説明

成膜が改善されたフルオロポリマー水性ハイブリッド組成物

本発明は、シード乳化重合法により製造された、改善された成膜特性を有する水性フルオロポリマーハイブリッド組成物に関する。シードは、フルオロポリマー分散である。シードされた分散に対して順次、少なくとも2つの異なるモノマー組成物が添加される。これらのモノマー組成物は好ましくは、アクリルモノマーを含む。第1のモノマー組成物は、フルオロポリマー分散との混和性を理由として選択される。第2のモノマー組成物は、30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するように選択される。最終組成物は、5℃未満の最低成膜温度(MFFT)および50g/リットルの最大VOCを有するコーティングを製造するように調合できる。組成物は、コーティングおよび膜用として特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シード乳化重合法により製造された、改善された成膜特性を有する水性フルオロポリマーハイブリッド組成物に関する。シードは、フルオロポリマー分散である。シードされた分散に対して順次、少なくとも2つの異なるモノマー組成物が添加される。これらのモノマー組成物は好ましくは、アクリルモノマーを含む。第1のモノマー組成物は、フルオロポリマー分散との混和性を理由として選択される。第2のモノマー組成物は、30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するように選択される。最終組成物は、5℃未満の最低成膜温度(MFFT)および50g/リットルの最大VOCを有するコーティングを製造するように調合できる。組成物は、コーティングおよび膜用として有用である。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー系コーティングおよび膜は、卓越した特性をもつことから広く使用されている。例えば70〜80%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂をベースとし、残りが選択されたアクリル樹脂であるコーティングおよび膜は、その卓越した屋外耐候性ならびに、耐薬品性および成形性などのその他の特性のため周知である。さまざまなフッ素化アクリルモノマーをベースとする別の部類のフルオロポリマー系コーティングは、その落書き防止性および耐汚染性で知られている。
【0003】
これらの優れた特性を維持しながら、より環境に無害な方法で作ることのできるフルオロポリマー系コーティングおよび膜に対する必要性が存在する。例えば、PVDFベースの塗料は一般に、PVDF樹脂を溶解させるかまたは分散させるために使用される有機溶剤を高いレベルで含んでいる。これらの有機溶剤は、典型的に揮発性有機化合物(VOC)として分類されその用途が規制されている。PVDF系コーティングおよび膜へのその他の一部のルートには、溶剤は関与しないかもしれないが、エネルギー集約型の高温焼成または溶融加工ステップが関与する。
【0004】
PVDFベースの水性組成物は、溶剤ベースの系に比べて環境に無害である。このようなハイブリッド組成物(すなわち2つ以上のタイプのポリマーを含む組成物)は例えば米国特許第5,804,650号明細書中に示されている。特開2003231722号公報は、分子量が異なる2つのフッ素コポリマーと単一のアクリルモノマー組成物が関与する3層コアーシェル組成物について記述している。米国特許第5,349,003号明細書および米国特許第5,646,201号明細書は、フッ化ビニリデン/アクリル組成物について記述している。米国特許第6,680,357号明細書および米国特許出願公開第2006264563号明細書は、異なる形態を作り上げる目的で2つ以上の異なるアクリルモノマー組成物を使用する可能性に言及している。相の性質についての説明もマルチフィードシステムの例も一切記されていない。
【0005】
これらのハイブリッド組成物は分散がニートな形態で連続膜を形成する最低温度である最低成膜温度(MFFT)により特徴づけできる。MFFTは、ニート分散および調合後分散の両方の物理特性であり、「MFFTバー」(Paul Gardner Inc.)などのグラジエント温度計器上で測定可能である。分散で作られたコーティングまたは塗料を塗布する場合、完全に乾燥した塗膜を達成するためには、調合後のMFFTが、コーティングまたは塗料が乾燥する温度よりも低いことが必要である。したがって、コーティングおよび塗料調合物に成膜助剤(coalescent)とも呼ばれる成膜溶剤を添加して、調合物のMFFTを意図された乾燥温度よりも低い温度まで低下させるのが一般的な実践方法である。屋外塗装(field painting)用塗料の場合、乾燥温度は多くの場合制御不可能であることから、調合後のMFFTが5℃未満さらには0℃未満となるように塗料を調合して、低温成膜特性(例えば約4℃、すなわち40°Fでの成膜特性)が得られるようにするのが一般的な実践方法である。優れた成膜助剤を(ポリマー固体に対して)1%加えると、分散のMFFTを約2℃低下させることができるというのが一般的な経験則である。こうして、30℃のニートMFFTを有する分散には通常、調合後MFFTを約0℃にするためにポリマー固体に対して約15%の成膜助剤が必要である。成膜溶剤は、調合後のVOCに影響を及ぼす。EPA方法24により測定されるように、50g/(1リットル未満の水)のVOCレベルを超過することなく、(調合物の顔料含有量に応じて)ポリマー固体に対して5〜7%以下の成膜助剤を付加することが通常可能である。したがって、ポリマー固体に対して約15%の成膜助剤を含む30℃のニートMFFTを有する分散から作られた調合後の屋外用塗料またはコーティングは、典型的に、50g/(1リットル未満の水)をはるかに上回るVOCレベルを有する。
【0006】
特開平01−072819A公報および特開2003231722公報などのさまざまな特許中の実施例は、高性能コーティングを作るために使用可能である、30〜60℃範囲内のニートMFFTを有するPVDFベースのハイブリッド分散について記述している。同様にして、近年、例えば40〜60℃の範囲のMFFTを有するダイキン工業株式会社製の水性フルオロポリマーエマルジョンのZeffle SETMシリーズなどの幾つかの市販製品が入手可能になっている。これらの材料に基づく調合物を用いて5℃という低い温度で成膜させるためには、ポリマー固体に対して10%またはそれ以上という高い成膜助剤レベルが必要とされる。このような調合物についてのVOCレベルは、100〜250g/(1リットルの水)の範囲内にあり、これは、溶剤系コーティングのアプローチに比べ環境に対する影響の観点からみて著しい改善である。しかしながらこれらの材料を用いて、耐候性および耐汚染性などの主要な特性を犠牲にせずに約100g/(1リットルの水)より低いVOCレベルを達成することは困難である。このことはすなわち、規則によりVOCが50g/(1リットルの水)以下に制限される数多くの屋外利用分野においてこれらを将来使用することができないかもしれないということを意味している。その結果、耐候性または耐汚染性を著しく喪失することなく50g/リットルの最大VOCで5℃以下のMFFTを有する安定した塗料およびコーティングを達成するために調合可能である、新しいフルオロポリマーハイブリッド分散が求められている。この目的を達成するためには、ハイブリッド組成物は、20℃以下、好ましくは15℃以下のニートMFFTを有していなければならない。
【0007】
20℃未満のMFFTを有する一部の水性フルオロポリマーハイブリッド組成物が、米国特許第5646201号実施例中に記載されている。これらは、50%のメタクリル酸メチル、50%のアクリル酸エチルという組成の単一のアクリル組成物を用いて生産され約26CのTgを有している。しかしながら、実際には、この要領で作られた低MFFTのハイブリッド分散から、50g/(1リットルの水)未満のVOCと特性のバランスが取れた安定した塗料調合物を調合することは困難である。これらのハイブリッド分散に見られる調合安定性の問題には2種類ある。すなわち、アクリル組成物が共重合された酸モノマーをほとんどまたは全く含んでいない場合(典型的には合計モノマーの重量に基づいて約2wt%未満)、調合物は、調合プロセス中またはその後の保管時点でフロキュレーションの問題を呈する。一方、アクリル組成物が、約7〜10の典型的な水性コーティングのpHまで塩基を用いて中和された後水性フルオロポリマー分散のフロキュレーション問題を最小限におさえるために充分な共重合された酸モノマーを含んでいる場合には、中和された水性フルオロポリマー組成物のMFFTは経時的に上昇し、より高レベルの成膜助剤が必要となり、かつ不利な粒子形態に起因して耐候性などの特性が失われることになる。MFFT上昇の現象は、約10℃未満の非常に低いTgを有するアクリル組成物を選択することによって最小限におさえることができるが、その場合、耐汚染性などのその他の特性が損なわれる。
【0008】
一部のフルオロポリマー系材料が有する別の環境問題は、それらが多くの場合フルオロ界面活性剤で作られ、ペルフルオロアルカノエート残渣または化学的に分解してペルフルオロアルカノエートまたはペルフルオロアルカン酸を含有し得る種を含んでいるかもしれないという点にある。これらのペルフルオロアルカノエートの多くは、環境中で非常に長い寿命を有し、生物濃縮することが見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,804,650号明細書
【特許文献2】特開2003−231722号公報
【特許文献3】米国特許第5,349,003号明細書
【特許文献4】米国特許第5,646,201号明細書
【特許文献5】米国特許第6,680,357号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2006−264563号明細書
【特許文献7】特開平01−072819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、最大VOCが50g/リットルである安定した高性能塗料およびコーティングを製造するために調合可能な20℃以下のMFFTを有するフルオロポリマーベースの分散に対する必要性が存在する。理想的には、この分散はフルオロ界面活性剤を含まない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
意外にも、少なくとも2つの異なるエチレン不飽和モノマー組成物を用いたフルオロポリマーシード法を調整して、20℃以下のMFFT、好ましくは15℃以下のMFFTを有し、周囲温度の乾燥条件向けの安定した高性能コーティングにすることのできる水性フルオロポリマーハイブリッド組成物を提供することができる、ということが見出された。これは、第1のモノマー組成物をフルオロポリマー分散との混和性を理由として選択し、第2のモノマー組成物を30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するように選択することによって行なわれる。
【0012】
水性フルオロポリマーハイブリッド組成物は、最大VOCを50g/リットルとして5℃以下のMFFTを有するコーティング組成物の形に調合可能である。
【0013】
本発明は、安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物において、
a) フルオロポリマーと;
b) 前記フルオロポリマーと混和可能である第1のビニルポリマーと;
c) 前記第1のビニルポリマーと異なる組成を有し、かつ30℃未満のTgを有する第2のビニルポリマーと;
d) 任意にはその他のビニルポリマーと、
を有する組成物であって、前記フルオロポリマー分散が、20℃未満の最低成膜温度(MFFT)を有する組成物に関する。
【0014】
本発明は同様に、環境に無害なフルオロポリマーハイブリッド組成物を形成するための方法において;
a) フルオロポリマー粒子が300nm未満の粒径を有する、水性フルオロポリマーシード分散の形成ステップと;
b) 前記フルオロポリマーの存在下で少なくとも2つの異なるビニルモノマー組成物を順次重合させて安定したフルオロポリマー組成物を形成するステップと、
を含む方法であって、第1のビニルモノマー組成物が前記フルオロポリマーと混和可能なポリマーを形成し、第2のビニルモノマー組成物が30℃未満のTgを有するポリマーを形成し、かつ前記フルオロポリマー組成物が20℃未満の最低成膜温度(MFFT)を有する、プロセスにも関する。
【0015】
本発明はさらに、(a)フルオロポリマーと;(b)前記フルオロポリマーと混和可能である第1のビニルポリマーと;(c)前記第1のビニルポリマーと異なる組成を有し、かつ30℃未満のTgを有する第2のビニルポリマーと;(d)任意にはその他のビニルポリマーと、をそのポリマー構成要素として有するコーティング組成物において、5℃未満の最低成膜温度(MFFT)および50g/(1リットルの水)未満のVOCを有する組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、フルオロポリマー分散の存在下で少なくとも2つの異なるエチレン不飽和モノマー組成物を順次重合することによって作られた水性フルオロポリマー組成物に関する。
【0017】
本発明の組成物は、フルオロポリマーシード分散を用いて形成される。本明細書中で使用される「フルオロモノマー」という用語または「フッ素化モノマー」という表現は、重合するアルケンの二重結合に対して付着した少なくとも1つのフッ素原子、フルオロアルキル基、またはフルオロアルコキシ基を含む重合可能なアルケンを意味する。本明細書中で使用される「フルオロポリマー」という用語は、少なくとも1つのフルオロモノマーの重合により形成されたポリマーを意味し、これにはホモポリマー、コポリマー、ターポリマーおよびより高次のポリマーが含まれ、これらは本来熱可塑性である、つまり成形および押出し加工プロセスにおいて行なわれるように熱を加えた時点で流動することで有用な部品に整形可能である。熱可塑性ポリマーは典型的には結晶融点を示す。
【0018】
本発明のためのシード粒子として使用可能なフルオロポリマーとしては、フッ化ビニリデン(VF2)ホモポリマー(I)、ならびにフッ素を含むエチレン不飽和化合物(例えばトリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニルフルオリド、ペルフルオロアクリル酸)、ジエン化合物(例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン)、非フッ素化エチレン不飽和化合物(例えばシクロヘキシルビニルエーテル)である(II)と(I)とのコポリマーが含まれる。好ましいフルオロポリマー組成物は、50〜100重量部好ましくは70〜100部のフッ化ビニリデンホモポリマー;0〜30重量部のヘキサフルオロプロピレン;および0〜30重量部の(II)として前述したその他の任意のモノマーを含む。好ましくは、フルオロポリマーは30J/g未満(示差走査熱量計により測定されたもの、第2熱)の結晶化度を有する。
【0019】
当業者であれば、出発材料として詳細に示された特定のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンポリマーラテックスに加えて、本発明では等価物として、上述の反応中でシードポリマーとして代用できるその他の公知のフッ化ビニリデンコポリマー(例えば米国特許第5,093,427号明細書およびPCT出願国際公開第98/38242号パンフレットを参照)およびフッ化ビニリデンホモポリマー(米国特許第3,475,396号明細書および同第3,857,827号明細書を参照)が企図されているということを理解する。
【0020】
本発明は同様に、PCT出願国際公開第98/46657号パンフレットおよび国際公開第98/46658号パンフレットに記述されているタイプのフッ化ビニルポリマーを適切なシードポリマーとして企図している。
【0021】
水性フルオロポリマー分散は、フルオロポリマー粒径が300nm未満、より好ましくは200nm未満にとどまるかぎり、従来のあらゆるエマルジョン重合方法によって生産可能である。水性フルオロポリマー分散は、例えば、界面活性剤、開始剤、連鎖移動剤およびpH調整剤の存在下で、水性媒質中のモノマー(I)または(I)および(II)の乳化重合などによって、調製可能である。フルオロポリマー分散は好ましくは、遊離ラジカル開始を用いて合成される。フルオロポリマー乳化プロセス中で典型的に使用される連鎖移動剤、緩衝剤、除汚剤およびその他の添加剤も同様に存在してよい。
【0022】
水性フルオロポリマー分散を調製するために使用可能であるかまたはその後製造プロセスの後半のステップ中に分散に添加可能である界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および両性界面活性剤が含まれる。これらは別々にまたは2つ以上の組合せの形で使用可能である。通常使用される界面活性剤の量は、合計フルオロポリマー粒子100重量部あたり0.05〜5重量部である。
【0023】
フルオロポリマーを形成するにあたりフルオロ界面活性剤を使用してもよいが、環境上の理由から非フッ素化界面活性剤が好ましい。有用な非フッ素化界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤ならびに反応性乳化剤が含まれる。一部の有用な界面活性剤としては、高級アルコールサルフェート(例えばアルキルスルホン酸のナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、コハク酸のナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のナトリウム塩)のエステル;アルキルピリジニウムクロリド;アルキルアンモニウムクロリド;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエステルグリセロールエステル、ソルビタンアルキルエステル、およびそれらの誘導体;ラウリルベタイン;スチレンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウムおよびアリールアルキルスルホン酸ナトリウム;ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、およびそれらの塩;ブロックポリマーを含む、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールセグメントを有する乳化剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の水性フルオロポリマーハイブリッド組成物は、フルオロポリマーシード分散の存在下で順次少なくとも2つの異なるモノマー組成物を重合することによって形成される。各々のモノマー組成物は、1つ以上のモノマーで構成されている。モノマー組成物は、別々のホモポリマーまたはコポリマーを形成する。本明細書中で使用される「コポリマー」という用語は、2つ以上の化学的に全く異なるモノマー種で形成されたポリマーを意味するものとして用いられ、ターポリマーおよび4種以上の異なるモノマーを伴うポリマーを含むことができる。2種以上のモノマーがモノマー組成物中に存在する場合、モノマー組成物は、反応装置へのモノマー組成物の添加全体を通して均質であってよく、またはモノマー組成物は均質でなくグラジエントコポリマーを生産してもよい。グラジエントコポリマーは、当該技術分野において公知の通り、タンクから反応装置まで1つのモノマーを補給し同時に同じタンク内に第2のモノマーを補給することなど、複数の方法で形成されてよく、したがって反応装置に対するモノマーの比率は持続的に変動する。グラジエントポリマーはまた、例えばRAFTまたは窒素酸化物作用物質を用いてポリマーのアーキテクチャを制御することなどによって、制御型ラジカル重合プロセスを使用して形成されてもよい。
【0025】
モノマー組成物の少なくとも1つは、フルオロポリマーとの混和性を理由として選択される。モノマー組成物の少なくとも1つは、30℃未満のガラス転移温度を有するように選択される。2つの異なるモノマー組成物の比率は、10:90から90:10まで、好ましくは25:75から75:25までの範囲であり得る。モノマー組成物は、単一のエチレン不飽和モノマーで構成され得るが、より好ましくは2つ以上の異なるモノマーを含む。当業者であれば、モノマー混合物を調整して、Tg、耐候性、引張り強度および耐薬品性などの異なる(コ)ポリマー特性を生成してよいということを認識するものである。モノマー組成物は全て非−(メト)アクリルモノマーであり得るものの、組成物が少なくとも1つのアクリルモノマーを含むこと、そして一つの好ましい実施形態においては全てのモノマーがアクリルモノマーであることが好ましい。
【0026】
モノマー組成物中で有用なエチレン不飽和(ビニル)モノマーは、アクリル酸アルキルエステル(a)および/またはメタクリル酸アルキルエステル(b)、官能基を伴う共重合可能なモノマー(c)、そしてアクリル酸エステル以外の非官能性モノマー(d)を含み、一部の場合においてメタクリル酸エステルを添加することができる。
【0027】
有用なアクリル酸エステル(a)モノマーには;アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。有用なメタクリル酸エステル(b)モノマーにはメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、およびメタクリル酸トリフルオロエチルが含まれるが、これらに限定されない。有用な官能性共重合可能なモノマー(c)にはα,β不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸);ビニルホスホン酸およびビニルスルホン酸、ビニルエステル化合物、アミド化合物(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルアクリルメタミド、N−ジアルキルメタクリルアミド、N−ジアルキルアクリルアミド);ヒドロキシル基を含むモノマー(例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ジエチレングリコールエチルエーテル);エポキシ基を含むモノマー(例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル)、シラノール類を含むモノマー(例えば、メタクリル酸γ−トリメトキシシラン、メタクリル酸γ−トリエトキシシラン);アルデヒド類を含むモノマー(例えば、アクロレイン)、アルケニルシアン化物類(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)、およびその他のタイプの官能性モノマー、例えばメタクリル酸アセトアセトキシエチルが含まれるが、これらに限定されず;有用な非官能性モノマー(d)には共役ジエン(例えば1,3−ブタジエン、イソプレン)、アクリル酸フルオロアルキル類、メタクリル酸フルオロアルキル類、芳香族アルケニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンハロゲン化物)、およびジビニル炭化水素化合物(ジビニルベンゼン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
第1のビニルモノマー組成物は、フルオロポリマー組成物との混和性を理由として選択される。本明細書中で用いられる「混和性」という用語は、ポリマー配合物が、ニート成分ポリマーのガラス転移温度からの中間温度で示差走査熱量計測による単一のガラス転移を示すことを意味する。好ましい第1のモノマー組成物は、少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも70%の以下の7種のビニルモノマーすなわち酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸アセトアセトキシエチルおよびアクリロニトリル、そして約10wt%以下のヒドロキシ官能性モノマー、酸性官能性モノマー、スチレンまたはアルファメチルスチレンを含み、これらは全て、フルオロポリマー組成物との相溶性がきわめて低い。この範囲外の第1のモノマー組成物が使用される場合、組成物の耐候性能は低下する。
【0029】
第2のビニルモノマー組成物は30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するように選択される。これは、当該技術分野において周知の通り、適切な比率で高いTgと低いTgのモノマーを組合せることによって達成可能である。このようにして得たコポリマー組成物の結果としてのTgの値は、フォックス方程式を用いて計算してよい。特に好ましいのは、約0°〜20℃の間のTgを有する組成物である。Tgが約0℃未満である場合、材料の耐汚染性特性が劣る。Tgが約20℃より高い場合材料は、高レベルの成膜助剤を用いずに低温で成膜することができない。
【0030】
第2のモノマー組成物を、異なるタイプの粒子形態を作り上げるように選択することも同様に可能である。第2のモノマー組成物がフルオロポリマーシードおよび第1のモノマー組成物の両方と相溶性/混和性を有するように選択される場合、比較的均質な相互貫入ポリマー網状組織(IPN)タイプの形態が形成するものと予測される。第2のモノマー組成物が、フルオロポリマーシードとの相溶性/混和性を有するものの第1のモノマー組成物とは非相溶性であるように選択される場合には、2領域形態が予測され、ここでフルオロポリマーはそれでもなお2つの領域間に分布している。考えられる2領域形態の例は、Donald Sundberg博士と共働者によるさまざまな論評の中で論述されており、コア−シェル形態、「ラズベリー」型形態、および「ドングリ」形態が含まれる。第2のモノマー組成物がフルオロポリマーシードおよび第1のモノマー組成物と非相溶性であるように選択されている場合、最終的形態は、一方の領域にはフルオロポリマーが全く無い状態で2−領域構造を有するものと予測される。最適な2−領域形態は、利用分野の必要性により左右される。例えば、低VOCで高耐候性のコーティングの場合には、最適な形態は、コア領域とシェル領域の間にフルオロポリマーが分布したハードコア−ソフトシェル構造であると考えられている。
【0031】
第1および第2のモノマー組成物に加えて、第3、第4またはそれ以上のモノマー組成物を、順序付けした形で付加してよい。ビニルモノマー組成物の1つ以上が、後続する反応を受けて架橋または合成後修飾反応をもたらすことのできる官能性モノマーも同様に含んでいてよい。モノマー組成物の1つ以上が同様に、耐薬品性を改良するために、フルオロ(メト)アクリレートまたはメタクリル酸トリフルオロエチルなどのフッ素含有モノマーも含んでいてよい。
【0032】
モノマー混合物の合計数量は、100重量部のフルオロポリマーあたり20〜300重量部、好ましくは40〜200、最も好ましくは60〜150重量部でなくてはならない。合計モノマー数量が100重量部のシード粒子あたり20重量部未満である場合には、基板に対する優れた接着力、優れた機械的特性、そして低温での成膜能力を含む数多くの特性が損なわれる。合計モノマー数量が、100重量部のシード粒子あたり100重量部超、特に200重量部超である場合、最終的材料の耐候性、ならびに耐汚染性などのその他の幾つかの有益な特性が低下する。
【0033】
シード重合は、従来の乳化重合と同じ条件下で実施可能である。シードラテックスに対して、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤、pH調節剤、そして最終的に溶剤およびキレート剤が添加され、反応は、大気圧で0.5〜6時間、20〜150℃、好ましくは20〜90℃の温度で実施される。シードとしてフルオロポリマーを用いた乳化重合は、標準的方法すなわち、モノマー混合物全体を最初から水性フルオロポリマー分散中に添加するバッチ重合;モノマー混合物の一部を最初に補給し、反応させ、次に残りのモノマー混合物を連続的にまたはバッチ式に補給する半連続重合;そしてモノマー混合物を反応中水性フルオロポリマー分散中に連続的にまたはバッチ式に補給する連続重合、にしたがって実施可能である。
【0034】
第2のモノマー組成物は、順次添加される。好ましい実施形態においては、フルオロポリマーシードと相溶性あるモノマー混合物が最初に添加され、ひとたび反応した時点で、第2のモノマー補給物が添加される。第2のモノマー補給物がフルオロポリマーシードと非相溶性である場合、モノマー混合物は、いずれの順序で添加してもよい。4つ以上の異なるモノマー組成物を添加しなければならない場合、第3以降の組成物は、順次添加される。
【0035】
20℃〜100℃の温度について、水性媒質中の遊離ラジカル重合に適したラジカルを生成するあらゆる種類の開始剤を重合開始剤として使用することができる。開始剤は、単独でまたは還元剤(例えばヒドロゲノ亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロゲノ亜硫酸ナトリウム)と組合せた形で使用してよい。例えば、水溶性開始剤として、過硫酸塩または過酸化水素を使用でき、油溶性開始剤としてクメンヒドロペルオキシド,ジイソプロピルペルオキシドカルボネート、ベンゾイルペルオキシド、2,2’アゾビスメチルブタンニトリル、2,2’アゾビスイソブチロニトリル、1,1’アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、イソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドを使用することができる。好ましい開始剤は2,2’アゾビスメチルブタンニトリル、および1,1’アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリルである。油溶性開始剤は好ましくは、モノマー混合物中または少量の溶剤中に溶解される。使用される開始剤の量は一般に、100重量部の添加モノマー混合物あたり、0.1〜2重量部である。
【0036】
反応を著しく減速させるのでないかぎり、使用可能な連鎖移動剤のタイプに制限は一切ない。使用可能な連鎖移動剤としては、例えばメルカプタン(例えばドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン)、ハロゲン化炭化水素(例えば四塩化炭素、クロロホルム)、キサントゲン(例えば二硫化ジメチルキサントゲン)が含まれる。使用される連鎖移動剤の数量は、100重量部の添加モノマー混合物あたり、通常0〜5重量部である。
【0037】
シード粒子がモノマーにより膨潤されるのを助長し(したがって分子レベルでの混合を増大させ)て成膜を改善するため、反応中に少量の溶剤を添加することができる。添加する溶剤の数量は、加工性、環境安全性、生産安全性、火災危険防止が損なわれないような範囲内に入っていなくてはならない。使用する溶剤には、例えばアセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、トルエン、ジメチルスルホキシド、またはトリプロピレングリコールモノメチルエーテルが含まれる。
【0038】
使用されるpH調整剤(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ヒドロゲノ炭酸ナトリウム)およびキレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸、グリシン、アラニン)の数量は、それぞれ、100重量部の使用モノマー混合物あたり0〜2重量部および0〜0.1重量部である。
【0039】
残留アクリルモノマーは、適正なチェイサー(chaser)化合物を応用して処理される。本発明においてチェイサーとして、アクリル樹脂に対する高い親和性を有するモノマーを含む数多くの異なる化学物質、選択された反応温度で活性ラジカルを生成できるあらゆる化合物そして上述の化合物の組合せを使用することができる。チェイサーとして使用される潜在的モノマーとしてはスチレン、およびその他の相溶性あるビニルモノマーが含まれるが、これらに限定されない。最高のラジカル生成化学物質は、例えば、過硫酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムなどを含む無機過酸化物塩;例えばジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を含むジアルキルぺルオキシド類;ジアルキルペルオキシジカルボネート類、例えばジイソプロピル−ペルオキシジカルボネート(IPP)、ジ−N−プロピル−ペルオキシジカルボネート(NPP)、ジ−sec−ブチル−ペルオキシジカルボネート(DBP);t−アルキルペルオキシベンゾエート類;例えばt−ブチルおよびt−アミルペルピバレートを含むt−アルキルペルオキシピバレート類;アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジクミルペルオキシドから選択され得る。酸化還元系には、任意にはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタビスルファイトまたはアスコルビン酸などの活性剤と組合せた、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドまたは過硫酸塩などの酸化剤、および還元金属塩(鉄(II)塩が詳細例である)などの還元剤の組合せが含まれる。
【0040】
例えばアンモニア水、有機アミンまたは無機塩基例えば水酸化カリウムなどのその他のpH調整剤を、反応完了後に添加して最終pHを調合および利用分野に適した範囲内、多くの場合7〜10の範囲内のpHにしてもよい。
【0041】
結果として得たフルオロポリマー分散は、3つ以上の別個のポリマー−フルオロポリマーシードおよび各々の別個のビニルモノマー組成物によって形成されたポリマーの「配合物」である。フルオロポリマーシードと第1の(混和性)ビニルポリマーは緊密な配合物を形成し、これが1つのタイプの相互貫入ポリマー網状組織(IPN)を形成してよい。30℃未満のTgを有する第2のビニルポリマー組成物は、フルオロポリマーシードとの混和性を有し結果として比較的均質で緊密な配合物かまたは3つ以上のポリマーのIPNをもたらすように選択されてもよいし、またはフルオロポリマーシードとは混和せずその結果相分離をもたらすように選択されてもよい。
【0042】
一実施形態においては、第2のポリマー組成物としてフルオロアクリルコポリマーが形成され、これは、フルオロポリマーシードと非相溶性である。この組成物を含むコーティングは、優れた耐汚染性を示す。
【0043】
フルオロポリマーハイブリッド組成物を、例えば噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥などによる当該技術分野において公知の手段により、精製、単離してよい。
【0044】
水性フルオロポリマーハイブリッド組成物ならびにそれから調合される組成物の重要な特性は、それらが優れた安定性を示すということにある。所望の安定性特性としては、分散のコロイド安定性(せん断中の耐凝固性を含む)と同様に、経時的な物理的特性の安定性、例えばMFFTの経時的変化が非常に低いことが含まれる。
【0045】
本発明のフルオロポリマーハイブリッド組成物は、溶剤分散、溶剤溶液、水性分散または粉末コーティングとして調合可能である。結果として得られるフルオロポリマー水性ハイブリッド組成物は、環境に無害な成膜組成物であり、形成される膜またはコーティングは、優れた物理的特性および低いVOCを有する。本発明のフルオロポリマーハイブリッド組成物は、屋外塗装および工場塗装コーティングおよび塗料、コーキング、シーラントおよび接着剤、インキおよびワニス、シーラント、セメントおよびモルタル用改質樹脂、圧密剤および染色液の構成成分として有用である。
【0046】
本発明のフルオロポリマーハイブリッド組成物を含む有用な屋外コーティング組成物は、50g/リットルの最大VOCで5℃未満のMFFTを有するコーティング組成物に調合できる。コーティング組成物は、pH調整剤、UV安定剤、着色剤、染料、充填材、水溶性樹脂、レオロジー制御剤および増粘剤、そして顔料および顔料増量剤を含む(ただしこれらに限定されない)、コーティング中で使用するための典型的な添加剤を含んでいてよい。
【0047】
当業者は同様に、本発明の1つ以上の成分組成物中に官能性モノマーが含まれている場合、調合物中に補足的外部架橋剤を添加することにより、本発明のフルオロポリマーハイブリッド組成物を含む有用なコーティング組成物を得ることができるということも想像できると思われる。このような補足的架橋化学反応の例は、例えば参照により本明細書に援用されている米国特許第6680357号明細書の中で記述されている。
【0048】
提供された情報および実施例に基づき、当業者は、本発明の組成物のその他の多くの用途を想像することができると思われる。
【実施例】
【0049】
実施例1(比較例−単一ビニルモノマー組成物)
フルオロポリマーラテックス(樹脂組成物は75/25wt%のVF2/25HFPを有し、ラテックスは36.7重量パーセントの固形分を有する、450g)、VAZO(登録商標)−67(Dupont)、POLYSTEP B7ラウリル硫酸アンモニウム(Stepan、30wt%水溶液)をそのままの状態で使用する。メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、およびアクリル酸エチルはAldrich製であり、受入れたままの状態でこれを使用する。
【0050】
別の容器内で、メタクリル酸メチル(59g)、アクリル酸エチル(98.0g)、メタクリル酸(3.3g)、NORSOCRYL104(3.3)、ラウリル硫酸アンモニウム(10g)および水(40g)からモノマープレエマルジョンを調製する。開始剤溶液を1.0gのVAZO−67(Du Pont)およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(4.0g)から調製する。モノマープレエマルジョンのポリマーのフォックス方程式に基づいた計算上のTgは16℃である。
【0051】
凝縮器、高純度アルゴンおよびモノマーの注入口および機械式撹拌機が備わった反応釜の中にフルオロポリマーラテックスを投入する。反応装置およびその初期内容物を洗い流し10分間パージした後、モノマープレエマルジョンの初期投入量(43.0g)および開始剤溶液を反応装置内に導入する。その後、混合物を周囲圧力および温度でアルゴン下で40分間撹拌する。反応装置およびその内容物を75℃まで加熱した。30分後、残りのモノマープレエマルジョンを180g/時の速度で補給した。全てのモノマー混合物を添加した後、さらに30分間反応温度を75℃に維持することにより、残留モノマーを消費した。その後1%過硫酸カリウム水溶液2gを反応装置に加えて、残留モノマーをチェース(chase)する。その後、反応をさらに30分間75℃に維持する。次に反応混合物を周囲温度まで冷却し、放出し、反応により生成されたラテックスをチーズクロスを通して濾過する。ラテックスの最終的固形分含有量を重量法により測定し、それは48.5重量パーセントであった。
【0052】
実施例2(発明)
フルオロポリマーラテックス(樹脂組成物は75/25wt%のVF2/25HFPを有し、ラテックスは40重量パーセントの固形分を有する、1200g)、VAZO(登録商標)−67(Dupont)、POLYSTEP B7ラウリル硫酸アンモニウム(Stepan、30wt%水溶液)を受入れたままの状態で使用する。Arkema製のNORSOCRYL104は、メタクリル酸メチル中50%溶液であり、これを、受入れたままの状態で使用した。メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、およびアクリル酸エチルはAldrich製であり、受入れたままの状態でこれを使用した。
【0053】
別の容器内で、メタクリル酸メチル(96g)、アクリル酸ブチル(38.5g)、アクリル酸エチル(24.0g)、ラウリル硫酸アンモニウム(7g)および水(39g)からモノマープレエマルジョン(プレエマルジョンAと呼ぶ)を調製する。
【0054】
もう1つの別の容器内で、メタクリル酸メチル(137g)、アクリル酸ブチル(72g)、アクリル酸エチル(86.5g)、メタクリル酸(12g)、NORSOCRYL104(7g)、ラウリル硫酸アンモニウム(13g)および水(78g)から、モノマープレエマルジョン(プレエマルジョンBと呼ぶ)を調製する。プレエマルジョンBのポリマーの計算上のTgは16℃である。
【0055】
開始剤溶液を、3.0gVAZO−67(Du Pont)およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(15.0g)から調製する。
【0056】
凝縮器、高純度アルゴンおよびモノマーの注入口および機械式撹拌機が備わった反応釜の中にフルオロポリマーラテックスを投入する。反応装置およびその初期内容物を洗い流し10分間パージした後、プレエマルジョンAを400g/時の速度で反応装置内に導入する。その後開始剤溶液を添加する。その後、混合物を周囲圧力および温度でアルゴン下にて40分間撹拌する。反応装置およびその内容物を75℃まで加熱した。30分後、プレエマルジョンBを300g/時の速度で補給した。全てのモノマー混合物を添加した後、さらに30分間反応温度を75Cに維持することにより、残留モノマーを消費した。その後1%過硫酸カリウム水溶液5gを反応装置に加えて、残留モノマーをチェースする。その後、反応をさらに30分間75℃で維持する。次に反応混合物を周囲温度まで冷却し、放出し、反応により生成されたラテックスをチーズクロスを通して濾過する。ラテックスの最終的固形分含有量を重量法により測定し、それは52.5重量パーセントであった。
【0057】
実施例3(本発明の例)
フルオロポリマーラテックス(樹脂組成物は75/25wt%のVF2/25HFPを有し、ラテックスは43.5重量パーセントの固形分を有する、1100g)、VAZO(登録商標)−67(Dupont)、POLYSTEP B7ラウリル硫酸アンモニウム(Stepan、30wt%水溶液)を受入れたままの状態で使用する。Arkema製のNORSOCRYL104は、メタクリル酸メチル中50%溶液であり、これを、受入れたままの状態で使用した。メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、およびアクリル酸エチルはAldrich製であり、受入れたままの状態でこれを使用した。
【0058】
別の容器内で、メタクリル酸メチル(80g)、アクリル酸ブチル(35g)、アクリル酸エチル(47g)、ラウリル硫酸アンモニウム(5g)および水(39g)からモノマープレエマルジョン(プレエマルジョンAと呼ぶ)を調製する。
【0059】
もう1つの別の容器内で、メタクリル酸メチル(137g)、アクリル酸ブチル(72g)、アクリル酸エチル(86.5g)、メタクリル酸(12g)、NORSOCRYL104(7g)、ラウリル硫酸アンモニウム(13g)および水(78g)から、モノマープレエマルジョン(プレエマルジョンBと呼ぶ)を調製する。プレエマルジョンBのポリマーの計算上のTgは19℃である。
【0060】
開始剤溶液を、3.5gVAZO−67(Du Pont)およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(15.0g)から調製する。
【0061】
凝縮器、高純度アルゴンおよびモノマーの注入口および機械式撹拌機が備わった反応釜の中にフルオロポリマーラテックスを投入する。反応装置およびその初期内容物を洗い流し10分間パージした後、プレエマルジョンAを400g/時の速度で反応装置内に導入する。その後開始剤溶液を添加する。その後、混合物を周囲圧力および温度でアルゴン下で40分間撹拌する。反応装置およびその内容物を75℃まで加熱した。30分後、プレエマルジョンBを300g/時の速度で補給した。全てのモノマー混合物を添加した後、さらに30分間反応温度を75℃に維持することにより、残留モノマーを消費した。その後1%過硫酸カリウム水溶液5gを反応装置に加えて、残留モノマーをさらにチェースする。その後、反応をさらに30分間75℃で維持する。次に反応混合物を周囲温度まで冷却し、放出し、反応により生成されたラテックスをチーズクロスを通して濾過する。ラテックスの最終的固形分含有量を重量法により測定し、それは52.0重量パーセントであった。
【0062】
実施例4(比較例−2つのビニルモノマー、ただし第2のモノマーのTgは30℃超)
フルオロポリマーラテックス(樹脂組成物は75/25wt%のVF2/25HFPを有し、ラテックスは36.7重量パーセントの固形分を有する、1100g)、VAZO(登録商標)−67(Dupont)、およびPOLYSTEP B7ラウリル硫酸アンモニウム(Stepan、30wt%水溶液)を受入れたままの状態で使用する。Arkema製のNORSOCRYL104は、メタクリル酸メチル中50%溶液であり、これを、受入れたままの状態で使用した。メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、およびメタクリル酸はAldrich製であり、受入れたままの状態でこれを使用した。
【0063】
別の容器内で、メタクリル酸メチル(100g)、アクリル酸ブチル(32g)、ラウリル硫酸アンモニウム(6g)および水(30g)からモノマープレエマルジョン(プレエマルジョンAと呼ぶ)を調製する。
【0064】
もう1つの別の容器内で、メタクリル酸メチル(97g)、アクリル酸ブチル(31g)、メタクリル酸(3.0g)、NORSOCRYL104(3.0g)、ラウリル硫酸アンモニウム(5.0g)および水(33g)から、モノマープレエマルジョン(プレエマルジョンBと呼ぶ)を調製する。プレエマルジョンBのポリマーの計算上のTgは51℃である。
【0065】
開始剤溶液を、1.0gVAZO−67(Du Pont)およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(4.0g)から調製する。
【0066】
凝縮器、高純度アルゴンおよびモノマーの注入口および機械式撹拌機が備わった反応釜の中にフルオロポリマーラテックスを投入する。反応装置およびその初期内容物を洗い流し10分間パージした後、プレエマルジョンA33gを反応装置内に導入する。その後開始剤溶液を添加する。その後、混合物を周囲圧力および温度でアルゴン下で40分間撹拌する。反応装置およびその内容物を75℃まで加熱した。30分後、プレエマルジョンBを180g/時の速度で補給した。全てのモノマー混合物を添加した後、さらに30分間反応温度を75℃に維持することにより、残留モノマーを消費した。その後1%過硫酸カリウム水溶液2gを反応装置に加えて、残留モノマーをさらにチェースする。その後、反応をさらに30分間75℃で維持する。次に反応混合物を周囲温度まで冷却し、放出し、反応により生成されたラテックスをチーズクロスを通して濾過する。ラテックスの最終的固形分含有量を重量法により測定し、それは47.0重量パーセントであった。
【0067】
実施例1〜4についてのMFFTデータおよび特性データ
実施例1〜4のラテックス試料を、28%のアンモニア水または有機アミン(Angus Chemical Company製のAMP−95、またはTraminco製Vantex(登録商標)T)を用いて、8〜9の間のpHに中和した。これらの中和した試料のMFFTを測定し、塗料の調合にこの試料を使用した。ギャップ50ミクロンのドローダウンアプリケータ(draw down applicator)キューブを用いてMFFTバー(Paul Gardner Inc.)の表面にラテックスの薄膜を塗布し、1時間コーティングを乾燥させ、次に、ラテックスが透明な亀裂の無い膜を形成する最低温度を書き留めることにより、MFFTを測定した。
【0068】
さらに、以下の通りにカーボンブラック汚染試験(デルタE色変化)を実施した。すなわち、方法24で測定した場合に23g/(1リットル未満の水)という計算上のVOCを有する以下の単純な調合物を用いて、白色コーティング調合物を調製した:
【0069】
【表1】

【0070】
ドローダウンアプリケータを用いて金属基板に調合物を塗布し、考慮対象のコーティングのタイプに適した条件下(例えば空気乾燥型コーティングの場合は周囲湿度および温度で4日間または1週間)で乾燥させた。規定の乾燥期間が終了した時点で、穏やかに力を加えながらコーティングの被験領域上にカーボンブラック粉末(ランプブラックグレード、例えばColumbia#22)を一塗りし、被験部域が均一に灰色または黒色になるまでこのプロセスを3回反復する。(あるいは、カーボンブラック粉末の代りに、褐色または黒色酸化鉄顔料粉末をベースとする水性スラリーを使用してもよい)。コーティングを90分間放置し、その後水道水の流水下で湿ったペーパタオルを用いて穏やかに圧力を加えてコーティングをこすって、可能なかぎり多くの汚染剤を除去するよう試みる。その後、(1976CIEL***にしたがって測定されるような)試験前後のカラーデルタE*の差異として、比色計を用いて耐吸塵性を測定する。4日間の乾燥時後の5未満の汚染デルタE*を有するコーティングは、耐汚れ性(dirt resistance)の観点からみて優、5〜10=きわめて良好、10〜15=良、15〜30=中、そして30超は不良、とみなすことができる。
【0071】
【表2】

【0072】
実施例5〜8
以下の手順は、モノマー混合物Aおよびモノマー混合物Bについて以下のビニルモノマー組成物を用いて実施例5〜8を調製するために用いられた一般的方法を網羅している(表2)。
【0073】
フルオロポリマーラテックス(樹脂組成物は75/25wt%のVF2/25HFPを有し、ラテックスは41.0重量パーセントの固形分を有する、1170g)、VAZO−67(Dupont)、POLYSTEP B7ラウリル硫酸アンモニウム(Stepan、30wt%水溶液)を受入れたままの状態で使用する。ラテックスの体積平均粒径は、132nmであった。
【0074】
Arkema製のNORSOCRYL104は、メタクリル酸メチル中50%溶液であり、これを、受入れたままの状態で使用した。メタクリル酸トリフロオロエチルも同様にArkemaの製品で受入れたままの状態で使用した。メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メルカプトプロピオン酸イソオクチル(IOMP)およびアクリロニトリルはAldrich製であり、受入れたままの状態でこれを使用した。
【0075】
別の容器内で、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、場合によって第4のモノマーおよびIOMP(詳細には表2を参照のこと)からモノマー混合物(モノマー混合物Aと呼ぶ)を調製する。
【0076】
もう1つの別の容器内で、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、NORSOCRYL104(7g)、場合によっては第6のモノマーおよびIOMP(詳細は表2を参照)から、モノマー混合物(モノマー混合物Bと呼ぶ)を調製する。開始剤溶液を、3.0gVAZO−67(Du Pont)およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(15.0g)から調製する。
【0077】
凝縮器、高純度アルゴンおよびモノマーの注入口および機械式撹拌機が備わった反応釜の中にフルオロポリマーラテックスを投入する。反応装置およびその初期内容物を洗い流し10分間パージした後、モノマー混合物Aを600g/時の速度で反応装置内に導入する。その後開始剤溶液を添加する。その後、混合物を周囲圧力および温度でアルゴン下で30分間撹拌する。反応装置およびその内容物を75℃まで加熱した。30分後、モノマー混合物Bを300g/時の速度で補給した。全てのモノマー混合物を添加した後、反応温度を81Cまで上昇させ、さらに15分間反応装置をこの温度に保つことにより、残留モノマーを消費した。その後4.3gのスチレンモノマーと6.8gのレドックス開始剤パッケージ(t−ブチルヒドロペルオキシドおよびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート)の組合せを加えて、残留モノマーをさらにチェースした。その後、反応をさらに30分間81℃で維持する。次に反応混合物を周囲温度まで冷却し、放出し、反応により生成されたラテックスをチーズクロスを通して濾過する。ラテックスの最終的固形分含有量を重量法により測定し、それは表2に報告されている。
【0078】
【表3】

【0079】
これらの実施例のラテックス試料を、実施例1〜4の場合と同様に中和し、その後、先の通り、MFFTを測定し、以下の配合表にしたがって調合物を作製し、褐色酸化鉄水性スラリーを用いて耐汚れ性について測定した。耐汚れ性試験については、2つの白色の市販塗料試料も比較例として試験した。
【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
実施例9〜16
実施例9〜16を、プレエマルジョンAおよびプレエマルジョンBについて以下のビニルモノマー組成物を用いて、実施例2の一般的方法にしたがって調製した。全ての数量はグラム単位である。
【0083】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物において、
a) フルオロポリマーと;
b) 前記フルオロポリマーと混和可能である第1のビニルポリマーと;
c) 前記第1のビニルポリマーと異なる組成を有し、かつ30℃未満のTgを有する第2のビニルポリマーと;
d) 任意にはその他のビニルポリマーと、
を含む組成物であって、前記フルオロポリマー分散が、20℃未満の最低成膜温度(MFFT)を有する組成物。
【請求項2】
前記第1および第2のビニルポリマーの少なくとも1つがアクリル(コ)ポリマーを含む、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項3】
前記第1および第2の両方のビニルポリマーがアクリル(コ)ポリマーを含む、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項4】
前記第1および第2のビニルポリマーがアクリル(コ)ポリマーで構成されている、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項5】
前記フルオロポリマーが50〜100重量パーセントのフッ化ビニリデン単位、0〜30重量パーセントのヘキサフルオロエチレン単位、およびフッ化ビニリデンと共重合可能な0〜30重量部のビニルモノマー単位を含む、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項6】
70〜100重量パーセントのフッ化ビニリデン単位を含む、請求項5に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項7】
前記フルオロポリマーが30J/g未満の結晶化度を有する、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項8】
前記第1および第2のビニルポリマーが10:90〜90:10の比率で分散中に存在する、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項9】
前記第1および第2のビニルポリマーが25:75〜75:25の比率で分散中に存在する、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項10】
前記第1のビニルポリマーが、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸アセトアセトキシエチルおよびアクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも70重量パーセントのモノマーと、10wt%未満のヒドロキシ官能性モノマー、酸官能性モノマー、スチレンまたはアルファメチルスチレンとを含む、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項11】
前記第2のビニルポリマーが、−50℃〜20℃のTgを有する、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項12】
前記第2のビニルポリマーが、0℃〜20℃のTgを有する、請求項11に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項13】
100重量部のフルオロポリマーあたり20〜300重量部の合計ビニルモノマーを含む、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項14】
100重量部のフルオロポリマーあたり60〜150重量部の合計ビニルモノマーを含む、請求項13に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項15】
前記ビニルポリマーの少なくとも1つがグラジエントコポリマーである、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物。
【請求項16】
環境に無害なフルオロポリマーハイブリッド組成物を形成する方法において;
a) 前記フルオロポリマー粒子が300nm未満の粒径を有する、水性フルオロポリマーシード分散の形成ステップと;
b) 前記フルオロポリマーの存在下で少なくとも2つの異なるビニルモノマー組成物を順次重合させて安定したフルオロポリマー組成物を形成するステップと、
を含む方法であって、前記第1のビニルモノマー組成物が前記フルオロポリマーと混和可能なポリマーを形成し、前記第2のビニルモノマー組成物が30℃未満のTgを有するポリマーを形成し、かつ前記フルオロポリマー組成物が20℃未満の最低成膜温度(MFFT)を有する、方法。
【請求項17】
20℃未満の最低成膜温度(MFFT)および50g/(1リットルの水)未満のVOCを有する、請求項1に記載の安定した水性フルオロポリマーハイブリッド組成物を含むコーティング組成物。
【請求項18】
UV安定化剤、pH調整剤、着色剤、染料、水溶性樹脂、レオロジー制御添加剤および増粘剤ならびに顔料および顔料増量剤そして充填材をさらに含む、請求項17に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
外部架橋剤が最終調合物中に添加される、請求項17に記載のコーティング組成物。

【公表番号】特表2011−527374(P2011−527374A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517454(P2011−517454)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/047769
【国際公開番号】WO2010/005756
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】