説明

成型同時転写用ポリエステルフィルム

【課題】 高温での射出成型に耐えることのできる高度な耐熱性を有し、加工温度でフィルムが融解しないこと、高温にて軟化してもフィルム間の空気の膨張によりフィルムが変形して裂けることがなく、絞り成型に好適な成型同時転写用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 フィルムを構成するポリエステルの全グリコール成分中、11〜15mol%が1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、全ジカルボン酸成分中、4.0〜5.5mol%がイソフタル酸であることを特徴とする成型同時転写用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成型性に優れた成型同時転写用ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、本発明は、高温の射出成型に耐えうる耐熱性を有し、絞り成型に好適な成型同時転写用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、成型品への印刷手法として、成型と同時に転写印刷も行う、いわゆる成型同時転写法が普及しつつある。この方法に使用するフィルムとして、強度、耐熱性等の特性の点から、二軸延伸ポリエステルフィルムが用いられている。
【0003】
最近では、成型時の絞り率がますます高くなるとともに、高品質な成型同時転写が要求される傾向にある。特に成型品として、冷蔵庫外装や自動車内装および外装加飾用途のような、大型かつ絞り率の高いものが求められつつあるため、従来のフィルムに対し深絞り成型性と寸法安定性に関する高度な特性が必要となり、フィルムの改良が強く望まれるようになっている。
【0004】
成型同時転写においては、変形させる際に加熱し、フィルムの変形性を向上させる必要があることから、高温でのフィルムの耐久性が必要となる。耐久性とは加工温度でフィルムが融解しないこと、高温にて軟化してもフィルム間の空気の膨張によりフィルムが変形して裂けることがないことをいう。
【0005】
また、フィルムを金型に沿わせた(以下、予備成型と表記する)後、樹脂を射出する際、樹脂の温度は通常200℃以上であるため、フィルムの結晶化度が低すぎると樹脂の熱と射出による樹脂とのずり応力を原因とする熱負けによるフィルムのシワのため精密な転写ができないという問題が発生したり、熱負けによるシワが樹脂にかみこんでしまうためフィルムを剥がす際にフィルムが破れる等の問題が発生したりする。かかる観点からも優れた転写適性を有するフィルムが望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開昭64−40400号公報
【特許文献2】特開平7−196821号公報
【特許文献3】特開平8−3227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、高温での射出成型に耐えることのできる高度な耐熱性を有し、加工温度でフィルムが融解しないこと、高温にて軟化してもフィルム間の空気の膨張によりフィルムが変形して裂けることがなく、絞り成型に好適な成型同時転写用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、フィルムを構成するポリエステルの全グリコール成分中、11〜15mol%が1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、全ジカルボン酸成分中、4.0〜5.5mol%がイソフタル酸であることを特徴とする成型同時転写用ポリエステルフィルムに存する。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフィルムを構成するポリエステルは、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸が好ましく、これらのほかに、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの公知のジカルボン酸の一種以上を、共重合成分として含んでいてもよい。また、ジオール成分としては、エチレングリコールが好ましく、これらのほかに、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの公知のジオールの一種以上を、共重合成分として含んでいても
よい。
【0011】
また、ポリエステルの構成成分としては、上記のジカルボン酸成分およびジオール成分のほか、種々の酸成分およびアルコール成分を含むことができる。例えば、p−オキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸、安息香酸、ベンゾイル安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物は修飾成分として、トリメシン酸、トリメリト酸、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能性化合物は共重合成分として、生成物ポリエステルが実質的に線状の高分子を保持し得る範囲内で、使用することができる。
【0012】
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等公知の触媒を使用してよい。
【0013】
なおポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが好ましい
【0014】
本発明のフィルムを構成するポリエステルの全グリコール成分中、11〜15mol%が1,4−シクロヘキサンジメタノールであることが必要であり、11〜13mol%が1,4−シクロヘキサンジメタノールであることが好ましい。1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレートが11mol%より少ない場合、加熱した際のフィルムの変形性に劣るため本用途には使用できず、15mol%より多い場合は、樹脂射出時の熱負けにより、フィルムにシワが発生するなどの問題があり、良好な成型品が採取できない。また、本成分がフィルム表層に含まれる際は、耐溶剤性に劣るためコート層の溶剤種などに注意を払う必要がある。
【0015】
また、本発明のフィルムを構成するポリエステルの全ジカルボン酸成分中、4.0〜5.5mol%がイソフタル酸であることが必要である。エチレンイソフタレートが4.0mol%より少ない場合は、加熱した際のフィルムの変形性に劣るため本用途には使用できず、5.5mol%より多い場合は、フィルムの変形量が多い部分が結晶化するため、金型に対する追従性が劣射出成型の際のシワが発生するなどの問題が発生し良好な成型品が採取できない。
【0016】
なお、本発明で言う成分比は、共押出しにおける積層フィルムの場合は、全層中に含まれる総ポリエステルのジカルボン酸成分およびグリコール成分に対するものであり、上記のとおり、特定した成分の総含有量を計算した値である。
【0017】
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0018】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0019】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜5μmが好ましい。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの粒子が起点となり、変形時に破れるなどの不具合が発生することがある。
【0020】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0021】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料等を添加することができる。また用途によっては、紫外線吸収剤特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
【0022】
本発明のフィルムは、共押出法を用いて積層構造とすることができ、例えば最外層を構成するポリエステルを含有オリゴマー量が少ないものとすることで、加工中の熱履歴等によりオリゴマーが析出して生産ラインの汚染やフィルム表面の異物による成型品の表面の品質を悪化させることを防止することができる。かかる効果を得るためには最外層の厚みを3μm以上にすることが好ましい。また、フィルムの粒子が起点になり、成型時に破れるなどの不具合が発生することがある。この不具合を起こさないためには最外層に配合される粒子量を減らすことが必要であり、最外層の厚みを総厚みの1/4以下にすることが好ましい。一方、単層で本発明を実施する際には、耐溶剤性などの不具合が発生することがあり、後工程の塗布層の選択などに注意が必要である。フィルムには可能な限り粒子を含有させないようにし、表裏の塗布層に粒子を含有させることも好ましい。
【0023】
本発明のフィルム厚さは、通常10〜200μmであり、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは30〜100μmである。
【0024】
本発明のフィルムは、耐熱性、成型加工性、転写性を高度に満足するため、少なくとも1つの融点Tmが200〜240℃の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは210〜235℃の範囲である。210℃以上の融点の成分がない場合には、高温でのフィルム耐久性が不足するために本用途には使用できないことがあり、また240℃以下の融点の成分がない場合には、成型性が不足し本用途には使用できないことがある。
【0025】
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0026】
まず、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0027】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、好ましくはMD方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、TD方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0028】
本発明においては、前記の通りポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/C構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。例えばA原料として特定の粒子を用いてA層の表面形状を設計し、B原料としては粒子を含有しない原料を用い、A/B構成のフィルムとすることができる。この場合B層の原料を自由に選択できることからコスト的な利点などが大きい。また当該フィルムの再生原料をB層に配合しても表層であるA層により表面粗度の設計ができるので、さらにコスト的な利点が大きくなる。
【0029】
前記延伸工程においてまたはその後に、フィルムに接着性、帯電防止性、滑り性、離型性等を付与するために、フィルムの片面または両面に塗布層を形成したり、コロナ処理等の放電処理を施したりすることもできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のフィルムは、高温の射出成型に耐えうる耐熱性を有し、中程度の絞り成型に好適な成型同時転写用ポリエステルフィルムであり、技術的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0032】
(1)極限粘度
測定試料をフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量部)の溶媒に溶解させて濃度c=0.01g/cmの溶液を調製し、30℃にて溶媒との相対粘度ηを測定し、極限粘度[η]を求めた。
【0033】
(2)ポリエステル組成
ポリエステルフィルムを重水素化トリフルオロ酢酸に溶解し、 1 H−NMR法で分析してイソフタル酸含有量および1,4−シクロヘキサンジメタノール含有量を求めた。
【0034】
(3)厚さ
マイクロメータにより求めた。
【0035】
(4)融解ピーク温度Tm
TA Instruments社製の示差走査熱量計「DSC−2920型」を使用し、試料5mgを0℃から300℃まで20℃/minの速度で昇温させた際に得られる吸熱ピークの温度をTmとした。上記の方法にて複数のピークが得られる場合はそれぞれを融解ピーク温度として記載した。
【0036】
(5)成型同時転写フィルムとしての耐熱性
ポリエステルフィルム上に離型層を形成し、縦35cm、横25cm、最大深さ3.0cmの深さの金型を用い、IRヒータで予備加熱後、金型内部に真空または圧空成型法により予備成型を実施した。予備加熱によるフィルムの融解状況より、下記基準で耐熱性の評価を行った。
○:加工温度に耐久でき、予備成型に対応できる
△:予備成型に対応できるが、稀にフィルム軟化による膨張が発生する
×:フィルム融解による穴あきあるいは、フィルム軟化による膨張が頻繁に発生
【0037】
(6)成型同時転写フィルムとしての成型性
上記予備成型の過程で深さの異なる金型を使用し、その金型追従性により評価を行った。
◎:深さ3.0cmの金型でフィルム破断、クラック発生等がなく、均一な厚さで成型される
○:深さ3.0cmの金型ではフィルム破断、クラック発生等により均一な厚さで成型できないが、深さ2.0cmの金型では均一な厚さで成型できる
△:深さ2.0cmの金型ではフィルム破断、クラック発生等により均一な厚さで成型できないが、深さ1.0cmの金型では均一な厚さで成型できる
×:深さ1.0cmの金型でもフィルム破断、クラック発生等により均一な厚さで成型できない
【0038】
(7)成型同時転写フィルムとしての適性
上記方法にて予備成型を実施した後、樹脂を射出し、下記基準にて成型同時転写フィルムとしての適正を確認した。
○:良好な成型樹脂を得ることができる
△:樹脂射出時の熱負けによりフィルムにシワが発生することがあり、良好な成型樹脂を得る際に不具合が生じることがある
×:樹脂射出時の熱負けによりフィルムにシワが発生し、良好な成型樹脂を得る際に不具合が生じることが多く、成型同時転写用のフィルムとしては適さない
【0039】
以下に実施例および比較例を示すが、これに用いたポリエステルの製造方法は次のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
(ポリエステルAの製造方法)
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.680に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルAの極限粘度は0.680で
あった。
【0040】
(ポリエステルBの製造方法)
出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール54重量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール25重量部とし、触媒としてテトラブチルチタネート0.011重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とし、さらに1時間反応を継続した。その後、温度を230℃から徐々に昇温すると共に圧力を常圧より徐々に減じ、最終的に温度を280℃、圧力を0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.70に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルBの極限粘度は0.700、1,4−シクロヘキサンジメタノールの含有量は33モル%であった。
【0041】
(ポリエステルCの製造方法)
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、定法の溶融重縮合法で製造しものを使用した。得られたポリエステルCの極限粘度は0.700、ジカルボン酸成分中のイソフタル酸の含有量は22モル%であった。
【0042】
(ポリエステルDの製造方法)
ポリエステルAの製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径3.5μmのシリカ粒子を3部、三酸化アンチモン0.03部を加えて、極限粘度0.700に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステルAの製造方法と同様の方法を用いてポリエステルDを得た。得られたポリエステルDは、極限粘度0.700であった。
【0043】
実施例1:
前述のポリエステルA、Dをそれぞれ70重量部、30重量部の割合で混合した混合原料をA層、ポリエステルA、B、Cをそれぞれ40重量部、40重量部、20重量部で混合したものをB層の原料として、2台のベント式二軸押出機に各々を供給し、それぞれ285℃で溶融し、A層を最外層(表層)、B層を中間層とする2種3層(A/B/A)の層構成で共押出して、40℃に冷却したキャスティングドラム上で冷却固化させて未延伸フィルムを得た。次いで、ロール周速差を利用して縦延伸温度80℃で縦方向に3.1倍延伸した。その後テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、195℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩処理を行った後、フィルムをロール状に巻き上げ、厚さ75μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは3/69/3μmであった。
【0044】
実施例2:
実施例1において、B層の原料配合をポリエステルA、B、Cをそれぞれ45重量部、35重量部、20重量部で混合したもの以外は、実施例1と同様にして厚み75μmのポリエステルフィルムを得た。
【0045】
実施例3:
実施例1において、B層の原料配合をポリエステルA、B、Cをそれぞれ35重量部、45重量部、20重量部で混合したもの以外は、実施例1と同様にして厚み75μmのポリエステルフィルムを得た。
【0046】
比較例1:
実施例1において、B層の原料配合をポリエステルA、B、Cをそれぞれ25重量部、50重量部、25重量部で混合したもの以外は、実施例1と同様にして厚み75μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは樹脂射出時の熱負けによりフィルムにシワが発生し樹脂に噛みこんでしまうため、良好な成型樹脂を得ることができなかった。
【0047】
比較例2:
実施例1において、B層の原料配合をポリエステルA、B、Cをそれぞれ15重量部、35重量部、15重量部で混合したもの以外は、実施例1と同様にして厚み75μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは耐熱性におとり、また樹脂射出時にフィルムの変形量が多い部分が結晶化するため、金型に対する追従性が劣り、熱負けによりフィルムにシワが発生した部分が樹脂に噛みこんでしまうなどの現象が発生し、良好な成型樹脂を得ることができなかった。
【0048】
比較例3:
実施例1において、B層の原料配合をポリエステルA100重量部とした以外は、実施例1と同様にして厚み75μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは成型性におとり、均一な厚さ成型することができなかった。
【0049】
以上、得られたフィルムの物性値および成型同時転写フィルムとしての適性について表1にまとめて示す。本発明の要件を満たすフィルムは、成型同時転写用としての適性が高いことが分かる。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のフィルムは、例えば、成型同時転写用のフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを構成するポリエステルの全グリコール成分中、11〜15mol%が1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、全ジカルボン酸成分中、4.0〜5.5mol%がイソフタル酸であることを特徴とする成型同時転写用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2009−185264(P2009−185264A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29811(P2008−29811)
【出願日】平成20年2月9日(2008.2.9)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】