説明

感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、およびそれを用いたパターン形成方法

【課題】高解像性、高感度、良好なラインエッジラフネスであるとともに、露光量の変動の影響を受けにくい感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法の提供。
【解決手段】樹脂の側鎖に活性光線又は放射線の照射により酸アニオンを生じる構造を有する繰り返し単位(a)、保護されたフェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)、及び、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位(x)、を含有する樹脂(P)を含むことを特徴とする感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関し、更に詳しくは電子線、X線又はEUV光用ポジ型レジスト組成物、及びそれを用いたパターン形成方法及び感放射線性組成物に用いられる樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、さらにKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られる。
KrF用のレジスト組成物としては、ポリヒドロキシスチレンを主体とする樹脂を含有するものが開発されてきており、例えば、ヒドロキシスチレンとアダマンチル基を含むモノマーとのコポリマーが知られていた(特許文献1)。
一方、主にArF光源を用いたレジスト組成物は、芳香環を含有しない樹脂を含む組成物が開発されており、例えば、特定のラクトン構造を有する樹脂を含む組成物が知られていた(特許文献2)。
【0003】
さらには、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
電子線やEUV光を用いたリソグラフィーは、次世代もしくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられ、高感度であるポジ型レジストが望まれている。
軟X線用の感放射線性組成物として、例えば特定のラクトン構造とアセタール構造とを有する樹脂を含む組成物が知られていた(特許文献3)。
特にウェハー処理時間の短縮化のために高感度化は重要な課題である。化学増幅型のポジレジストは一般に、アルカリ可溶性基を酸分解性基で保護しアルカリ不溶化した樹脂及び光酸発生剤を含有する。露光によって光酸発生剤が分解して酸が発生し、その酸がレジスト膜中を拡散しながら酸分解性基を分解し、樹脂をアルカリ可溶化する。
一方、露光ラチチュード(EL)などのプロセス余裕度も性能上重要な要件である。ELは酸が拡散すると劣化することが知られている。
【0004】
高感度化のためには、発生酸個数あたりの脱保護量を増加させることが好ましいが、このとき酸の拡散を同時に伴うため、高感度化と高EL化の両立は難しい技術課題となる。
酸拡散を抑制しつつ高感度化を実現するためには酸発生効率を高めることが有効と考えられる。そのためには光酸発生剤の分解効率を高めたり、その濃度を高めたりすることができればよいが、光酸発生剤の濃度を高めると、光酸発生剤の凝集、経時安定性の劣化、析出などの弊害があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007−0121390号明細書
【特許文献2】特開2008−031298号公報
【特許文献3】特開2003−345023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、活性光線又は放射線、特に、電子線、X線あるいはEUV光を使用する半導体素子の微細加工における性能向上技術の課題を解決することであり、高解像性、高感度、良好なラインエッジラフネスであるとともに、露光量の変動の影響を受けにくい、すなわち高ELである感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では酸拡散を抑制しつつ高感度化を実現するために、樹脂に光酸発生剤を担持し、酸拡散を完全に抑制した。しかしながら、完全に酸拡散を抑制してしまうと、パターン形状が露光量の変動の影響を受けやすい。そこで、現像補助基を導入することで露光量の変動の影響を少なくすることで、高解像性、高感度、良好なラインエッジラフネスであるとともに、露光量の変動の影響を受けにくい感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を開発した。
具体的には、下記構成よりなる。
【0008】
1.
樹脂の側鎖に活性光線又は放射線の照射により酸アニオンを生じる構造を有する繰り返し単位(a)、
保護されたフェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)、及び、
アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位(x)、
を含有する樹脂(P)を含むことを特徴とする感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
2.
樹脂(P)が、前記繰り返し単位(a)として、下記一般式(III)〜(V)から選択される少なくとも1種類の繰り返し単位を含有することを特徴とする上記1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

一般式(III)〜(V)中、
Aは、活性光線又は放射線の照射により分解して酸アニオンを生じる構造部位を表す。
04、R05及びR07〜R09は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
06は、シアノ基、カルボキシル基、−CO−OR25又は−CO−N(R26)(R27)を表す。R26とR27が結合して窒素原子とともに環を形成してもよい。
1 〜X3 は、各々独立に、単結合、アリーレン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO2 −、−CO−、−N(R33)−又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基を表す。
25は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
26、R27及びR33は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0009】
3.
前記一般式(III)〜(V)中のAが、スルホニウム塩構造又はヨードニウム塩構造を含む構造部位であることを特徴とする上記2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
4.
前記繰り返し単位(b)が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】

一般式(I)中、
01、R02及びR03は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R03はArと結合して5員若しくは6員環を形成していても良い。
Ar1は、n+1価の芳香環基を表す。
n個のYは、各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【0010】
5.
前記一般式(I)中のYの酸の作用により脱離する基が、下記一般式(II)で表されることを特徴とする上記4に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】

一般式(II)中、
1及びL2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。
Q、M、L1の少なくとも2つが結合して環を形成しても良い。
【0011】
6.
繰り返し単位(x)が有するアルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基がラクトン構造、環状アミド構造、環状酸無水物構造の少なくともいずれかの部分構造を有する基であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
7.
アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基が、ラクトン構造を有する基であることを特徴とする上記6に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
8.
電子線、X線又はEUV光用であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
9.
上記1〜8のいずれかに記載の組成物を用いてレジスト膜を形成し、露光、現像する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
10.
露光が、電子線、X線又はEUV光を用いて行われることを特徴とする上記9に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、超微細領域での、特に、電子線、X線またはEUV光リソグラフィーにおける、高解像性、高感度、良好なラインエッジラフネスであるとともに、露光量の変動の影響を受けにくい感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表され遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
本発明における感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、好ましくはポジ型化学増幅レジスト組成物である。
【0014】
尚、本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、電子線、X線又はEUV光に露光されることが適している。
【0015】
<樹脂(P)>
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、
側鎖に活性光線又は放射線の照射により樹脂の側鎖に酸アニオンを生じる構造を有する繰り返し単位(a)、
保護されたフェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)、及び、
アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位(x)、
を含有する樹脂(P)を含有する。
【0016】
・ 繰り返し単位(a)
繰り返し単位(a)としては、側鎖に活性光線または放射線の照射により分解して酸アニオンを発生する繰り返し単位であれば、いずれでも用いることができる。
【0017】
前記繰り返し単位(a)としては、例えば、下記一般式(III)〜(V)のいずれかで表される繰り返し単位が好ましい。
【0018】
【化4】

【0019】
一般式(III)〜(V)中、
Aは、活性光線又は放射線の照射により分解して酸アニオンを生じる構造部位を表す。
04、R05及びR07〜R09は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
06は、シアノ基、カルボキシル基、−CO−OR25又は−CO−N(R26)(R27)を表す。R26とR27が結合して窒素原子とともに環を形成してもよい。
1 〜X3 は、各々独立に、単結合、アリーレン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO2 −、−CO−、−N(R33)−又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基を表す。
25は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
26、R27及びR33は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0020】
前記R04 〜R05 、R07 〜R09、R25〜R27、R33において、アルキル基は、直鎖型でも分岐型でもよく、好ましくは置換基を有していても良いメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよく、更に置換基を有していても良い。好ましくはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜8個の単環型のシクロアルキル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子がより好ましい。
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R04 〜R05 、R07 〜R09におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0021】
アルケニル基としては、好ましくは置換基を有していても良いビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基の様な炭素数2〜6個のものが挙げられる。
アリール基としては、置換基を有していても良い炭素数6〜14個の単環、多環の芳香族基が好ましく、具体的にはフェニル基、トリル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。またアリール基同士が結合して、複環を形成していてもよい。
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、クミル基等の置換基を有していても良い炭素数7〜15個のものが挙げられる。
26とR27が結合して窒素原子とともに形成しうる環としては、5〜8員環を形成するものが好ましいが、具体的にはピロリジン、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
【0022】
1 〜X3 のアリーレン基は、置換基を有していても良い炭素数6〜14個のものが好ましく、具体的にはフェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
アルキレン基としては、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。
シクロアルキレン基としては、好ましくは置換基を有していても良いシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等の炭素数5〜8個のものが挙げられる。
【0023】
これら各基が更に有していてもよい置換基の好ましい例としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、R04 〜R09、R25〜R27、R33で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、カルボキシ基が挙げられ、更に有していてもよい置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0024】
Aは、活性光線又は放射線の照射により分解して酸アニオンを生じる構造部位を表し、具体的には光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている公知の光により酸アニオンを発生する化合物が有する構造部位が挙げられる。
活性光線又は放射線の照射により酸アニオンを発生する構造部位としては、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム構造部位を挙げることができる。
【0025】
Aとしては、スルホニウム塩あるいはヨードニウム塩を含むイオン性構造部位がより好ましい。より具体的には、Aとして、下記一般式(ZI)又は(ZII)で表される基が好ましい。
【0026】
【化5】

【0027】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
-は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する酸アニオンを示し、非求核性アニオンが好ましい。非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等を挙げることができる。
非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。これにより樹脂の経時安定性が向上し、レジストの経時安定性も向上する。
【0028】
201、R202及びR203の有機基としては、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基などが挙げられる。
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、三つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの他に、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基も可能である。これらアリール基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0047,0048、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、米国特許出願公開第2003/0224288号明細書に式(I−1)〜(I−70)として例示されている化合物、米国特許出願公開第2003/0077540号明細書に式(IA−1)〜(IA−54)、式(IB−1)〜(IB−24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
【0030】
前記一般式(ZII)中、R204〜R205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。これらアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基として説明したアリール基と同様である。
204〜R205のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
【0031】
-は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する酸アニオンを示し、非求核性アニオンが好ましく、一般式(ZI)に於けるZ-と同様のものを挙げることができる。
【0032】
また、活性光線又は放射線の照射により酸アニオンを発生する構造部位としては、例えば、下記光酸発生剤が有しているスルホン酸前駆体となる構造部位も挙げることができる。
M.TUNOOKA etal,Polymer Preprints Japan,35(8)、G.Berner etal,J.Rad.Curing,13(4)、W.J.Mijs etal,Coating Technol.,55(697),45(1983),Akzo、H.Adachietal,Polymer Preprints,Japan,37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同199,672号、同044,115号、同0101,122号、米国特許第618,564号、同4,371,605号、同4,431,774号、特開昭64−18143 号、特開平2−245756号、特願平3−140109号等に記載のイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号等に記載のジスルホン化合物、V.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad etal,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton etal,J.Chem.Soc.,(C),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物。
【0033】
繰り返し単位(b)は、活性光線又は放射線の照射により樹脂の側鎖に酸アニオンを生じる構造であることがより好ましい。このような構造を選択すると、発生した酸アニオンの拡散が抑制され、解像度向上、ラインエッジラフネス良化などの観点で有効である。
【0034】
Aで表される部分構造の好ましい具体例を以下に挙げるが、特にこれらに限定されない。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
本発明に有効に用いられる一般式(III)〜(V)のいずれかで表される繰り返し単位としては、より好ましくは、各々下記一般式(III−1)〜(III−6)、一般式(IV−1)〜(IV−4)、一般式(V−1)〜(V−2) のいずれかで表されるものを挙げることができる。
【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
上記一般式中、Ar1aは、前記のX1 〜X3で示したアリーレン基と同様の、置換基を有していても良いアリーレン基を表す。
Ar2 a 〜Ar4 aは、前記の一般式(ZI)及び(ZII)におけるR201〜R203、R204〜R205で示したアリール基と同様の、置換基を有していても良いアリール基を表す。
01は、水素原子、メチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、又はシアノ基を表す。
02、R021は、X1 〜X3で示したものと同様の、単結合、アリーレン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO2 −、CO−、−N(R33)−又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基を表す。
【0042】
03、R019は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。アルキル基、シクロアルキル基としては、後記一般式(I)におけるR01〜R03としてのアルキル基、シクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。アリール基、アラルキル基としては、後記一般式(II)におけるL1〜L2としてのアリール基、アラルキル基と同様のものを挙げることができる。
【0043】
一般式(III)〜一般式(V)のいずれかで表される繰り返し単位で表される繰り返し構造単位としては、好ましくは下記一般式で表されるものを挙げることができる。
【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
上記一般式中、Ar1は、上記のX1 〜X3で示したアリーレン基と同様の、置換基を有していても良いアリーレン基を表す。Ar6 、Ar7 は、上記のR25〜R27で示したアリール基と同様の、置換基を有していても良いアリール基を表す。R01は水素原子、メチル基、クロロメチル基又はシアノ基を表す。
【0047】
02は、X1 〜X3で示したものと同様の、アリーレン基、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
03、R05〜R010 、R013 、R015 〜R019 、R022 は上記で示したものと同様の、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。
04は上記で示したものと同様の、置換基を有していても良いアリーレン基、アルキレン基、更には置換基を有していても良い炭素数2〜6個のアルケニレン基を表す。このアルケニル基としては、置換基を有していてもよい、エチレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等の炭素数2〜6個のアルケニレン基が好ましい。
【0048】
011 、R014 は水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、上記で好ましい更なる置換基として示したアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基を表す。
012 はニトロ基、シアノ基、又はトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の過フルオロアルキル基を表す。
- はアリールスルホン酸、ヘテロアリールスルホン酸、アルキルスルホン酸、シクロアルキルスルホン酸、又は過フルオロアルキルスルホン酸のアニオンを表す。
【0049】
以下に一般式(III)〜一般式(V) のいずれかで表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
また、一般式(III)〜一般式(V)のいずれかで表される繰り返し単位の具体例として、特開平10-221852号公報中の例示(a1)〜(a196)のうち、樹脂側鎖に酸アニオンを発生する構造のものも挙げられる。
【0055】
本発明の樹脂中における繰り返し単位(a)の含有量は、全繰り返し単位に対して、0.5〜80モル%の範囲で含有することが好ましく、1〜60モル%の範囲で含有することがより好ましく、3〜40モル%の範囲で含有することが特に好ましい。
繰り返し単位(a)に相当するモノマーの合成方法としては、特に限定されないが、例えば、前記繰り返し単位に対応する重合性不飽和結合を有する酸アニオンと既知のオニウム塩のハライドを交換して合成する方法が挙げられる。
より具体的には、前記繰り返し単位に対応する重合性不飽和結合を有する酸の金属イオン塩(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)あるいはアンモニウム塩(アンモニウム、トリエチルアンモニウム塩等)と、ハロゲンイオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)を有するオニウム塩を、水あるいはメタノールの存在下で攪拌し、アニオン交換反応を行い、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロキシフラン等の有機溶媒と水で分液・洗浄操作をすることにより、目的とする繰り返し単位(a)に相当するモノマーを合成することができる。
また、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロキシフラン等の水との分離が可能な有機溶媒と水の存在下で攪拌してアニオン交換反応を行った後に、水で分液・洗浄操作をすることによって合成することもできる。
【0056】
・繰り返し単位(b)
保護されたフェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)は、少なくとも1個のフェノール性水酸基を有し、かつ、その水酸基の水素原子の一部又は全部が酸の作用により脱離する基で保護されている繰り返し単位である。
酸の作用により分解し、アルカリ水溶液に対する溶解性が増大する構造としては、例えば、−COOA0、−O−B0基で表される基が挙げられる。更にこれらを含む基としては、−R0−COOA0、又は−Ar−O−B0で示される基が挙げられる。ここでA0は、−C(R01)(R02)(R03)、−Si(R01)(R02)(R03)もしくは−C(R04)(R05)−O−R06基を示す。B0は、A0又は−CO−O−A0基を示す。R01、R02、R03、R04及びR05は、同一または異なり、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基もしくはアリール基を示し、R06はアルキル基もしくはアリール基を示す。但し、R01〜R03の内少なくとも2つは水素原子以外の基であり、又、R01〜R03及びR04〜R06の内の2つの基が結合して環を形成してもよい。R0は置換基を有していてもよい2価の脂肪族もしくは芳香族炭化水素基を示し、−Ar−は単環もしくは多環の置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示す。
【0057】
前記繰り返し単位(b)としては、例えば、下記一般式(I)で表される繰り返し構造単位が好ましい。
【0058】
【化17】

【0059】
ここで、R01、R02及びR03は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。またR03は、アルキレン基を表し、Arと結合して5員若しくは6員環を形成していても良い。
Ar1は、芳香環基を表す。
n個のYは、各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【0060】
一般式におけるR01 〜R03のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していても良いメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R01 〜R03におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
シクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよいシクロアルキル基が挙げられる。好ましくは置換基を有していても良いシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜8個の単環型のシクロアルキル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子がより好ましい。
03がアルキレン基を表す場合、アルキレン基としては、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。
【0061】
Ar1 の芳香環基は、置換基を有していても良い炭素数6〜14個のものが好ましく、具体的にはベンゼン環、トルエン環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0062】
n個のYは、各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、n個中の少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
酸の作用により脱離する基Yとしては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−CH(R36)(Ar)等を挙げることができる。
【0063】
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
Arは、アリール基を表す。
36〜R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。尚、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36〜R39、R01、R02及びArのアリール基は、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等を挙げることができる。
【0064】
36とR37とが、互いに結合して形成する環は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロへキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、ノルボルナン構造、ジシクロペンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等を挙げることができる。尚、シクロアルカン構造中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36〜R39、R01、R02、R03、Ar及びAr1としての上記各基は、更に置換基を有していてもよく、更に有していても良い置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、更に有していても良い置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0065】
酸の作用により脱離する基Yとしては、下記一般式(II)で表される構造がより好ましい。
【0066】
【化18】

【0067】
ここで、L1及びL2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。
Q、M、L1の少なくとも2つが結合して環を形成しても良い。
【0068】
1及びL2としてアルキル基は、例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基を好ましく挙げることができる。
1及びL2としてシクロアルキル基は、例えば炭素数3〜15個のシクロアルキル基であって、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基を好ましく挙げることができる。
1及びL2としてアリール基は、例えば炭素数6〜15個のアリール基であって、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基等を好ましく挙げることができる。
1及びL2としてアラルキル基は、例えば、炭素数6〜20であって、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0069】
Mとしての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基など)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基など)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)、−S−、−O−、−CO−、−SO2−、−N(R0)−、およびこれらの複数を組み合わせた2価の連結基である。R0は、水素原子またはアルキル基(例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基など)である。
Qとしてのアルキル基、シクロアルキル基は、上述のL1及びL2としての各基と同様である。
Qとしてのヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基及びヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基に於ける脂環基及び芳香環基としては、上述のL1及びL2としてのシクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜15である。
ヘテロ原子を含む脂環基及びヘテロ原子を含む芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール、ピロリドン等のヘテロ環構造を有する基が挙げられるが、一般にヘテロ環と呼ばれる構造(炭素とヘテロ原子で形成される環、あるいはヘテロ原子にて形成される環)であれば、これらに限定されない。
【0070】
Q、M、L1の少なくとも2つが結合して形成してもよい環としては、Q、M、L1の少なくとも2つが結合して、例えば、プロピレン基、ブチレン基を形成して、酸素原子を含有する環を形成する場合が挙げられ、5員または6員環が好ましい。
一般式(II)におけるL1、L2、M、Qで表される各基についても、置換基を有していてもよく、例えば、前述のR36〜R39、R01、R02、R03、Ar及びAr1が有してもよい置換基として挙げたものが挙げられ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0071】
−M−Qで表される基として、炭素数1〜30個で構成される基が好ましく、炭素数5〜20個で構成される基がより好ましい。
【0072】
一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
【化19】

【0074】
【化20】

【0075】
【化21】

【0076】
【化22】

【0077】
【化23】

【0078】
本発明の樹脂中における繰り返し単位(b)の含有量は、全繰り返し単位に対して、3〜90モル%の範囲で含有することが好ましく、5〜80モル%の範囲で含有することがより好ましく、7〜70モル%の範囲で含有することが特に好ましい。
樹脂中の繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)との比率(Aのモル数/ Bのモル数)は、0.04〜1.0が好ましく、0.05〜0.9がより好ましく、0.06〜0.8が特に好ましい。
【0079】
・アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位(x)
本発明の樹脂(P)は、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基(現像補助基ともいう)を有する繰り返し単位(x)を有する。これにより、アルカリ現像時に現像補助基が分解し、アルカリ現像液中への溶解速度が増大する。
現像補助基は、例えば、アルカリ現像液で分解し親水的な官能基を生じる基である。親水的な官能基としては、例えばカルボキシル基、水酸基などのアルカリ可溶性基が挙げられる。
現像補助基は、例えば、ラクトン構造を有する基、ハロゲン原子などの極性基で置換されたカルボン酸エステル基、酸無水物構造を有する基、環状アミド構造を有する基、酸アミド基、カルボン酸チオエステル、炭酸エステル、硫酸エステル、スルホン酸エステルなどが挙げられ、好ましくはラクトン構造、環状アミド構造、環状酸無水物構造の少なくともいずれかの部分構造を有する基、より好ましくはラクトン基である。
なお、ハロゲン原子などの極性基で置換されていないカルボン酸エステル基(例えば、(メタ)アクリレート繰り返し単位の主鎖に直結のエステル基で、ハロゲン原子などの極性基で置換されていないもの)は、アルカリ現像液による分解反応の速度が遅いため、本願における「アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する基」には含めない。
【0080】
ラクトン構造を有する基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)、(LC1−17)であり、特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0081】
【化24】

【0082】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb2)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0083】
一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0084】
【化25】

【0085】
一般式(AII)中、
Rb0は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基であり、水素原子、メチル基が特に好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環または多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。好ましくは、単結合、−Ab1−CO2−で表される2価の連結基である。
Ab1は、直鎖、分岐アルキレン基、単環または多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−17)の内のいずれかで示される構造を有する基を表す。
【0086】
ラクトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0087】
繰り返し単位(x)の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0088】
【化26】

【0089】
【化27】

【0090】
【化28】

【0091】
特に好ましいラクトン基を有する繰り返し単位としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。最適なラクトン基を選択することにより、パターンプロファイル、疎密依存性が良好となる。式中、Rx及びRはH、CH3、CH2OH、またはCF3を表す。
【0092】
【化29】

【0093】
【化30】

【0094】
アルカリ現像液の作用により分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位(x)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルによる繰り返し単位のように、樹脂の主鎖にアルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中への溶解速度が増大する基が結合している繰り返し単位、あるいはアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましい。
アルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位(x)の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜40mol%が好ましく、より好ましくは3〜30mol%、更に好ましくは5〜15mol%である。
【0095】
(3)繰り返し単位(C)
本発明における樹脂には、更に、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位(C)を有することが好ましい。
【0096】
【化31】

【0097】
ここで、R01、R02及びR03は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。またR03は、アルキレン基を表し、Arと結合して5員若しくは6員環を形成していても良い。
Ar1は、芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【0098】
一般式(VI)に於ける、R01、R02、R03、及びAr1の具体例としては、一般式(I)に於ける、R01、R02、R03、及びAr1と同様のものである。
【0099】
一般式(VI)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
【化32】

【0101】
本発明の樹脂中における繰り返し単位(C)の含有量は、全繰り返し単位に対して、3〜90モル%の範囲で含有することが好ましく、5〜80モル%の範囲で含有することがより好ましく、7〜70モル%の範囲で含有することが特に好ましい。
【0102】
(4)本発明の樹脂(P)の形態、重合方法、分子量など
樹脂(P)の形態としては、ランダム型、ブロック型、クシ型、スター型のいずれの形態でもよい。
上述の繰り返し単位(a)、(b)および(x)を含有する本発明に係わる樹脂(P)は、例えば、各構造に対応する不飽和モノマーのラジカル、カチオン、又はアニオン重合により合成することができる。また各構造の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより目的とする樹脂を得ることも可能である。
【0103】
本発明に係る樹脂は、繰り返し単位(a)を0.5〜80モル%、繰り返し単位(b)を3〜90モル%、繰り返し単位(C)を3〜90モル%有することが好ましい。
【0104】
本発明に係わる樹脂(P)の分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量が1000〜100000の範囲であることが好ましく、1500〜70000の範囲であることがより好ましく、2000〜50000の範囲であることが特に好ましい。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(キャリア:THFあるいはN−メチル−2−ピロリドン(NMP))によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
また分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.00〜5.00、より好ましくは1.03〜3.50であり、更に好ましくは、1.05〜2.50である。
【0105】
また本発明に係わる樹脂の性能を向上させる目的で、耐ドライエッチング性を著しく損なわない範囲で、更に他の重合性モノマー由来の繰り返し単位を有していても良い。
その他の重合性モノマー由来の繰り返し単位の樹脂中の含有量としては、全繰り返し単位に対して、一般的に50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。使用することができるその他の重合性モノマーとしては、以下に示すものが含まれる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、クロトン酸エステル類などから選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物である。その他にも、無水マレイン酸、マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル等をあげることができる。また一般に前記本発明にかかわる繰り返し単位と共重合可能である付加重合性不飽和化合物であれば、特に制限されず用いることができる。
【0106】
本発明の樹脂(P)は、1種類単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
樹脂(P)の含量は、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分を基準にして、30〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%が特に好ましい。
【0107】
樹脂(P)の重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0108】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外濾過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0109】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)または水を含む溶媒が好ましい。
【0110】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、さらに好ましくは300〜1000質量部である。
【0111】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0112】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0113】
尚、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
【0114】
<その他の成分>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて更に、塩基性化合物、酸の作用により分解してアルカリ水溶性に対する溶解速度が増大する樹脂、従来型の光酸発生剤、有機溶剤、界面活性剤、酸分解性溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、及び現像液に対する溶解促進性化合物、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物等を含有させることができる。
【0115】
<塩基性化合物>
本願発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物は、含窒素有機塩基性化合物であることが好ましい。
使用可能な化合物は特に限定されないが、例えば以下の(1)〜(4)に分類される化合物が好ましく用いられる。
【0116】
(1)下記一般式(BS−1)で表される化合物
【0117】
【化33】

【0118】
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基(直鎖又は分岐)、シクロアルキル基(単環又は多環)、アリール基、アラルキル基の何れかを表す。但し、三つのRの全てが水素原子とはならない。
Rとしてのアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜12である。
Rとしてのシクロアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常3〜20、好ましくは5〜15である。
Rとしてのアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6〜20、好ましくは6〜10である。具体的にはフェニル基やナフチル基などが挙げられる。
Rとしてのアラルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常7〜20、好ましくは7〜11である。具体的にはベンジル基等が挙げられる。
Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
一般式(BS−1)で表される化合物は、3つのRの1つのみが水素原子、あるいは全てのRが水素原子でないことが好ましい。
【0119】
一般式(BS−1)の化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリンなどが挙げられる。
また、一般式(BS−1)において、少なくとも1つのRが、ヒドロキシル基で置換されたアルキル基である化合物が、好ましい態様の1つとして挙げられる。具体的化合物としては、トリエタノールアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
【0120】
また、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては−CH2CH2O−が好ましい。具体的例としては、トリス(メトキシエトキシエチル)アミンや、US6040112号明細書のカラム3、60行目以降に例示の化合物などが挙げられる。
【0121】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
複素環構造としては、芳香族性を有していてもいなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよく、さらに、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物(N−ヒドロキシエチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど)、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、アンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン、ヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンなどが挙げられる。
【0122】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、例えば、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有する化合物である。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CH2CH2O−が好ましい。
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミンや、米国特許出願公開第2007/0224539号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。
【0123】
(4)アンモニウム塩
アンモニウム塩も適宜用いられる。好ましくはヒドロキシドまたはカルボキシレートである。より具体的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドに代表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0124】
その他、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物なども使用可能である。
【0125】
塩基性化合物は、単独であるいは2種以上併用して用いられる。
塩基性化合物の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0126】
酸発生剤/塩基性化合物のモル比は、1.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。このモル比としてより好ましくは2.0〜200、更に好ましくは2.5〜150である。
尚、上記モル比における酸発生剤とは、樹脂(P)に含まれる繰返し単位(a)と、後述する樹脂(P)以外の酸発生剤の合計の量である。
【0127】
<酸分解性樹脂>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、樹脂(P)以外に、酸の作用により分解してアルカリ水溶性に対する溶解速度が増大する樹脂を含有していてもよい。
【0128】
酸の作用により分解してアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」ともいう)は、樹脂の主鎖又は側鎖、或いは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(酸分解性基)を有する樹脂である。この内、酸分解性基を側鎖に有する樹脂がより好ましい。
【0129】
酸分解性樹脂は、欧州特許254853号、特開平2−25850号、同3−223860号、同4−251259号等に開示されているように、アルカリ可溶性樹脂に酸で分解し得る基の前駆体を反応させる、もしくは、酸で分解し得る基の結合したアルカリ可溶性樹脂モノマーを種々のモノマーと共重合して得ることができる。
酸分解性基としては、例えば、−COOH基、−OH基などのアルカリ可溶性基を有する樹脂において、左記のアルカリ可溶性基の水素原子を酸の作用により脱離する基で置換した基が好ましい。
酸分解性基として具体的には、前述した本発明の樹脂で説明した酸分解性基(例えば、樹脂(P)における繰り返し単位(b)として説明した酸分解性基)と同様の基を好ましい例として挙げることができる。
【0130】
前記アルカリ可溶性基を有する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ(o−ヒドロキシスチレン)、ポリ(m−ヒドロキシスチレン)、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)及びこれらの共重合体、水素化ポリ(ヒドロキシスチレン)、下記構造で表される置換基を有するポリ(ヒドロキシスチレン)類、およびフェノール性水酸基を有する樹脂、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、水素化ノボラック樹脂等のヒドロキシスチレン構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂、(メタ)アクリル酸、ノルボルネンカルボン酸などのカルボキシル基を有する繰り返し単位を含有するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
【0131】
【化34】

【0132】
これらアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)で測定(23℃)して170Å/秒以上が好ましい。特に好ましくは330Å/秒以上である。
【0133】
前記アルカリ可溶性樹脂モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アルキルカルボニルオキシスチレン(例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えば、1−アルコキシエトキシスチレン、t−ブトキシスチレン)、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル(例えば、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートなど)等を挙げることができる。
【0134】
酸で分解し得る基の含有率は、樹脂中の酸で分解し得る基を有する繰り返し単位の数(b)と酸で脱離する基で保護されていないアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の数(S)をもって、B/(B+S)で表される。含有率は、好ましくは0.01〜0.7、より好ましくは0.05〜0.50、更に好ましくは0.05〜0.40である。
【0135】
酸分解性樹脂としては、特に限定されないが、芳香族基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、ヒドロキシスチレンを繰り返し単位として有する酸分解性樹脂(例えば、ポリ(ヒドロキシスチレン/酸分解基で保護されたヒドロキシスチレン)、ポリ(ヒドロキシスチレン/酸分解基で保護された(メタ)アクリル酸)など)がより好ましい。
【0136】
酸分解性樹脂としては、特に下記一般式(VI)で表される繰り返し単位及び一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂が好ましい。
【0137】
【化35】

【0138】
一般式(VI)・一般式(I)は、樹脂(P)におけるものと同様のものである。
【0139】
また、酸分解性樹脂は、他の重合性モノマー由来の繰り返し単位を有していてもよい。
その他の重合性モノマー由来の繰り返し単位の樹脂中の含有量としては、全繰り返し単位に対して一般的に50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。使用することができるその他の共重合モノマー由来の繰り返し単位としては、前記樹脂(P)におけるその他の重合性モノマー由来の繰り返し単位と同様の繰り返し単位を挙げることができる。
【0140】
水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基などアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有率は、酸分解性樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは1〜99モル%、より好ましくは3〜95モル%、特に好ましくは5〜90モル%である。
【0141】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有率は、酸分解性樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは3〜95モル%、より好ましくは5〜90モル%、特に好ましくは10〜85モル%である。
【0142】
酸分解性樹脂の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、50,000以下が好ましく、より好ましくは1,000〜20000、特に好ましくは、1,000〜10,000である。
酸分解性樹脂の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0が好ましく、より好ましくは1.05〜2.0であり、更に好ましくは1.1〜1.7である。
【0143】
また、酸分解性樹脂は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0144】
酸分解性樹脂の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0145】
【化36】

【0146】
【化37】

【0147】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物において、樹脂(P)を除く酸分解性樹脂の組成物中の配合量は、組成物の全固形分中0〜70質量%が好ましく、より好ましくは0〜50質量%、更により好ましくは0〜30質量%である。
【0148】
<酸発生剤>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物では、光酸発生構造を有する樹脂(P)を含有しているが、該樹脂(P)以外に、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する低分子の化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有してもよい。
そのような酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0149】
酸発生剤としてはたとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
具体的には、例えば、米国特許出願公開第2008/0241737号明細書の、[0164]〜[0248]に説明されているものを挙げることができる。これら酸発生剤の中でも、スルホニウム塩またはヨードニウム塩が好ましい。スルホニウム塩またはヨードニウム塩が有する酸アニオンとしては、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンなどが好ましい。これらアニオンにおけるアルキル基やアリール基は、置換されていてもよい。
【0150】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物において、光酸発生構造を有する樹脂(P)以外に、酸発生剤を用いる場合には、酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
樹脂(P)以外の酸発生剤を用いる場合には、酸発生剤の含量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、0〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0151】
<溶剤>
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が含有するを調製する際に使用できる溶剤としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)など)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;1−メトキシ−2−プロパノール)など)、乳酸アルキルエステル(乳酸エチル、乳酸メチルなど)、環状ラクトン(γ−ブチロラクトンなど、好ましくは炭素数4〜10)、鎖状又は環状のケトン(2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなど、好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、カルボン酸アルキル(酢酸ブチルなどの酢酸アルキルが好ましい)、アルコキシ酢酸アルキル(エトキシプロピオン酸エチル)などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
【0152】
上記のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートおよびアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
【0153】
これら溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。
水酸基を有する溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、水酸基を有しない溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートが好ましい。
レジスト組成物中の全固形分濃度は、好ましくは2.0〜4.0質量%、更に好ましくは2.0〜3.0質量%である。
【0154】
<界面活性剤>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
これらに該当する界面活性剤としては、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF176、メガファックR08、OMNOVA社製のPF656、PF6320、トロイケミカル(株)製のトロイゾルS−366、住友スリーエム(株)製のフロラードFC430、信越化学工業(株)製のポリシロキサンポリマーKP−341などが挙げられる。
また、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類などが挙げられる。
【0155】
その他、公知の界面活性剤が適宜使用可能である。使用可能な界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0273]以降に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0156】
界面活性剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対し、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0157】
<酸分解性溶解阻止化合物>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液中への溶解速度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(以下、「溶解阻止化合物」ともいう)を含有することができる。
溶解阻止化合物としては、Proceeding of SPIE, 2724, 355 (1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体の様な、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。酸分解性基、脂環式構造としては、前記酸分解性樹脂のところで説明したものと同様のものが挙げられる。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を、電子線またはEUV光で照射する場合には、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含有するものが好ましい。フェノール化合物としてはフェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、さらに好ましくは2〜6個含有するものである。
【0158】
本発明における溶解阻止化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000、更に好ましくは500〜2500である
<溶解促進化合物>
【0159】
本発明で使用できる現像液に対する溶解促進性化合物は、フェノール性OH基を2個以上、又はカルボキシ基を1個以上有する分子量1,000以下の低分子化合物である。カルボキシ基を有する場合は脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。
【0160】
これら溶解促進性化合物の好ましい添加量は、酸分解性樹脂に対して0〜50質量%であり、さらに好ましくは0〜30質量%である。現像残渣抑制、現像時パターン変形防止の点で50質量%以下が好ましい。
【0161】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号、欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
【0162】
また、特開2006−208781号公報や、特開2007−286574号公報等に記載の、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物も、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に対して好適に用いることができる。
【0163】
<パターン形成方法>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、基板など支持体上に塗布され、レジスト膜を形成する。このレジスト膜の膜厚は、0.02〜0.1μmが好ましい。
【0164】
基板上に塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
【0165】
例えば、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、レジスト膜を形成する。なお、予め公知の反射防止膜を塗設することもできる。
【0166】
当該レジスト膜に、通常はマスクを通して、活性光線又は放射線、好ましくは電子線(EB)、X線又はEUV光を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。
【0167】
現像工程におけるアルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1〜3級アミン、アルコールアミン、環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用してもよい。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
【実施例】
【0168】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0169】
合成例1(モノマー(M-1)の合成)
酢酸エチル80質量部に、p−ヒドロキシスチレン10質量部、p−トルエンスルホン酸・ピリジン塩0.01質量部を室温で溶解させた。この液を攪拌させながら、シクロヘキシルビニルエーテル10.7質量部と酢酸エチル20質量部の混合液を室温で滴下した。滴下後、更に室温で24時間反応させた。
反応液にトリエチルアミンを加えて塩基性にし、イオン交換水で洗浄した後、有機層を濃縮し、ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィー精製することにより、12.3質量部の下記モノマー(M-1)を得た。
【0170】
合成例2(モノマー(M-2)の合成)
合成例1において、シクロヘキシルビニルエーテルの代わりに2−シクロヘキシルエチルビニルエーテルを13.1質量部用いた以外は、合成例1と同様にして反応させ、14.7質量部の下記モノマー(M-2)を得た。
【0171】
合成例3(モノマー(M-3)の合成)
合成例1において、シクロヘキシルビニルエーテルの代わりに2−(4−シクロヘキシルフェノキシ)エチルビニルエーテルを20.9質量部用いた以外は、合成例1と同様にして反応させ、19.3質量の下記モノマー(M-3)を部得た。
【0172】
合成例4(モノマー(M-4)の合成)
合成例1において、シクロヘキシルビニルエーテルの代わりにジヒドロピランを7.2質量部用いた以外は、合成例1と同様にして反応させ、10.4質量部の下記モノマー(M-4)を得た。
【0173】
合成例5(モノマー(M-5)の合成)
合成例1において、シクロヘキシルビニルエーテルの代わりに6−endo−ヒドロキシ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−endo−カルボン酸−Y−ラクトン−5−exo−ビニルエーテルを15.3質量部用いた以外は、合成例1と同様にして反応させ、15.3質量部の下記モノマー(M-5)を得た。
【0174】
合成例6(モノマー(M-6)の合成)
4−ヒドロキシスチレン10質量部をテトラヒドロフラン100質量部に溶解し、ジ−tert−ブチルジカルボネート21.8質量部及びジメチルアミノピリジン0.1質量部を加え、室温で24時間反応させた。反応液に酢酸エチルを加え、水洗・濃縮し、ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィー精製することにより、12.8質量部の下記モノマー(M-6)を得た。
【0175】
合成例7(モノマー(M-7)の合成)
トリフェニルスルホニウムBr塩50質量部をメタノール50質量部に溶解させた。この液に、4−スチレンスルホン酸Na塩30質量部とメタノール50質量部とイオン交換水130質量部の混合液を室温で攪拌下、滴下した。
イオン交換水とクロロホルムを加えて抽出・洗浄を行った。有機層を濃縮後、析出した固体をヘキサン/酢酸エチル中でリスラリー、ろ過することで、48質量部の下記モノマー(M-7)を得た。
【0176】
合成例8(モノマー(M-8)の合成)
4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸トリフェニルスルホニウム塩19.6質量部をN−メチルピロリドン80質量部に溶解し、4−クロロメチルスチレン8.2質量部と炭酸カリウム18.7質量部、及びテトラメチルアンモニウムブロミド0.006質量部を加え、80度で反応を3時間行った。酢酸エチルで析出させた後、クロロホルムに溶解させ、水洗、濃縮を行ったところ、20質量部の下記モノマー(M−8)を得た。
【0177】
合成例9(モノマー(M-9)の合成)
メタクリル酸10質量部をテトラヒドロフラン100質量部に溶解し、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール39.0質量部とジシクロヘキシルカルボジイミド28.7質量部、及びジメチルアミノピリジン0.1質量部を加え、室温で24時間反応させた。反応液に酢酸エチルを加え水洗・濃縮し、ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィー精製することにより、16.4質量部の下記モノマー(M-9)を得た。
【0178】
合成例10(モノマー(M-10)の合成)
5−exo−ヒドロキシ−6−endo−ヒドロキシ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−endo−カルボン酸−Y−ラクトン14.8質量部をテトラヒドロフラン100質量部に溶解し、メタクリル酸クロライド12質量部及びトリエチルアミン11.6質量部を滴下し、室温で3時間反応させた。反応液に酢酸エチルを加え、水洗・濃縮し、ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィー精製することにより、12.8質量部の下記モノマー(M-10)を得た。
【0179】
合成例11(モノマー(M-11)の合成)
合成例10において、5−exo−ヒドロキシ−6−endo−ヒドロキシ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−endo−カルボン酸−Y−ラクトンの代わりにヘキサヒドロ−3−ヒドロキシイソベンゾフラン−1(3H)−オンを15.0質量部用いた以外は、合成例10と同様にして反応させ、12.9質量部の下記モノマー(M-11)を得た。
【0180】
合成例12(モノマー(M-12)の合成)
6−endo−カルボン酸−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−endo−カルボン酸−Y−酸無水物−5−exo−クロロメチルエステル28.6質量部をテトラヒドロフラン100質量部に溶解し、メタクリル酸10質量部及びトリエチルアミン11.7質量部を加え、40度で6時間反応させた。反応液に酢酸エチルを加え、水洗・濃縮し、ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィー精製することにより、20.6質量部の下記モノマー(M-12)を得た。
【0181】
合成例13(モノマー(M-13)の合成)
合成例12において、6−endo−カルボン酸−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−endo−カルボン酸−Y−酸無水物−5−クロロメチルエステルの代わりに6−endo−アミノ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−endo−カルボン酸−Y−アミド−2−oxo−シアノ−5−exo−クロロメチルエステルを29.5質量部用いた以外は、合成例12と同様にして反応させ、21.2質量部の下記モノマー(M-13)を得た。
【0182】
合成例14(モノマー(M-14)の合成)
合成例12において、6−endo−カルボン酸−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−endo−カルボン酸−Y−酸無水物−5−クロロメチルエステルの代わりに6−endo−ヒドロキシ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−endo−カルボン酸−Y−ラクトン−2−oxo−シアノ−5−exo−クロロメチルエステルを29.7質量部用いた以外は、合成例12と同様にして反応させ、21.2質量部の下記モノマー(M-14)を得た。
同様にして、モノマー(M-15)、(M-16)も得た。
【0183】
【化38】

【0184】
【化39】

【0185】
合成例15(樹脂(P−1)の合成)
1−メトキシー2−プロパノール4.66質量部を窒素気流下、80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、4−ヒドロキシスチレン(以下、「HOST」ともいう)2.98質量部、上記合成例6にて得られたモノマー(M−6)1.74質量部、上記合成例7にて得られたモノマー(M−7)0.35質量部、上記合成例9にて得られたモノマー(M−9)0.15質量部、1−メトキシー2−プロパノール18.6質量部、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕1.36質量部の混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で更に4時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のヘキサン/酢酸エチルで再沈殿・真空乾燥を行うことで、3.98質量部の本発明の樹脂(P−1)を得た。
得られた樹脂のGPC(キャリア:N−メチル−2−ピロリドン(NMP))から求めた重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は、Mw=15100、Mw/Mn(以下、「MWD」ともいう)=1.72であった。
【0186】
【化40】

【0187】
合成例16〜21(樹脂(P−2)〜(P−7)の合成)
以下、合成例15と同様にして、本発明に使用される樹脂(P−2)〜(P−7)を合成した。
使用した構造単位、その仕込み(モル比)、及び重量平均分子量、数平均分子量、分散度(MWD)を下表1に示す。
【0188】
【表1】

【0189】
また、比較樹脂P−8〜P−10を合成した。P−8は米国特許出願公開第2006/0121390号明細書に記載の方法に準じて合成した。P−9は特許3613491号に記載の方法に準じて合成した。P−10は特許4145075号に記載の方法に準じて合成した。
【0190】
【化41】

【0191】
〔実施例1〜7及び比較例1〜3〕
<レジスト組成物の調製>
表1に示した混合溶剤に溶解させ、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して2.5%全固形分濃度(質量%)のポジ型レジスト溶液を調製し、下記のとおり評価を行った。
尚、全ての処方について、表の成分とは別に、界面活性剤メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)を、全固形分に対して0.05質量%となるように加えた。また、実施例4,5については、更に、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを、全固形分に対して1.5質量%となるように加えた。
【0192】
<レジスト評価(EB)>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で90秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜を、電子線照射装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50keV)を用いて電子線照射を行った。照射後直ぐに110℃で90秒間ホットプレート上で加熱した。更に濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインアンドスペースパターンを形成し、得られたパターンを下記方法で評価した。結果を下記表に示す。
【0193】
〔感度〕
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて観察した。100nmライン(ライン:スペース=1:1)を解像する時の最小照射エネルギーを感度とした。
【0194】
〔解像力〕
上記の感度を示す照射量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像力とした。
【0195】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量における100nmラインパターンの長さ方向50μmにおける任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いてエッジがあるべき基準線からの距離を測定し、標準偏差を求め、3σ(nm)を算出した。
【0196】
〔露光ラチチュード(EL)〕
ELは、ラインアンドスペース1対1の露光において、線幅が100nmを基準とし、その線幅が10%変化するのに要する露光量変化率(%)で表した。
【0197】
【表2】

【0198】
表中、各略号は前記樹脂または下記のものを表す。
【0199】
【化42】

【0200】
表2の結果より、本発明の組成物は、感度とELのバランスが良く(このことは表中の「EL/感度」の項を見れば明らかである)、高感度、高解像力、良好なラインエッジラフネスを同時に満足することが分かった。
EUVおよびX線リソグラフィにおいても同様の効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の側鎖に活性光線又は放射線の照射により酸アニオンを生じる構造を有する繰り返し単位(a)、
保護されたフェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)、及び、
アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位(x)、
を含有する樹脂(P)を含むことを特徴とする感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂(P)が、前記繰り返し単位(a)として、下記一般式(III)〜(V)から選択される少なくとも1種類の繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

一般式(III)〜(V)中、
Aは、活性光線又は放射線の照射により分解して酸アニオンを生じる構造部位を表す。
04、R05及びR07〜R09は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
06は、シアノ基、カルボキシル基、−CO−OR25又は−CO−N(R26)(R27)を表す。R26とR27が結合して窒素原子とともに環を形成してもよい。
06とX2とが互いに連結して環を形成してもよい。
1 〜X3 は、各々独立に、単結合、アリーレン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO2 −、−CO−、−N(R33)−又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基を表す。
25は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
26、R27及びR33は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【請求項3】
前記一般式(III)〜(V)中のAが、スルホニウム塩構造又はヨードニウム塩構造を含む構造部位であることを特徴とする請求項2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記繰り返し単位(b)が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】

一般式(I)中、
01、R02及びR03は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。またR03は、アルキレン基を表し、Arと結合して5員若しくは6員環を形成していても良い。
Ar1は、n+1価の芳香環基を表す。
n個のYは、各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【請求項5】
前記一般式(I)中のYの酸の作用により脱離する基が、下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項4に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】

一般式(II)中、
1及びL2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。
Q、M、L1の少なくとも2つが結合して環を形成しても良い。
【請求項6】
繰り返し単位(x)が有するアルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基がラクトン構造、環状アミド構造、環状酸無水物構造の少なくともいずれかの部分構造を有する基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基が、ラクトン構造を有する基であることを特徴とする請求項6に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
電子線、X線又はEUV光用であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物を用いてレジスト膜を形成し、露光、現像する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
露光が、電子線、X線又はEUV光を用いて行われることを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−237334(P2010−237334A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83707(P2009−83707)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】