説明

感圧制御弁

【課題】マグネットクラッチ等を用いることなく、圧縮機を確実に最小容量のアンロード運転にして、しかも容量可変型圧縮機を小型に構成する。
【解決手段】ベローズ収容室13内に感圧用ベローズ16を配置する。感圧用ベローズ16にボール11aを当接させ、ステム部11を介して弁体9の開閉動作を行う。プランジャばね36の付勢力を、閉弁ばね15の付勢力より強く設定する。電磁コイル装置30への非通電時に、プランジャばね36の付勢力によりプランジャ35を介して感圧用ベローズ16を弁本体に当接させた状態とする。ベローズ収容室13内の吸入圧力Psの変化に対して、感圧用ベローズ16を弁本体との当接箇所を固定点として伸縮させてプランジャ35を自由移動させて、弁体9が変位しないようにし、アンロード運転を維持する。または、電磁コイル装置への通電時に感圧用ベローズ16を弁本体との当接箇所を固定点としてアンロード運転を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用空調装置などの冷凍サイクル中で冷媒を圧縮するために用いられる容量可変型圧縮機の感圧制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用空調装置の冷凍サイクルに用いられる圧縮機は、エンジンにベルトで直結されているので回転数制御を行うことができない。そこで、エンジンの回転数に制約されることなく適切な冷房能力を得るために、圧縮機の容量(吐出量)を変えることのできる容量可変型圧縮機が用いられている。
【0003】
そのような容量可変型圧縮機においては、一般に、気密に形成されたクランク室内で傾斜角可変に設けられた揺動板が回転軸の回転運動によって駆動されて揺動運動をし、その揺動板の揺動運動により往復動するピストンが吸入圧力をシリンダ内に吸入して圧縮した後、吐出し、クランク室内の圧力を変化させることにより、揺動板の傾斜角度を変化させ、往復動するピストンの移動量を可変することによって、冷媒の吐出量を変化させるようになっている。
【0004】
このような容量可変型圧縮機の容量を可変制御する制御弁として、例えば特開2000−88132号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この特許文献1の制御弁は、圧縮機の吸入圧力Psに応じた感圧用ベローズの伸縮作用により、弁の開閉状態を変化させて、圧縮機の容量制御を行う自力式制御弁である。
【0005】
上記特許文献1の制御弁は、簡単な構成で容量制御を行うことができるが、圧縮機を強制的にアンロード運転(エアコンOFF)にすることができない。このため、エアコンのON/OFFには圧縮機の駆動部分にマグネットクラッチ等を別設する必要があり、そのための装置コストがかかっていた。
【0006】
特許文献1のような制御弁に電磁コイル装置を設け、電磁コイルが通電時には容量制御運転を行い、電磁コイルを非通電にすることで、弁開放強制ばね(30)の作用によって可動鉄芯(プランジャ)とベローズ金具が移動し、伝達ロッド及び弁体を最大開度位置に移行し圧縮機の揺動板の傾斜角度を最小にする制御弁が特開平7−189904号公報(特許文献2)に開示されている。
【0007】
これに対して、圧縮機を強制的にアンロード運転にするようにしたものが、例えば特開平7−189895号公報(特許文献3)に開示されている。この特許文献3のものは、圧縮機本体に、容量制御弁とは別に電磁弁(電磁開閉弁41)を設け、この電磁弁により吐出圧力Pdをクランク室に導入することで揺動板を最小角度となるようにして圧縮機をアンロード運転にし、マグネットクラッチを不要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−88132号公報
【特許文献2】特開平7−189904号公報
【特許文献3】特開平7−189895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2における容量制御弁(24)は、その図8に示されているように、電磁コイルを非通電にすることで、弁開放強制ばね(30)の作用によって可動鉄芯(プランジャ)とベローズ金具が移動し、伝達ロッド及び弁体を最大開度位置に移行する。なお、ベローズ金具と可動鉄心は固着されており、また、可動鉄心は弁本体である連結部材(32)に当接している。したがって、この状態で、吸入圧力Psが高くなると、ベローズが収縮し、弁体が最大開度位置から弁閉方向に変位してしまう。このため、この容量制御弁(24)だけでは、圧縮機のアンロード運転を維持することができない。
【0010】
特許文献3のものでは、強制的にアンロード運転にするために電磁弁(電磁開閉弁41)を設けているので、圧縮機全体が大型化するという問題があり、改良の余地を残している。
【0011】
本発明は、マグネットクラッチ等を用いることなく、圧縮機を確実に最小容量のアンロード運転にして、しかも容量可変型圧縮機を小型に構成することができる感圧制御弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の感圧制御弁は、ベローズ収容室内に配置された感圧用ベローズと、前記感圧用ベローズの一端と当接し、前記感圧用ベローズを介して開弁方向に変位されるとともに、弁リフト量に応じて入口ポートと出口ポートとの間に形成された弁ポートの開度を可変設定する弁部材と、前記弁部材を閉弁方向に付勢する閉弁ばねと、前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に連結されたプランジャと、電磁コイルへの通電または非通電により前記プランジャを介して前記感圧用ベローズを前記開弁方向に付勢する開弁付勢手段とを有する電磁駆動部と、を備え、前記開弁付勢手段の付勢力が前記閉弁ばねの付勢力より強く設定され、前記電磁駆動部の前記開弁付勢手段を働かせない時には、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記プランジャ側を固定点として伸縮させ、前記弁部材により前記弁ポートの開度を制御し、前記電磁駆動部の前記開弁付勢手段を働かせた時には、前記開弁付勢手段により前記感圧用ベローズを押圧して前記弁ポートを全開状態とするとともに、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記弁部材側を固定点として伸縮させ、該感圧用ベローズの伸縮に連動して前記プランジャを自由移動させるようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の感圧制御弁は、ベローズ収容室内に配置された感圧用ベローズと、前記感圧用ベローズの一端と当接し、前記感圧用ベローズを介して開弁方向に変位されるとともに、弁リフト量に応じて入口ポートと出口ポートとの間に形成された弁ポートの開度を可変設定する弁部材と、前記弁部材を閉弁方向に付勢する閉弁ばねと、前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に結合されたプランジャと、該プランジャを前記開弁方向に付勢するプランジャばねと、電磁コイルへの通電により前記プランジャばねの付勢力に抗して前記プランジャを吸引する吸引子と、を備え、前記プランジャばねの付勢力が前記閉弁ばねの付勢力より強く設定されるとともに、前記プランジャは前記開弁方向への移動時に前記感圧用ベローズとの結合部で該感圧用ベローズのみに当接するよう構成され、前記電磁コイルへの通電時に、前記プランジャを前記吸引子に吸引し、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記プランジャ側を固定点として伸縮させ、前記弁部材により前記弁ポートの開度を制御し、前記電磁コイルへの非通電時に、前記プランジャばねの付勢力により前記プランジャを介して前記感圧用ベローズを押圧して前記弁ポートを全開状態とするとともに、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記弁部材側を固定点として伸縮させ、該感圧用ベローズの伸縮に連動して前記プランジャを自由移動させるようにしたことを特徴とする。なお、電磁コイル、吸引子、プランジャ及びプランジャばねが請求項1の「電磁駆動部」に対応し、プランジャばねが請求項1の「開弁付勢手段」に対応する。
【0014】
請求項3の感圧制御弁は、ベローズ収容室内に配置された感圧用ベローズと、前記感圧用ベローズの一端と当接し、前記感圧用ベローズを介して開弁方向に変位されるとともに、弁リフト量に応じて入口ポートと出口ポートとの間に形成された弁ポートの開度を可変設定する弁部材と、前記弁部材を閉弁方向に付勢する閉弁ばねと、前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に連結ガイドを介して結合されたプランジャと、該プランジャを前記閉弁方向に付勢するプランジャばねと、電磁コイルへの通電により前記プランジャばねの付勢力に抗して前記プランジャを吸引する吸引子と、を備え、前記吸引子による吸引力が前記閉弁ばねと前記プランジャばねとの合成付勢力より強く設定されるとともに、前記プランジャの前記連結ガイドは前記開弁方向への移動時に前記感圧用ベローズとの結合部で該感圧用ベローズのみに当接するよう構成され、前記電磁コイルへの非通電時に、前記プランジャばねの付勢力により前記プランジャを前記吸引子から離れた位置に固定し、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記プランジャの連結ガイド側を固定点として伸縮させ、前記弁部材により前記弁ポートの開度を制御し、前記電磁コイルへの通電時に、前記プランジャを前記吸引子側に吸引し、前記プランジャの連結ガイドを介して前記感圧用ベローズを押圧して前記弁ポートを全開状態とするとともに、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記弁部材側を固定点として伸縮させ、該感圧用ベローズの伸縮に連動して前記プランジャを自由移動させるようにしたことを特徴とする。なお、電磁コイル、吸引子、プランジャ、連結ガイド及びプランジャばねが請求項1の「電磁駆動部」に対応し、電磁コイルによる吸引子、プランジャ間の吸引力が請求項1の「開弁付勢手段」に対応する。
【0015】
請求項4の感圧制御弁は、請求項2に記載の感圧制御弁であって、前記プランジャと前記感圧用ベローズとが機械的に結合されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5の感圧制御弁は、請求項2に記載の感圧制御弁であって、前記プランジャと前記感圧用ベローズとが、該プランジャの端部の円柱状のボス部を該感圧用ベローズの円筒状の保持部内に挿通して結合されるとともに、該感圧用ベローズを該プランジャ側に付勢する中間ばねを備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項6の感圧制御弁は、請求項3に記載の感圧制御弁であって、前記連結ガイドと前記感圧用ベローズとが機械的に結合されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7の感圧制御弁は、請求項3に記載の感圧制御弁であって、前記連結ガイドと前記感圧用ベローズとが、該連結ガイドの端部の円柱状のボス部を該感圧用ベローズの円筒状の保持部内に挿通して結合されるとともに、該感圧用ベローズを該連結ガイド側に付勢する中間ばねを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の感圧制御弁によれば、電磁駆動部の開弁付勢手段を働かせることにより、感圧用ベローズが押圧されて、弁部材により、弁ポートが全開状態となる。そして、ベローズ収容室内に導入される圧縮機の吸入圧力が変化しても、感圧用ベローズが弁部材側を固定点として伸縮し、プランジャが自由移動するだけとなるので、弁部材は変位することがなく、全開状態を維持することができ、圧縮機を確実にアンロード運転とすることができる。したがって、圧縮機(エアコン)のON/OFFのためのマグネットクラッチ等を用いる必要がないため、圧縮機を安価かつ小型に構成することができる。
【0020】
請求項2の感圧制御弁によれば、電磁コイルを非通電とすることにより、プランジャばねの付勢力により感圧用ベローズが押圧されて、弁部材により、弁ポートが全開状態となる。そして、ベローズ収容室内に導入される圧縮機の吸入圧力が変化しても、感圧用ベローズが弁部材側を固定点として伸縮し、プランジャが自由移動するだけとなるので、弁部材は変位することがなく、全開状態を維持することができ、圧縮機を確実にアンロード運転とすることができる。したがって、圧縮機(エアコン)のON/OFFのためのマグネットクラッチ等を用いる必要がないため、圧縮機を安価かつ小型に構成することができる。
【0021】
請求項3の感圧制御弁によれば、電磁コイルを通電とすることにより、吸引子、プランジャ間の吸引力により感圧用ベローズが押圧されて、弁部材により、弁ポートが全開状態となる。そして、ベローズ収容室内に導入される圧縮機の吸入圧力が変化しても、感圧用ベローズが弁部材側を固定点として伸縮し、プランジャが自由移動するだけとなるので、弁部材は変位することがなく、全開状態を維持することができ、圧縮機を確実にアンロード運転とすることができる。したがって、圧縮機(エアコン)のON/OFFのためのマグネットクラッチ等を用いる必要がないため、圧縮機を安価かつ小型に構成することができる。
【0022】
請求項4の感圧制御弁によれば、請求項2の効果に加えて、プランジャと感圧用ベローズとが機械的に結合されている。これにより、プランジャと一体に感圧用ベローズが移動するので、閉弁ばねの付勢力を弱く設定することができ、その分だけプランジャばねの付勢力も弱く設定することができる。したがって、電磁コイル及び吸引子によるプランジャの駆動力も小さくできる。
【0023】
請求項5の感圧制御弁によれば、請求項2の効果に加えて、プランジャと感圧用ベローズとがプランジャの円柱状のボス部を感圧用ベローズの円筒状の保持部内に挿通して結合されている。これにより、プランジャと感圧用ベローズとの結合にかしめ等を必要とせず、組立が容易になる。また、感圧用ベローズをプランジャ側に付勢する中間ばねを備えているので、ベローズ収縮時の感圧用ベローズの振動を防止することができる。
【0024】
請求項6の感圧制御弁によれば、請求項3の効果に加えて、連結ガイドと感圧用ベローズとが機械的に結合されている。これにより、連結ガイドと一体に感圧用ベローズが移動するので、閉弁ばねの付勢力を弱く設定することができ、その分だけ電磁コイル及び吸引子によるプランジャの駆動力も小さくできる。
【0025】
請求項7の感圧制御弁によれば、請求項3の効果に加えて、連結ガイドと感圧用ベローズとが連結ガイドの円柱状のボス部を感圧用ベローズの円筒状の保持部内に挿通して結合されている。これにより、連結ガイドと感圧用ベローズとの結合にかしめ等を必要とせず、組立が容易になる。また、感圧用ベローズをプランジャ側に付勢する中間ばねを備えているので、ベローズ収縮時の感圧用ベローズの振動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の感圧制御弁の非通電時のベローズ最収縮状態の縦断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の感圧制御弁の通電時の縦断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の感圧制御弁の通電時のベローズ最収縮状態の縦断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の感圧制御弁の通電時の縦断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の感圧制御弁の通電時の縦断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態の感圧制御弁の通電時のベローズ最収縮状態の縦断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態の感圧制御弁の非通電時のベローズ最収縮状態の縦断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態の感圧制御弁の通電時の縦断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。
【図14】本発明の第5実施形態の感圧制御弁の通電時の縦断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態の感圧制御弁の通電時の縦断面図である。
【図16】本発明の第6実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の感圧制御弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図、図2は同感圧制御弁の非通電時のベローズ最収縮状態の縦断面図、図3は同感圧制御弁の通電時の縦断面図、図4は同感圧制御弁の通電時のベローズ最収縮状態の断面図である。図1及び図2は圧縮機のアンロード運転時、図3は圧縮機の容量制御運転時、図4は圧縮機のフルロード運転時に対応する。
【0028】
この第1実施形態の感圧制御弁は、弁ハウジング本体1と弁ハウジング本体1の上部にかしめ結合されたベローズケース2とによる弁ハウジング3を有している。弁ハウジング本体1の下部には入口ポート4を有し弁室5を画定するばね受け部材6がかしめ結合されている。また、弁ハウジング本体1には出口ポート7が形成されており、弁室5と出口ポート7との間に弁ポート8が連通形成されている。ばね受け部材6の下部にはバルブフィルタ40が取り付けられており、圧縮機の吐出圧力Pdがこのバルブフィルタ40を介して弁室5に導入される。また、出口ポート7から流出する冷媒の圧力は圧縮機のクランク室の圧力Pcとしてクランク室に導入される。
【0029】
弁室5内にはボール状の弁体9が設けられている。弁体9は、図にて上下に変位することにより、弁座10に着座、離間して弁ポート8を開閉し、弁リフトに応じて入口ポート4より弁ポート8を経て出口ポート7へ流れる流体の流量を定量的に制御(可変制御)する。弁体9の上には弁ステム部11及びボール11aが配設されており、この弁体9、弁ステム部11及びボール11aが「弁部材」を構成している。弁ステム部11とボール11aは、弁ハウジング本体1に形成されたガイド孔12を摺動可能に貫通しており、ボール11aの上端が後述するベローズ収容室13内に僅かに突出している。
【0030】
弁体9にはボール受け14が係合しており、ボール受け14とばね受け部材6との間に、弁体9を閉弁方向(上方)へ付勢する閉弁ばね15が設けられている。
【0031】
弁ハウジング3は弁ハウジング本体1とベローズケース2とでベローズ収容室13を画定しており、ベローズ収容室13には感圧用ベローズ16が配置されている。感圧用ベローズ16は、下側端部17と、ベローズ本体18と、ストッパ当金22と、ベローズカバー20と、調整ばね21とで構成されている。下側端部17とベローズ本体18は一体に成形されており、ベローズ本体18はベローズカバー20と気密に溶接されて、その内部に真空気密室19が画定されている。また、ストッパ当金22とベローズカバー20との間に調整ばね21が圧縮状態で配設されている。ベローズケース2には感圧ポート25が形成されており、圧縮機の吸入圧力Psがこの感圧ポート25を介してベローズ収容室13に導入される。
【0032】
ベローズケース2の上部には、電磁コイル装置30のプランジャケース31が気密に固定され、さらにプランジャケース31の上部には、ガイド32が気密に固定されている。ガイド32内には調整ねじ33がその上端部をガイド32に螺合されて配設されている。そして、プランジャケース31内には、調整ねじ33の下端に当接するように吸引子34が配設されている。プランジャケース31の内部にはプランジャ35が配設されており、このプランジャ35と吸引子34との間にはプランジャばね36が圧縮して配設されている。プランジャ35の下端の円柱状のボス部35Aには感圧用ベローズ16のベローズカバー20が固定されている。すなわち、ベローズカバー20の中心にはボス部35Aが嵌め込まれる略円筒状の保持部20aが形成されており、この保持部20aをボス部35Aの周囲の凹部35aの位置でかしめることにより、プランジャ35と感圧用ベローズ16とが機械的にかしめ結合されている。これにより、プランジャ35とベローズカバー20は一体に移動する。また、プランジャ35には吸引子34側の隙間とベローズ収容室13とを連通させる連通路37が形成されており、吸引子34側の隙間とベローズ収容室13とを均圧させている。これによりプランジャ35は差圧の影響を受けずにスムーズにプランジャケース31内を摺動可能となっている。プランジャケース31の外周部には電磁コイル38が設けられており、電磁コイル38の励磁により、吸引子34の下端面がプランジャ35に対する磁気吸引面となる。
【0033】
図3に示すように、電磁コイル38が通電時には、プランジャ35が吸引子34に吸着した状態となる。また、前記調整ねじ33のガイド32への追い込み量を調整する事により、感圧用ベローズ16(ベローズ本体18及び調整ばね21)の圧縮量(圧縮荷重)が、吸引子34、プランジャ35を介して調整される。これにより電磁コイル38の通電時(容量制御運転時)のPs設定(弁閉する圧力)が調整できる。なおこの時、感圧用ベローズ16はベローズ収容室13の内圧が最小圧力のとき、下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接し、この感圧用ベローズ16が僅かに圧縮された状態とされている。
【0034】
プランジャばね36のばね力F、閉弁ばね15のばね力fは、F>fの関係となるように設定されている。また、前記弁ポート8の弁ポート有効面積をA、前記弁ポートに作用する吐出圧力Pdとクランク室圧力Pcの最大差圧をΔPmとした時、プランジャばね3
6のばね力FをF>(f+(A×ΔPm))となるようなばねを選択すれば、最大吐出圧
力Pdと最小クランク室圧力Pcの仕様範囲内において、感圧制御弁は最大弁開位置を保持できるから、感圧制御弁の非通電時のアンロード運転がより確実に保障される。
【0035】
以上の構成により、電磁コイル装置30が非通電時(非励磁時)には、図1に示すように、プランジャ35がプランジャばね36のばね力により吸引子34から離間し、感圧用ベローズ16の下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接する。この位置状態では、弁体9は感圧用ベローズ16の下側端部17に当接したボール11a、弁ステム部11を介し閉弁ばね15のばね力に抗して降下した最大弁開位置に位置する。そして、プランジャばね36のばね力が閉弁ばね15のばね力より大きく設定されているので、吸入圧力Psに変化が生じても、下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接した状態、すなわち弁体9の全開状態を維持して、感圧用ベローズ16の伸縮とプランジャ35の変位が生じるだけである。例えば、図2に示すように、ベローズカバー20がストッパ当金22に当接した最収縮状態でも、プランジャ35が吸引子34に接近する方向に変位するだけである。すなわち、感圧用ベローズ16はベローズ収容室13の底部24を固定点として伸縮する。これにより、感圧制御弁は最大弁開位置を保持できるから、感圧制御弁を非通電状態にすることで圧縮機のアンロード運転の状態が確実に維持される。
【0036】
一方、電磁コイル装置30が通電時(励磁時)には、図3に示すように、プランジャ35がプランジャばね36のばね力に抗して吸引子34に吸着する。この状態で、ベローズ収容室13の内圧(吸入圧力Ps)が低くなると、感圧用ベローズ16は、プランジャ35側を固定点として伸長し、逆に吸入圧力Psが高くなると感圧用ベローズ16は、前記同様にプランジャ35側を固定点として収縮する。これにより、弁体9が変位し、圧縮機は容量制御運転となる。さらに吸入圧力Psが高くなり、感圧用ベローズ16がさらに収縮すると、図4に示すように感圧用ベローズ16がボール11aから切り離されて弁体9が弁ポート8を全閉とし、フルロード運転となる。
【0037】
このように、感圧ポート25に容量可変型圧縮機の吸入圧力Psが導かれ、入口ポート4が容量可変型圧縮機の吐出ポートに連通接続され、出口ポート7が容量可変型圧縮機のクランク室に連通接続される。したがって、感圧用ベローズ16は容量可変型圧縮機の吸入圧力Psに感応し、電磁コイル装置30が通電時には、吸入圧力Psの変化に応じ、弁体9の開度を変位させ、容量可変型圧縮機のクランク室に流入する吐出圧力を制御する。これにより、前記クランク室圧力が制御され、上述の制御弁が容量制御弁として作用する。
【0038】
以上の第1実施形態では、プランジャ35と感圧用ベローズ16とが機械的にかしめ結合されているが、プランジャ35と感圧用ベローズ16は機械的に分離されていて互いに当接するだけの構成でもよい。すなわち、プランジャばね36と閉弁ばね15とが、プランジャ35と感圧用ベローズ16とを互いに当接する方向に付勢しているので、電磁コイル装置30の非通電時は図1から図2の状態に至る同様な動作となる。また、電磁コイル装置30の通電時には、少なくとも図3の状態に至るまでは同様な動作となる。
【0039】
図5及び図6は上記のような構成の第2実施形態の感圧制御弁の縦断面図であり、図5は非通電時、図6は通電時を示す。この図5及び図6において、前記第1実施形態と同じ要素には図1乃至図4と同符号を付記してある。なお、その要素の構造、作用効果は前述のとおりであるのでその詳細な説明は省略する。
【0040】
この第2実施形態の感圧用ベローズ16においては、ベローズカバー20の中心にストレートな円筒状の保持部20bが形成されており、この保持部20b内にプランジャ35の端部の円柱状のボス部35Bが嵌め込まれている。すなわち、この第2実施形態では、前記第1実施形態のような凹部35aがなく、また、保持部20bはかしめ結合されておらず、プランジャ35のボス部35Bは保持部20b内に単に挿通した構成となっている。
【0041】
一方、ベローズ収容室13の底部24、すなわち弁ハウジング本体1には、円環状の溝1aが形成されており、この溝1a内には中間ばね39が圧縮された状態で配設されている。この中間ばね39は、感圧用ベローズ16の下側端部17に当接しており、感圧用ベローズ16を常時プランジャ35側に付勢しているので、図6に示すように感圧用ベローズ16がボール11aから切り離されて弁体9が弁ポート8を全閉とし、図4と同様にフルロード運転となる。なお、この中間ばね39のばね力は、耐最大振動性仕様で、感圧用ベローズ16が振動しない程度のばね力である。
【0042】
図7は第3実施形態の感圧制御弁の通電時の縦断面図、図8は同感圧制御弁の通電時のベローズ最収縮状態の縦断面図、図9は同感圧制御弁の非通電時の縦断面図、図10は同感圧制御弁の非通電時のベローズ最収縮状態の断面図である。図7及び図8は圧縮機のアンロード運転時、図9は圧縮機の容量制御運転時、図10は圧縮機のフルロード運転時に対応する。この第3実施形態の図7乃至図10において、前記第1実施形態及び第2実施形態と同じ要素には図1乃至図6と同符号を付記してあり、その要素の構造、作用効果は前述のとおりであり、重複する説明は省略する。
【0043】
この第3実施形態の感圧制御弁では、弁ハウジング本体1の下部には、入口ポート61aを有し弁室5を画定するばね受け部材61がねじ込み固定されている。ばね受け部材61の下部にはバルブフィルタ40が取り付けられており、圧縮機の吐出圧力Pdがバルブフィルタ40及び入口ポート61aを介して弁室5に導入され、出口ポート7から流出する冷媒の圧力は圧縮機のクランク室の圧力Pcとしてクランク室に導入される。また、圧縮機の吸入圧力Psが感圧ポート25を介してベローズ収容室13に導入される。
【0044】
この第3実施形態の感圧用ベローズ16は、第2実施形態と同様に、ベローズカバー20の中心にストレートな円筒状の保持部20cが形成されており、この保持部20c内に後述の連結ガイド55の端部の円柱状のボス部55Aが嵌め込まれている。すなわち、この第3実施形態では、第1実施形態のような凹部35aがなく、また、保持部20cはかしめ結合されておらず、ボス部55Aは保持部20c内に単に挿通した構成となっている。
【0045】
ベローズケース2の上部は略円柱形状の吸引子51として形成されている。この吸引子51には、電磁コイル装置50のプランジャケース52が気密に固定されている。プランジャケース52の内部にはプランジャ53が配設されており、このプランジャ53と吸引子51との間にはプランジャばね54が圧縮して配設されている。吸引子51の中心には貫通穴51aが形成されており、この貫通孔51a内には棒状の連結ガイド55が、前記貫通穴51aに接触しないように隙間を設け挿通されている。この連結ガイド55の上端はプランジャ53に固着されており、下端の円柱状のボス部55Aは前記のように感圧用ベローズ16のベローズカバー20に嵌め込まれている。また、プランジャ53には吸引子51側の隙間と、プランジャ53の端部のプランジャケース52の空間とを連通させる連通路53aが形成されており、プランジャ53は差圧の影響を受けずにスムーズにプランジャケース52内を摺動可能となっている。プランジャケース52の外周部には電磁コイル56が設けられており、電磁コイル56の励磁により、吸引子51の上面がプランジャ53に対する磁気吸引面となる。
【0046】
また、第2実施形態と同様に、ベローズ収容室13の底部24(弁ハウジング本体1)に形成された円環状の溝1a内には中間ばね39が圧縮された状態で配設されている。この中間ばね39は、感圧用ベローズ16の下側端部17に当接しており、感圧用ベローズ16を常時連結ガイド55(プランジャ53)側に付勢しているので、図10に示すように感圧用ベローズ16がボール11aから切り離されて弁体9が弁ポート8を全閉とし、前記図6と同様なフルロード運転となる。なお、この中間ばね39のばね力は、耐最大振動性仕様で、感圧用ベローズ16が振動しない程度のばね力である。
【0047】
図9に示すように、電磁コイル56の非通電時には、プランジャばね54のばね力によりプランジャ53が吸引子51から離間して、プランジャケース52の内側端部に当接した状態となる。また、前記ばね受け部材61の弁ハウジング本体への追い込み量を調整する事により、閉弁ばね荷重を変化させ、感圧用ベローズ16(ベローズ本体18及び調整ばね21)の圧縮量(圧縮荷重)が弁部材を介して調整される。これにより電磁コイル56の非通電時(容量制御運転時)のPs設定(弁閉する圧力)が調整できる。なおこの時、感圧用ベローズ16はベローズ収容室13の内圧が最小圧力のとき、下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接し、この感圧用ベローズ16が僅かに圧縮された状態となる。
【0048】
電磁コイル56の通電時の吸引子51、プランジャ53間の吸引力F1、閉弁ばね15と中間ばね39の合成ばね力f1は、F1>f1の関係となるように設定されている。また、前記弁ポート8の弁ポート有効面積をA、前記弁ポートに作用する吐出圧力Pdとクランク室圧力Pcの最大差圧をΔPmとした時、吸引子51、プランジャ53間の吸引力
F1をF1>(f1+(A×ΔPm))となるように設定すれば、最大吐出圧力Pdと最
小クランク室圧力Pcの仕様範囲内において、感圧制御弁は最大弁開位置を保持できるから、感圧制御弁の通電時のアンロード運転がより確実に保障される。
【0049】
なお、図9に示すように、電磁コイル56の非通電時に、吸引子51とプランジャ53との隙間の寸法L1は、ベローズカバー20とストッパ当金22との隙間の寸法L2より大きく設定されている。
【0050】
以上の構成により、電磁コイル装置50が通電時(励磁時)には、図7に示すように、プランジャ53がプランジャばね54のばね力に抗して吸引子51側に吸引され、感圧用ベローズ16の下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接する。この位置状態では、弁体9は感圧用ベローズ16の下側端部17に当接したボール11a、弁ステム部11を介し閉弁ばね15のばね力に抗して降下した最大弁開位置に位置する。そして、吸引子51、プランジャ53間の吸引力が、閉弁ばね15と中間ばね39の合成ばね力より大きく設定されているので、吸入圧力Psに変化が生じても、下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接した状態、すなわち弁体9の全開状態を維持して、感圧用ベローズ16の伸縮とプランジャ53(及び連結ガイド55)の変位が生じるだけである。例えば、図8に示すように、ベローズカバー20がストッパ当金22に当接した最収縮状態では、プランジャ53が吸引子51から離間する方向に変位するだけである。すなわち、感圧用ベローズ16はベローズ収容室13の底部24を固定点として伸縮する。これにより、感圧制御弁は最大弁開位置を保持できるから、感圧制御弁を通電状態にすることで圧縮機のアンロード運転の状態が確実に維持される。
【0051】
一方、電磁コイル装置50が非通電時(非励磁時)には、図9に示すように、プランジャばね54のばね力によりプランジャ53が吸引子51から離間し、プランジャケース52の内側端部に当接する。この状態で、ベローズ収容室13の内圧(吸入圧力Ps)が低くなると、感圧用ベローズ16は、連結ガイド55のボス部55A側を固定点として伸長し、逆に吸入圧力Psが高くなると感圧用ベローズ16は、前記同様にボス部55A側を固定点として収縮する。これにより、弁体9が変位し、圧縮機は容量制御運転となる。さらに吸入圧力Psが高くなり、感圧用ベローズ16がさらに収縮すると、図10に示すように感圧用ベローズ16がボール11aから切り離されて弁体9が弁ポート8を全閉とし、フルロード運転となる。
【0052】
このように、感圧ポート25に容量可変型圧縮機の吸入圧力Psが導かれ、入口ポート61aが容量可変型圧縮機の吐出ポートに連通接続され、出口ポート7が容量可変型圧縮機のクランク室に連通接続される。したがって、感圧用ベローズ16は容量可変型圧縮機の吸入圧力Psに感応し、電磁コイル装置50が非通電時には、吸入圧力Psの変化に応じ、弁体9の開度を変位させ、容量可変型圧縮機のクランク室に流入する吐出圧力を制御する。これにより、前記クランク室圧力が制御され、上述の制御弁が容量制御弁として作用する。
【0053】
図11は第4実施形態の感圧制御弁の通電時の縦断面図、図12は同感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。図11は圧縮機のアンロード運転時、図12は圧縮機の容量制御運転時に対応する。この第4実施形態の図11及び図12において、前記第3実施形態と同じ要素には図7と同符号を付記してあり、その要素の構造、作用効果は前述のとおりであり、重複する説明は省略する。
【0054】
第3実施形態との違いは、感圧用ベローズ16と連結ガイド55との結合構造であり、この第4実施形態では、ベローズカバー20の中心にボス部55Aが嵌め込まれる略円筒状の保持部20dが形成されており、この保持部20dをボス部55Aの周囲の凹部55aの位置でかしめることにより、連結ガイド55と感圧用ベローズ16とが機械的にかしめ結合されている。これにより、連結ガイド55とベローズカバー20は一体に移動する。
【0055】
この第4実施形態では第3実施形態の中間ばね39がないので、電磁コイル56の通電時の吸引子51、プランジャ53間の吸引力F1、閉弁ばね15のばね力fが、F1>fの関係となるように設定されている。また、前記弁ポート8の弁ポート有効面積をA、前記弁ポート8に作用する吐出圧力Pdとクランク室圧力Pcの最大差圧をΔPmとした時
、吸引子51、プランジャ53間の吸引力F1をF1>(f+(A×ΔPm))となるよ
うに設定すれば、最大吐出圧力Pdと最小クランク室圧力Pcの仕様範囲内において、感圧制御弁は最大弁開位置を保持できるから、感圧制御弁の通電時のアンロード運転がより確実に保障される。なお、図12に示すように、電磁コイル56の非通電時に、吸引子51とプランジャ53との隙間の寸法L1は、ベローズカバー20とストッパ当金22との隙間の寸法L2より大きく設定されている。
【0056】
この第4実施形態でも、第3実施形態と同様に、電磁コイル装置50が通電時(励磁時)には、図11に示すように、プランジャ53が吸引子51側に吸引され、感圧用ベローズ16の下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接し、弁体9は最大弁開位置に位置する。そして、吸入圧力Psに変化が生じても、下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接して弁体9の全開状態を維持し、感圧用ベローズ16はベローズ収容室13の底部24を固定点として伸縮する。これにより、感圧制御弁は最大弁開位置を保持できるから、感圧制御弁を通電状態にすることで圧縮機のアンロード運転の状態が確実に維持される。
【0057】
また、電磁コイル装置50が非通電時(非励磁時)には、図12に示すように、プランジャ53がプランジャケース52の内側端部に当接する。この状態で、吸入圧力Psが低くなると、感圧用ベローズ16は、連結ガイド55のボス部55A側を固定点として伸長し、逆に吸入圧力Psが高くなるとボス部55A側を固定点として収縮する。なお、図12は最大伸張状態である。これにより、弁体9が変位し、圧縮機は容量制御運転となる。さらに吸入圧力Psが高くなって感圧用ベローズ16がさらに収縮すると、感圧用ベローズ16がボール11aから切り離されて弁体9が弁ポート8を全閉とし、フルロード運転となる。
【0058】
図13は第5実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図、図14は同感圧制御弁の通電時の縦断面図である。図13は圧縮機のアンロード運転時、図14は圧縮機の容量制御運転時に対応する。この第5実施形態では、第2実施形態と同様に圧縮機のアンロード運転時に非通電とし、圧縮機の容量制御運転時に通電とするものであり、この第5実施形態の図13及び図14において、前記第2実施形態と同じ要素には図5と同符号を付記し、その要素の構造、作用効果は前述のとおりであり、重複する説明は省略する。また、第2実施形態と対応する要素には図5の符号に「′」を付した符号を付記する。
【0059】
この第5実施形態の感圧制御弁は、ベローズケース71とプランジャケース72をステンレス(SUS)板で一体形成したものである。ベローズケース71は、弁ハウジング本体1′の上部にかしめ結合され、弁ハウジング3′を構成している。この弁ハウジング3′の内部は感圧用ベローズ16を収容するベローズ収容室13となっている。ベローズケース71の上部にはプランジャケース72が一体形成される。また、ベローズケース71の外周には蓋73が嵌合されており、蓋73の上部及びプランジャケース72の外周に電磁コイル装置30′が設けられている。プランジャケース72の上部には吸引子34′が取り付けられるとともに、プランジャケース72内にはプランジャ35′が配設されている。また、プランジャ35′と吸引子34′との間にはプランジャばね36′が圧縮して配設されている。
【0060】
弁ハウジング本体1′の下部には入口ポート4′を有し弁室5′を画定するばね受け部材6′がねじ止めされている。そして、圧縮機の吐出圧力Pdが入口ポート4′を介して弁室5′に導入される。また、出口ポート7′から流出する冷媒の圧力は圧縮機のクランク室の圧力Pcとしてクランク室に導入される。また、ベローズケース71には感圧ポート25′が形成されており、圧縮機の吸入圧力Psがこの感圧ポート25′を介してベローズ収容室13に導入される。
【0061】
弁室5′及びガイド孔12′内には、円錐状の弁体9′と円柱状の弁ステム部11′とを一体形成したニードル弁90が設けられている。ニードル弁90は、図にて上下に変位することにより、弁体9′を弁座10′に着座、離間して弁ポート8′を開閉し、弁リフトに応じて入口ポート4′より弁ポート8′を経て出口ポート7′へ流れる流体の流量を定量的に制御(可変制御)する。弁ステム部11′の上に配設されたボール11aとニードル弁90が「弁部材」を構成している。弁体9′にはフランジ部9a′が形成されており、このフランジ部9a′とばね受け部材6′との間に、弁体9′を閉弁方向(上方)へ付勢する閉弁ばね15′が設けられている。
【0062】
第2実施形態と同様に、ベローズカバー20の中心にストレートな円筒状の保持部20bが形成されており、この保持部20b内にプランジャ35′の端部の円柱状のボス部35B′が嵌め込まれている。また、ベローズ収容室13の底部24の溝1a内には中間ばね39が圧縮された状態で配設されている。
【0063】
電磁コイル装置30′が非通電時(非励磁時)には、図13に示すように、プランジャ35′がプランジャばね36′のばね力により吸引子34′から離間する。これにより、感圧用ベローズ16の下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接し、弁体9′は最大弁開位置に位置する。そして、吸入圧力Psに変化が生じても、下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接して弁体9′の全開状態を維持し、感圧用ベローズ16はベローズ収容室13の底部24を固定点として伸縮する。これにより、感圧制御弁は最大弁開位置を保持できるから、感圧制御弁を非通電状態にすることで圧縮機のアンロード運転の状態が確実に維持される。
【0064】
また、電磁コイル装置30′が通電時(励磁時)には、図14に示すように、プランジャ35′が吸引子34′に吸着した状態となる。この状態で、吸入圧力Psが低くなると、感圧用ベローズ16は、プランジャ35′のボス部35B′側を固定点として伸長し、逆に吸入圧力Psが高くなるとボス部35B′側を固定点として収縮する。これにより、弁体9′が変位し、圧縮機は容量制御運転となる。さらに吸入圧力Psが高くなって感圧用ベローズ16がさらに収縮すると、感圧用ベローズ16がボール11aから切り離されて弁体9′が弁ポート8′を全閉とし、フルロード運転となる。
【0065】
図15は第6実施形態の感圧制御弁の通電時の縦断面図、図16は同感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。図15は圧縮機のアンロード運転時、図16は圧縮機の容量制御運転時に対応する。この第6実施形態では、第3実施形態と同様に圧縮機のアンロード運転時に通電とし、圧縮機の容量制御運転時に非通電とするものであり、この第6実施形態の図15及び図16において、前記第3実施形態及び第5実施形態と同じ要素には図7及び図13と同符号を付記し、その要素の構造、作用効果は前述のとおりであり、重複する説明は省略する。また、第3実施形態及び第5実施形態と対応する要素には図7及び図13の符号に「′」を付した符号を付記する。
【0066】
この第6実施形態の感圧制御弁も第5実施形態と同様に、ベローズケース71をステンレス(SUS)板で一体形成したものである。ベローズケース71は、弁ハウジング本体1′の上部にかしめ結合され、弁ハウジング3′を構成している。この弁ハウジング3′の内部は感圧用ベローズ16を収容するベローズ収容室13となっている。また、ベローズケース71及び蓋73の上部に電磁コイル装置50′が設けられている。
【0067】
ベローズケース71の上部には吸引子51′が取り付けられている。吸引子51′には、電磁コイル装置50′のプランジャケース52′が気密に固定されている。プランジャケース52′の内部にはプランジャ53′が配設されており、このプランジャ53′と吸引子51′との間にはプランジャばね54′が圧縮して配設されている。吸引子51′の中心には貫通穴51a′が形成されており、この貫通孔51a′内には棒状の連結ガイド55′が、前記貫通穴51a′に接触しないように隙間を設け挿通されている。この連結ガイド55′の上端はプランジャ53′に固着されている。
【0068】
また、プランジャ53′には吸引子51′側の隙間と、プランジャ53′の端部のプランジャケース52′の空間とを連通させる連通路53a′が形成されており、プランジャ53′は差圧の影響を受けずにスムーズにプランジャケース52′内を摺動可能となっている。プランジャケース52′の外周部には電磁コイル56′が設けられており、電磁コイル56′の励磁により、吸引子51′の上面がプランジャ53′に対する磁気吸引面となる。なお、図16に示すように、電磁コイル56′の非通電時に、吸引子51′とプランジャ53′との隙間の寸法L1は、ベローズカバー20とストッパ当金22との隙間の寸法L2より大きく設定されている。なお、図16では、容量制御により感圧用ベローズ16が僅かに収縮した状態を示しているので、L2は図示の寸法とは異なる。
【0069】
第5実施形態と同様に、ベローズカバー20の中心にストレートな円筒状の保持部20bが形成されており、この保持部20b内に連結ガイド55′の端部の円柱状のボス部55A′が嵌め込まれている。また、ベローズ収容室13の底部24の溝1a内には中間ばね39が圧縮された状態で配設されている。さらに、第5実施形態と同様に、圧縮機の吐出圧力Pdが入口ポート4′を介して弁室5′に導入され、出口ポート7′から流出する冷媒の圧力は圧縮機のクランク室の圧力Pcとしてクランク室に導入される。また、圧縮機の吸入圧力Psが感圧ポート25′を介してベローズ収容室13に導入される。
【0070】
電磁コイル装置50′が通電時(励磁時)には、図15に示すように、プランジャ53′が吸引子51′側に吸引され、感圧用ベローズ16の下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接し、弁体9′は最大弁開位置に位置する。そして、吸入圧力Psに変化が生じても、下側端部17がベローズ収容室13の底部24に当接して弁体9′の全開状態を維持し、感圧用ベローズ16はベローズ収容室13の底部24を固定点として伸縮する。これにより、感圧制御弁は最大弁開位置を保持できるから、感圧制御弁を通電状態にすることで圧縮機のアンロード運転の状態が確実に維持される。
【0071】
また、電磁コイル装置50′が非通電時(非励磁時)には、図16に示すように、プランジャ53′がプランジャケース52′の内側端部に当接する。この状態で、吸入圧力Psが低くなると、感圧用ベローズ16は、連結ガイド55′のボス部55A′側を固定点として伸長し、逆に吸入圧力Psが高くなるとボス部55A′側を固定点として収縮する。これにより、弁体9′が変位し、圧縮機は容量制御運転となる。さらに吸入圧力Psが高くなって感圧用ベローズ16がさらに収縮すると、感圧用ベローズ16がボール11aから切り離されて弁体9′が弁ポート8′を全閉とし、フルロード運転となる。
【0072】
以上の実施形態において、電磁コイル装置への通電を起動時の短時間は高電圧(倍電圧)を加えプランジャが吸引子に吸着または吸引した後は、電圧を下げ、低電圧を保持させれば、制御弁の消費電力の低減およびコイルの小型化が図れ、更に好ましい。
【符号の説明】
【0073】
1,1′ 弁ハウジング本体
2,71 ベローズケース
3,3′ 弁ハウジング
4,4′,61a 入口ポート
5,5′ 弁室
6,6′,61 ばね受け部材
7,7′ 出口ポート
8,8′ 弁ポート
9,9′ 弁体(弁部材)
10,10′ 弁座
11,11′ 弁ステム部(弁部材)
11a ボール(弁部材)
13 ベローズ収容室
15,15′ 閉弁ばね
16 感圧用ベローズ
17 下側端部
30,30′,50′ 電磁コイル装置
34,34′,51,51′ 吸引子
35,35′,53,53′ プランジャ
36,36′,54,54′ プランジャばね
31,52,52′,72 プランジャケース
55,55′ 連結ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベローズ収容室内に配置された感圧用ベローズと、
前記感圧用ベローズの一端と当接し、前記感圧用ベローズを介して開弁方向に変位されるとともに、弁リフト量に応じて入口ポートと出口ポートとの間に形成された弁ポートの開度を可変設定する弁部材と、
前記弁部材を閉弁方向に付勢する閉弁ばねと、
前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に連結されたプランジャと、電磁コイルへの通電または非通電により前記プランジャを介して前記感圧用ベローズを前記開弁方向に付勢する開弁付勢手段とを有する電磁駆動部と、
を備え、
前記開弁付勢手段の付勢力が前記閉弁ばねの付勢力より強く設定され、
前記電磁駆動部の前記開弁付勢手段を働かせない時には、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記プランジャ側を固定点として伸縮させ、前記弁部材により前記弁ポートの開度を制御し、
前記電磁駆動部の前記開弁付勢手段を働かせた時には、前記開弁付勢手段により前記感圧用ベローズを押圧して前記弁ポートを全開状態とするとともに、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記弁部材側を固定点として伸縮させ、該感圧用ベローズの伸縮に連動して前記プランジャを自由移動させるようにした
ことを特徴とする感圧制御弁。
【請求項2】
ベローズ収容室内に配置された感圧用ベローズと、
前記感圧用ベローズの一端と当接し、前記感圧用ベローズを介して開弁方向に変位されるとともに、弁リフト量に応じて入口ポートと出口ポートとの間に形成された弁ポートの開度を可変設定する弁部材と、
前記弁部材を閉弁方向に付勢する閉弁ばねと、
前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に結合されたプランジャと、
該プランジャを前記開弁方向に付勢するプランジャばねと、
電磁コイルへの通電により前記プランジャばねの付勢力に抗して前記プランジャを吸引する吸引子と、
を備え、
前記プランジャばねの付勢力が前記閉弁ばねの付勢力より強く設定されるとともに、前記プランジャは前記開弁方向への移動時に前記感圧用ベローズとの結合部で該感圧用ベローズのみに当接するよう構成され、
前記電磁コイルへの通電時に、前記プランジャを前記吸引子に吸引し、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記プランジャ側を固定点として伸縮させ、前記弁部材により前記弁ポートの開度を制御し、
前記電磁コイルへの非通電時に、前記プランジャばねの付勢力により前記プランジャを介して前記感圧用ベローズを押圧して前記弁ポートを全開状態とするとともに、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記弁部材側を固定点として伸縮させ、該感圧用ベローズの伸縮に連動して前記プランジャを自由移動させるようにした
ことを特徴とする感圧制御弁。
【請求項3】
ベローズ収容室内に配置された感圧用ベローズと、
前記感圧用ベローズの一端と当接し、前記感圧用ベローズを介して開弁方向に変位されるとともに、弁リフト量に応じて入口ポートと出口ポートとの間に形成された弁ポートの開度を可変設定する弁部材と、
前記弁部材を閉弁方向に付勢する閉弁ばねと、
前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に連結ガイドを介して結合されたプランジャと、
該プランジャを前記閉弁方向に付勢するプランジャばねと、
電磁コイルへの通電により前記プランジャばねの付勢力に抗して前記プランジャを吸引する吸引子と、
を備え、
前記吸引子による吸引力が前記閉弁ばねと前記プランジャばねとの合成付勢力より強く設定されるとともに、前記プランジャの前記連結ガイドは前記開弁方向への移動時に前記感圧用ベローズとの結合部で該感圧用ベローズのみに当接するよう構成され、
前記電磁コイルへの非通電時に、前記プランジャばねの付勢力により前記プランジャを前記吸引子から離れた位置に固定し、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記プランジャの連結ガイド側を固定点として伸縮させ、前記弁部材により前記弁ポートの開度を制御し、
前記電磁コイルへの通電時に、前記プランジャを前記吸引子側に吸引し、前記プランジャの連結ガイドを介して前記感圧用ベローズを押圧して前記弁ポートを全開状態とするとともに、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して、前記感圧用ベローズを前記弁部材側を固定点として伸縮させ、該感圧用ベローズの伸縮に連動して前記プランジャを自由移動させるようにした
ことを特徴とする感圧制御弁。
【請求項4】
前記プランジャと前記感圧用ベローズとが機械的に結合されていることを特徴とする請求項2に記載の感圧制御弁。
【請求項5】
前記プランジャと前記感圧用ベローズとが、該プランジャの端部の円柱状のボス部を該感圧用ベローズの円筒状の保持部内に挿通して結合されるとともに、該感圧用ベローズを該プランジャ側に付勢する中間ばねを備えていることを特徴とする請求項2に記載の感圧制御弁。
【請求項6】
前記連結ガイドと前記感圧用ベローズとが機械的に結合されていることを特徴とする請求項3に記載の感圧制御弁。
【請求項7】
前記連結ガイドと前記感圧用ベローズとが、該連結ガイドの端部の円柱状のボス部を該感圧用ベローズの円筒状の保持部内に挿通して結合されるとともに、該感圧用ベローズを該連結ガイド側に付勢する中間ばねを備えていることを特徴とする請求項3に記載の感圧制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−13224(P2012−13224A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30378(P2011−30378)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】