説明

成形体およびその製造方法。

【課題】耐熱性および誘電特性に優れた厚板を作成でき、回路基板加工時の基板の反りを低減した成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される構造単位Aならびに特定構造単位を含む組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂、を含むことを特徴とする成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば電子機器の高速化、高性能化に伴い、誘電率および誘電正接(特に高周波における誘電率および誘電正接)が低い成形体が求められている。
環状オレフィン系樹脂を用いて形成された成形体は、「低誘電率・低誘電損失・低吸水」などの特長を持ち、プリント回路基板を構成する成形体として有用であることが知られている。
このような環状オレフィン系樹脂の中でも、付加重合したノルボルネン樹脂においては、その成形方法は、「キャスト法・溶融成形」が知られている。しかしキャスト法では厚板を作製しようとすると内部からの溶剤の揮発によりボイドが生成してしまう場合がある。一方、溶融成形では高Tgのため、十分に溶融させるには高温を必要とし、溶融しても高粘度のため、厚板の成形品を製造する場合、未充填やクラックが発生する場合があった。
また従来、低粘度のノルボルネン系モノマーを使用した事例として、例えば、特許文献1(特開平5−169541)に、ノルボルネン系モノマーをメタセシス系触媒の存在下で開環塊状重合することにより、環状オレフィン系樹脂としてノルボルネンポリマーを得る技術が開示されている。しかし、開環塊状重合により得られるノルボルネンポリマーは、付加重合のポリマーと比べ、環による分子の拘束が弱く、分子運動性が大きいため、プリント回路基板においては、回路加工時のエッチング工程などで反りなどが起こる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−169541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐熱性および誘電特性に優れた厚板を作成でき、回路基板加工時の基板の反りを低減した成形体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的は、以下の第(1)項〜第(13)項によって達成される。
(1)下記式(1)で示される構造単位Aおよび下記式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂、を含むことを特徴とする成形体。
【化1】



[前記式(1)において、mは1〜4の整数である。]
【化2】



[前記式(2)において、R〜Rは、水素、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、脂環族基で表される置換基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R〜Rのうち少なくとも1つは線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、または脂環族基である。nは0〜4の整数である。]
【0006】
(2)前記付加型の環状オレフィン系樹脂が、構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、構造単位Aの割合が10〜90モル%である組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂である、第(1)項記載の成形体。
【0007】
(3)構造単位Aが、テトラシクロドデセンである、第(1)項または第(2)項に記載の成形体。
【0008】
(4)構造単位Bが、5−ヘキシルノルボルネンである、第(1)項ないし第(3)項のいずれかに記載の成形体。
【0009】
(5)構造単位Aが、テトラシクロドデセンであり、かつ構造単位Bが、5−ヘキシルノルボルネンである、第(1)項ないし第(4)項に記載の成形体。
【0010】
(6)前記組成物は、パラジウム、ニッケルおよび白金のうちの少なくとも1つを含有する触媒を含む第(1)項ないし第(5)項のいずれかに記載の成形体。
【0011】
(7)前記組成物は、パラジウムを含有する触媒を含む第(6)項に記載の成形体。
【0012】
(8)前記組成物は、助触媒として、弱配位性アニオン塩を含有するイオン錯体を含む第(6)項または第(7)項に記載の成形体。
【0013】
(9)基材と、
該基材に含浸された、前記付加型の環状オレフィン系樹脂とを含むことを特徴とする第(1)項ないし第(8)項のいずれかに記載の成形体。
【0014】
(10)前記基材は、ガラス繊維からなる第(9)項記載の成形体。
【0015】
(11)フィラーを含む第(1)項ないし第(10)項のいずれかに記載の成形体。
【0016】
(12)前記フィラーは、溶融シリカフィラーである第(11)項記載の成形体。
【0017】
(13)下記式(1)で示される構造単位Aおよび下記式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂、を用いることを特徴とする成形体の製造方法。
【化1】



[前記式(1)において、mは1〜4の整数である。]
【化2】



[前記式(2)において、R〜Rは、水素、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、脂環族基で表される置換基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R〜Rのうち少なくとも1つは線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、または脂環族基である。nは0〜4の整数である。]
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐熱性および誘電特性に優れた厚板を作成でき、回路基板加工時の基板の反りを低減した成形体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
(本発明の成形体)
本発明の成形体は、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂、を含むことを特徴とする。
【化1】



[前記式(1)において、mは1〜4の整数である。]
【化2】



[前記式(2)において、R〜Rは、水素、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、脂環族基で表される置換基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R〜Rのうち少なくとも1つは線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、または脂環族基である。nは0〜4の整数である。]
【0021】
本発明の成形体は、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂を含むため、耐熱性および誘電特性に優れた厚板を作成でき、回路基板加工時の基板の反りを低減したものとすることができる。
【0022】
(環状オレフィン系樹脂)
環状オレフィン系樹脂は、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を塊状重合して構成されたものであればよく、本発明の成形体の特性を損なわない範囲で式(1)で示される構造単位Aや式(2)で示される構造単位B以外のモノマーを含むものであっても構わないが、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物中に、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bの合計が50質量%以上含まれることが好ましく、70質量%以上含まれるとより好ましい。
【0023】
本発明の構造単位Aとは、下記式(1) で示される化合物である。
【化1】



[前記式(1)において、mは1〜4の整数である。]
【0024】
また、前記式(1)中のmは、1〜4の整数であればいが、m=1が特に、低粘度となる点で好ましい。
【0025】
このような構造単位を構成する化合物としては、テトラシクロドデセン、ヘキサシクロヘプタデセンが好ましく、テトラシクロドデセンが特に、低粘度となる点で好ましい。
【0026】
また、本発明の構造単位Bは、下記式(2) で示される化合物である。
【化2】



[前記式(2)において、R〜Rは、水素、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、脂環族基で表される置換基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R〜Rのうち少なくとも1つは線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、または脂環族基である。nは0〜4の整数である。]
【0027】
また、前記式(2)におけるR〜Rの線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基をはじめ、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、t−ブチル基、ノルマルペンチル基、ネオペンチル基のように長鎖アルキル基において線状または分岐状のものが例示され、これらはヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等も同様に線状または分岐状のものが挙げられるが、これらの中でも線状または分岐状のプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基あるいはオクチル基が成形体の脆性を低めるとともに剛性を高めることができるという点で好ましい。
【0028】
さらに前記式(2)におけるR〜Rのアラルキル基としては、例えば、ベンジル、およびフェニルエチル(例えば、−CHCHPh)、などの芳香族部分が1個の単環式芳香族で構成され、アルキレン部分がメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基のような基が結合しているものや、さらには芳香族部分がナフチルなどの縮合多環式芳香族やビフェニルなどの多環式芳香族で構成され、前記のようなアルキレン部分が結合しているもの等が挙げられるが、ベンジル基、フェニルエチル基が基板の反りを抑えるという点で好ましい。
【0029】
また、前記式(2)におけるR〜Rの芳香族基としては、フェニル基、トリル基などの単環式芳香族、ナフチル基などの縮合多環式芳香族、ビフェニルなどの多環式芳香族等が挙げられるが、フェニル基が基板の反りを抑えるという点で好ましい。
【0030】
また、前記式(2)におけるR〜Rの脂環族基としては、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、ジヒドロジシクロペンタジエチル基、テトラシクロドデシル基、メチルテトラシクロドデシル基、テトラシクロドデカジエチル基、ジメチルテトラシクロドデシル基、エチルテトラシクロドデシル基、エチリデニルテトラシクロドデシル基、フエニルテトラシクロドデシル基、シクロペンタジエチル基の三量体等の脂環族基等が挙げられるが、シクロへキシル基が成形体の脆性を低めるとともに剛性を高めることができるという点で好ましい。
【0031】
また、前記式(2)中のnは、0〜4の整数であればいが、0または1が成形体の柔軟性を高める点で好ましい。
【0032】
このように前記式(2)で表される構造単位としては、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−フェニルエチルノルボルネン、5−トリメトキシシリルノルボルネン、5−トリメトキシシリルエチルノルボルネンに由来する構造を繰り返し単位とするものが好ましく、さらに好ましくは、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−フェニルエチルノルボルネンに由来する構造を繰り返し単位とするものであり、5−ヘキシルノルボルネンに由来する構造を繰り返し単位とするのが特に、成形体の脆性を低めるとともに剛性を高めることができるという点で好ましい。
【0033】
また、組成物中における構造単位Aの含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、10モル%以上90モル%以下であることが好ましく、30モル%以上90モル%以下であるとより好ましく、50モル%以上90モル%以下であるとさらに好ましい。組成物中における構造単位Aの含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、10モル%以上だと、分子運動性が適度に拘束され、反りが少なく、半田耐熱性が良好となり、90モル%以下だと、成形体に適度な柔軟性が付与される点で好ましい。
【0034】
また、組成物には、構造単位Aおよび構造単位Bだけでなく、後述する塊状重合に必要な触媒、助触媒を加えていてもよく、カップリング剤、難燃剤、離型剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。
【0035】
前記カップリング剤としては、特に限定されるわけではなく、ビニルシラン類、(メタ)アクリルシラン類、スチリルシラン類、イソシアネートシラン類等のシランカップリング剤を挙げることができ、樹脂組成物と銅箔等の金属箔との密着性を向上させることができる。
【0036】
前記難燃剤としては、特に限定されるわけではないが、トリキシレニルホスフェート、ジキシレニルホスフェート、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンー10−オキシドなどのリン系難燃剤、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤等を挙げることができ、成形体の難燃性を向上させることができる。
【0037】
なお、「塊状重合」とは、一般に、実質的無溶媒で行なわれる重合反応を意味するが、場合によっては、少ない割合の溶媒を組成物中に添加してもよい。また、後述する重合のための触媒を組成物中に加える前に、その触媒を溶媒中に予め溶解することが望ましい場合には、酢酸エチル、THF等の溶媒を用いてもよい。その際、組成物中の溶媒の含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、5質量部以下であることが好ましい。
【0038】
(触媒)
前記組成物では、パラジウム、ニッケルおよび白金のうちの少なくとも1つを含有する触媒を含むことが好ましい。これにより、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を付加型塊状重合させることができる。なお、組成物には、パラジウム、ニッケルおよび白金のうちの少なくとも1つを含有する触媒に代えて、ラジカル開始剤を含んでいてもよい。
【0039】
特に、かかる触媒としては、パラジウムを含有する触媒を用いることがより好ましい。これにより、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物の重合速度を高めることができる。
【0040】
より具体的には、かかるパラジウム触媒としては特表2002−531648号公報、特表2007−521326号公報などに記載されている触媒を用いることが好ましい。さらに、下記式Iで表されるパラジウム金属カチオンと弱配位性アニオンからなるものを用いることが好ましい。
【0041】
[R’M(L’)(L”)[WCA] (式I)
[前記式Iにおいて、Mは、Pdを表し、R’はカルボキシレート基、チオカルボキシレート基、ジチオカルボキシレート基、及びアニオンヒドロカルビル基から選択されるアニオン配位子を表し、L’は第15族の中性電子供与配位子を表し、L”は不安定中性電子供与配位子を表し、xは0〜2の整数であり、yは0〜2の整数であり、zは0〜2の整数であり、そして、Bおよびdは、それぞれ、触媒錯体全体の電子電荷のバランスをとるためにカチオン錯体と弱配位カウンターアニオン錯体(WCA)とが用いられた数を表す数字である。]
【0042】
組成物中における前記触媒の含有量は、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bの合計100,000molに対して、0.3mol以上10mol以下であることが好ましく、0.5mol以上5mol以下であるとより好ましい。これにより、確実に環状オレフィン系樹脂を構成するモノマーを重合することができる。
【0043】
(助触媒)
前記組成物は、助触媒として、弱配位性アニオン塩を含有するイオン錯体を含むことが好ましい。すなわち、前記環状オレフィン系樹脂を合成する場合、前記触媒の他に助触媒を添加する方が好ましい。これにより、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物の重合速度をより高めることができる。
【0044】
前記助触媒の添加量は、特に限定されるわけではないが、モル比(触媒:助触媒)で1:0.1〜10が好ましく、1:0.3〜8がより好ましく、1:0.5〜5がさらに好ましい。これにより、短時間に式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を重合するという効果と重合反応が暴走することを抑制するという効果との両方を得ることができる。
【0045】
前記助触媒としては、特に限定されるわけではないが、アルキルアルミニウム、ルイス酸又は、弱配位性アニオン(WCA)塩を含むイオン錯体等を挙げることができ、それらの中でも、弱配位性アニオン(WCA)塩を含むイオン錯体が好ましい。
【0046】
また、前記助触媒としては、特表2002−531648号公報、特表2007−521326号公報に記載されている下記式IIで表されるものが、さらに好ましい。
【0047】
[C][WCA] (式II)
[前記式において、Cは、プロトン(H)、有機基含有カチオン、又はアルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは遷移金属のカチオンを表し、WCAは、前記で定義したとおりであり、eとdは、それぞれ、カチオン錯体(C)と弱配位性アニオン塩(WCA)の、総合塩錯体上の電子電荷を釣り合わせるように定められる数である。]
【0048】
前記弱配位性アニオン(WCA)塩を含むイオン錯体としては、特に限定されるわけではないが、ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウム・テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、リチウム(ジエチルエーテル)2.5テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、H(OEtテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[(4−メチル)−α,α−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンメタノラト−κO]アルミネート、ナトリウム・テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリアルキル及びトリアリールホスホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、並びにトリチル・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0049】
組成物中における前記助触媒の含有量は、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bの合計100,000molに対して、0.15mol以上20mol以下であることが好ましい。これにより、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物の重合速度をより高めつつ、過度な重合反応を防止することができる。
【0050】
より具体的には、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bの合計100,000molに対して前記触媒0.3〜10mol、前記助触媒0.15〜20molであることが好ましく、式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bの合計100,000molに対して前記触媒0.5〜5mol、前記助触媒0.3〜15molの割合であるとさらに好ましい。
【0051】
(基材)
本発明の成形体に含まれる基材としては、特に限定されないが、前述した環状オレフィン系樹脂よりも熱膨張係数が小さいものが好適に用いられる。
【0052】
このような基材としては、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げられる。
【0053】
また、前記基材の45GHzにおける誘電正接が1×10−2未満であることが好ましい。これにより、成形体の誘電特性を優れたものとすることができる。
【0054】
また、前記基材としては、ガラス繊維からなるもの(ガラス繊維基材)が好ましい。これにより、成形体の熱膨張係数を小さくするとともに、成形体の誘電特性を優れたものとすることができる。また、成形体の耐熱性を優れたものとすることができる。また、成形体の強度を向上させることもできる。
【0055】
このようなガラス繊維基材を構成するガラスとしては、例えばEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス、UNガラス、石英ガラス等が挙げられる。これらの中でもNEガラス、UNガラス、石英ガラスが好ましい。これにより、ガラス繊維基材の誘電率および誘電正接を小さくすることができ、成形体の誘電率および誘電正接を小さくすることができる。
【0056】
また、前記基材は、1分子中にアルコキシシリル基と、アルキル基、エポキシ基、ビニル基、フェニル基、スチリル基等の有機官能基を有するシラン化合物で処理されたものであることが好ましく、かかるシラン化合物としては、例えば、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシランなどのアルキル基を有するシラン(アルキルシラン)、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシランなどのフェニル基を有するシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基を有するシラン、ブテニルトリエトキシシラン、プロペニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシラン(ビニルシラン)、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等のメタクリル基を有するシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシラン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
中でも、前記基材としてガラス繊維を用いる場合、前記ガラス繊維は、アルキルシラン、ビニルシラン、等の無極性シラン化合物で処理されたものであることが好ましく、ビニルシランで処理されたものあるとより好ましい。これにより、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維との密着性を向上させることができる。その結果、成形体の機械的特性を向上させることができる。
【0058】
また、前記基材の平均厚さは、成形体の形状や大きさ等によっても異なり、特に限定されないが、1μm以上10mm以下程度である。
【0059】
また、成形体中における基材の含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、0質量部以上95質量部以下であることが好ましく、30質量部以上90質量部以下であるとより好ましく、50質量部以上85質量部以下であるとさらに好ましい。これにより、成形体の誘電特性を優れたものとしつつ、成形体の熱膨張係数を低めるという効果を好適に発揮させることができる。
【0060】
(フィラー)
本発明の成形体に含まれるフィラーとしては、特に限定されないが、前述した環状オレフィン系樹脂よりも熱膨張係数が小さいものが好適に用いられる。
【0061】
このようなフィラーを含む成形体は、その熱膨張係数を低くすることができる。特に、フィラーおよび基材を併用することにより、成形体の低熱膨張係数、低誘電率および低誘電正接をバランスよく実現することができる。
【0062】
このようなフィラーとしては、各種無機フィラーまたは有機フィラーが挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ケイ藻土、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、金属フェライト等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム(軽質、重質)、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、マイカ、クレー、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等のケイ酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維等の炭素、その他鉄粉、銅粉、アルミニウム粉、亜鉛華、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛が挙げられる。
【0063】
また、有機フィラーとしては、合成樹脂粉末が挙げられる。この合成樹脂粉末としては、例えば、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の各種熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の粉末、またはこれらの樹脂の共重合体の粉末が挙げられる。また、有機フィラーの他の例としては、芳香族または脂肪族ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
【0064】
また、前記フィラーの45GHzにおける誘電正接が1×10−2未満であることが好ましい。これにより、成形体の誘電特性を優れたものとすることができる。
【0065】
特に、前記フィラーは、シリカフィラーであることが好ましい。これにより、成形体の誘電特性を優れたものとしつつ、成形体の熱膨張係数を低めることができる。
【0066】
前記シリカフィラーとしては、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、結晶シリカ等が挙げられるが、溶融シリカフィラーを用いることが好ましく、さらには最大充填量が大きくできるので球状シリカがより好ましい。これにより、成形体の誘電特性を特に優れたものとすることができる。
【0067】
また、前記フィラーの平均粒径は、特に限定されないが、1nm以上50μm以下が好ましく、さらに10nm以上20μm以下がより好ましく、100nm以上1μm以下がさらに好ましい。また、前記の各範囲の粒径の異なる複数種のフィラーを適宜混合・組み合わせても良い。かかる平均粒径が前記範囲内であることにより、前述したような成形体の熱膨張係数を低めるという効果を好適に発揮させるとともに、成形体を製造する際において、硬化前(固化前)の組成物の流動性(粘度)を良好なものとし、成形性を優れたものとすることができる。また、成形体を製造する際において、フィラーの取り扱い性を良好なものとすることもできる。さらに、成形体を均質なものとすることができる。
【0068】
これに対し、かかる平均粒径が前記下限値未満であると、成形体を製造する際において、フィラーの取り扱い性が悪化する傾向を示す。一方、かかる平均粒径が前記上限値を超えると、成形体を製造する際において、硬化前(固化前)の組成物の流動性(粘度)が高くなり、成形体の寸法や形状等によっては、成形性が悪化する場合がある。
【0069】
また、成形体に含まれるフィラーの含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、0質量部以上150質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であるとより好ましく、30質量部以上80質量部以下であるとさらに好ましい。これにより、成形体の誘電特性を優れたものとしつつ、成形体の熱膨張係数を低めるという効果を好適に発揮させることができる。ただし、かかる含有量が0質量部である場合、このような効果を得るためには、成形体に前述したような基材が含まれている必要がある。
【0070】
これに対し、かかる含有量が前記下限値未満であると、フィラーによる効果が望めない。一方、かかる含有量が前記上限値を超えると、誘電特性に優れた成形体を得ることが難しく、また、用いる環状オレフィン系樹脂の種類や含有量等によっては、成形体が脆くなる傾向を示す。また、成形体を製造する際において、硬化前(固化前)の組成物の流動性(粘度)が高くなり、成形体の寸法や形状等によっては、成形性が悪化する場合がある。
【0071】
また、成形体が基材および/またはフィラーを含む場合、成形体中における基材、フィラーの含有量の合計は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、10質量部以上150質量部以下であることが好ましく、40質量部以上100質量部以下であるとより好ましい。これにより、成形体の熱膨張係数を低めるという効果と、成形体の誘電率および誘電正接を低めるという効果とをバランスよく発揮させることができる。
【0072】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、各実施例に限定されるものではない。
【0074】
<実施例1>
(モノマー液の調整)
構造単位Aとしてテトラシクロドデセンを、構造単位Bとして5−ヘキシルノルボルネンを用いて、構造単位Aと構造単位Bのモル比が(構造単位A)/(構造単位B)=80/20(すなわち構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、構造単位Aの割合が80モル%)となるように混合し、室温で5分間攪拌し、モノマー液を得た。
【0075】
(組成物の調製)
前記モノマー液にPd触媒としてビス(トリイソプロピルホスフィン)パラジウムアセテート(アセトニトリル)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、助触媒としてN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、カップリング剤としてビニルトリメトキシシラン (KBM−1003 信越化学社製)を加え、室温で1分間攪拌し、本発明の組成物を得た。
【0076】
この前記組成物の調整に際しては、モノマー液、Pd触媒および助触媒のモル比が(モノマー液):(Pd触媒):(助触媒)=100,000:1:1の割合となるようにした。
【0077】
また、ビニルトリメトキシシランの量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、0.5質量部になるようにした。
【0078】
(成形体の作製)
中心線平均粗さRA0.06μmの銅箔(三井金属箔製造株式会社製DFF−NA 12μm厚)を貼り付けた、厚み0.5mm、100mm×100mmのステンレス板2枚で、厚み0.5mm、100mm×100mm角の正方形から90mm×80mmのコの字型に打ち抜いたシリコーンゴムを挟み、垂直になるようにクリップで固定し型枠を作成した。
【0079】
その型枠に前記組成物を3ml流し込み、乾燥機(大気雰囲気下)で80℃にて1時間加熱した後、150℃に昇温して、さらに1時間かけて重合した。室温に冷却した後、銅箔付き成形体を取り出した。
【0080】
<実施例2>
モノマー液の調整時に、構造単位Aと構造単位Bのモル比が(構造単位A)/(構造単位B)=70/30(すなわち構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、構造単位Aの割合が70モル%)で混合した以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
<実施例3>
モノマー液の調整時に、構造単位Aと構造単位Bのモル比が(構造単位A)/(構造単位B)=50/50(すなわち構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、構造単位Aの割合が50モル%)で混合した以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0081】
<実施例4>
モノマー液の調整時に、構造単位Bとして5−ブチルノルボルネンを用いて、構造単位Aと構造単位Bのモル比が(構造単位A)/(構造単位B)=10/90(すなわち構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、構造単位Aの割合が10モル%)で混合した以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0082】
<実施例5>
モノマー液の調整時に、構造単位Bとして5−デシルノルボルネンを用いて、構造単位Aと構造単位Bのモル比が(構造単位A)/(構造単位B)=30/70(すなわち構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、構造単位Aの割合が30モル%)で混合した以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0083】
<実施例6>
モノマー液の調整時に、構造単位Bとして5−フェネチルノルボルネンを用いた以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0084】
<実施例7>
モノマー液の調整時に、構造単位Bとして5−フェニルエチル(表ではフェネチルになっている)ノルボルネンを用いて、構造単位Aと構造単位Bのモル比が(構造単位A)/(構造単位B)=50/50(すなわち構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、構造単位Aの割合が50モル%)で混合した以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0085】
<実施例8>
モノマー液の調整時に、構造単位Aの代わりにヘキサシクロヘプタデセンを用いた以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0086】
<実施例9>
組成物の調整時に、モノマー液、Pd触媒および助触媒のモル比が(モノマー液):(Pd触媒):(助触媒)=100,000:5:10の割合となるようにした以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0087】
<実施例10>
モノマー液の調整時に、構造単位Bとして5−フェネチルノルボルネンを用いて、組成物の調整時に、モノマー液、Pd触媒および助触媒のモル比が(モノマー液):(Pd触媒):(助触媒)=100,000:5:15の割合となるようにした以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0088】
<実施例11>
組成物の調整時に、助触媒としてリチウム(ジエチルエーテル)2.5テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いた以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0089】
<実施例12>
組成物の調整時に、カップリング剤としてスチリルトリメトキシシランを、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、1質量部になるように用いた以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0090】
<比較例1>
モノマー液の調整時に、構造単位Bを用いない以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0091】
<比較例2>
モノマー液の調整時に、構造単位Aを用いない以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0092】
<比較例3>
(テトラシクロドデセンの開環メタセシス重合による塊状重合成形物の作製)
組成物の調整時に、Pd触媒としてベンジリデン(1,3−ジメチルイミダゾリジ−2−イリデン)(トリシクロゲキシルホスフィン)ルテニウムジクロライドを、助触媒としてトリフェニルホスフィンを用いた以外は、前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0093】
以上のような各実施例および各比較例について、得られた銅箔付き成形体の反りをそれぞれ測定し、評価した。
【0094】
ここで、反りの測定は、銅箔付き成形体から中央部を5cm角に切り出した後、銅箔を片面エッチングし、24時間経過後にサンプルが凸になるように台上に置いたときの、台面からサンプル頂上部までの距離からサンプル厚みを除いた値を測定値とした。
【0095】
以上のような各実施例および各比較例の内容および評価結果について、表1にまとめた。
【0096】
【表1】

【0097】
表1に示すように、本発明の式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂、を含むことにより、反りの量を低減させた成形体を得ることができる。なお、比較例1では、銅箔を剥離した際に樹脂部分が脆く砕けてしまったため、反りの測定ができなかった。比較例2では、本発明の構造単位Aを用いていないため、極めて大きな反りが生じた。また比較例3では、開環重合を行った樹脂を用いているため、極めて大きな反りが生じた。
【0098】
<実施例13>
成形体の作製時に、ステンレス板の間にビニルシランで処理された基材(ガラス繊維)として60mm×60mmのNEガラスクロス(日東紡株式会社製:厚み100μm)を3枚挟んだ以外は前述した実施例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0099】
この成形体の中心部を基材が含まれるように切り出して質量を測定し、基材の含有量を基材の単位面積あたりの質量に基づいて算出したところ、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、60質量部であった。
【0100】
<実施例14>
実施例1と同様の組成物に溶融球状シリカ(株式会社アドマテックス製:アドマファインSO−E2:平均粒子径0.5μm)を、構造単位Aと構造単位Bの合計量100質量部に対して、42質量部、表面処理剤としてデシルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBM−3103)を、構造単位Aと構造単位Bの合計量100質量部に対して、9質量部混合攪拌し、フィラー配合物を得た。
前記フィラー配合物を用いて、実施例1と同様にして成形体を得た。
【0101】
<実施例15>
実施例14と同様のフィラー配合物を用い、実施例13と同様に基材を使用して、銅箔付き成形体を得た。この成形体における基材の含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、85質量部であった。
【0102】
<実施例16>
構造単位Aと構造単位Bのモル比を表2に示すものとした以外は前述した実施例13と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0103】
<実施例17>
表2に示す配合とし、基材(ガラス繊維)として2枚のNEガラスクロスを用いた以外は、前述した実施例13と同様にして、銅箔付き成形体を得た。この成形体における基材の含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、40質量部であった。
【0104】
<実施例18>
表2の配合とした以外は前述した実施例14と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0105】
<実施例19>
表2に示す配合とし、基材(ガラス繊維)として4枚のNEガラスクロスを用いた以外は前述した実施例15と同様にして、銅箔付き成形体を得た。この成形体における基材の含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、90質量部であった。
【0106】
<実施例20>
表2に示す配合とした以外は前述した実施例15と同様にして、銅箔付き成形体を得た。この成形体における基材の含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、85質量部であった。
【0107】
<比較例4>
モノマー液の調整時に、構造単位Bを用いない以外は前述した実施例13と同様にして、銅箔付き成形体を得た。この成形体における基材の含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、60質量部であった。
【0108】
<比較例5>
モノマー液の調整時に、構造単位Aを用いない以外は前述した実施例14と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0109】
<比較例6>
(テトラシクロドデセンの開環メタセシス重合による塊状重合成形物の作製)
組成物の調整に際し、Pd触媒としてベンジリデン(1,3−ジメチルイミダゾリジ−2−イリデン)(トリシクロゲキシルホスフィン)ルテニウムジクロライドを、助触媒1としてトリフェニルホスフィンを用いた以外は、前述した実施例13と同様にして、銅箔付き成形体を得た。この成形体における基材の含有量は、構造単位Aと構造単位Bの合計量を100質量部としたときの質量部が、60質量部であった。
【0110】
以上のような各実施例および各比較例について、得られた銅箔付き成形体の半田耐熱をそれぞれ測定し、評価した。
【0111】
ここで、半田耐熱の測定は、得られた成形体から30mm角にサンプルを切り出し、3/4エッチングし、プレッシャークッカーを用いて121℃2時間処理後、260℃の半田に30秒浸漬させ、フクレの有無を観察した。
【0112】
以上のような各実施例および各比較例の内容および評価結果について、表2にまとめた。
【0113】
【表2】

【0114】
表2に示すように本発明の式(1)で示される構造単位Aおよび式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂、を含むことにより、成形性と耐熱性を併せ持つ成形体を得ることができる。なお、比較例4では、エッチングを施した際に樹脂部分が脆く砕けてしまったため、半田耐熱性の判定ができなかった。比較例5、6では、耐熱性が劣るため、フクレが生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される構造単位Aおよび下記式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂、を含むことを特徴とする成形体。
【化1】



[前記式(1)において、mは1〜4の整数である。]
【化2】



[前記式(2)において、R〜Rは、水素、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、脂環族基で表される置換基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R〜Rのうち少なくとも1つは線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、または脂環族基である。nは0〜4の整数である。]
【請求項2】
前記付加型の環状オレフィン系樹脂が、構造単位Aと構造単位Bの合計モル数に対し、構造単位Aの割合が10〜90モル%である組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂である、請求項1記載の成形体。
【請求項3】
構造単位Aが、テトラシクロドデセンである、請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
構造単位Bが、5−ヘキシルノルボルネンである、請求項1ないし3のいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
構造単位Aが、テトラシクロドデセンであり、かつ構造単位Bが、5−ヘキシルノルボルネンである、請求項1ないし4に記載の成形体。
【請求項6】
前記組成物は、パラジウム、ニッケルおよび白金のうちの少なくとも1つを含有する触媒を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の成形体。
【請求項7】
前記組成物は、パラジウムを含有する触媒を含む請求項6に記載の成形体。
【請求項8】
前記組成物は、助触媒として、弱配位性アニオン塩を含有するイオン錯体を含む請求項6または7に記載の成形体。
【請求項9】
基材と、
該基材に含浸された、前記付加型の環状オレフィン系樹脂とを含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の成形体。
【請求項10】
前記基材は、ガラス繊維からなる請求項9記載の成形体。
【請求項11】
フィラーを含む請求項1ないし10のいずれかに記載の成形体。
【請求項12】
前記フィラーは、溶融シリカフィラーである請求項11記載の成形体。
【請求項13】
下記式(1)で示される構造単位Aおよび下記式(2)で示される構造単位Bを含む組成物を塊状重合して構成された付加型の環状オレフィン系樹脂、を用いることを特徴とする成形体の製造方法。
【化1】



[前記式(1)において、mは1〜4の整数である。]
【化2】



[前記式(2)において、R〜Rは、水素、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、脂環族基で表される置換基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R〜Rのうち少なくとも1つは線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、芳香族基、または脂環族基である。nは0〜4の整数である。]

【公開番号】特開2012−111872(P2012−111872A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262719(P2010−262719)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】