説明

成形体の製造方法および製造装置

【課題】 超微細加工、高い寸法精度、低残留応力、低複屈折、高光透過性、優れた機械的強度を有する成形体を、超低圧の成形プロセスでありながら、薄肉かつ大面積の形状で成形する方法等を提供する。
【解決手段】 微細なパターンを有する被塗布面に、熱可塑性樹脂の吐出口であるTダイのリップと被塗布面との距離で、塗布された溶融した熱可塑性樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動しながら樹脂を塗布した後、樹脂と金型との付着力よりも樹脂と加圧ローラとの付着力を低い状態に維持しながら、直ちに加圧ローラで押圧することで被塗布面に塗布された樹脂の微細パターンへの充填を促進すると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法および製造装置に関するもので、詳しくは、超微細加工、高い寸法精度、低残留応力、低複屈折、高光透過性、優れた機械的強度を有する成形体を、超低圧の成形プロセスでありながら、薄肉かつ大面積の形状で提供可能な、成形体の製造方法および製造装置に関するものである。より詳細には、特開2006−056107号に開示の成形体の製造方法および装置に加圧ローラを付加することで、塗布直後の温度低下がほとんどない(変形抵抗が小さく、緩和時間の短い)樹脂をローラで加圧し、微細パターンへの樹脂の充填、塗布厚みの均一化、ダイラインの解消などを図り、従来法よりもさらに低圧かつ高い生産性を有する製造方法および装置を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、サブμmオーダの超微細なパターン形状を表面に有すると共に、三次元、薄肉、かつ大面積の形状を有する成形体が、マイクロレンズアレーなどの電子ディスプレイ用光学部品、血液検査チップなど微細流路が加工されたライフサイエンス部品などとして求められている。
【0003】
従来、表面に微細パターンを有する成形品の製造方法は、例えば下記特許文献1に知られている。この技術は、溶融した熱可塑性樹脂が粘着する温度まで加熱された微細パターンを有する成形型上に、溶融した熱可塑性樹脂を塗布装置によって最終製品にほぼ近い形状および厚さに塗布し、一連の塗布動作を完了してからプレスで塗布された樹脂を加圧(微細パターンに押付)していた。
【特許文献1】特開2006−056107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術(以下従来法)は金型温度(≒微細パターンが加工されたスタンパの温度)よりも高温の樹脂がTダイリップから吐出され、直接微細パターンに供給される点が特長である。
【0005】
樹脂の変形抵抗や緩和時間には温度依存性があり、温度が高いほど変形抵抗は小さく、緩和時間は短い。すなわち、樹脂の変形抵抗が小さく、緩和時間も短い状態の樹脂がTダイからの吐出圧により微細パターンに満たされるので、塗布時点で概ねの充填を完了しており、塗布後のプレス工程での樹脂流動量がわずかであるために成形体の固化終了までに十分な歪の緩和がおこり、高い寸法精度、低残留応力、低複屈折を有する成形体が得られる。実際、この従来法で、アスペクト比0.5の微細パターンに関し、塗布工程の段階でパターン凹部底面までの樹脂の充填が得られていることを確認している。
【0006】
しかし、塗布時の樹脂の充填に不足が生じる場合、従来法ではプレスの工程で、この不足を修正することになる。塗布工程の完了後のプレス工程では、塗布された樹脂の温度は金型温度まで低下しているため(図10参照)変形抵抗が大きく、緩和時間が長くなっているので、充填不足が多いほど、プレスに要する圧力が増し、プレス時間も長くなり、生産性が低下する。また、緩和時間が長くなっている樹脂に与える変形量が大きくなるので、この工法の特長である成形体の低残留応力、低複屈折が十分に得られなくなることが懸念される。
【0007】
このため、従来法では、微細パターンのアスペクト比が高い等の充填の難しい場合には、塗布工程での樹脂の充填を促進させる必要がある。塗布工程での樹脂の充填を促進させる方法としては、大別して、(1)樹脂が微細パターンに入り込みやすい状態にする(樹脂の変形抵抗を小さく、緩和時間を短くする)、(2)樹脂を微細パターンに強い力で押付ける方法がある。
【0008】
しかし、(1)の方法は微細パターンとの界面近傍の樹脂の温度を高くする必要があるが、このためには金型温度を高くする必要があり、金型の昇温に要する時間が長くなるため生産性が低下する。また、スタンパ表面(金属表面)に接触した時の溶融樹脂の温度が高いほど、剥離に必要なエネルギーが増大し(図11)、離型が困難になるといった副次的な不具合も生じる。
【0009】
(2)の方法として、Tダイリップからの樹脂の吐出圧力を高くするなどが考えられるが、吐出圧力はリップの樹脂流路の形状、樹脂の流量など装置の形状や製品形状と密接に関係するため、自由に変更することができず、実質はほとんど調整代のないパラメータである。これらの結果、塗布工程で微細パターンに樹脂を充填することが困難になっている。
【0010】
塗布された樹脂の天面(Tダイのリップと接触していた側)にダイライン(引掻いたような傷)が残る場合がある(図12)。現状は、プレス加圧してダイラインを消す(引掻き傷(凹凸)をプレス加圧で平滑化する)が、プレス加圧時には樹脂温度が低下して変形抵抗が大きく、緩和時間も長くなっているため、プレス圧力を高く、プレス時間を長くする必要がある。加えて、通常、ダイラインの深さは転写する微細形状よりも深いため、本来の微細形状転写に必要な加圧力や加圧時間よりも高圧で長時間加圧する必要がある。結果として、生産性向上(サイクルタイムの短縮)の足かせになっている。
【0011】
塗布された樹脂の厚み分布が大きい状態でプレス加圧されると、厚い部分が先に加圧されて薄い部位に向けて樹脂が流動する(図13)。この時、先に述べたように樹脂の温度は低下し、緩和時間が長くなっているため、プレス加圧後(またはプレス加圧中)に金型を冷却して樹脂を固化させると、流動に伴って生じた樹脂の配向は緩和する間もなく凍結される。この結果、最終製品に光学的な歪みが生じる、応力が残留するなどの不具合が生じる。さらに、樹脂をマクロ的に流動させるほど変形させる場合、必要なプレス圧力は高くなり、プレス時間も長くなるため、生産性も低下する。
【0012】
良品を得るためには、下金型(微細パターンを有するスタンパを搭載する面側)および上金型(プレス加圧時に樹脂に接触する面側)の樹脂に接触する面には厳密な平坦度および平行度が求められる。製品が大面積化すると上記鏡面部の機械加工による精度確保が困難になり、製品の大面積化の足かせとなる。また、面積の小さい製品と同様な圧力を印加しようとすると面積に比例してプレス力が増大し、高推力のプレスが必要となり、装置の大型化、消費エネルギーの増大、装置コストの増大を招く。
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、従来法よりもさらに低圧かつ高い生産性を有する製造方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
我々は、今回、従来法での塗布時の樹脂の温度変化を実測し、樹脂の種類や、塗布条件によっても左右されるが、塗布時に、樹脂温度が金型温度まで低下するのに概ね10秒前後の時間を要することを見出した。すなわち、従来法のように、塗布後のTダイをパターンの上部空間から退けてからプレスする場合は、樹脂は金型温度まで低下しているが、樹脂を塗布した直後に加圧できれば、小さな力、短い時間で溶融樹脂を微細パターンに充填し、形状を固定(歪を緩和)することができるようになる。
よって本発明の成形体の製造方法は、上述の課題を解決するため、微細なパターンを有する被塗布面に、熱可塑性樹脂の吐出口であるTダイのリップと被塗布面との距離で、塗布された溶融した熱可塑性樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動しながら樹脂を塗布した後、樹脂と金型との付着力よりも樹脂と加圧ローラとの付着力を低い状態に維持しながら、直ちに加圧ローラで押圧することで被塗布面に塗布された樹脂の微細パターンへの充填を促進すると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の成形体の製造方法は、微細なパターンを有する被塗布面を、溶融した熱可塑性樹脂が付着する温度まで昇温する昇温工程と、熱可塑性樹脂の吐出口と被塗布面との距離で、塗布された樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動させながら樹脂を塗布する塗布工程と、前記塗布した熱可塑性樹脂を、樹脂と金型との付着力よりも樹脂と加圧ローラとの付着力を低い状態に維持しながら、直ちに加圧ローラで順次押圧することで被塗布面に塗布された樹脂の微細パターンへの充填を促進すると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行うローラ加圧附形工程と、さらにプレス加圧しながら前記熱可塑性樹脂を冷却し固化させるプレス加圧・固化工程と、固化させた樹脂を被塗布面から剥離させる離型工程とを含む。
【0016】
また、本発明の成形体の製造方法は、(a)微細パターンを有する金型の少なくとも微細パターンの温度を、次段の塗布工程で吐出部から吐出される熱可塑性樹脂が粘着する温度、さらには塗布されて金型表面(微細パターンを含む)に接触した熱可塑性樹脂の接触界面に固化層が形成されず、かつ、加圧ローラによる押圧力で微細パターンに樹脂が充填される程度に変形しうる程度の軟化状態を維持できる温度まで昇温する被塗布面の昇温工程と、(b)塗布装置の吐出口から微細なパターンに前記熱可塑性樹脂が充填されるように、吐出部または金型を移動させて、吐出部と微細パターンを含む被塗布面とを塗布方向に相対的に移動させながら、かつ吐出口の先端部と前記被塗布面との距離によって最終製品の厚さが規定されるように溶融樹脂を吐出させることで成形体の最終形状および厚みにほぼ近い状態まで精密塗布を行う塗布工程と、(c)塗布された樹脂に加圧ローラで押圧力を作用させることで微細パターンへの樹脂の充填を促進させると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行うローラ加圧附形工程と、
(d)前記塗布された樹脂をプレス加圧して、微細パターンに樹脂を完全に充填すると共に、金型を冷却して、樹脂を冷却および固化させるプレス加圧・固化工程と、(e)固化した成形品を金型から剥離させる離型工程とを含む。
【0017】
また、本発明の成形体の製造方法は、(a)微細パターンを有するエンドレスベルトの少なくとも後段で溶融樹脂が塗布される微細パターンの温度を、次段の塗布工程で吐出部から吐出される熱可塑性樹脂が粘着する温度、さらには塗布されて微細パターンに接触した熱可塑性樹脂の接触界面に固化層が形成されず、かつ、加圧ローラによる押圧力で微細パターンに樹脂が充填される程度に変形しうる程度の軟化状態を維持できる温度に昇温する被塗布面の昇温工程と、(b)塗布装置の吐出口から微細なパターン部の全体に前記熱可塑性樹脂が充填されるように、エンドレスベルトを移動させて、吐出部と微細パターンを含む被塗布面とを塗布方向に相対的に移動させながら、かつ吐出口の先端部と前記被塗布面との距離によって最終製品の厚さが規定されるように溶融樹脂を吐出させることで成形体の最終的な厚みおよび幅にほぼ近い状態まで精密塗布を行う塗布工程と、(c)塗布された樹脂に加圧ローラで押圧力を作用させることで微細パターンに樹脂を完全充填させると共に、最終製品としての厚みと幅に附形する加圧附形工程と、(d)樹脂が乗っている微細パターン部を冷却して、加圧ローラで押圧された樹脂を冷却および固化させる固化工程と、(e)固化した成形品を微細パターンから剥離させる離型工程とを含む。
【0018】
また、本発明の成形体の製造装置は、微細なパターンを有する被塗布面に、熱可塑性樹脂の吐出口であるTダイのリップと被塗布面との距離で、塗布された溶融した熱可塑性樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動しながら樹脂を塗布した後、樹脂と金型との付着力よりも樹脂と加圧ローラとの付着力を低い状態に維持しながら、直ちに加圧ローラで押圧することで被塗布面に塗布された樹脂の微細パターンへの充填を促進すると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行う。
【0019】
また、本発明の成形体の製造装置は、微細なパターンを有する被塗布面を、溶融した熱可塑性樹脂が付着する温度まで昇温する昇温手段と、熱可塑性樹脂の吐出口と被塗布面との距離で、塗布された樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動させながら樹脂を塗布する塗布手段と、前記塗布した熱可塑性樹脂を、樹脂と金型との付着力よりも樹脂と加圧ローラとの付着力を低い状態に維持しながら、直ちに加圧ローラで順次押圧することで被塗布面に塗布された樹脂の微細パターンへの充填を促進すると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行うローラ加圧附形手段と、プレス加圧しながら前記熱可塑性樹脂を冷却し固化させるプレス加圧・固化手段と、固化させた樹脂を被塗布面から剥離させる離型手段とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、Tダイリップの近傍に1本以上の加圧ローラを設置し、微細パターンに塗布された溶融樹脂が、金型温度に低下するまでの間(金型よりも高温で、樹脂の変形抵抗が小さく、緩和時間が短い間)に加圧ローラで樹脂を微細パターンに押付けるようにしたので(図1)、塗布された樹脂を順次ローラで加圧することで、温度低下の少ない、変形抵抗が小さく、緩和時間が短い状態の樹脂を微細パターンに押付けることができ、塗布工程での微細パターンへの樹脂の充填が促進される。例えば、図2(b)に示すように、塗布工程では樹脂が完全に充填できなくても、完全充填した最終製品を得るためにプレス工程で充填しなくてはならない量が低減されるため、プレス時間の短縮やプレス圧力の低減が可能となり、生産性向上や省エネ化に直結する。
【0021】
また、塗布した樹脂の性状が凹状または凸状になった場合でも、ローラで加圧することで平滑化することが可能となり、樹脂の厚み分布の低減(平滑化)が可能となる。図3は、塗布によって(一例として)中央が凸形状になった樹脂を、ローラ加圧によって平滑化する概念図を示す。凸部の樹脂をローラ加圧するため図13と同様に樹脂が流動するが、樹脂温度が高い状況下での変形のため、流動で生じた歪みは短時間で緩和し、製品には歪みが残らない。
【0022】
さらに上記と同様な作用により、塗布した樹脂のダイラインを、歪みを残さずに消すことができる。塗布の厚み分布の低減(平滑化)に加えてダイラインを消すことで、プレス加圧時に樹脂を流動させる必要がほとんどなくなるため、プレス時間の短縮が可能となり、生産性が向上する。さらに、プレス時の樹脂の流動をなくすことで流動に伴う歪みの発生を抑制でき、製品を無延伸および無配向状態にすることが可能になる。このため、低歪み(残留応力がない、製品形状の経時変化がないなど)、優れた光学特性(複屈折がないなど)を有する製品を得ることができる。
【0023】
従来法では、プレス加圧の役割の一つに、鏡面加工された金型を樹脂に押付けることで、鏡面形状を樹脂に転写することが挙げられる。本発明の方法においても、ローラの表面を鏡面加工しておけば、ローラ加圧によって、より小さな力かつ短時間で樹脂に鏡面を転写することができる。同様に、ローラ表面に凹凸パターンを加工しておけば、ローラ加圧によって凹凸パターンの形状を樹脂に転写することが可能である。
【0024】
さらに、先に述べたように、塗布工程で微細パターンへの樹脂の充填を促進しようとした場合の一つの手段として、樹脂温度を高くする方法があるが、樹脂がスタンパに接触した時の温度が高くなると、剥がすことが困難になる。よって、製品離型までを考慮すると、温度を高くするよりも樹脂を微細パターンに強く押付けて充填することが好ましい。しかし、従来法では塗布条件と独立して押付力を強くすることは困難であることを述べた。
塗布直後に押圧を塗布条件と関係なく付加できる本発明では、塗布工程での充填が不足気味であっても、これを補うことが出来る。よって、従来法のように、樹脂が微細パターンに充填されやすい状態(変形抵抗が小さく、緩和時間が短い)にするために金型温度を高くする必要がない。すなわち、
塗布工程での微細パターンへの樹脂充填が不足するような、低い金型温度でも、樹脂温度が金型温度まで下がりきらない塗布直後に加圧をすることで、十分な充填と歪の緩和を両立できる。金型温度を低くすることができれば、樹脂をスタンパ壁面から剥離させるのに必要なエネルギーも低くなり、離型工程において、従来よりも高い金型温度で製品離型が可能となる。この結果、塗布時の金型温度は低く、製品離型時の温度は高くすることが可能となり、昇温した時の温度と冷却した時との温度差を従来法に比べて小さくすることができる。すなわち、金型の昇温および冷却に要する時間を短くすることができるため、生産性の向上に直結する。
【0025】
製品を大面積化(幅を広く、長さを長く)する場合、ローラの長さを長くすることで達成される。従来法では、金型同士の優れた平行度および平坦度を達成するための加工が困難になるため、大面積化の制約になることを述べたが、本発明のローラ加圧の場合、ローラの真直度を精度良く加工すればよく、これは平面を精度良く加工することに比べれば容易である。
【0026】
また、ローラ加圧方式では、樹脂とローラとの接触面積は小さいため、高い圧力を印加する場合でも押付力としては小さくなる。さらに、大型プレスを用いる場合に比べると装置がコンパクトになり、コストも抑えることができる。
【0027】
さらに、加圧ローラのみで微細パターンへの樹脂の充填、樹脂天面への製品性状(例えば鏡面を転写)の付与が可能になれば、理想的にはプレス加圧が不要になる。塗布とローラ加圧は連続的に行うことができるため、シームレスのスタンパを用いれば、帯状の製品を連続して製造することができる。
【0028】
上記の他に、本工法(溶融微細転写プロセス)特有の特長として、下記が挙げられる。
【0029】
本方法によれば、表面に微細なパターンを有する被塗布面に、熱可塑性樹脂の吐出口であるTダイのリップと被塗布面との距離で、塗布された溶融した熱可塑性樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動させながら樹脂を塗布する。
【0030】
このため、リップと被塗布面との距離を変更し、かつ、その隙間が充填される量(塗布厚み×塗布幅×塗布速度(m/s)以上の体積流量)だけの溶融樹脂を吐出することで、塗布厚みを簡単に変更することができる。
【0031】
一般的に流通しているペレットを溶融させた後、そのままTダイからフィルム状に吐出して被塗布面に塗布するため、ペレットから直接的に製品を得ることができる。
【0032】
塗布することで製品性状を付与するため、樹脂の粘度が高くても、一般のフィルム成形法ではフィルム化できないような低粘度の樹脂でも使用できる。すなわち、本発明の方法に適用できる熱可塑性樹脂の種類やグレードには制約がなく、多種多様な樹脂を利用することが可能である。
【0033】
溶融した熱可塑性樹脂を被塗布面に塗布すると、粘着して固定されるため、樹脂と被塗布面の微細パターンとの位置関係がずれないため、正確な形状転写が可能になる。
【0034】
溶融樹脂が被塗布面に順次粘着しながら塗布される。よって、溶融樹脂と被塗布面との間に存在する空気のほとんどは塗布工程で排除される。その結果、真空プロセスは不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図4は、本発明の実施の形態の塗布工程と加圧附形工程を説明する図である。表面に微細パターン(微細なパターン)1aを有する被塗布面1上に、溶融した熱可塑性樹脂2が塗布装置3の吐出口3aから吐出される。塗布した直後の温度低下のない樹脂(粘度が低く、緩和時間が短い)を、順次ローラ(加圧ローラ)4で加圧することで、微細パターンへの溶融樹脂の充填の促進と、塗布膜厚の平滑化、ダイラインの消去などを高効率に行い、後段のプレス工程での樹脂の充填量を低減することでプレス時間を短縮して生産サイクルの短縮、プレス加圧力低減による省エネ、さらにプレス加圧中の樹脂流動を最小化することで、低残留応力、低複屈折、高光透過性など寸法精度、光学特性に優れた最終製品を得る。下金型に塗布された樹脂は樹脂の種類や塗布条件によっても異なるが、概ね図10に示したように10秒程度で金型温度まで冷却されるので、ローラ加圧は塗布後8秒以内、望ましくは5秒以内に行うことが望ましい。
【0036】
塗布された樹脂をローラで加圧するには、「金型との粘着力>ローラとの粘着力」を維持する必要がある。ローラとの粘着力が金型よりも大きい場合、ローラが塗布された樹脂を引き剥がすことになる。このためには、加圧ローラの(樹脂に接する表面の)温度を金型温度以下に維持することが必要となる。
【0037】
ローラの温度調節は、所望の温度に調整された熱媒(水や油)を通水することで行うことが望ましい。これは、ローラの温度が熱媒以下であれば加熱媒体として作用し、熱媒以上であれば冷却媒体として作用するため、ローラの温度を所定の温度に維持しやすい。ただし、これに限定する必要はなく、加熱はスリップリングで給電するなどしてヒータや赤外線ランプ等で行ってもよい。冷却は水冷以外にペルチェ素子などの電気的な冷却を行ってもよい。これらを用いる場合、ローラの温度は接触式の熱電対や非接触の赤外線式温度計で検出し、あらかじめ設定される温度になるように温度調節計で加熱量および冷却量の自動調節を行えばよい。
【0038】
加圧ローラ4は、樹脂への押付力またはローラ下面と微細パターンとの距離を調節できる構成とする。樹脂への押付力を調節することで、所望の押付力を樹脂に印加することが可能となる。この場合、押付力印加後の樹脂膜厚は制御されないことになる。そこで、最終製品の膜厚が重要となる場合には、ローラ下面と微細パターンとの距離を調節することで、押付力印加後の膜厚を所望の厚みにすることができる。機構は、図5のようにローラの左右を独立して調節することで、塗布幅方向に印加する押付力を変えることができる。押付力を調節する場合は、図5(a)のようにエアシリンダ4aや油圧シリンダ4bを設置すればよい。位置を調節する場合は図5(b)に示されるように、モータ4dとボールネジ4eを組み合わせると調節が容易となる。これらにより、ローラの傾きを調節することが可能になり、例えば、塗布幅方向にテーパ状の厚み分布を持たせた製品に対しても精密に均等な加圧力を印加することができる。また、位置制御によって意図的に幅方向に厚み分布を持った最終製品を得ることも可能である。独立したアクチュエータを備える代わりにローラが取り付けられた筐体を傾けるようにしてもよい。
【0039】
被塗布面と吐出口および加圧ローラは互いに相対移動すればよく、被塗布面が固定で吐出口とローラとが塗布方向に移動しても良いし、吐出口と加圧ローラとが固定で被塗布面が移動してもよい。
【0040】
図6は、本発明の代表的な一連の製品製造工程を示す。塗布装置および加圧ローラは図示しない移動手段で移動するものとする。図では、金型に搭載された微細パターンが加工されたスタンパを被塗布面として、塗布装置(吐出口)と加圧ローラが移動して溶融樹脂の塗布と加圧附形とを行い、成形体を製造する工程を示す。金型は加熱と冷却が可能であるとする。
【0041】
まず、被塗布面を溶融樹脂が粘着する温度に加熱する(S1)。所定温度までの昇温が完了すると、塗布装置と加圧ローラを塗布開始位置に移動させる。次に、樹脂吐出口をスタンパの形状に沿って移動させながら、かつ、吐出口先端と被塗布面との距離で最終製品の厚さが規定されるように前記距離、塗布速度(被塗布面と吐出口との相対移動速度)、溶融樹脂の吐出流量を調整しながら塗布を行うことで、溶融した熱可塑性樹脂を最終製品にほぼ近い形状および厚さに塗布していく(S2−1,S2−2)。塗布工程では、塗布後、直ちに加圧ローラで溶融樹脂を押圧する(塗布・加圧附形工程)。さらに、プレスで加圧しながら樹脂を冷却および固化させて(固化工程:S3)、製品を剥離させる(S4)。
【0042】
図7は、複数の金型を備え(a)〜(d)、各場所で異なる工程を順次行う製造方法を示す。塗布装置が移動(横行)し、被塗布面が塗布方向に移動することで実現する実施の形態を示す。被塗布面は固定され、塗布装置が横行と塗布方向への移動を行ってもよい。本形態であれば、金型の加熱や冷却を、塗布および加圧附形する以外の場所で行うため、加熱や冷却を塗布および加圧附形工程が待つ必要がない。よって、より高効率に製品を製造することができる。
【0043】
図8は、図7の形態を回転台で行う場合の方法を示す。本実施例では、Tダイと加圧ローラは上下動のみすれば良い
【0044】
図では、一つのローラを用いる例を示したが、複数個のローラを並べて使用してもよい。特に、溶融樹脂の緩和時間に対してローラによる加圧時間が短い場合、加圧力除去後(ローラ通過後)に弾性回復して元の形状にもどる(例えば、微細パターンに押し込まれた樹脂がもどる)。この場合、ローラを複数個設けることで必要な加圧時間を確保することが可能になる。
【0045】
図9は、被塗布面をエンドレスベルトとした実施形態の一例を示す。図では詳細を示してないが、エンドレスベルト7に微細パターンが加工されたスタンパを設置してもよいし、エンドレスベルト7の表面に直接微細パターンを加工してもよい。エンドレスベルト7には、(少なくとも)微細パターンを加熱および冷却できる機構を設ける。本図では、塗布の前段で赤外線ランプ8による加熱を行っているが、エンドレスベルト7を加熱できれば良く、誘導加熱、熱風吹付け、高温に維持した部屋の中を通過させて加熱するなども可能で、手段は問わない。
【0046】
通常、エンドレスベルト7は薄く容易に変形するため、溶融樹脂を塗布する部位Aや加圧ローラ4で加圧附形する部位にはそれぞれバックアップローラ8を設けている。バックアップローラ8に接触したエンドレスベルト7が冷えることが好ましくない場合、温度を調節すればよい。冷却する場合も同様である。
【0047】
本図では、エンドレスベルト7に塗布された溶融樹脂の冷却は、冷却手段9として冷風を吹付けることで行っている。冷風を吹付ける方向は、エンドレスベルト7の裏面から吹付けてもよい。冷風を吹付けた際の風圧によってエンドレスベルト7およびそれに付着している製品が曲がるなどの不具合が生じる場合、風圧を支えるようにバックアップローラを設けてもよい。
【0048】
なお、上述したバックアップローラは必ずしもローラである必要はなく、板でもよい。エンドレスベルトの変形(たわみ)を防止できれば図の形態でなくてもよい。
【0049】
冷却された製品は、エンドレスベルトから剥離させ、ローラなどで巻き取る。離型する場所は必ずしも図9の位置である必要はなく、ベルトが一周して再度加熱が始められる前までに剥離が完了していればよい。
【0050】
上記の方法であれば、連続的に製品を製造できるため、大量生産にも適用できる。
【0051】
加圧ローラ4の表面は、平滑面でもよいし、製品に意匠面を持たせる場合は所望の形状を有するローラを押付ければよい。また、ローラ表面に微細パターン形状を設ければ、両面に微細形状が転写された製品を得ることも可能である。
【0052】
加圧ローラ4の表面を洗浄する洗浄機構を設けることで、ローラ表面を常に清浄な状態に維持できる。例えば、ローラ表面に樹脂膜が付着した場合、製品表面に樹脂膜の形状が転写されるのみでなく、樹脂同士が再溶融および付着して塗布済みの溶融樹脂が被塗布面から引き剥がされるか(ローラと樹脂膜との付着力が勝った場合)、製品表面に樹脂膜が付着する(ローラと樹脂膜との付着力が負けた場合)。
【0053】
洗浄機構は、スクレーパでロール表面に付着した汚れをかきとる方法、洗浄紙でスクレーパでの除去が困難な薄い樹脂膜を除去する方法および樹脂を溶解させる溶剤を用いて完全に樹脂膜を除去する方法などから適宜選択して使用すればよい。上記方法の他に、紫外線やオゾンなどを利用して、溶剤を用いてもなお残る樹脂層を除去する方法も利用できる。
【0054】
さらに、ローラ表面には樹脂が粘着し難い表面処理を施すことが好ましい。具体的には表面にフッ素コーティングすることが好ましい。他に、クロムメッキ、TiC、TiCN、CrC、TiN、CrN、DLC(ダイヤモンドライクコーティング)などのめっきも効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の効果を示すための塗布方法を示す図である。
【図2】本発明の効果を示すための塗布状態を示す図である。
【図3】本発明の効果を示すための塗布した樹脂の形状を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1を示す側面図である。
【図5】加圧ローラの取り付け方法を示す概略図である。
【図6】本発明の成形方法の各工程を示す説明図である。
【図7】複数の金型を備えて各場所で異なる工程を行う成形体の製造方法を示す図である。
【図8】図7で示した工程を回転台で行う場合を示す図である。
【図9】被塗布面をエンドレスベルトとして成形体の製造を行う方法を示す図である。
【図10】金型表面に塗布された樹脂の温度変化を示す図である。
【図11】シリコン基板に粘着させたアクリル樹脂を引き剥がずために必要なエネルギの温度依存性を示す図である。
【図12】塗布された樹脂の天面に生じるダイラインを示す図である。
【図13】従来塗布された樹脂の厚み分布が大きい状態でプレス加圧された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 被塗布面、1a 微細パターン、2 熱可塑性樹脂、3 塗布装置、3a 塗布装置の吐出口、4 加圧ローラ、7 エンドレスベルト、8 バックアップローラ、9 冷却手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細なパターンを有する被塗布面に、熱可塑性樹脂の吐出口であるTダイのリップと被塗布面との距離で、塗布された溶融した熱可塑性樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動しながら樹脂を塗布した後、樹脂と金型との付着力よりも樹脂と加圧ローラとの付着力を低い状態に維持しながら、直ちに加圧ローラで押圧することで被塗布面に塗布された樹脂の微細パターンへの充填を促進すると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行うことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の成形体の製造方法において、
微細なパターンを有する被塗布面を、溶融した熱可塑性樹脂が付着する温度まで昇温する昇温工程と、熱可塑性樹脂の吐出口と被塗布面との距離で、塗布された樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動させながら樹脂を塗布する塗布工程と、前記塗布した熱可塑性樹脂を、樹脂と金型との付着力よりも樹脂と加圧ローラとの付着力を低い状態に維持しながら、直ちに加圧ローラで順次押圧することで被塗布面に塗布された樹脂の微細パターンへの充填を促進すると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行うローラ加圧附形工程と、さらにプレス加圧しながら前記熱可塑性樹脂を冷却し固化させるプレス加圧・固化工程と、固化させた樹脂を被塗布面から剥離させる離型工程とを含む成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の成形体の製造方法において、
複数個の加圧ローラを塗布方向に並べて備え、塗布された樹脂を加圧ローラで複数回加圧できることを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の成形体の製造方法において、
前記加圧ローラは、ローラを上下動させると共に、塗布された溶融樹脂への押圧力またはローラと被塗布面との距離を任意に調節可能な手段を有し、塗布された溶融樹脂への押圧力または塗布された溶融樹脂の最終厚みを調節可能なことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の成形体の製造方法において、
前記ローラを上下動させる機構は、ローラ両端に独立して設けられ、塗布された溶融樹脂への押圧力または塗布された溶融樹脂の押圧後の厚みを両端で独立して調節可能なことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の成形体の製造方法において、
加圧ローラは加熱および冷却機能を有し、ローラ表面の温度を所望の温度に調節および維持できることを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の成形体の製造方法において、
加圧ローラの表面には、ローラの表面温度が高い場合でも、溶融樹脂が粘着し難いような表面処理を施したことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の成形体の製造方法において、
加圧ローラの表面に付着した樹脂屑および汚れを洗浄する機構を有することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の成形体の製造方法であって、
(a)微細パターンを有する金型の少なくとも微細パターンの温度を、次段の塗布工程で吐出部から吐出される熱可塑性樹脂が粘着する温度、さらには塗布されて金型表面(微細パターンを含む)に接触した熱可塑性樹脂の接触界面に固化層が形成されず、かつ、加圧ローラによる押圧力で微細パターンに樹脂が充填される程度に変形しうる程度の軟化状態を維持できる温度まで昇温する被塗布面の昇温工程と、
(b)塗布装置の吐出口から微細なパターンに前記熱可塑性樹脂が充填されるように、吐出部または金型を移動させて、吐出部と微細パターンを含む被塗布面とを塗布方向に相対的に移動させながら、かつ吐出口の先端部と前記被塗布面との距離によって最終製品の厚さが規定されるように溶融樹脂を吐出させることで成形体の最終形状および厚みにほぼ近い状態まで精密塗布を行う塗布工程と、
(c)塗布された樹脂に加圧ローラで押圧力を作用させることで微細パターンへの樹脂の充填を促進させると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行うローラ加圧附形工程と、
(d)前記塗布された樹脂をプレス加圧して、微細パターンに樹脂を完全に充填すると共に、金型を冷却して、樹脂を冷却および固化させるプレス加圧・固化工程と、
(e)固化した成形品を金型から剥離させる離型工程と
を含むことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の成形体の製造方法において、
塗布方向に走行する被塗布面を有するエンドレスベルトを備えると共に、エンドレスベルト表面に溶融樹脂を塗布する前段にエンドレスベルトを加熱する手段と、塗布工程および加圧附形工程の後段にエンドレスベルトを冷却する手段と、さらにその後段にエンドレスベルトから固化した樹脂を剥離させる離型手段とを有することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の成形体の製造方法において、
少なくとも、吐出部に対してエンドレスベルトを挟んで対向する位置および加圧ローラに対してエンドレスベルトを挟んで対向する位置にバックアップローラを備え、塗布時に発生する樹脂圧力の反力および加圧ローラの押圧力の反力を受け止めることで、塗布された溶融樹脂に樹脂圧力および押圧力を印加させることが可能なことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の成形体の製造方法であって、
(a)微細パターンを有するエンドレスベルトの少なくとも後段で溶融樹脂が塗布される微細パターンの温度を、次段の塗布工程で吐出部から吐出される熱可塑性樹脂が粘着する温度、さらには塗布されて微細パターンに接触した熱可塑性樹脂の接触界面に固化層が形成されず、かつ、加圧ローラによる押圧力で微細パターンに樹脂が充填される程度に変形しうる程度の軟化状態を維持できる温度に昇温する被塗布面の昇温工程と、
(b)塗布装置の吐出口から微細なパターン部の全体に前記熱可塑性樹脂が充填されるように、エンドレスベルトを移動させて、吐出部と微細パターンを含む被塗布面とを塗布方向に相対的に移動させながら、かつ吐出口の先端部と前記被塗布面との距離によって最終製品の厚さが規定されるように溶融樹脂を吐出させることで成形体の最終的な厚みおよび幅にほぼ近い状態まで精密塗布を行う塗布工程と、
(c)塗布された樹脂に加圧ローラで押圧力を作用させることで微細パターンに樹脂を完全充填させると共に、最終製品としての厚みと幅に附形する加圧附形工程と、
(d)樹脂が乗っている微細パターン部を冷却して、加圧ローラで押圧された樹脂を冷却および固化させる固化工程と、
(e)固化した成形品を微細パターンから剥離させる離型工程と
を含むことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の成形体の製造方法において、
上記工程(d)において、塗布方向に加圧ローラが複数個設置されている間で微細パターンを冷却して、樹脂を冷却および固化させている間も押圧力の印加および厚みと幅の調節を続けることを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の成形体の製造方法において、
被塗布面を有する金型を複数個備えると共に、樹脂吐出部と加圧ローラ、または金型の移動手段を備え、第一の場所の金型で昇温工程を行っている間に、第二の場所の金型で塗布工程とローラ加圧附形工程を行い、第三の場所の金型でプレス加圧と固化工程および第四の場所の金型で製品の離型工程を行い、金型または吐出部と加圧ローラを順次移動させながら、昇温工程が完了した場所の金型で塗布工程とローラ加圧附形工程を行い、塗布工程と加圧附形工程が完了した場所で固化工程を行うことを順次行うことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の成形体の製造方法において、
複数個の金型を搭載する回転台と、
吐出口先端と被塗布面とを塗布方向に相対移動させるために金型を塗布方向に移動させる手段、あるいは吐出部を塗布方向に移動させる手段と、
吐出口先端と被塗布面との距離を調節するために、吐出部あるいは被塗布面を上下動させるための移動手段と
を有することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の成形体の製造方法において、
吐出部および加圧ローラを各場所に移動させる横行手段と、
吐出口先端および加圧ローラと被塗布面とを塗布方向に相対移動させるために金型を塗布方向に移動させる手段あるいは吐出部を塗布方向に移動させる手段と、
吐出口先端と被塗布面との距離を調節するために、吐出部あるいは被塗布面を上下動させるための移動手段と
を有することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項17】
請求項1記載の成形体の製造方法に用いられる成形体の製造装置であって、
微細なパターンを有する被塗布面に、熱可塑性樹脂の吐出口であるTダイのリップと被塗布面との距離で、塗布された溶融した熱可塑性樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動しながら樹脂を塗布した後、樹脂と金型との付着力よりも樹脂と加圧ローラとの付着力を低い状態に維持しながら、直ちに加圧ローラで押圧することで被塗布面に塗布された樹脂の微細パターンへの充填を促進すると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行うことを特徴とする成形体の製造装置。
【請求項18】
請求項2に記載の成形体の製造方法に用いられる成形体の製造装置であって、
微細なパターンを有する被塗布面を、溶融した熱可塑性樹脂が付着する温度まで昇温する昇温手段と、
熱可塑性樹脂の吐出口と被塗布面との距離で、塗布された樹脂の厚みが規定されるように、被塗布面と吐出口とが相対的に移動させながら樹脂を塗布する塗布手段と、
前記塗布した熱可塑性樹脂を、樹脂と金型との付着力よりも樹脂と加圧ローラとの付着力を低い状態に維持しながら、直ちに加圧ローラで順次押圧することで被塗布面に塗布された樹脂の微細パターンへの充填を促進すると共に、塗布した樹脂の厚みの平滑化と、天面への鏡面の転写を行うローラ加圧附形手段と、
プレス加圧しながら前記熱可塑性樹脂を冷却し固化させるプレス加圧・固化手段と、
固化させた樹脂を被塗布面から剥離させる離型手段と
を含む成形体の製造装置。
【請求項19】
請求項18に記載の成形体の製造装置において、
塗布方向に走行する被塗布面を有するエンドレスベルトを備えると共に、エンドレスベルト表面に溶融樹脂を塗布する前段にエンドレスベルトを加熱する手段と、塗布工程および加圧附形工程の後段にエンドレスベルトを冷却する手段と、さらにその後段にエンドレスベルトから固化した樹脂を剥離させる離型手段とを有することを特徴とする成形体の製造装置。
【請求項20】
請求項19に記載の成形体の製造装置において、
被塗布面を有する金型を複数個備えると共に、樹脂吐出部と加圧ローラ、または金型の移動手段を備え、第一の場所の金型で昇温工程を行っている間に、第二の場所の金型で塗布工程とローラ加圧附形工程を行い、第三の場所の金型でプレス加圧と固化工程および第四の場所の金型で製品の離型工程を行い、金型または吐出部と加圧ローラを順次移動させながら、昇温工程が完了した場所の金型で塗布工程とローラ加圧附形工程を行い、塗布工程と加圧附形工程が完了した場所で固化工程を行うことを順次行うことを特徴とする成形体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−248431(P2009−248431A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98411(P2008−98411)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】