説明

成形品の製造方法

【課題】製造時間を縮小し、製造効率を向上させる成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、柔軟材料送り装置で供給する柔軟材料を提供する段階と、雌型と、該雌型と係合する雄型と、を含む射出成型用金型を提供する段階と、柔軟材料送り装置を駆動して柔軟材料を雌型と雄型との間へ挿入させる段階と、柔軟材料が雌型と雄型との間に挟まるように射出成型用金型を係合させて、雌型と雄型との間にキャビティを形成する段階と、キャビティの内部へ溶融の材料を注入して基板を形成すると同時に、柔軟材料と基板が一体に接続された半成形品を形成する段階と、射出成型用金型を開放した後、柔軟材料送り装置を駆動して柔軟材料と基板が一体に接続された半成形品を金型の外部へ移動させる段階と、半成形品の周囲の柔軟材料を切って、所定のサイズ及び形状を有し、且つ柔軟材料と基板が一体に接続された成形品を形成する段階と、を含む成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の製造方法に関し、特に表面に皮革、織物又は布が形成される成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
技術の発展に伴って、携帯電話、ノートパソコン、携帯情報端末(Personal Digital Assistant、PDAと略称)などの電子装置が広く使用されている。使用者は、前記電子装置の各種の機能を要求するばかりでなく、電子装置の外観に対しても新しい要求を提出している。
【0003】
周知のように、前記電子装置の外部には、電子装置を保護するハウジングが設置されている。前記ハウジングは、通常プラスチックを材料とし、射出成型方法で製造したものである。射出成型方法で製造した成形品は、重さが軽く、製造コストが安く、製造方法が簡単である、などの利点があるので、前記電子装置のハウジングなどの領域に広く使用されている。
【0004】
前記電子装置ハウジングの手触りを向上させ、外観を美しくするために、前記ハウジングの表面に皮革又は織物などを形成する。前記皮革又は織物が前記ハウジングの表面から落ちることを防ぐために、通常皮革又は織物とハウジングの表面との間に接着層を設置して、皮革又は織物が前記ハウジングに緊密に接着するようにする。前記ハウジングの表面に皮革又は織物などを形成する場合、まず皮革又は織物を所定の形状及びサイズに切った後、その皮革又は織物の1つの表面に接着層を設置する。次に、前記皮革又は織物を金型の内部に設置した後、金型の内部に前記ハウジングを形成する溶融の材料を注入する。次に、前記溶融の材料を固化させると、表面に皮革又は織物が一体に接着されたハウジングが形成される。
【0005】
しかし、前記ハウジングを製造する方法は、皮革又は織物を所定の形状及びサイズに切る工程と、その皮革又は織物の1つの表面に接着層を設置する工程を必要とするので、製造工程が難しく、製造コストが高い欠点がある。且つ、前記ハウジングを連続的に製造することができないので、製造効率が低い問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明は、製造時間を縮小し、製造効率を向上させる成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題を解決するために、柔軟材料送り装置で供給する柔軟材料を提供するステップと、雌型と、その雌型と係合する雄型と、を含む射出成型用金型を提供するステップと、前記柔軟材料送り装置を駆動して、前記柔軟材料を前記雌型と前記雄型との間へ挿入させるステップと、前記柔軟材料が前記雌型と前記雄型との間に挟まるように、前記射出成型用金型を係合させて、前記雌型と前記雄型との間にキャビティを形成するステップと、前記キャビティの内部へ溶融の材料を注入して、基板を形成すると同時に、前記柔軟材料と前記基板が一体に接続された半成形品を形成するステップと、前記射出成型用金型を開放した後、前記柔軟材料送り装置を駆動して、前記柔軟材料と前記基板が一体に接続された半成形品を金型の外部へ移動させるステップと、前記半成形品の周囲の柔軟材料を切って、所定のサイズ及び形状を有し、且つ前記柔軟材料と前記基板が一体に接続された成形品を形成するステップと、含む成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上述したように、前記成形品を連続に製造することができるので、前記成形品を製造する時間を縮小し、製造効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る成形品及びその製造方法に対して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る成形品10の断面図である。前記成形品10は、柔軟層12及び基板14を含む。前記柔軟層12は、皮革、織物、布の中の何れか一種から構成される。具体的に、天然皮革、人造皮革、綿織物、繊維織物、プラスチック織物又はナイロン織物から構成される。本実施形態で、好ましくは、人造皮革、綿織物又はナイロン織物から構成される柔軟層12を選択する。前記柔軟層12の底面は、前記基板14の上表面と接着する接着面122である。前記接着面122は、表面に微小な凹凸部が多く形成された粗い表面である。前記接着面122は、前記柔軟層12を製造する際に直接形成されるものであるか、滑らかな表面に対して研磨を実施して形成したものである。
【0011】
前記基板14は、射出成型方法で射出して形成したものである。前記基板14の材料として、プラスチック、ゴム、シリコーンなどを採用することができる。前記プラスチック材料として、ポリ塩化ビニル樹脂(Polyvinyl Chloride、PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate 、PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(Acrylonitorile Butadiene Styrene、ABS)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリイミド(Polyimide 、PI)、液晶高分子(Liquid Crystal Polymer 、LCP)、ポリエーテルイミド(Polyetherimide、PEI)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene Sulfide、PPS)、ポリスチレン(Polystyrene、PS)、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)等を単独或いは混合して用いることができる。好ましくは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はポリカーボネート(PC)を選択する。上述した材料において、前記アクリロニトリルブタジエンスチレン又はポリカーボネートが、前記皮革又は織物に緊密に接着されることができる。特に、人造皮革、綿織物又はナイロン織物にさらに緊密に接着される。
【0012】
前記基板14は、射出成型方法で製造したものである。射出成型方法で前記基板14を形成する場合、前記基板14を形成する溶融状態の材料によって、その基板14を前記柔軟層12の接着面122に密着させることができる。前記基板14と前記柔軟層12の接着面122との間の接着面で、前記基板14を形成する溶融の材料が前記接着面122の微小な凹凸部に入るので、両者の間の接着力が向上される。又、前記基板14と前記柔軟層12の接着面122との間の接続面積が増加されるので、両者の間の接着力をさらに向上させることができる。
【0013】
以下、図2から図5を参照しながら、本発明の成形品10の製造方法に対して詳細に説明する。その製造方法は、以下のステップを含む。
【0014】
まず、柔軟材料送り装置によって所定の方向へ供給される柔軟材料11を提供する。前記柔軟材料11は、両側に移動手段になる複数の矩形開口114が形成される長状体である。前記柔軟材料11は、皮革、織物、布の中の何れか一種から構成される。具体的に、天然皮革、人造皮革、綿織物、繊維織物、プラスチック織物又はナイロン織物から構成される。好ましくは、人造皮革、綿織物又はナイロン織物から構成される柔軟材料11を選択する。前記柔軟材料11は、他の部品と接着し、表面に微小な凹凸部が多く形成された接着面122を含む。前記柔軟材料11は、1つの表面に形成された接着面122を含む。前記接着面122は、表面に微小な凹凸部が多く形成された粗い表面である。前記接着面122は、前記柔軟材料11を製造する際に直接形成されるものであるか、滑らかな表面に対して研磨を実施して形成したものである。
【0015】
前記柔軟材料送り装置は、前記柔軟材料11が巻かれている第一柱状体80と、前記柔軟材料11を移動させる第二柱状体82と、を含む。前記第二柱状体82の両端の外周面には、前記柔軟材料11の矩形開口11と係合する複数の突出部822が形成されている。前記第二柱状体82がモーターなどにより回転する場合、前記突出部822が前記矩形開口11に係合されているので、前記柔軟材料11が所定の方向へ移動することができる。
【0016】
次に、雌型32と、その雌型32と係合する雄型34と、を含む射出成型用金型を提供する(図2を参照)。前記雄型34と接続する前記雌型32の表面には、凹部322が形成されている。前記雄型34には、前記雌型32と接続する表面に形成された突出部342と、雄型34の本体及び突出部342に貫通された湯道3422と、が形成されている。
【0017】
次に、前記第二柱状体82がモーターなどにより回転する場合、前記柔軟材料11が前記雌型32と前記雄型34との間に挿入されるように、前記第一柱状体80及び前記第二柱状体82を射出成型用金型の両端に設置する。その後、前記柔軟材料送り装置の第二柱状体82を駆動して、前記柔軟材料11が前記雌型32と前記雄型34との間に入るように、所定の方向(図3を参照)へ移動させる。本実施形態において、前記柔軟材料11の接着面122と前記雄型34の突出部342が向き合う。
【0018】
次に、前記柔軟材料11が前記雌型32と前記雄型34との間に挟まるように、雌型32と雄型34を係合させる。雌型32と雄型34を係合させる場合、前記柔軟材料11が前記雄型34の突出部342によって、前記雌型32の凹部322に入る。前記雌型32と前記雄型34が完全に係合されると、前記雌型32の凹部322と前記雄型34の突出部342との間にキャビティ36が形成される。
【0019】
次に、プラスチック、ゴム、シリコーンなどからなる溶融の材料を前記雄型34の湯道3422から前記キャビティ36の内部に注入して、前記基板14を形成する。前記溶融の材料を注入する場合、注入した溶融の材料の圧力によって、前記柔軟材料11が前記凹部322の底面側へ移動する。溶融の材料が前記キャビティ36に満ちると、前記柔軟材料11が前記凹部322の底面に接続される。且つ、溶融の材料が前記柔軟材料11に付着されるので、前記キャビティ36の内部に柔軟材料11と基板14が一体に接続された半成形品が形成される。
【0020】
前記基板14を製造する溶融の材料として、プラスチック、ゴム、シリコーンなどを採用することができる。前記プラスチック材料として、ポリ塩化ビニル樹脂(Polyvinyl Chloride、PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate 、PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(Acrylonitorile Butadiene Styrene、ABS)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリイミド(Polyimide 、PI)、液晶高分子(Liquid Crystal Polymer 、LCP)、ポリエーテルイミド(Polyetherimide、PEI)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene Sulfide、PPS)、ポリスチレン(Polystyrene、PS)、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)等を単独或いは混合して用いることができる。好ましくは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はポリカーボネート(PC)を選択する。
【0021】
次に、前記溶融の材料を固化させた後、前記射出成型用金型を開放する。
【0022】
次に、前記柔軟材料送り装置の第二柱状体82を駆動して、前記柔軟材料11と前記基板14が一体に接続された半成形品を金型の外部へ移動させる。これにより、前記基板14が形成されていない柔軟材料11が前記雌型32と前記雄型34との間へ移動される。
【0023】
次に、前記金型の外部へ露出した半成形品の周囲の柔軟材料11を切ると、所定のサイズ及び形状を有し、且つ前記柔軟材料11と前記基板14が一体に接続された成形品10が形成される。
【0024】
前記柔軟材料11を切ると同時に、前記雌型32と前記雄型34を係合させて、金型の内部に新しい半成形品を製造することができる。即ち、前記半成形品を製造するステップと、前記柔軟材料11を切るステップと、を同時に実施して、前記成形品10を連続に製造することができる。従って、前記成形品10を製造する効率を向上させることができる。
【0025】
又は、前記柔軟材料11に複数の半成形品を連続的に成形した後、各々の半成形品の周囲の柔軟材料11を切って、所定のサイズ及び形状を有する複数の成形品10を得る。この製造方法も、前記成形品10を連続に製造することができるので、前記成形品10を製造する効率を向上させることができる。
【0026】
前記成形品10の製造方法は、前記柔軟層12の1つの表面に微小な凹凸部を有する接着面122を形成するステップを更に含む。即ち、前記柔軟層12の1つの表面に研磨などの工程を実施して、微小な凹凸部を有する接着面122を形成するステップを更に含む。
【0027】
上述したように、前記成形品10を連続に製造することができるので、前記成形品10を製造する効率を向上させることができる。且つ、射出成型方法で前記基板14を形成する場合、前記基板14を形成する溶融の材料が前記接着面122の微小な凹凸部に入るので、両者が緊密に接続される。即ち、前記接着面122の微小な凹凸部により、前記柔軟層12が前記基板14に緊密に接着されたので、従来の接着剤を設置しなくても、柔軟層12が基板14から容易に落ちることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る成形品の分離断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る成形品を製造する柔軟材料送り装置を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る成形品を製造する金型の内部に柔軟材料を挿入させた状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る成形品を製造する金型の閉型状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る成形品を製造する金型の内部に溶融の材料を注入した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 成形品
11 柔軟材料
114 矩形開口
12 柔軟層
122 接着面
14 基板
32 雌型
322 凹部
34 雄型
342 突出部
3422 湯道
36 キャビティ
80 第一柱状体
82 第二柱状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟材料送り装置で供給する柔軟材料を提供するステップと、
雌型と、その雌型と係合する雄型と、を含む射出成型用金型を提供するステップと、
前記柔軟材料送り装置を駆動して、前記柔軟材料を前記雌型と前記雄型との間へ挿入させるステップと、
前記柔軟材料が前記雌型と前記雄型との間に挟まるように、前記射出成型用金型を係合させて、前記雌型と前記雄型との間にキャビティを形成するステップと、
前記キャビティの内部へ溶融の材料を注入して、基板を形成すると同時に、前記柔軟材料と前記基板が一体に接続された半成形品を形成するステップと、
前記射出成型用金型を開放した後、前記柔軟材料送り装置を駆動して、前記柔軟材料と前記基板が一体に接続された半成形品を金型の外部へ移動させるステップと、
前記半成形品の周囲の前記柔軟材料を切って、所定のサイズ及び形状を有し、且つ前記柔軟材料と前記基板が一体に接続された成形品を形成するステップと、を含むことを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
長状柔軟材料を用い、溶融の材料をキャビティの内部に注入して、前記柔軟材料と前記基板が一体に接続された半成形品を形成する前記ステップと、前記半成形品の周囲の前記柔軟材料を切って、所定のサイズ及び形状を有する成形品を形成する前記ステップと、を同時に実施することを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記柔軟材料送り装置は、前記柔軟材料が巻かれている第一柱状体と、前記柔軟材料を移動させる第二柱状体と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記柔軟材料の両側に移動手段になる複数の矩形開口が形成され、前記第二柱状体の両端の外周面には、前記柔軟材料の矩形開口と係合して、柔軟材料を移動させる複数の突出部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記柔軟材料の接着面の1つの表面に研磨工程を実施して、微小な凹凸部を有する接着面を形成するステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記柔軟材料が皮革、織物、布の中の何れか一種から構成されることを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
前記基板の材料として、プラスチック、ゴム、シリコーンを採用することができることを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
前記溶融の材料として、ポリ塩化ビニル樹脂(Polyvinyl Chloride、PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate 、PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(Acrylonitorile Butadiene Styrene、ABS)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリイミド(Polyimide 、PI)、液晶高分子(Liquid Crystal Polymer 、LCP)、ポリエーテルイミド(Polyetherimide、PEI)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene Sulfide、PPS)、ポリスチレン(Polystyrene、PS)、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)等を単独或いは混合して用いることを特徴とする請求項7に記載の成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−149070(P2009−149070A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307639(P2008−307639)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(508155310)富士康(香港)有限公司 (185)
【Fターム(参考)】