説明

成型装置および成型方法

【課題】 製品精度を確保し得る成型装置の提供。
【解決手段】 主成型部材と、アンダーカット部を成型可能な突出部を有する補助成型部材との組合わせから構成され、補助成型部材は突出部がアンダーカット部から離型可能な傾斜角度をもって主成型部材に対して内外傾斜方向に上昇下降可能に支持されて、主成型部材側に下降した成型位置と主成型部材から上昇して突出部がアンダーカット部から側方に移動した離型位置とに切替え自在とされ、突出部がアンダーカット部に係止した状態で主成型部材に対して上昇することで突出部がアンダーカット部から側方に離れるよう主成型部材に案内されて離型位置となり、且つ突出部がアンダーカット部から離れた後は自重のみで主成型部材に対して下降して成型位置に戻る成型装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカット部を有する合成樹脂成型品を製造するための成型装置および成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品容器等の製品を合成樹脂製シートから成型する際に、アンダーカット部を形成する場合がある。アンダーカット部を有する成型品を製造する際に用いる成型装置として、例えば特許文献1に示すものがある。
【0003】
この特許文献1に記載されている成型装置は、主金型と補助金型との組合わせからなる。補助金型には、アンダーカット部を成型可能な突出部が設けられている。そして、補助金型は、その突出部がアンダーカット部から離型可能な傾斜角度をもって主金型に対し斜め外側上方に上昇するよう構成されている。
【0004】
成型品を成型する際には、補助金型は下方にあってこれはエアシリンダ等の駆動装置によりその位置に保持されている。
また、補助金型を下方に位置させるためにバネによる付勢力を利用した構成も提案されている。
【特許文献1】特開2001−301018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記成型装置において、通常では補助金型は成型品の形状や大きさに応じて複数個設けられ、エアシリンダ等の駆動装置も補助金型の数に応じて複数個設けられている。そして、離型を行う際には駆動装置を同時に駆動させないと補助金型どうしの上下方向位置に差が生じる。換言すれば、離型を行う際には駆動装置を同時に駆動させないと、成型された成型品の引かれる量が部分的に異なることになり、そうすると、成型品が変形する等して製品精度が確保できなくなる。
このため製品を確保するには、複数個の駆動装置を同じタイミングで駆動装置を駆動させる必要があるが、このような制御は駆動装置が多くなればなるほど難しい。
【0006】
また、補助金型をバネの付勢力で引くようにしたものでは、補助金型を上方に移動して離型させるには成型された成型品の端部を把持してバネの付勢力に抗して行うことになるが、成型品のアンダーカット部と突出部とが係止した状態から成型品を上昇させて離型させるときでもバネによって引かれているから、補助金型を上方に移動させるのにバネを設けてある分だけ大きな力を必要とする。
したがって、補助金型を上方に移動させて突出部を成型品のアンダーカット部から離型させるようにすると、バネを設けてある分だけ成型品が突出部と把持部分との間で強く引かれて変形し易く、製品精度が確保できないばかりか、成型品が破損してしまうおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題に鑑み、製品精度を確保し得る成型装置および成型方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、合成樹脂製シートからなる成型品の主形状面を成型する主成型部材と、前記成型品に該成型品の壁面から内側に突出したアンダーカット部を成型可能な突出部を有する補助成型部材との組合わせから構成され、前記補助成型部材は、その突出部が成型品のアンダーカット部から離型可能な傾斜角度をもって主成型部材に対して内外傾斜方向に上昇下降可能に支持されることで、主成型部材側に下降した成型位置と、主成型部材から上昇して突出部が成型品のアンダーカット部から側方に移動した離型位置とに切替え自在とされた成型装置であって、前記補助成型部材はその突出部が成型品のアンダーカット部に係止した状態で主成型部材に対して上昇することで該突出部が成型品のアンダーカット部から側方に離れるよう主成型部材に案内されて離型位置となり、且つ突出部が成型品のアンダーカット部から離れた後には自重のみにより主成型部材に対して下降して成型位置に戻るものであることを特徴としている。
【0009】
上記構成において、補助成型部材は成型品を成型する際には成型位置にあって、主成型部材を離型する際には、補助成型部材の突出部と成型品のアンダーカット部とが係止しており、成型品を主成型部材に対して相対的に上昇させて補助成型部材が斜め外側上方に上昇することによって突出部が成型品のアンダーカット部から滑りつつ側方に離れて離型し、突出部が成型品のアンダーカット部から離れると、補助成型部材はその自重のみにより主成型部材に対して斜め内側方向に下降して成型位置に戻る。
このように、成型後の成型品によって各補助成型部材をその自重に抗して上昇させて突出部を成型品のアンダーカット部から離型し、その後、補助成型部材は自重のみによって下降する。したがって、補助成型部材を移動させるのに駆動装置等を要せず全体の構成が簡素化され、また、駆動装置等を駆動させる必要がないから、成型品の一部に駆動装置等の作動タイミングのずれの発生による無理な力が働かず、したがって成型品を変形させたり損傷させたりするのを抑えることができる。
【0010】
本発明の成型装置では、補助成型部材を主成型部材の内外傾斜方向に案内するための案内凹部が主成型部材の上下方向に対して斜め方向に傾斜して形成され、補助成型部材は、前記案内凹部に摺動自在に嵌合する被案内部を有していることを特徴としている。
【0011】
上記構成において、案内凹部に被案内部が摺動することで補助成型部材が主成型部材の内外傾斜方向に昇降する。
【0012】
本発明の成型装置では、補助成型部材は杆状の被案内部と、その上部に配置されて突出部を有する補助成型部とから構成され、前記補助成型部材は、前記突出部が成型品のアンダーカット部から側方に離れて成型品のアンダーカット部から離型した上下方向位置において、該補助成型部材の重心が前記被案内部側で且つ案内凹部内に位置付けられていることを特徴としている。
【0013】
上記構成において、突出部が成型品のアンダーカット部から斜め外側方向に離れる(移動する)と、補助成型部材を保持する部分がなくなり、補助成型部材の重心が被案内部側で且つ案内凹部内に位置付けられているから、補助成型部材は、その被案内部が案内凹部に案内されて自重により、よりスムースに下降する。
【0014】
被案内部は補助成型部に比べて比重の重い材料から形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、補助成型部材が斜め下方に下降する際に、これが被案内部側から下方に引かれることになるから、補助成型部材の自然下降動作がよりスムースになる。
【0015】
本発明の成型装置では、補助成型部材は、複数に分割された単位補助成形型を、主成型部材の外周部分に互いに隣合うように複数並べられてなることを特徴としている。
【0016】
上記構成において、一個の補助成型部材の重量を調整し易くなるから、成形品によって保持し易く、しかも補助成型部材を下降し易い重量に設定し易くなる。
また、本成型装置で成型される容器の全周にわたってアンダーカット部を形成することができる。
なお、補助成型部材の重量は、成型する合成樹脂製シートに合わせて設定するようにすることが好ましい。具体的には30〜400gであり、より好ましくは50〜200gである。
【0017】
本発明は、合成樹脂製シートからなる成型品の主形状面を成型する主成型部材と、前記成型品に該成型品の壁面から内側に突出したアンダーカット部を成型可能な突出部を有する補助成型部材との組合わせから構成された成型装置を用いて、前記成型品を成型する成型方法であって、前記成型品のアンダーカット部と突出部とが係止した成型品の端部を把持し、成型品のアンダーカット部と突出部との係止力を用いて成型品を主成型部材に対して相対的に上昇させることで補助成型部材をその自重に抗して斜め外側方向に上昇させて、補助成型部材の突出部を成型品のアンダーカット部に対して側方に離れさせ、突出部を成型品のアンダーカット部に対して離れさせた後には、補助成型部材をその自重のみにより主成型部材に対して斜め内側方向に下降させることを特徴としている。
【0018】
上記方法によれば、補助成型部材の突出部が成型品のアンダーカット部に係止した状態では、成型品を主成形型部材に対して相対的に上昇させると、成型品によって補助成型部材が保持されてこれが上昇するから、突出部が成型品のアンダーカット部から側方に離れて成型品から補助成型部材を離型させることができ、離型させた後に補助成型部材が自重によって下降するから、補助成型部材の駆動装置等が不要になり、駆動装置等を駆動させる必要がないから、駆動装置等の作動タイミングのずれによる成型品に無理な力が働かず、したがって成型品を変形させたり損傷させたりするのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の成型装置および成型方法によれば、成型品によって補助成型部をその自重に抗して上昇させて突出部をアンダーカット部から離型し、その後、補助成型部は自重のみによって下降するから、補助成型部材を移動させる駆動装置等を要せず全体の構成が簡素化され、駆動装置等を駆動させる必要がないから、駆動装置等の作動タイミングのずれによる無理な力が成型品に働かず、したがって成型品の変形や損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施形態を、成型品としての食品容器の成型装置を例に説明する。図1は成型装置の平面図、図2は側面図、図3は正面図、図4はひとつの成型装置の平面図、図5は成型動作を示す側面図である。
特に、図4および図5では、右半分に補助成型部材が成型位置にある状態を示し、左半分に補助成型部材が離型位置にある状態を拡大して示している。
【0021】
これらの図に示すように、本発明の実施形態に係る成型装置1は、複数の主成型部材2と各主成型部材2にそれぞれ複数設けられた補助成型部材3との組合わせから構成されている。なお、主成型部材2および補助成型部材3はともに金型であり、雌型60として主成型部材2と補助成型部材3とが組合わされる。
【0022】
主成型部材2は、合成樹脂製シートから食品容器4を所定の主外面形状に成型するもので、全体として複数個が縦横に、且つ隣合うよう同一平面に並べられている。具体的には、図では縦横それぞれ四個の主成型部材2が設けられて、合計十六個の主成型部材2によって主金型全体が構成されている。
【0023】
ひとつの主成型部材2は、平面視矩形の躯体5に外面形状成形用の凹状の成形面6がひとつ形成されている。各主成型部材2における成形面6は同一径を有しており、その外形は平面視して円形に形成されている。
【0024】
成形面6は、主成型部材2の上面の中心部に配置されており、上面における成形面6の外周部相当部分6aは、補助成型部材3が装着可能な分だけ残されて、補助成型部材装着面7とされている。この補助成型部材装着面7には、後に詳述する、補助成型部材3の補助成型部8および被案内部10が斜め上下方向に摺動自在に嵌合可能な凹部11が形成されている。
【0025】
補助成型部材3は、食品容器4にその縦壁面16から径方向内方(内側)に突出したアンダーカット部13を成型可能な突出部14を有するものである。補助成型部材3は各主成型部材2に複数個(この実施形態では八個)設けられている。ここで、各補助成型部材3の構成は同一であるから、一個の補助成型部材3、すなわち単位補助型についてその構成を説明する。
【0026】
なお、食品容器4は、その上部に別に成型される蓋体(図示せず)の外周部が嵌合する環状の嵌合部15を有し、この嵌合部15は、前記縦壁面16を有しており、アンダーカット部13は、縦壁面16の外周部の全周に、食品容器4の内径側(内側)に向けて突出するよう形成される。
【0027】
補助成型部材3は、杆状の前記被案内部10と、その上部に配置されて突出部14を有する前記補助成型部8とから構成されている。一個の被案内部10は、これらが平面視して複数個(八個)周方向に隣合うよう組合わされることで環状になるよう、平面視して湾曲している。アンダーカット部13を成型する突出部14は、アンダーカット部13と相対形状であり、補助成型部8の上部に一体的に形成され、且つ突条形状として補助成型部8と同一周方向長さに形成されている。
【0028】
突出部14は、平面状の上面17と、上面17の径方向内方端から補助成型部8の上面の内径側領域に向け、且つ径方向外方に向けて下傾斜する第一内径面18とを有する。突出部14の上面17の径方向外方端からは面取り20を介してほぼ垂直方向に落ちる(わずかに径方向外方に向けて下傾斜する)第一外径面21が形成されている。なお、補助成型部8の上面の内径側領域と外径側領域とは互いに上下方向に位置ずれしており、この場合は内径側領域が外径側領域に比べて低い高さにある。
【0029】
アンダーカット部13を形成するための第一内径面18の水平方向に対する傾斜角度θ(図5の一部拡大部分参照)は、これが大きすぎると食品容器4のアンダーカットが不充分で前記蓋体を嵌合させても外れ易くなり、第一内径面18の傾斜角度が小さすぎると成型品を離型しにくくなるおそれがある。
このことから第一内径面18の傾斜角度θは、水平方向に対して50〜85°の範囲が好ましく、より好ましくは60〜80°としている。
また、成型品との滑りを良好にするために、第一内径面18には四フッ化エチレン樹脂等の摩擦係数を低下させる材料をコーティングしておくことが好ましい。
【0030】
補助成型部8には、前記上面の内径側領域の内径端部から垂直方向下方に向けて垂下する第二内径面22が形成されている。補助成型部8には、前記上面の外径側領域の外径端部から、水平方向Lに対して所定角度θ1だけ径方向内方に向けて傾斜して垂下する第二外径面23が形成されている。補助成型部8の底面24は水平面である。
【0031】
被案内部10は、補助成型部8の底面24に対して上部が径方向外方となるよう水平方向Lに対して所定角度θ2(傾斜角度に相当する)だけ傾斜して設けられている。この所定角度θ2は所定角度θ1より大きく設定されている。
換言すれば、水平方向Lを基準にして第二外径面23の傾斜は被案内部10の傾斜に比べて緩やかに設定されている。
【0032】
被案内部10は例えばボルト状体からなり、その胴部25の先端(上部)に雄ねじ26が形成されている。すなわち、補助成型部8の底面24には、中心が所定角度θ2だけ傾斜した雌ねじ(符号省略)が貫通することなく形成されている。
【0033】
ここで、所定角度θ1,θ2はアンダーカット部13の水平方向成分長さ、補助成型部材3の斜め方向への移動量等を考慮した上で、補助成型部材3が最も上位置に移動した状態、あるいは最上位置のやや手前で突出部14がアンダーカット部13から離れ得る角度に設定されている。
補助成型部材3の昇降動作を円滑に行わせるために、所定角度θ1,θ2としてそれぞれ45〜85°が好ましく、さらに好ましくは60〜75°としている。この場合、所定角度θ1,θ2は同一でもよいし異なっていてもよい。但し、補助成型部材3を昇降可能とするために、θ2≧θ1とする。
【0034】
胴部25の基端(下部)に、胴部25よりも大径の頭部27が形成されている。頭部27には被案内部10を回転させて雄ねじ26を雌ねじに螺合させるための工具を挿入する挿入部28が形成されている。
【0035】
ここで、補助成型部材装着面7に形成された凹部11について説明する。凹部11は補助成型部8が嵌脱自在な溝30と、溝30に連設されて被案内部10を斜め上下方向に案内する案内孔31とからなる。
【0036】
溝30は補助成型部8が嵌合可能なように平面視して部分環状に形成されている。溝30の底壁面32は補助成型部8の底面24に接離可能なように環状の平面に形成されている。溝30の内径壁面33は、補助成型部8の第二内径面22に接離可能なように湾曲して底壁面32から垂直に立設されている。溝30の外径壁面34は補助成型部8の第二外径面23に接離可能なように湾曲して第二外径面23と等しい傾斜とした傾斜面に形成されている。
【0037】
案内孔31は単位補助型に相当する領域毎に周方向一対で形成されており、何れも同様の構成であるので、ひとつの案内孔31について説明する。案内孔31は溝30側、すなわち上部の小径部35と下部の大径部36とを連続して形成されており、案内孔31の軸心方向は、所定角度θ2と同一に設定されている。
【0038】
案内孔31の小径部35は溝30の底面24の径方向長さとほぼ同一の径に形成されている。また、小径部35は被案内部10の胴部25に比べて大径に形成されている。小径部35と大径部36とは案内孔31の軸心方向に対して径方向に広がる段付き面37を介して連続されている。
大径部36の下端部は主成型部材2の下面に開放されている。
【0039】
小径部35の内周面に、自己潤滑性を有する合成樹脂製からなり、小径部35の内周面に嵌着する筒部39と鍔40とを有するスリーブ38が嵌着されている。鍔40は、段付き面37に当接するものである。
【0040】
上記構成に基づいて、補助成型部材3は、その突出部14が食品容器4のアンダーカット部13から離型可能な所定角度θ2をもって主成型部材2に対して内外傾斜方向に上昇下降可能に支持されており、主成型部材2側に下降した成型位置Xと、主成型部材2の補助成型部8が溝30から上昇して、突出部14がアンダーカット部13から側方に移動した離型位置Yとに切替え自在とされている。
【0041】
成型位置Xは、補助成型部材3の底面24が溝30の底壁面32に当接する位置である。また、補助成型部材3の成型位置Xにおいては、補助成型部8の第二内径面22が溝30の内径壁面33に径方向で当接し、補助成型部材3の第二外径面23が溝30の外径壁面34に径方向(上下方向)で当接している。
【0042】
そして、補助成型部材3はその突出部14がアンダーカット部13に係止した状態で主成型部材2に対して上昇することで突出部14がアンダーカット部13から側方に離れるよう主成型部材2に案内されて離型位置Yとなり、且つ突出部14がアンダーカット部13から離れた後には自重のみにより主成型部材2に対して下降して成型位置Xに戻る構成となっている。
【0043】
このように、突出部14がアンダーカット部13から離れた後には自重のみにより主成型部材2に対して下降して成型位置Xに戻るよう構成すべく、補助成型部材3はその離型位置Yにおいて、補助成型部材3の重心Gが被案内部10側で且つ案内凹部11内に位置付けられている。
【0044】
被案内部10は、補助成型部8に比べて比重の重い材料から形成されている。例えば、被案内部10は鉄から形成されており、補助成型部8はアルミニウムから形成されている。
【0045】
この実施形態における成型装置1における食品容器4の成型方法、すなわち主成型部材2および補助成型部材3の動作を中心とした成型動作を、特に図4および図5に基づいて説明する。この実施形態における成型方法では、雌型(キャビティ)60、すなわち主成型部材2、補助成型部材3および、図において、符号50で示す雄型(プラグ)を用いて行う。
【0046】
別に設けた不図示の真空成型機から合成樹脂製シートを、その流れ方向に沿う両側の端部で、把持手段Rによって把持し、合成樹脂製シートを加熱炉に搬送して、成型に適した状態となるまで加熱する。続いて、把持手段Rによって合成樹脂製シートを把持した状態で、成型部、すなわち主成型部材2および補助成型部材3の組合わせ成型部である雌型60の上方に対向するよう搬送して停止させる。
なお、成型品の成型前は雌型60の補助成型部材3はその自重により下降しており、補助成型部8の底面24溝30の底壁面32に載置するよう当接されており、補助成型部8の上面の内径側領域、補助成型部8の上面の外径側領域がそれぞれ補助成型部材装着面7と面一となった成型位置Xにある。
【0047】
そして、雌型60を上昇させることで合成樹脂製シートの下面から雌型60の上面部を当接させ、また、雄型50を下降させる。この際、雌型60の下側で真空弁を開き、雌型60に形成している真空孔から空気を吸引することで合成樹脂製シートと雌型60とで形成される食品容器形状空間51内を負圧にして、合成樹脂製シートを、成形面6を含む雌型60の上表面形状に沿わせるようにする。この場合、雄型50を雌型60に上方から嵌合する(雌型60および雄型50どうしを閉じる)ことで、合成樹脂製シートを均一に伸ばすことができ、突出部14形状に沿うように、逆抜き勾配部分であるアンダーカット部13が成型される。
【0048】
このように雌型60と雄型50とを閉じた状態を一定時間保持して、雌型60と雄型50とに合成樹脂製シートを接触させることで、合成樹脂製シートの熱を奪ってこれを硬化させて、成型品としての食品容器4を成型する。
【0049】
合成樹脂製シートの成型が終了すると、続いて雌型60および雄型50どうしを開く動作、すなわち離型動作を行うことになる。この場合、先ず雄型50を上昇させるが、これと同時に雄型50に形成した真空孔から圧縮空気を吐出させることで雄型50を成形品から離型する。
【0050】
雌型60については、前記真空弁を閉じ、雌型60を下降させながら真空孔から圧縮空気を吐出させて雌型60と成型品との真空状態を開放する。しかし、成型品のアンダーカット部13と補助成型部材3の突出部14とは、突出部14の第一内径面18によって係合しているから、雌型60と成型品との真空状態を開放(破壊)しただけでは、成型品から雌型60を離型することはできない。そして、成型品のアンダーカット部13と補助成型部材3の突出部14とは、突出部14の第一内径面18によって係合しているから、端部を把持手段Rで把持されたままの状態で、成型品は雌型60に引かれるようになる。
【0051】
補助成型部材3は、雌型60の主成型部材2に対して内外傾斜方向に上昇可能になっているから、成型品は雌型60に引かれるとその引っ張り動作によって、補助成型部材3の被案内部10がスリーブ38の筒部39に案内されて、成型位置Xから斜め上方に移動する。すなわち、補助成型部8の底面24が溝30の底壁面32から上方に離れ、補助成型部8の第二外径面23が溝30の外径壁面34から離れ、補助成型部8の第二内径面22が溝30の内径壁面33から離れて、突出部14がアンダーカット部13から側方に移動した離型位置Yとなる。
この状態は図5の左半分に示しており、アンダーカット部13を仮想線で示している。
【0052】
補助成型部材3が成型位置Xから離型位置Yとなる間は、成型品に働く力は、バネ等の付勢力はなく補助成型部材3の自重のみのよる力であるから、補助成型部材3は成型品に引かれて容易に上昇し、補助成型部材3の自重のみのよる力であってバネ等の付勢力が成型品に働かないから、成型品のアンダーカット部13が突出部14によって強く引かれない。このため、装置全体が簡単な構成であって、しかも成型品を損傷させることがない。
【0053】
補助成型部材3はこれを下方に引っ張るバネがないから、補助成型部材3が離型位置Yとなると、補助成型部材3はその位置を保持する力が解除されて、補助成型部材3が水平方向Lに対して所定角度θ2だけ傾斜していることから、その自重のみによって下降し、離型位置Yから再び成型位置Xに復帰する。
【0054】
このとき、被案内部10は、補助成型部8に比べて比重の重い材料から形成されて、補助成型部材3はその離型位置Yである上下高さ位置において、補助成型部材3の重心Gが被案内部10側で且つ案内凹部11内に位置付けられているから、補助成型部材3が離型位置Yになると、自重のみによって容易に斜め下方に下降する。
しかもスリーブ38は自己潤滑性を有する合成樹脂製からなっているから、被案内部10がスリーブ38に円滑に案内されて自重のみで下降することができる。
【0055】
しかも、補助成型部材3は複数の単位補助型に分割することでひとつの単位補助型の重量を調整し易くしているから、成型品に損傷を与えず、しかも自重のみで下降させるよう設定し易い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態を示す成型装置全体の平面図
【図2】同じく側面図
【図3】同じく正面図
【図4】同じくひとつの成型装置の平面図
【図5】同じく成型動作を示す側面図
【符号の説明】
【0057】
1…成型装置、2…主成型部材、3…補助成型部材、4…食品容器(成型品)、5…躯体、6…成形面、7…補助成型部材装着面、8…補助成型部、10…被案内部、11…凹部、11…案内凹部、13…アンダーカット部、14…突出部、15…嵌合部、18…第一内径面、21…第一外径面、22…第二内径面、23…第二外径面、24…底面、25…胴部、27…頭部、28…挿入部、30…溝、31…案内孔、32…底壁面、33…内径壁面、34…外径壁面、35…小径部、36…大径部、37…段付き面、38…スリーブ、39…筒部、40…鍔、50…雄型、51…食品容器形状空間、60…雌型、G…重心、L…水平方向、X…成型位置、Y…離型位置、θ1,θ2…所定角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製シートからなる成型品の主形状面を成型する主成型部材と、前記成型品に該成型品の壁面から内側に突出したアンダーカット部を成型可能な突出部を有する補助成型部材との組合わせから構成され、前記補助成型部材は、その突出部が成型品のアンダーカット部から離型可能な傾斜角度をもって主成型部材に対して内外傾斜方向に上昇下降可能に支持されることで、主成型部材側に下降した成型位置と、主成型部材から上昇して突出部が成型品のアンダーカット部から側方に移動した離型位置とに切替え自在とされた成型装置であって、
前記補助成型部材はその突出部が成型品のアンダーカット部に係止した状態で主成型部材に対して上昇させられることで該突出部が成型品のアンダーカット部から側方に離れるよう主成型部材に案内されて離型位置となり、且つ突出部が成型品のアンダーカット部から離れた後には自重のみにより主成型部材に対して下降して成型位置に戻るものであることを特徴とする成型装置。
【請求項2】
補助成型部材を主成型部材の内外傾斜方向に案内するための案内凹部が主成型部材の上下方向に対して斜め方向に傾斜して形成され、補助成型部材は、前記案内凹部に摺動自在に嵌合する被案内部を有していることを特徴とする請求項1記載の成型装置。
【請求項3】
補助成型部材は杆状の被案内部と、その上部に配置されて突出部を有する補助成型部とから構成され、前記補助成型部材は、前記突出部が成型品のアンダーカット部から側方に離れて成型品のアンダーカット部から離型した上下方向位置において、該補助成型部材の重心が前記被案内部側で且つ案内凹部内に位置付けられていることを特徴とする請求項2記載の成型装置。
【請求項4】
被案内部は補助成型部に比べて比重の重い材料から形成されていることを特徴とする請求項3記載の成型装置。
【請求項5】
補助成型部材は、複数に分割された単位補助型を主成型部材の外周部分に互いに隣合うように複数並べられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の成型装置。
【請求項6】
合成樹脂製シートからなる成型品の主形状面を成型する主成型部材と、前記成型品に該成型品の壁面から内側に突出したアンダーカット部を成型可能な突出部を有する補助成型部材との組合わせから構成された成型装置を用いて、前記成型品を成型する成型方法であって、
前記成型品のアンダーカット部と突出部とが係止した成型品の端部を把持し、成型品のアンダーカット部と突出部との係止力を用いて成型品を主成型部材に対して相対的に上昇させることで補助成型部材をその自重に抗して斜め外側方向に上昇させて、補助成型部材の突出部を成型品のアンダーカット部に対して側方に離れさせ、突出部を成型品のアンダーカット部に対して離れさせた後には、補助成型部材をその自重のみにより主成型部材に対して斜め内側方向に下降させることを特徴とする成型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−307751(P2008−307751A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156537(P2007−156537)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000158943)技研化成株式会社 (35)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】