (52)
【Fターム(参考)】