説明

成形成膜装置

【課題】成形型部4を挟んで一対の成膜型部5、6が設けられた固定金型2を用いて成形体の成形工程と成形された成形体に成膜10を施す成膜工程とを同時的に行う場合に、成膜型部5、6内を真空にする真空ポンプ12を一つにする。
【解決手段】真空ポンプ12を、成膜型部5、6の中央位置に配すると共に、真空ポンプ12から成膜型部5、6に至る配管を分岐した等長のものとし、かつ分岐配管に設けられる開閉バルブ14を成膜型部5、6に近接配置した状態で、該真空ポンプ12を装置下方に設けたスペースSに配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の射出成形工程と、該成形された成形体に成膜する成膜工程とを連続的に行うことができる成形成膜装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、サイドターンランプ等の燈体を製造する場合に、透光性材料によって形成されるレンズ部と光源が組込まれる燈本体とを互いに突き合わせ、該突き合わせ部に樹脂材を射出成形することで一体化して製造するようにしたものが知られている(例えば特許文献1)。ところでこのような燈体において、光度を確保するため、燈本体の表面に反射膜を形成することが要求され、そこで燈体を製造するための一連の製造工程中に成膜工程を設けることを提唱し、これによって成形成膜製品を、成膜面に塵埃が付着したり傷ついたりすることがなく、しかも効率よく製造できるようにしたものを提唱した(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−36289号公報
【特許文献2】特許第3688289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記従来の成形成膜装置について成膜装置が一台設けられたものであり、このため、成膜装置を二台設けて効率の高い成形成膜を行おうとした場合、真空ポンプについても二台設ける必要があって装置全体が大型化してしまうという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、一対の金型を突き合わせて型締めして成形体の射出成形がなされる成形工程と、該成形体の成膜をする成膜工程とが実行できる成形成膜装置において、金型の一方には、成形体を成形するための成形型部を挟んで両側に第一、第二の成膜型部が設けられ、他方には、第一、第二の成形型部が設けられたものとして、前記一対の金型を、一方の金型の成形型部と他方の金型の第二成形型部とが互いに対向しているときには、他方の金型の第一成形型部と他方の金型の第一成膜型部とが互いに対向し、一方の金型の成形型部と他方の金型の第一成形型部とが互いに対向しているときには他方の金型の第二成形型部と一方の金型の第二成膜型部とが互いに対向して成形工程と成膜工程とを同時的に実行できるように構成するにあたり、第一、第二の成膜型部に配管を介して連通連結される真空ポンプは一つとし、真空ポンプに接続される配管を分岐して第一、第二の成膜型部に連通すると共に、該分岐配管に設けられる開閉バルブは、第一、第二成形型部側に近接配置したことを特徴とする成形成膜装置である。
請求項2の発明は、真空ポンプは、第一第二の成膜型部の中央位置に配し、真空ポンプから各成膜型部までの配管を等長にしたことを特徴とする請求項1記載の成形成膜装置である。
請求項3の発明は、成形成膜装置を搭載する基台の下方にスペースを設け、該スペースに真空ポンプを配したことを特徴とする請求項1または2記載の成形成膜装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、第一、第二の成膜型部がありながら、真空ポンプは一つでよくなって部品点数を少なくでき、しかも各成膜型部に至る分岐配管には、各対応する成膜型部側に近接する状態で開閉バルブが設けられているため、成膜型部に近いところまで真空に維持できることになって、成膜時に真空にするための時間が短くなるうえ、アルゴンのような不活性ガスを使用する場合に、該不活性ガスの消費も少なくできることになって作業性が向上する。
請求項2の発明とすることにより、各成膜型部を真空にするための時間を同じにできることになって成膜工程を制御しやすいものにできる。
請求項3の発明とすることにより、真空ポンプの配設スペースを装置下方に確保できることになって装置全体をコンパクト化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図中、1は成形成膜装置であって、該成形成膜装置1は、互いに相対移動する一対の金型からなるが、本実施の形態では一方が固定金型2、他方が可動金型3となっている。固定金型2には、中央の成形型部4とその両側(本実施の形態では左右両側)に位置する第一、第二の一対の成膜型部5、6とが設けられ、また可動金型3には第一、第二の一対の成形型部7、8とが設けられている。そして可動金型3は、第一成形型部7と第一成膜型部5とが対向し、かつ第二成形型部8と成形型部4とが対向して互いに型締めされる第一位置と、第一成形型部7と成形型部4とが対向し、かつ第二成形型部8と第二成膜型部6とが対向して互いに型締めされる第二位置とに移動できるように設定されている。そして可動金型3が第一位置に位置するときには、図1(A)で示すように、互いに突き合わされて型締めされた成形型部4と第二成形型部8とで成形品9を射出成形する工程と、第一成形型部7と第一成膜型部5とで成形品9に成膜10を施す工程とが同時的に実行され、第二位置に位置するときには、図1(B)で示すように、互いに突き合わされて型締めされた成形型部4と第一成形型部7とで成形品9を射出成形する工程と、第二成形型部8と第二成膜型部6とで成形品9に成膜10を施す工程とが同時的に実行されるようになっている。因みに、成膜型部5、6は、真空状態において蒸着により成膜するものであって、このような真空蒸着法は物理蒸着法(PVD)と化学蒸着法(CVD)とに大別され、物理蒸着法は、真空容器中で気化させた薄膜物質を用いて薄膜を形成するものであって、気化させる手段によって、蒸発系とスパッタ系とにさらに大別され、蒸発系には狭義の真空蒸着、分子線蒸着(MBE)、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着等があり、スパッタ系としてはコンベンショナル・スパッタリング、マグネトロン・スパッタリング、イオンビーム・スパッタリング、ECR(電子サイクロトロン共鳴)スパッタリング等が知られている。また、化学蒸着法は、薄膜構成原子を含む化合物ガスを原料とし、化学反応を利用して薄膜を形成するものであって、化学反応のためのエネルギーを得る方法や原料ガスの種類によって分類されており、化学輸送法、反応蒸着法、プラズマ励起反応法、光励起法、レーザ励起反応法等が知られている。
【0007】
11は前記成形成膜装置1を搭載する基台であって、該基台11は、搭載面下方にスペースSが設けられており、該スペースSに一台の真空ポンプ12が配設されている。真空ポンプ12は、前記成膜型部5、6から等距離の位置に位置するよう配されており、そして真空ポンプ12に接続される配管13は二つに分岐され、該分岐配管13が前記それぞれの成膜型部5、6に等長の状態で連通連結するように設定されている。そして分岐配管13には、成膜型部5、6に近接する状態で開閉用のバルブ14がそれぞれ設けられていて、成膜型部5、6内を選択的に真空雰囲気にできるように設定されている。
【0008】
叙述のごとく構成された本発明の実施の形態において、可動金型3の移動に基づいて、成形体9の射出成形工程および成形された成形体9に対して成膜10を施す成膜工程とが同時的に実行できて、効率のよい成形成膜体の製造ができるものでありながら、真空ポンプ12は一つでよくなって部品点数を少なくでき、しかも各成膜型部5、6に至る分岐配管13には、各対応する成膜型部5、6側に近接する状態で開閉バルブ14、14が設けられているため、配管13としては、成膜型部5、6に近いところまでは真空に維持できることになって、成膜時に成膜型部5、6内を真空にするための時間が短くなるうえ、アルゴンのような不活性ガスを使用して成膜する場合に、該不活性ガスの消費も少なくできることになって作業性が向上する。
【0009】
そのうえこのものでは、真空ポンプ12から各成膜型部5、6に至るまでの配管が等長になっているため、各成膜型部5、6を真空にするための時間を同じにできることになって成膜工程が制御しやすいものになる。
しかも、真空ポンプ12の配設スペースSを、成形成膜装置1の下方空間に確保できることになって装置全体をコンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)(B)は成形成膜工程をそれぞれ示す概略工程図である。
【図2】(A)(B)は成膜成形装置の概略正面図、側面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 成膜成形装置
2 固定金型
3 可動金型
4 成形型部
5、6 成膜型部
7、8 成形型部
9 成形体
10 成膜
12 真空ポンプ
13 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金型を突き合わせて型締めして成形体の射出成形がなされる成形工程と、該成形体の成膜をする成膜工程とが実行できる成形成膜装置において、金型の一方には、成形体を成形するための成形型部を挟んで両側に第一、第二の成膜型部が設けられ、他方には、第一、第二の成形型部が設けられたものとして、前記一対の金型を、一方の金型の成形型部と他方の金型の第二成形型部とが互いに対向しているときには、他方の金型の第一成形型部と他方の金型の第一成膜型部とが互いに対向し、一方の金型の成形型部と他方の金型の第一成形型部とが互いに対向しているときには他方の金型の第二成形型部と一方の金型の第二成膜型部とが互いに対向して成形工程と成膜工程とを同時的に実行できるように構成するにあたり、第一、第二の成膜型部に配管を介して連通連結される真空ポンプは一つとし、真空ポンプに接続される配管を分岐して第一、第二の成膜型部に連通すると共に、該分岐配管に設けられる開閉バルブは、第一、第二成形型部側に近接配置したことを特徴とする成形成膜装置。
【請求項2】
真空ポンプは、第一第二の成膜型部の中央位置に配し、真空ポンプから各成膜型部までの配管を等長にしたことを特徴とする請求項1記載の成形成膜装置。
【請求項3】
成形成膜装置を搭載する基台の下方にスペースを設け、該スペースに真空ポンプを配したことを特徴とする請求項1または2記載の成形成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−284768(P2008−284768A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131413(P2007−131413)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000149468)株式会社大嶋電機製作所 (89)
【Fターム(参考)】