説明

懸架装置

【課題】 一対となるフロントフォークを有して二輪車の前輪を懸架する懸架装置における軽量化を可能にして、二輪車の前輪に対するステアリング操作性を向上させる。
【解決手段】 下端部で前輪を懸架する左右で一対となるフロントフォークが車体側チューブ1と車輪側チューブ2とからなるフォーク本体内にダンパを有してなる懸架装置において、各フォーク本体が最伸長状態にあるときに内部に大気圧以上の気圧を封入することで具有される反力によって伸長方向に附勢される一方で、いずれか一方のフォーク本体がコイルバネを収装してこのコイルバネSのバネ力をこの一方のフォーク本体における反力の一部としてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、懸架装置に関し、特に、二輪車の前輪側に架装されて下端部で懸架する前輪に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器たるフロントフォークを有する懸架装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車の前輪側に架装されて下端部で懸架する前輪に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器たるフロントフォークを有する懸架装置としては、これまでに種々の提案があるが、凡そフロントフォークを有する懸架装置は、可能な限りに全体重量の軽減が可能とされて、前輪に対するステアリング操作性を向上させることが望まれている。
【0003】
そのため、たとえば、特許文献1には、二輪車における前輪側の懸架装置を構成する左右で一対となるフロントフォークにあって、左右で内部構造が異なるとする提案、すなわち、左右のうちのいずれか一方のフロントフォークが車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体内に懸架バネとダンパとを収装してなるのに対して、他方のフロントフォークがフォーク本体内に懸架バネを収装せずしてダンパのみを収装してなる提案が開示されている。
【0004】
それゆえ、この特許文献1に開示の提案によれば、一方のフロントフォークがダンパの他に懸架バネも収装するのに対して、他方のフロントフォークがダンパを収装するが懸架バネを収装しない分、一対のフロントフォークを有する懸架装置における全体重量の軽減を可能にし、この懸架装置を架装する二輪車の前輪に対するステアリング操作性を向上し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008‐265534公報(要約,明細書中の段落0008,同0014,同0024,図3,図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、左右で一対となるフロントフォークを有する懸架装置における全体重量を軽減し得て、この懸架装置を架装する二輪車の前輪に対するステアリング操作性を向上し得る点で基本的に問題がある訳ではないが、それでもなお些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0007】
すなわち、上記した特許文献1に開示の提案にあって、左右で一対となるフロントフォークにおける一方のフロントフォークは、懸架バネを有しない分、懸架装置における全体重量の軽減に寄与するが、他方のフロントフォークが懸架バネを有するから、それ以上となる懸架装置における全体重量の軽減を期待できない。
【0008】
そこで、出願人は、先に、懸架バネを有せずしてなお懸架バネを有するのと同様のバネ反力が得られるフロントフォーク、すなわち、フォーク本体内に積極的に封入したガス圧によってフォーク本体を伸長方向に附勢するフロントフォークの提案をした。
【0009】
それゆえ、このフロントフォークを一対にして懸架装置を構成すれば、懸架装置における全体重量の大幅な軽減が可能になり、この懸架装置を架装する二輪車の前輪に対するステアリング操作性を著しく向上し得る。
【0010】
ただ、このフロントフォークを一対にして構成される懸架装置にあっては、仮に、いずれか一方のフロントフォークにあっても、いわゆるエア漏れが起きると、所定の反力が保障されなくなる危惧がある。
【0011】
そこで、この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、一対となるフロントフォークを有して二輪車の前輪を懸架するのはもちろんのこと、その軽量化を可能にして、二輪車の前輪に対するステアリング操作性を確実に向上させ、その汎用性の向上を期待するのに最適となる懸架装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、この発明による懸架装置の構成を、基本的には、下端部で前輪を懸架する左右で一対となるフロントフォークが車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体内にダンパを有してなる懸架装置において、各フォーク本体が最伸長状態にあるときに内部に大気圧以上の気圧を封入することで具有される反力によって伸長方向に附勢される一方で、いずれか一方のフォーク本体がコイルバネを収装してこのコイルバネのバネ力をこの一方のフォーク本体における反力の一部としてなるとする。
【発明の効果】
【0013】
それゆえ、この発明による懸架装置にあっては、左右で一対となるフロントフォークが車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体内に、すなわち、フォーク本体内たるリザーバ内に液面を境にして画成される気室に封入した気圧に基づく反力で各フォーク本体を伸長方向に附勢するから、各フォーク本体がいわゆる懸架バネを有しない分、全体重量の軽量を可能にする。
【0014】
そして、この発明による懸架装置にあっては、左右で一対となるフロントフォークを構成するいずれか一方のフォーク本体がコイルバネを収装してなるから、たとえば、シールが故障して気圧が漏れたとき、一方のフォーク本体内に収装のコイルバネが所定のバネ力を発揮してフォーク本体における最小限度の伸長状態を保障し得て、いわゆるフェールセーフを実現可能にする。
【0015】
ちなみに、左右で一対となるフロントフォークを構成するいずれか一方のフォーク本体がコイルバネの配在下に有するダンパを収縮位置に依存して圧側減衰力を発生する位置依存型にするとき、この位置依存型のダンパにおいて、位置依存の減衰力を発生するときのロッド反力をコイルバネの反力に置き換えることが可能になり、その限りにおいて、コイルバネの構成を軽減できる。
【0016】
そして、この位置依存型のダンパを有するフォーク本体にあっては、ダンパを位置依存型にしない場合に比較して、たとえば、コイルバネの重量を小さくでき、この一方のフォーク本体における全体重量を小さくすることが可能になる。
【0017】
その結果、他方のフォーク本体における重量を比較すれば重量が小さくなる一方のフォーク本体に釣り合う重量に設定でき、したがって、たとえば、特許文献1に開示の提案に比較して、懸架装置における全体重量を小さくすることが可能になる。
【0018】
このとき、他方のフォーク本体のボトム端部にブレーキキャリパを設け得ると共に、このブレーキキャリパにおける重量をいたずらに大きくせずして、必要にして充分な機械的強度を有するように設定でき、懸架装置の全体重量をいたずらに大きくせずして、二輪車の前輪に対するステアリング操作性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態による懸架装置を構成する一方のフロントフォークを一部破断して示す全体正面図である。
【図2】この発明の一実施形態による懸架装置を構成する他方のフロントフォークを図1と同様に示す図である。
【図3】図1のフロントフォークにおける上端側部を拡大して示す部分半截縦断面図である。
【図4】図1のフロントフォークにおける中間部を図3と同様に示す図である。
【図5】図1のフロントフォークにおける下端側部を図3と同様に示す図である。
【図6】図2のフロントフォークにおける上端側部を図3と同様に示す図である。
【図7】図2のフロントフォークにおける中間部を図4と同様に示す図である。
【図8】図2のフロントフォークにおける下端側部を図5と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による懸架装置は、図示するところでは、左右で一対とされながら二輪車の前輪側に架装されて下端部で懸架する前輪に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器たるフロントフォークを有してなる。
【0021】
そして、この懸架装置にあって、左右となる各フロントフォークは、全体図たる図1および図2に示すように、車体側チューブ1の下端側内に車輪側チューブ2の上端側が軸受1a,1bの配在下に出没可能に挿通して伸縮可能とされる倒立型に設定されている。
【0022】
ちなみに、この発明が意図するところからすると、図示するように、各フォーク本体が大径のアウターチューブを車体側チューブ1にし小径のインナーチューブを車輪側チューブ2にする倒立型に設定されるのに代えて、図示しないが、車輪側チューブ2を大径のアウターチューブにし車体側チューブ1を小径のインナーチューブにする正立型に設定されても良いことはもちろんである。
【0023】
そして、各フォーク本体にあっては、車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間であって上記の軸受1a,1b間に潤滑隙間(符示せず)を画成し、この潤滑隙間にこのフォーク本体内に収容される作動流体たる作動油が車輪側チューブ2に開穿の孔2aを介して流入することで、両者たる車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間における潤滑性を保障する。
【0024】
また、各フォーク本体にあっては、下方の軸受1bの図中で下方部となる車体側チューブ1の開口端部の内側に車輪側チューブ2の外周に摺接するオイルシール1cおよびダストシール1dを有して、所定の封止状態を現出する。
【0025】
なお、この懸架装置が二輪車の前輪側に架装される際には、図示しないが、あらかじめ左右で一対となるフロントフォークの上端側が上下の二段となるブリッジで連結されると共に、一対のフロントフォーク間の中央で上下のブリッジに連結されるステムが二輪車の先端部を構成するヘッドパイプを挿通するようにして二輪車の前輪側に架装される。
【0026】
ところで、この懸架装置にあって、各フォーク本体は、基本的には、いわゆる懸架バネを収装せずして、内部に封入される大気圧以上の気圧で車体側チューブ1内から車輪側チューブ2が抜け出るようになる伸長方向に附勢されるとし、前記した特許文献1に開示の提案に比較して、その全体重量の軽減を可能にする。
【0027】
そして、この懸架装置にあって、左右で一対となるフロントフォークを構成するいずれか一方のフォーク本体、すなわち、図示するところでは、図1に示す一方のフォーク本体は、コイルバネSを収装してなる。
【0028】
ちなみに、図1に示す一方のフォーク本体にあって、コイルバネSは、下端が後述するダンパを構成するシリンダ体3におけるヘッド端部(符示せず)に担持され、上端が車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11の下端にバネ受12の配在下に係止される。
【0029】
なお、コイルバネSの上端側の内側には、コイルバネSの軸線方向に沿って延びるスプリングガイド13が配設され、このスプリングガイド13は、ダンパを構成する後述のロッド体4における上端側の外周に定着されて、コイルバネSにおける座屈を防止する。
【0030】
それゆえ、この発明による懸架装置にあって、一対となるフロントフォークを構成する左右のフォーク本体が、内部に封入の気圧に基づく反力で伸長方向に附勢されるから、各フォーク本体がいわゆる懸架バネを有しない分、懸架装置における全体重量の軽量を可能にする。
【0031】
そして、この発明による懸架装置にあっては、左右で一対となるフロントフォークを構成する一方のフォーク本体がコイルバネを収装してなるから、たとえば、一方あるいは他方のフォーク本体において、シールが故障して封入する気圧が漏れたとき、一方のフォーク本体内に収装のコイルバネが所定のバネ力を発揮してフォーク本体における最小限度の伸長状態を保障し得て、いわゆるフェールセーフを実現可能にする。
【0032】
一方、各フォーク本体は、内部に片ロッド型のダンパを収装してなるが、一方のフォーク本体にあっては、ダンパが下方部材たるシリンダ体3を車輪側チューブ2に結合し、上方部材たるロッド体4を車体側チューブ1に結合する正立型に設定され、図2に示す他方のフォーク本体にあっては、ダンパがシリンダ体3を上方部材にして車体側チューブ1に結合し、ロッド体4を下方部材にして車輪側チューブ2に結合する倒立型に設定されている。
【0033】
このとき、各フォーク本体における内部たるダンパの外は、リザーバRとされ、このリザーバRは、前記したように作動流体たる作動油を収容し、作動流体の液面たる油面Oを境にする気室Aを有し、この気室Aは、フォーク本体の収縮作動時にエアバネ力を発揮する。
【0034】
ちなみに、油面Oは、一方のフォーク本体内にあっては、シリンダ体3の上端部たるヘッド端部の上方に出現し、ダンパが最伸長状態になるときにもシリンダ体3のヘッド端部を油浸状態に維持し得る油量がリザーバRに収容される。
【0035】
それに対して、他方のフォーク本体にあっては、好ましくは、フォーク本体が最伸長状態にあるときに、車輪側チューブ2に開穿されて車体側チューブ1との間に出現する潤滑隙間への作動油の流入を許容する連通孔2aを下方の油中に有するように油面Oが位置決められるのが良い。
【0036】
いずれにしても、各フォーク本体にあっては、フォーク本体内に大気圧以上の気圧を封入して、いわゆる懸架バネを有しなくても、フォーク本体を伸長方向に附勢するから、この懸架バネと同等にバネ反力を発生するのに充分となる大きさの気室Aを確保できる範囲内において作動油が収容されて油面Oが設定されるのが良い。
【0037】
そして、一方のフォーク本体にあっては、油面Oの下方のリザーバ部分とシリンダ体3の外たるリザーバ部分とを確実に連通すべく、後述する図4に示すように、シリンダ体3のヘッド端部を形成するロッドガイド31が切り欠き通路31aを有する。
【0038】
それに対して、他方のフォーク本体にあっては、油面Oの下方のリザーバ部分とロッド体4の外たるリザーバ部分とを確実に連通すべく、図7に示すように、バネ受8における本体部81が連通孔81aを有する。
【0039】
ちなみに、このバネ受8における本体部81に形成の連通孔81aは、フォーク本体の収縮作動時にリザーバRおいて上昇する油面Oがこの連通孔81aを通過することで、二次減衰を可能にする。
【0040】
それゆえ、この二次減衰を可能にする観点からすれば、連通孔81aの構成については種々の提案をなし得、たとえば、図示するように、上下方向に延びる長孔とされるのに代えて、図示しないが、正面視で上方に行くに従い収斂する楔形の孔とされても良く、また、独立する複数の連通孔からなるとしても良く、さらには、連通孔に代えて、本体部81の外周、すなわち、本体部81の外周に介装されたブッシュ82と車輪側チューブ2との間に二次減衰を可能にする隙間を有するとしても良い。
【0041】

ところで、一方のフォーク本体が収装するダンパと、他方のフォーク本体が収装するダンパは、正立型あるいは倒立型に設定されてなることから、細かい所で相違点がある。
【0042】
そこで、以下には、それぞれのダンパについて分けて説明するが、特に、図2に示すダンパについての説明の際には、その構成が図1のダンパと同様となるところについては、要する場合を除き、図中に同一の符号を付するのみとして、その詳しい説明を省略する。
【0043】
まず、図1に示す一方のフォーク本体に収装のダンパは、図4に示すように、シリンダ体3が内部に作動油を収容しながらロッド体4の図中で下端側となる先端側を出没可能に挿通させ、ロッド体4の図中で下端部となる先端部がシリンダ体3内に摺動可能に収装のピストン体5を連設させ、このピストン体5がシリンダ体3内にロッド側室R1とピストン側室R2を画成する。
【0044】
そして、このダンパにあって、ピストン体5は、伸側減衰手段たる伸側減衰バルブ51と圧側バルブ52とを有し、伸側減衰バルブ51は、ロッド側室R1のピストン側室R2への連通を許容しながら所定の減衰作用をし、圧側バルブ52は、ピストン側室R2のロッド側室R1への連通を許容する。
【0045】
このとき、伸側減衰バルブ51が作動するとき、圧側バルブ52がチェックバルブとして機能し、圧側バルブ52が作動するとき、伸側減衰バルブ52がチェックバルブとして機能する。
【0046】
そして、シリンダ体3の図1中で下端となるボトム端は、車輪側チューブ2の図1中で下端となるボトム端を閉塞するボトム部材21の内底に担持されると共に、このシリンダ体3のボトム端部の内側への圧側減衰部6を有するボトムキャップ22の螺入で車輪側チューブ2に結合する。
【0047】
また、このダンパにあって、ロッド体4は、図4中で上端側となる基端側がシリンダ体3の上端開口を閉塞するロッドガイド31の軸芯部を貫通してシリンダ体3の外に突出する。
【0048】
そして、ロッド体4の図1中で上端部となる基端部は、図3に示すように、前記した車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11の軸芯部に下端側から螺入されると共に、ロックナット41の配設で車体側チューブ1に結合する。
【0049】
ちなみに、図4に示すように、ロッド体4の先端側が貫通するロッドガイド31は、シリンダ体3のヘッド端部を形成しながら軸芯部にブッシュ32を有し、このブッシュ32でロッド体4の摺動性を保障している。
【0050】
一方、このダンパにあって、ロッドガイド31は、図4に示すように、シリンダ体3内のロッド側室R1とシリンダ体3におけるヘッド端部の上方のリザーバRとの連通を許容するポート31bを有し、このポート31bの図中で下端となる下流側端を開閉可能に閉塞する逆止手段たるチェックバルブ33を有してなる。
【0051】
それゆえ、このダンパにあって、シリンダ体3内をピストン体5が下降する収縮作動時にロッド側室R1が膨張するとき、前記したピストン体5が有する圧側バルブ52がピストン側室R2からの作動油をロッド側室R1に流入させると共に、リザーバRからの作動油がチェックバルブ33を介してこのロッド側室R1に流入するから、このロッド側室R1に作動油の吸入不足を発現させない。
【0052】
のみならず、この発明にあっては、ダンパの収縮作動時にロッド側室R1に流入する作動油は、ピストン側室R2からだけでなくリザーバRからも流入するから、ダンパの伸長作動時にこのロッド側室R1から伸側減衰バルブ51を介してピストン側室R2に流出する作動油量が増え、この伸側減衰バルブ51で発現される減衰作用が安定する。
【0053】
ところで、ロッドガイド31がリザーバRからの作動油のロッド側室R1への流入を許容するチェックバルブ33を有する場合には、ピストン体3がシリンダ体3内を下降する収縮作動時に、ピストン側室R2からの作動油がピストン体5の、たとえば、圧側バルブ52を介してロッド側室R1に流入することを保障する必要がないと言い得る。
【0054】
つまり、ピストン体5がロッド側室R1の作動油のピストン側室R2への流入を許容する、たとえば、伸側減衰バルブ51を有するとしても、その逆の流れとなるピストン側室R2からの作動油のロッド側室R1への流入を保障する必要がないと言い得る。
【0055】
そして、そうだとすると、図示しないが、ピストン体5は、チェックバルブを有するのみとされ、したがって、ピストン体5の構成を簡素化しながら、ピストン体5がシリンダ体3内を下降する収縮作動時にピストン側室R2の作動油が後述する連通孔3a,3b,3c,…3gを介するなどしてリザーバRに全て流出させることを可能にし、極めて効果的に圧側減衰作用を発現し得ることになる。
【0056】
つぎに、この発明にあって、ダンパにおけるシリンダ体3は、図1に示すように、このシリンダ体3に開穿されてピストン側室R2のリザーバRへの連通を許容する連通孔、すなわち、図示するところでは、複数の連通孔3a,3b,3c,…3gをこのシリンダ体3における軸線方向に沿って適宜の間隔で有する。
【0057】
そして、この複数の連通孔3a,3b,3c,…3gの中でシリンダ体3におけるヘッド端寄りに位置決められる先頭の連通孔3aがロッド体4に作用するロッド荷重が1G領域にあるときにシリンダ体3内を摺動するピストン体5で閉塞されない位置に開穿される。
【0058】
この先頭の連通孔3aが開穿される具体的な位置は、図示するところでは、シリンダ体3内におけるピストン体5の伸び切り位置からのストローク位置とされながらこのシリンダ体3内でピストン体5が摺動する全ストロークの半分以上のストローク位置とされる。
【0059】
すなわち、たとえば、ライダーのみが搭乗する二輪車が良路を走行するときには、ロッド体4に作用するロッド荷重が1G状態にあり、それゆえ、ピストン体5は、シリンダ体3内で先頭の連通孔3aを閉塞しない言わば通常の作動領域で摺動する。
【0060】
その結果、ダンパにあっては、シリンダ体3における連通孔3a,3b,3c,…3gが全開放され、したがって、ピストン側室R2がリザーバRに連通する際の流路抵抗が小さくなり、圧側の小さい減衰作用が発現される。
【0061】
それに対して、二輪車に同乗者があったりで積載荷重が増え、したがって、ロッド荷重が1G以上になるときには、シリンダ体3内で摺動するピストン体5がその摺動ストロークに応じて複数の連通孔3a,3b,3c,…3gを順次閉塞してピストン側室R2がリザーバRに連通する際の流路抵抗を大きくし、圧側の大きい減衰作用が発現される。
【0062】
特に、図5中に実線図で示すように、ピストン体5がシリンダ体3に開穿の最後尾の連通孔3gに至る前、すなわち、遮断する前は、後述する圧側減衰部6を度外視すると、この最後尾の連通孔3gがピストン側室R2をリザーバRに連通させる唯一の流路となり、したがって、極めて大きい流路抵抗による減衰作用が発現される。
【0063】
以上からすると、上記した連通孔3a,3b,3c,…3gについては、これがシリンダ体3内を摺動するピストン体5で閉塞されるときに高い減衰作用を発現し、これがピストン体5で閉塞されないとき低い減衰作用を発現するから、図示した複数とされることに代えて、図示しないが一つでも良く、この発明の成立を妨げない。
【0064】
ところで、前記したシリンダ体3のボトム端部の内側に配設される圧側減衰部6についてであるが、この圧側減衰部6は、図5に示すように、圧側減衰バルブ61を有すると共に、この圧側減衰バルブ61に並列するチェックバルブ62を有してなる。
【0065】
そして、この圧側減衰部6において、圧側減衰バルブ61は、図5中に仮想線図で示すように、ピストン体5が前記した最後尾の連通孔3gを言わば超えてこのピストン体5の下方となるピストン側室R2を閉鎖するときに、この閉鎖されるピストン側室R2の言わば高圧をリザーバRに解放する。
【0066】
また、この圧側減衰部6において、圧側減衰バルブ61に並列するチェックバルブ62は、上記の閉鎖されるピストン側室R2が負圧傾向になるとき、リザーバRからの作動油をピストン側室R2に流入させる。
【0067】
ちなみに、上記の閉鎖されたピストン側室R2が圧側減衰部6における圧側減衰バルブ61を介してリザーバRに解放されるときの流路抵抗と、ピストン側室R2が前記した最後尾の連通孔3gを介してリザーバRに解放されるときの流路抵抗とを比較すると、前者の方が、すなわち、圧側減衰部6における圧側減衰バルブ61の流路抵抗の方が大きくなる設定とされる。
【0068】
それゆえ、この圧側減衰部6が作動するのは、ダンパにおいて、最後尾の連通孔3gがいわゆる遮断された後の最収縮状態になるときであり、このとき、ダンパにおける底突きが阻止される。
【0069】
このことから、この発明にあっては、ダンパにおける底突きを阻止するために、別途にオイルロック機構やクッション構造を設けなくて済み、ダンパ構造のいたずらな複雑化を回避し得ると共に、ダンパにおける重量の軽減化に寄与する。
【0070】
ちなみに、この発明にあって、ダンパにおける最伸長時には、シリンダ体3内でピストン体5が最上昇するが、このときには、図3に示すように、伸び切りバネS1が収縮してピストン体5側からロッドガイド31側に向けての作用力を吸収する。
【0071】
また、図示するベースバルブ部6にあっては、上記の圧側減衰バルブ61を迂回するバイパス路(符示せず)を有すると共に、このバイパス路中にコントロールバルブ63を有し、このコントロールバルブ63によって圧側減衰バルブ61を通過する作動油量の多少を制御し得るとしている。
【0072】
この言わばメインの減衰手段を迂回するバイパス路を有すると共にこのバイパス路中に制御バルブを有することに関してだが、この発明にあっては、前記したピストン部にあっても、図3に示すように、ピストン体5が有する伸側減衰バルブ51を迂回するバイパス路(符示せず)を有し、このバイパス路中にコントロールバルブ7を有している。
【0073】
そして、このコントロールバルブ7は、ニードル部7aに介装される附勢バネ71の附勢力によって図中で上昇方向となる後退方向に附勢されながら図中で上端となる後端に下端が当接されるコントロールロッド72からの推力によって図中で下降するように前進する。
【0074】
そしてまた、図3に示すように、コントロールロッド72の上端は、前記したキャップ部材11、すなわち、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11の軸芯部に昇降可能に配設のアジャスタ73の下端に係止される。
【0075】
それゆえ、このコントロールバルブ7にあっては、アジャスタ73の回動操作によるコントロールロッド72の進退でニードル部7aの尖端がバイパス路におけるいわゆる開口を出没してそこを通過する作動油量を制御し、メインのバルブたる伸側減衰バルブ51を通過する油量を多少させて減衰作用を変化させる。
【0076】
以上からすると、このバイパス路を設けることおよびこのバイパス路中に制御バルブたるコントロールバルブ63,7を配在することに関しては、基本的には、この発明の成立に関与しないと言い得るので、その構成、すなわち、ベースバルブ部6におけるバイパス構造の構成およびピストン部におけるバイパス構造の構成が省略されても良いことはもちろんである。
【0077】
以上のように形成されたダンパをフォーク本体内に収装する図1に示すフロントフォークにあっては、フォーク本体の伸縮作動時に内部に収装するダンパが伸縮作動し、ダンパにおいて、所定の減衰作用を発現する。
【0078】
ちなみに、上記したフロントフォークにあっては、フォーク本体がコイルバネSを有し、また、リザーバRに気室Aを有するから、このコイルバネSおよび気室Aが能するところによるバネ効果があるのはもちろんであり、このバネ効果の際のいわゆるエネルギーロスによる減衰作用があるのももちろんである。
【0079】
先ず、ダンパにおいて、シリンダ体3内をピストン体5が下降する収縮作動時であって、ロッド体1に作用するロッド荷重が1G状態にあるときには、ピストン体5がシリンダ体3に開穿の先頭の連通孔3aを閉塞するまで摺動しない。
【0080】
したがって、このとき、シリンダ体3内のピストン側室R2で余剰となる侵入ロッド体積分に相当する量の作動油がシリンダ体3に開穿の複数の連通孔3a,3b,3c,…3gを介してリザーバRに流出し、その際の流路抵抗に基づく言わば小さい減衰作用が発現される。
【0081】
このとき、ピストン体5の上方となるロッド側室R1は、シリンダ体3内におけるピストン体5の下降で膨張し、ピストン側室R2から作動油がピストン体5に配設の圧側バルブ52を介して流入する。
【0082】
それと共に、この発明にあっては、シリンダ体3の上端部たるヘッド端部を形成するロッドガイド31がリザーバRからの作動油のロッド側室R1への流入を許容する逆止手段たるチェックバルブ33を有してなるから、リザーバRからの作動油がこのチェックバルブ33を介してロッド側室R1に流入する。
【0083】
その結果、この発明のダンパにあっては、シリンダ体3内をピストン体5が下降する収縮作動時に、ロッド側室R1において作動油の吸入不足が発現されず、ピストン体5が反転してシリンダ体3内を上昇する伸側作動時における伸側減衰バルブ51の作動を確実なものにする。
【0084】
このとき、ロッド側室R1には、ロッドガイド31に設けた逆止手段たるチェックバルブ33が対向しており、したがって、このロッド側室R1の作動油は、言わばロスなく伸側減衰バルブ51を通過する。
【0085】
のみならず、前記したが、ダンパの収縮作動時にロッド側室R1に流入する作動油は、ピストン側室R2からだけでなくリザーバRからも流入するから、ダンパの伸長作動時にこのロッド側室R1から伸側減衰バルブ51を介してピストン側室R2に流出する作動油量が増え、この伸側減衰バルブ51で具現化される減衰作用が安定する。
【0086】
ちなみに、このときのチェックバルブ33の機能を鑑みると、要は、ロッド側室R1の作動油が伸側減衰バルブ51を通過し得るようにすることであるから、このチェックバルブ33、すなわち、逆止手段に代えて、図示しないが、多少のロスはあるかも知れないが、オリフィスなどの絞り抵抗を有する絞り手段とされても良い。
【0087】
なお、ピストン体5の上昇で、シリンダ体3内のピストン側室R2において不足する量の作動油は、ベースバルブ部6における圧側減衰バルブ61に並列するチェックバルブ62を介してリザーバRから補充される。
【0088】
ちなみに、このピストン側室R2において不足する量の作動油をリザーバRから補充するについて、上記した複数の連通孔3a,3b,3c,…3gを介してリザーバRから補充されるとも思考し得るが、この複数の連通孔3a,3b,3c,…3gにおける流路抵抗は、上記したチェックバルブ62に比較して極めて大きくなるから、この複数の連通孔3a,3b,3c,…3gを介しての作動油の補充はない。
【0089】
つぎに、上記と同様の収縮作動時であって、ロッド体1に作用するロッド荷重が1Gを超えるときには、ピストン体5がシリンダ体3に開穿の複数の連通孔3a,3b,3c,…3gをその荷重状態に応じて順次閉塞する。
【0090】
すなわち、ピストン側室R2をリザーバRに連通させる複数の連通孔3a,3b,3c,…3gを順次少なくして、その際の流路抵抗を徐々に大きくして、減衰作用を徐々に大きくする。
【0091】
このとき、ピストン側室R2のリザーバRへの連通に関与しない連通孔、すなわち、ピストン体5の上方に位置することになる連通孔3a,…は、リザーバRをロッド側室R1に連通させる態勢にある。
【0092】
しかし、このピストン体5の上方に位置することになる連通孔3a,…における流路抵抗は、前記した圧側バルブ52やチェックバルブ33に比較してかなり大きくなるから、このピストン体5の上方の連通孔3a,…を介しての膨張するロッド側室R1へのリザーバRからの作動油の流入は、これを期待できない。
【0093】
それゆえ、この複数の連通孔3a,3b,3c,…3gを閉塞する状態下でのロッド側室R1には、前記したところと同様に、ピストン側室R2から作動油が圧側バルブ52を介して流入すると共に、リザーバRからの作動油が上記したチェックバルブ33を介して併せて流入されて、作動油の吸入不足を発現させない。
【0094】
そして、シリンダ体3内を下降するピストン体5によって複数の連通孔3a,3b,3c,…3gを順次閉塞する収縮作動時には、シリンダ体3内におけるピストン体5のストローク位置によって高い圧側の減衰作用が具現化されるから、このときのロッド反力が圧側の減衰作用分大きくなり、したがって、コイルバネSによるロッド反力を補助することになる。
【0095】
つまり、ダンパにあっては、シリンダ体3内におけるピストン体5のストローク位置によってそれに応じるロッド反力が得られるから、コイルバネSからすると、その分、たとえば、コイルバネSの線径小さくするなどしてコイルバネSによるロッド反力を小さくする、すなわち、コイルバネSの構成を軽減できる。
【0096】
そして、フォーク本体において、コイルバネSの構成を軽減できることから、このコイルバネSの構成を軽減し得ない場合、たとえば、特許文献1に開示の提案に比較して、フロントフォークにおける全体重量の軽減が可能になる。
【0097】
なお、上記の収縮状態から反転してピストン体5がシリンダ体3内を上昇する伸長作動時には、上記したところと同様に、ロッド側室R1には、ロッドガイド31に設けた逆止手段たるチェックバルブ33が対向しており、したがって、このロッド側室R1の作動油は、言わばロスなく伸側減衰バルブ51を通過することになり、伸側減衰バルブ51の作動が確実なものになる。
【0098】
上記した収縮作動がさらに大きくなって、図4中に実線図で示すように、ピストン体5がシリンダ体3に開穿された最後尾の連通孔3gの手前まで摺動する事態になる場合には、ピストン側室R2が最後尾の連通孔3gを介してのみリザーバRに連通する状態になり、この連通孔3gを作動油が通過するときの流路抵抗が今まで以上に大きくなり、大きい減衰作用が発現される。
【0099】
そして、上記した収縮作動がさらに大きくなって、図5中に仮想線図で示すように、ピストン体5がシリンダ体3に開穿された最後尾の連通孔3gを越えてピストン側室R2を言わば閉鎖状態にするときには、このピストン側室R2がベースバルブ部6における圧側減衰バルブ61を介してリザーバRに連通し、このときの流路抵抗を最大にし極めて大きい減衰作用を発現する。
【0100】
そして、シリンダ体3内のピストン体5が図5中に実線図で示す状態になるときおよび図4中に仮想線図で示す状態にあるときのいずれの場合にも、ロッド側室R1にあっては、前記したところと同様のルートで作動油が充満される。
【0101】
ちなみに、図5中に実線図および仮想線図のいずれに示す状態からでも、ピストン体5が反転してシリンダ体3内を上昇するときには、圧側減衰部6におけるチェックバルブ62を介してリザーバRからの作動油がピストン側室R2に流入する。
【0102】
それゆえ、上記したフロントフォークにあっては、言わば通常の作動領域ではシリンダ体3に開穿の複数の連通孔3a,3b,3c,…3gが全開放されて圧側の小さい減衰作用の発現を可能にし、ロッド荷重が1G以上になるときには、シリンダ体3内で摺動するピストン体5がその摺動ストロークに応じて複数の連通孔3a,3b,3c,…3gを順次閉塞してピストン側室R2がリザーバRに連通する際の流路抵抗を大きくして圧側の大きい減衰作用の発現を可能にする。
【0103】
その結果、たとえば、車両たる二輪車が良路走行をし、ロッド荷重がいわゆる1G領域にある場合の収縮作動時には、圧側の大きい減衰作用が発現されないから、二輪車における乗り心地を良好に保つ。
【0104】
そして、たとえば、二輪車が急制動し、したがって、シリンダ体3内にロッド体4が大きいストロークで没入するときには、圧側の大きい減衰作用が発現されて車体姿勢を適正に保ち、同じく二輪車における乗り心地を良好に保つ。
【0105】
前記したところでは、位置依存のダンパがフロントフォークに具現化される場合を例にして説明したが、この位置依存のダンパが機能するところを勘案すると、このこの位置依存のダンパが複筒型の油圧緩衝器たるショックアブソーバに具現化されても良く、その場合に作用効果が異なることはない。
【0106】
以上のように、この発明の懸架装置を構成する図1に示す一方のフロントフォークが、すなわち、図1に示すフォーク本体がコイルバネSを収装しながら正立型のダンパを有してなるのに対して、図2に示す他方のフロントフォークは、すなわち、図2に示すフォーク本体は、コイルバネSを収装せずしてダンパのみを収装してなる。
【0107】
このとき、この図2に示すフォーク本体にあっては、内部に大気圧以上の気圧が封入され、コイルバネS、つまり、言わば懸架バネを有しなくても、この内部に封入される大気圧以上の気圧で、車体側チューブ1内から車輪側チューブ2が抜け出るようになる伸長方向に附勢されるとし、また、この図2に示すフォーク本体内に収装されるダンパは、倒立型に設定されている。
【0108】
以下に、図6乃至図8に示すところに基づいて、この図2に示すフォーク本体およびダンパについて説明するが、まず、前記したように、この図2に示すフォーク本体は、リザーバR内の気室Aに、このフォーク本体が最伸長状態にあるときに、大気圧以上となる気圧を封入する。
【0109】
すなわち、この図2に示すフォーク本体にあっては、最伸長状態にあるフォーク本体内に大気圧以上となる気圧を封入して反力を具有させ、これによって、フォーク本体内を昇圧傾向にして、最伸長状態にあるフォーク本体が収縮作動を開始する当初から、安定した収縮作動を具現化し得るとする。
【0110】
すなわち、図2に示す他方のフロントフォークにあって、フォーク本体内に油面Oを境にして画成されるリザーバR内の気室Aに封入される気体の圧力は、フォーク本体が最伸長状態にあるときに、大気圧以上、たとえば、0.3Mpa以上になる。
【0111】
それゆえ、この図2に示すフロントフォークにあっては、フォーク本体内に、たとえば、0.3Mpa以上となる大気圧以上の気圧を封入して反力を具有させるから、フォーク本体内を高圧傾向に維持でき、最伸長状態にあるフォーク本体が収縮作動を開始するとき、すなわち、収縮作動の開始当初から安定した収縮作動を可能にする。
【0112】
そして、この図2に示すフロントフォークにあっては、フォーク本体内に収装のダンパにおける内圧を高圧傾向に維持することが可能になり、したがって、最伸長状態にあるダンパが収縮作動を開始するときに、その収縮作動の開始当初から安定した減衰作用の具現化を可能にする。
【0113】
そして、図2に示すフォーク本体内に、たとえば、0.3Mpa以上となる大気圧以上の気圧を封入して反力を具有させるから、フォーク本体が常時伸長方向に附勢され、いわゆる懸架バネを有せずしてフォーク本体を伸長方向に附勢し得ることになり、その限りにおいて、懸架バネを有しない分、重量の軽減と部品点数の削減を可能にする。
【0114】
そして、出願人が確認したところでは、シリンダ体3の内径がほぼ25mmで長さが300mmとなるフォーク本体が最伸長状態にあるときに、リザーバR内の気室Aに大気圧以上となるほぼ0.3Mpaの気体を封入したとき、このフォーク本体の最収縮状態時の内圧がほぼ1.5Mpaとなり、したがって、懸架バネを有せずしてフォーク本体を伸長方向に附勢し得る。
【0115】
ちなみに、文献などを示さないが、これまでにも懸架バネを有せずして封入した気圧で、すなわち、エアバネのみでフォーク本体を伸長方向に附勢するフロントフォークの提案がある。
【0116】
また、フロントフォークの組立の際には、フォーク本体内に封入される気圧が大気圧以上でないと、フロントフォークの組立が不可能に近いほど困難になることも周知されている。
【0117】
ことからすると、この発明にあっては、フォーク本体内に、たとえば、0.3Mpa以上となる大気圧以上の気圧を封入するだけでなく、さらに、後述するように、フォーク本体内に大気圧以上の気圧を封入して反力を具有させながら、このフォーク本体が最伸長状態から収縮する所定のストローク領域内における反力を抑制する抑制手段を有する特異性を有している。
【0118】
すなわち、この図2に示すフロントフォークにあっては、最伸長状態にあるフォーク本体が封入される気圧に起因する反力を具有するから、最伸長状態から収縮作動を開始するときには、この封入された気圧に起因する反力を有しない場合に比較して、たとえば、二輪車におけるライダーにフロントフォークが硬いと言う印象を与える危惧があるが、この最伸長状態に封入された気圧に起因する反力を抑制手段で抑制することで、二輪車におけるライダーにフロントフォークが硬いと言う印象を与えることを回避できる。
【0119】
そして、上記の所定のストローク領域は、最伸長状態から開始される収縮ストロークの領域で、好ましくは、最伸長状態から最収縮状態になるまでの全ストロークの1/3のストローク領域であるが、これは絶対的なものでなく、多少の差があっても、この発明における抑制手段の意図するところが異なるものではない。
【0120】
そして、この抑制手段は、図2および図7に示すように、コイルスプリングからなるバランスバネS2を有し、このバランスバネS2は、フォーク本体を構成する車輪側チューブ2とダンパを構成するシリンダ体3との間に配設されて、フォーク本体を伸長方向に附勢する。
【0121】
このフォーク本体を伸長方向に附勢する意味からすると、このバランスバネS2は、ダンパ内に収装の伸び切りバネS1(図4および図7参照)と同様のバネ、すなわち、次なる伸び切りバネとも称される余地がある。
【0122】
しかし、このバランスバネS2は、最伸長状態にあるフォーク本体の言わば初期反力を相殺する観点からすると、ダンパにおける最伸長作動時における衝撃たる作用力を吸収する伸び切りバネS1とは、異なった働きをするものである。
【0123】
ところで、上記したバランスバネS2は、図7に示すように、図中で下端となる基端がシリンダ体3の外周に保持されたバネ受8に担持され、図中で上端となる先端が車輪側チューブ2の上端部に連結された筒状に形成のスペーサ23に係止された状態で、フォーク本体を伸長方向に附勢する。
【0124】
このように、このバランスバネS2は、フォーク本体が伸長作動して最伸長状態になる手前からから始まる上記のストローク領域にあって収縮して、伸長するフォーク本体における動きを抑制する傾向になり、特に、最伸長状態にあるフォーク本体における反力を言わば零にして、二輪車におけるライダーに最伸長状態から収縮作動を開始するフロントフォークが硬いと言う印象を与えることを回避する。
【0125】
そして、図示するように、この抑制手段たるバランスバネS2がダンパの外に配設される場合には、このバランスバネS2におけるバネ力の設定の変更が容易になり、また、いわゆるメンテナンス性も向上される。
【0126】
もっとも、この抑制手段が機能するところからすれば、バランスバネS2が、上記したようにダンパの外に配設されるのに代えて、図示しないが、ダンパ内に配設されても良く、この場合には、ダンパのカートリッジ化の妨げにならない上に、バランスバネS2をダンパの外に配設する場合に比較して、関連部品の削減が可能になる。
【0127】
前記したところでは、この他方のフロントフォークがダンパを収装してなるとしたが、この他方のフロントフォークがいわゆる懸架バネを有しない限りには、この他方のフロントフォークがダンパを収装しなくてもその具現化が可能になることはもちろんであり、その場合の作用効果も異なるところはない。
【0128】
一方、この図2に示すフォーク本体が以上のように形成されるとき、このフォーク本体内に収装のダンパは、倒立型に設定されて、基本的に、シリンダ体3が車体側チューブ1に結合されてこの車体側チューブ1の軸芯部に垂設され、ロッド体4が車輪側チューブ2に結合されてこの車輪側チューブ2の軸芯部に起立する。
【0129】
そして、この図2に示すダンパにあっては、具体的に、すなわち、図示するところでは、シリンダ体3が図中で上端部となるボトム端部34を一体的に有してなり、このボトム端部34が車体側チューブ1における軸芯部に垂設されながら、後述する圧側減衰部6とフリーピストン9とを収装してなる。
【0130】
つまり、ダンパは、図7にも示すが、ロッド体4の図中での上端部たる先端部に保持されながらシリンダ体3内に摺動可能に収装されるピストン体5を有し、このピストン体5は、シリンダ体3内にロッド側室R1とピストン側室R2とを画成すると共にこのロッド側室R1およびピストン側室R2間における相互連通を許容する伸側減衰手段たる伸側減衰バルブ51と圧側バルブ52とを有し、伸側減衰バルブ51を作動油が通過するときに所定の減衰作用を具現化させる。
【0131】
なお、上記の伸側減衰手段については、任意の構成が採用されて良く、たとえば、上記の圧側バルブ52については、これが吸い込みバルブとされても良く、また、チェックバルブとされても良い。
【0132】
そして、凡そこの種の多くのダンパがそうであるように、このダンパにあっても、フォーク本体の最伸長作動時、すなわち、ダンパにおける最伸長作動時における作用力吸収用の伸び切りバネS1を有している。
【0133】
なお、図示するフロントフォークにあっては、最収縮作動時の作用力を吸収するオイルロック機構を有し、このオイルロック機構は、ダンパにおけるシリンダ体3のヘッド端部の外周に保持されたオイルロックピース35と、車輪側チューブ2のボトム端部内に配設されたオイルロックケース24とを有し、ロッド体4がシリンダ体3内に大きいストロークで没入する最収縮作動時にオイルロックピース35がオイルロックケース24内に嵌入されるようになって、最収縮作動時の作用力を吸収する。
【0134】
一方、このダンパにあっては、シリンダ体3内にロッド体4が没入する収縮作動時に、ピストン側室R2において余剰となる侵入ロッド体積分に相当する量の作動油が圧側減衰部6を介してフリーピストン9側に流出する。
【0135】
そして、このダンパにあっては、上記と逆に、シリンダ体3内からロッド体4が突出する伸長作動時に、ピストン側室R2において不足する退出ロッド体積分に相当する量の作動油がフリーピストン9側から圧側減衰部6を介して補充される。
【0136】
ところで、前記したが、このダンパにあって、シリンダ体3は、図6にも示すように、ボトム端部34を有すると共に、このボトム端部34内に圧側減衰部6と、この圧側減衰部6の下流側に位置決められるフリーピストン9とを有している。
【0137】
ここで、シリンダ体3におけるボトム端部34について少し説明すると、このボトム端部34は、図6に示すように、シリンダ体3に比較すると大径の筒状に形成されて、下端連結部34aがシリンダ体3における開口端部3iの外周にロックナット36の利用下に螺着されている。
【0138】
そして、このボトム端部34は、上端連結部34bを車体側チューブ1の上端部の内周に螺着させて、このボトム端部34が車体側チューブ1の軸芯部に配在されている。
【0139】
また、このボトム端部34は、圧側減衰部6を収装すると共にフリーピストン9を摺動可能に収装する本体部34cと、この本体部34cにテーパ部34dを介して連続する拡径部34eとを有し、この拡径部34eにボトム端部34内外の連通を可能にする連通孔34fを有してなる。
【0140】
ちなみに、図示するところにあって、ボトム端部34がシリンダ体3より大径に形成されるのは、いわゆる受圧面積を大きくするためであり、したがって、充分な受圧面積を確保できる場合には、シリンダ体3と同径に、すなわち、シリンダ体3と一体とされて同径に形成されても良い。
【0141】
シリンダ体3におけるボトム端部34が以上のように形成されているとき、上記の圧側減衰部6は、ボトム端部34内を上記したシリンダ体3内側、すなわち、前記したピストン側室R2側と、リザーバR側、すなわち、フリーピストン9の受圧面側となる受圧面側油室R3とに画成しながら、この受圧面側油室R3とピストン側室R2側との間における相互連通を許容する。
【0142】
そして、この圧側減衰部6は、たとえば、圧側減衰バルブ61とこれに並列するチェックバルブ62とを有してなり、特に、ピストン側室R2側を受圧面側油室R3側に連通させるときに、圧側減衰バルブ61で所定の圧側減衰作用を具現化する。
【0143】
ちなみに、圧側減衰部6は、図示するところでは、車体側チューブ1の軸芯部に垂設されるセンターロッド63における図中で下端部となるシリンダ体3内のピストン側室R2に対向する先端部に保持される。
【0144】
そして、センターロッド63は、基本的には、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11の軸芯部に垂設されて、ボトム端部34の軸芯部に臨在されるが、図示するところでは、キャップ部材11が前記したボトム端部34における上端連結部34bの内周に螺着され、このキャップ部材11は、前記したリザーバR内の気室Aにおける気圧を最適にし得るように、気体の給排を可能にするエアバルブVを有してなる。
【0145】
一方、このダンパにあっては、上記のボトム端部34内に、特に、ボトム端部34における本体部34c内に上記した圧側減衰部6の下流側に直列するように収装されるフリーピストン9を摺動可能に有しており、このフリーピストン9は、本体部91でボトム端部34内を圧側減衰部6側となる受圧面側油室R3と、閉鎖空間からなりエアバネ力を具有する背面側気室A1とに画成している。
【0146】
そして、このフリーピストン9は、本体部91の外周にシール92およびブッシュ93を有しながら本体部34cの内周に摺接すると共に、内周にチェックシール94を有しながら上記のセンターロッド63の外周に摺接、すなわち、摺動可能に介装されている。
【0147】
また、このフリーピストン9は、図中で上昇するようにボトム端部34内で後退して、特に、本体部91の下端がテーパ部34dの内側に到達する状況になるとき、このフリーピストン9の外周とテーパ部34dの内周との間に隙間を出現させ、この隙間を介することによる本体部34cの内側の連通孔34fを介してのリザーバRへの連通を許容する。
【0148】
それゆえ、このフリーピストン9にあっては、ダンパ内の作動油量が所定量にあるとき、フリーピストン9の背後に画成される背後側気室A1における反力、すなわち、リザーバR内の気室Aの圧力に拘わりなく背後側気室A1におけるエアバネ力でシリンダ体3内を言わば加圧して昇圧傾向に維持する。
【0149】
そして、このフリーピストン9にあっては、たとえば、ダンパ内における油温上昇などに起因する作動油の膨張や、ダンパの作動中にシリンダ体3外のリザーバRからの作動油がダンパ内に流入するなどで、ダンパ内の作動油が所定量を超える状況になると、所定のストローク以上に上昇するように後退し、シリンダ体3のボトム端部34に開穿の連通孔34fを介して言わば余剰の作動油をリザーバRに戻すように解放する。
【0150】
上記したように、圧側減衰部6が車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11に連設のセンターロッド63の先端部に保持され、このセンターロッド63がフリーピストン9を介装させる場合には、この圧側減衰部6およびフリーピストン9をキャップ部材11と共にいわゆるアッセンブリ化することが可能になり、フロントフォークの組立性を向上させる上で有利になる。
【0151】
ところで、この発明にあって、フリーピストン9によってエアバネ力を具有する閉鎖空間に画成される背後側気室A1には、昇圧バネS3を有して、ダンパが最伸長状態にあるときに、フリーピストン9をボトム端部34内で最下降させて、すなわち、最前進させてシリンダ体3内、すなわち、ダンパ内を昇圧傾向に維持し、最伸長状態にあるダンパが収縮作動を開始する当初から安定した圧側減衰作用の具現化を可能にしている。
【0152】
ちなみに、この発明にあっては、最伸長状態にあるフォーク本体内に大気圧以上となる気圧を封入して反力を具有させるから、いわゆる懸架バネを有しなくてもフォーク本体を伸長方向に附勢することを可能にし、したがって、このことからすると、上記の昇圧バネS3が背後側気室A1に収装されている必要は、必ずしもないと言い得る。
【0153】
つまり、最伸長状態時に大気圧以上となる気圧を封入するフォーク本体にあっては、収縮作動時にダンパ内が徐々に昇圧されると予想されるが、背後側気室A1に起因するエアバネ力を具有するフリーピストン9がこの昇圧分をリザーバRに解放するように機能する場合には、昇圧バネS3がなくても良いことになる。
【0154】
したがって、この発明におけるフォーク本体内に収装されるダンパにあっては、フリーピストン9を背後側から附勢する昇圧バネS3を有しなくても良く、その場合には、この昇圧バネS3を有しない分、重量の軽減と部品点数の削減を可能にする。
【0155】
なお、特開2005‐30534公報に開示されているように、この種のフリーピストンにあっては、背後に附勢手段たるコイルスプリングからなる附勢バネ(4)を有してなるのが常態である。
【0156】
したがって、この発明にあっても、フリーピストン9の背後にコイルスプリングからなる昇圧バネS3を有しても良いが、凡そコイルスプリングにあっては、先端に隣接する被附勢部材に対して附勢力をコイルスプリングの巻き方向たる周方向に均等に作用することを困難にし、被附勢部材がフリーピストン9とされるとき、このフリーピストン9に齧り現象を発現し易くなる弊害がある。
【0157】
そこで、フリーピストン9を背後から附勢するのにあって、昇圧バネS3を利用せずして、背後側気室A1における反力、すなわち、エアバネ力を利用し、少なくとも、昇圧バネS3を利用することによるフリーピストン9における齧り現象の発現をあらかじめ阻止するのが好ましい。
【0158】
そして、エアバネ力を利用する場合には、フリーピストン9における齧り現象の発現を阻止し得るから、図示するように、フリーピストン9の摺動性を安定させるために、フリーピストン9における摺動方向の寸法を大きく形成することに代えて、図示しないが、フリーピストン9における摺動方向の寸法を小さくしていたずらな重量の増大化を阻止することが可能になる。
【0159】
それゆえ、以上のように形成されたダンパをフォーク本体内に有する図2に示すフロントフォークにあっては、フォーク本体が最伸長状態にあるときにリザーバR内の気室Aに大気圧以上の気圧を封入して反力を具有させるから、フォーク本体内を昇圧傾向に維持でき、最伸長状態にあるフォーク本体が収縮作動を開始するとき、開始当初から安定した収縮作動を可能にする。
【0160】
また、このフロントフォークにあっては、フォーク本体が最伸長状態にあるときにリザーバR内の気室Aに大気圧以上の気圧を封入して反力を具有させるから、フォーク本体が常時伸長方向に附勢されることになり、したがって、いわゆる懸架バネを有せずしてフォーク本体を伸長方向に附勢し得ることになり、その限りにおいて、懸架バネを有しない分、重量の軽減と部品点数の削減を可能にする。
【0161】
このことから、この図2に示す他方のフロントフォークにあっては、フォーク本体を構成する車輪側チューブ2の図2中で下端となるボトム端を閉塞するボトム部材21に、図8に示すように、ブレーキキャリパ25を有してなる。
【0162】
このブレーキキャリパ25については、二輪車がオンロード型とされる場合には左右のフロントフォークに設けられるのが常態だが、二輪車がオフロード型とされる場合には左右のいずれか一方に設けられるのが常態である。
【0163】
そこで、前記した特許文献1に開示の提案と同様に、この発明にあっても、フォーク本体内に懸架バネを有しない言わば他方のフロントフォークにブレーキキャリパ25を設けるとする。
【0164】
このとき、ブレーキキャリパ25の重量を、たとえば、特許文献1に開示の提案による場合と比較すると軽減でき、他方のフロントフォークにおける重量の軽減化を可能にして懸架装置の軽減化による二輪車の走行安定性を向上させることが可能になる。
【0165】
つまり、前記したように、この発明における前記した一方のフロントフォークにあっては、フォーク本体内に収装のダンパが位置依存の減衰作用をするから、コイルバネSの構成を軽減し得ることになり、したがって、この一方のフロントフォークにおける全体重量の軽減化を可能にする。
【0166】
したがって、このことから、一方のフロントフォークと対となる他方のフロントフォークの重量を一方のフロントフォークの重量にバランスする重量にするとき、コイルバネSの構成を軽減できる分フロントフォークにおける重量を小さくしているから、他方のフロントフォークに設けられるブレーキキャリパ25の重量についてもこれを小さくできる。
【0167】
その結果、他方のフロントフォークにおける重量も一方のフロントフォークと同様に軽減でき、この一対となるフロントフォークを有する懸架装置の軽減化が可能になり、この懸架装置を架装する二輪車の走行安定性が向上される。
【0168】
そして、この発明にあっては、フォーク本体が最伸長状態にあるときにリザーバR内の気室Aに大気圧以上の気圧を封入して反力を具有させる一方で、フォーク本体が最伸長状態から収縮する所定のストローク領域内における反力を抑制する抑制手段を有してなるから、最伸長状態から所定のストローク領域における収縮作動時の反力を小さくし得て、二輪車のライダーにおける乗車フィーリングを善くする。
【0169】
さらに、この図に示すフロントフォークを構成するフォーク本体が収装するダンパが圧側減衰部6の下流側に配設されるフリーピストン9によって画成される背後側気室A1がリザーバR内の気室Aと常時画成されるから、この背後側気室A1におけるバネ反力を気室Aと分離して安定させることが可能になり、シリンダ体3内を安定した昇圧傾向に維持し得て、減衰作用を安定させ得る。
【産業上の利用可能性】
【0170】
左右で一対とされるフロントフォークを有する懸架装置における重量の軽減を可能にして二輪車における走行安定性を改善させるのに向く。
【符号の説明】
【0171】
1 車体側チューブ
2 車輪側チューブ
3 シリンダ体
3a,3b,3c,…,3g 連通孔
4 ロッド体
5 ピストン体
25 ブレーキキャリパ
A 気室
O 液面たる油面
R リザーバ
R1 ロッド側室
R2 ピストン側室
S コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部で前輪を懸架する左右で一対となるフロントフォークが車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体内にダンパを有してなる懸架装置において、各フォーク本体が最伸長状態にあるときに内部に大気圧以上の気圧を封入することで具有される反力によって伸長方向に附勢される一方で、いずれか一方のフォーク本体がコイルバネを収装してこのコイルバネのバネ力をこの一方のフォーク本体における反力の一部としてなることを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
上記の各フォーク本体が最伸長状態にあるときに内部たるリザーバ内に液面を境にして画成される気室に大気圧以上の気圧を封入することで具有される反力によって伸長方向に附勢されてなる請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
上記の一方のフォーク本体内に収装のダンパが収縮位置に依存する圧側減衰力の発生を可能にしてなる請求項1または請求項2に記載の懸架装置。
【請求項4】
上記の他方のフォーク本体がブレーキキャリパを有してなる請求項1,請求項2または請求項3に記載の懸架装置。
【請求項5】
上記の一方のフォーク本体内に収装されるダンパが作動流体を収容するシリンダ体と、このシリンダ体内に出没可能に挿通されるロッド体と、このロッド体の先端部に連設されながら上記のシリンダ体内に摺動可能に収装されてこのシリンダ体内にロッド側室とピストン側室とを画成するピストン体と、上記のシリンダ体の外に配設されてこのシリンダ体内と連通するリザーバとを有し、上記のシリンダ体がこのシリンダ体に開穿されて上記のピストン側室の上記のリザーバへの連通を許容する少なくとも一つの連通孔を有し、この連通孔が上記のロッド体に作用するロッド荷重が1G領域を超えるときに上記のシリンダ体内を摺動する上記のピストン体で閉塞されるが、上記のロッド体に作用するロッド荷重が1G領域にあるときに上記のシリンダ体内を摺動する上記のピストン体で閉塞されない位置に開穿されてなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載の懸架装置。
【請求項6】
上記の一方のフォーク本体内に収装されるダンパが作動流体を収容するシリンダ体と、このシリンダ体内に出没可能に挿通されるロッド体と、このロッド体の先端部に連設されながら上記のシリンダ体内に摺動可能に収装されてこのシリンダ体内にロッド側室とピストン側室とを画成するピストン体と、上記のシリンダ体の外に配設されてこのシリンダ体内と連通するリザーバとを有し、上記のシリンダ体がこのシリンダ体に開穿されて上記のピストン側室の上記のリザーバへの連通を許容する複数の連通孔をこのシリンダ体における軸線方向に沿って適宜の間隔で有すると共に、この複数の連通孔の中で上記のシリンダ体のヘッド端寄りに位置決められる先頭の連通孔が上記のロッド体に作用するロッド荷重が1G領域にあるときに上記のシリンダ体内を摺動する上記のピストン体で閉塞されない位置に開穿されてなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4の記載の懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−11682(P2011−11682A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158956(P2009−158956)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】