説明

成型用樹脂組成物

【課題】機械的強度や熱剛性、耐衝撃性が高い工具ホルダーを作ることができ、高い耐水性や耐湿性を有するとともに優れた寸法安定性を有する工具ホルダーを作ることができる成型用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】成型用樹脂組成物17は、液状フェノール樹脂(熱硬化性合成樹脂)とガラス繊維(無機繊維)と綿糸全体や綿布全体(天然繊維材料)に液状フェノール樹脂を含浸させた樹脂含浸繊維材料とを混和することから作られている。樹脂含浸繊維材料では、綿糸や綿布100重量%に対するフェノール樹脂の含浸量が20〜40重量%の範囲にある。成型用樹脂組成物17では、フェノール樹脂100重量%に対するガラス繊維の含有量が5〜15重量%の範囲にあり、フェノール樹脂100重量%に対する樹脂含浸繊維材料の含有量が100〜150重量%の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性合成樹脂を主成分とする成型用樹脂組成物に関し、より詳細には、水溶性切削油を用いた加工に利用される工具の工具ホルダーの成型材料として使用される成型用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
強化合成樹脂を成型加工することから作られた一対のグリップと、それらグリップのいずれか一方の後端部に埋設された検出ピンと、それらグリップの間に配置された位置決めキーおよび弾性部材とを備え、それらグリップを支点軸において作動可能に支持板に設置し、支点軸を基点としたグリップの作動面上にグリップ位置決めピンを設けてグリップの同一方向への作動を防止し、検知器によって前記検出ピンの位置を検知して工具ホルダーの把持を確認する工具ホルダー把持装置がある(特許文献1参照)。グリップを作る強化合成樹脂は、綿布や炭素繊維で強化された熱硬化性合成樹脂が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願平3−245939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
立形マシニングセンタや横形マシニングセンタ等の工作機械では、切削加工を行うための複数種類の切削工具が利用されている。それら切削工具は、その未使用時に工具マガジンの工具ホルダーに保持される。ところで、切削加工時では、その際に発生する摩擦熱を低下させるために水溶性切削油が使用されるが、水溶性切削油が付着した状態で切削工具が工具ホルダーに収容されると、その水溶性切削油が工具ホルダーに付着する。
【0005】
前記特許文献1に開示の工具ホルダー把持装置では、そのグリップが綿布や炭素繊維で強化された熱硬化性合成樹脂から作られているから、水溶性切削油が付着した状態の切削工具がグリップに保持されると、水溶性切削油の水分が綿布を介してグリップに滲入する。水分がグリップに滲入すると、グリップが膨潤してその寸法が変化してしまうのみならず、グリップの強度が低下する場合がある。
【0006】
本発明の課題は、機械的強度や熱剛性、耐衝撃性が高い成型品を作ることができ、高い耐水性や耐湿性を有するとともに優れた寸法安定性を有する成型品を作ることができる成型用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の成型用樹脂組成物は、熱硬化性合成樹脂と無機繊維と天然繊維材料全体に熱硬化性合成樹脂を含浸させた樹脂含浸繊維材料とを混和することから作られ、熱硬化性樹脂100重量%に対する無機繊維の重量比が5〜15重量%の範囲にあり、熱硬化性樹脂100重量%に対する樹脂含浸繊維材料の重量比が100〜150重量%の範囲にある。
【0008】
本発明の成型用樹脂組成物の一例として、樹脂含浸繊維材料では、天然繊維材料100重量%に対する熱硬化性合成樹脂の重量比が10〜40重量%の範囲にある。
【0009】
本発明の成型用樹脂組成物の他の一例として、樹脂含浸繊維材料では、熱硬化性合成樹脂に有機溶剤を加えてその粘度を低下させた状態でその熱硬化性合成樹脂を天然繊維材料に含浸させることで、天然繊維全体が熱硬化性合成樹脂にコーティングされている。
【0010】
本発明の成型用樹脂組成物の他の一例としては、天然繊維材料が布状と糸状との少なくとも一方の形態を有し、布状の天然繊維材料の縦横寸法が0.5×0.5〜20×20mmの範囲にあり、糸状の天然繊維材料の長さ寸法が0.1〜10mmの範囲にある。
【0011】
本発明の成型用樹脂組成物の他の一例としては、無機繊維の長さ寸法が1〜20mmの範囲、無機繊維のフィラメント径が6〜13μmの範囲にある。
【0012】
本発明の成型用樹脂組成物の他の一例としては、熱硬化性合成樹脂がフェノール系の樹脂であり、天然繊維材料が綿糸および綿布の少なくとも一方であり、無機繊維がガラス繊維である。
【0013】
本発明の成型用樹脂組成物の他の一例としては、成型用樹脂組成物が水溶性切削油を用いた加工に利用される工具の工具ホルダーの成型材料として使用され、成型用樹脂組成物を使用して成型された工具ホルダーの寸法変化率が0.1〜0.2%の範囲にある。
【0014】
本発明の成型用樹脂組成物の他の一例としては、成型用樹脂組成物を使用して成型された工具ホルダーの曲げ強さが100〜130MPaの範囲にあり、成型用樹脂組成物を使用して成型された工具ホルダーの曲げ弾性率が11000〜12500MPaの範囲にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る成型用樹脂組成物によれば、それが熱硬化性合成樹脂と無機繊維と天然繊維材料全体に熱硬化性合成樹脂を含浸させた樹脂含浸繊維材料とを混練した混合物であり、優れた自己潤滑性を有し、成型用樹脂組成物から成型品を容易に作ることができる。この成型用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂100重量%に対する無機繊維の重量比が5〜15重量%の範囲にあり、熱硬化性樹脂100重量%に対する樹脂含浸繊維材料の重量比が100〜150重量%の範囲にあるから、成型品が熱硬化性合成樹脂のみから作られる場合と比較し、それから作られた成型品に靱性や弾性を付与することができ、それを使用して機械的強度や熱剛性、耐衝撃性が高い成型品を作ることができる。この成型用樹脂組成物は、熱硬化性合成樹脂が天然繊維材料全体に含浸しているから、熱硬化性合成樹脂が障壁となって水分が天然繊維に滲入することはなく、それから作られた成型品が高い耐水性や耐湿性を有し、成型品に水分が付着したとしても、その水分が成型品に滲入することがなく、優れた寸法安定性を有する成型品を作ることができる。
【0016】
樹脂含浸繊維材料において天然繊維材料100重量%に対する熱硬化性合成樹脂の重量比が10〜40重量%の範囲にある成型用樹脂組成物は、天然繊維材料全体に熱硬化性合成樹脂を十分に含浸させることができ、天然繊維材料の熱硬化性合成樹脂に対する相容性が向上し、熱硬化性合成樹脂と無機繊維と樹脂含浸繊維材料とを混練したときに、樹脂含浸繊維材料の天然繊維を熱硬化性合成樹脂に満遍なく混和することができる。成型用樹脂組成物は、天然繊維と無機繊維とが熱硬化性合成樹脂に確実に混和されるから、成型品が熱硬化性合成樹脂のみから作られる場合と比較し、それから作られた成型品に靱性や弾性を確実に付与することができ、それを使用して機械的強度や熱剛性、耐衝撃性が高い成型品を作ることができる。この成型用樹脂組成物は、熱硬化性合成樹脂が天然繊維材料全体に含浸され、天然繊維全体が熱硬化性合成樹脂にコーティングされるから、熱硬化性合成樹脂が障壁となって水分が天然繊維に滲入することはなく、それから作られた成型品が高い耐水性や耐湿性を有し、成型品に水分が付着したとしても、その水分が成型品に滲入することがなく、優れた寸法安定性を有する成型品を作ることができる。
【0017】
熱硬化性合成樹脂に有機溶剤を加えてその粘度を低下させた状態で熱硬化性合成樹脂を天然繊維材料に含浸させた成型用樹脂組成物は、粘度を低下させた熱硬化性合成樹脂を天然繊維材料に含浸させることで、天然繊維材料全体に熱硬化性合成樹脂を十分に含浸させることができ、天然繊維材料の熱硬化性合成樹脂に対する相容性が向上し、熱硬化性合成樹脂と無機繊維と樹脂含浸繊維材料とを混練したときに、樹脂含浸繊維材料の天然繊維を熱硬化性合成樹脂に満遍なく混和することができる。成型用樹脂組成物は、天然繊維と無機繊維とが熱硬化性合成樹脂に確実に混和されるから、成型品が熱硬化性合成樹脂のみから作られる場合と比較し、それから作られた成型品に靱性や弾性を確実に付与することができ、それを使用して機械的強度や熱剛性、耐衝撃性が高い成型品を作ることができる。この成型用樹脂組成物は、熱硬化性合成樹脂が天然繊維材料全体に含浸され、天然繊維全体が熱硬化性合成樹脂にコーティングされるから、熱硬化性合成樹脂が障壁となって水分が天然繊維に滲入することはなく、それから作られた成型品が高い耐水性や耐湿性を有し、成型品に水分が付着したとしても、その水分が成型品に滲入することがなく、優れた寸法安定性を有する成型品を作ることができる。
【0018】
天然繊維材料が布状と糸状との少なくとも一方の形態を有し、布状の天然繊維材料の縦横寸法が0.5×0.5〜20×20mmの範囲、糸状の天然繊維材料の長さ寸法が0.1〜10mmの範囲にある成型用樹脂組成物は、布状や糸状の天然繊維材料の各寸法が前記範囲にあるから、天然繊維材料に熱硬化性合成樹脂を十分に含浸させることができ、天然繊維材料の熱硬化性合成樹脂に対する相容性が向上し、熱硬化性合成樹脂と無機繊維と樹脂含浸繊維材料とを混練したときに、樹脂含浸繊維材料の天然繊維を熱硬化性合成樹脂に満遍なく混和することができる。成型用樹脂組成物は、天然繊維と無機繊維とが熱硬化性合成樹脂に確実に混和されるから、成型品が熱硬化性合成樹脂のみから作られる場合と比較し、それから作られた成型品に靱性や弾性を確実に付与することができ、それを使用して機械的強度や熱剛性、耐衝撃性が高い成型品を作ることができる。この成型用樹脂組成物は、熱硬化性合成樹脂が天然繊維材料全体に含浸され、天然繊維全体が熱硬化性合成樹脂にコーティングされるから、熱硬化性合成樹脂が障壁となって水分が天然繊維に滲入することはなく、それから作られた成型品が高い耐水性や耐湿性を有し、成型品に水分が付着したとしても、その水分が成型品に滲入することがなく、優れた寸法安定性を有する成型品を作ることができる。
【0019】
無機繊維の長さ寸法が1〜20mmの範囲、無機繊維のフィラメント径が6〜13μmの範囲にある成型用樹脂組成物は、無機繊維の各寸法が前記範囲にあるから、熱硬化性合成樹脂と無機繊維と樹脂含浸繊維材料とを混練したときに、無機繊維を熱硬化性合成樹脂に満遍なく混和することができ、それを使用して優れた機械的強度や熱剛性を有する成型品を作ることができる。
【0020】
熱硬化性合成樹脂がフェノール樹脂であり、天然繊維材料が綿糸および綿布の少なくとも一方であり、無機繊維がガラス繊維である成型用樹脂組成物は、それから作られた成型品に靱性や弾性を確実に付与することができ、それを使用して機械的強度や熱剛性、耐衝撃性が高い成型品を作ることができる。この成型用樹脂組成物は、フェノール樹脂が綿糸全体や綿布全体に含浸され、天然繊維全体が熱硬化性合成樹脂にコーティングされるから、熱硬化性合成樹脂が障壁となって水分が天然繊維に滲入することはなく、それから作られた成型品が高い耐水性や耐湿性を有し、成型品に水分が付着したとしても、その水分が成型品に滲入することがなく、優れた寸法安定性を有する成型品を作ることができる。
【0021】
水溶性切削油を用いた加工に利用される工具の工具ホルダーの成型材料として使用され、成型された工具ホルダーの寸法変化率が0.1〜0.2%の範囲にある成型用樹脂組成物は、それから作られた工具ホルダーが優れた耐水性や耐湿性を有し、水溶性切削油の水分が工具ホルダーに付着したとしても、水分が工具ホルダーに滲入することはなく、工具ホルダーの寸法変化を防ぐことができる。この成型用樹脂組成物は、それから作られた工具ホルダーの寸法変化率が前記範囲にあるから、工具ホルダーが優れた寸法安定性を有し、工具ホルダーを介して工具を正確かつ確実に支持することができる。
【0022】
成型用樹脂組成物を使用して成型された工具ホルダーの曲げ強さが100〜130MPaの範囲、工具ホルダーの曲げ弾性率が11000〜12500MPaの範囲にある成型用樹脂組成物は、それから作られた工具ホルダーの曲げ強さや曲げ弾性率が前記範囲にあるから、工具ホルダーが優れた機械的強度や耐衝撃性を有し、工具ホルダーに衝撃が加えられたとしても、工具ホルダーが破損や折損をすることはなく、工具ホルダーを介して工具を正確かつ確実に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一例として示す工具ホルダーの斜視図。
【図2】図1の2−2線端面図。
【図3】他の一例として示す工具ホルダーの斜視図。
【図4】図3の4−4線端面図。
【図5】ホルダーを作るために使用する成型用樹脂組成物の一例を示す図。
【図6】寸法変化率の測定に使用した試験片を示す図。
【図7】曲げ試験の試験片を示す図。
【図8】曲げ試験方法を示す図。
【図9】第1混練工程の一例を説明する図。
【図10】図9の第1混練工程から続く乾燥工程の一例と乾燥工程から続く第1冷却工程の一例とを説明する図。
【図11】図10の第1冷却工程から続く第2混練工程の一例を説明する図。
【図12】図11の第2混練工程から続く第2冷却工程の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一例として示す工具ホルダー10Aの斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる成型用樹脂組成物の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、図1の2−2線端面図であり、図3は、他の一例として示す工具ホルダー10Bの斜視図である。図4は、図3の4−4線端面図である。図1では、グリップの図示を省略している。図1,2,4では、切削工具12を二点鎖線で示す。図2では、周り方向を矢印Lで示す。
【0025】
図1,2の工具ホルダー10Aは、マシニングセンタ等の工作機械の工具マガジンに固定される固定部11と、エンドミルやメントリカッタ、フェイスミル等の切削工具12の周面を挟み込む挟持部13とから形成されている。工具ホルダー10Aは、図2に矢印Lで示すように、挟持部13のグリップ(図示せず)が周り方向へ旋回する。工具ホルダー10Aでは、グリップが開いた状態にあるときに切削工具13が挟持部13の間に進入し、工具12が挟持部13の間に進入した後、グリップが閉じ、工具12がグリップに挟み込まれた状態で保持される。
【0026】
図3,4の工具ホルダー10Bは、マシニングセンタ等の工作機械の工具マガジンに固定される円筒状の周壁部14と、切削工具12を収容する収容部15とから形成されている。工具ホルダー10Bでは、収容部15に切削工具12を挿入すると、工具12の先端部が収容部15に設置された嵌合部材16に嵌合し、工具12が収容部15に保持される。
【0027】
工作機械では、切削工具12がその未使用時に工具ホルダー10A,10Bに保持され、工具12がその用途に応じてホルダー10A,10Bから自動で交換される。図1,2の工具ホルダー10Aでは、切削工具12の交換時にグリップが開き、工具12が挟持部13から取り外され、その工具12が工作機械の主軸に取り付けられる。図3,4の工具ホルダー10Bでは、切削工具12の交換時に工具12の先端部と嵌合部材16との嵌合が解除され、工具12が収容部15から抜き取られ、その工具12が工作機械の主軸に取り付けられる。
【0028】
図5は、工具ホルダー10A,10Bを作るために使用する成型用樹脂組成物17の一例を示す図である。それら工具ホルダー10A,10Bは、図5に示す成型用樹脂組成物17を使用し、その成型用樹脂組成物17をプレス加工や射出成型等の成型加工を行うことによって作られている。なお、この成型用樹脂組成物17は、工具ホルダー10A,10Bのみならず、他の成型品の成型材料として使用することもできる。
【0029】
この成型用樹脂組成物17は、熱硬化性合成樹脂と無機繊維と天然繊維材料全体に熱硬化性合成樹脂を含浸させた樹脂含浸繊維材料30(図10参照)とを混和することから作られ(図11参照)、その全体形状が不揃いの立体形状を有する。樹脂含浸繊維材料30は、天然繊維材料と熱硬化性合成樹脂とを混和(有機溶剤を含む)することから作られている(図9参照)。なお、無機繊維は、成型用樹脂組成物17から作られた工具ホルダー10A,10B(成型品)の堅牢度や機械的強度、熱剛性を向上させる目的で添加される。天然繊維材料は、成型用樹脂組成物17から作られた工具ホルダー10A,10Bに靱性や弾性を付与し、ホルダー10A,10Bの剛性や耐衝撃性を向上させる目的で添加される。
【0030】
熱硬化性合成樹脂としては、ノボラック系フェノール樹脂やレゾール系フェノール樹脂等のフェノール系の樹脂20(図9参照)を使用することが好ましいが、フェノール系の樹脂20の他に、エポキシ樹脂やメラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミドのいずれかを使用することもでき、それら樹脂を所定の割合で混合した樹脂を使用することもできる。この実施の形態では、熱硬化性合成樹脂としてフェノール系の樹脂20(以下、フェノール樹脂という)を例として説明するが、熱硬化性合成樹脂をフェノール樹脂20に限定する趣旨ではない。
【0031】
無機繊維には、ガラス繊維39(図11参照)を使用することが好ましいが、ガラス繊維39の他に、炭素繊維や金属繊維のいずれかを使用することもでき、ガラス繊維や炭素繊維、金属繊維のうちの少なくとも2種類を所定の割合で混同した繊維を使用することもできる。この実施の形態では、無機繊維としてガラス繊維39を例として説明するが、無機繊維をガラス繊維39に限定する趣旨ではない。
【0032】
天然繊維材料には、糸状の天然繊維と布状の天然繊維とのうちの少なくとも一方、または、糸状の天然繊維と布状の天然繊維との両者を所定の割合で混同した繊維を利用することができる。天然繊維には、植物繊維と動物繊維とのうちの少なくとも一方、または、植物繊維と動物繊維との両者を所定の割合で混同した繊維を利用することができる。天然繊維には、粉砕パルプを使用することもできる。パルプには、木材パルプを使用することが好ましい。粉砕パルプは、ボールミルや攪拌ミル、ローラミル等の微粉砕機を使用してパルプを微粉砕して作ることができる。それら天然繊維材料は、その水分吸湿量が1〜10%の範囲、好ましくは、0.1〜3%の範囲にある。
【0033】
植物繊維には、コットンやカッポク等の種子毛繊維、黄色麻やケナフ、コウゾ、ミツマタ、ガンピ等の靱皮繊維、サイザル麻やニュージーランド麻、ラフィア、パイナップル等の葉脈繊維、マニラ麻やバナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシやヘチマ等の果実繊維、麦藁や稲藁、い草、竹、シュロ等の茎幹繊維のうちのいずれか、または、それらの少なくとの2種類を所定の割合で混同した繊維を使用することができる。なお、天然繊維には、綿糸または綿布を使用することが好ましい。動物繊維には、羊毛や繊獣毛、ビキューナ、ラクダ、カシミヤ、アンゴラ等の獣毛繊維、絹繊維、羽毛のうちのいずれか、または、それらの少なくとの2種類を所定の割合で混同した繊維を使用することができる。この実施の形態では、天然繊維材料として糸状形態の綿糸21や布状形態の綿布21(図9参照)を例として説明するが、天然繊維材料を綿糸21や綿布21に限定する趣旨ではない。
【0034】
樹脂含浸繊維材料30では、綿糸21または綿布21(天然繊維材料)100重量%に対するフェノール樹脂20(熱硬化性合成樹脂)の重量比(含浸量)が10〜40重量%の範囲、好ましくは、25〜30重量%の範囲にある。フェノール樹脂20の重量比が10重量%未満では、綿糸21全体や綿布21全体をフェノール樹脂20でコーティングすることができず、本発明の成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができない。フェノール樹脂20の重量比が40重量%を超過すると、樹脂含浸繊維材料30の操作性が低下するとともに、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bに靱性や弾性を付与することができず、ホルダー10A,10Bの剛性や耐衝撃性を向上させることができない。
【0035】
樹脂含浸繊維材料30では、フェノール樹脂20の重量比(含浸量)が前記範囲にあるから、成型用樹脂組成物17から作られる工具ホルダー10A,10Bに靱性や弾性を確実に付与することができ、ホルダー10A,10Bの剛性や耐衝撃性を向上させることができるとともに、綿糸21全体や綿布21全体がフェノール樹脂20にコーティングされ、ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができる。
【0036】
成型用樹脂組成物17では、布状形態の綿布21(天然繊維材料)の縦横寸法が0.5×0.5〜20×20mmの範囲にある。綿布21の縦横寸法が0.5×0.5mm未満では、綿布21をその寸法に裁断するためにコストがかかり、その結果、成型用樹脂組成物17から作られる工具ホルダー10A,10Bのコストが上昇してしまう。綿布21の縦横寸法が20×20mmを超過すると、綿布21全体をフェノール樹脂20でコーティングすることが難しく、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができない。
【0037】
成型用樹脂組成物17では、綿布21の縦横寸法が前記範囲にあるから、成型用樹脂組成物17から作られる工具ホルダー10A,10Bに靱性や弾性を確実に付与することができ、ホルダー10A,10Bの剛性や耐衝撃性を向上させることができるとともに、綿布21全体がフェノール樹脂20にコーティングされ、ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができる。
【0038】
成型用樹脂組成物17では、糸状形態の綿糸21(天然繊維材料)の長さ寸法が0.1〜10mmの範囲にある。綿糸21の長さ寸法が0.1mm未満では、綿糸21をその長さ寸法に粉砕するためのコストがかかり、その結果、成型用樹脂組成物17から作られる工具ホルダー10A,10Bのコストが上昇してしまう。綿糸21の長さ寸法が10mmを超過すると、綿糸21全体をフェノール樹脂20でコーティングすることが難しく、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができない。
【0039】
成型用樹脂組成物17では、綿糸21の長さ寸法が前記範囲にあるから、成型用樹脂組成物17から作られる工具ホルダー10A,10Bに靱性や弾性を確実に付与することができ、ホルダー10A,10Bの剛性や耐衝撃性を向上させることができるとともに、綿糸21全体がフェノール樹脂20にコーティングされ、ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができる。
【0040】
成型用樹脂組成物17では、フェノール樹脂20(熱硬化性合成樹脂)100重量%に対するガラス繊維39(無機繊維)の重量比(含有量)が5〜15重量%の範囲、好ましくは、8〜12重量%の範囲にある。ガラス繊維39の重量比が5重量%未満では、成型用樹脂組成物17に対するガラス繊維39の割合が少なく、ガラス繊維39の補強機能を十分に利用することができず、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bの堅牢度や機械的強度、熱剛性を向上させることができない。ガラス繊維39の重量比が15重量%を超過すると、成型用樹脂組成物17に対するガラス繊維39の割合が多すぎ、成型用樹脂組成物17から作られた工具ホルダー10A,10Bの表面に多くのガラス繊維39が露出し、ホルダー10A,10Bに切削工具12を着脱するときにガラス繊維39によって工具12が摩耗してしまう場合がある。
【0041】
成型用樹脂組成物17では、ガラス繊維39の重量比(含有量)が前記範囲にあるから、成型用樹脂組成物17から作られる工具ホルダー10A,10Bの堅牢度や機械的強度、熱剛性を向上させることができるとともに、ガラス繊維39による切削工具12の摩耗を防ぐことができる。
【0042】
成型用樹脂組成物17では、ガラス繊維39(無機繊維)の長さ寸法が1〜20mmの範囲、好ましくは、1.3〜1.5mmの範囲にあり、ガラス繊維39(無機繊維)のフィラメント径が6〜13μmの範囲にある。ガラス繊維39の長さ寸法が1.0mm未満であって、そのフィラメント径が6μm未満では、その寸法のガラス繊維39の作成にコストがかかり、その結果、成型用樹脂組成物17から作られる工具ホルダー10A,10Bのコストが上昇してしまう。ガラス繊維39の長さ寸法が20mmを超過し、そのフィラメント径が13μmを超過すると、成型用樹脂組成物17の全域にガラス繊維39を満遍なく分散させることが難しく、ガラス繊維39の補強機能を十分に利用することができず、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bの堅牢度や機械的強度、熱剛性を向上させることができない。また、工具ホルダー10A,10Bの表面に露出するガラス繊維39によって工具12が摩耗してしまう場合がある。
【0043】
成型用樹脂組成物17では、ガラス繊維39の長さ寸法やフィラメント径が前記範囲にあるから、成型用樹脂組成物17から作られる工具ホルダー10A,10Bの堅牢度や機械的強度、熱剛性を向上させることができるとともに、ガラス繊維39による切削工具12の摩耗を防ぐことができる。
【0044】
成型用樹脂組成物17では、フェノール樹脂20(熱硬化性合成樹脂)100重量%に対する樹脂含浸繊維材料30の重量比(含有量)が100〜150重量%の範囲、好ましくは、115〜130重量%の範囲にある。樹脂含浸繊維材料30の重量比が100重量%未満では、成型用樹脂組成物17に対する綿布21や綿糸21の割合が少なく、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bに靱性や弾性を付与することができず、ホルダー10A,10Bの剛性や耐衝撃性を向上させることができない。樹脂含浸繊維材料30の重量比が150重量%を超過すると、成型用樹脂組成物17に対する綿布21や綿糸21の割合が多すぎ、綿布21全体や綿糸21全体をフェノール樹脂20でコーティングすることができず、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができない。
【0045】
成型用樹脂組成物17では、樹脂含浸繊維材料30の重量比(含有量)が前記範囲にあるから、成型用樹脂組成物17から作られる工具ホルダー10A,10Bに靱性や弾性を確実に付与することができ、ホルダー10A,10Bの剛性や耐衝撃性を向上させることができるとともに、綿糸21全体や綿布21全体がフェノール樹脂20にコーティングされ、ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができる。
【0046】
成型用樹脂組成物17から作られた工具ホルダー10A,10Bの寸法変化率は、0.1〜0.2%の範囲にある。また、成型用樹脂組成物17から作られた工具ホルダー10A,10Bの曲げ強さは、100〜130MPaの範囲にあり、成型用樹脂組成物17から作られたホルダー10A,10Bの曲げ弾性率は、11000〜12500MPaの範囲にある。工具ホルダー10A,10Bの寸法変化率が0.2%を超過すると、経年の寸法変化によってホルダー10A,10Bの寸法が大きく変化し、ホルダー10A,10Bに切削工具12を保持させることができない場合がある。工具ホルダー10A,10Bの曲げ強さが100MPa未満であって、ホルダー10A,10Bの曲げ弾性率が11000MPa未満では、ホルダー10A,10Bの使用中にホルダー10A,10Bに衝撃が加えられた場合、ホルダー10A,10Bが破損や折損する場合があり、ホルダー10A,10Bに切削工具12を保持させることができない場合がある。それら工具ホルダー10A,10Bは、前記組成の成型用樹脂組成物17を使用することで、優れた寸法安定性と優れた曲げ強さおよび曲げ弾性率を有し、高い堅牢度や機械的強度、熱剛性を有するとともに、高い剛性や耐衝撃性を有する。
【0047】
図6は、寸法変化率の測定に使用した試験片50を示す図であり、図7は、曲げ試験の試験片51を示す図である。図8は、曲げ試験方法を示す図である。工具ホルダー10A,10Bの寸法変化率は、成型用樹脂組成物17から各試験片50を作り、その試験片50を使用してJIS K 6911に準拠して測定した。寸法変化率の測定に利用した装置は、JIS B 7502に規定された外側マイクロメータ(寸法測定器)と、試験片50を成型する金型と、その金型を所定の温度および圧力に保持する圧縮成形機と、最高150℃まで表示された1℃目盛の温度計とを使用した。試験片50は、所定の金型と圧縮成形機とを使用して図6に示す形状に成型した。
【0048】
成形収縮率測定手順は、以下のとおりである。試験片50を成型後直ちに金型から取り出し、温度23±2℃、相対湿度50±5%の状態で、24±1時間放置した後、試験片50の表裏に突起した環状帯の外径を互いに直交する測定線に沿って、表面2箇所、裏面2箇所の計4箇所の寸法を0.01mmまで測定した。さらに、試験片50に対応する金型の溝の外径を同一条件で処理した後、溝の外径を0.01mmまで測定した。
【0049】
加熱収縮率測定手順は、以下のとおりである。試験片50を温度110±3℃、短時間48±1時間、標準時間168±2時間の加熱処理条件で加熱処理後、温度23±2℃、相対湿度50±5%の室内に3〜4時間放置した後、試験片50の表裏に突起した環状帯の外径を互いに直交する測定線に沿って、表面2箇所、裏面2箇所の計4箇所の寸法を0.01mmまで測定した。
【0050】
成形収縮率は、次式によって算出した。式:MS=1/4{(D1−d1)/D1+(D2−d2)/D2+(D3−d3)/D3+(D4−d4)/D4}×100、ここで、MSは、成型収縮率(%)、d1〜d4は、測定線に沿って測った試験片50の環状帯の外径(mm)であり、D1〜D4は、23±2℃の室温で測ったd1〜d4に対応する金型の溝の外径(mm)である。
【0051】
加熱収縮率は、次式によって算出した。式:PS48またはPS168=1/4{(d1−d1′)/d1+(d2−d2′)/d2+(d3−d3′)/d3+(d4−d4′)/d4}×100、ここで、PS48は、加熱処理48時間の場合の加熱収縮率(%)であり、PS168は、加熱処理168時間の場合の加熱収縮率(%)である。d1〜d4は、測定線に沿って測った試験片50の環状帯の外径(mm)であり、d1′〜d4′は、前記加熱処理条件で加熱処理後23±2℃の室温で測ったd1〜d4に対応する寸法(mm)である。
【0052】
工具ホルダー10A,10Bの曲げ強さおよび曲げ弾性率は、成型用樹脂組成物17から試験片51を作り、その試験片51を使用してJIS K 6911に準拠して測定した。寸法変化率の測定に利用した装置は、クロスヘッド移動速度を一定に保持可能な材料試験機(材料試験機の標準荷重に対して許容誤差が±1%、破断時の荷重がその容量の15%以上85%以下)と、先端に5±0.1mmの丸みを有する金属製の加圧くさびと、先端に2±0.2mmの丸みを有して支点間距離を調節可能な金属製の支点と、JIS B 7502に規定された外側マイクロメータ(寸法測定器)と、JIS B 7503に規定された目盛0.01mmのダイヤルゲージと、JIS B 7507に規定された最小読み取り値0.02mmのノギスとを使用した。試験片51は、図7に示すように、長さ80mm以上、高さ4±0.2mm、幅10±0.5mmに成型した。
【0053】
試験片51の高さおよび幅を外側マイクロメータを用いてそれぞれ0.01mmまで正確に測った。次に、16h±0.5mmの支点間距離で試験片51を支え、図8に示すように、その中央に加圧くさびで荷重を加え、試験片51が折れたときの荷重を1Nまで測定した。試験片51の折れた箇所が試験片51を3等分した中央部以外である場合、それを試験値に採用せず、再試験をした。荷重速度は、次式によって算出した。式:V=(h/2t)±0.2、ここで、Vは、荷重速度(mm/min)、hは、試験片51の高さ(mm)であり、tは、時間(1min)である。なお、曲げ弾性率を測定する場合は、荷重−たわみ曲線が作図できるように、頻繁に荷重およびたわみを同時に読み取った。
【0054】
曲げ強さは、次式によって算出した。式:σfB=3PL/2Wh、ここで、σfBは、曲げ強さ(MPa)、Pは、試験片51が折れたときの荷重(N)であり、Lは、支点間距離(mm)、Wは、試験片51の幅(mm)である。hは、試験片51の高さ(mm)である。
【0055】
曲げ弾性率は、次式によって算出した。式:E=(L/4Wf)・(F/Y)、ここで、Eは、曲げ弾性率(MPa)、Lは、支点間距離(mm)であり、Wは、試験片51の幅(mm)、hは、試験片51の高さ(mm)である。F/Yは、荷重−たわみ曲線の直線部分の勾配(N/mm)である。
【0056】
図9は、第1混練工程の一例を説明する図あり、図10は、図9の第1混練工程から続く乾燥工程の一例と乾燥工程から続く第1冷却工程の一例とを説明する図である。図11は、図10の第1冷却工程から続く第2混練工程の一例を説明する図であり、図12は、図11の第2混練工程から続く第2冷却工程の一例を説明する図である。図12では、成型用樹脂組成物17の図示を省略している。図5に示す成型用樹脂組成物17は、第1混練工程→乾燥工程→第1冷却工程→第2混練工程→第2冷却工程の各工程を経ることによって製造される。
【0057】
第1混練工程では、液状フェノール樹脂20(熱硬化性合成樹脂)と綿糸21および綿布21(天然繊維材料)の少なくとも一方とメチルアルコール22(有機溶剤)とを攪拌しつつ混練するミキサー23が利用される。ミキサー23には、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等を利用することができる。ミキサー23は、図9に示すように、周壁24および底壁25から画成された所定容積の攪拌混練槽26と、攪拌混練槽26内に設置されたスクリュ27と、周壁24を囲繞する加熱パイプ28とから形成されている。ミキサー23には、加熱パイプ28に蒸気または温水を送る加熱ユニット29が附属している。蒸気または温水は、加熱パイプ28と加熱ユニット29とを循環する。
【0058】
第1混練工程における手順の一例は、以下のとおりである。液状フェノール樹脂20と綿糸21および綿布21の少なくとも一方とメチルアルコール22とをミキサー23の攪拌混練槽26に投入した後、ミキサー23のスイッチをONにする。スイッチをONにすると、ミキサー23と加熱ユニット29とが稼動し、スクリュ27が回転するとともに、加熱ユニット29から加熱パイプ28に蒸気または温水が送られ、加熱パイプ28内を流動する蒸気または温水によってミキサー温度が50〜60℃に加熱される。
【0059】
攪拌混練槽26では、液状フェノール樹脂20と綿糸21や綿布21とメチルアルコール22とが加熱されつつ、スクリュ27によって攪拌混練され、所定時間経過後に複数個の樹脂含浸繊維材料30が作られる。なお、ミキサー温度が50℃未満では、フェノール樹脂20の反応が進まず、綿糸21全域や綿布21(綿糸21の集合物)全域にフェノール樹脂20を含浸させることができない。ミキサー温度が60℃を超過すると、フェノール樹脂20の反応が早期に進み、フェノール樹脂20の物性が所期するそれから変化してしまう場合がある。
【0060】
攪拌混練槽26では、メチルアルコール22によって液状フェノール樹脂20の粘度が低下するとともに、スクリュ27による混練とミキサー温度とによって液状フェノール樹脂20の反応が緩慢に進み、綿糸21全域や綿布21(綿糸21の集合物)全域にフェノール樹脂20が含浸し、綿糸21全体や綿布21(綿糸21の集合物)全体にフェノール樹脂20がコーティングされる。なお、綿布21は、ミキサー23のスクリュ27によって開繊され、綿糸21の集合物となる。有機溶剤には、メチルアルコール22(メタノール)の他に、エチルアルコール(エタノイール)、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、活性アルミアルコールのうちの少なくとも一つを使用することもできる。
【0061】
第1混練工程では、綿糸21や綿布21(天然繊維材料)に対する液状フェノール樹脂20(熱硬化性合成樹脂)の投入量(重量比)が綿糸21や綿布21の100重量%に対して液状フェノール樹脂20が10〜40重量%の範囲、好ましくは、25〜30重量%の範囲にある。フェノール樹脂20の投入量が10重量%未満では、綿糸21全体や綿布21全体をフェノール樹脂20でコーティングすることができず、本発明の成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができない。フェノール樹脂20の投入量が40重量%を超過すると、樹脂含浸繊維材料30の操作性が低下するとともに、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bに靱性や弾性を付与することができず、ホルダー10A,10Bの剛性や耐衝撃性を向上させることができない。なお、第1混練工程で使用される布状形態の綿布21(天然繊維材料)の縦横寸法は、0.5×0.5〜20×20mmの範囲にあり、糸状形態の綿糸21(天然繊維材料)の長さ寸法は、0.1〜10mmの範囲にある。
【0062】
第1混練工程において液状フェノール樹脂20と綿糸21および綿布21の少なくとも一方とメチルアルコール22とを所定時間、所定温度で攪拌混練してそれら樹脂含浸繊維材料30が作られた後、図10の乾燥工程に進む。乾燥工程では、それら樹脂含浸繊維材料30を乾燥させるとともに、それら樹脂含浸繊維材料30を冷却させる乾燥冷却装置31が利用される。乾燥冷却装置31は、図10に示すように、開閉可能な扉32を有する収納箱33と、収納箱33の内部に設置された複数の棚枠34と、棚枠34に乗せる複数の網棚35と、ヒータ(図示せず)によって所定温度に加熱された空気(温風)または室温の空気を収納箱33内に送る送風機36と、収納箱33内の空気を箱33外に排気する排気管37とから形成されている。温風の温度は、110〜130℃である。収容箱33と送風機36とは、送風管38を介して接続されている。それら網棚35は、収容箱33に出し入れ可能である。なお、送風機36は、所定温度に冷却された冷風を収納箱33に送る空調機能を有していてもよい。
【0063】
乾燥工程における手順の一例は、以下のとおりである。収納箱33の扉32を開けて箱33から網棚35を取り出し、第1混練工程において作られた樹脂含浸繊維材料30をミキサー23の攪拌混練槽26から取り出した後、それら樹脂含浸繊維材料30をそれら網棚35の上に載せる。樹脂含浸繊維材料30を載せた網棚35を再び収納箱33の内部に収納し、扉32を閉めて乾燥冷却装置31のスイッチをONにする。スイッチをONにすると、送風機36が稼動し、ヒータによって加熱された所定温度の温風が送風管38から収納箱33の内部に流入する。収納箱33の内部では、温風が収納箱33を循環した後、排気管37から収納箱33の外部に排気される。樹脂含浸繊維材料30は、収納箱33を循環する温風によって乾燥する。
【0064】
温風を所定時間収納箱33内に流入させ、温風を所定時間樹脂含浸繊維材料30に吹き付けて樹脂含浸繊維材料30を乾燥させた後、第1冷却工程に進む。第1冷却工程では、図10の乾燥冷却装置31が利用される。所定温度の温風の送風時間が経過すると、ヒータがOFFになり、温風が室温の空気に変わる。室温の空気は送風管38から収納箱33の内部に流入する。収納箱33の内部では、室温の空気が収納箱33を循環した後、排気管37から収納箱33の外部に排気される。樹脂含浸繊維材料30は、収納箱33を循環する室温の空気によって室温にまで冷却される。なお、送風機36が空調機能を有する場合、送風機36によって所定温度に冷却された冷風が送風管38から収納箱33の内部に流入する。収納箱33の内部では、冷風が収納箱33を循環した後、排気管37から収納箱33の外部に排気される。樹脂含浸繊維材料30は、収納箱33を循環する冷風によって所定温度に冷却される。
【0065】
第1冷却工程において室温の空気または冷風を樹脂含浸繊維材料30に所定時間吹き付けて樹脂含浸繊維材料30を冷却した後、第2混練工程に進む。第2混練工程では、樹脂含浸繊維材料30と液状フェノール樹脂20(熱硬化性合成樹脂)とガラス繊維39(無機繊維)と攪拌しつつ混練する図9と同様のミキサー23が利用される。第2混練工程における手順の一例は、以下のとおりである。樹脂含浸繊維材料30と液状フェノール樹脂20とガラス繊維39とをミキサー23の攪拌混練槽26に投入した後、ミキサー23のスイッチをONにする。スイッチをONにすると、ミキサー23と加熱ユニット29とが稼動し、スクリュ27が回転するとともに、加熱ユニット29から加熱パイプ28に蒸気または温水が送られ、加熱パイプ28内を流動する蒸気または温水によってミキサー温度が55〜65℃に加熱される。
【0066】
攪拌混練槽26では、樹脂含浸繊維材料30と液状フェノール樹脂20とガラス繊維39とが加熱されつつ、スクリュ27によって攪拌混練され、所定時間経過後に、樹脂含浸繊維材料30と液状フェノール樹脂20とガラス繊維39とが混和した図5に示す立体形状の複数個の成型用樹脂組成物17が作られる。攪拌混練槽26の内部では、ミキサー温度55〜65℃で加熱された樹脂含浸繊維材料30とフェノール樹脂20とガラス繊維39とがそれらの摩擦熱によってそれらの反応熱が90〜95℃になる。第2混練工程では、樹脂含浸繊維材料30とフェノール樹脂20とガラス繊維39との反応熱が90〜95℃の範囲に保持される。なお、攪拌混練槽26の内部に投入する樹脂含浸繊維材料30と液状フェノール樹脂20とガラス繊維39との総重量と、ミキサー温度と、スクリュ27の回転速度との相関関係により、それらの摩擦熱が定まるから、反応熱を90〜95℃の範囲に保持するには、前記相関関係に基づいて総重量に対するミキサー温度(55〜65℃の範囲)やスクリュ27の回転速度を割り出し、そのミキサー温度でミキサー23を加熱するとともに、その回転速度でスクリュ27を回転させる。
【0067】
なお、ミキサー温度が55℃未満では、脂含浸繊維材料30とフェノール樹脂20とガラス繊維39との反応熱を90〜95℃の範囲に保持することができず、綿糸21全域または綿布21(綿糸21の集合物)全域をフェノール樹脂20でコーティングすることができない。ミキサー温度が65℃を超過すると、脂含浸繊維材料30とフェノール樹脂20とガラス繊維39との反応熱が95℃を超過し、フェノール樹脂20の反応が早期に進み、フェノール樹脂20の物性や綿糸21または綿布21の物性が所期するそれから変化してしまう場合がある。
【0068】
第2混練工程では、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20の100重量%に対してガラス繊維39が5〜15重量%の範囲、好ましくは、8〜12重量%の範囲にある。ガラス繊維39の投入量が5重量%未満では、成型用樹脂組成物17に対するガラス繊維39の割合が少なく、ガラス繊維39の補強機能を十分に利用することができない。ガラス繊維39の投入量が15重量%を超過すると、成型用樹脂組成物17に対するガラス繊維39の割合が多すぎ、成型用樹脂組成物17から作られた工具ホルダー10A,10Bの表面に多くのガラス繊維39が露出し、ホルダー10A,10Bに切削工具12を着脱するときにガラス繊維39によって工具12が摩耗してしまう場合がある。なお、第2混練工程において使用されるガラス繊維39の長さ寸法は、1〜20mmの範囲、好ましくは、1.3〜1.5mmの範囲にあり、ガラス繊維39のフィラメント径は、6〜13μmの範囲にある。
【0069】
第2混練工程では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20の100重量%に対して樹脂含浸繊維材料30が100〜150重量%の範囲、好ましくは、115〜130重量%の範囲にある。樹脂含浸繊維材料30の投入量が100重量%未満では、成型用樹脂組成物17に対する綿布21や綿糸21の割合が少なく、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bに靱性や弾性を付与することができず、ホルダー10A,10Bの剛性や耐衝撃性を向上させることができない。樹脂含浸繊維材料30の投入量が150重量%を超過すると、成型用樹脂組成物17に対する綿布21や綿糸21の割合が多すぎ、綿布21全体や綿糸21全体をフェノール樹脂20でコーティングすることができず、成型用樹脂組成物17を使用して成型された工具ホルダー10A,10Bの耐水性や耐湿性を向上させることができない。
【0070】
第2混練工程において液状フェノール樹脂20と樹脂含浸繊維材料30とガラス繊維39とを所定時間、所定温度で攪拌混練してそれら成型用樹脂組成物17が作られた後、図12の第2冷却工程に進む。第2冷却工程では、それら成型用樹脂組成物17を冷却させる冷却装置40が利用される。冷却装置40は、図12に示すように、周壁41および底壁42から画成された所定容積の攪拌槽43と、攪拌槽43内に設置された攪拌リボン44と、攪拌槽43に室温の空気を送風する送風機45とから形成されている。送風機45は、所定温度に冷却された冷風を攪拌槽43に送る空調機能を有していてもよい。
【0071】
第2冷却工程における手順の一例は、以下のとおりである。ミキサー23から攪拌混練槽26から成型用樹脂組成物17を取り出し、それら成型用樹脂組成物17を冷却装置40の攪拌槽43に投入した後、冷却装置40のスイッチをONにする。スイッチをONにすると、送風機45が稼動し、室温の空気が攪拌槽43の内部に送風されるとともに、攪拌リボン44が回転する。攪拌槽43の内部では、それら成型用樹脂組成物17が攪拌リボン44によって攪拌されつつ、それら成型用樹脂組成物17が室温の空気によって冷却される。なお、送風機45が空調機能を有する場合、送風機45によって所定温度に冷却された冷風が攪拌槽43の内部に送風される。攪拌槽43の内部では、それら成型用樹脂組成物17が冷風によって所定温度に冷却される。室温の空気または冷風を所定時間攪拌槽43内に流入させ、空気または冷風を所定時間成型用樹脂組成物17に吹き付けて成型用樹脂組成物17を冷却し、図5の成型用樹脂組成物17が製造される。
【0072】
以下、前記製造方法によって製造された成型用樹脂組成物17の実施例および比較例を説明するとともに、それら実施例や比較例の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bの寸法変化率(%)、曲げ強さ(MPa)、曲げ弾性率(MPa)について説明する。なお、工具ホルダー10A,10Bの寸法変化率は、上述したように、試験片50を使用してJIS K 6911に準拠して測定したとおりである。また、工具ホルダー10A,10Bの曲げ強さおよび曲げ弾性率は、上述したように、試験片51を使用してJIS K 6911に準拠して測定したとおりである。
【0073】
実施例(1)では、液状フェノール樹脂20(熱硬化性合成樹脂)と綿布21(天然繊維材料)とメチルアルコール22(有機溶剤)とを攪拌混練した第1混練工程、乾燥工程、第1冷却工程によって樹脂含浸繊維材料30を作り、その樹脂含浸繊維材料30と液状フェノール樹脂20とガラス繊維39とを攪拌混練した後(第2混練工程)、成型用樹脂組成物17を冷却し(第2冷却工程)、成型用樹脂組成物17を製造した。
【0074】
実施例(1)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料30(105重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(8重量%)である。実施例(1)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10B(試験片50,51)の寸法変化率は0.18(%)、曲げ強さは110(MPa)、曲げ弾性率は12500(MPa)であった。実施例(1)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bは、寸法変化率が小さく、良好な曲げ強さおよび曲げ弾性率を示した。
【0075】
実施例(2)では、実施例(1)と同一の工程によって成型用樹脂組成物17を製造した。実施例(2)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料30(125重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(9重量%)である。実施例(2)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10B(試験片50,51)の寸法変化率は0.16(%)、曲げ強さは115(MPa)、曲げ弾性率は12000(MPa)であった。実施例(2)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bは、寸法変化率が小さく、良好な曲げ強さおよび曲げ弾性率を示した。
【0076】
実施例(3)では、実施例(1)と同一の工程によって成型用樹脂組成物17を製造した。実施例(3)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料30(145重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(12重量%)である。実施例(3)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10B(試験片50,51)の寸法変化率は0.13(%)、曲げ強さは120(MPa)、曲げ弾性率は11800(MPa)であった。実施例(3)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bは、寸法変化率が小さく、良好な曲げ強さおよび曲げ弾性率を示した。
【0077】
実施例(4)では、液状フェノール樹脂20と綿糸綿布21(綿糸1対綿布1)とメチルアルコール22とを攪拌混練した第1混練工程、乾燥工程、第1冷却工程によって樹脂含浸繊維材料30を作り、その樹脂含浸繊維材料30と液状フェノール樹脂20とガラス繊維39とを攪拌混練した後(第2混練工程)、成型用樹脂組成物17を冷却し(第2冷却工程)、成型用樹脂組成物17を製造した。
【0078】
実施例(4)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料30(105重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(8重量%)である。実施例(4)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10B(試験片50,51)の寸法変化率は0.17(%)、曲げ強さは110(MPa)、曲げ弾性率は12000(MPa)であった。実施例(4)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bは、寸法変化率が小さく、良好な曲げ強さおよび曲げ弾性率を示した。
【0079】
実施例(5)では、実施例(4)と同一の工程によって成型用樹脂組成物17を製造した。実施例(5)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料39(125重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(9重量%)である。実施例(5)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10B(試験片50,51)の寸法変化率は0.15(%)、曲げ強さは120(MPa)、曲げ弾性率は11900(MPa)であった。実施例(5)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bは、寸法変化率が小さく、良好な曲げ強さおよび曲げ弾性率を示した。
【0080】
実施例(6)では、実施例(4)と同一の工程によって成型用樹脂組成物17を製造した。実施例(6)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料30(145重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(12重量%)である。実施例(5)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10B(試験片50,51)の寸法変化率は0.13(%)、曲げ強さは115(MPa)、曲げ弾性率は11800(MPa)であった。実施例(5)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bは、寸法変化率が小さく、良好な曲げ強さおよび曲げ弾性率を示した。
【0081】
比較例(1)では、液状フェノール樹脂20(熱硬化性合成樹脂)と綿布21(天然繊維材料)とメチルアルコール22(有機溶剤)とを攪拌混練した第1混練工程、乾燥工程、第1冷却工程によって樹脂含浸繊維材料30を作り、その樹脂含浸繊維材料30と液状フェノール樹脂20とガラス繊維39とを攪拌混練した後(第2混練工程)、成型用樹脂組成物17を冷却し(第2冷却工程)、成型用樹脂組成物17を製造した。
【0082】
比較例(1)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料39(90重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(8重量%)である。比較例(1)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10B(試験片50,51)の寸法変化率は0.12(%)、曲げ強さは90(MPa)、曲げ弾性率は9000(MPa)であった。比較例(1)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bは、寸法変化率は小さいものの、曲げ強さや曲げ弾性率が不足していた。
【0083】
比較例(2)では、比較例(1)と同一の工程によって成型用樹脂組成物17を製造した。比較例(2)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料30(160重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(9重量%)である。比較例例(2)の成型用樹脂組成物17では、それを使用した成型加工においてそれの流動性が悪く、成型加工に適さないことが分かった。
【0084】
比較例(3)では、液状フェノール樹脂20と綿糸綿布21(綿糸1対綿布1)とメチルアルコール22とを攪拌混練した第1混練工程、乾燥工程、第1冷却工程によって樹脂含浸繊維材料30を作り、その樹脂含浸繊維材料30と液状フェノール樹脂20とガラス繊維39とを攪拌混練した後(第2混練工程)、成型用樹脂組成物17を冷却し(第2冷却工程)、成型用樹脂組成物17を製造した。
【0085】
比較例(3)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料30(90重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(8重量%)である。比較例(3)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10B(試験片50,51)の寸法変化率は0.13(%)、曲げ強さは90(MPa)、曲げ弾性率は8500(MPa)であった。比較例(3)の成型用樹脂組成物17を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bは、寸法変化率は小さいものの、曲げ強さや曲げ弾性率が不足していた。
【0086】
比較例(4)では、比較例(3)と同一の工程によって成型用樹脂組成物17を製造した。比較例(4)では、液状フェノール樹脂20に対する樹脂含浸繊維材料30の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して樹脂含浸繊維材料30(160重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(9重量%)である。比較例(4)の成型用樹脂組成物17では、それを使用した成型加工においてそれの流動性が悪く、成型加工に適さないことが分かった。
【0087】
比較例(5)は、液状フェノール樹脂20と綿布21とガラス繊維39とを攪拌混練した後(混練工程)、成型用樹脂組成物を冷却し(冷却工程)、成型用樹脂組成物を製造した。比較例(5)では、液状フェノール樹脂20に対する綿布21の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対して綿布21(100重量%)であり、液状フェノール樹脂20に対するガラス繊維39の投入量(重量比)がフェノール樹脂20(100重量%)に対してガラス繊維39(8重量%)である。比較例(5)の成型用樹脂組成物を使用して成型した工具ホルダー10A,10B(試験片50,51)の寸法変化率は0.36(%)、曲げ強さは115(MPa)、曲げ弾性率は12000(MPa)であった。比較例(5)の成型用樹脂組成物を使用して成型した工具ホルダー10A,10Bは、良好な曲げ強さや曲げ弾性率を有しているものの、寸法変化率が大きいことが分かった。
【0088】
前記実施例や比較例から明らかなように、本発明の成型用樹脂組成物17を使用することで、それから作られた工具ホルダー10A,10B(成型品)に靱性や弾性を付与することができ、それを使用して機械的強度や熱剛性、耐衝撃性が高い工具ホルダー10A,10Bを作ることができる。この成型用樹脂組成物17は、フェノール樹脂20が綿糸21全体や綿布21全体に含浸し、綿糸21全域や綿布21全域がフェノール樹脂20にコーティングされているから、フェノール樹脂20が障壁となって水分が綿糸21や綿布21に滲入することはなく、それから作られた工具ホルダー10A,10Bが高い耐水性や耐湿性を有し、工具ホルダー10A,10Bに水分が付着したとしても、その水分が工具ホルダー10A,10Bに滲入することがなく、優れた寸法安定性を有する工具ホルダー10A,10Bを作ることができる。
【符号の説明】
【0089】
10A 工具ホルダー
10B 工具ホルダー
12 切削工具
17 成型用樹脂組成物
20 フェノール樹脂(熱硬化性合成樹脂)
21 綿糸,綿布(天然繊維材料)
22 メチルアルコール(有機溶剤)
30 樹脂含浸繊維材料
39 ガラス繊維(無機繊維)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性合成樹脂と、無機繊維と、天然繊維材料全体に前記熱硬化性合成樹脂を含浸させた樹脂含浸繊維材料とを混和することから作られ、前記熱硬化性樹脂100重量%に対する前記無機繊維の重量比が、5〜15重量%の範囲にあり、前記熱硬化性樹脂100重量%に対する前記樹脂含浸繊維材料の重量比が、100〜150重量%の範囲にあることを特徴とする成型用樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂含浸繊維材料では、前記天然繊維材料100重量%に対する熱硬化性合成樹脂の重量比が10〜40重量%の範囲にある請求項1に記載の成型用樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂含浸繊維材料では、前記熱硬化性合成樹脂に有機溶剤を加えてその粘度を低下させた状態で該熱硬化性合成樹脂を前記天然繊維材料に含浸させることで、前記天然繊維全体が前記熱硬化性合成樹脂にコーティングされている請求項1または請求項2に記載の成型用樹脂組成物。
【請求項4】
前記天然繊維材料が、布状と糸状との少なくとも一方の形態を有し、前記布状の天然繊維材料の縦横寸法が、0.5×0.5〜20×20mmの範囲にあり、前記糸状の天然繊維材料の長さ寸法が、0.1〜10mmの範囲にある請求項1ないし請求項3いずれかに記載の成型用樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機繊維の長さ寸法が、1〜20mmの範囲、前記無機繊維のフィラメント径が、6〜13μmの範囲にある請求項1ないし請求項4いずれかに記載の成型用樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性合成樹脂が、フェノール系の樹脂であり、前記天然繊維材料が、綿糸および綿布の少なくとも一方であり、前記無機繊維が、ガラス繊維である請求項1ないし請求項5いずれかに記載の成型用樹脂組成物。
【請求項7】
前記成型用樹脂組成物が、水溶性切削油を用いた加工に利用される工具の工具ホルダーの成型材料として使用され、前記成型用樹脂組成物を使用して成型された前記工具ホルダーの寸法変化率が、0.1〜0.2%の範囲にある請求項1ないし請求項6いずれかに記載の成型用樹脂組成物。
【請求項8】
前記成型用樹脂組成物を使用して成型された前記工具ホルダーの曲げ強さが、100〜130MPaの範囲にあり、前記成型用樹脂組成物を使用して成型された前記工具ホルダーの曲げ弾性率が、11000〜12500MPaの範囲にある請求項7に記載の成型用樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−36310(P2012−36310A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178868(P2010−178868)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(510217677)
【Fターム(参考)】