説明

成膜体の製造方法

【課題】 既に第1被膜を形成した基体の第2成膜面に微粒子を衝突、堆積させて第2被膜を形成するにあたり、第1被膜の存否の影響を抑制して第2被膜の形成した成膜体の製造方法を提供する。
【解決手段】 箔状で、第1成膜面21及び第2成膜面22を有する基体20と、第1成膜面上の一部に形成した第1被膜11と、第2成膜面上の少なくとも一部に形成した第2被膜12と、を備え、第1被膜は、基体の厚さ方向DTに見て、第2被膜と重なる重複部LWを含む、成膜体1の製造方法は、支持面55およびこの支持面よりも窪んだ凹部56を有する支持部材53を用いて、第1被膜を形成した基体の第2成膜面に、微粒子D2を衝突、堆積させて、第2被膜を形成する、第2成膜工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箔状の基体とこの成膜面に形成された被膜とを備える成膜体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚さ数百μm程度までの膜を基体上に成膜する手法として、エアロゾルデポジション法が知られている。このエアロゾルデポジション法は、原料となる微粒子を、例えば、ガスの供給や振動、超音波振動などによって気中に巻き上げて、搬送ガス中に分散(混合)してエアロゾル化し、これを基体に衝突させて、微粒子を起源とする膜を成膜する手法である。
特許文献1には、そのエアロゾルデポジション法を用いて、フィルム状の基材(基体)の両面に同時にあるいは順次に構造物(被膜)を形成する形成手法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−300572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手法によって、既に第1成膜面に第1被膜を形成した箔状の基体について、その裏面の第2成膜面に第2被膜を形成する場合を考える。この場合には、第2成膜面のうち基体を介して第1被膜に重複する重複部とそれ以外の部位とでは、第1被膜の厚みの影響を受けて、第2被膜の形成され易さが異なり、その厚みなどが相違したり、境界部付近に段差が発生するなどの不具合が生じてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、既に第1被膜を形成した基体の第2成膜面に微粒子を衝突、堆積させて第2被膜を形成するにあたり、第1被膜の存否の影響を抑制して第2被膜の形成した成膜体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、その解決手段は、箔状で、第1成膜面及び第2成膜面を有する基体と、上記基体の上記第1成膜面上の一部に形成した第1被膜と、上記基体の上記第2成膜面上の少なくとも一部に形成した第2被膜と、を備え、上記第1被膜は、上記基体の厚さ方向に見て、上記第2被膜と重なる重複部を含む成膜体の製造方法であって、上記第1被膜を形成した上記基体の第2成膜面に、微粒子を衝突、堆積させて、上記第2被膜を形成する第2成膜工程であって、支持面およびこの支持面よりも窪んだ凹部を有する支持部材を用い、上記基体の第2成膜面のうち、上記第2被膜を形成すべく、上記微粒子を衝突させている領域を形成中領域としたとき、上記第1被膜の上記重複部のうち、少なくとも、上記基体の厚さ方向に見て、上記第2被膜を形成すべく、上記基体の第2成膜面に上記微粒子を衝突させている上記形成中領域に含まれる形成重複領域を、上記支持部材の上記凹部内に位置させ、上記第1成膜面の上記第1被膜が形成されずに露出した第1露出部のうち、少なくとも、上記基体の厚さ方向に見て、上記形成中領域に含まれる形成非重複領域を、上記支持部材の上記支持面上に位置させて、上記第2被膜を形成する第2成膜工程を備える成膜体の製造方法である。
【0007】
本発明の成膜体の製造方法では、既に第1被膜を形成した基体の第2成膜面に第2被膜を形成する第2成膜工程において、第1被膜の重複部のうち形成重複領域を、支持部材の凹部内に位置させ、第1成膜面が露出した第1露出部のうち形成非重複領域を、支持部材の支持面上に位置させて、第2被膜を形成する。
つまり、厚みのある第1被膜の、厚さ方向少なくとも一部を、支持面よりも窪んだ凹部内に位置させた状態で、第2成膜面に第2被膜を形成する。これにより、第1被膜を凹部内に位置させない場合に比して、第1被膜の厚みの影響を低減することができる。かくして、例えば逆面に第1被膜が形成されているか否かなど、場所によって第2被膜の厚みが相違したり、段差が発生するなどの不具合を抑制して、適切に第2被膜を形成することができる。
【0008】
なお、第1被膜の製法は特に制限されない。従って、第2被膜と同じ手法で形成しても良いが、メッキ、塗布、スパッタリングなど他の手法を用いて形成したものでも良い。
また、第2被膜の形成手法は、微粒子を基体に衝突、堆積させて、第2被膜を形成する手法であり、具体的には、微粒子を空気などの気体中に巻き上げて、基体に吹き付けて微粒子を衝突、堆積させて、そのまま第2被膜とするエアロゾルデポジション法、あるいはさらに、原料を気化蒸発させた後、気相中でナノ粒子として再析出させ、それを搬送ガス中に分散して基体に衝突させて第2被膜を形成するガスデポジション法が挙げられる。また、これらの他に、溶射、コールドスプレーなどが挙げられる。なお、箔状の基体の場合には、溶射、コールドスプレーよりも、基体へのエアロゾル或いはナノ粒子の衝突スピードの低いエアロゾルデポジション法、ガスデポジション法がより好ましい。
【0009】
また箔状の基体としては、適宜の形態を選択できるが、所定寸法の矩形状などのほか、帯状の長尺の形態としても良い。従って、第2成膜工程を所定寸法の基体に一度に施す場合のほか、長尺の基体について、基体をその長手方向に移動させて、一端から他端にかけて、順次あるいは連続的に第2被膜を基体に形成することもできる。
このように、第2被膜を形成する部位を移動させて、連続的に形成する場合には、時間とともに形成中領域も基体中を移動することになる。即ち、第2被膜を形成すべく、基体の第2成膜面に微粒子を衝突させている領域が、形成中領域に該当する。
【0010】
また、支持部材は、一体の部材において凹部を凹設したものとしても良いが、複数の部材で構成しても良く、例えば、土台となる部材に、凹部に対応する部分だけ貫通孔を形成した部材を重ねて、支持部及び凹部を構成するようにしても良い。
【0011】
また、箔状で、第1成膜面及び第2成膜面を有する基体と、上記基体の上記第1成膜面上の一部に形成した第1被膜と、上記基体の上記第2成膜面上の少なくとも一部に形成した第2被膜と、を備え、上記第1被膜は、上記基体の厚さ方向に見て、上記第2被膜と重なる重複部を含む成膜体の製造方法であって、上記第1被膜を形成した上記基体の第2成膜面に、微粒子を衝突、堆積させて、上記第2被膜を形成する第2成膜工程であって、支持面およびこの支持面よりも窪んだ凹部を有する支持部材を用い、上記第1被膜の上記重複部を、上記支持部材の上記凹部内に位置させると共に、上記第1成膜面の上記第1被膜が形成されずに露出した第1露出部を、上記支持部材の上記支持面上に位置させた状態で、上記第2被膜を形成する第2成膜工程を備える成膜体の製造方法とするのが好ましい。
【0012】
この成膜体の製造方法では、既に第1成膜面に第1被膜を形成した基体のうち、その第2成膜面に第2被膜を形成する第2成膜工程において、第1被膜の重複部を支持部材の凹部内に位置させると共に、第1成膜面が露出した第1露出部を支持部材の支持面上に位置させた状態で、第2被膜を形成する。
これにより、第1被膜の重複部を凹部内に位置させない場合に比して、第1被膜の有無の影響を低減することができる。
なお、基体としては、例えば、第2被膜を形成するにあたり、基体を支持部材に対して静止させた上で、一度に第2被膜を形成可能な形態のものが挙げられる。
【0013】
さらに、上述の成膜体の製造方法であって、前記第2成膜工程は、エアロゾルデポジション法、或いは、ガスデポジション法を用いる成膜体の製造方法とすると良い。
【0014】
本発明の成膜体の製造方法では、第2成膜工程に、エアロゾルデポジション法、或いは、ガスデポジション法を用いるので、例えば、溶射やコールドスプレーを用いるよりもエアロゾル或いはナノ粒子の衝突スピードを低くできて、箔状の基体を変形させずに成膜することができる。
【0015】
さらに、上述の成膜体の製造方法であって、前記支持部材の前記凹部は、前記第1被膜の厚みよりも、その深さが大きくされてなり、前記第2成膜工程は、前記形成非重複領域を、少なくとも、上記支持部材の上記支持面上に支持させた状態で、上記第2被膜を形成する成膜体の製造方法とすると良い。
【0016】
支持部材の凹部の深さが、第1被膜の厚さより浅い場合には、第1被膜の厚さ方向の一部が凹部内から突出することになるため、第1被膜の周囲で、基体(第1成膜面)が支持面から浮き上がって、この支持面と当接しない状態となることがある。
この場合には、第2成膜面のうち、裏側(第1成膜面側)に支持面が当接している部位と当接していない部位とが存在することとなり、これらの間で第2被膜の成膜のされやすさ、厚み、膜の性質などに違いを生じる虞がある。
【0017】
これに対し、本発明の成膜体の製造方法では、凹部の深さが、第1被膜の厚みよりも大きいので、第1被膜について、その厚さ方向全体をこの凹部内に収める(位置させる)ことができる。
一方、形成非重複領域を支持体の支持面で支持させている。このため、第1被膜の周囲で、基体が支持面から浮き上がることが無くなり、この浮き上がりに伴う第2被膜の成膜のされ易さなどに差異が生じるのを防止できる。
【0018】
あるいは、前述の成膜体の製造方法であって、前記支持部材の前記凹部は、その深さが前記第1被膜の厚み以下にされてなり、前記支持部材の前記支持面と前記凹部の底面とは、互いに硬度が異なり、かつ、上記支持面の硬度と上記凹部の上記底面の硬度とを同じとして、前記第2成膜工程で前記第2被膜を形成した場合よりも、上記第2被膜のうち、前記形成重複領域における厚みと前記形成非重複領域における厚みとの差異が小さくなる硬度にしてなる成膜体の製造方法とすると良い。
【0019】
形成重複領域では、凹部の底面との間に、第1被膜及び基体が介在することになる。一方、形成非重複領域では、支持面との間に、基体のみが介在する(つまり、第1被膜の有無が異なる)ことになる。このため、例えば、支持面と凹部の底面とを同じ材質(例えば、金属材)で形成して同じ硬度とし、形成重複領域に微粒子を衝突、堆積させた場合と、形成非重複領域に微粒子を衝突、堆積させた場合とでは、微粒子に与えられる衝撃などの影響が異なるため、形成される第2被膜の厚みが異なったものとなる虞がある。
これに対し、本発明では、支持部材の支持面と凹部の底面との硬度を異ならせてあるので、両者の硬度の影響で、形成重複領域と形成非重複領域とで、第2被膜の厚みが異なってしまう不具合を抑制することができる。
【0020】
なお、支持面の硬度と凹部の底面の硬度とを異ならせる手法としては、例えば、支持面上に、第1被膜と同じ被膜、あるいは第1被膜と異なる材質であるが、同様の硬度を有する被膜を形成することで、支持面の硬度と凹部の底面の硬度とを異ならせる手法が挙げられる。
【0021】
また、上述の成膜体の製造方法であって、前記支持面に前記第1被膜と同材質で同じ厚みの被膜を形成する成膜体の製造方法とするのが好ましい。
本発明の成膜体の製造方法では、支持部材の支持面に第1被膜と同材質で、さらには同じ厚みからなる被膜を形成している。このため、支持部材が第1被膜を形成した基体を支持する際、形成重複領域における基体に接する第1被膜と、形成非重複領域における基体が接する、支持面の被膜とは、同材質かつ同じ厚みに揃えることができる。つまり、形成重複領域と形成非重複領域とにおける第2被膜の成膜のしやすさを揃えている。これにより、基体の第2成膜面において、膜厚及び膜質が一様な第2被膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態1にかかる成膜体1について説明する。図1に成膜体1の斜視図を、図2にその成膜体1の断面図(図1のA−A図)をそれぞれ示す。
本実施形態1にかかる成膜体1は、ステンレスからなる矩形箔状の金属箔20と、チタン酸リチウム(Li4Ti512)及びリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)が混在した第1被膜11と、コバルト酸リチウム(LiCoO2)及びリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)が混在した第2被膜12とを備える。また、これらの他に、リン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)からなる第3被膜13を備える。この成膜体1では、金属箔20のうち、図1,2中、上方を向く第1金属主面21上に第1被膜11が、また、図1,2中、下方を向く第2金属主面22上に第2被膜12が、さらに、この第2被膜12上に第3被膜13が、それぞれ形成されている。
【0023】
なお、図2の成膜体1の断面図に示すように、図2中、左右方向における、第2被膜12の寸法は、第1被膜11の寸法よりも小さい。成膜体1を金属箔20の厚さ方向DTから見ると(図3参照)、図3中最前に第1被膜11が、次いで金属箔20が、さらにこの金属箔20よりも図3中奥行側に第2被膜12がそれぞれ位置する。そして、第1被膜11は、その全体が金属箔20の厚さ方向DTに見て、第2被膜12と重なる重複部LWである。
【0024】
また、成膜体1において、第1被膜11をなすチタン酸リチウム(Li4Ti512)は、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いることができる。また、第2被膜12をなすコバルト酸リチウムは、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いることができる。さらに、第1被膜11、第2被膜12及び第3被膜13をなすリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)は、リチウムイオン二次電池の電解質として用いることができる。
つまり、この成膜体1を複数、厚さ方向DTに積層すると、例えば、図4に示すような、バイポーラ二次電池の発電要素BPを構成する。なお、バイポーラ二次電池とは、1つの電極板(電極箔)に正極と負極とを設けた電池を指す。
【0025】
また、成膜体1の第1被膜11は次述する第1成膜装置40を用いて、第2被膜12及び第3被膜13はいずれも後述する第2成膜装置50を用いて行うエアロゾルデポジション法により成膜されてなる。
【0026】
次に、本実施形態1にかかる成膜体1の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
まず、図5に、エアロゾルデポジション法によって、金属箔20に第1被膜11を成膜する第1成膜装置40の概略図を示す。この第1成膜装置40は、成膜室41、エアロゾル発生器48、レギュレータ49、ガスボンベGB、ガス管P1及びエアロゾル管P2を有する。
【0027】
第1成膜装置40のガスボンベGBは、その内部に高圧のアルゴンガスの搬送ガスGSが充填されている。このガスボンベGBは、自身に接続されている金属製のガス管P1を通じて、エアロゾル発生器48に向けて搬送ガスGSを送出する。なお、ガス管P1の途中には、ガスボンベGBから送出させる搬送ガスGSの流量を調節可能なレギュレータ49が配置されている。
【0028】
また、エアロゾル発生器48は、有底円筒形状の容器部48Pと、この容器部48Pの開口を閉塞する閉塞栓48Qと、容器部48Pの底(図5中、下方に位置)から所定の距離を離すように上げ底に配置されてなり、板面がメッシュ形状をなす内側底板48Rとを有する。
このうち、閉塞栓48Qには、上述のガス管P1及びエアロゾル管P2がそれぞれ貫通している。また、内側底板48Rは、図5に示すように、ガス管P1が貫通しており、また、閉塞栓48Qに面する側に、いずれも粉末形状のチタン酸リチウム(Li4Ti512)及びリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)が混在した第1混在微粒子D1が保持されている。なお、この内側底板48Rの板面を形成するメッシュ孔径は、第1混在微粒子D1の粒子径よりも小さい。そのため、この内側底板48Rは、第1混在微粒子D1を通過させないが、ガス、即ち、搬送ガスGSを通過させることができる。これにより、エアロゾル発生器48は、第1混在微粒子D1が搬送ガスGS中に分散してなる第1エアロゾルAS1を発生することができる。
【0029】
また成膜室41内は、第1金属主面21を露出させながら金属箔20を保持する金属箔支持部材43と、露出した金属箔20の第1金属主面21に向けて噴射可能な1口の噴射ノズル42とを有する。この成膜室41は、その室内に金属箔支持部材43及び噴射ノズル42を配置している。また、図示しない真空ポンプを用いて、室内を10-1Paにまで減圧することができる。
このうち、金属箔支持部材43は、平面形状の支持面45で金属箔20を保持しつつ、図5中、金属箔20の平面方向DSに移動させて、金属箔20に成膜する膜厚を調節する。また、この金属箔支持部材43は、第1被膜11を第1金属主面21上の所定位置に形成するための矩形枠形状のマスク47を、噴射ノズル42と金属箔20との間に配置する。
【0030】
また、噴射ノズル42は、円筒形状の本体部42Jと、この本体部42Jより金属箔20側に位置し、金属箔20側ほど径小のテーパ形状であり、その先端からエアロゾルを噴射可能な噴射部42Hとを有する。また、本体部42Jより噴射部42Hとは逆側には、上述のエアロゾル管P2と接続している接続部42Kを有する。この噴射ノズル42は、第1エアロゾルAS1を、先細りの噴射部42Hでさらに加速して、金属箔20に向けて噴射させる(図5参照)。
【0031】
次に、図6に、エアロゾルデポジション法によって、第1被膜11を形成した金属箔20の第2金属主面22に第2被膜12を成膜する第2成膜装置50の概略図を示す。この第2成膜装置50は、成膜室51、エアロゾル発生器58、レギュレータ59、ガスボンベGB、ガス管P1及びエアロゾル管P2を有する。
【0032】
第2成膜装置50のガスボンベGB、ガス管P1及びエアロゾル管P2は、上述した第1成膜装置40のものと同様である。但し、エアロゾル発生器58もエアロゾル発生器48と同様であるが、その内側底板58Rには、いずれも粉末形状のコバルト酸リチウム及びリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)が混在した第2混在微粒子D2が保持されている。
【0033】
また成膜室51内は、第2金属主面22を露出させながら金属箔20を保持する金属箔支持部材53と、露出した金属箔20の第2金属主面22に向けて噴射可能な1口の噴射ノズル52とを有する。この成膜室51は、その室内にこれら金属箔支持部材53及び噴射ノズル52を配置している。また、第1成膜装置40と同様、図示しない真空ポンプを用いて、室内を10-1Paにまで減圧することができる。
このうち、噴射ノズル52は、第1成膜装置40と同様に、上述のエアロゾル発生器58から導かれた第2エアロゾルAS2を、先細りの噴射部52Hでさらに加速して、金属箔20に向けて噴射させる(図6参照)。
【0034】
また、金属箔支持部材53は、図7に示すように、金属箔20を保持する保持部54、及び、この保持部54に保持した金属箔20をその平面方向に移動させるスライド部SWを有する。また、この金属箔支持部材53は、これらのほかに、第2被膜12を第2金属主面22上の所定位置に形成する透孔が形成されたマスク57を、噴射ノズル52と金属箔20との間に配置する。
このうち、金属からなる保持部54は、その中央に位置し、第1被膜11の平面形状(本例では矩形)よりもわずかに大きく、この第1被膜11を収容可能な形態とした凹部56と、この凹部56の周縁に位置し、この凹部56より一段高くされた支持面55とを有する。この凹部56の底面56Dには、保持部54をなす金属が露出してなる。また、この凹部56の深さF1は、金属箔20に形成した第1被膜11の膜厚T1と同じにしてある。このため、第1被膜11を形成した金属箔20を金属箔支持部材53で保持するにあたり、第1被膜11を凹部56内に収容して、その底面56Dに当接させることができる。
【0035】
また、保持部54の支持面55は、第1被膜11と同じ、チタン酸リチウム(Li4Ti512)とリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)とからなる被膜SF1に覆われている。そのため、支持面55は第1硬度H1を有する。一方、凹部56の底面56Dは、保持部54をなす金属からなるので、第1硬度H1とは異なる、第2硬度H2を有する。これら第1硬度H1及び第2硬度H2は、第2金属主面22のうち、第2被膜12を形成する第2形成面22Cにおける第2被膜12の成膜のしやすさ(第2エアロゾルAS2(第2混在微粒子D2)が金属箔20に衝突したときに、金属箔20から受ける反力など)の違いを抑制し、平面方向に一様にする硬度となっている。
【0036】
具体的には、第1被膜11を形成した金属箔20の後述する形成重複領域RWでは、第2金属主面22と凹部56の底面56Dとの間に、第1被膜11及び金属箔20が、また、後述する形成非重複領域RXでは、第2金属主面22と支持面55との間に、金属箔20がそれぞれ介在する。このため、形成重複領域RWにおける第2被膜12成膜しやすさは、第1被膜11の硬度、金属箔20自身の硬度、及び、凹部56の底面56Dの第2硬度H2に影響を受ける。一方、形成非重複領域RXにおける第2被膜12の成膜のしやすさ、金属箔20自身の硬度、及び、支持面55の第1硬度H1に影響を受ける。従って、形成重複領域RW及び形成非重複領域RXにおける第2被膜12の成膜のしやすさが同じになるように、第1硬度H1及び第2硬度H2を決めている。
【0037】
さらに、金属箔支持部材53の支持面55には、第1被膜11と同じ物質からなる被膜SF1が覆っている。しかも、この被膜SF1の膜厚TSは、第1被膜11の膜厚T1と同じにしてある(TS=T1)。このため、金属箔支持部材53が第1被膜11を形成した金属箔20を支持する際、形成重複領域RWにおける金属箔20が接する第1被膜11と、形成非重複領域RXにおける金属箔20が接する被膜SF1とは、同材質で同じ膜厚に揃えることができる。つまり、本実施形態1では、形成重複領域RWと形成非重複領域RXとにおける第2被膜12の成膜のしやすさを揃えている。
かくして、後述の第2成膜工程では、第2金属主面22の第2形成面22Cにおいて、膜厚及び膜質が一様な第2被膜12を成膜することができる。
【0038】
次いで、上述した第1成膜装置40を用いて金属箔20に第1被膜11を形成する第1成膜工程について、図5を参照しつつ説明する。
具体的には、まず、成膜室41の金属箔支持部材43に金属箔20を保持させ、金属箔20の第1金属主面21を、噴射ノズル42に向けて配置する。そして、第1被膜11を第1金属主面21のうち、第1被膜11を形成する第1形成面21Cに第1エアロゾルAS1が噴射されるように、マスク47を金属箔20(第1金属主面21)と噴射ノズル42との間に配置する。その後、成膜室41を密閉し、図示しない真空ポンプを用いて室内を102Paにまで減圧する。
また、エアロゾル発生器48内の内側底板48Rに第1混在微粒子D1を投入し、閉塞栓48Qで容器部48Pの開口を塞ぐ。
【0039】
次に、ガス管P1の途中に配置されたレギュレータ49を調節して、ガスボンベGBから搬送ガスGSを所定流量流す。この搬送ガスGSは、ガス管P1を通じて、エアロゾル発生器48内に流入する。なお、エアロゾル発生器48では、図5に示すように、内側底板48Rと容器部48Pの底との間に、ガス管P1の先端口を配置している。これにより、このガス管P1の先端口から流入した搬送ガスGSは、出口である閉塞栓48Qのエアロゾル管P2に向けて移動すべく、内側底板48Rを通過する。すると、この搬送ガスGSの通過と共に、第1混在微粒子D1は、内側底板48Rと閉塞栓48Qとの間の空間中に巻き上げられて、第1エアロゾルAS1となり、搬送ガスGSの流量で決まる、所定の単位時間当たりの搬送量の第1混在微粒子D1が、搬送ガスGSによって搬送される。
このようにしてできた第1エアロゾルAS1は、エアロゾル管P2を通じて、成膜室41の噴射ノズル42に導かれる。
【0040】
噴射ノズル42に導かれた第1エアロゾルAS1は、テーパ形状の噴射部42Hでさらに加速されて、金属箔20の第1金属主面21のうち、第1被膜11を形成する第1形成面21Cに向けて噴射される。これと共に、金属箔支持部材43を、金属箔20を保持しつつ、その平面方向DSに移動させて、第1金属主面21の第1形成面21C全体に第1被膜11を成膜させる。
かくして、第1金属主面21の第1形成面21Cには、第1混在微粒子D1を起源とする物質(チタン酸リチウム(Li4Ti512)とリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43))からなる、膜厚T1の第1被膜11が成膜される。
【0041】
次に、前述した第2成膜装置50を用いて、第1被膜11を形成した金属箔20に第2被膜12を形成する第2成膜工程について、図6及び図8を参照しつつ説明する。
まず、成膜室51の金属箔支持部材53に、第1被膜11を形成した金属箔20を保持させる。具体的には、金属箔支持部材53の支持部53のうち、凹部56内に第1被膜11全体を収めて、支持面55に、金属箔20の第1金属主面21のうち、第1被膜11が成膜されていない第1露出部21Fを当接させる。このようにして、金属箔20の第2金属主面22を、噴射ノズル52に向けて配置する。このとき、この第2金属主面22は、段差等のない平面状になっている。
第2被膜12を第2金属主面22の第2形成面22Cに第2エアロゾルAS2が噴射されるように、マスク57を金属箔20(第1金属主面21)と噴射ノズル42との間に配置する。その後、前述の第1成膜工程と同様に、成膜室51を密閉し、図示しない真空ポンプを用いて室内を102Paにまで減圧する。
また、エアロゾル発生器58内の内側底板58Rに第2混在微粒子D2を投入し、閉塞栓58Qで容器部58Pの開口を塞ぐ。
【0042】
次に、第1成膜工程と同様、ガス管P1の途中に配置されたレギュレータ59を調節して、ガスボンベGBから搬送ガスGSを所定流量流す。この搬送ガスGSは、ガス管P1を通じて、エアロゾル発生器58内に流入する。すると、この搬送ガスGSにより、第2混在微粒子D2は、内側底板58Rと閉塞栓58Qとの間の空間中に巻き上げられて、第2エアロゾルAS2となり、搬送ガスGSの流量で決まる、所定の単位時間当たりの搬送量の第2混在微粒子D2が、搬送ガスGSによって搬送される。
このようにしてできた第2エアロゾルAS2は、第1成膜工程と同様、エアロゾル管P2を通じて、成膜室51の噴射ノズル52に導かれる。
【0043】
噴射ノズル52に導かれた第2エアロゾルAS2は、テーパ形状の噴射部52Hでさらに加速されて、金属箔20の第2金属主面22のうち、成膜する第2形成面22Cに向けて噴射される。これにより、第2混在微粒子D2が第2金属主面22に衝突、堆積する。
なお、金属箔20を保持する金属箔支持部材53のスライド部SWを平面方向DSに移動させて、金属箔20の第2金属主面22全体に第2被膜12を成膜させる。
【0044】
金属箔支持部材53に保持され、第2エアロゾルAS2を噴射されている金属箔20について、この金属箔20の厚さ方向DTから見た図を、図8及び図9に示し、これらを用いてさらに具体的に説明する。
第2被膜12を形成すべく、第2混在微粒子D2を第2金属主面22に衝突させている領域を形成中領域Rとする。また、重複部LW(第1被膜11)のうち、厚さ方向DTに見て、形成中領域Rに含まれる領域を形成重複領域RWとする。すると、本実施形態1にかかる成膜体1の製造方法では、この形成重複領域RWを金属箔支持部材53の凹部56内に位置させている(図8参照)。一方、金属箔20の第1金属主面21の第1露出部21Fのうち、金属箔20の厚さ方向DTに見て、形成中領域Rに含まれる領域を形成非重複領域RXとする。すると、本実施形態1では、この形成非重複領域RXを、金属箔支持部材53の支持面55上に位置させている(図9参照)。
このように、形成重複領域RWと形成非重複領域RXとで、凹部56内に収容するか支持面55上に配置するかを変えることで、形成重複領域RW及び形成非重複領域RXのいずれでも成膜のしやすさを同様にして、第2混在微粒子D2を第2金属主面22の第2形成面22Cに均一に衝突、堆積させることができる。
かくして、第2金属主面22の第2形成面22Cには、第2混在微粒子D2を起源とする物質(コバルト酸リチウムとリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43))からなる第2被膜12が均一に成膜される。
【0045】
また、本実施形態1にかかる成膜体1の製造方法では、金属箔20の厚さ方向DTに膜厚T1を有する第1被膜11を、支持面55よりも厚さ方向DTに向けて窪んだ凹部56内に位置させた状態で、第2金属主面22上に第2被膜12を形成する。これにより、第1被膜11を凹部56内に位置させない場合に比して、第1被膜11の膜厚T1の影響を低減することができる。具体的には、例えば、第1被膜11を凹部56内に収めない場合には、第1被膜11の膜厚分だけ、金属箔の第2金属主面に段差が生じてしまう。すると、第2成膜装置50を用いて、この第2金属主面に第2被膜を成膜した場合に、第2被膜の厚みが形成重複領域RWと形成非重複領域RXとで相違したものになる、また段差が生じる虞がある。
これに対し、本実施形態1にかかる成膜体1の製造方法では、第2金属主面22(第2形成面22C)のうち、形成する場所の違い、つまり、形成重複領域RW及び形成非重複領域RXのいずれかであるかによって第2被膜の厚みが相違したり、段差が発生するなどの不具合を抑制して、適切に第2被膜12を形成することができる。
【0046】
また、本実施形態1の成膜体1の製造方法では、第2成膜工程に、エアロゾルデポジション法を用いる。このため、例えば、溶射やコールドスプレーを用いるよりも第2エアロゾルAS2の衝突スピードを低くできるので、金属箔20に、例えば、へこみ,曲げ,破れ等の変形を抑制して、成膜することができる。
【0047】
第2成膜工程の後、再度第2成膜装置50を用いて、第2被膜12上に、さらに、第3被膜13を形成する。
具体的には、図6に示すエアロゾル発生器58内の内側底板58Rに、第2混在微粒子D2の代えて、粉末形状のリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)からなる第3微粒子D3を投入し、閉塞栓58Qで容器部58Pの開口を塞ぐ。そして、上述した第2被膜12の成膜と同様に、レギュレータ59を調節して、ガスボンベGBから搬送ガスGSを所定流量流すと、エアロゾル発生器58内で、第3微粒子D3が第3エアロゾルAS3となる。
【0048】
このようにしてできた第3エアロゾルAS3は、噴射ノズル52に導かれ、噴射部42Hでさらに加速されて、第2被膜12上に向けて噴射される。このとき、金属箔20を保持する金属箔支持部材53のスライド部SWを平面方向DSに移動させて、金属箔20に第3被膜13を成膜する。
かくして、第2被膜12上には、第3微粒子D3を起源とする物質(リン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43))からなる、第3被膜13が成膜され、前述の成膜体1が完成する(図1,2,3参照)。
【0049】
(変形形態1)
次に、本発明の変形形態1にかかる成膜体1について、図1〜3,7,10,11を参照しつつ説明する。
本変形形態1は、第2成膜工程で用いる第2成膜装置150の金属箔支持部材153における、凹部156の深さF2が、金属箔20に形成した第1被膜11の膜厚T1よりも大きい点で、前述の実施形態1と異なり、それ以外は同様である。
そこで、実施形態1と異なる点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略または簡略化する。なお、同様の部分については同様の作用効果を生じる。また、同内容のものには同番号を付して説明する。
【0050】
本変形形態1に用いる第2成膜装置150の概略図を図10に示す。この第2成膜装置150は、成膜室151のほかに、前述した実施形態1と同様の、エアロゾル発生器58、レギュレータ59、ガスボンベGB、ガス管P1及びエアロゾル管P2を有する。
このうち、成膜室151は、第2金属主面22を露出しつつ金属箔20を支持可能な金属箔支持部材153と、実施形態1と同様の噴射ノズル52とを有する。
【0051】
金属箔支持部材153は、図7に示すように、金属箔20を保持する保持部154、及び、この保持部154に保持した金属箔20をその平面方向に移動させるスライド部SWを有する。また、この金属箔支持部材153は、これらのほかに、第2被膜12を第2金属主面22上の所定位置に形成する透孔が形成されたマスク157を、噴射ノズル52と金属箔20との間に配置する。
このうち、金属からなる保持部154は、その中央に位置し、第1被膜11の平面形状(本例では矩形)よりもわずかに大きく、この第1被膜11を収容可能な形態とした凹部156と、この凹部156の周縁に位置し、この凹部156より一段高くされた支持面155とを有する。
【0052】
但し、保持部154における凹部156の深さF2は、金属箔20に形成した第1被膜11の膜厚T1よりも大きい。つまり、図10,11に示すように、第1被膜11を形成した金属箔20は金属箔支持部材53に保持するにあたり、第1被膜11全体が凹部156に収まる。一方、金属箔支持部材153の支持面155で、第1金属主面21の第1露出部21Fを保持することができる。このため、第2金属主面22(第2形成面22C)に段差の発生を防止でき、第2金属主面22を平面に保つことができる。
さらに、第2成膜工程において、厚さ方向DTに見て、第1露出部21Fのうち形成非重複領域RXを、支持面155に当接してこの支持面155に支持させることになる。これにより、形成非重複領域RXの第2金属主面22が、第1被膜11の周囲で、支持面155から浮き上がることをなくすことで、この浮き上がりに伴って、次述する第2被膜12の成膜のされ易さなどに差異が生じるのを防止できる。
【0053】
次いで、前述した第2成膜装置150を用いて、第1被膜11を形成した金属箔20に第2被膜12を形成する第2成膜工程について、図10を参照しつつ説明する。
まず、実施形態1の第1成膜工程でできた、第1被膜11を形成した金属箔20を用意する。この金属箔20を成膜室151の金属箔支持部材153に支持させる。具体的には、金属箔支持部材153の凹部156内に第1被膜11全体を収めて、支持面155に、第1金属主面21の第1露出部21Fを当接させて保持させる。このようにして、金属箔20の第2金属主面22を、噴射ノズル52に向けて配置する。このとき、この第2金属主面22は、段差等のない平面状となる。
【0054】
この後は、実施形態1と同様にして、噴射ノズル52に導かれた第2エアロゾルAS2を、第2金属主面22の第2形成面22Cに向けて噴射させて、そこに第2混在微粒子D2を衝突、堆積させる。かくして、第2混在微粒子D2を起源とする物質(コバルト酸リチウムとリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43))からなる第2被膜12が成膜される。なお、この第2被膜12は、第2金属主面22が支持面155から浮き上がることをなく成膜される。従って、この浮き上がりに伴って自身の成膜のされ易さなどに差異を無くして成膜できる。
さらに、第2成膜工程の後、再度、第2成膜装置150を用いて、第2被膜12上に、さらに、第3被膜13を形成する。具体的には、図10に示すエアロゾル発生器58内の内側底板58Rに、第2混在微粒子D2に代えて、粉末形状のリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)からなる第3微粒子D3を投入する。
かくして、第3微粒子D3を起源とする物質(リン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43))からなる、第3被膜13が成膜され、成膜体1が完成する(図1,2,3参照)。
【0055】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について、図2,12〜18を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態2にかかる成膜体101について説明する。図12に成膜体101の斜視図を、図2にその成膜体101の断面図(図12のC−C図)をそれぞれ示す。
本実施形態2にかかる成膜体101は、ステンレスからなる長尺帯状の金属箔120と、チタン酸リチウム(Li4Ti512)及びリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)が混在した第1被膜111と、コバルト酸リチウム(LiCoO2)及びリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)が混在した第2被膜112とを備える。また、これらの他に、リン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)からなる第3被膜113を備える。なお、これら第1被膜111、第2被膜112及び第3被膜113もまた、金属箔120の長手方向(図12中、左下から右上に向かう方向)に沿って延びる矩形帯状形状を有する。
成膜体101は、金属箔120のうち、図2,12中、上方を向く第1金属主面121上に第1被膜111が、また、図2,12中、下方を向く第2金属主面122上に第2被膜112が、さらに、この第2被膜112上に第3被膜113が、それぞれ形成されている。
【0056】
なお、成膜体101の断面図(図2)に示すように、第2被膜112の幅寸法(図2中、左右方向)は、第1被膜111の幅寸法よりも小さい。従って、第1被膜111は、その全体が金属箔120の厚さ方向DTに見て、第2被膜112と重なる重複部LWである。
【0057】
なお、この帯状形状の成膜体101を長手方向に切断し、これらを厚さ方向DTに積層すると、実施形態1と同様、例えば、図4に示すような、バイポーラ二次電池の発電要素BPを構成することができる。
また、成膜体101の第1被膜111、第2被膜112及び第3被膜113は、次述する第3成膜装置240を用いて行うエアロゾルデポジション法により成膜する。
【0058】
次に、本実施形態2にかかる成膜体101の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
図14に、第3成膜装置240の概略図を示す。この第3成膜装置240は、成膜室241、第1エアロゾル発生器248、第2エアロゾル発生器258、第3エアロゾル発生器268、第1レギュレータ249、第2レギュレータ259、第3レギュレータ269、3つのガスボンベGB,GB,GB、ガス管P1及びエアロゾル管P2を有する。
【0059】
このうち3つのガスボンベGB,GB,GBには、その内部にいずれも高圧のアルゴンガスの搬送ガスGSが充填されている。各ガスボンベGB,GB,GBは、自身に接続されている金属製のガス管P1を通じて、第1エアロゾル発生器248、第2エアロゾル発生器258又は第3エアロゾル発生器268に搬送ガスGSを送出する。なお、ガス管P1の途中には、ガスボンベGBから送出させる搬送ガスGSの流量を調節可能な第1レギュレータ249、第2レギュレータ259又は第3レギュレータ269が配置されている。
【0060】
また、第1,第2,第3エアロゾル発生器248,258,268には、有底円筒形状の容器部248P,258P,268Pと、この容器部248P,258P,268Pの開口を閉塞する閉塞栓248Q,258Q,268Qと、容器部248P,258P,268Pの底(図14中、下方に位置)から所定の距離を離すように上げ底に配置されてなり、板面がメッシュ形状をなす内側底板248R,258R,268Rとを有する。
このうち、閉塞栓248Q,258Q,268Qには、上述のガス管P1及びエアロゾル管P2がそれぞれ貫通している。また、内側底板248R,258R,268Rにはいずれも、図14に示すように、ガス管P1が貫通している。
なお、第1エアロゾル発生器248における内側底板248Rは、その閉塞栓248Qに面する側に、いずれも粉末形状のチタン酸リチウム(Li4Ti512)及びリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)が混在した第1混在微粒子D1が保持されている。なお、この内側底板248Rの板面を形成するメッシュ孔径は、第1混在微粒子D1の粒子径よりも小さい。そのため、この内側底板248Rは、第1混在微粒子D1を通過させないが、ガス、即ち、搬送ガスGSを通過させることができる。これにより、第1エアロゾル発生器248は、第1混在微粒子D1が搬送ガスGS中に分散した第1エアロゾルAS1を発生することができる。
【0061】
また、第2エアロゾル発生器258における内側底板258Rには、その閉塞栓258Qに面する側に、いずれも粉末形状のコバルト酸リチウム及びリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)が混在した第2混在微粒子D2が保持されている。このため、第2エアロゾル発生器258は、第1エアロゾル発生器248と同様、第2混在微粒子D2が搬送ガスGS中に分散してなる第2エアロゾルAS2を発生することができる。
また、第3エアロゾル発生器268における内側底板268Rは、その閉塞栓268Qに面する側に、粉末形状のリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)が混在した第3微粒子D3が保持されている。このため、第3エアロゾル発生器268は、第1エアロゾル発生器248,第2エアロゾル発生器258と同様、第3微粒子D3が搬送ガスGS中に分散してなる第3エアロゾルAS3を発生することができる。
【0062】
また成膜室241は、金属箔120を巻き出す巻出し部RSと、円筒面を有する第1バックアップロール部材243と、第2バックアップロール部材253と、成膜体101を巻き取る巻取り部REとを有する。さらにこれらのほかに、第1エアロゾルAS1を噴射する第1噴射ノズル242と、第2エアロゾルAS2を噴射する第2噴射ノズル252と、第3エアロゾルAS3を噴射する第3噴射ノズル262とを有する。なお、この成膜室241は、図示しない真空ポンプを用いて、室内を10-1Paにまで減圧することができる。
【0063】
このうち巻出し部RSは、第1バックアップロール部材243に向けて金属箔120を巻き出し、これを長手方向DMに移動させる。一方、巻取り部REは、第2バックアップロール部材253で完成した成膜体101を長手方向DMに移動させながら巻き取る。
また、第1バックアップロール部材243は、金属からなるその円筒形状の側壁部243Sの周方向一部が金属箔120の第2金属主面122に当接する。このため、第1バックアップロール部材243では、金属箔120を保持しつつ、この金属箔120の第1金属主面121を第1噴射ノズル242に向けて配置することができる。
【0064】
また、金属からなる第2バックアップロール部材253は、図15に示すように、その軸線方向中央に、円周方向全体にわたって窪んだ凹部(凹溝)256と、この凹部256の軸線方向の両側(図15中、上方及び下方)に位置し、この凹部256よりも径大の支持面255とを有する。このうち、凹部256は、第2バックアップロール部材253の軸線方向の寸法(幅)が、帯状の第1被膜111の幅寸法よりもわずかに大きい。また、この凹部256の底面256Dには、第2バックアップロール部材253をなす金属が露出してなる。
なお、この凹部256の深さF3(支持面255から底面256Dまでの径方向の距離)は、金属箔120に形成した第1被膜111の膜厚T1と同じにしてある。このため、第1被膜111を形成した金属箔120の一部を第2バックアップロール部材253で支持するにあたり、第1被膜111を凹部256に収容して、その底面256Dに当接させることができる(図16参照)。
一方、支持面255は、第1被膜111を形成した金属箔120の一部を第2バックアップロール部部材253で支持するにあたり、その金属箔120の第1金属主面121のうち、第1露出部121Fの一部を支持する。
【0065】
また、第2バックアップロール部材253の支持面255は、第1被膜111と同じ、チタン酸リチウム(Li4Ti512)とリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)とからなる被膜SF2(膜厚TS)に覆われている。そのため、支持面255は第1硬度H1を有する。一方、凹部256の底面256Dは、第2バックアップロール部材253をなす金属からなるので、第1硬度H1とは異なる、第2硬度H2を有する。これら第1硬度H1及び第2硬度H2は、前述の実施形態1と同様、第2金属主面122の第2形成面122Cにおける第2被膜112の成膜のしやすさ(第2エアロゾルAS2(第2混在微粒子D2)が金属箔120に衝突したときに、金属箔120から受ける反力など)の違いを抑制し、平面方向に一様にする硬度となっている。このため、第2被膜112を成膜する際、第2金属主面122の第2形成面122Cにおいて、第2被膜112の膜厚及び膜質を一様に成膜することができる。
【0066】
また、図14に示すように、第1噴射ノズル242は、金属箔120のうち、第1バックアップロール部材243の側壁部243Sに保持された部位に対し垂直に向くよう配置されている。また、第2噴射ノズル252は、金属箔120のうち、第2バックアップロール部材253の凹部256及び支持面255に保持された部位に対し垂直に向くよう配置されている。さらに、第3噴射ノズル262は、金属箔120のうち、第2バックアップロール部材253の凹部256及び支持面255に保持された部位のうち、第2噴射ノズル252よりも、長手方向DM下流側、即ち、巻取り部REに近い部位に垂直に向くよう配置されている。
【0067】
なお、第1噴射ノズル242、第2噴射ノズル252及び第3噴射ノズル262は、金属箔120の短手方向(図14中、奥行き側から手前側に向く方向)を繰り返し移動して、金属箔120に第1被膜111、第2被膜112又は第3被膜113を成膜する。なお、第1噴射ノズル242と金属箔120との間には、第1被膜111を第1金属主面121上の所定位置に形成する透孔が形成された第1マスク247が配置されている。また、第2噴射ノズル252と金属箔120との間には、第2被膜112を第2金属主面122上の所定位置に形成する透孔が形成された第2マスク257が配置されている。さらに、第3噴射ノズル262と金属箔120との間には、第3被膜113を第2被膜112上に形成する透孔が形成された第3マスク267が配置されている。
【0068】
次いで、上述した第3成膜装置240を用いた成膜体101の製造方法について、図14を参照しつつ説明する。
まず、成膜室241の第1バックアップロール部材243及び第1噴射ノズル242を用いて、金属箔120の第1金属主面121に膜厚T1の第1被膜111を成膜する。
【0069】
具体的には、まず、成膜室241内を102Paにまで減圧し、第1エアロゾル発生器248内に第1混在微粒子D1を投入し塞ぐ。次に、ガス管P1の途中に配置された第1レギュレータ249を調節して、ガスボンベGBから搬送ガスGSを所定流量流す。この搬送ガスGSは、ガス管P1を通じて、第1エアロゾル発生器248内に流入する。すると、この搬送ガスGSにより、第1混在微粒子D1は、内側底板248Rと閉塞栓248Qとの間の空間中に巻き上げられて、第1エアロゾルAS1となり、所定の単位時間当たりの搬送量の第1混在微粒子D1が、搬送ガスGSによって搬送される。
このようにしてできた第1エアロゾルAS1は、エアロゾル管P2を通じて、成膜室241の第1噴射ノズル242に導き、金属箔120の第1金属主面121のうち、成膜する第1形成面121Cに向けて噴射する。これにより、第1混在微粒子D1が第1金属主面121に衝突、堆積する。
かくして、第1金属主面121の第1形成面121Cには、第1混在微粒子D1を起源とする物質(チタン酸リチウム(Li4Ti512)とリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43))からなる、膜厚T1の第1被膜111が成膜される。
【0070】
次に、成膜室241の第2バックアップロール部材253及び第2噴射ノズル252を用いて、金属箔120の第2金属主面122に第2被膜112を成膜する、第2成膜工程について説明する。
まず、成膜室241の第2バックアップロール部材253に、第1被膜111を形成した金属箔120を保持させる。具体的には、図14のD部の拡大図である図16に示すように、第2バックアップロール部材253のうち、凹部256内に第1被膜111全体を収めて、支持面255に、金属箔120の第1金属主面121のうち、第1被膜111が成膜されていない第1露出部121Fの一部を巻き付けるように当接させる。これにより、金属箔120の第2金属主面122の一部が、第2噴射ノズル252に対向する。このとき、この第2金属主面122一部は、段差等のない状態になっている。
【0071】
また、第2エアロゾル発生器258内に第2混在微粒子D2を投入し塞ぎ、ガス管P1の途中に配置された第2レギュレータ259を調節して、ガスボンベGBから搬送ガスGSを所定流量流す。この搬送ガスGSは、ガス管P1を通じて、第2エアロゾル発生器258内に流入する。すると、この搬送ガスGSにより、第2混在微粒子D2は第2エアロゾルAS2となり、所定の単位時間当たりの搬送量の第2混在微粒子D2が、搬送ガスGSによって搬送される。
このようにしてできた第2エアロゾルAS2は、エアロゾル管P2を通じて、成膜室241の第2噴射ノズル252に導き、金属箔120の第2金属主面122のうち、成膜する第2形成面122Cに向けて噴射する。これにより、第2混在微粒子D2が第2金属主面122に衝突、堆積する。
【0072】
第2バックアップロール部材253に保持され、第2エアロゾルAS2を噴射されている金属箔120について、この金属箔120の厚さ方向DTから見た図を、図17及び図18に示し、これらを用いてさらに具体的に説明する。
第2被膜112を形成すべく、第2混在微粒子D2を第2金属主面122に衝突させている領域を形成中領域Rとする。また、重複部LW(第1被膜111)のうち、厚さ方向DTに見て、形成中領域Rに含まれる領域を形成重複領域RWとする。すると、本実施形態2にかかる成膜体101の製造方法では、この形成重複領域RWを第2バックアップロール部材253の凹部256内に位置させている(図17参照)。一方、金属箔120の第1金属主面121の第1露出部121Fのうち、金属箔120の厚さ方向DTに見て、形成中領域Rに含まれる領域を形成非重複領域RXとする。すると、本実施形態2では、この形成非重複領域RXを、第2バックアップロール部材253の支持面255上に位置させている(図18参照)。
このように、形成重複領域RWと形成非重複領域RXとで、凹部256内に収容するか支持面255上に配置するかを変えることで、形成重複領域RW及び形成非重複領域RXのいずれでも成膜のしやすさを同様にして、第2混在微粒子D2を第2金属主面122の第2形成面122Cに均一に衝突、堆積させることができる。
かくして、第2金属主面122の第2形成面122Cには、第2混在微粒子D2を起源とする物質(コバルト酸リチウムとリン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43))からなる第2被膜112が均一に成膜される。
【0073】
上述した第2成膜工程の後、成膜室241の第2バックアップロール部材253において、金属箔120の第2金属主面122成膜した第2被膜112上に第3被膜113を成膜する。
具体的には、まず、第3エアロゾル発生器268内に第3微粒子D3を投入し塞ぎ、ガス管P1の途中に配置された第3レギュレータ269を調節して、ガスボンベGBから搬送ガスGSを所定流量流す。この搬送ガスGSは、ガス管P1を通じて、第3エアロゾル発生器268内に流入する。すると、この搬送ガスGSにより、第3微粒子D3は第3エアロゾルAS3となり、所定の単位時間当たりの搬送量の第3微粒子D3が、搬送ガスGSによって搬送される。
このようにしてできた第3エアロゾルAS3は、エアロゾル管P2を通じて、成膜室241の第3噴射ノズル262に導き、金属箔120の第2金属主面122に成膜した第2被膜112に向けて噴射する。これにより、第3微粒子D3が第2被膜112上に衝突、堆積する。
かくして、第2被膜112上には、第3微粒子D3を起源とする物質(リン酸塩固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43))からなる、第3被膜113が成膜され、前述の成膜体101が完成する(図2,12,13参照)。
【0074】
以上により、本実施形態2にかかる成膜体101の製造方法では、実施形態1に記載した作用効果の他に、第3成膜装置240を用いて、帯状の金属箔120を連続的に第1被膜111、第2被膜112及び第3被膜113を成膜できるので、作業工数を低減することができる。
【0075】
以上において、本発明を実施形態1,2及び変形形態1に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1等では、成膜体をバイポーラ二次電池に使用可能な発電要素BFの一部をなすものとしたが、基体の第2成膜面にエアロゾルデポジション法で形成された第2被膜を備え、第1被膜は基体の厚さ方向に見て、第2被膜と重なる重複部を含む成膜体であれば良く、例えば、燃料電池用部品、基板上に直接形成する圧電体及びコンデンサ部品等が挙げられる。
【0076】
また、実施形態1等では、第1被膜をエアロゾルデポジション法を用いて形成したが、その製法には特に制限されない。従って、例えば、メッキ、塗布、スパッタリングなどの手法を用いて形成しても良い。また、第2被膜をエアロゾルデポジション法を用いて形成したが、例えば、原料を気化蒸発させた後、気相中でナノ粒子として再析出させ、それを搬送ガス中に分散して基体に衝突させて第2被膜を形成するガスデポジション法などを用いて形成しても良い。
また、支持部材を一体の部材において凹部を凹設したものとしたが、複数の部材で構成しても良く、例えば、土台となる部材に、凹部に対応する部分だけ貫通孔を形成した部材を重ねて、支持部及び凹部を構成するようにしても良い。
【0077】
また、実施形態1,2では、凹部の底面に支持部材をなす金属を露出させ、支持面に第1被膜と同じ被膜を覆い、支持面の硬度と凹部の底面の硬度とを異ならせた。しかし、第2被膜のうち形成重複領域における厚みと形成非重複領域における厚みとの差異が小さくなる硬度にしてなるように、支持面の硬度と凹部の底面の硬度とを異ならせれば良い。さらに、搬送ガスをアルゴンガスとしたが、成膜面に形成させる被膜の特性や微粒子の組成等に応じて適宜選択すれば良く、例えば、乾燥空気、窒素ガス、ヘリウムガス、酸素ガスなどでも良い。また、搬送ガスを同一種類のガスとしたが、互いに異なる種類のガスを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態1にかかる成膜体の斜視図である。
【図2】実施形態1,実施形態2にかかる成膜体の断面図(図1のA−A部)である。
【図3】実施形態1にかかる成膜体の上視図である。
【図4】バイポーラ二次電池の発電要素の説明図である。
【図5】実施形態1にかかる成膜体の第1成膜工程の説明図である。
【図6】実施形態1にかかる成膜体の第2成膜工程の説明図である。
【図7】実施形態1,変形形態1にかかる成膜体の第2成膜工程の説明図である。
【図8】実施形態1にかかる成膜体の第2成膜工程の説明図である。
【図9】実施形態1にかかる成膜体の第2成膜工程の説明図である。
【図10】変形形態1にかかる成膜体の第2成膜工程の説明図である。
【図11】変形形態1にかかる成膜体の第2成膜工程の説明図である。
【図12】実施形態2にかかる成膜体の斜視図である。
【図13】実施形態2にかかる成膜体の上視図である。
【図14】実施形態2にかかる成膜体の製造工程の説明図である。
【図15】実施形態2にかかる成膜体の製造工程の説明図である。
【図16】実施形態2にかかる成膜体の製造工程の説明図である。
【図17】実施形態2にかかる成膜体の製造工程の説明図である。
【図18】実施形態2にかかる成膜体の製造工程の説明図である。
【符号の説明】
【0079】
1,101 成膜体
11,111 第1被膜
12,112 第2被膜
20,120 金属箔(基体)
21,121 第1金属主面(第1成膜面)
21F,121F 第1露出部(第1露出部)
22,122 第2金属主面(第2成膜面)
53 金属箔支持部材(支持部材)
55,155,255 支持面
56,156,256 凹部
56D,156D,256D (凹部の)底面
253 第2バックアップロール部材(支持部材)
D2 第2混在微粒子(微粒子)
D3 第3微粒子(微粒子)
DT (金属箔の)厚さ方向
F1,F2,F3 (凹部の)深さ
H1 第1硬度(支持面の硬度)
H2 第2硬度(底面の硬度)
LW (第1被膜の)重複部
R 形成中領域
RW 形成重複領域
RX 形成非重複領域
SF1,SF2 被膜
TS (被膜SFの)膜厚(厚み)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔状で、第1成膜面及び第2成膜面を有する基体と、
上記基体の上記第1成膜面上の一部に形成した第1被膜と、
上記基体の上記第2成膜面上の少なくとも一部に形成した第2被膜と、を備え、
上記第1被膜は、上記基体の厚さ方向に見て、上記第2被膜と重なる重複部を含む
成膜体の製造方法であって、
上記第1被膜を形成した上記基体の第2成膜面に、微粒子を衝突、堆積させて、上記第2被膜を形成する第2成膜工程であって、
支持面およびこの支持面よりも窪んだ凹部を有する支持部材を用い、
上記基体の第2成膜面のうち、上記第2被膜を形成すべく、上記微粒子を衝突させている領域を形成中領域としたとき、
上記第1被膜の上記重複部のうち、少なくとも、上記基体の厚さ方向に見て、上記第2被膜を形成すべく、上記基体の第2成膜面に上記微粒子を衝突させている上記形成中領域に含まれる形成重複領域を、上記支持部材の上記凹部内に位置させ、
上記第1成膜面の上記第1被膜が形成されずに露出した第1露出部のうち、少なくとも、上記基体の厚さ方向に見て、上記形成中領域に含まれる形成非重複領域を、上記支持部材の上記支持面上に位置させて、
上記第2被膜を形成する第2成膜工程を備える
成膜体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜体の製造方法であって、
前記第2成膜工程は、
エアロゾルデポジション法、或いは、ガスデポジション法を用いる
成膜体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の成膜体の製造方法であって、
前記支持部材の前記凹部は、前記第1被膜の厚みよりも、その深さが大きくされてなり、
前記第2成膜工程は、
前記形成非重複領域を、少なくとも、上記支持部材の上記支持面上に支持させた状態で、
上記第2被膜を形成する
成膜体の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の成膜体の製造方法であって、
前記支持部材の前記凹部は、その深さが前記第1被膜の厚み以下にされてなり、
前記支持部材の前記支持面と前記凹部の底面とは、
互いに硬度が異なり、かつ、
上記支持面の硬度と上記凹部の上記底面の硬度とを同じとして、前記第2成膜工程で前記第2被膜を形成した場合よりも、上記第2被膜のうち、前記形成重複領域における厚みと前記形成非重複領域における厚みとの差異が小さくなる硬度にしてなる
成膜体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−293107(P2009−293107A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150413(P2008−150413)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【特許番号】特許第4363491号(P4363491)
【特許公報発行日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】